【SS】うまれた盲点:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】うまれた盲点:ポケモンBBS

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【SS】うまれた盲点

 ▼ 1 ングラー@しずくプレート 17/08/19 21:56:05 ID:OnQueVok [1/27] NGネーム登録 NGID登録 報告


 冬は嫌いだ。


 何故って、冬は静かだ。野鳥のさえずりも、バッタやカエルの大合唱も、何一つ聞こえやしない。あるのは鳥ポケモンたちの煩わしい世間話だけ。

ヒトからしたら鳥も鳥ポケモンも変わらないかも知れないけど、ボク達ポケモンからしたら大違いさ。

想像してごらん? 凍える、まだ日も昇っちゃいない朝の内に、品の無い誰かの悪口で目を覚ますことを。まるで悪夢だよ。目あが覚めても夢の中ってね。

……冬だからか、ギャグも余計に寒く感じるね。


 そして何よりも、冬は虫が居ない。あぁそうさ。ボクは虫が大好きなんだ。虫タイプのポケモンじゃないよ。アリとか、バッタとか、その辺。

コオロギが奏でる音色に比べたら、コロボーシが出す音なんて派手でうるさいだけの雑音だね。ノイズだよノイズ。もっとおしとやかに弾けないものかね。

同じうるさい虫でもセミの方がよっぽどマシさ。彼等の音には秩序がある。


 結局何が言いたいかっていうとね、虫が居ないから冬は嫌いだってこと。こんな季節、早く終わればいいのにね。
 ▼ 2 ォレトス@でんきだま 17/08/19 21:57:07 ID:OnQueVok [2/27] NGネーム登録 NGID登録 報告
「はやく夏が来ないかなぁ」


 誰も居ない住処の洞穴の中、ボク、ヤナッキーは独りごちた。洞穴に吹き込む風は冷たくて、草タイプのボクはそれが忌々しい。全く、ボクも虫みたいに冬眠したいよ。

 特になにもすることはないけれど、住処の洞穴に居ては凍えてしまうから、ボクは外にでた。もっといい物件にありつきたいものだ。

 木々は死んだように葉を落とし、来たる春を待ちわびている。手持ち無沙汰なボクは、その落ちた枯葉を踏み鳴らす。ザクザクと子気味良い音を立てているかと思えば、小さな枝が足に刺さった。

思わぬ反撃に気を悪くしたボクは、落ち葉を蹴り上げてから、近くの池のほとりへ行く事にした。
 ▼ 3 デカバシ@じゅうでんち 17/08/19 21:57:51 ID:OnQueVok [3/27] NGネーム登録 NGID登録 報告
 この池は、夏にはトンボが飛び交いカエルが歌う素晴らしい場所だ。ここへのアクセスが良いから、ボクは今の洞穴を選んだ。

 近くの草むらには虫たちが沢山いるし、それを狙って集まる鳥たちもまた良い。

 でもそれは夏の話。この季節の池の表面は凍ってるし、草むらは茶色く枯れ果てて、木々には生き物一ついやしない。

氷の膜の下にはメダカ達が泳いでいるけど、憎い氷は、それを見ることすらボクには許してくれない。
 ▼ 4 ャモメ@ロックメモリ 17/08/19 21:58:28 ID:OnQueVok [4/27] NGネーム登録 NGID登録 報告
 はぁ、やっぱり住処に帰ろう。洞穴は寒いけど、よく考えたらそれはどこも変わらない。

 そう踵を返したボクは、先に見えたピンクの物体を目に留めた。来た時には、木で死角になって気付けなかったのだろうか。

 ホイップの様な白い尻尾を左右に振って、その物体は地面に這いつくばっている。

 関わらないでおこう、と、そう決めた。ボクは変な事には首を突っ込まない主義なんだ。
 ▼ 5 ガクチート@デルダマ 17/08/19 21:59:14 ID:OnQueVok [5/27] NGネーム登録 NGID登録 報告
 地に伏すそれの横を、スタスタと歩き去ろうとする。それでも気になって、チラリと目をやると、ピンクのそれは落ち葉を漁っていた。やっぱり変な奴だ。

 ガシャと足元で音がした。落ち葉を踏んでしまったのだ。その音に、ピンクのそれは耳聡く気がつき、こちらに視線を投げかける。

未だに視線を外して居なかったボクは、ぴったりと目が合ってしまった。

 自分でも、なんてベタな展開なんだ、と思う。けど、起きてしまったからには仕方ない。
 ▼ 6 ッシブーン@ネットボール 17/08/19 21:59:45 ID:93JN77XM [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
しえーん
 ▼ 7 テラ@かくとうジュエル 17/08/19 22:00:07 ID:OnQueVok [6/27] NGネーム登録 NGID登録 報告
 気まずさにペコリと会釈をすると、ピンクのポケモンも寝転びながら、首で会釈を返してきた。温和そうな雰囲気をしていて、大きな耳が特徴的だ。

この耳が、ボクが踏んでしまった落ち葉の音を拾ったのかと思うと少し恨めしい。

でも見たところ悪いポケモンでは無さそうだ。それもそうだろう。悪いポケモンなら間抜けに地面に這いつくばって落ち葉を漁ったりしないと思うし。


「あの……何してるんですか?」


 気まずい沈黙に耐えかねて、ボクは尋ねた。どうせ暇なのだ、変な事には首を突っ込まない性だけど、多少の時間潰しになれば良い、と思ったというのもある。
 ▼ 8 ータス@ジガルデキューブ 17/08/19 22:01:17 ID:OnQueVok [7/27] NGネーム登録 NGID登録 報告
「虫を探しているんです」


 そのポケモンが答えた。どうやらメスの様だ。でもそんな事はどうでも良くて、……虫? いやいや、この凍える季節に虫なんていないよ。

 優しいボクはそれを教えてあげる事にした。


「こんな寒いのに、虫なんて居ないさ」

「そうでもないのよ」


 彼女は少しだけ、笑みをこぼす。そしてこっちに来いと手をこまねいた。

 それに従って、彼女と、彼女が漁っていた落ち葉の所へ移動する。


「ほら、ここ」


 指差したその先にあるのは、枯葉だけ。


「なにもいないじゃないか」


 そう言って、彼女の方を見る。

 彼女は屈んで、足元の葉を1枚裏返した。


「あっ」


 つい、声が出た。落ち葉の裏には、テントウムシが目算で10匹程、密集している。


「冬でも、探せば虫さんはいるものよ」


 知らなかった。居ないと思い込む事で、ボクはそこに居るはずの虫を消してしまっていたのだろうか。
 ▼ 9 フーライ@メガバングル 17/08/19 22:02:42 ID:OnQueVok [8/27] NGネーム登録 NGID登録 報告
「キミ、名前は?」

「私はタブンネ。生き物が大好きなの。変わっているでしょう?」

「うんん。そんなことない。ボクも……好きだから」


 生き物が、虫が好きだと言いながら、冬の虫に気づけなかったボクは、少し言葉に詰まった。

 そんなボクの、少し躊躇いの混じった声を聞いて、タブンネは目を輝かせた。


「本当! 私以外に生き物が好きなポケモンって初めて! みんな、気持ち悪いって渋い顔をするんだもの。こんなに可愛いのに。……ってごめんなさい。少し熱くなっちゃった」


 タブンネが自重するように視線を落とした。

 ボクも全くの同意見だ。虫を気持ち悪いと遠ざける奴等は、大体みんな虫をよく見ていない。でもまぁきっと、その手の奴等は、よく見たとしても気持ち悪がるのだろうけどね。

だからボクは、そういうポケモン達に無理に虫を近づけることはしない。無駄な事はしないんだ。

 他にも、小さい頃は好きだったけど今は……ってタイプもよく見るけど、一体何なんだろうね。

ボクは昔から、小さくも素晴らしい能力を秘める虫に夢中だったから、苦手な奴等の事はよくわからないや。
 ▼ 10 ルガー@あおいかけら 17/08/19 22:03:38 ID:OnQueVok [9/27] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ここでようやくボクは、自分が名乗っていない事に気がついた。相手に名乗らせて、自分は名乗らないなんて無礼はない。


「遅れたけど、ボクはヤナッキー。ねぇ、もっと他にも、隠れている虫は居ないの?」

「よろしく。そうだねぇ……木の皮の間とかをよく見たら、何かいるかもしれないわ」


 言いつつ、彼女は手頃な木へ近づき、木の幹と皮との間を覗いた。


「ほら」


 そう、少し得意げにボクを呼んだ。そんなに簡単に見つかるものなのか、と訝しみながらも、少しの期待を胸に彼女が覗いていた所を見る。
 ▼ 11 ルーグ@せいれいプレート 17/08/19 22:04:26 ID:OnQueVok [10/27] NGネーム登録 NGID登録 報告
 そこには黒い小さな虫が集まっていた。さっきのテントウムシと同様だ。


「カメムシだ」


 ポツリと呟く。


「ヨコヅナサシガメよ。カメムシの仲間ね」


 ヨコヅナサシガメ? 聞きなれない単語が彼女の口から飛び出した。


「カメムシやテントウムシは、冬になると集団で越冬するの」


 へぇ、と感嘆の声しか出ない。ボクは、カメムシならカメムシ。テントウムシならテントウムシと、それ以上の追求はしてこなかった。

でもそれは、ポケモンを全てポケモンと呼ぶようなものなのかもしれない。

彼女はその先まで知っている。ポケモンの中のヤナッキー、タブンネ。カメムシの中のヨコヅナサシガメ。

名前が付くだけで、少し世界が広がったような気がした。
 ▼ 12 ノンド@ヨプのみ 17/08/19 22:05:17 ID:OnQueVok [11/27] NGネーム登録 NGID登録 報告
「それに、ほらコレ」


 彼女が枯れた枝を指差す。その先には茶色い何かがくっついていた。


「なに? それ」

「カマキリの卵よ。暖かくなってくると何百のカマキリが一斉に孵化するの」

「カマキリって……あの?」


 信じられない。タブンネが指差す茶色いそれは、僅か数センチの大きさだ。あの大きなカマキリが、その中に何百匹も詰まっているだなんて、想像出来ない。

 純粋に関心すると同時に、疑問も湧いて出た。何故、タブンネはそんなに詳しいのだろう。

 生き物の名前は、ヒトが付ける。それをボク等が知るすべはない。なのに、どうして。


「キミはなんでそんなに詳しいの?」

「えっ? それは……ヒトが作った図鑑っていうのを読んだことがあるから、かな。それには沢山の生き物が乗ってるの」


 へぇ、そんな物があるのか。ここらにヒトは殆ど来ないから、ボクはヒトの文化に少し疎いのだ。
 ▼ 13 コリザル@メダルボックス 17/08/19 22:06:05 ID:OnQueVok [12/27] NGネーム登録 NGID登録 報告
 気が付くと、辺りは暗くなりはじめていた。冬は日が短い。これも、冬が嫌いな理由の一つだ。


「じゃあ、ボクそろそろ帰るよ」

「あっ、うん。バイバイ」


 タブンネが手を振る。少しだけ、間が空く。思いきってボクは言った。


「あのさ! ……明日も虫について教えてくれない? 今日、凄く楽しかったから」

「え!? う、うん。いいよ。私も、楽しかった」

「本当? じゃ、明日、太陽が天辺に昇るくらいにここにくるね」


 それだけ言って、ボクは暗くなる前に急いで住処に戻った。思わぬ出会いに、いつもより早く胸が打っている。


 冬でも、虫は居る。それを知ると、ちょっぴり、この寒い冬も悪くないな、と思った。笑みが、こぼれた。


 相変わらず凍える住処で、ボクは丸まって眠った。はやく、明日が来るように。
 ▼ 14 バゴ@サイコシード 17/08/19 22:06:40 ID:OnQueVok [13/27] NGネーム登録 NGID登録 報告
 朝、ハトーボー達の世間話で目を覚ます。辺りはまだ暗かった。やはり、寝覚めは悪い。聞こえる世間話には耳を貸さず、ボクは二度寝した。

 二度目の目覚めは、日が登りはじめている、丁度良い時間だった。ボクは朝食に木の実を取りに出かけた。

 途中、何本もある木の、幹と皮の間を覗いてみたが、特になにも見当たらない。タブンネがそうしたようにはいかないものだ。

 腹ごしらえを適当に済ませたボクは、少し早いが昨日の、約束の場所へ行くことにした。住処に居ても、特にする事はないし、はやく行くぶんには問題ないだろう。

 落ち葉を、今度は踏みならさずに、池へと向かった。
 ▼ 15 テラ@きのみジュース 17/08/19 22:07:42 ID:OnQueVok [14/27] NGネーム登録 NGID登録 報告
 少し早いと思っていたが、タブンネはボクより先に来ていた。


「おはよ。はやいね」


 取り敢えず挨拶をする。


「ヤナッキー君こそ。おはよう」


 それから二言三言声を交わして、歩き出す。途中、虫の魅力について語り合ったりもした。


「これはゴマダラチョウの幼虫」


 彼女がめくった落ち葉の裏には、茶色く地味なイモムシが1匹。

ゴマダラチョウと言われて、パッとその姿が思い浮かばないボクだったが、チョウはキレイだと言うことは知っていた為、その地味な見た目に驚いた。

ボクの知っているチョウの幼虫というのは、鮮やかな緑色や黄色をしている。


「アレはアゲハチョウのサナギ」


 彼女がオレンの木の枝を指し示す。その先には、小さなトランセルのような物がくっ付いていた。微動だにしたないそれに、本当に生きているのかと疑問に思う。
 ▼ 16 ォレトス@サメハダナイト 17/08/19 22:08:42 ID:OnQueVok [15/27] NGネーム登録 NGID登録 報告
「冬でも虫は居ることは分かったけど、やっぱりみんなじっとしているんだね」


 何気なくそういうと、彼女は首を振った。


「冬でも元気に飛び回っている虫も居るのよ」


 そういうと、ガサガサと辺りを探し始める。ややあって、1匹のガがひらひらと飛び出した。


「これはフユシャク。天敵が少ない冬に好んで活動するのよ」


 本当に、彼女は詳しい。
 ▼ 17 クロッグ@カロスエンブレム 17/08/19 22:09:15 ID:OnQueVok [16/27] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 それからまた、歩いた。今度は岩場のような所だ。こんな所にも、虫はいるのだろうか。

 そこらにある岩にくっついていた土塊を、タブンネが剥がした。


「これはスズバチのサナギと幼虫」


 中には明るい黄色のイモムシがはいっていた。

 冬の、隠れている虫を探すのは、宝探しみたいで楽しかった。よく探せば、至る所に生命は息を潜めていて、それは春を待ちわびているようにも見える。
 ▼ 18 ニドリル@ヨクアタール 17/08/19 22:10:01 ID:OnQueVok [17/27] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 彼女は色んな事を知っていた。どんな所に、どんな虫がいるのか。それはどんな風に生活していてどんな環境を好むのか。どんな生き物が天敵で、どんなものを食べるのか。

 ただ、目につく生き物を追いかけて、それを捕まえたり、少し眺めるだけで満足していたボクは、感激するしかなかった。


「明日も、会える?」


 暗くなりはじめて、ボクはタブンネに尋ねる。仮に会えなくても、この2日で色んな事を知ったから、きっとボク1匹ででも、虫を探せるだろう。

けれど、それ以上にボクはタブンネと一緒に居たかった。同じ趣味をもっていて、ボクより遥かに詳しいタブンネの話は、とても面白かった。


「えぇ。じゃ今度は虫さんだけじゃなくて、他の生き物も探してみましょうか」


 タブンネが、快く頷いてくれたのを認めて、ボクは住処に帰る。
 ▼ 19 ガガルーラ@マトマのみ 17/08/19 22:10:25 ID:OnQueVok [18/27] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 次の朝、また約束より早い時間に、ボクは池の近くへと向かった。今日は、まだタブンネは来ていなかった。

 ボクはその近辺の落ち葉を、タブンネに最初会った時彼女がそうしていたように、地に寝転んで漁った。

 どうにも、タブンネのように上手く見つけることが出来ない。めくった落ち葉は、ことごとく何も居なくて、今日は見つけるコツも教えてもらおうと決める。

 約束の時間の、太陽が真上に昇りきった頃になっても、タブンネは現れなかった。

 途中、ドーンと大きな音がなった。ハトーボー達がバタバタと飛び回っている。特に気に留めることもない。どこかのポケモンが喧嘩でもしたのだろう。
 ▼ 20 ◆Co36dbu5ck 17/08/19 22:10:41 ID:9IeqkKj2 NGネーム登録 NGID登録 報告
お、これは
支援
 ▼ 21 キジカ@ハートスイーツ 17/08/19 22:11:06 ID:OnQueVok [19/27] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 それから数時間程経ち、太陽が傾き始めた頃、ボクは初めて不安に駆られた。もしかしたら、待ち合わせ場所を間違えたのではないだろうか、と思ったのだ。

いや、そんな事はない。池の近くの木に、太陽が昇りきった頃、と約束したはずだ。なら、タブンネに何かあったのだろうか。

 ボクは池のほとりを離れ、辺りを探して回った。見えてないだけで、もしかしたら来ているかもしれない。
 ▼ 22 ガルデ@くろぼんぐり 17/08/19 22:11:38 ID:OnQueVok [20/27] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 タブンネは居なかった。辺りはオレンジに染まり始めている。キラキラと太陽を反射する池の氷が、うざったい。


「タブンネー!」


 大声で叫ぶも、返事はない。彼女の大きな耳が、ボクの踏んだ落ち葉の音を聞き逃さなかったその耳が、この声を聞きとらないはずがない。

 約束をすっぽかされたのだろうか。流石のボクも、それを疑わざるを得なくなってきた。

 それでもやはり、タブンネがそんな事をするとは信じられなくて、ボクは捜索を続けた。出会ってたった2日だが、タブンネは約束を破るようなポケモンではないと、ボクは思っている。
 ▼ 23 チュル@すごそうないし 17/08/19 22:12:06 ID:93JN77XM [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
見てるから頑張ってください
 ▼ 24 メール@あかいかけら 17/08/19 22:12:11 ID:OnQueVok [21/27] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 仄暗くなってきた頃、地面が大きく抉れている場所を見つけた。ふと、そこへ行ってみると、その抉れた地面の中心に薄汚れたピンク色の物体があるのを見つけ、ボクは駆け出した。

 心の表面が、冷たい刃で撫でられたようにざらっとする。


「タブンネ!?」


 彼女はひどく弱っていた。小さく呻いた声を耳にして、意識がある事を知る。

 タブンネの体は傷だらけで、そして冷たかった。きっと長い間、ここに放置されていたのだろう。

 ボクはタブンネを背に抱え、住処に走った。
 ▼ 25 デンネ@クリティカッター 17/08/19 22:12:31 ID:OnQueVok [22/27] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 住処の浅い洞穴の、その奥にタブンネをもたれかけさせ、寝床に使っていた藁を被せた。少しでも防寒になればいいのだが。


 タブンネに藁を被せた代わりに、自分の寝床が無くなったボクは、いつもよりも身を縮こまらせて、眠りについた。
 ▼ 26 ララッパ@デルダマ 17/08/19 22:13:09 ID:OnQueVok [23/27] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 いつものようにハトーボーの声に目を覚ます。タブンネはまだ寝ていた。その寝息はすぅすぅと安定していて、安堵する。


 安心したボクは、タブンネが目を覚ました時に食べられる木の実を探しに出かけた。
 ▼ 27 ムパルド@スターのみ 17/08/19 22:13:50 ID:OnQueVok [24/27] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 タブンネが目を覚ましたのは、その日の真昼だった。ポケモンの生命力の高さに救われた。

 ボクは、目を覚ました彼女に木の実を渡し、事情を聞いた。

 彼女は少し俯いて、諦めたように言った。


「こういう役割なの」

「役割って? 一体どういう」

「私たちタブンネは、ヒトに狩られる種族なの。ヒトは、こぞって私たちを襲う。散々痛めつけたら、満足したように帰っていくわ」


 言葉を失った。だってそれって、おかしい。


「何で……?」


 振り絞った声は震えていて、ボクはその一言の小さな疑問しか口に出せなかった。
 ▼ 28 ェリンボ@やけたきのみ 17/08/19 22:14:55 ID:OnQueVok [25/27] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「タブンネはね、ポケモンを大きく成長させる力があるの。ヒトは、自分のポケモンを育てるため、私たちを襲う」

 そもそも、この辺りにはヒトなんて殆ど来ないのに、どうして。どうしてタブンネは襲われたのか。

 すぐにボクはその答えが分かった。単純な話だ。ヒトが、居たんだ。居ないと思い込む事で、ボクはそこに居るはずのヒトの存在を消してしまっていた。まるで、冬の虫のように。

 ヒトは、居る。だから彼女は傷ついた。

 ふつふつと怒りが込み上げる。

 なんで、こんなにも腹立たしいのだろう。

 あぁ、と、気づく。ボクは、もしかしたら。




 彼女と会うと、わくわくした。

彼女の事を尊敬した。

彼女と、次会う約束をしたら、胸が高鳴った。




また、会いたいと思った。



 ボクはタブンネに恋していた。

 愛しい、という言葉が、場違いな程柔らかく、優しく、その場に落ちた。

 気づいてしまうと、タブンネを直視することが難しくなる。
 ▼ 29 ルタリス@シールいれ 17/08/19 22:15:36 ID:OnQueVok [26/27] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 木の実も食べて、すっかり回復した彼女は、それでも少し、まだ暗い。

 俯いている彼女に、いった。

「あのさ、また明日も、会えるよね?」


 今の僕にはこれが精一杯。熱にうかされたボクの顔には、朱がさして、吐いた息は白くなる。


 ボクはこの冬に沢山の事に気がついた。

 冬でも、虫がいる事。

 ヒトは、すぐ近くにいる事。

 彼女に、恋したこと。


 これは全部彼女が、タブンネが気づかせてくれたこと。


 タブンネは、顔をあげ、少しだけ、ほんの少しだけ嬉しそうになって言った。


「ええ、勿論」


────了
 ▼ 30 ルット@しんかのきせき 17/08/19 22:51:31 ID:ZWWd7XL. NGネーム登録 NGID登録 報告
これって【寒い日】ss?
 ▼ 31 ネコ@くさのジュエル 17/08/19 22:54:01 ID:OnQueVok [27/27] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>30
違うよ
でもそうなる可能性はあった
 ▼ 32 マズン@どくのジュエル 17/08/20 05:29:10 ID:GDPiTo8M NGネーム登録 NGID登録 報告
 ▼ 33 リーセン@サーナイトナイト 17/08/20 07:55:58 ID:CGKVnjck NGネーム登録 NGID登録 報告
>>31
そうだったんだ
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