【SS】風薫る日に【父の日】:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】風薫る日に【父の日】:ポケモンBBS

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【SS】風薫る日に【父の日】

 ▼ 1 き溜め投下◆8BTJNHGEsE 17/06/18 21:34:41 ID:zwP.Xgdo [1/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
おれだよ ハヤトだよ!
どう? げんきに してた?

おれが こどものころ とうさんが いってたんだよ
ハヤト とりポケモンはな はねで とんでるんじゃないんだ

そらを とびたいという つよい こころで
とんでるんだ ってね

さすがは おれの とうさん
いみ わかんねーけど すごいぜ!

__
 ▼ 9 8BTJNHGEsE 17/06/18 21:45:54 ID:zwP.Xgdo [2/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「ぎゃあっ!!!」

アンズが突然叫んだせいで、数名と数匹がこちらを振り返った……気がする。

「な、何でもっと早く言わないのよっ!」

「そんな大声出すなよ!何でって……握ってきたのそっちだろ!それにずっと引っ張られてたわけで……」

「だってこれは……ううっ……もうっ!離せばいいんでしょっ!」


バッ、と急に手を離される。それはそれで驚くのでやめてほしい。

彼女は何故か不機嫌そうにスカーフで顔を隠し、ズカズカと早足で歩き出した。


「ねー、何で怒ってんだよ」


急いで後を追って話しかけてみるも……


「フンッ!知らないわよっ!!」


……変なやつ。

離れてなお残る、生暖かい温度……いや、早く忘れてしまおう……
 ▼ 10 8BTJNHGEsE 17/06/18 21:47:11 ID:zwP.Xgdo [3/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「ほらあっ!ボーッとしてないでっ、さっさと来なさいよっ!」


一緒に歩いていたはずが彼女はどんどん先に行ってしまい、いつの間にか十数メートル離れたエレベーターの前にいて手を振ってる。

まったく、忙しいやつだな……


「だーかーらぁ、もう少しゆっくり歩けっての!」


なんだか今日は追いかけてばかりな気がする。
 ▼ 11 8BTJNHGEsE 17/06/18 21:48:39 ID:zwP.Xgdo [4/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「ふふっ、やっと追いついたわね!」

「はぁ……」

エレベーターに乗っただけなのに、既に少し疲れた。

あ、ここ、エレベーターガールが居るんだよね。そういうの今時珍しいんじゃないかな。

「いらっしゃいませ、ようこそ!何階をご利用ですか?」

「えーっと、ギフトコーナーは……」

「4階でお願いします!」

「あっ、俺が言おうとしたのに……」
 ▼ 12 8BTJNHGEsE 17/06/18 21:50:55 ID:zwP.Xgdo [5/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
__

「4階、贈り物にぴったり。ワイズマンギフトでございます」

「やったー!着いたーっ!ハヤト、こっちこっち!」

ああ、やっと着いた。エレベーターから降り、思わず深呼吸をした。
なんだかものすごく長い道のりだった気がする。

「へぇ……結構色々な物があるみたいだな」

「品揃えはカントーで1番だからね!」

広い店内に、数え切れないほどのショーケースや商品棚。色とりどりの包装が施された商品の数々。

ポケモン向けのもの、人間用のもの……
様々なグッズが並んでいて、至る所に『Father's Day 』のポップが掲げられている。

入り口付近のカウンターでは、ブルーを連れた少女と……その子の母親らしき女性が、大きな紙袋を受け取っていた。

はしゃぐ少女とブルー。ブルーの手には、リボンの掛けられた一輪の花__


幸せそうな家庭が、そこにあった。


そんな少女と母親に羨望の眼差しを向けていたのは、どうやら俺だけではなかったようだ。
 ▼ 13 8BTJNHGEsE 17/06/18 21:53:22 ID:zwP.Xgdo [6/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「……アンズ?」


ぽけーっ、とつっ立っているアンズに声をかけてみた。
もう少し激しく驚かすべきだったかな?いや、それじゃさっきの彼女と同じじゃないか。

彼女はハッとして、こちらを振り返る。
えへへ……、と、ぎこちない作り笑い。


「大丈夫か?なんか上の空だったけど」

「ううん、何でもないの。心配しないで!早くプレゼント選ばなきゃね!」

「そう……だけどさ、こんなに沢山あって……選びきれるのか?」

「そのためにあんたと一緒に来たんだから!きっと見つけられるわ!」

「まあ、そうだな……じゃ、探すとしますか、とっておきのプレゼント!」

「うんっ!


__
 ▼ 14 8BTJNHGEsE 17/06/18 21:54:34 ID:zwP.Xgdo [7/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
悩むこと小一時間。2人で、ああでもない、こうでもないを続けた結果、やっとそれは決まった。


薄紫色の和紙が貼られた扇子。紙に、水墨画風のクロバットが描かれている。

音も立てずに空を飛ぶクロバット……扇子にはぴったりだな。

骨には美しい彫刻が施されており、見るからに涼しげだ。我ながらいいセンスだと思う。


……今のは忘れよう。
 ▼ 16 8BTJNHGEsE 17/06/18 21:56:10 ID:zwP.Xgdo [8/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「あー。やっと決まったな!めでたしめでたし!」

「うん……」


労いを込めてアンズに目を向けるも、彼女は不安そうに視線を下ろした。


「どうしたんだよ、またそんな顔して。今まで散々楽しみにしてたのに」

「父上、喜んでくれるかな……」

「なんだ、そんな事か。当たり前だろ。アンズの心のこもったプレゼントなんだからさ、父上が喜ばないわけないよ」

「本当?」


彼女の表情に光が差し込む。こういう所はまだ子供っぽいよな、ほんと。


「間違いないね!だってさ、親にとって1番のプレゼントってのはな__」
 ▼ 17 8BTJNHGEsE 17/06/18 21:57:24 ID:zwP.Xgdo [9/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
__初めて父さんに贈り物をしたのは、俺が3つの時だった。

いつか父さんに読んでもらった絵本。虹色に輝き、永遠の幸せをもたらすという伝説の鳥ポケモン、ホウオウの物語。

手に入れた者には幸せが訪れる、というその羽根。誰よりも素晴らしい贈り物が出来ると思った。
 ▼ 18 8BTJNHGEsE 17/06/18 21:58:18 ID:zwP.Xgdo [10/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
……まあ、そんな物、簡単に見つかるはずがないんだけど。


結局、虹色の羽根を手にする事が出来なかった俺は、ポッポの羽根に絵の具で色を塗って父さんに手渡した。
 ▼ 19 8BTJNHGEsE 17/06/18 21:59:39 ID:zwP.Xgdo [11/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「ごめん、父さん。虹色の羽根見つかんなかった……」


きっとこんなんじゃ喜んでくれない。父さんは、俺のことを嫌いになったに違いない。


それでも父さんは、泣きじゃくる俺を抱き締めて、"ありがとう"と言ってくれた。


どうして?俺は羽根を見つけられなかったのに……


「ハヤト、父さんはな、虹色の羽根が本物かどうかなんてどうでもいいんだ。お前の一生懸命な、その気持ちが嬉しいんだよ」

「ありがとう、ハヤト。父さんは世界で1番素晴らしい贈り物を貰ったんだよ、それは__」


__お前がこの世に生まれてきてくれたことだ。
俺の頭を撫でながら、父さんはそう言った。



「父さん、大好き__」

……
 ▼ 20 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:00:33 ID:zwP.Xgdo [12/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「な、そういうこと!分かったろ?」

「うん……ふふっ、ありがとう。分かったけど、ポッポの羽根って……ハヤトらしいわね」


俺らしい?どういうことだろう……


それはさて置き、取り敢えず精算をしなければ。
俺たちは先程の親子に会ったカウンターへ向かった。
 ▼ 21 モ消えた◆8BTJNHGEsE 17/06/18 22:11:19 ID:zwP.Xgdo [13/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
受付の店員は初老の女性。上品な雰囲気を醸し出している。

「あらお嬢さん、父の日のプレゼントですか?」

店員は、その容姿に会った穏やかな口調でアンズに話しかけた。

「あ、はいっ!」

素早い手つきで商品を包んでいく。職人技、というのかな。とにかく美しい。

「うふふ、親孝行なご兄妹ですね。お父様もさぞお幸せでしょう。はい、お待たせしました」

「きょ?え、あ、どうも……」

え、兄妹?それって俺たちのこと?
俺たち、兄妹に見えてたの?

紙袋を受け取ったアンズと顔を見合わせる。彼女も驚いた顔をしていた。

後ろがつかえていたので店員に聞き返す暇もなく、俺たちは支払いを済ませてカウンターを後にした。
 ▼ 22 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:20:01 ID:zwP.Xgdo [14/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「兄妹、か……」

「そう見えるかなー?」

窓ガラスに映した2人の姿を見ながら、先程の店員の言葉を反芻してみる。

今までそんな事思ってもみなかったが、言われてみれば結構似てるのかもしれない。服装、とか……?

それとも、今日が父の日だからだろうか。2人で別々ならともかく、2人で1つのプレゼントを買いに来たのだから、兄妹と思われてもおかしくは無い。

……ってことは、さっき一階で起こった一騒動も、周りの客からはただの兄妹喧嘩だと思われていたってことだろうか。

……そう思うと、変に気を遣ってしまった自分が余計に恥ずかしかった。
 ▼ 23 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:23:54 ID:zwP.Xgdo [15/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「兄さん?お兄ちゃん?……兄上、って感じじゃないわよねー」


窓ガラスに映る俺の全身をジロジロ見ながら、彼女は呟いた。


「どうせなら、もっとお淑やかな妹が欲しかったなー」


わざと聞こえるように言ってみた。悪い子だ。


「悪ぅございましたねっ!お淑やかじゃなくって!」

「……俺は気が強い女の子のほうが好きだけどね」


今度は小さな声で言ってみた。物凄く悪い子だ。
 ▼ 24 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:26:06 ID:zwP.Xgdo [16/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「なんか言った?」

「いや別に、勘違いなんて誰にでもある事だよなーって。そうそう、お前も早く勘違いに気付いて、俺の父さんのほうが凄いって……」


「ふふっ、何言ってんのよ!勘違いしてんのはそっちでしょ?あたいの父上のほうが……」


「ああー、なんか腹減ったなぁ!ほら、もうすぐ12時だぜ?ご飯食べよご飯!先に上行ってるからなー!」


「ちょ、ちょっとぉ!話そらさないでよっ!」




「ほら早くー!!」




「……もーっ!待ちなさぁーい!!」


__
 ▼ 25 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:27:42 ID:zwP.Xgdo [17/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
なんだかんだがありまして、俺たちはデパート内のフードコートで食事を摂ることに。

期間限定で出店しているらしい、アローラ地方の人気料理店、『アイナ食堂』で料理を頼んだ。

いかにも南国の料理、という感じの、色鮮やかなランチプレート。どうやら、本場の味を再現しつつも、こちらの人の舌に合うように少し味付けを工夫しているらしい。

舌触りの良く、ひと噛みでほどける肉(店員に何の肉か聞いたが、微笑み返されただけで答えてはくれなかった)。
それに掛けられた、ブレンドきのみの甘口ソース。

付け合わせの野菜は、"アローラから原種を持ち込み、カントーで温室栽培しているので鮮度バツグンですよ!"と店員が言っていただけあって、これもまた美味しかった。

口の中に広がる異国の味……いつか行ってみたいね、どんな所かな、アローラ。

そんな話をしながら、午後のひと時を過ごした。
 ▼ 26 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:29:11 ID:zwP.Xgdo [18/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
食事を済ませ、アンズがもっとデパート内を見て回りたいと言ったので付き合ったのだが……


バトルアイテム、わざマシン、雑貨、食料品、ポケモンフーズ……


流石は大型商業施設。アローラにイッシュ、カロスからの輸入品、予約殺到の人気商品……こんなに簡単に手に入るとは。


気がつけば午後3時過ぎ。結局、俺のほうがガッツリ買い込んでしまった。
これだから買い物は恐ろしい……癖になりそうだ。


それから俺たちはデパートを後にし、少し休憩しようか、という事になり…….

デパートから数百メートル程度離れた所に公園があったので、そこで涼むことにした。
 ▼ 27 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:30:38 ID:zwP.Xgdo [19/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
__

「本当に誰もいないなー、ここ」

「都会なのにね、こういう所もあるんだ……」

公園……といっても、中央に青々とした葉を広げた広葉樹と、その根元近くに塗装の剥げかかった白いベンチが1つあるだけで、他は何もない小さな公園だ。

そのため、休日と言えど、俺たち2人以外に人の気配は無かった。



午後の公園の木漏れ日に、涼やかな風の音__
 ▼ 28 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:32:26 ID:zwP.Xgdo [20/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「はー……なんか疲れたなー」


ベンチに座って見上げると、茂った枝葉は屋根のようで、無数の小窓からはよく澄んだ青空が見える。


「ハヤト、いっぱい買ったもんね」

彼女は俺の右隣に座った。


「ああ、独りだからね。必要なものは全部自分で買わなきゃなんないし……ポケモン達の分もね。面倒くさいとは思わないけどな……」
 ▼ 29 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:34:08 ID:zwP.Xgdo [21/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
__

キキョウジムの先代リーダーだった俺の父さんは、俺にジムリーダーの座と相棒だったポケモンを譲り、ポケモン修行の旅に出て行った。

それ以来父さんが何処でどうしているのか、俺は知らない。


母さんのことは、俺が物心つく前からいなかったのでもう覚えていないが、「お前の母さんは、お前と同じ、綺麗な青い髪をしていてな……」と、父さんが言っていたのだけは、よく覚えている……

という訳で、今の俺は一人暮らし。
一人、と言っても家には鳥ポケモン達がいるから退屈はしなくて済むのだが……

そういえばアンズも一人だっけ。

彼女の父上は四天王をやってて、滅多に家に帰って来られないらしい……だから自分が晩御飯を届けてやるんだ、って言ってたな……
 ▼ 30 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:36:32 ID:zwP.Xgdo [22/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
__

「そうね……凄いなぁ、ハヤトは……」


ため息交じりのその声に胸騒ぎがして、俺はベンチから立って彼女の顔を覗き込んだ。

あ、右隣に座られたら相手の顔が見えないんだよね、俺。


「ど、どうしたの急に?」

動揺しているように見えるけど、やっぱりあの顔だ。
さっきの親子を見ていた時の、どこか悲しそうで、心ここに在らず……といった感じの顔。


……やっぱり、お前もそんな気持ちだったんだな。

ごめんね、1番近くにいるのにずっと気づかなくて。


「ねえ、アンズ__」


もう一度彼女の目を見て問いかける。


お前を助けられるのは__
 ▼ 31 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:37:48 ID:zwP.Xgdo [23/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「寂しいのか?」


__今は多分、俺しかいない。

振り返った彼女の顔、瞳が潤んでいる。

その顔に、ゆっくりと頷いた。いいよ、全部吐き出しなよ。


彼女の目から、次第に雫が溢れ出す__
 ▼ 32 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:40:56 ID:zwP.Xgdo [24/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「ぐすっ……ごめんなさい……会えないのは…………お父さんに会えないのは……ずっとずっと我慢してるのはっ……ハヤトのほうなのにっ…………それなのに……」

「それなのに……あたいはっ…………自分のことばっかりでっ……今日だって……本当は寂しかったから…………誰かと一緒に居たかったから……」

「ううっ……情けないわよね……こんなんじゃ…………父上を超えるジムリーダーになんて……なれない……」


途切れ途切れながらも、彼女は必死に伝えようとしてくれた。溜め込んでいた感情は頬を伝う。


そんな彼女に、もう少し気の利いたことを言えたら
良かったのに、俺は……


「馬鹿かよ!そんな事無いだろっ!!」


考えるより先に言葉が出ていた。彼女の両肩を掴んで思い切り叫んだ。


突然叫ばれて動揺しているようだが、それはどうだっていい。ずっと言いたかったこと、言わなくては。伝えなくては__
 ▼ 33 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:42:27 ID:zwP.Xgdo [25/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告



「アンズ!!聞けっ!俺は、俺はな!!お前にもっと自分に自信を持って欲しいんだよ!!」


 ▼ 34 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:45:15 ID:zwP.Xgdo [26/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
__最強のジムリーダーになる。

それがアンズの夢。最強のとりつかいを目指す俺にとって、彼女は応援すべき存在であり、ライバルでもあった。

彼女が時折寂しげな顔を見せるのは、今に始まった事ではなかった。

俺と同じように偉大なトレーナーである父親を尊敬している彼女だが、それ故の孤独や苦悩もあったのだろう。


『新しいジムリーダーが就任したって?ああ、あのガキか、どうせ親父のコネかなんかだろうな』

『可哀想ね、親に仕事を押し付けられて』

『鳥ポケモンとかwww電撃でいちころwww』


俺がジムリーダーになったのは、勿論俺自身が望み、俺自身の実力によるものだ。だが、世間が皆それを理解してくれる訳ではない。

彼女もきっと、同じ思いをしてきたのだろう。だから俺は彼女に自信を持って欲しかった。どんなものにも流されることのない、絶対的な価値観を。

__
 ▼ 35 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:46:52 ID:zwP.Xgdo [27/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「父さんに会えなくて寂しい?当たり前だろ!!俺だって寂しいんだよ!!」

「お前の夢はそれくらいで諦めなきゃならないものなのか!!その程度でっ!!」

「お前が自信を無くしたら、お前のポケモンは何を信じればいいんだよ!!お前はっ……」


ふと我に帰った。俺が大声を出したせいで、公園の木に止まっていた数羽のヤミカラスが一斉に飛び立っていったからだ。


「ごめん。言い過ぎた……つい熱くなって……」



ちゃんと伝わっただろうか。あるいは……



ベンチに座りなおし、もう一度彼女の顔を見た。
涙を指で拭い、こちらに向けられたその顔は__



「ありがとう。心配してくれて」



笑顔だった。
 ▼ 36 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:48:55 ID:zwP.Xgdo [28/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
__

僅かな静寂。ざわざわ、と木の葉の揺れる音__

沈黙を破ったのは、彼女のほうだった。


「そっか……良かった。やっぱりハヤトも寂しいのね……自分だけだと思ってた……怖かったの」

「今までいっぱい迷惑掛けたよね。ごめんね」



分かってない。何も分かってないな、本当に。



「謝んなくていいよ。俺が放っておけないだけだから」


彼女は疑問符を浮かべた顔でこちらを見た。


「放って、おけないって……?」



ああもう、どこまで説明させるんだよお前は。
 ▼ 37 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:50:46 ID:zwP.Xgdo [29/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「だから……似てるんだよ。お前と俺と。だからお前のこと放っておけないの!心配なの!なんでも一人で抱え込もうとするから!俺と同じでさ!」

「それに、お前がしょぼくれてたら張り合いないだろ?そういうこと、分かったな!!」


自分の内心を説明しなければならない違和感と小っ恥ずかしさから、多少乱雑な声色になってしまった。
 ▼ 38 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:52:47 ID:zwP.Xgdo [30/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「分かりました。ふふっ……なんか変な感じ」


泣いたり笑ったり、忙しいな。

こっちだってずっと変な感じなんだ。

でも、変だけど悪くはない。


「ハヤトって結構心配性なのね。意外だなー」

「あたい、あんたといっつも話してるような気がしたけど……知らないことばっかりね……」


アンズは話を続けた。落ち着きを取り戻したようだ。

どこか遠くを見つめる彼女の横顔に、木漏れ日は優しく振り注ぐ。


「ま、そうだな。俺もお前のことよく知らないし」


……だってアンズ、いつも父上の話しかしないんだから。
 ▼ 39 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:54:22 ID:zwP.Xgdo [31/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「ゆっくり、知っていけばいいと思う……教えてやるから、お前に、いろんなこと」


小窓から覗く、青い青い夏空。


「うん……」


2人で暫く、見上げていた。

__
 ▼ 40 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:55:37 ID:zwP.Xgdo [32/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
別れが惜しくない、と言えば嘘になる。

でも、どうせまたすぐ会えるんだ。明日になったらきっと、元の俺たちに戻っているはずだから……


「今日は、色々とありがとうね」


公園の入り口。少しはにかんだ笑顔で彼女は言った。


「何だよ、水臭いなー。……まあ、次は遠慮なんてしないからな!必ずお前を改心させてやるよ!!」

「望むところよ!ぜーったい、あたいの父上のほうが凄いって認めさせてやるんだから!」


闘争心と自信に満ちた笑顔。そうそう、その顔だよ、俺が1番見たかったのは。
 ▼ 41 ンボラー@すいせいのかけら 17/06/18 22:57:45 ID:FooUT3jE [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
ポケスペかな?
ハヤトとアンズもええね 支援!
 ▼ 42 8BTJNHGEsE 17/06/18 22:59:26 ID:zwP.Xgdo [33/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「あ、最後に言っとくけど、それ、」


彼女の持っている紙袋に目を向けて言った。


「これからお前の父上に渡しに行くんだろうけど……一人で買ったことにしとけよ」


娘がくれたプレゼントなら父親は間違いなく喜ぶだろうが、他の男と一緒に買った、となると……

後々めんどくさいことになられては困る。


「ふふっ、ご安心を!分かってますよっ!」

チロッと舌を出して答えた。



「じゃあねー!!覚悟しときなさいよー!!」

「ああ、お前の方こそなー!」」
 ▼ 43 8BTJNHGEsE 17/06/18 23:01:13 ID:zwP.Xgdo [34/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
繰り出したクロバットに颯爽と乗り込み、彼女は公園を飛び立った。


風に靡くスカーフ……だんだん小さくなる黒い影。

見えなくなるまで、ずっとずっと見送った。



ひとりぼっちの公園に、また涼やかな風が吹いた。

__
 ▼ 44 8BTJNHGEsE 17/06/18 23:04:26 ID:zwP.Xgdo [35/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「さて、俺も帰りますかね」

タマムシからキキョウまではかなりの距離があるが、俺のピジョットのスピードにかかればたいしたことはないだろう。

「よーし、頼むぜ、相棒!」

ボールを空に放った。辺りを包む眩しい閃光の中から甲高い声を上げて、相棒は姿を現した。

彼は公園の上空を2、3週し、俺の前に舞い降りる。

力強くしなやかな翼。声を上げ羽ばたく度に大きな風が起こり、広葉樹の枝葉と俺の前髪を揺する。

その美しさに心を奪われる人も多いという冠羽根は、初夏の光を受け、一層煌びやかに見えた。


「家までひとっ飛びだ!」

……実際はポケモン愛護法により規定があって、カントーとジョウトを行き来する際は一度セキエイ高原で降りて、ポケモンの体調チェックをしなければならないので、今のはただの景気付けなのだが。


俺が相棒の背に飛び乗ると、彼はもう一鳴きして翼を広げ、カントーの空へ舞い上がった。

__
 ▼ 45 8BTJNHGEsE 17/06/18 23:06:02 ID:zwP.Xgdo [36/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「ピジョット、今日は何の日か知ってるかい?」


空を舞うピジョットの首に手を回し、冠羽根に顔を埋めてみた。


俺が小さい頃、父さんが仕事で忙しくて会えない時は、よくこうしてたよな。

ふわふわの羽毛に包まれると、寂しさが和らいでいって……そのまま寝てしまった事もあったっけ。
 ▼ 46 8BTJNHGEsE 17/06/18 23:07:32 ID:zwP.Xgdo [37/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「それは、な……ピジョット……」



あたたかくて、やさしくて。



『父さん__』



幼い頃の、愛されていた記憶。



『__ありがとう。』





__おしまい。
 ▼ 47 8BTJNHGEsE 17/06/18 23:22:05 ID:zwP.Xgdo [38/38] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
おはなし。

人生初SSです。

今日は父の日、12年に一度しかやってこない酉年の父の日ですので、ポケモン界屈指のファザコンお二人をどうにかこうにか書かなければと思い、こうなりました。基本的な設定はHGSSとポケスペを基準にしましたが、一部作者の捏造も含むことをご了承ください。

ハヤトがアンズに自信を持てと言いたいのは紛れもなく公式設定なので(HGSSの彼からの電話)、>>33で言わせてあげました。
冒頭の台詞はただの自己紹介だと思ってください。

表現不足が否めないところもあると思いますが、お読み頂きありがとうございました。
 ▼ 48 ッコアラ@バンジのみ 17/06/18 23:29:00 ID:FooUT3jE [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
乙です
読みやすく良いSSでした
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