【暑い/寒い・混合SS】バクフーン「君を助けるために僕は旅に出る」:ポケモンBBS(掲示板) 【暑い/寒い・混合SS】バクフーン「君を助けるために僕は旅に出る」:ポケモンBBS

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【暑い/寒い・混合SS】バクフーン「君を助けるために僕は旅に出る」

 ▼ 1 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/07 20:11:53 ID:XCMBA3qQ NGネーム登録 NGID登録 報告
私は、未知の世界を見に行きたかった。

天から降り注ぐ太陽光、熱のこもった砂浜、泳ぐと心地いい海、南国にしかいないポケモンたち。
本で情報だけは分かっていても、実物を見たことは一度もない。


そうだ、いつか、旅に出よう。
周りは私の計画に猛反対するかもしれない。

……確かに、旅先で死んでしまったというポケモンの話は、これまで幾度も聞いてきた。
でも、それでも、私の好奇心は疼いて止まらない。


それに、寒い日はもうウンザリなんだ。
一回だけでもいいから、【暑い】という現象を、この身体で感じてみたい……。
 ▼ 81 モリ@フーディナイト 17/08/12 19:22:46 ID:hnzqhetk NGネーム登録 NGID登録 報告
私怨
 ▼ 82 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/12 19:54:21 ID:Djx59vsY [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
紆余曲折を経て、バクフーンはやっと目当ての情報を手に入れることが出来た。

『とけないこおり』があるのは『シバレル島』……。

その情報をホエルオーが知ると、彼は相変わらずの重低音を響かせて言った。



ホエルオー「シバレル島か……全速力で行けば一日かからずに着く場所だ」

バクフーン「ホエルオーさん、島が何処にあるか知ってるんですか!?」


ホエルオー「んまぁ、そりゃあな。……いろいろな海を旅をしてきたから、それなりの知識はある」

バクフーン「すげぇ……!!」


決まり悪げに苦笑するホエルオーの顔には、明らかな照れがあった。
どこかこそばゆい様なそんな表情。

ペリッパーがそんな彼を見て、皮肉交じりに呟く。


ペリッパー「そりゃあホエさんは凄いポケモンに決まってるじゃナーイですか」


ホエルオー「あまりオレをからかうな……ほれ、目的地が決まったのなら早速出るぞ。目指すは……シバレル島だ!」
 ▼ 83 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/12 20:06:57 ID:Djx59vsY [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
〜三途の川〜


ヒトモシ「……おーい、アンタ……大丈夫っすか?」

ヒトモシの声が、夢の中にいるかのようにぼやけて聞こえる。

グレイシアは今、無意識のうちに涙をポロポロ溢していた。


グレイシア「……」



思えば、バクフーンというポケモンと自分の共通点は多い。

一つは、二匹とも変わった気候の島に住んでいるということ。
一つは、二匹とも島の殆どの住民から変わり者扱いされているということ。

そして、もう一つは……


二匹とも、外の世界に憧れを抱いているということだ……。


初めて会って、会話を交わしたその瞬間から、ある予感はあった。

私たちは、同じなんだ。

私たちは、初めて、お互いのキモチを理解しあえる大切なポケモンに出会えたのかもしれない。


そう思うと、彼女の中である感情がほとばしり始めた。

会いたい。会いたい。あの方に……もう一度会いたい……!!




グレイシア「私……生きたいっ……!!」
 ▼ 84 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/12 20:20:15 ID:Djx59vsY [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ヨノワール「……生きたい、か」


ヨノワールが突然口を開いた。

グレイシアはふと我に返り、涙や鼻水でぐしょぐしょになった顔を前脚で拭いた。


ヨノワール「誰かのために生きたい……そう思う感情こそ、現世に帰るのに最も必要なチケットなのだ。……後は『貴殿の運が良いか、悪いか』に掛かっている」


グレイシアは先程のヨノワールの言葉を思い出した。

========

ヨノワール「貴殿が現世に帰る方法を我々が教えるワケにはいかん。自分で考えろ……ただし、今の貴殿では決してその答えを見つけることは不可能だろうがな」

========

あの言葉の意味が、今ハッキリと分かった。
生きたいと思うキッカケを抱くこと。
それが何よりも重要なのだ……!



ヨノワール「三途の川はまだ暫く続く……。冥府の門に着きあの世に行くのが早いか、貴殿に幸運が訪れるのが早いか……。我々はただ、見守ることにしよう……」
 ▼ 85 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 12:08:17 ID:rjhstCNk [1/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
──
────
──────
────────


バクフーン「フェックシュ!!」


突然、身体の芯まで貫く強烈な冷気が全身を覆った。

毛穴が一つ一つ萎縮し、魂までもが凍えるかのような寒さだ。

肺から熱い呼吸をする度、それは一瞬にして薄い霞となって、やがて消えゆく。
バクフーンにとって、これは初めての経験だった。

ふと、ホエルオーは動きを止め、じっと目を凝らし、そして独り言のように呟いた。


ホエルオー「あぁ、見えてきたな。あれがシバレル島だ……」

ペリッパー「こりゃ……ど、どうしようもなく寒いデースね……。ブルブルブル」


濃い霧の向こうに輪郭だけ見える巨大な島。

そうだ。あそこに『とけないこおり』があるのだ。

バクフーンは、自らの骨を異境の土に埋める覚悟を以て、ゆっくりと口を開いた。

バクフーン「行こう。グレイシアを……絶対に助けるんだ」
 ▼ 86 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 12:29:29 ID:rjhstCNk [2/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
案の定と言うべきか。

シバレル島は、まさに猛吹雪の真っ只中にあった。

ごうごうと唸り轟く大自然の叫喚。

白い砂漠と形容すべき雪原地帯。

空一面を支配する暴風雪は、あらゆる生命の余地を許さず、全てを断罪する程、荒れに荒れていた。

それらを眺めていたペリッパーが、いかにも不安げな表情を浮かべて口を開く。


ペリッパー「ホエさんは、海から出られないので、言うまでもなく島には入れまセーン。それに、ミーもここに留まって、グレイシアさんの看病をしなければなりまセーン……」

ペリッパー「それを踏まえると、島に入れるのはバクフーン。アナータだけになるのデース……」

ホエルオー「……本当にオマエだけで大丈夫か? こんな猛吹雪だ……油断すれば直ぐに命を落とすぞ」


彼らの言葉を聞いても、バクフーンは一切動じなかった。

彼は、悠然と首を縦に振った。


バクフーン「大丈夫です。絶対に、こおりを持ち帰ってきますから」
 ▼ 87 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 12:43:58 ID:rjhstCNk [3/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
旅の途中に寄った港で買った防寒具を装着し、バクフーンはとうとう島の中へ足を踏み入れた。


ホエルオー「絶対に、帰ってこいよ……バクフーン!!」

バクフーン「うん……!」


ホエルオーの激励を背負い、バクフーンは雪の上を歩き始める。

しかし、大自然の洗礼には容赦も無ければ慈悲も無い。

身体の底にまで浸透する冷気が、バクフーンを襲った。




────あぁ、痛い。痛い。痛い。


どうしてこうなってしまったんだろう。
どうしてここまで辛い思いをしなければならないんだろう。

そんなキモチが、心の片隅で体育座りをしている。

しかし、バクフーンはそれを無理矢理振り払うようにして、前進し続けた。



全ては、彼女のために────
 ▼ 88 ンバーン@おとどけもの 17/08/13 12:51:41 ID:Ol6s1oYE NGネーム登録 NGID登録 報告
今一番更新が楽しみなSS
 ▼ 89 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 12:53:15 ID:rjhstCNk [4/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
それから、どれくらい歩いたのだろう。

眼に映るのは雪、雪、雪だけだ。

『とけないこおり』の『と』の文字すら、見える気配はない。


バクフーン「本当に、『とけないこおり』なんて存在するのかよ……」

バクフーン(あぁ、駄目だ。弱気は良くない。良くないぞ……バクフーン!)


ワンフレームの諦観がココロの中を過る。

だが、バクフーンは尚も探索を続けた。

そんな彼の姿を、一匹のポケモンが見つめていたとも知らずに……。


ユキカブリ「あのポケモンは……」
 ▼ 90 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 13:04:31 ID:rjhstCNk [5/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
バクフーン(……クソ、『とけないこおり』なんて全然見つからない。せめて、この島に住んでるポケモンにでも会えれば……)


動きを止めれば、寒さが全身を支配し、細胞を破壊してくる。

炎タイプであるバクフーンでも、この寒気は受け止めがたい環境であった。


バクフーン(誰か、いないのか……。この島に……ポケモンは……)


そんな彼の願いを、神は聞き届けてくれたのだろうか────

バクフーンの目の前に突如、ユキカブリの集団が現れたのである……。


ユキカブリ1「おい、そこのお前。止まれ」

バクフーン「え……」


しかし、その邂逅は、バクフーンにとって毒物にしか為り得ないものであった。


ユキカブリ2「お前、炎ポケモンだな? こんな島にやって来て何の用だ……。炎ポケモンはこの島に来ることは許されないのだ!」

ユキカブリ3「今すぐ、出ていけ!!」


バクフーン「……っ!?」
 ▼ 91 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 13:15:27 ID:rjhstCNk [6/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
バクフーン「ま、待ってください……。僕は、この島に『とけないこおり』を探しに来ていて────」


ユキカブリ3「『とけないこおり』だと!?」

ユキカブリ1「何故『とけないこおり』を欲しがるんだ……?」

ユキカブリ2「理由なんて知るか……。とにかく、アレを外部の者に渡すわけにはいかんだろ!」

ユキカブリ4「なんて怪しいポケモンだ……。しかも憎き炎ポケモンだぞ」


バクフーンの一言を火種にして、ユキカブリ達は爆発したかのように言葉を並べた。

そして、一匹のユキカブリが、バクフーンを軽蔑するかのような口調で言った。


ユキカブリ4「炎ポケモンよ。キサマに『とけないこおり』のヒトカケラすら渡すつもりはない。諦めて即刻島から出ろ。もし、そうしなければ……」


バクフーン「ど、どうしてもっ、『とけないこおり』が要るんだっ……!!」


ユキカブリ1「しつこい奴だなっ! もういい! 全員でこいつを仕留めるぞっ!!」

バクフーン「なっ……!?」



────ゆきなだれ!!!!
 ▼ 92 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 13:35:00 ID:rjhstCNk [7/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
一旦休憩でありんす。
また夜辺り更新できれば幸い。
 ▼ 93 ィアルガ@でかいきんのたま 17/08/13 15:45:23 ID:3NDUoxKg NGネーム登録 NGID登録 m 報告
しえん
 ▼ 94 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 22:30:42 ID:rjhstCNk [8/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
その時、地面がグラグラと揺れ始めた。

と、同時に、ユキカブリ達の足元から雪が一斉に躍り上がる。


大量の積雪は二,三度の弾みを取り、どっと天に伸びれば────次の瞬間には、反乱でも起こすかのようにバクフーンへ降りかかって行った。

その雪崩の凄まじさは、猛吹雪の勢いに勝るとも劣らない。


まるで隕星──まるで津波──


バクフーンは呆気なく、雪の大行進に飲まれてしまったのである……。


バクフーン「……っあ、は、ぁ……ぁ!」


呼吸ができない。

不用意に口を開こうとすれば体内に雪が入ってきてしまう。

そうすれば、間違いなく自分は死んでしまう……。





……どうすれば、いいのだ……。



 ▼ 95 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 22:59:54 ID:rjhstCNk [9/12] NGネーム登録 NGID登録 報告

ふと、頭の中を過ぎ去る複数の記憶。

ああ。

これは所謂、走馬灯というやつなのだろうか。


最初に思い出した記憶は、長老ブーバーンとの思い出だ。

今では口論ばかりのギクシャクした関係になってしまったが、昔は二匹笑い合いながら会話を交わしたこともあったんだっけ。

長老とは喧嘩別れのような最後になってしまったが、彼は自分にとって親と同等、いや、それ以上の存在なのかもしれない。




次に思い出したのは、マグカルゴと過ごした幸せな日々だ。

マグカルゴは自分にとって、初めての友だった。

『寒さに憧れる変わり者』と周りから揶揄され、いつも孤立してた自分に、唯一話しかけてきた信頼できる仲間……。

彼がいなければ、自分の生きる道は、今とは大きく変わっていたのかもしれない。



幾つもの映像と声が、シームレスで流れゆく。

そして、彼の頭の中で最後に浮かんだ記憶は……グレイシアとの、ある会話だった。



==========

バクフーン「ハハハ、グレイシアさんと話すのは楽しいなぁ……。僕の知らない知識がどんどん出てくるんだもの……」


グレイシア「私も貴方と話しててとても楽しいです」ニコッ

グレイシア「貴方みたいなポケモンと、出会えて良かった……///」ボソッ



バクフーン「……今、何か言った?」

グレイシア「あっ、いえ、何でもないんです! 何でも……」


バクフーン「……そういえば、グレイシアさんはどうして船で旅に出たの?」


グレイシア「私が、旅に出た理由ですか……?」

バクフーン「うん」


グレイシア「そうですね、私は……。……未知の世界を見に行きたかったんです。この世には、まだ私の知識にはない驚くべきことがたくさんあります。それを、探しに行きたかったんです……」
 ▼ 96 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 23:12:02 ID:rjhstCNk [10/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
バクフーン「……同じだ」

グレイシア「……え?」

バクフーン「僕も、いつか旅に出たいと思ってる。その理由は、グレイシアさんと同じだよ?」

グレイシア「……!」


バクフーン「未知の世界を知りたい。雪ってどんなものなんだろう。寒さって、どんなものなんだろう。僕も旅に出ることで、いろんな知識を得たいんだ」


グレイシア「クスッ……だったらいつか、一緒にいろんな場所をまわってみませんか? 一匹だけの旅って結構寂しいんです。でも、二匹で旅に出れれば────」


バクフーン「……」


グレイシア「……! あ、あの……変なこと言っちゃいましたね。ご、ごめんなさ────」

バクフーン「いや、確かにそうだね。二匹で旅に出れれば……絶対に楽しいに決まってるよね……!!」


==========




そうだ。

確か、そんな会話をしたはずだ。

……僕は、ここで死んじゃっていいのか?

暢気に走馬灯なんか見てる場合なのか?

違う。

違う。

生きなきゃ……生きなきゃ。

生きて、

彼女と一緒に……旅をするんだ!!
 ▼ 97 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 23:27:48 ID:rjhstCNk [11/12] NGネーム登録 NGID登録 報告



バクフーン「うぉぉぉ……うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


ユキカブリ達「な、何だ!?」


バクフーン「ブラストォ……バァァン!!」



刹那、真っ白な噴煙と水蒸気が天高く吹き上がる。

怒濤の如く林立するは、獣を想起させる炎柱。

バクフーンは今、猛々しく噴火する活火山と化していたのだ。
 ▼ 98 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 23:28:12 ID:rjhstCNk [12/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
今日はここまで
明日の更新で最後かな……?
 ▼ 99 ントラー@めざめいし 17/08/14 10:18:57 ID:oQh2nyW. NGネーム登録 NGID登録 m 報告
熱い 支援
 ▼ 100 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/14 22:38:19 ID:.l.k/4yY [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
ユキカブリ3「ひ、ひぇぇ……」

ユキカブリ1「お、おい、そこ退けっ!」

ユキカブリ2「逃げる気かよテメェッ……!」



突然のバクフーンの反撃により、ユキカブリ達はすっかり統率を乱していた。

シバレル島には有り得ない熱気が、降り積もった雪を悉く溶かし、全ての視界を支配する濃霧を作り出す。

渦巻く焔の勢いは、止まることを知らない────


バクフーン「うぁぁぁ、ぁぁぁぁ……!!」


一方で、バクフーンも崖っぷちの精神状態にあった。

彼の意識は最早、一条の光すら見出だせない暗雲の真っ只中にあったのである。


紅の焔がユキカブリ達を追い払うのが先か、バクフーンが気絶するのが先か。


運命の女神が指し示すその道は────
 ▼ 101 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/14 23:08:20 ID:.l.k/4yY [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告


────その、どちらでもなかった。




?????「……お前ら、この騒ぎは何事だ」


ユキカブリ2「あっ……ユキノオー様っ!?」


戸惑うユキカブリ達の前に現れたのは、彼等を束ねる首長、その名もユキノオーである。

ユキノオーの姿を見た瞬間、それまでバラバラだったユキカブリ達は、棒のように直立不動になった。


ユキカブリ1「ユキノオー様、これはそのっ」

ユキカブリが必死の形相で今の状況を説明しようとする。

しかし彼等の言葉は、ユキノオーの耳には一つとて届いていないようだった。


ユキノオー「……空気がイヤに暑苦しいな。……なるほど、あのバクフーンか」

ユキノオーはそう言うと、一切動揺することなく、バクフーンの方へ近づいた。


ユキノオー「おい、お前」


バクフーン「うぁぁ……」


ユキノオー「……お前は、何故こんな場所に来た? 何が目的だ?」
 ▼ 102 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/14 23:24:10 ID:.l.k/4yY [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
今や、霞のように薄くなった意識の中、ユキノオーの声が遥か遠くから微かに聞こえる。

バクフーンは、最後の力を振り絞るようにして口を開いた。


バクフーン「『とげないごおり』が、欲しい……」

ユキノオー「……」

バクフーン「グレイジアを……大切な彼女を……ま"も"りだいん"だ……!!」

ユキノオー「…………」


暫時の沈黙を経て、ついにバクフーンは倒れた。

全ての体力を使いきった。
これ以上、彼は動けない────


ユキカブリ4「今だっ……あの炎ポケモンを捕まえろっ!!」


ユキノオー「待ちな!!」

ユキカブリ2「えっ?」


ユキノオー「……『とけないこおり』をここに持ってこい。この男の覚悟……しかと受け取った!」
 ▼ 103 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/14 23:40:50 ID:.l.k/4yY [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
〜シバレル島 海岸〜

ペリッパー「バクフーンさん、本当に大丈夫デショーか……」

ホエルオー「分からん…。今はただ、彼の無事を祈るのみだ……」

ペリッパー「……グレイシアさんの容態もここにきて悪化してきマーシた。このままデーハ……」


ホエルオー「……待て、向こうから誰か来るぞ」




ホエルオーの言葉を聞き、ペリッパーが島に目を向けた。

確かに、何者かがこちらに接近してくる。

しかも、複数。

一際巨大な影と、小さな影がいくつも蠢いていたのだ。



ペリッパー「あ、あれは……」

ホエルオー「……!!」


ユキノオー「……そこにいるホエルオーとペリッパー!! お前ら、このバクフーンの知り合いか!?」


巨大な影──もといユキノオーは、意識を失ったバクフーンを背負っている。

それに加え、ユキカブリ達は『とけないこおり』のカケラを大量に抱えていた。



あぁ、バクフーンは『とけないこおり』を持って帰ってきたのだ────

心の底から湧き上がる喜び。

止めどなく溢れる感涙。

ペリッパーとホエルオーは、顔をクシャクシャにしてバクフーンを迎えた。
 ▼ 104 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/14 23:50:59 ID:.l.k/4yY [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
今日中に終わらなかった……。
明日こそ終わらせる!
 ▼ 105 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 08:38:12 ID:YD3lDlKA NGネーム登録 NGID登録 報告
だが、これで全てが丸く収まった訳ではない。

ユキノオーは背負っていたバクフーンを、ホエルオーの上に降ろす。

ペリッパーはバクフーンの状態を見て驚愕した。

全身に酷い凍傷。
体力の著しい低下。

今の彼は、グレイシアに劣らぬほどの重症であった。


ペリッパー「何としてでもこの二匹だけは救わネーバ……!! ミーはなんたって、天才医師なのですから!!」

だが、ペリッパーは諦めない。

バクフーンが見せてくれた奇跡。

それを無下にするようなことをするわけにはいかない────!!


ユキノオー「ユキカブリ、『とけないこおり』を持ってこのペリッパーを手伝ってやれ」

ユキカブリ「りょ、了解ッ!」

ペリッパー「バクフーンさんにまず発熱作用のある漢方薬を飲まさネーバ……、ユキカブリさん! アナータがたには薬の調合を頼みます! 混ぜる分量は────」




ホエルオー「……ユキノオー殿だったか。バクフーンをここまで運んできてくれたこと……感謝する」

ユキノオー「……礼は要らん。私はただ、このバクフーンという男の必死さに、応えてやろうと思っただけだ」
 ▼ 106 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 19:19:04 ID:E9SLFgf. [1/8] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
──
────
──────
────────

〜三途の川〜

ヨノワール「……時間切れ、か」

グレイシア「……」


グレイシア達の目の前に、巨大な黒い門が見える。

あれが、冥府の門。

あそこを潜れば、確実にあの世行き。

もう二度と、現世には戻れない。



「生きたい」
「バクフーンにもう一度会いたい」

ダイヤモンドよりも硬い意志は、確かにグレイシアの中にあったはずだ。

どうしてだ。どうしてだ。

どうして、現実はかくも理想を嘲笑おうとするのだろうか。



俯き絶望に浸るグレイシアの姿を見て、ヨノワールが今までになかった優しい声で彼女に語りかけた。

ヨノワール「さぁ、門の先へ行くぞ。なに、心配するな……あの世もそれなりに良い場所だから────」


小舟は無情にも前進し始める。

……その瞬間だった。




──シア……

────レイシア……!

──────グレイシア!!
 ▼ 107 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 19:49:48 ID:E9SLFgf. [2/8] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
自分の名を呼ぶ声が聞こえる。

懐かしい、優しい、頼もしい、そんな声。

グレイシアは声がする方向を見た。



────あぁ、バクフーンがいる……!



空中に浮かぶバクフーンの姿を見て、グレイシアは思わず泣き叫ぶ。

悲しいから叫んだのではない、嬉しいから叫んだのだ。

記憶の底の底から、じんわりと湧き出る夢のような喜び……。



だが、待て。
彼が今、ここにいる筈がない。

そうだ、あれは幻だ。

バクフーンに会いたいという思いが作り出した幻想に決まっている……!



バクフーン「幻じゃない。僕は、ここにいるよ」

グレイシア「え……」

バクフーンは満面の笑みを浮かべて、グレイシアの前脚を掴んだ。

すると不思議なことに、グレイシアの身体もまた、バクフーンと同じように空へ浮かび出したのである。


グレイシア(……バクフーンさん)

前脚にじわじわ伝わる暖かな感触。

とても、心地良い。



バクフーン「元の世界へ戻ったら、一緒に旅をしよう。一緒にいろんなものを見に行こう。そうだ、グレイシアさんの故郷もいつか見てみたいな」

バクフーン「やりたいことは……たくさんあるんだ」



バクフーン「じゃあ、帰ろ?」ニコッ

グレイシア「はい……」ニコッ
 ▼ 108 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 19:58:13 ID:E9SLFgf. [3/8] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
バクフーンとグレイシアは、徐々に天へと昇り──やがて、霧となって消えた。

ヨノワールとヒトモシはその光景を、ただ呆然と見つめていた。


ヒトモシ「行っちゃいましたねぇ……」

ヨノワール「……あぁ、そうだな」


ヒトモシ「あの世に行く直前の魂は……いつも嘆き悲しみ、それは見てられないもんがありましたけど……」

ヒトモシ「たまにはこういう奇跡も起きるものなんスねぇ……」




ヨノワール「……」

ヒトモシ「……ヨノワールさん、もしかして笑ってます?」

ヨノワール「……気のせいだろ」



ヨノワール「さぁ、仕事を続けるぞヒトモシ。迷子の魂は、まだまだたくさんあるんだ……」
 ▼ 109 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 20:11:33 ID:E9SLFgf. [4/8] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
……眩しい。

眼を閉じていても分かる。

太陽から放たれる限りない光。


私は、そんな光を感じながら、久しぶりに目覚めた。



バクフーン「……おはよう、グレイシアさん」

私の前脚をギュッと強く握るバクフーンさんが、すぐ横にいる。

グレイシア「ただいまです……バクフーンさん」



ペリッパー「おぉ、グレイシアさん、ようやく目を覚ましたんデースね! 良かっ────」

ホエルオー「ペリッパー。今は彼女と彼、二匹だけの時間だ。……今だけは口を挟んじゃいかん」

ペリッパー「……!」




バクフーンとグレイシア。

二匹はお互いそれ以上何も言わず、ただただ見つめ合い────そして、静かに額を合わせた。

伝わる気持ちの良い冷たさ。
伝わる気持ちの良い暖かさ。


バクフーンは眼を瞑り、言った。


バクフーン「じゃあ、これから何処に行こうか────」
 ▼ 110 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 20:33:20 ID:E9SLFgf. [5/8] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
ー10年後ー

〜シュンカシュートウ島〜


イーブイ「わぁぁ……雪だぁ!」

バクフーン「こらこら、イーブイ! 無闇に外に出ちゃいかん!」

イーブイ「うひゃあ、つ、冷たいっ」

グレイシア「もう……イーブイったら、おてんばなんだから」

バクフーン「しかし、もう冬の季節か。時が過ぎるのは早いなぁ……」



マグカルゴ「おーい! バク君!!」

イーブイ「あ、マグカルゴおじちゃん!」

マグカルゴ「おー、元気だったかイーブイ?」

ブーバーン「イーブイちゃん! ブーバーンお爺ちゃまもいましゅよー♪」

バクフーン「何だ、みんな来てたんだ」

ブーバーン「何だ? 来ちゃ悪いか?」

バクフーン「フフ、そうは言わないけどさ」



ブーバーン「数年前……お前が【楽園】を見つけたと言って、アツイアツイアイランドに帰って来た時は驚いたが……。確かにこの島は素晴らしいところだ」

マグカルゴ「ホエルオーさんとペリッパーさんにも手伝ってもらって、島のみんながこの島に移住したのがまだ昨日のことのようだよ」


ブーバーン「しかし本当に驚いたのは、バクフーンがこんなベッピンのグレイシアと子供をこさえていたという事実だ……! 全く、この世は何が起きるか分かったもんじゃないな……」

グレイシア「……えへへ///」

バクフーン「ハハハハ……」
 ▼ 111 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 20:54:06 ID:E9SLFgf. [6/8] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
今、僕たちは「シュンカシュウートウ島」という場所に住んでいる。

長い旅を経て、ようやっと見つけた、僕たちにとって理想郷と呼べる地だ。



────この島には、四季と呼ばれる現象がある。


四季の最大の特徴と言えば、何と言っても一年のうちに【寒い日】と【暑い日】の両方が存在するということ。


暑い日が終わると寒い日が訪れ、
寒い日が終わると暑い日が訪れる。


氷ポケモンと炎ポケモンが共に住むことが出来るそこは、まさに【楽園】だったのだ。




当初、アツイアツイアイランドからの移住の際、

シュンカシュートウ島には【寒い日】があるということに対し、渋い顔を見せた炎ポケモンもいたが、今では不満を言う者は一匹もいない。

それに加え、氷ポケモンと共同生活を営むうちに、彼等の心に根付く氷ポケモンへの偏見も見事に消え去ったのだ。





僕は気づいた。

そうか、未知とは恐怖なのだと。

アツイアツイアイランドの住民は、氷ポケモンのことを、寒さのことを何も知らなかった。

だから彼等は、それらが怖くて仕方がなかったのだ。






シュンカシュートウ島では今日も、多種多様なタイプのポケモンが、助け合いながら暮らしを営んでいる。


暑い日だけの生活なんてつまらない。

寒い日だけの生活なんてつまらない。


その両方があるからこそ、僕たちは生きることの輝きを知ることが出来るのだ────
 ▼ 112 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 20:54:29 ID:E9SLFgf. [7/8] NGネーム登録 NGID登録 m 報告


お し ま い

 ▼ 113 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 21:01:58 ID:E9SLFgf. [8/8] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
以上で物語は終わりです。

この作品は暑い日/寒い日の企画に提出されます。

今企画には、私の作品の他にもたくさんの素晴らしい作品が提出されていますので、下のURLから読んでいただければ幸いでございます。

http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=633896#top
 ▼ 114 ッサム@おうごんのみ 17/08/15 21:02:23 ID:573cRD66 NGネーム登録 NGID登録 m 報告
気持ちよく読めた
乙!
 ▼ 115 ネコ@はかせのてがみ 17/08/15 21:15:42 ID:9mEjR4c6 NGネーム登録 NGID登録 報告
オチが綺麗……
乙です
 ▼ 116 ャワーズ@ナモのみ 17/08/15 21:45:10 ID:H/k49V2U NGネーム登録 NGID登録 報告
素晴らしかった……
乙です
 ▼ 117 ジョッチ@しめったいわ 17/08/15 22:04:37 ID:T.VqG116 NGネーム登録 NGID登録 m 報告
うおおおお
乙でした!
 ▼ 118 ーシャン@エスパーZ 17/08/15 22:07:53 ID:bZ4otGnM NGネーム登録 NGID登録 報告
乙です
すんごく綺麗なお話でした
 ▼ 119 黒の災い◆N/pP1Xva6I 17/08/16 11:37:03 ID:KSGCBBxQ NGネーム登録 NGID登録 報告
とても良かったです!
乙です。
 ▼ 120 ッツー@ひこうのジュエル 17/08/20 08:36:11 ID:DBF0dmms NGネーム登録 NGID登録 報告
いまさらだけど読みました、良かったです
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