【スワップSS】貴女が引き金を引く前に:ポケモンBBS(掲示板) 【スワップSS】貴女が引き金を引く前に:ポケモンBBS

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【スワップSS】貴女が引き金を引く前に

 ▼ 1 邪鬼◆31uy.ZcnQw 17/10/17 20:08:07 ID:WBeGaONQ NGネーム登録 NGID登録 報告
『──リーリエ』

耳にこびりついたその音は、思い出す度トンネルの中で叫んだみたいに頭の中を駆け巡る。

『──もし、私が壊れてしまう時が来たら』

瞳を閉じれば、申し訳なさそうに、寂しさを隠しきれていない表情で語る母様の姿が蘇る。

『──その時は』

きっと、このときから母様はわかっていたのだろう。

『貴女が私を──』

パシャン、と。軽い水の音を響かせる。

泉の水を両手ですくい上げ、何度も顔に叩きつける。

その言葉の続きを否定するように、何度も。

気がつけば、それを服がずぶ濡れになるほど繰り返していた。

「ふぅ……」

顔を上げて、濡れた手で顔を拭う。

……もっとずっと幼い頃から、私は知っていた。

母様が、生きようとしていないことを。

死ぬつもりでいるということを……。

暫く虚空を見つめた後、ミヅキさんの待つテントに戻る。

「お待たせしました、ミヅキさん」

「おかえりー…ってびしょびしょ……」

テントの前に座っているミヅキさんが、タオルを拾って駆け寄ってくる。

「拭いたげる」

「ありがとうございます」

ミヅキさんは優しい。優しくて、強い人だ。

頭を拭かれながら、改めてそう思う。

不意に首筋に触れたその小さな手は、そんなに華奢で柔らかいのに、どうしてそんなに強いのだろう。

「……ミヅキさん」

「ん…どしたの?」

「ぎゅって、してください…」

だから私は、甘えてしまう。

「仕方ないなぁ……」

私は、強くならなきゃいけないのに。
 ▼ 66 J44kAZeDOM 17/10/26 20:12:40 ID:EAIwpnDg [1/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
気付けば、私は泣いていた。

頬を、熱い雫が伝う。

ミヅキさんが、そっと、私の頬に、口付けた。


「ありがとう、リーリエ。そんな風に言って貰えて、あたし、幸せだよ」

「はい……」

「太陽が、沈むね」

「……はい」


私は、顔を上げた。

すると、その瞬間――太陽が、緑色に輝いた。



私とミヅキさんのボールから、ルガルガンさんたちが飛び出す。


「えっ、どしたのルガルガン」

「ルガルガンさん、どうしたんですか……」


突如、耳を聾する雄叫びが上がった。

アオォォォォォン!

アオォォォォォン!

まるで、何かを祝福するかのように、2匹のルガルガンさんは、吠え声をあげた。

太陽が沈みきる、その瞬間まで。ずっと、ずっと、吠え続けた。
 ▼ 67 J44kAZeDOM 17/10/26 20:13:16 ID:EAIwpnDg [2/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ルガルガンは、太陽と月の影響をもろに受けるからねぇ」


不意に聞こえた声に、私たちは振り向いた。

バーネット博士だ。


「ルガルガン、だからこの昼と夜の境目に起きるこの現象には、ひときわ敏感なんだって」

だから、こうも吠えたのか。

自然の奇跡に、私たちは、勇気づけられた。


「しっかし、レアなもん見たね2人とも! グリーンフラッシュを一緒に見たカップルは、結ばれるだなんて言われたりするんだよ?」

「なっ、わ、私たちはカップルではありません!」

「わらわはお似合いじゃと思うがのぉ」

「は、ハプウちゃん! 変なこと言わないでよ!」

「顔、真っ赤じゃぞ2人とも。まあ、そんなことはよい!

もう夜じゃ。目的は、速く達成したいじゃろう?」


「うん。リーリエ、やろう」

「……はい!」



私たちは、それぞれの笛を手に、台座へ上がった。

ほしぐもちゃんは、祭壇にふよふよ浮いている。


「ミヅキさん、行きますよ!」

「オッケー!」
 ▼ 68 J44kAZeDOM 17/10/26 20:13:39 ID:EAIwpnDg [3/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
笛を口に当てると、私の頭の中には、どう吹けばいいのかというのが自然と浮かんでくる。

聞き覚えのない調べだけれど、確かに私たちで奏でている。

その音に身を任せながら吹いていると、

巨大なモニュメントが眩い光を帯びて、それが、ほしぐもちゃんへ降り注ぐ。

奇跡が、起こっている。

ビックリして、目を大きく見開いたが、私の手と口は、音を奏でるのをやめない。

ただ、ほしぐもちゃんに、途轍もないエネルギーが注がれていることだけが、ハッキリと伝わって来た。

光がやみ、そこには巨大な月が――月を体現する、ルナアーラさんがいた。

私は、笛から口を離す。ミヅキさんも、同時にそうしていた。

ルナアーラさんが、一声、吠えた。


「マヒナペーーーーーーア!」


大地が揺れ、空気がビリビリと震える。


「ほしぐもちゃん!」


私は思わず駆け寄った。ミヅキさんもそれは同様で、私たちはほとんど同時に、ほしぐもちゃん――ルナアーラさんの下に辿り着いていた。
 ▼ 69 J44kAZeDOM 17/10/26 20:14:12 ID:EAIwpnDg [4/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ルナアーラさん。お願いします。私を、私たちを、母様の下へ連れて行ってください」

「まぺ!」


ルナアーラさんは、こくりと頷くと、空へばさりと羽ばたいて、自らの羽を満月型に広げると、光を帯びた。

それを撃ち出すと、そこには――


「ウルトラ、ホール」


私たちの声が、シンクロする。


「凄い、貴重なデータだわ……」

「アローラに古くから伝わる、時空の穴。初めて見るが、凄いもんじゃのお。

 わらわは残り、この博士の護衛をしておる」

「夜中の12時になっても音沙汰がなかったら、ホールを開くわ」

「ミヅキ、リーリエ。気を付けるんじゃぞ」

「はい!」

「もちのろん! それじゃ、行くよリーリエ」

「はい。ルナアーラさん、よろしくお願いします!」

「まぺーあ!」
 ▼ 70 J44kAZeDOM 17/10/26 20:14:46 ID:EAIwpnDg [5/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
私たちは、ルナアーラさんとともに、ウルトラホールへと踏み込んだ。

唐突に、光が消えた。

強い浮遊感があり、次いで、急降下する感覚に襲われる。

体が、辛い。

と、一気にそれが楽になる。

ルナアーラさんが、私とミヅキさんを抱きしめていた。


「まぺ!」


私たちは、ルナアーラさんに連れられて、進んで行く。



「つ、着いた……」

「ここが、ウルトラスペース」


気付けば、私たちはすっくと立っていた。

パラダイスでの一幕の時のウルトラビーストさんたちが、たくさん浮いている。


「あっちの方に行くしかなさそうだね、行こう」

「はい。ルナアーラさん、ついて来て下さい」

「まぺ」
 ▼ 71 J44kAZeDOM 17/10/26 20:16:16 ID:EAIwpnDg [6/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
ミヅキさんを先頭に、私たちは奥へと進む。

と、声が聞こえた。


「おい」

「……グズマ?!」

「お前ら……バカだな。

 このなんにも恐れない、恐れさせてナンボのスカル団のボスグズマ様だが、言わせてもらうぜ。

 ここはやべぇ、ヤバ過ぎるぞ!」

「……詳しく」


ミヅキさんが、問い掛ける。

グズマさんは、怯えたように震えていた。


「あいつを、あいつを捕まえようとしたんだ。けど、憑りつかれてよぉ。するとよお!

体も! 心も! 勝手に目覚めてしまってよ!

自分が自分じゃなくなるようで怖くなっちまうんだよお……!!」
 ▼ 72 J44kAZeDOM 17/10/26 20:16:37 ID:EAIwpnDg [7/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「自分が、自分で……」とミヅキさんが言う。

「なくなっていく?」と、私が引き取る。


グズマさんは、それには答えず、続けた。


「……あの人は、ヤバい。ヤバ過ぎる!

 ウルトラビーストにすっかり夢中で、もう誰の言葉も……想いすらも、届かねぇ!」

「それ」

「母様、です」


声が、震えた。言葉も、想いも届かない。母様は、もう……。


「リーリエ、諦めちゃ駄目。諦める姿なんて、あたし、見せたことあった?」

「……いいえ、ありません。そうです。諦めては、いけません。なんとしても、助け出してみせます!」

「……ケッ、お前ら、ほんとバカだな」

「バカ上等! グズマ、絶対助け出すから! あたしたちがルザミーネを、救ってみせる!」

「チッ……頑張れよ」


私とミヅキさんは、顔を見合わせ、頷く。

言葉はないが、想いは同じだった。

奥へ奥へと、進んで行く。
 ▼ 73 J44kAZeDOM 17/10/26 22:05:40 ID:EAIwpnDg [8/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
母様は、そこにいた。

たくさんの、ウルトラビーストさんに囲まれて。

満足気な、笑顔を浮かべていた。

私たちの存在には、まるで気付いていない様子だ。


「母様」


そう、声を掛ける。

母様が、ゆっくりとこちらを振り向いた。


「……なんてしつこいのかしら!」

「母様」

「わたくしとウツロイドの愛だけが存在する、甘く美しい、真実のパラダイスだというのに!」

「母様!」

「誰の許しを得てこのわたくしとビーストだけの美しい世界の来たのです!!」

「グズマは、どうなるの? グズマはそこにいるよ?」


ミヅキさんの問い掛けに、ルザミーネがしばし考え込むような表情を浮かべた。

それから、思い出したというように笑みを浮かべる。


「もういいのです。だって。

 だって、飽きちゃったんですもの! こんなに素晴らしい世界から、元の世界に戻ろうなどとつまらないことをいうような奴、愚か以外の何物でもありません!」

「……そうやって、自分のことばっか、リーリエのことは、グラジオのことはなんなの?!」

「……何を今更。だってそうでしょう?!

わたくしの言うことを聞かないような醜い子どもに変わってしまって、愛を注げるはずがないでしょう?!」
 ▼ 74 J44kAZeDOM 17/10/26 22:06:30 ID:EAIwpnDg [9/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
私の中で、母様の言葉が響く。

蘇る、寂しそうで、申し訳なさそうな表情。


『──リーリエ』


『──もし、私が壊れてしまう時が来たら』


『貴女が私を──』


「壊れて、しまったのですか?」

「壊れたのは貴女の方よ! あなたは、わたくしに従っていれば、それでいいのです!」


『貴女が私を──』


「あの時の母様は、もういないのですか?」

「あの時のリーリエは、もういないのかしら?」


『貴女が私を──』

『貴女が私を──』

『貴女が私を──』
『貴女が私を──』
『貴女が私を──』




「ウンザリです! 子どもは……親のモノではありません!

ポケモンも、トレーナーも、互いに、助け合っているのです!

どちらか一方が、好きにしていいモノではありません!

わたしも! コスモッグも! トレーナーも、ポケモンも人間もっ!

みんな生きているんです!


みんな、支え合っているんです!」
 ▼ 75 J44kAZeDOM 17/10/26 22:07:10 ID:EAIwpnDg [10/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「支え合う相手を、どうやって選ぶのかしらね?

例えばトレーナー。使えないポケモンは、好き勝手にパーティーから外すでしょう?」

「う……」


ミヅキさんが、うめく。心当たりが、あるのかもしれない。


「それと、同じ。私は、あなたたちを選ばない。それだけよ」

「違います。トレーナーのそれとは、全然違いますっ!」

「リーリエ……」

「みんな、捕まえた全てのポケモンのことを、考えています。使えないからと言って外すのではありません。

危険だから、傷を負う、危険なことだから! だから、強くないポケモンさんは、逃げるのです。

それを、指示するのです!

逃げるのは、恥でもなんでもありません、これは、ただの思いやりです!」

「……リーリエ、そんな風に」

「ミヅキさん、ポケリゾートという場所でボックスのポケモンを遊ばせていると、おっしゃってました。定期的に構っているとも。

詳しくは聞いてはいませんが、きっと、楽しい場所なのでしょう」

「それは、まあ、間違いなく」

「ですが、母様は違います! それは、ただのポイ捨てです! 相手の気持ちも何も考えず、ただの、自分勝手です!」

「……とにかく! あなたたちのことは絶対に許さない! この、ウツロイドの能力でっ!」
 ▼ 76 J44kAZeDOM 17/10/26 22:08:51 ID:EAIwpnDg [11/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
異変が、起こった。

ウツロイドさんが、母様の頭部に接近する。母様は、それを狂気にまみれた笑顔で受け入れる。

色が、黒く変じて行く。

膨張。母様の笑みが、私たちに迫った。

母様と、ウツロイドさんが一体化し、その力を増長させていく。

もはや、これは、母様ではない。

こんなの、母様だとは……認められない。認めたくない。


「ば、化け物……」

「……なるほどねぇ、そういう構造だったのか」

「ミヅキっ! ポケモンを出しなさいっ!」


ミヅキさんは、逆らうことをしなかった。

5つのボールを、高らかに投げる。

ジュナイパー、クワガノン、ルガルガン、オニシズクモ、エンニュート。

5匹のポケモンさんたちが、雄叫びをあげて母様を乗っ取った化け物に対峙する。


「もう二度と反抗できないよう……木っ端微塵にしてやりますわ!」

「あいにくだけど、ここまであたしに付いて来られたこの5匹は、そんなにヤワじゃない!

 あんたを、絶対に止めてみせる!」


化け物は、ピクシーさんを繰り出した。その目付きは、敵意に満ちている。

何かしら、オーラを纏った。


「ポケモンバトルするのか……。しかも主のオーラって……。エンニュート、ゴーっ!」

「ニュトっ!」
 ▼ 77 J44kAZeDOM 17/10/26 22:09:38 ID:EAIwpnDg [12/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
エンニュートさんが飛び出す。


「エンニュート! こいつは固いよ、わるだくみっ!」

「えーん……にゅにゅにゅ!」


わるだくみで、特攻が2段階上がる。ピクシーさんは、コスモパワーでさらに防御力を高めた。


「エンニュート! もっかいだよ!」

「アシストパワー!」

「しまったっ!」


エンニュートさんがまた特攻をあげていると、ピクシーさんは、エンニュートに向けて、念の力を発射した。


「エンニュート、歯を食いしばれっ!」


エンニュートさんに攻撃が直撃した。


「エンニュートっ!」


吹き飛ばされ、ミヅキさんの悲痛な声が響く。

その視線が、ミヅキさんの方を向いた。

そして――エンニュートさんは、確かに、頷いた。


「そこのウツロイドを足場にしてっ!」

「ああっ! ビーストちゃんになんてことっ!」


エンニュートさんが、ふよふよと漂うウツロイドに着地し、足をバネのようにしならせピクシーさんの方へと飛んで行く。


「ヘドロばくだんっ!」

「にゅーっとっ!」


その攻撃が、ピクシーさんを貫く。

その後から、跳びかかって行ったエンニュートさんが、ピクシーさんをクッションに落下の衝撃を和らげた。
 ▼ 78 J44kAZeDOM 17/10/26 22:10:30 ID:EAIwpnDg [13/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「やったよエンニュートっ!」


よく見ると、エンニュートさんはもう、息も絶え絶え。

それでもこうして立っているのは……ミヅキさんを悲しませないように、ということか。


「えにゅっ!」


苦しげに、しかし明らかに喜ばしげに、そう叫ぶ。


「エンニュート、もう少しだけ、頑張って。お願いね」

「にゅー!」

「小賢しい……ムウマージっ! こいつらの息の根を止めるのよっ!」


ムウマージが飛び出して来る。また、オーラ。


「エンニュート、かえんほうしゃっ!」

「先手を取りなさい、シャドーボールっ!」


ムウマージさんは、目にも止まらぬスピードで飛び回ってエンニュートの攻撃をかわすと、シャドーボールをエンニュートさんに撃ち出した。

体力も残りわずかなエンニュートさんにそれを避ける術はなく、あえなく倒れ伏した。



「ごめん、お疲れ様エンニュート。

早過ぎる……素早さか、あがってるのは。

対抗できるのは、オニシズクモっ! ゴーっ!」
 ▼ 79 J44kAZeDOM 17/10/26 22:11:00 ID:EAIwpnDg [14/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
えっ、と思わず呟く。

オニシズクモさんは、お世辞にも素早いとはいえない。どちらかというと、ミヅキさんの手持ちの中では遅い部類だ。


「シャドーボールよっ!」


案の定、母様は、素早い動きでオニシズクモさんを撹乱しながら攻撃をくらわせようとした。

しかし、ミヅキさんも、オニシズクモさんも慌てない。


「ミラーコートっ!」


攻撃を受けても、跳ね返す自信があったから。

シャドーボールは、ムウマージさんの方へと跳ね返って行く。


「オニシズクモ、こんぐらい大丈夫だよね?」

「ニーっ!」


高い特防を誇るオニシズクモさん。だからこその作戦だった。

炸裂音がして、ムウマージさんが驚いた顔を浮かべる。


「いよっしゃぁっ!」


これは、大きい。特殊攻撃を多用するムウマージさんに、特殊攻撃を躊躇わせることができるのだから。
 ▼ 80 J44kAZeDOM 17/10/26 22:11:28 ID:EAIwpnDg [15/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ウンザリよ! 邪魔だわっ! シャドーダイブっ!」

「オニシズクモ、集中だよ。攻撃を食らう瞬間、アクアブレイクっ!」


ミヅキさんの指示が飛ぶ。オニシズクモさんは、黙り込んで、戦闘の最中だというのに、場には奇妙な静寂が満ちていた。

不意に、ムウマージさんが現れ、オニシズクモさんに攻撃を食らわせた。


「今よっ!」


オニシズクモさんが、水流の力を振るう。攻撃終わりにくらっては、ひとたまりもない。

ムウマージさんは吹き飛ばされ、そのまま倒れた。
 ▼ 81 J44kAZeDOM 17/10/26 22:11:50 ID:EAIwpnDg [16/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「この……っ! キテルグマっ!」

「ルザミーネっ! 自分のポケモンに、ねぎらいもないのっ?!」

「そんなもの、論理的ではないわ。美しくもないっ! キテルグマ、あばれるよっ!」

「オニシズクモ、アクアブレイクっ!」


ふたつの強力な物理技がぶつかり、衝撃が辺りを襲う。

私は目を開けていられず、耳だけでしばらく続きを追った。


――オニシズクモ頑張れっ!

――無駄よ、こちらの方が優勢だわ。

――そうだっ! とびかかるっ!

――攻撃を下げる? その程度じゃあ、止まらないっ!

――オニシズクモっ! 大丈夫っ?!


このとびかかるのタイミングで、ようやく新たな爆風が生成されなくなり、私は目を見開く。

オニシズクモさんがボロボロになっている。キテルグマさんは、平然としている。

もともとミヅキさん以上にわかりづらいポケモンさんなのだけれど、恐らくは、さしたるダメージは受けていない。

特性、もふもふ。物理攻撃は、半減される。

この対面に関して、もう勝負は見えていた。


「オニシズクモ、お疲れ様。

 もふもふは辛いけど……あんたなら行けるよ、ルガルガンっ! ゴーっ!」
 ▼ 82 J44kAZeDOM 17/10/26 22:12:47 ID:EAIwpnDg [17/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
今度は、何を狙っているのだろう。ルガルガンさんも、物理攻撃を中心に戦うポケモンさんだ。


「岩タイプ?! 舐めるのもいい加減にして頂戴っ! アームハンマーっ!」

「ルガルガンっ! 肉を切らせて骨を断てっ! カウンターだよっ!」


キテルグマさんが駆け寄って来て、その剛腕を振るう。それを体で受け止め、ルガルガンさんはニヤリと笑った。


「今っ!」


懐に一気に潜り込み、全力の一撃を食らわせた。キテルグマは一気に吹き飛ばされ、壁面に叩き付けられた。

体力はもう、残されていない。

ルガルガンさんも、ガクリと膝を付く。

当然だ。キテルグマさんの攻撃を、効果抜群で食らって、無事でいられるはずがない。

けれど、まだ意識はある。戦える。


「あなたなら、耐えてくれるって信じてた。あれを耐えるのは、あんただけだと思ってたよ」

「がるるっ」
 ▼ 83 J44kAZeDOM 17/10/26 22:14:01 ID:EAIwpnDg [18/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「何なの、その、論理で割り切れない根性論は! ドレディアっ! 醜い奴らを叩き潰しなさいっ!」

「ルガルガンっ! クワガノンに繋げるよっ! こわいかおっ!」

「はなびらのまいっ!」


ルガルガンさんの顔が、恐ろしいものに変貌する。ドレディアさんはしかし、それに怯む様子もなかった。

ドレディアさんが踊ると、花びらがどこからともなく現れ、ルガルガンさんを切り刻む。


「ありがとう、ルガルガン、戻って! お疲れ様。

 クワガノン、ゴーっ!」

「ガノッ!」

「さざめけっ! むしのさざめきっ!」


ルガルガンさんのこわいかおは、確かに効果を示していた。

ドレディアさんの素早さは、確かに下がっていた。

鈍足なクワガノンさんでも、補足できる程に。


「押し切れぇぇぇっ!」


しかし、完全に無傷とはいかなかった。一度、はなびらのまいを食らってしまっている。

素早さの差は、完全には埋まっていなかったのだ。

けれど、ミヅキさんは、クワガノンさんを励ます。


「クワガノン、まだまだいけるよねっ?!」

「ガノッ!」
 ▼ 84 J44kAZeDOM 17/10/26 22:14:45 ID:EAIwpnDg [19/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ミロカロスっ!」


化け物が、最後の1匹――ミロカロスを繰り出した。

対するミヅキさんの手持ちは、クワガノンさんに、ジュナイパーさん。

有利だ。私は、ミヅキさんの勝利を確信した。

そしてそれは恐らく、ミヅキさんも。

しかし、戦局は、勢いは、入れ替わる。


「一気に決めちゃってっ! 10まんボルトっ!」

「ミラーコート!」

「うそぉっ?!」


クワガノンさんは、もう攻撃モーションに入っている。今更止まれない。


「お願い、押し切れっ!」

「無駄よ、特防が上がっているもの」


ミロカロスさんは、苦痛に顔を歪めながら、その顔に黒い笑みを浮かべた。


「クワガノン耐えてっ!」


勢いよく、力が放出される。衝撃は、ここまでやって来た。
 ▼ 85 J44kAZeDOM 17/10/26 22:16:13 ID:EAIwpnDg [20/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「クワガノンっ! ……お疲れ様。

でも、まだこっちの有利は変わらないっ! ジュナイパー、ゴーっ!」

「れいとうビーム!」

「あんたなんかに、負ける訳にはいかないっ! あたしたちのゼンリョク、受けてみろっ!」


ミヅキさんは、手を前方に備え、幽霊が化けて出て来たかのようなモーションをする。

ジュナイパーさんが、光を纏った。


「シャドー……アローズ……ストライクっ!」


ジュナイパーさんは高く飛び上がると、幾本の矢羽を纏い、ミロカロスさんに向けて突っ込んで行った。

轟音が鳴り響く。

爆風の中、ミヅキさんの快哉が聞こえて来た。


「いよっしゃあっ!」


母様の手持ちポケモンは、5匹だけ。

これで、決着はついた。

ついた、はずだった。


「ジュナイパー、大丈夫っ?!」

「ジュナ……」


直前に、れいとうビームの直撃を食らっていたらしく、ジュナイパーさんの体力も、残りギリギリだ。

ミロカロスさんは瀕死になっているので、勝利は揺るがない。



しかし、さらなる脅威に対抗するための手段は、なかった。
 ▼ 86 J44kAZeDOM 17/10/26 22:16:44 ID:EAIwpnDg [21/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「この、どこまでも鬱陶しい! 貴女たち! 許さないっ!」


化け物が、ミヅキさんを襲おうとする。

咄嗟に、体が動いた。


「ポワルンさん、ルガルガンさん、母様を止めてっ!」


遠くへ投げたモンスターボールから、2匹が飛び出して来る。


「ルガルガンさんアクセルロック! その隙にポワルンさんはあまごいです!」


『貴女が私を──』


誰が、殺してやるもんですか。

私は、絶対に止めてみせる。


「ミヅキっ! 貴女だけは許さないっ!」

「ひっ!」


絶対に、止める。母様を、助け出してみせる!
 ▼ 87 J44kAZeDOM 17/10/26 22:17:15 ID:EAIwpnDg [22/39] NGネーム登録 NGID登録 報告







「貴女が引き金を引く前にっ!」






 ▼ 88 J44kAZeDOM 17/10/26 22:17:58 ID:EAIwpnDg [23/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ポワルンさん、ウェザーボールっ!」

「うぐぁっ!」


母様に渾身の攻撃が直撃し、母様が怯む。


「ミヅキさん逃げてっ!」

「サンキューリーリエっ! ジュナイパー戻れっ!」


ジュナイパーさんをボールに戻し、ミヅキさんは母様の射程から逃れた。


「アクセルロックで撹乱してくださいルガルガンさん!」

「リーリエ、あなたは……どうしてミヅキなんかに肩入れするの?! 私の言うことを聞きなさいっ!」

「嫌です!」

『貴女が私を──』

「殺したり、できませんっ! 壊れたからと言って、捨てるなんてできませんっ!」


ルガルガンさんが高らかに吠え声をあげる。

ポワルンさんが険しい顔付きで母様を見やる。


「リーリエ危ないっ!」

「大丈夫です。母様、帰って来て下さい。あの日の母様に、戻ってください」


母様は、私の方へと向かって来る。

攻撃をしようとしているのか。私を。
 ▼ 89 J44kAZeDOM 17/10/26 22:18:46 ID:EAIwpnDg [24/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「戻ってください2匹とも」


2匹をボールに戻し、ミヅキさんに投げ渡す。


「逃げてください」

「リーリエっ!」

「逃げてっ! これは、私たちの親子喧嘩ですっ! 私のポケモンさんを逃がしてくださいっ!」


心に巣食う痛みが蘇る。

忘れてはいけない。この痛みは。


「母様、帰って来て」

「リーリエ、言う事を聞きなさいっ、さもなくば……」

「死にたい。あなたは、ずっとそう思っていた。父様のいないこの世界に未練はなかったのですね」

「っ!」

「……私たちは、いました。だけど、それよりも、あなたは父様を選んだ。

あの事件から、おかしくなったんですよね?」

「そうだとして、それが何? リーリエ、あなたは……どこまでも!」

「『貴女が私を──殺して』っ! あなたは、そう言いましたっ!

 嫌です! 殺したくありません! 壊れても狂っても、あなたは私の母様なのですから!」

「……それが、それがどうしたっ! あの人がいない世界に、帰る意味なんてないっ! リーリエっ! どうしてわかってくれないのっ?!

 ウルトラホールの中には、あの人もいるのっ! 放っておいてっ! さもなくば、死ねっ!」


ああ、駄目だったか。

私は、諦めて、目を見開く。

母様は、苦悶の表情を浮かべながら、私に迫って来ていた。
 ▼ 90 J44kAZeDOM 17/10/26 22:19:27 ID:EAIwpnDg [25/39] NGネーム登録 NGID登録 報告







「マヒナペーーーーーーアっ!」







 ▼ 91 J44kAZeDOM 17/10/26 22:21:17 ID:EAIwpnDg [26/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「があっ!!」


母様が、弾き飛ばされて、ウツロイドさんと分離した。

ふっと振り返る。


「ほし……ぐもちゃん?」

「マヒナペ!」


私ははっとなり、母様の方へ駆け寄る。



「それ程までに……父様を愛していたのですね。私たちが、どうでもよくなる程に」

「リーリエ」


ミヅキさんが、私にささやいた。


「そんなことない。もし、本当にどうでもいいのなら、あたしたちを放っておけばよかった。

グズマみたいに、ほっとけばよかった。

それができなかったのは……よくも悪くも、家族だからだよ、リーリエ」

「……ミヅキさん」


私は、感情が整理しきれずいつもの微笑みを浮かべたままのミヅキさんに、頷きかける。


「話して、みます。

母様、母様、起きて」

「うっ……ぐぅ……」

「母様のバカっ!」
 ▼ 92 J44kAZeDOM 17/10/26 22:21:57 ID:EAIwpnDg [27/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
込み上げてくる感情が、涙になって迸る。


「母様のバカっ! このバカっ! どうして殺せだなんて言うんですかっ!!

 そんなこと、できる訳ないでしょっ! ふざけないでよっ!

 どうして、生きようとしてくれないのっ?! なんで私たちと一緒に生きようって思ってくれないのっ?!」

「……り、リーリエ……」

「酷いです! 酷過ぎます! あなたは、私たちの、母様なんですよっ! 生きてください、生きてください……うわぁぁぁああああ……」


『──リーリエ』

『──もし、私が壊れてしまう時が来たら』

『貴女が私を──』


「リーリエ」


私は、返事をしない。もう、言葉も出なかった。


「少しは、綺麗になったのね……」


それだけ言うと母様は、ドサリと崩れ落ちた。
 ▼ 93 J44kAZeDOM 17/10/26 22:23:59 ID:EAIwpnDg [28/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
こうして、母様とウルトラビーストさんを巡る事件は幕を閉じた。

元の世界に4人で戻ると、博士とハプウさんが迎えてくれた。


「無事か?」

「うん。だけど……リーリエ、大丈夫?」

「ああ、はい。なんとか」

「とにかく、まずはルザミーネを病院に運ぶところからね」

「そこの黒いの!」

「俺様か?」

「運ぶのを手伝うのじゃ!」

「……わかったよ」


そう言って、グズマさんとハプウさん、それから博士は去って行った。

母様も、いない。後には、私とミヅキさん、それから私たちの仲間のポケモンさんと、ほしぐもちゃん。

この場にいるのは、それだけだった。
 ▼ 94 J44kAZeDOM 17/10/26 22:24:28 ID:EAIwpnDg [29/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ありがとう、ございました。ミヅキさん。あなたがいなかったら、母様を、連れ戻せませんでした」

「うん、だけど……辛い結末だね」

「いえ、初めから、わかっていたのです。母様が、生きようとしていなかったことは。

……だからこそ、1回事実を突き付けて、変えていきたいと、思います。

ほしぐもちゃんも、ありがとう」

「マヒナペ」

「ねえリーリエ」

「……なんですか?」

「ほしぐもちゃん、捕まえてみたら?」

「えっ?」

「リーリエの一番の相棒は、絶対ほしぐもちゃんだよ。だから、さ」

「ほしぐもちゃん……それで、いいですか?」


ほしぐもちゃんは、高らかに声をあげた。

私は、それを、挑戦だと受け取った。

あるいは、成長のために必要だと、知っているのか。


「わかりました。捕まえてみせます!」

「マヒナペーーーーーーアっ!」

「応援してるね、リーリエ」

「はい!」
 ▼ 95 J44kAZeDOM 17/10/26 22:25:56 ID:EAIwpnDg [30/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ルガルガンさん、よろしくお願いしますっ!」

「がるるっ!」


ボールから、ルガルガンさんがその姿を現した。

ほしぐもちゃんは満足気に微笑むと、その表情を硬くした。

その翼をはためかせ、高らかに声をあげる。


「アクセルロックっ!」


一気に勢いを詰め、ほしぐもちゃんにダメージを与える。

ほしぐもちゃんがそれを鬱陶しそうに払うと、月の力を寄せ集め、それをルガルガンさんめがけてぶつけた。

ムーンフォースだ。


「大丈夫ですかルガルガンさんっ!」

「ぐあうっ!」

「もう1発! かみくだくですっ!」


ルガルガンさんがまた、跳びかかって行く。

私は叫びました。


「頑張ってくださいっ!」


ルガルガンさんが、確かにこちらを振り向いて、ニヤリと笑う。

ほしぐもちゃんにむしゃぶりつくルガルガンさん。ほしぐもちゃんは、痛そうに顔を歪めた。

……苦しいのでしょう。だけど、挑戦なのです。


「ルガルガンさん、お願いしますっ!」
 ▼ 96 J44kAZeDOM 17/10/26 22:29:54 ID:EAIwpnDg [31/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
ちゃくちゃくとダメージを与えて行く。ほしぐもちゃんが、ムーンフォースでルガルガンさんを振り払った。


「ルガルガンさんっ!」


もう、ボロボロになっている。


「戻ってくださいルガルガンさん。お疲れ様。

ポワルンさんっ! よろしくお願いしますっ! もう少しダメージを与えたら、捕まえられます!」

「ぽわっ!」


ほしぐもちゃんは、こちらを見据えた。

まるで、試すかのように。

私を傷付けられる? そんな言葉が、聞こえてくる気がする。


「ポワルンさん! にほんばれですっ!」


空が、途端に明るくなる。太陽と月が共存する空間。

ほしぐもちゃんがニヤリと笑い、その光を覆い隠そうとする。


「させませんっ! ウェザーボールですっ!」


ほしぐもちゃんの表情が、一気に驚きで塗り潰される。

太陽を模るポワルンさんが、晴れの力を自らの力に変換して、撃ち出した。

見事にそれは命中し、ほしぐもちゃんは、ふらつく。


「行きますよっ! モンスターボールっ!」
 ▼ 97 J44kAZeDOM 17/10/26 22:30:12 ID:EAIwpnDg [32/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
それはほしぐもちゃんを呑み込み、大地に落ちた。

島巡りの、旅の記憶が蘇る。

ほしぐもちゃん。ミヅキさん。

この旅の、私にとっての終着点は、たぶん、ここなんだ。

これで、全部、終わりだ。

小気味のいい音と共に、ほしぐもちゃんが捕獲されたことが知らされる。


「……ありがとう、ほしぐもちゃん」


ボールが、カタリと揺れた。
 ▼ 98 J44kAZeDOM 17/10/26 22:30:59 ID:EAIwpnDg [33/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
「お疲れ様、リーリエ」

「はい。……ありがとうございました。最後まで、私たちの親子喧嘩に」

「いいのいいの! ……リーリエ、これから、どうするの?」

「私は……母様の傍に付いていようかと思います。ミヅキさんは、チャンピオンですか?」

「うん。アローラチャンピオン、目指してみる」

「そうかい」


ひゃあっ! と、思わず変な声が漏れる。


「ど、どちらさまですか?」

「お嬢ちゃんは、初対面だったかな」

「クチナシさん! ああ、この人、ウラウラの島キング。こっちはリーリエです」

「知ってるよ。まあ、ご苦労なこった。アローラチャンピオンねぇ。まあ、せいぜい頑張りなさいよ」

「はいっ! あ、ウラウラではありがとうございました」

「いいのいいの。それより、案内してあげようか?」

「どこに?」

「リーグ。ウラウラにあるからねぇ。

おじさん、お嬢ちゃんなら行けるんじゃないかなって思ってんのよ」

「はい。ミヅキさんなら、行けるはずです!」

「こらこら、なんでリーリエが言うのさ。ま、頑張るけどね」

「だからまあ、今日は散々頑張ったろうし、案内ぐらいしてもいいかなぁって」

「じゃあ、お言葉に甘えて。探すの面倒だったんだよね……。

 それじゃあ、リーリエ、一旦お別れだね。アローラの天辺に立ったら、また会おう!」

「はい! きっと、なってくださいね、チャンピオンに!」


私は、ミヅキさんに向けて頷いた。ミヅキさんも、私に向けて頷く。

そして、ミヅキさんは、去って行った。
 ▼ 99 J44kAZeDOM 17/10/26 22:31:53 ID:EAIwpnDg [34/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
最後に残された私は、ほしぐもちゃんとルガルガンさん、ポワルンさんの手当てをして、しばらく祭壇に佇んでいた。

夜明けまで、ここにいるつもりだった。

色々あったけれど、昨日今日で、こうして私には、3匹もポケモンさんが仲間になってくれた。

それが、何よりの慰めだ。

それに、母様も。母様も、きっと、少しずつ。

帰って来てくれるはず。

だから、私は大丈夫。

ポニーテールを、またきつく、縛り直す。


貴女が私を――


助け出して、みせましたよ母様。あの、虚ろな世界から。


勢いよく、息を吸う。闇夜の空気が、肺を満たした。

目を閉じ、記憶を辿る。

思い出を。島巡りの、思い出を。

母様の、思い出を。


――――



『──リーリエ』

耳にこびりついたその音は、思い出す度トンネルの中で叫んだみたいに頭の中を駆け巡る。

『──もし、私が壊れてしまう時が来たら』

瞳を閉じれば、申し訳なさそうに、寂しさを隠しきれていない表情で語る母様の姿が蘇る。

『──その時は』

きっと、このときから母様はわかっていたのだろう。

『貴女が私を──』


――――――

――――

――
 ▼ 100 J44kAZeDOM 17/10/26 22:32:20 ID:EAIwpnDg [35/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
狂い行く、母様。そしてそれは、あんな所まで行き付きました。

けれど。壊れてしまう。機能が失われ、美しさも、損なわれてしまう。そういう表現を、母様はしていたのです。


――母様は、気付いていたのです。自分が、おかしくなっていくであろうことに。

だとしたら、あれは。

あれは、本心ではないのではないか。

狂った結果があれならば、あれは、何かが母様に言わせた言葉。

恐らくは、少しは本心もあったのでしょうが……。

ですが、たぶん。


『少しは綺麗になったのね』


あの言葉こそが、まごう事なき本心なはずです。分離の瞬間、それを言ったのですから。

あの事件以来おかしくなった。そう思っていました。だけど、本当は、違うんじゃありませんか?

私たちのことも、気に掛けていたのではありませんか?

私の、早とちりってだけで。だって。

比較していなければ、なった、なんて言えません。

私の成長を見てくれていたのだとしたら、それは、つまり。

気に掛けていた、という結論が出て来ます。
 ▼ 101 J44kAZeDOM 17/10/26 22:32:43 ID:EAIwpnDg [36/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
それに。

生きようとしていない。そんな人が、あそこまでウルトラビーストを調べ、傾倒したりなんてできないはず。

自殺なら、もっと簡単にできるはずなのです。

それに、父様を探していたのも、その像と合致しません。

衝撃が大き過ぎて何もわかりませんでしたが、冷静に考えれば、当たり前なのです。

生きようとしていない。そんなことはない。

それでも、傷付けるぐらいなら、殺されたい。愛する……娘の手で。

そういうことでは、ないのですか?
 ▼ 102 J44kAZeDOM 17/10/26 22:33:00 ID:EAIwpnDg [37/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
私は、立ち上がると、涙を拭った。

空が少しずつ、白み始める。

あかつき。今日が、新しい一日が、始まる。

何かが変わる、そんな一日が。

私は。

私は、変われましたか?

ミヅキさん。私は、変われましたよね?

私が、引き金を引く前に。

ミヅキさんは、私を変えてくれました。

……本当に、ありがとうございました。

私は、この3匹のポケモンさんたちと一緒に、進みます。

いつか、あなたと共に。あなたと並べるトレーナーになるために!
 ▼ 103 J44kAZeDOM 17/10/26 22:33:16 ID:EAIwpnDg [38/39] NGネーム登録 NGID登録 報告







【スワップSS】貴女が引き金を引く前に 完







 ▼ 104 ガルカリオ@きんのはっぱ 17/10/26 22:34:28 ID:EAIwpnDg [39/39] NGネーム登録 NGID登録 報告
当SSはこれにて完結です
お読み下さりありがとうございました

甘邪鬼さんに倣って今全裸です
 ▼ 105 ライゴン@しんぴのしずく 17/10/29 01:06:22 ID:7t02iIL6 NGネーム登録 NGID登録 m 報告


本編よりしっくりくるシナリオでよかった
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