【悪役SS】ミヅキ「つ、付き合ってください!」 グズマ「……は、はぁ?」【スレタイ詐欺】:ポケモンBBS(掲示板) 【悪役SS】ミヅキ「つ、付き合ってください!」 グズマ「……は、はぁ?」【スレタイ詐欺】:ポケモンBBS

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【悪役SS】ミヅキ「つ、付き合ってください!」 グズマ「……は、はぁ?」【スレタイ詐欺】

 ▼ 1 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 20:36:43 ID:ndZ4JDVA [1/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
クリスタルのような角張った紋様を描くガラスのドームは、夕陽が当たってキラキラと朱く輝いていた。

山の火口、つまりは空洞の中にポツリと建てられた半球は4本の鉄塔によって支えられていた。

端から下を覗いてうっかり落ちてしまえば助かりそうもないような高さだ。

半球にはこの高さへと至る長い長い階段が繋がっており、階段を登りきった目の前には背もたれにモンスターボールマークのついた王座があり。

また、床を横に走る一本の白線がそれらを明確に区切っていた。

そんな不思議な建造物に、一人の男がたどり着いた。

「はぁ……はぁ……なんなんだ……はぁ……突然、呼び出したり、しやがって……。俺様じゃ、なかったら……ゼェゼェ……いきなり、チャンピオンの間に……来いだなんて、言われても、出来ねえぞ」

長い長い階段を登りきって荒くなった息を整える時間も惜しい、とばかり俺はまくし立てる。

メラニンなんて一粒も存在しない白髪に、悪い目つきと、同じく悪い目つきを模した特徴的なサングラス。一見して30、いや、40代に思っても不思議ではないくたびれた顔だが、その実まだ20歳も前半である。

泣く子も更に泣き喚いて全速力で逃げ出すという自己評価を下している俺の眼光を受けてにへらっ、と笑っている少女が、その細身な体に対して大きすぎる王座に座っていた。

「やっ……やぁやぁ、よく来てくれたね、グズマくん!」

と、王座から立ち上がって腕を広げつつ鷹揚に言う。

「チャンピオンぶってんじゃねえよミヅキ。俺の方が年上だろ。……まあお前は実際チャンピオンだけどよ」

「べ、別にいいじゃないですか!」
 ▼ 2 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 20:37:32 ID:ndZ4JDVA [2/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
ぷくー、と頬を膨らませる様子は15という彼女の年齢を考えると少し幼稚とも言えるかもしれない。

だが、元が童顔なためにかなり可愛らしいのが俺には少し癪だった。

「……で、用事ってなんなんだ?」

一旦息を整えてから尋ねると、途端ミヅキはその顔を、夕焼けの空と張り合えるくらいに紅く染めた。

俺なんかを使うような用事のどこに紅くなる要素があるのだろう。

「っ……! あ、あのっ!」

「んだよ、急に改まって」

ミヅキは何かを言いたげに口をパクパクしながら視線を泳がせる。

その様子を黙って見ていると、やがて何かを決心したような表情で顔を上げた。



「……………………つ、付き合ってください……っ!」



「…………は……ハァ?」

発せられた言葉に意表を突かれ、俺の喉が間抜けな声を出した。
 ▼ 3 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 20:38:18 ID:ndZ4JDVA [3/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……あ、あれ? グズマさん、彼女とか……いない、ですよね?」

「……いねぇけどよ。彼女……ってことは、やっぱり、そういうことなのか?」

「えと……うん。その、 恋人、的な?」

恥ずかしさ100%の緊張した面持ちでミヅキはこちらを見た。

「……年、10歳もちがうんだぞ。しかも、自分で言うのもなんだが俺は40代に間違えられたことすらあるんだぜ?」

「と、年なんて関係ないです!」

「……チャンピオンが俺みたいな、自分で言うのもなんだが、ならず者集団のボスと、か?」

「立場だって、関係ないです……!」

「…………俺なんかでいいのか。グラジオとか、ハウとか、他にもいっぱいいるだろ」

「わ、わたしは、グズマさんを選んだんです! 他なんて、いないんです……」

頭の中がクエスチョンマークで埋め尽くされてオーバーヒート寸前だった。

そもそも、なんで俺なのか。意味が分からない。

人に好かれることとは無縁だと思って振舞って来たがために、さっきから動揺しっぱなしだ。
 ▼ 4 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 20:39:05 ID:ndZ4JDVA [4/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
「………………」

「……あの、ダメ……ですか?」

長考モードに入っていた俺を、震えているか弱い声が引き戻した。

もじもじと顔を俯けながら、しかし目線だけはしっかりこちらを捉えている。

いわゆる、上目遣いとか言うやつだ。

そのしおらしさは破壊力満点で、色恋沙汰とは縁もゆかりもなければさしたる興味もなかった俺でも、明確に可愛らしいと思えるような仕草だった。

「あ、あの……?」

不安にかミヅキの表情がどんどん硬くなっていくのが見て取れる。

とりあえず答えなければ、と慌ててボソボソと口に出した答えは、というと……。

「……少し、考える時間をくれ」
 ▼ 5 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 20:40:04 ID:ndZ4JDVA [5/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
こんな、単なる先延ばしでしかなかった。

しかしミヅキは緊張を解いてくすりと笑う。

「ふふ、なんて言うか、なんか予想通りでした。グズマさん、こう言うの疎そうだし」

「うっせ、ほっとけ。どうせ見るからに違ぇんだろ?」

「ふっ……あは、あははは!」

遂にはせっかく立ったのにまた椅子に腰を下ろし、足をばたばたさせながら、ミヅキは声に出して笑い始めた。

「ったく……おら、やらねぇのか?」

「……え? 何かやるんですか?」

ピタリと笑うのをやめ、今度はいかにも不思議そうに首をかしげるミヅキ。

表情がとても豊かだ。
 ▼ 6 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 20:40:58 ID:ndZ4JDVA [6/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
「はぁ……ここは何するトコなんだよ、チャンピオン」

「あっ、バトル!」

スタッ、と立ち上がってミヅキはトレーナーの指示場所に立つ。

それにならって、俺も定位置に移動した。

緩みかけていた場の空気は、お互いが対峙した瞬間ガラッと切り替わった。

ミヅキがニッ、と口の端を釣り上げて言う。

「バトルは負けてあげないですよ!」

「手加減してもらっちゃ困るぜ? じゃないとこっちも本気で壊せねえからなあ!」

二人同時に先鋒のポケモンをフィールドに送り出した。

ポケモンリーグ最終戦、チャンピオン戦の幕開けだ。
 ▼ 7 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 20:44:37 ID:ndZ4JDVA [7/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
  ◇ ◇ ◇

「……ってなことがあってよ」

そう目の前で話すグズマの表情は、嬉しげなものではなかった。

ではなにかといえば、悩んでいる、と言うのが一番似合うだろう。

せっかく女子から告白されたのに、何を悩んでるんだ。

…………あたいとしては、もっと悩んでくれた方がいいんだけど。

「……おいプルメリ、聞いてんのか?」

「ん? あ、あぁ。もちろん聞いてるさ」

正直、あんまり聞いていなかったのは秘密。

というか、人が告白された話聞いて楽しいわけがないだろっつーの。

それも、グズマからだなんて……。

若干もやもやしつつ、とりあえずあたいはこう聞いてみた。
 ▼ 8 ュゴン@くさのジュエル 17/05/21 20:45:44 ID:WfrkVVWI [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 9 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 20:49:42 ID:ndZ4JDVA [8/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
「で、バトル勝てたのかい?」

「……いや、そっちはどうでもいい。聞かないでくれ」

あーあー、こりゃボロ負けしたな。

まぁ、あの子の実力は確かだから仕方ないか。

聞くなと言っているのに深追いしていると拗ねて話してくれなくなってしまうので深追いはやめて、話題を元に戻すことにした。

「……待って、って言ったんだろ? 早く決めなよ」

「って言われてもな。そもそも何を決めりゃいいんだよ?」

「ハァ? そんなの、返事の内容に決まってるじゃないか」

「だから、その辺が分かんねえからお前に頼ってんだろうが」

あぁ、こりゃ重症だ、と額に手の甲を当てて天井を仰ぎ、呆れを表現する。

「グズマもバカだね。そんなのグズマがどう思ってるか以外に何を言えばいいって言うんだい」

「その俺がどう思ってるかってのが分かんねえんだよ! 突然言われてもよお、これまでバトルが強いやつくらいにしか思ってなかったのにどうすりゃいいんだ」

自分でも分かってないことを分からせろ、なんて随分と無理難題を持って来やがったもんだ。

あたいはどう誘導尋問してやればいいか少し考えた。
 ▼ 10 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 20:51:45 ID:ndZ4JDVA [9/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
「じゃあグズマはミヅキにそうやって言われて嬉しかったか?」

本当は、少し聞くのが怖かった。

しかし気持ちを整理するなんて簡単に聞かなきゃ始まらないので他にどうしようもなかった。

「あー……そりゃ嫌じゃねえがよ。でもあれは、ミヅキがどうたらじゃねえだろ。例えばプルメリ、お前に言われても俺は同じような嬉しさだった気がするぜ」

「…………っっ!!?」

思わず、息が詰まって喉から変な音が出た。

本人にそう言葉にされると、どこか現実味を帯びた気がしてとても恥ずかしかった。

そうか……嬉しいのか。

「どうかしたか?」

「いっ、いや? 何でもないさ」

顔が明らかに熱を帯びているのが自覚できた。

グズマが不審に思ってなければいいんだけど……。

「す、少なくとも嫌じゃないんだろ? 相手ももちろん同じ。後はあんたがどう決めるかよ」
 ▼ 11 ィアンシー@ノーマルジュエル 17/05/21 20:52:43 ID:PCev8Ucw NGネーム登録 NGID登録 m 報告
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 ▼ 12 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 20:53:32 ID:ndZ4JDVA [10/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
「そこが……いや、そこも分かんねえんだよ。別に俺は構わんには構わんが――」

少し、心が痛んだ気がした。

少し、イラッともした。

「――チャンピオンと俺が釣り合うかってのもそうだしよ」

痛みが、少し強くなった。

イライラも、かなり増した。

「まず俺を選んでどうしたいのかも分かんねえ。本当に受けたりして良いのか分かんねえんだよ」

キリキリと針で穴を開けられているような鋭い痛み。

出所の知れない憤りも最高潮に達して――

「…………もう、自分だけの問題くらい自分で考えたらどうだい!?」

心のどこかで自分の行動が訳分からないことは理解してはいる。

でも抑えきれなかった。

気づけばあたいはグズマの前を去っていた。
 ▼ 13 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 20:55:09 ID:ndZ4JDVA [11/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
グズマから一旦離れたところでどこにいくかも考えていなかったあたいは、とりあえず同じいかがわしき屋敷内の自分の部屋に戻った。

「あああああぁぁぁぁ…………」

情けない声を出しながらベッドに倒れこんで枕に顔をうずめる。

「はぁ……」

浮かんでくるのは後悔の言葉ばかり。

自分でも自分の行動が訳分からない。

なんで突然怒っちゃったんだか……あいつ、悪く思ってないといいんだけど。
 ▼ 14 ッチール@ゼニガメじょうろ 17/05/21 20:55:47 ID:gpWaHzFU NGネーム登録 NGID登録 m 報告
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 ▼ 15 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 21:00:36 ID:ndZ4JDVA [12/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
後悔に押しつぶされてぐったりとうつ伏せに横たわっていると。

キィ、という音がして、扉が勝手に開いた。

勝手に、と言っても別にゴーストか誰かがいたずらをしていたりするわけではない。

「あの、姐さん? どうしたんすか?」

扉を開けたのは、うちのしたっぱちゃんの一人だった。

「………………別に、なんでもないし」

顔を再び枕に押し付けて答えると、予想外の言葉が飛んでくる。

「いや、あったのは知ってんですよ」

ガバッ、と起き上がると、驚いたのかしたっぱちゃんはびくりと肩を揺らした。

持っていたショッキングピンクという色の得体の知れないジュースが少し跳ねた。

「……………………」

「話、たまたま聞いちゃって。……すんません」
 ▼ 16 テフの嫁◆Rate1XbwY6 17/05/21 21:04:40 ID:G9zURlUs NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 17 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 21:06:06 ID:ndZ4JDVA [13/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……そうかい。別に、いいけどさ」

心底申し訳なさそうな表情が不憫で見ていられなかったので、ベッドに倒れこんで無理やり視線を外す。

「…………」

「…………」

妙な沈黙が辺りに立ち込める。

したっぱちゃんはただ何か言いたげに目線を泳がせ、口を開閉しているだけで、このままだと言いそうにない。

仕方ない、ここはあたいがきっかけを作ってやらないとね。

「…………何か、言いたいことかなんか、あるのかい?」

「い、いえ! な、ないd……っと、やっぱり、一つだけ」

一つだけ、と言いつつも、やはりしたっぱちゃんはあたいと目線を合わせないように視線を右往左往させる。
 ▼ 18 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 21:07:35 ID:ndZ4JDVA [14/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
「なんだい。別に怒りはしないよ」

「えっと……」


「姐さん、グズマさんのこと、めちゃめちゃ好きじゃないですか?」


「…………っぁっ……!!!???」

一瞬にして喉が干上がる。

息が詰まって、変な声が出た。

したっぱちゃんは嬉しそうにパチンと指を両手で一回ずつ鳴らした。

「図星、っすね!」

「……ぅ、う、うるせえ! あたいは、あんな……あんなバカ……」

反射的に否定しようとして、言葉に詰まる。

別に好きじゃない、と喉までは出かかっているのに、どうしても舌が動いてくれない。

心臓病なんじゃないかと思うほど急激に鼓動が速くなって、耳の先から手足の指の爪までがくまなく発熱し始める。

「顔、真っ赤っすよ? 姐さんも乙女っすね〜」
 ▼ 19 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 21:12:20 ID:ndZ4JDVA [15/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
「っ〜〜!? …………そ、そうだよ! あたいは、その……す、好きだよ! なんか文句あるかい!?」

にへらにへらと笑いながらおちょくられて、もはや開き直るくらいしか選択肢は残されていなかった。

「え、本当にそうなんすか!?」

返しが予想外だったのか、ただただ驚いた表情をするしたっぱちゃん。

もしかしてコレ、言い損だったのか……?

黙りこくったあたいを見て怒っていると勘違いしたのか、したっぱちゃんが慌てて補足をつけた。

「い、いえ、えっと……めっちゃ応援してますよ!」

「……勝手にしな」

若干ぶっきらぼうな調子のあたいの言葉になぜかしたっぱちゃんは満足げな表情で帰っていった。

「……はぁ……」
 ▼ 20 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 21:19:16 ID:ndZ4JDVA [16/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
うるさいのがいなくなって部屋が静かになった瞬間、さっきにグズマの話が、その声のままで蘇る。

――ミヅキのヤツによお…………。

ドンッ!

壁を右拳で思いっきり殴りつける。

いかにもボロそうな見た目に反して意外と頑丈なその壁は甚大な反作用を、まるでソーナンスのように拳へ返してくる。

関節から空気が吹き出し、パキッ! と小気味良い音を立てる。

――…………告白、でいいんだよな……? されたっぽいんだけどよお……。

ドンッ!

さっき壁を殴ったせいで痛い拳を、更に壁へ打ちつける。

大きく負荷がかかったせいで中指の第3関節に血が滲んだ。

「痛っぅ……」

――どう返せばいいのか分かんねえんだよ。
 ▼ 21 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 21:24:01 ID:ndZ4JDVA [17/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
ドンッ! ドンッッ!! ドンッッッ!!!

うつ伏せで顔を枕に埋めながら、左腕だけをあげて壁を再び殴る。

不意に頭上でバキッ!! という音がした。

顔を上げると――

「……っ」

視界がボヤけていて、よく見えなかった。

いつもは少しドライアイ気味なのに、今は濡れ過ぎなくらいに目の表面は水分で溢れかえっている。

目をこすって水分を落とし、もう一度。

見えたのは、目の前の壁が少しだけ陥没している光景。

そして、凹んだところが赤く染まっている。

慌てて自分の手を確認すると、自分の手も同じ色。

下に視線を落とせば、枕が涙で剥がれ落ちたアイラインと血の色で気持ちの悪い色になっていた。

「……はぁ」
 ▼ 22 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 21:24:40 ID:ndZ4JDVA [18/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
血の玉が手で溢れる様子をただ呆然と眺めていた時だった。

バタン! と少し乱暴な音がした。

「オイ、どうした?」

それはちょうど今さっき聞いたばかりの声だった。

段々と近づいてくる足音。

あたいは顔を背けて腕を後ろに突き出した。

「…………悪いけど、入るのはもう少し待ってくれないかい」

「……? あぁ」

足音が遠ざかり、扉が静かに閉まった音を聞いてから、あたいはのそのそと自分のバッグを漁り、クレンジングシートを引っ張り出した。

涙で化粧が溶けたぐちゃぐちゃの顔なんか見られるわけにはいかない。

涙と化粧を綺麗に拭き取って、ついでに手の血をティッシュで取る。
 ▼ 23 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 21:27:07 ID:ndZ4JDVA [19/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
「…………オイ、大丈夫か?」

扉の外から声が聞こえてくる。

「……大丈夫だよ」

応答すると、もう一度扉が開いた。

部屋に入ったグズマの最初の一言は、これだった。



「なんかあったなら、俺に話せ」



コイツは、いっつもこうだ。

グズマと聞くと大体のやつがスカル団の凶暴なやつ、なんて答えるけど、そんなのは大間違い。

ベッド周りの惨状を見て、一瞬で何かの八つ当たりだろうと判断して。

溜め込まないで吐き出させるのが一番だと分かっていて、普通なら拒否することも分かっているからあえて高圧的に「話せ」なんて言いやがる。

本当に、優しいヤツだ。
 ▼ 24 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 21:29:38 ID:ndZ4JDVA [20/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
「………………」

でも、今回はグズマにだけは絶対に言えない。

怒られた子供のようにあたいが黙りこくっていると、やがてグズマはしょうがねえなぁ、とため息をついた。

「とりあえず、その手なんとかしろよ。ガーゼくらいここにもあんだろ?」

「……あ、あぁ。あるさ」

再び血が滲み始めた手を他のところにつけないように注意しながら、ガーゼの入った箱を取り出す。

「ほら、貸せ」

半ば奪い取るようにグズマがガーゼを持っていった。

ベッドに座るように誘導されて、言う通りにあたいはベッドの端に座る。

綺麗に広げられたガーゼはは、細長く折りたたまれて、傷を包み込む。

あたいの手にガーゼを巻くグズマの手つきは、一見乱暴に見えて、でもやっぱり優しかった。

「おらよ。理由は言いたくねえなら別に良い」

「あぁ。…………ありがとう」
 ▼ 25 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 21:31:11 ID:ndZ4JDVA [21/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
すると、グズマはあたいの枕をチラッと見た。

「枕もアレだしよ……今日は俺んとこで寝るか?」

「そうさせt……え、え、えぇ!?」

一瞬で頭の中に「!」と「?」が溢れかえった。

俺んところ、ってどういう意味……? 俺の腕の中で寝ろとか、そういう……? えっ、ちょっと待てそれはまだ早すぎじゃないか……!? いくら慰めるためって言っても……! で、でもちょっとやってみたい気も……いやダメだ、そんなことされたらあたいが壊れる……!

「オイ、プルメリ? 大丈夫か、オイ!」

肩を控えめに叩かれて、あたいは我に返った。

「えっと……そ、それっていうのは、その……そ、そういうことだったり、するのかい?」

「……そ、そういうことって、何が言いたいんだよ」

グズマが明らかに目線をズラした。

こ、これ本当にそういうやつ……?
 ▼ 26 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 21:31:38 ID:ndZ4JDVA [22/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……っと、グズマ?」

「あ? なんだよ」

「それじゃあ、グズマはどこで?」

この「どこで寝るのか」を聞いた質問は、一緒に寝るのかどうかを遠回しに確認してみたものだ。

直接聞くなんて流石のあたいにも無理だった。

もしここで「はぁ? んなもん俺も俺のベッドに寝るに決まってんだろ」なんて言われたら、本格的に覚悟を決めなきゃならないな……。

「それなら心配すんな。俺は今日ポニ島に宿取ってバトルツリーでバトルしてくるからよ」

なんだ、違うのかよ……。

勝手に想像広げてたあたいがバカみたいじゃないか。

「あ、ぁ……そ、そうか。頑張って来なよ。……はぁ」

「ため息なんかついてどうした」

「気にしないでおくれ。…………はぁ」

「……まぁいい。俺はもう行ってくるぞ」

「あぁ。行って来な」

グズマはさっさと部屋を出て行ってしまった。
 ▼ 27 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 21:32:57 ID:ndZ4JDVA [23/23] NGネーム登録 NGID登録 報告
というわけでプルグズSSを書いていきたいと思います
ミヅグズではないんで、あしからず
 ▼ 28 ノガッサ@ディフェンダー 17/05/21 21:34:20 ID:3KV4vsgw NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 29 ンプジン@とつげきチョッキ 17/05/21 21:43:53 ID:zy7L64U. NGネーム登録 NGID登録 報告
なるほど
めちゃくちゃ俺得じゃないかぁ!
支援!!
 ▼ 30 ママイコ@ハートスイーツ 17/05/21 22:02:13 ID:WfrkVVWI [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
YATTA!
支援
 ▼ 31 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/05/21 23:18:35 ID:7kj.g9iI NGネーム登録 NGID登録 報告
恋愛ss書いてる人がここにも…

支援
 ▼ 32 シズマイ@ゴージャスボール 17/05/22 18:37:23 ID:aZEiaygQ NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
恋愛ものはドキドキして仕方ないや
俺得なので応援しています!
 ▼ 33 ゼリア@ビスナのみ 17/05/22 18:41:12 ID:cCkTrO6U NGネーム登録 NGID登録 報告
これは良いss

支援
 ▼ 34 ナップ@ナナのみ 17/05/22 18:51:34 ID:DffgM/Is NGネーム登録 NGID登録 報告
そういうスレタイ詐欺ね
面白い支援
 ▼ 35 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:00:21 ID:xUtY8BNU [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……さて、ベッド借りてさっさと寝るか」

やることも決まったし、とベッドを降りて立ったところで、ふと気づく。

――どこのベッドで寝るって?

――ぐ、グズマの?

「…………え、えぇえっぇえぇぇ!?」

冷静に考えれば、それもそれでかなりピンチじゃないか……。

しかもグズマ、昨日はここで寝てたような……。

「ど、どうすりゃいいんだい……」

グズマの親切に乗らないのも申し訳ないし、でもグズマのベッドで寝るっていうのは……。

抵抗がある、と言われるとそれは違うのだが、やっぱり敬遠してしまう。

「……あー、もう! あたいはグズマが言ったことに従っただけだ!」

本人がそうしろと言ったのだから仕方ないのだ。

あたいはそう自分に言い聞かせてグズマの部屋へ向かった。
 ▼ 36 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:00:57 ID:xUtY8BNU [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
そして、到着。

「……なんだこりゃ」

部屋に入ってベッドを見た第一声はそれだった。

別に汚いとかそういうわけではない。

むしろ、ホテルのベッドのようにめちゃめちゃ綺麗だ。

ただ、荒れた部屋の中にあるホテルのベッドが違和感をバリバリ発しているだけで。

いや、理由はそれだけではない。

――広い。

大きめの枕が三つも並べられているいるくらいにはデカかった。

一瞬、まさか二人も女を囲って……? とか思ってしまったが、グズマがそんなことできるヤツではないのを思い出す。

そして、その理由を一回見たことがあるのも思い出した。
 ▼ 37 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:05:00 ID:xUtY8BNU [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……そうだ、あいつはポケモンと一緒に寝てるんだったな」

最初にその光景を見たときは微笑ましくて思わず笑ってしまったものだ。

「あたいもやってみるか」

腰元のボールを掴んで、一斉に空中へ投げ上げる。

出て来たのは、左から順番にゲンガー、クロバット、ドヒドイデ、ベトベトン、エンニュート、ラランテス。

それぞれ何故ボールから出されたのか分からずに不思議そうな顔をしていた。

「みんな、今日はここで寝るぞ」

……などと軽く宣言してしまったが、これでもう後には戻れなくなってしまった。

自分でも分かるくらいにギクシャクとぎこちない動きでベッドの前に立って、布団をめくる。

後はベッドに横たわるだけなのだが……。

「…………う、うぅ……」

それがなかなかできない。
 ▼ 38 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:11:10 ID:xUtY8BNU [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
別に嫌なわけではないのだが……。

どうしても、後一歩が出来な――

「くろろろろっ!」

「ぐはっ!?」

背中に強い、しかし痛くはない衝撃が加えられる。

そんなものに脚力だけであたいが耐えられるはずもなく、あたいはベッドに倒れこんだ。

「……あっ」

喉から変な声が出た。

あ……あたい、今、グズマのベッドに寝てる……。

そのことを考えるだけ、顔が熱くなる。

顔だけをベッドから離すと、目の前にクロバットが浮かんでいた。

「…………はは、ありがとさん」

にこにこ笑っているクロバットを何回か撫で、あたいは靴を脱いで枕に頭を乗せて寝転び直した。
 ▼ 39 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:15:26 ID:xUtY8BNU [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
すると、6匹が一斉にベッドに入って来る。

横に来たり、上に来たり、足元で丸まったり、はては頭にちょこんと乗ってきたり。

「……可愛いなぁ!」

思わず順番に撫でると、みんなあたいにすり寄るように距離を詰めてくる。

おかげで少し狭かったが、特に苦しくはなかった。

「げげ〜ん! げんが!」

あたいのお腹のあたりで浮かんでいたゲンガーが、突如呼びかけるように叫んだ。

それに呼応するように残る5匹が鳴く。

「ん? みんな、どうした?」

全員が一瞬こちらを見た後、次々にベッドから降りていく。

「えっ、ちょっと、な、なんだい!?」

追いかけて起き上がろうとして――

ガチン! と体が固まった。
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