レッド「メガシンカ……か……」ミヅキ「余っちゃった」:ポケモンBBS(掲示板) レッド「メガシンカ……か……」ミヅキ「余っちゃった」:ポケモンBBS

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SS

レッド「メガシンカ……か……」ミヅキ「余っちゃった」

 ▼ 393 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:15:02 ID:pGwM5c0U [1/24] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「……グォォォォォァァァァァァーーーーーッ!!」


――“原点にして頂点”たる、“所以”!

「いけぇっ! リザードンッ!」


「《ブ ラ ス ト バ ー ン》ッ!!」


「グガォォォォォオオオオオーーッ!!」


熾せ。

無限に超越せしその希望を。

届け。

その竜が少年と共に生きてきた証は、今ここに……!

「……リザァァァッ!!」

カルムのリザードンは、受け取る。

そして、融合させる。

蜜柑色のそのオーラを、自身が纏う――絶海の如き蒼の闘気と。

一対の豪の竜が創造したその合体奥義に、名はいらない。

その業に求められたるは、敵を撃滅する力だけ。

「……リザォォォォォォォァァァアアアッ!!」

XとYの辿る運命は、交わりて、今、終焉の“Z”へと到達する。

……いや。

もう、彼らが止まれる場所は無い。

彼らは既に、ブレーキペダルを蹴破ってしまっているのだから。

故に、これから先は突き抜けるのみ。

その飛躍に、カンスト値は存在しない。

“Z”よりも、遥か壮大に煌めいて、世界を熱く照らせ。

“Mega Evolution”!

「――リザァァァァァァァッ!!」

「――グォォォゥゥゥゥゥッ!!」


“Wリザードン”の絶技は、閃となって迸る……!
 ▼ 394 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:15:42 ID:pGwM5c0U [2/24] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「……ジュナッ!?」

《ブラストバーン》の力を受け継いだ《げきりん》は、やがてジュナイパーの《シャドーアローズストライク》を押し返していく。

暗夜の霊力に満ちしその黒矢でも、その友情が成した神髄には劣勢を強いられた。

突き上げられる黒竜の拳。

彼の腕から、凄烈なるドラゴンのエナジーが焔となって溢れ出る。

その緋炎は龍の頭を形作り、大きな顎を存分に開いて、ジュナイパーを矢ごと覆い隠した。

「ジュナッ……ジュナァァァァッ!!」

ジュナイパーは、眼前に迫り来るその巨獣にも臆せず、懸命にZパワーを振り絞る。

だが、己が矢に宿されている漆黒のオーラをも、その化身竜が極限の爆光によってかき消していく様を目の当たりにしたことで、自然とジュナイパーは悟っていくのだった。

「……ジュナァァァァッ……!!」

……『勝てない』と。

「ジュナァァッ!!」

認めたくなかった。

自分は、アローラ最強のあの少女のポケモンなのだ。

誰にも負けるハズなんてない。

そんなこと、あっていいハズが無い。

だが……。

「……ジュナァ……!」

……認めざるを、えない。

勝つのは……この二匹だ。

「リザァァッ!!」

「グガォォゥッ!!」

YとXの咆声が轟く。

瞬間、緋と蒼の双焔を燦々と煌めかせし巨竜が、ついに、暗影の狙撃手を……。


「……ジュナァァァァァァァアアアッ!!?」


……食らった!

少女の彼を呼ぶ叫び声も、彼があげた凄惨なる悲鳴と響き渡る空間を同じくしては、虚しく、そして儚く弾け散ってしまう。

竜に狩られた狩人は、彼方に吹き飛び、その先にあった壁に衝突。

石膏が割れる音がゴシャッと鳴り轟く。
 ▼ 395 ガバシャーモ@かえんだま 18/10/04 01:16:16 ID:dlYUhB1k NGネーム登録 NGID登録 m 報告
は?
 ▼ 396 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:16:23 ID:pGwM5c0U [3/24] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
吹きすさぶ砂煙。

積み上がった瓦礫。

暫く静寂と共に時間が流れ、ジュナイパーが墜落した場所から砂煙が消え去ったが……彼がそこから再び姿を現すことは無かった。

少女――ミヅキは、彼を呼びながらそこまで駆け寄る。

そして、その細腕で瓦礫を必死に持ち上げようとするが……中々上がらない。

するとそこへ、彼女のパートナーであるゴールドが手を貸した。

ミヅキとゴールドは二人で瓦礫の山をどかしていき、ジュナイパーの姿を確認しようとする。

そして……。

……ようやく見つけ出せた彼は、しかし……目を回して気絶してしまっていた。

だが、ミヅキは悲しむでも悔しがるでもなく、ただ一つ、ふっと笑うのである。

それは、自らの敗北を認めて込み上がったモノなのか、それとも、ジュナイパーが生きていたことへの安堵の表れなのか。

ゴールドにはどちらがミヅキの真意なのかは分からなかったが……そんな彼女の微笑みを見た瞬間、彼もつられて笑みを浮かべるのであった。

「ジュナイパー、戦闘不能!」

「よって、優勝は……」


「カロス地方代表――カルム&レッド!!」


「ウォォォォォォォォォォッ!!」

審判の判決と、祝勝の想いを雄叫ぶ観客一同。

『凄い』、『素晴らしい』、『歴史に残る』……などなど、到底羅列し切れない程のありとあらゆる感嘆の声が、この祭典に熱狂の渦を巻き起こす。

各地方の傑物が集って、世界最強の座を争うこの激闘――《ポケモン・ワールド・トーナメント》。

その幕が今、閉じられる。

この時、勝者の栄冠を手にしていたのは……。

「……やったな、レッド」

「ああ……!」

……この、カロスの二大英雄――レッドとカルムであった!

「……リザァッ」

「グォォッ!」

赤きリザードンと黒きリザードンは、互いの健闘を認め合い、握り拳をぶつけ合って、この感無量の気分を共有する。

双方ともに、肉体は既に切り傷や打撲だらけという満身創痍の状態。

だが、勝利を握り締めるこの感情の昂ぶりは、いかに全身が苦痛を訴えていていようとも鳴り止む気配を見せない。

そして何より、彼ら自身がまだ、この感動を手放すことを心から惜しんでいる。
 ▼ 397 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:16:41 ID:pGwM5c0U [4/24] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
故に彼らは、凱歌の代わりに、叫んだ。

「……リザァァァァァァッ!!」

「グォォォォゥゥゥッ!!」

その一瞬で手に入れた喜びの……全てを、ありったけ。

「……負けたよ。レッドさん、カルムさん」

……そんな勝者たちのもとへ、惜しくも負けを喫してしまったミヅキとゴールドが、レッド達を改めて祝福する為に歩み寄る。

「本当に二人共、強かったよ〜」

「ていうか強過ぎですよ。あのミヅキさんのZワザを打ち負かすなんて……」

ミヅキもゴールドも、カロス代表コンビの真骨頂の前に倒れた者。

それ故に、その彼らの力を認めると同時に、少し妬いてもいたが。

「……PWT優勝、おめでとっ!」

「おめでとうございます。僕達の……負けです」

……その言葉だけは、しっかりと、その口で伝えたのであった。

「……ありがとう。ミヅキさん、ゴールド君」

「ピッカァ!」

「ふっ……お前達も中々だったぞ」

「……なんてな。ありがとさん」

その彼らの言葉を素直に受け取るレッドと、少し変化球で返してきたカルム。

それぞれ紡ぎ方こそ違ったが、その感謝する想いの形は同じであった。

そして……。

「リザッ!」

「グォォッ!」

二人の為に最後まで戦い抜いた、二匹の竜が、今……それぞれの主のもとへと帰還する。

この時、レッドとカルムの言葉は……。

「……おかえり」


「リザードン」


……見事に、重なったのだった。
 ▼ 398 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:19:37 ID:pGwM5c0U [5/24] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
次回投稿分で、最終回を迎えたいと思います。

出来れば、最後までお付き合いの方をしていただければ。

どうか、よろしくお願い致します。
 ▼ 399 ェルダー@ポケじゃらし 18/10/04 01:29:49 ID:IjpgQiT. NGネーム登録 NGID登録 報告
おつ!
 ▼ 400 ワンテ@レッドカード 18/10/04 06:14:42 ID:QBVsTti2 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援! 頑張ってね!
 ▼ 401 ルチャイ@キズぐすり 18/10/04 07:22:19 ID:CzJY61A2 NGネーム登録 NGID登録 報告
やっべぇ・・・
最後の支援!
 ▼ 402 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:35:16 ID:pGwM5c0U [6/24] NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
***

……PWTの試合が全てのプログラムを終え、カロス代表が頂点に立った表彰式も無事に閉幕。

そしてスタジアムを後にしたレッド達を、選手用出入り口前で最初に待ち受けていたのは、生中継であの試合を放映していたテレビ番組の報道陣であった。

レッドとカルムの優勝を祝う言葉を挨拶代わりに述べたのち、すぐさま彼らは、やれ試合後の感想や、やれ試合中に意識したことなど、多種多様の質問を、いっぺんに、ひっきりなしに、二人にぶつけまくる。

レッドはそんな報道陣の少し強引な質問攻めに、若干辟易していたが、カルムは手慣れた雰囲気でレッドの分も全て答えてみせた。

「俺達は、ポケモン達の力を引き出したに過ぎません」

「本当に頑張っていたのは、アイツらです。褒めるなら……ポケモン達にしてください」

ドヤ顔でキザな台詞を言い放つカルムに、レッドは『おおっ』と、憧憬の念をほんのり抱く。

確かにカルムの言う通りだと、レッドは思った。

自分達がこうして頂に上り詰めることができたのも、ポケモン達が奮闘を惜しまなかったお陰だ。

本当に称えられるべきは彼らのハズ……だと。

そしてレッドは、ボールに眠っている自分の仲間達を想って、瞬間……意を決する。

「……来てくれ、皆!」

レッドのその行動は、報道陣は勿論、あのカルムの度肝すらも……抜いてみせた。

「グォォッ!」

「フシャァッ!」

「ガメェッ!」

「メレッ!」

「ふぃぉ〜!」

レッドが、この大会でこれまで使ってきたポケモン達――リザードン、フシギバナ、カメックス、メレシー、エーフィ。

皆、レッドの手によってモンスターボールから解き放たれた!

「ピッカァ!」

もともとボールからは出ていて、レッドの方に乗っかっているピカチュウも、自分もいるぞとばかりに、元気一杯に鳴いてみせる。

レッドは言った。

このポケモン達全員が、一丸となって、優勝という一つの目標に向かって走り抜いたからこそ、今の自分達があるのだと。

そのことをより力強く伝える為に、レッドはいささかこんなあまりに熱意のあり過ぎるやり方を取ってしまったが……逆に一周回って、記者たちにはウケたのであった。

また、カルムもカルムで、レッドらしいなとは思いつつ、密かにレッドに脱帽させられていた。

こんなにもポケモンへの愛に溢れている奴は、そうはいない。

そんなコイツと共に戦い、そんなコイツの隣で、二人で夢見た景色をこうして眺めることが叶った。
 ▼ 403 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:35:41 ID:pGwM5c0U [7/24] NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
そしてそれは、とても光栄なことなのだ。

カルムは、嘘偽りない自らの心で、そう思う。

ここまで純粋に誰かを尊敬する想いに駆られたのも、いつぶりだろう。

……カルムはここで、一つの“願望”を胸に抱く。

コイツと――レッドと、もっと一緒に走れたら。

……と。

「……レッド」

「ここは俺に任せて、お前はコルニやグリーンの所へ行ってやれ」

そんなことを思いつつ、カルムはレッドのことを考えて、耳打ちでそう彼に伝える。

『良いの?』と問いかけるかのような彼の眼差しを受け、カルムは……ふっと笑ってみせた。

『任せろ』と。

……レッドはカルムに、頷きによって礼を言い、一旦ピカチュウ以外のポケモン達を全てボールの中に戻すと、刹那、報道陣の間を縫い、仲間達の待つ場所へと駆け抜ける。

彼の突然の脱走に、マスコミ達は慌てふためくも、そんな彼らの注目を、この男……カルムは、一瞬にして全て掻っ攫うのであった。

「いやぁ、すみません! 彼も多忙な身の上でして」

「でも俺は暇してるんで、“朝まで”……お付き合いしますよ?」

……そしてこの発言の後、カルムは後悔することになる。

『朝まで』なんて言ってしまったことを、心底……。

……とまあ、それはさておき。

レッドはそんなカルムの尊い犠牲のお陰で、ようやく会うことができる。

彼がトレーナーになってから、ずっとその腕を競い合っている、無二のライバルにして親友の――グリーンと。

彼がカロス地方に来てから、ずっと互いに惹かれ合い、恋い焦がれ、今もその愛しい感情を共に抱き続けている少女――コルニに。
 ▼ 404 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:36:34 ID:pGwM5c0U [8/24] NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
***

……石畳の上で足音を踏み鳴らし、風の如く人々の間を縫って、少年――レッドは、ミアレの街を駆け抜ける。

彼の視界の右手にある、スタジアムの一般用出入り口……そこを目指して。

自らの心が、仲間達と今すぐにでも会いたがっているのを、レッドは走りながら感じる。

この、どうしようもなく湧き上がってくる感情を、誰よりも早く……彼女達に伝えたい。

今、レッドの胸の内を熱くするのは、そんな、どこまでも純粋な願いばかりであった。

そしてついに、レッドの瞳に……その二人が映る。

「へっ、ようやく来やがったか」

「お帰りー! レッドぉっ!」

緑髪のツンツンヘアーを格好つけのように風に靡かせながら、腕を組んで柱に寄りかかっていた――グリーン。

金髪のトリプルテールをわさわさと揺らしながら、レッドの胸に全力で飛び込んで抱きつき、屈託なきその笑顔を彼に見せた――コルニ。

レッドは、このあり得ない程の幸せを噛み締めながら、彼らのもとで凱旋を果たしたのであった。

レッドが、コルニのその髪を優しく撫でる。

そんな時、ふと、彼の中で懐かしく思えたことがあった。

それは、レッドがコルニにプロポーズをしたあの夜のこと。

互いに恋慕を確かめ合った二人が交わした抱擁……その瞬間、レッドはコルニを思う存分抱き締め、彼の人生史上無二の喜びを見に染みて実感した。

あの時はそれがレッドにとって貴重だったからこそ、彼の感情は最大級の高ぶりを極めたが、今ではこうして当たり前のように、レッドは彼女と気兼ねなく触れ合えている。

そう思うとレッドは、しかし同時にこれに“慣れていくこと”への恐怖を覚えていった。

もしこのやり取りが日常的なモノになっていった場合、もしかしたら今感じている感動でさえ、自分にとって当然のことになって、次第に感謝すらしなくなってしまうのではないのだろうか……と。

するとレッドは途端に不安になってきて、やがてはコルニを抱くその腕が若干強く、そして……。

(……へっ!?)

……積極的になっていく。

(レ、レッド!? そんな、こんな人が大勢いる中でそれ以上は、さささ、流石に……っ!?)

(あ、あぁっ……ダメぇっ!?)

レッドは、コルニの腰に本格的に腕を回して、ぎゅうっと、これ以上ないくらいに彼女と体を密着させた。

当のコルニは、思考こそ流石にこれ以上は公衆の面前ではマズいと必死に彼女の理性に呼びかけていたものの……。
 ▼ 405 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:37:02 ID:pGwM5c0U [9/24] NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
(……レッドぉ……っ)

……最終的には、堕ちてしまった。

……しかし、そこへ。

彼らのその度を超えたイチャつきに、天誅が降りかかる。

「いい加減に……」


「……しろぉっ!」


グリーンの《からてチョップ》!

「いっ!?」

レッドの頭に効果は抜群だ!

「あっ……」

会心の一撃がグリーンの手によって叩き込まれたことで、コルニはようやくレッドと離れる。

彼女はあろうことかこの展開にガッカリしていたが、倫理上はこれで良かったことは言うまでもない。

「おいレッドてめー、この公衆の面前で何をおっ始めようとしてやがった?」

「ち、違うんだグリーン……気づいたらその、手が勝手に伸びていて」

「それで許されると思ってんならお前の脳内はキレイハナだなぁオイ。 いつからそんな思春期真っ盛りの男子になったんだ? えぇ?」

……結局レッドは、言い返す言葉も見つけられないまま、グリーンの説教を甘んじて受け入れる。

(……レッドも、結構男の子なんだ……)

そしてコルニは、レッドのそんな一面を目の当たりにして、驚きこそしたものの、それによって今までよりも更に胸をときめかせてしまっていた。

人より消極的だったハズのレッドが、自分をこんなにも求めてくれているなんて……と。

「……えへへ」

コルニは嬉しさのあまり、だらしなくも可愛げのある声を漏らす。

そんな彼女をふと見て、レッドもまた赤面しつつ、自身の中にある彼女への愛を再確認するのであった。

やがて日は、地平線に沈み、今度は月がその顔を覗かせる。

これから訪れる夜に向けて、彼ら三人は、今日という日の全てを……悔いを残すことなく語り尽くすと、決めた。
 ▼ 406 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:37:31 ID:pGwM5c0U [10/24] NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
***

……ミアレシティ、夜の章。

月明かりとビルの電灯、並びに街灯、それぞれ個性豊かな光が、各々の色合いで、世界最高峰の決戦の終結を迎えたこの街を彩る。

行き交う人々の談笑は、PWTで得た未だ冷めない熱狂を帯びていて、放つ言葉の一つ一つが爆発的な感動に溢れていた。

そんな喧騒で満たされた都市で、この二人――ミヅキとゴールド、そしてもう一匹――オーダイルは、それぞれ横に並んで歩みを進めていたのであった。

「ゴー君っ! 今夜は寝かせないよっ!」

「へっ?」

「朝まで私とお話ししたり、遊んだりしよう!」

「いや、流石にキツいですってそれは」

ミヅキのその無茶じみた提案に、ゴールドは引き笑いを浮かべながら拒否する意思を彼女に示す。

『えーっ!?』とぶうたれたミヅキ。しかしゴールドは『流石に朝までは……』と、夜通し遊び倒すことへの不安の念を零した。

どこかのカロスチャンピオンと違って、ゴールドは賢明な判断をする。しかし頬を膨らませまくるミヅキは、この程度では引き下がらなかった。

何故なら……。

「……私、明日になったらもう帰っちゃうんだよ……?」

……ゴールドとミヅキがいれるのは、今日が最後であるからだ。

「……あっ」

ゴールドはここでようやく、ミヅキの真意を悟る。

ミヅキは、残りの時間を、出来るだけ長くゴールドと過ごしたいのだ。

ここまで彼女の意思表示がストレートなモノだと、自惚れなど滅多にしない――悪く言ってみれば鈍感なゴールドですら、彼女の好意に気づいてしまう。

「ね? だから……」

「……私と一緒に、いて?」

上目遣い。

ゴールドには効果抜群。

これが一昔前のギャグマンガなら、ゴールドは今頃、ときめくあまり鼻血を出していた頃だろう。

だが勿論、実際は興奮したからといって鼻からブラッディ・ビームは出ない訳で。

しかし、この制御しようのない赤面だけは、恋愛漫画の如くカァァァッと湧き上がってきてしまう。

「オダァ」

オーダイルはそんなゴールドを見て、まるで息子の成長を見守る父親のような、そんなどこか達観した笑みを浮かべている。
 ▼ 407 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:38:24 ID:pGwM5c0U [11/24] NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
「……あ、ああ、朝までは……無しです」

「真面目かっ!」

それでもそこだけは譲らなかったゴールドに、ついにあのミヅキが珍しくツッコミに回った。

よく言えば真面目君だが、悪く言えばヘタレ野郎。

そう、ゴールドはこういったコトに関して言えばかなり奥手、かつ免疫なし。

致命的なまでに舞い上がりすぎてしまうのである。

「……好きって言ったじゃんっ」

それは、ミヅキの小声の抵抗。

「へっ?」

だが、それはゴールドには届かない。

「オダァ……」

『鈍感なヤツめ……』、そんなオーダイルの声が聞こえてくるかのよう。

「……何でもないっ」

「分かったよゴー君、じゃあ、日が変わるまでなら良い?」

……まあ、そんな真面目な所がゴールドの良いところでもある。

ミヅキは渋々自分にそう言い聞かせ、彼の意思を飲み込んだ。

「……分かりました!」

「夜通しとまでは行きませんが、今夜はミヅキさんに付き合いますよっ!」

ゴールドもそれならと、今宵はミヅキとの時間をとことん楽しみ尽くすと決めた。

「付き合っ……!」

ミヅキはそのワードに若干……いや、大いに敏感に反応しつつも。

「……う、うんっ!」

「ありがと、ゴー君っ!」

この少年――ゴールドに赤面させられながら……破顔、そして共に夜の街を駆けるのであった。

(……やっぱり物足りないよ、ゴー君)

(私はもっと、君と……)

……この後に続く言葉は、言うことなおろか、思うことすら中々できないけれど。

確かなる願望は、今、ミヅキの胸の中にある。

この気持ちに、嘘はつけない。
 ▼ 408 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:38:47 ID:pGwM5c0U [12/24] NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
「……ゴー君は明日から、カロス地方を旅して回るんだよね」

「はい! 僕も早くレッドさんやカルムさんみたく、メガシンカを手にいれたいんです!」


「……そっか」


……ミヅキはこの瞬間、決意した。

例えこの決断が、誰に迷惑をかけることになっても。

例え、“初代アローラチャンピオン”という肩書きを捨ててでも。

ミヅキは、そうすると誓った。

この時、月はそんな恋い焦がれる一人の少女を眼下に置いて、微笑むかのように燐光で彼女を照らす。

明日、彼女は……アローラには戻らない。
 ▼ 409 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:39:34 ID:pGwM5c0U [13/24] NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
***

……暁に煌めくミアレの街並み。

その朝は人々に営みの始まりを告げ、既に起きている者も、未だに寝ている者も、それぞれの時間が動き出す。

そして、彼ら――レッド、コルニ、グリーンの三人もまた、それぞれがそんな時の旅人の一員であった。

レッドとカルムが世界一のコンビとなりはや一夜が明け、いよいよ、レッド達はカロスでの旅を再開する。

ミアレシティはノースサイドストリート、14番道路へと続くゲート前にて、三人は並んで、ミアレシティを後にする前に今一度、この街の風景を見納めるべく振り返って顔を上げていた。

最強に返り咲くという夢は叶えたレッドだったが、それでもまだまだやりたいことは残っている。

一つ、カロス地方のポケモンジムを全て制覇すること。

二つ、チャンピオン――カルムに、今度こそ勝つこと。

三つ、そして……《Zワザ》という未知の次元を探求すること。

その他盛りだくさん。

レッドは世界に触れ、改めてシロガネ山に引きこもっていた頃の自分を回想し、恥じる。

世界はこんなにも広いのに、何故自分はあそこで終わろうとしてしまったのだろう……と。

かけがえのない仲間も、誰よりも大切なあの子も、思えばあの時、親友であるグリーンが自分の手を引っ張ってくれなければ……手に入らなかったモノだ。

レッドはこの時、グリーンの姿を一瞥して、『ありがとう』と胸中で零す。

自分をここまで連れ出してくれて……と。

……さあ、行こう。

レッドは二人に、そう呼びかける。

二人は頷き、呼応し、彼の後を追った……。

……と、その時。

彼らを呼び止める者が、一人。

「待たれよ、お三方」

妙に畏まった口調、しかしその声色は凄く記憶に新しい。

「……カルム!?」

レッドは彼の名を呼ぶ。

その青年――カルムは、まるでレッド達がここを通ることを看破していたかの如く、この場所で彼らを待ち伏せしていた。

ちなみに余談だが、その時、彼は滅茶苦茶眠たそうな顔を浮かべていた。

これは昨晩、レッドと別れた後、報道陣に願われるがままに一晩中密着特番の撮影に付き合わされていた為である。

『朝まで』などと記者たちに豪語したカルムに降りかかったのは、純然たる夜通しという名の悪夢なのであった。
 ▼ 410 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:40:37 ID:pGwM5c0U [14/24] NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
とまあそれはさておき、『どうしてここに』と、レッドは彼に説明を求める。

と言うのも彼らは、ここに来る前、カルムに一言挨拶してからミアレシティを発とうとして、彼が経営するメンズファッションのブティックへと足を運んだのだが、その時店員の青年から『店長は旅に出た』と、あまりに突然過ぎる通達を受けていた。

彼が旅に出る理由も、そして何故彼が自分達に何も伝えないまま旅立ってしまったのかも分からずじまいのまま、仕方なく街を出ようとしていたレッド達が、その直前で当の彼と鉢合わせしたのだから、そりゃあ驚くに決まっている。

しかしカルムは、そんな驚くレッド達の理解を待つことなく、自身の用件を単刀直入に述べるのであった。

「……PWTでレッドとコンビを組んでから、俺もレッドと旅をしたくなってな」

「どの道、新たなメンズファッションの着想を得る為に、どこかへ旅立とうと思っていたところだった」

「だからどうせなら、お前達と一緒に……行かせてくれないか?」

……それは、カルムからの急過ぎる願いであった。

レッドは未だ困惑したままで、勿論断る理由なんか無いけれど……聞きたいことが山程あり過ぎるせいで、すぐにこれに対する答えを出してしまって良いのか悩む。

……取り敢えず、ブティックの方には既に許可を貰っているのは分かる。

だが、彼はただのブティックの店長ではない。彼は――カルムは、カロス地方にたった一人しかいないチャンピオンなのだ。

挑戦者が来れば、それを迎えてやらねばならないだろう。その時はどうするのか。レッドはカルムに尋ねた。

「前に言ったハズだぜ? 困った時はズミさんの出番よ」

「この《ホロキャスター》さえあれぱ、いつでも挑戦者出現の通知をズミさんから受け取れるようになっている」

「その時だけは一時離脱するが、終わったらすぐに合流するから」

「な? これなら問題ないだろ」

カルムは、《ホロキャスター》――立体映像を受信して映し出すことのできる通信機――を取り出して、これを利用してチャンピオンとしての責務もちゃんと果たすと明言する。

このカルムの説明に対するレッドの率直な感想は、こうだった。

『自由すぎる』。

そして、彼の話を聞きながら、コルニもコルニで何となく理解した。

ズミがカルムに対し若干当たりを強くしている、その理由を。

ズミはズミなりに、こんなカルムの自由奔放ぶりに振り回されてきたのだ。

今なら分かる。

ズミが今まで、如何に彼によって苦悩を強いられてきたのかを。

と、そんなコルニのズミに対する同情の念など露知らず、カルムは熱意を込め、改めてレッドに願う。

『俺を仲間に入れてくれ』、と。

……最早、これ以上の迷いは不要だと、レッドは思った。

そしてレッドは次の瞬間、ふっと笑うと……。

「……勿論」

「歓迎するよ、カルム」

……カルムを、受け入れたのであった。
 ▼ 411 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:41:29 ID:pGwM5c0U [15/24] NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
「へっ、全く。随分と自分勝手なチャンピオン様だなぁ?」

「それ、グリーンが言えたことぉ?」

「ギクッ」

カルムが仲間に加入してそうそう、グリーンは棘のある台詞で彼を突っついたが……瞬間、その刃をコルニによってくじかれてしまう。

カルムが『何のことだ?』と首をかしげていると、コルニが事の顛末を、グリーンの必死の制止をガン無視して彼に教えた。

それは昨日行われた――グリーンとワタルの、こんな電話のやり取りであった。

*

『君はまだジムを放っておく気なのか!? グリーン君っ!』

『何度も言わせるなこのドラゴンオタクがぁ! 俺は当分あそこには戻らねーよ!』

『いつまでもそうやって子供のままでいられると思うなよ!? さあ、俺と一緒にカントーに戻るんだ!』

『実際、俺はまだ未成年だっつの! 人生は一度きりしかないんだからよ、俺様の好きにさせやがれってんだ!』

『この……分からず屋がっ!』

『分からず屋でケッコー! あばよ!』

『あ、待てグリーン君! おい、グリーン!』

*

ワタルは、最終的には呼び捨てでグリーンを説得しようとしたが、彼の言葉はいずれもグリーンには届かなかった。

やがてワタルはあの後、諦めてカントーに戻ったようだが……今頃グリーンの処置がどのようなモノになっているのかは、想像はつくがしたくない。

「ほお……つまりグリーンは、晴れて無職になった分際でこの俺を煽ったと?」

「まだ無職になったと決まった訳じゃねえし!」

「いやそれガチの解雇パターンだからな? 俺でさえ、同じような感じで迫ってきたズミにそんなことを言った覚えは無いぞ」

ズミに同じように迫られたことがあるのか……と、レッドは密かに思う。

全く、つくづく自由なトレーナー達だ。

周りの迷惑も省みず、自分がやりたいままに自分の人生を謳歌し尽くす。

だが、そんな彼らの心をここまで吸い寄せてしまっているのは、紛れもなくこの少年――レッドなのだ。

「……もう」

「仕方ないな、二人共」

「ホントにねっ」

呆れるあまり、半笑いを浮かべながらため息をつくレッド。

コルニもそんな彼に同調する。

……尤も、そんな彼女もまた、レッドに惹かれ、自分の受け持つジムを祖父に任せている身の上なので、グリーンやカルムと結局同類な訳なのだが。
 ▼ 412 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:42:00 ID:pGwM5c0U [16/24] NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
そんな少し残念なチャンピオン、並びにジムリーダー二人だが、彼ら以外にもう一人、自らの責務を他の誰かに託して、欲求のままに行動する不届き者がいる。

その人は時を同じくして、レッド一行と同様に、ミアレシティはノースサイドストリート、14番道路と繋がっているゲート前へと訪れていた。

「……それにしても、まさかミヅキさんのお友達がカロス地方に来ていたなんて」

「うん! あの子に会わずにアローラに帰るなんて、ありえないね!」

「ただ、その人が何処にいるのか本当に分からないんですか?」

「そう! 分からないんだよ!」

……“一応”がついてしまうが、アローラ初代チャンピオン――ミヅキ。

彼女こそが、そのもう一人の問題児なのである。

ミヅキはあれから、如何にしてゴールドと共にカロス地方を旅するか、ひいてはそうする為の口実を昨晩、考えに考えまくった。

そして彼女が導き出した答えは、簡潔にまとめると以下の通り。

『カロス地方に生き別れの親友がいると言って、チャンピオンの仕事よりも優先すべき旅の目的を作り、ゴールドにそのことを納得させたうえで彼の旅に同行する作戦』。

言うまでもないが、ここカロス地方には、ミヅキのかつての親友などいない。

全て、合法的にゴールドと旅に勤しむ為の嘘だ。

色々と、倫理的に……というか人としてこれはいかがなものかと、ミヅキ自身思いもした。

そして、もしこれがゴールドに嘘だとバレるようなことがあれば、その時は間違いなくゴールドに失望されるだろうとも。

しかしミヅキは……ヤバいと思ったが、欲望を抑えきれなかった。

ちなみに、アローラチャンピオンの座については、現在代理で、“とある少年”が務めている。

と言うのもその少年は、ミヅキがチャンピオンの座を電話の口頭で譲ると持ちかけるや否や、まさかの即答でそれを受け入れ、大はしゃぎの大喜びで、栄えあるハズのアローラチャンピオンに就任してしまったのだ。

そんな実に単純すぎる友をまんまと丸め込み、『チョロいぜ』と内心思いつつもミヅキは、かくして虚構で固められた理由を盾にカロス地方での残留権を得て、今に至る。

もう、後には引き下がれない。

例え誰に罵られようと、誰に否定されようとも。

ミヅキは……ゴールドと共にいると決めたのだから。

「オダァ〜」

しかしオーダイルだけは、彼女のついた嘘を見抜いていた。

というか、こんなあからさまな嘘に何故自分の主は気づかないのか? もしかしてバカなのか?

オーダイルはそんなことを思いながら、呆れ果てため息をついた。

……とまあ、そんなミヅキの悪足掻きの軌跡は置いておいて。

ここでゴールドは、彼らと同じスタート地点から再び旅を始めようとしていたレッド一行の姿を、目撃した。
 ▼ 413 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:42:43 ID:pGwM5c0U [17/24] NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
「……あっ!」

「おーい! レッドさーんっ!」

そして瞬間、旅立つ前に最後の挨拶をしておこうと、ゴールドはレッド達のもとへと駆ける。

ミヅキは突然自分と離れてしまうゴールドの姿にハッと驚き、動揺のあまり一瞬その場で足踏みしたが、『待ってよー!』と彼を呼び止めようとしながら、その後を追った。

「あ……ゴールド君!」

「ん? ミヅキもいるな……てっきりアローラに帰ったとばかり思っていたが」

レッドがゴールドとの再会に喜ぶ一方で、カルムはミヅキが未だに彼と行動を共にしていることについて疑問符を頭に浮かべる。

やがてレッド一行と合流したゴールドとミヅキ。そしてレッドはゴールドに問う。『これからどうするのか』と。

ゴールドは答えた。

「自分もメガシンカを手に入れる為、カロス地方を旅するんです」

「おお……それは良いね!」

そう。ゴールドがこのカロス地方に訪れた当初の目的――それは、『メガシンカを手に入れること』。

ゴールドにとってPWTはあくまで、本題よりもいささか壮大すぎた寄り道に過ぎない。

本来の宿願を叶えるまでは、ゴールドもまたレッド達と同じように、一人の普通の旅人としてこのカロスの地で遍歴を重ねていく所存なのだ。

レッドはそんなゴールドの姿勢に感銘を受け、自らの心もまた奮い立たされる。

メガシンカ習得は、かつてレッドも追った夢だった。だからこそ、レッドはゴールドに心からのエールを送る。

『共に頑張ろう』と。

……“共に”。

そのレッドの言葉を聞いたとき、ゴールドの中でふと湧き上がってくる感情があった。

「……っ!」

レッドが差し伸べた右手が、今、ゴールドの目の前にある。

レッドにとってその手は、友情の証――“握手”の為に出したモノであったが。

この時、ゴールドの目にはそれは――『自らを引き入れんとする手』のように見えてしまった。

屈託なく笑みを浮かべるレッドのその目に、ゴールドは自然と吸い寄せられる。

やがて彼の手を取ったとき、ゴールドは……無意識の内に、こう言ったのだった。

「……レッドさん」

「僕も一緒に……ついていって良いですか」

……ゴールドの、唐突極まるその言葉に、誰もが一度沈黙を喫した。
 ▼ 414 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:43:56 ID:pGwM5c0U [18/24] NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
「えっ……ゴ、ゴー君?」

「オダァ?」

ミヅキは現状が理解出来ないあまり、その声色を震わせながら、今一度ゴールドの発言の意図するところを聞こうとする。

それに対しゴールドは……。

「……あっ」

「ぼ、僕……っ! ごめんなさい! 今のは……その」

……なんと、彼自身ですら自分の言ったことを理解できていないかのような様子であった。

レッドは、ゴールドが無自覚の内にさっきああ言ってしまったことを悟ると、一瞬、答えに迷う。

『えっと』以外の言葉が出てこない。

見たところ彼には、ミヅキがいる。

それはレッドでも分かる。

だからここで自分が『いいよ』と頷いてしまっても、それはミヅキの気持ちを蔑ろにするのと同じことだ。

レッドは取り敢えず、ミヅキに目線をやってみる。

レッドの目に映った彼女はひどく動揺していて、『何故……』と、ゴールドにその悲壮を極めた表情で訴えていた。

「今のは、忘れてくださいっ! つい思ってたことが口に出てしまったというか」

「さ……さあ行きましょうミヅキさん! 僕らの旅もいよいよ始まりますよ!」

……一方で、当のゴールドも、決してミヅキのことを忘れていた訳ではない。

寧ろ彼は、今も変わらぬ恋心をミヅキに抱き続けている。

だがそれとは別に、かつての自分の憧憬だった人物が、こうしてトレーナーとして更なる成長を果たしたことが、何よりも感慨深かっただけなのだ。

故に、つい漏らしてしまった。

『この人と一緒に旅をしたい』……そんな純粋な想いを。

だが、ふと我に返ったゴールドはここでようやくわきまえ、これから始まるミヅキとの二人旅に心を“能動的に”躍らせる。

だが、そんな彼の複雑な真意など知る由もないミヅキは、ショックを受けたまま少し呆然としてしまう。

……と同時に、『これで本当に良いのか』とも思った。

自分が今、この少年の“やりたいこと”を塞いでしまってまで向かおうとしている旅は……それは、本当に“良い旅”になると言えるのだろうか。

答えは……否だろう。

自分はあくまで、ズルをしてゴールドと共にいる身の上。

逆に考えると、もし自分がズルをせずに本当にアローラに帰った場合、独り身のゴールドは何の遠慮もなくレッド一行に加われたのだ。
 ▼ 415 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:44:17 ID:pGwM5c0U [19/24] NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
だから、ここでゴールドの選択肢を断ち切ってしまっては、それ即ち、ミヅキの選択はゴールドにとって障害になるということ。

彼女の理想は、今でも間違いなく“ゴールドとの二人旅”だ。

しかし、今この瞬間、本当に優先されるべきは――“ゴールドの理想”。

ミヅキは……選んだ。

「……奇遇だねゴー君!」

「私も、レッドさん達とも旅をしたいと思っていたところなんだよっ!」

……その願いが承諾されるかどうかは別として。

ゴールドの意思に同調する……それが、ミヅキの答えであった。

「ミヅキさん……!」

そして、ミヅキのこの判断は英断であった。

ゴールドのミヅキに対する好感度は、この瞬間を以て更なる急上昇を開始する。

自らの意思を汲んでくれたミヅキに、ゴールドは心から感謝した。

「……オダァ」

オーダイルも、今回ばかりはミヅキを見直すのであった。

そしてレッド達は、そんな二人の懇願を受け、それぞれ頷き合う。

彼らの答えは、勿論……。

「……君達が望むなら、是非ついて来てくれ」

「旅は道連れ、世は情け……って言うからね」

……レッドは、分かったような顔をしながらも、本当は……『いてくれて嬉しい』、そう思ったのだった。

「随分と大所帯になったなぁ、オイ」

賑やかになったパーティのメンツを改めて見渡し、その運命の数奇さに笑うしかないグリーン。

「まさか俺以外にも新メンバー追加とはな。逆に俺、霞んでね?」

ゴールドとミヅキが加入したことで、自らの存在感が薄れてしまうことに危機感を覚えるカルム。

「ありがとうございます皆さん! これからよろしくお願いします!」

「よろしくですっ! ……ふふっ、それにしてもゴー君ったらはしゃいじゃって」

「ダァィル!」

自分達を受け入れてくれたレッド達に、誠意を込めてお礼の言葉をお辞儀と共に贈るゴールドと、そんな彼の姿を見て、もはや吹っ切れて愛しく思うミヅキ。

無論オーダイルだって、仲間が増えたことは素直に嬉しい。
 ▼ 416 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:45:24 ID:pGwM5c0U [20/24] NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
そして……。

「……レッドってば、本当に人気者だね」

「ちょっと妬いちゃうなー……なんて」

「ははっ……参ったな」

「ふふ、冗談だよっ」

……一瞬にして、一気に三人ものトレーナーを仲間に惹き込んでみせたレッドを、コルニはヤキモチからか少しからかってやった。

対して当のレッドは、自身の頭をさすりながら、コルニには敵わないといった感じ。

そんな彼の姿に、コルニも思わず笑みを零す。

「……そうだっ!」

「これ……大会が終わったら、レッドに渡そうと思っていたんだ!」

「え……?」

……そう言うとコルニは、バッグの中から一つのレジ袋――カルムのブティックのお洒落なロゴが描かれている――を取り出し、その中に入っていたモノをレッドに渡す。

これは――レッド一行とカルムがブティックで邂逅を果たした、あの日。

*

『……そういえばコルニ』

『んっ?』

『お前のその袋……お前も何か買ったのか』

『あっ!……これはね』

『……ううん!内緒!』

『んだよケチ、教えろよ』

『なっ!ケ、ケチは無いでしょ!?』

『じゃー見せろよー』

『嫌ですよーだ!』

*

――コルニがカルムのブティックで購入し、その中身を見せる見せないでグリーンと下らない言い争いを繰り広げた、今となっては懐かしい過去の品。

あの時コルニは、グリーンの執拗な無理強いすら跳ね除けて頑なにその中身を秘密にしていたが……。

……今、それを彼女は、レッドの眼前で解禁し、明らかにする。

黒を貴重とした長方形のシックな箱。その封を開け、レッドに捧げる。

中に入っていたのは……“ブレスレット”だった。
 ▼ 417 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:46:00 ID:pGwM5c0U [21/24] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
銀色のチェーンに通された――焔をかたどった紅のジュエル。

そしてその中に一つだけ、緋色のパーツ――


――リザードンのシルエットをモチーフにした、極めて精巧かつきらびやかなアクリルパーツが、一際その圧倒的な存在感を放っている。


そう。これはコルニがレッドの為にカルムの店で購入した――プレゼントだったのだ。

「……リザードン……カッコいい!」

この、レッドのハートのドストライクを貫いた至極の逸品に、彼は興奮のあまり思わず声を張り上げながら、早速これを右手首にはめた。

それは見事にレッドに似合っており、まさにレッドとベストマッチのアクセサリー。

「ありがとう! コルニ!」

「一生大切にするよ……!」

己が生涯をかけてこれを大事にし続けると、レッドは少し涙ぐみながらもコルニにそう感謝の意を伝える。

コルニも、そんなレッドの喜ぶ姿を見て満足したのか、穏やかな笑みを、にっこりと……赤面混じりに浮かべたのであった。

……レッドがそのブレスレットをうっとりと見つめていると、段々レッドは“アイツ”に会いたくなってきたのか、一つのモンスターボールを取り出す。

そして次の瞬間、レッドはそれを投げ、彼を……呼んだ!

「出てこい!」

「リザードン!」


「グォォォォォッ!」


――チーム・レッドの筆頭戦士――《リザードン》。

レッドの召喚に応じ……ここに見参!

火竜は翼を大きく広げ、レッドと向かい合う格好で彼を見下ろす。

対してそんなリザードンを見上げるレッドは、リザードンにこんな言葉をかけるのであった。

「見てくれ、リザードン」

「今の俺は、こんなにも沢山の仲間達に恵まれているんだ」

「あの雪山に籠もってたままじゃ決して手に入れることのできなかった……友達」

「これからはそんなかけがえのない友と、一緒に、かけがえのない旅ができる」

「俺さ……こんなに幸せなことはないんだよ」

……リザードンは、彼の話を聞きながらふと思う。

考えても見れば、あのシロガネ山で修行という名の引きこもり生活をしていたあの頃のレッドは……今じゃ考えられないくらい無口だったハズだと。
 ▼ 418 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:46:34 ID:pGwM5c0U [22/24] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
それが、現在のレッドはどうだろう。

あのレッドが、こんなにも饒舌に仲間達のことを語る日が来ようとは。

そう思うと、それはどこかおかしくもある。

と同時にリザードンは、お喋りなレッドを見ていると……自分がレッドにしてやれなかったことを、あの人間達はやってみせたのだと、改めて実感する思いにも駆られた。

もう、あの頃の寂しげだったレッドはいない。

今のレッドは……。

『よろしくな、ヒトカゲ!』

『カゲェッ!』

……初めて自分と出逢った頃のような。

いや、寧ろそれ以上に、ポケモントレーナーという――自らが身を置く世界を、心から楽しみ、謳歌していた。

故にリザードンは、人間の言葉こそ話せないが、レッドにこんな想いをぶつける。


『俺もだ』


――これ以上ないくらい幸せなのは、お互い様だと。

「……行こう、リザードン、ピカチュウ!」

「コルニ、グリーン、カルム!」

「ゴールド君、ミヅキさん、オーダイル!」

……少年の呼び声に、彼の仲間達はそれぞれの言葉で返す。
 ▼ 419 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:47:00 ID:pGwM5c0U [23/24] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
彼らが次に目指すのは、“Z”の先にある――未知なる世界。

今までいた次元への別れは、とうに済ませてある。

あとはひたすら、前進するのみ。

日々進化していく、彼らの旅。

ポケットモンスター……縮めて、《ポケモン》。

大地に、大海に、大空に……この広い世界の、至るところに。

もしかしたらワンチャン、あの子のスカートの中にもいるかもしれない……そんな不思議な生き物達。

そしてこの少年――レッドと、その仲間達の物語は、これからもずっと続いていく。

進め。

時に走り、時に歩き。

そうした進化の軌跡は、やがて、その先にある未来へと繋がっていくから。

過去も、今も、未来も。限界も、想像も。

何もかも。

全て超えていけ。

「……メガシンカ……か……」

「……ありがとう」


「お陰で俺も、ようやく……進化できたよ」


レッド達の旅は……まだまだ続く。

永遠に……!


〜 fin 〜
 ▼ 420 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:53:41 ID:pGwM5c0U [24/24] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
僭越ながら、あとがきを最後に残させて頂きます。

このSSを最後まで読んでくださった読者様の皆様、本当にありがとうございました。

こうして無事に完結できたのは、何より皆様の応援のおかげです。

それと途中、技構成やバトル展開等が乱雑になってしまった部分があったことを、遅ればせながらここで改めてお詫び申し上げます。本当に申し訳ありませんでした。

休ませていただいては投稿させていただいて、その繰り返しでしたが、それに際する支援や応援コメント、ご指摘のコメント、その全てに支えられ、ここまで書き終えることができました。

重ね重ね、御礼申し上げます。

これでこのSSは終わりです。長文失礼いたしました。

最後になりますが……ご愛読頂いて、本当に、ありがとうございました!
 ▼ 421 グザグマ@ドラゴンメモリ 18/10/04 22:08:31 ID:7Y4gdGiU NGネーム登録 NGID登録 報告
おつかれさまでした!
 ▼ 422 イボルト@アップグレード 18/10/04 23:25:50 ID:wX.2y.5U NGネーム登録 NGID登録 報告
お疲れ様です!!
楽しませていただきましたわ

 ▼ 423 ワパレス@ふたのカセキ 18/10/04 23:58:56 ID:Htq.FFa. NGネーム登録 NGID登録 報告
乙でした
 ▼ 424 キカブリ@むしよけスプレー 18/10/05 00:23:15 ID:ya0Yhvus NGネーム登録 NGID登録 m 報告
これでようやくbbsを引退できるありがとう
 ▼ 425 ニューラ@あかぼんぐり 18/10/05 00:51:38 ID:mzYo4PQ. NGネーム登録 NGID登録 報告
メガオーダイルが来るって信じてる
 ▼ 426 ットロトム@むげんのふえ 18/10/05 06:42:51 ID:opGUpT3g NGネーム登録 NGID登録 m 報告
乙!
 ▼ 427 ンプク@なぞのすいしょう 18/10/05 08:14:14 ID:15LMkrlk NGネーム登録 NGID登録 報告
素晴らしいSSでした
お疲れ様です!
 ▼ 428 ガラグラージ@インドメタシン 18/10/05 21:30:25 ID:CLmkMYIU NGネーム登録 NGID登録 m 報告
乙です!
番外編でレッドとコルニのイチャイチャデート編欲しいなぁ(チラチラ

エロはいらない
 ▼ 429 ックラー@おおきなキノコ 18/10/06 17:13:55 ID:DTMkQR7E NGネーム登録 NGID登録 m 報告
2年間おつかれさまでした!こんなに燃えたSSは久々でした!!
 ▼ 430 ーリキー@クチートナイト 18/10/09 18:30:46 ID:x1iwS/1o NGネーム登録 NGID登録 報告
完結したのか 乙
 ▼ 431 リンク@ホエルコじょうろ 18/10/09 21:14:11 ID:hCgQjwqo NGネーム登録 NGID登録 報告
絶対他のサイトに出しなって!プロ入りも夢じゃないよ!
 ▼ 432 ーゴート@きのはこ 18/10/14 21:21:34 ID:/kkIGVM. NGネーム登録 NGID登録 報告
最後のバトルシーンは鳥肌もんだった
これからもゆっくり色々執筆してみてくれ!
素晴らしいSSをありがとう!
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