【クリスマスss】セレナ「プレゼント」:ポケモンBBS(掲示板) 【クリスマスss】セレナ「プレゼント」:ポケモンBBS

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【クリスマスss】セレナ「プレゼント」

 ▼ 1 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/12 18:21:59 ID:OiZk4A32 [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告






――たまに、思うことがある。
私は人生を損しているんじゃないかって。




 ▼ 2 イボルト@かいがらのすず 17/12/12 18:22:12 ID:en6db5Rw NGネーム登録 NGID登録 報告
その通りだ
 ▼ 3 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/12 18:25:43 ID:OiZk4A32 [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告


私は、言ってしまうと、普通の女の子だ。母が有名なサイホーン乗りで、幼い頃から英才教育を受けさせられてきた、先日ポケモントレーナーになったばかりの、昔会った少年とミアレシティのジムリーダーとその妹と旅をしている、どこにでもいる普通の女の子だ。

……自分でも「それのどこが普通なの?」と首を傾げざるを得ない。だけど、成り行きでこうなっただけだ。私の自由意思はあんまり介在していないし、もし同じような状況に放り込まれたら誰もが私と同じ選択をするだろう。
あくまでも、私自身は普通の、どこにでもいる女の子なのだ。

だけど、皆は違う。

シトロンはミアレのジムリーダーで発明家。お姉さんを見つけてはナンパ……もとい、シルブプレするユリーカ。
そして、ポケモンマスターになる夢を叶えるために毎日努力するサトシ。

彼らはきっと唯一無二。私みたいな普通とは違う。個性があって、やりたいことがあって、夢があって……。端から見ていて、きらきらと輝いているように見える。心から、今の日々を楽しんでいるように見える。

でも、私はどうだろうか。

先に述べた通り、私は普通の女の子。今までサイホーン乗りの練習を適度にサボりながら、のほほんと生きてきた。旅に出たのも成り行きで、夢なんかある筈もない。

でも、それって凄く勿体ないことなんじゃないだろうか。サトシ達は夢があって、それに邁進している。勿論苦しいこともあるだろうけど、それでも毎日楽しそうにしている。少なくとも、私なんかよりよっぽど。
だったら私も夢を設定してみようか。トップサイホーンレーサーになってやろうか。しかし、そもそも夢とは設定するものじゃない筈だ。広大な砂漠の中に点在する泉のように、おのずから湧き上がってくるものだろう。憧れとか、「やりたい!」「なりたい!」というような感情とか、そういった物が夢となっていくものだ。
だけど、困ったことに、私にはそういうものがなくて。漠然と「いいな」って思うくらいが精々だ。本当にやりたいことなんて、そもそも私にはないのかもしれない。

夢を抱いてみたい。サトシが送っているような、宝石箱のジェットコースターみたいな日々を私も体感してみたい。けれど、そもそも私にとっての宝石箱がなんなのかすら分からない。

私は、自分が人生を損しているように思えてしまうのだ。
 ▼ 4 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/12 18:27:04 ID:OiZk4A32 [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告


ある日のこと。朝食を食べていると、シトロンが言った。

シトロン「そういえば、もうすぐクリスマスですね」

セレナ「え? ……ねえユリーカ、今日って何月何日?」

ユリーカ「んー、えっとね、12月の――」

日付を聞いて、私は目を見開いた。
いつのまにそんな時期になっていたの、あと数日じゃない! ……旅に出てからそれなりに時間が経っているような気はしていたけど、まさかそこまでとは思っていなかった。

セレナ「本当にもうすぐね……」

シトロン「全くですよ。旅に出て初めて実感しましたが、いやはや月日が経つのは早いですね」

頷きあっていると、飛び付くように朝食を摂っていたサトシが口を開いた。

サトシ「へえ、カロス地方にもクリスマスってあるんだなあ」

ユリーカ「え? クリスマスがないところもあるの?」

サトシ「ああ。前に旅したところの話なんだけどな、クリスマスの時期なのに誰も準備をしてなくて……」

サトシはカロス地方に来る前にも旅をしていたらしく、時折こうやって思い出話を聞かせてくれる。それらは今まで旅に出たことのない私にとって、とってもスリリングでエキサイティングで、

サトシ「そのとき、怪しげなサンタクロースの二人組が高笑いを始めたんだ。何なんだと思った矢先、その二人はニャースの気球に飛び乗った。サンタクロースは、ロケット団の変装だったんだよ」

ユリーカ「えー! またそいつらの仕業ー!?」

シトロン「昔から迷惑なことばっかりしていたんですね……」

そして、大抵の場合において、ロケット団が絡んでいる。
どうもあの人達は、昔からサトシに付きまとっているらしい。まるでストーカーだ。
 ▼ 5 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/12 18:29:01 ID:OiZk4A32 [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告

ユリーカ「それで、連れ去られたポケモン達はどうなったの?」

サトシ「確か、捕らわれたポケモンが網を破ろうとして技を放ちまくったんだよ。それが他のポケモンに当たっちゃって、網の中で喧嘩が起きちゃったんだ。網の中なんて小さな空間で喧嘩するもんだから、他のポケモンにも攻撃が当たっちゃう。そうして喧嘩が大乱闘になって、気球のバランスが崩れて、」

シトロン「墜落した、のですか?」

サトシ「そう。で、墜落した衝撃で網が破けて、ポケモンが解放されて……」

セレナ「そこから、『ピカチュウ! 10万ボルト!』 からの『ヤな感じ〜!』かな?」

サトシ「当たり。っていうかセレナ、物真似上手いなあ」

セレナ「え、そうかな?」

シトロン「そうですよ。本物のロケット団みたいでした」

セレナ「そっち!? ……あんまり嬉しくないなあ」

というか、『ロケット団にそっくりです!』なんて言われて素直に喜べる人なんていないんじゃないかな。シトロンがそういうことを言うような人じゃないのは分かっているんだけど、もし見ず知らずの人に同じようなことを言われたら「何それ、皮肉?」と疑ってしまうだろう。
微妙な笑顔を浮かべていると、ユリーカが。

ユリーカ「クリスマスといえば、今年はクリスマスパーティやらないの?」

と、シトロンに尋ねて……。
………………………………。

サトシ・セレナ「「クリスマスパーティ?」」
 ▼ 6 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/12 18:29:43 ID:OiZk4A32 [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
何だろう、その楽しそうな響きは。私とサトシは思わずシトロンの方を見た。
シトロンは、

シトロン「毎年、ウチはクリスマスに家族でパーティを開いていたんですよ。所謂『クリパ』ってやつですね」

セレナ「それって、ご馳走を食べたりプレゼント交換したりするの?」

ユリーカ「そうだよ! 後、サンタさんの格好したり、皆でカンパイしたり!」

セレナ「へえ……! ねえシトロン、クリスマスパーティやらないの?」

シトロン「……え、ええ!?」

私がズイッと顔を寄せると、シトロンは分かりやすくたじろいで。

シトロン「ええっと、今は旅の途中でサンタの衣装がないですし、ご馳走を作る材料もないので厳しいんじゃないかと思うのですが……って、そんな捨て犬のような目で見つめないでくださいよ!」

後退りするシトロンに向けて、サトシが言った。

サトシ「いいんじゃないか、クリスマスパーティ。俺も旅ばっかりでまともにクリスマスを祝ったことなんてなかったし」

シトロン「サ、サトシまで!?」

セレナ「サトシもこう言ってるし……クリスマスパーティやろうよ、シトロン」

ユリーカ「やってよお兄ちゃん〜」

ここぞとばかりに目をじろじろと覗き込む私とユリーカに、シトロンは。

シトロン「ああもう、分かりましたよ! クリスマスパーティ、やりますよ!」

セレナ・ユリーカ「やったー!」
 ▼ 7 ックル@ライブキャスター 17/12/12 18:30:57 ID:c73vrgs6 NGネーム登録 NGID登録 m 報告
サトシお前サンタと会った記憶は
 ▼ 8 ズマオウ@ふといホネ 17/12/12 19:21:37 ID:rCIJpZYE NGネーム登録 NGID登録 報告
サトシさん、旅して1年以内に何度クリスマスを経験しているのだろう

支援
 ▼ 9 い糸テールナー◆r8RzcYRKik 17/12/12 20:32:39 ID:QOceWteo NGネーム登録 NGID登録 報告
支援です
 ▼ 10 ョボマキ@ウタンのみ 17/12/12 21:14:31 ID:AsyrfDVI NGネーム登録 NGID登録 m 報告
しえん!
 ▼ 11 タッコ@まんまるいし 17/12/13 22:24:17 ID:BPoFyU3Y NGネーム登録 NGID登録 報告
はよ
 ▼ 12 マワル@こおったきのみ 17/12/14 11:56:26 ID:ZJ8oczNQ NGネーム登録 NGID登録 m 報告
まだなのか
 ▼ 13 ギアナ@いいキズぐすり 17/12/20 23:33:38 ID:TPh3gbv2 NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 14 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/21 19:34:09 ID:V1FGzssA [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告

そんなわけで急遽開催されることになったクリスマスパーティだったが、当然というべきか、足りないものがたくさん合った。
サンタの衣装やご馳走の材料は勿論、飲み物とかクリスマスツリーとか……。
そういった、クリスマスパーティの必要条件と言うべき諸々が持ち物になかったのだ。このままではただのパーティになってしまう。いや、ご馳走も飲み物もないからパーティと呼べるのかすら怪しいだろう。

この危機的状況を前にして、しかしながら、シトロンは言い放った。

シトロン「僕に任せてください。やると言ったのは僕なんですから」

その台詞のなんと頼もしいことか。流石はカロスで最も大きい街のジムリーダーだ。
だけど、そもそもやりたいと言ったのは私達だ。シトロンに任せっきりなのは忍びない。何か私達にもできることはないのだろうか。

というようなことをシトロンに言ったところ、

シトロン「そうですね……。では、プレゼント選びをお願いします」

セレナ「プレゼント選び?」

シトロン「はい。やっぱり、クリスマスといえばプレゼントですから」

ユリーカ「クリスマスパーティはね、皆でプレゼントを持ち寄って交換するんだ! 音楽が鳴っている間にプレゼントを回して、鳴り終わった瞬間に持っていたプレゼントを貰うことが出来るんだよ!」

セレナ「なるほど、そういうのもあるのね。でも、それだけでいいの?」
 ▼ 15 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/21 19:34:54 ID:V1FGzssA [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
シトロン「はい、大丈夫です。後は全部、僕がやりますよ。……何せ、」

シトロンは不敵な笑みを浮かべた。

シトロン「――何せ、材料もなく、食材もなく、衣装もなく、クリスマスツリーもない……こういうないない尽くしの状況に対処するには、発明が一番ですから。こういう状況でこそ、発明のしがいがあるってもんですよ!」

セレナ「……そ、そう」

どうやらシトロンは、クリスマスパーティの必要条件の諸々を、自作の発明品で以て満たそうとしているようだ。流石は発明家と言ったところだ。
しかし、シトロンの発明品は大抵、途中で暴走した挙げ句爆発しているイメージがある。あんまり頼もしい台詞には聞こえない。

……大丈夫かな。クリスマスパーティ、エクスプロージョンしちゃうんじゃないかな……。

そんな私の懸念を反映したかのように、ユリーカがじとっとした目で。

ユリーカ「お兄ちゃん、本当に大丈夫なの?」

シトロンは眼鏡を輝かせて、なんの屈託もなく。

シトロン「大丈夫だよ。つつがなくクリスマスパーティを開催してみせるから」

ユリーカ「う、うん……」

私はもう、苦笑することしかできなかった。
 ▼ 16 マタナ@ぼうじんゴーグル 17/12/21 19:42:38 ID:aN2uyCM. NGネーム登録 NGID登録 m 報告
なんかサンタと会う回あったよな
 ▼ 17 ラッキー@かくとうジュエル 17/12/21 23:38:11 ID:cGY3znLQ NGネーム登録 NGID登録 報告
やっと帰ってきたか
支援
 ▼ 18 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/26 12:52:28 ID:hiuLFl3k [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告




そうして、発明に集中し始めたシトロンと別れた後。
ユリーカが腕を組みながら、難しい顔で言った。

ユリーカ「本当に大丈夫かな〜?」

セレナ「まあ、シトロンを信じよう。私達はとやかく言える立場じゃないし、あんなに自信満々だったんだから、絶対失敗なんかしないだろうし」

ユリーカ「……そうかなあ?」

セレナ「……そ、それよりも。私達はプレゼント選びを仰せつかったわけだから、それについて考えない?」

ユリーカ「プレゼント選び……そうだね! そうしよう!」

年相応に顔を綻ばせるユリーカを見て、私はなんとか上手く話題転換出来たと胸を撫で下ろした。

ユリーカ「プレゼント……何にしようかなあ……!」

ユリーカは超巨大レジャー施設を前にして今まさに己の体力のあらんかぎりにおいて遊びつくさんとする子供のような、期待に胸がパンパンに膨らんだような表情を浮かべていた。
……大体あっている、のかなあ?

そんな彼女に、私は。

セレナ「そういえば、ユリーカはプレゼント選びって毎年やっているのよね?」

ユリーカ「うん、そうだよ。でもなんでそんなこと聞いたの?」

セレナ「プレゼントってどうやって選ぶのか、参考までに聞いてみようと思って」

ユリーカはなるほどと言わんばかりに大きく頷くと、

ユリーカ「そういうことなら私に任せて! セレナが今すぐサンタさんにしゅーしょく出来るくらいに完璧な選び方を教えてあげる!」

セレナ「いや、別にそこまでじゃなくていいんだけど」
 ▼ 19 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/26 12:52:54 ID:hiuLFl3k [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
ユリーカ「まずは一つめ! 相手の欲しいものを考えて選ぶ!」

セレナ「まあ、そりゃそうよね。プレゼントは普通、相手に喜んで貰うのが目的だもんね」

ユリーカ「でも、これだとある人に向けたプレゼントを他の人が受け取っちゃったとき、すっごい気まずくなります!」

セレナ「まあ、そうなるよね……。特定の人に向けたプレゼントだもんね。対象を絞ればその人の反応はよくなるけど、大衆性はなくなるっていうか」

ユリーカ「た、たいしゅーせー? まあそういうことだよ。次、それの対策! 自分の欲しいものを相手に贈る!」

セレナ「え、ええ? それ、大丈夫なの? 喜んでもらえるの?」

ユリーカ「喜んでもらえるかは分からないよ。でも、どうせ相手の欲しいものを考えてもその人に届くか分かんないんだから、思いきって自分の欲しいものを贈ったほうが面白くなるんじゃないかな!」

セレナ「ひ、開き直ってる……。でも、あながち暴論でもないのかな?」

理に叶ってはいるからね。

セレナ「ちなみにユリーカはどっちを選んでるの?」

ユリーカ「欲しいものを贈る方だよ!」

セレナ「なるほど……。じゃあ、私もそうしてみよっかな」

ユリーカ「頑張ってねー」

セレナ「うん。……ところで、ユリーカはどういうプレゼントにするの?」

訊くと、ユリーカは悪戯な笑みを浮かべて。

ユリーカ「それを今言っちゃったら面白くないよ。クリスマス会当日までのお楽しみ! だよ!」

……まあ、それもそうか。
 ▼ 20 ロンダ@じてんしゃ 17/12/26 13:25:09 ID:puO8SsfY NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 21 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/26 16:35:17 ID:mFBfCtBw NGネーム登録 NGID登録 m 報告



しかし、自分の欲しいものと来たか。
……自分の欲しいもの、ねえ。

そんなの、たくさんある。
きらびやかな宝石類、綺麗な花、あまーいお菓子にサイダーみたいな恋愛小説。可愛い小物なんかでもいいし、文房具でもいい。お菓子作りに便利な道具だったり、材料があってもいい。
だけど、そういうものはクリスマスプレゼントとして贈るには、何かちょっとだけ違う気がする。ありふれた、普通のものを贈るのは、何かが違う。

何が違うのかと聞かれると、私にも説明できないのだけれど。

でも、何だろう。つまり、ええと、その。

……例えば。綺麗なお花をプレゼントとして貰ったとして、私とユリーカは喜ぶけれど、サトシやシトロンは喜ばないだろう。
恋愛小説も、シトロンはともかくサトシは開いて数ページも読み込まずに眠りに落ちる気がする。甘いお菓子にしろ、そもそもサトシは甘かろうが辛かろうがそこそこ美味しい食べ物であれば味なんて気にせずかじりつきそうだ。
そういうものを贈るのは、なんか違う気がする。
ユリーカは自分の欲しいものを贈ればいいと言っていたけど、私の欲しいものを贈ったとして、それが私にとって楽しいと思えるかどうか、私は確信が持てないでいる。
 ▼ 22 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/26 16:44:36 ID:B4z/8iGE [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
こんなことを言うのは何だが、花とかはいつでも贈れると思う。クリスマスプレゼントとして贈らなくても、普通のプレゼントとしても十分贈れる。むしろ、「クリスマスプレゼントだよ」とにこやかな顔をして誰かにお花を渡したとして、喜んでもらえるかは甚だ疑問だ。
お花屋さんで買う綺麗な花束ならまだしも、その辺で取れた花をクリスマスプレゼントてして渡すことの一体どこに価値があるというのか。少なくとも私は見出だせない。
そんなものはプレゼントにはなり得ても、「クリスマスプレゼント」にはならない。

クリスマスプレゼントは特別なプレゼントだ。クリスマスイブの夜、枕元に靴下を吊り下げて寝ると、翌朝そこにはプレゼントが入っている。

一体どんなプレゼントが入っているんだろう、と寝ぼけ眼を擦る余裕すら忘れて靴下の穴から中身を覗く。
靴下の中に入っていたのは、なんと――――そこら辺で取れた綺麗な野花だった。

……なんてことになったら笑い話にもならないだろう。クリスマスプレゼントはクリスマスプレゼントであるがゆえに通常のプレゼントよりハードルが高いものになる。あくまでも私が今模索しているクリスマスプレゼントはクリパの交換会用のものだから、靴下云々はただの例えなんだけど。

だから、そんなクリスマスプレゼントになり得ない普通のプレゼントを贈ったところで、私も楽しくないし、皆も楽しくないし、空気も楽しくないだろう。アンハッピーリフレインだ。

しかし、じゃあ何を贈ればいいのか。普通のプレゼントとしてしか扱えないようなものでなく、クリスマスプレゼントたりうる格を持った、私が欲しいと思うもの。
私がクリスマスプレゼントとして貰って嬉しい、私が欲しいもの。
そんなものは実在するのか。果たしてこの世に存在するのだろうか。



……実は、ある。
 ▼ 23 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/26 16:45:03 ID:B4z/8iGE [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
欲しいどころの騒ぎではない、喉から手が出るほど欲しい、心がからからになるほど渇望しているものが、一つある。
最も、それは実体のないものだ。加えて言うなら、こんなに欲しいと思っているのは多分私だけ。
皆が持っていて、でも私には無くて。皆をキラッキラに輝かせている物。

即ち、夢。やりたいこと、人生の目標、宝箱だ。

だけれども。それは、やっぱり、実体がない。それに、夢なんてやすやすとプレゼント出来るものじゃない。

夢ってのは、自分でつかみとるものだ。他者から与えられて得た夢なんて、そんなものは欺瞞だ。殉じる価値なんてないだろう。だから、それはそれで、プレゼントに相応しくない。

しかし、夢以外で私がクリスマスプレゼントとして貰えて嬉しいものがあるかというと、それは……。

……クリスマスプレゼント、どうすればいいのだろう。
 ▼ 24 ラーチ@たいりょくのハネ 17/12/26 16:45:48 ID:zHps4GOg [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 25 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/26 17:13:00 ID:MCJfoVr2 [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告





そんな悩みを抱えた、ある日の夜。
私は意味もなく星を眺めていた。

……意味もなくといっても、本当に理由もなく眺めていたわけではなく。理由もなく行動するような輩はただのサイコパスだ。少なくとも私はそうでは、ない。

ならば何故こうして私は星を見ているか。というと、何となく見たくなったから、だろうか。
墨汁で塗りつぶしたように芸のないつまらない夜の闇の中において、本来大勢を占める筈の闇が場違いであると思わせるほどの、美しく輝く星々を。
何となく、私は観察したくなったのだ。
これは、羨望。感嘆、嘆息、親近感。……ほんの少しの嫉妬。
そんな固まった感情と共に過ごす星空の観察。客観視だ。

……こうして見てみると、星というのは思った以上に多い。
勿論、闇と星とで言ったら絶対に闇の方が多い筈だが、それでもこうして夜空を見てみると、星が八割を閉めているように見える。満天の星空とはよく言ったものだ。
こんなに光輝いてるものがあるなら、私みたいな夢がない人なんて少数派じゃないのか。
しかし、地上から見ると爪の先ほどもない星々の間隔も、実際には数光年ほど離れているらしい。宇宙のほとんどは闇。少数派なのはやはり、光輝く星の方だ。
とはいえ、じゃあ闇は多数派だから闇のままでオッケーなんて抜かすつもりはない。私は、輝きたい。
輝きたいのに、輝けない。
そして、それ以外に心が咆哮するほど欲しいものなんて、私にはない。でもそれは、人にあげられるものじゃない。

……それでも。それでも私がこうして星空を見上げているのは、何でだろう。

あの星に手を伸ばせば。手が届けば、解決するのだろうかと、考えてしまってるのかな。

らしくもなく、私がアンニュイな気分になっていた、そのとき。
 ▼ 26 ルトロス@ジメンZ 17/12/26 17:23:50 ID:zHps4GOg [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
面白いい
 ▼ 27 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/26 17:50:27 ID:MCJfoVr2 [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
――サトシの声がした。

サトシ「あれ、セレナ? 何をやってるんだ?」

セレナ「サ、サトシ!?」

私は目を丸くした。

セレナ「な、何でここに?」

質問を質問で返すという大罪を犯したにも関わらず、サトシは笑って頭を掻いた。

サトシ「トイレに行きたくなっちゃってさ。起きたらセレナがここにいるものだから。……で、セレナは何してたんだ?」

セレナ「わ、私は……星空を眺めてた」

サトシ「へえ、星空かあ。そういえばちゃんと見てなかったなあ」

そう言うと、サトシは空を仰いだ。

サトシ「うわあ、本当に綺麗だなあ!」

新しいおもちゃを買い与えてもらった少年のように嬉しげに目を輝かせるサトシを前に、私は目を逸らした。
 ▼ 28 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/26 17:57:16 ID:MCJfoVr2 [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告

嘘だ。星空を眺めてたのは本当だけど、それだけじゃない。私は、星空を通して私達を眺めていた。
私を、見ていた。

サトシ「最近バトルばっかりだったから、こうして星空を眺めるのも久しぶりだなあ。冬っていったら、大三角形とかあったよなあ」

一切合切の光を受け取らず、受け取れず、輝けない闇を、見ていた。

サトシ「何だっけ。シリウスとアルタイルととベガだっけ?」

笑えてしまうくらいに真っ暗な闇を、見ていた。

サトシ「……セレナ? どうしたんだ?」

……え?

セレナ「な、何?」

サトシ「いや、さっきから上の空だからさ。何か気に障ることでもあったのかなって」

セレナ「そんなことないよ。気に障ることなんて、全然、なかった」
 ▼ 29 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/26 18:12:00 ID:MCJfoVr2 [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
取り繕うように、私は言う。
サトシは暫くの間、「……ふうん?」と訝しそうに私の顔を見ていたが、やがて、

サトシ「……そっか」

と呟いて、口許だけでにっこりと笑い。
その表情のまま、私を見つめ続けた。
まるで、私が取り繕っているのを見透かしていて、その上で敢えて追求せず、自分から言い出すのを待っているみたいに。

セレナ「…………」

サトシ「…………」

セレナ「………………」

サトシ「……………………」

セレナ「…………………………そうだね、うん。気に障っていること、ちょっとあったかもしれない」

サトシ「……そっか」

根負けした私は、クリスマスプレゼントの悩みについて話した。
ちっぽけなものを、クリスマスプレゼントとして扱いたくないこと。
本当に欲しいものは、他人に与えられるようなものじゃないということ。
そして、それ以外で、私に心の底から欲しがっているものなんて、一個もないこと。

それらを全て聞いたサトシは、暫くの間、空を見上げた。
次に何を言えばいいのか、じっくりと吟味するかのように。
 ▼ 30 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/26 18:36:31 ID:MCJfoVr2 [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告



どれくらいの時間が経っただろう。数秒かもしれないし、数分かもしれない。数時間かもしれない。
なんにせよ、伸ばしに引き伸ばした体感時間の果てに、サトシは言った。

サトシ「……そっか。セレナは、夢が欲しかったんだな」

セレナ「……うん」

消え入りそうな声で私は首肯する。
夢を持ってる人にそんなことを問われると、凄く恥ずかしい気持ちになってくる。
……いや、そもそも夢を持ってる持ってない以前の問題として。こんなことを語っていること自体が恥ずかしいのかもしれないけれど。

サトシ「でも、夢ってそんなにいいものでも無いぞ?」

サトシは真剣な表情で言った。

サトシ「俺には夢がある。ポケモンマスターになる。何があろうと、絶対に。そのためなら、どんなことだってしてやる。……勿論、法律を破らない限りにおいてだけど」

おどけて肩を竦めた後、真剣な表情に戻って。

サトシ「でも、それって凄い勿体ない事だと思うんだ。俺には夢があって、それに邁進してる。苦しいことはいっぱいあるけど、楽しいことはもっといっぱいある。……だけど、時々不安になるんだ」

すぐに、陰のある笑みを浮かべた。
 ▼ 31 ョロトノ@エネコのしっぽ 17/12/26 19:50:46 ID:WwUIvo3w NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 32 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/26 20:57:09 ID:uVKQwwk. [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
サトシ「俺はあまりにも早く自分の生き方を決めすぎたんじゃないか。もっと、別の生き方があったんじゃないか。夢に殉じるよりも、何倍も幸せな生き方が。夢を達成できず、何も残せないで死んでいくより、もっと幸せな生き方を模索した方がよかったんじゃないかなって」

セレナ「そ、そんなことない。サトシは、絶対にポケモンマスターになれるよ」

サトシ「ありがとう。でも、これは夢を追いかける者にとってはカレーとライスみたいに切っても切り離せないものなんだ。絶対に苛まれる。例外なんて存在しない」

サトシは、深く息を吐いた。
真っ暗な夜の中にあって、何故かその白い息ははっきりと映った。

サトシ「俺は、セレナが羨ましいと思うよ。セレナには夢がない。でもそれは、何にでもなれる可能性があるってことなんだ」

……これが、隣の芝は青いというやつか。
サトシに向けて、私は言った。
セレナ「私は、サトシが羨ましい。サトシには夢がある。毎日それに邁進していて、苦しいこともいっぱいあるだろうけど、それ以上に楽しそう。何にでもなれる可能性があるとはいっても、何かになろうと決断して頑張っている人の方が何倍も偉いし、かっこいいと思う。
私は、そういう人になりたいんだ」

サトシは一瞬、ぎょっと目を見開いたが、すぐにふんわりと微笑んで、

サトシ「そっか。……あれ、でも。じゃあ、やっぱりセレナに夢はあるのか」

そんな、聞き捨てならないことを言ってきた。
 ▼ 33 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/26 20:57:41 ID:uVKQwwk. [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
セレナ「……ええっ!? ど、どこが! それ、何なの!?」

取り乱す私を他所に、サトシは。

サトシ「夢ってのは、憧れだ。『やりたい、なりたい、したい!』とか、『いいな』って感情を昇華させたもの。目標だ、人生の道しるべだ」

一人言のように。そんなことを――。

サトシ「言ったじゃないか」

サトシは私の目をしっかり見据えた。

セレナ「え?」

頓狂な声を出す私に向けて、

サトシ「だから、言ったじゃないか、セレナ。『私は、そういう人になりたいんだ』って」

セレナ「あ……」

サトシ「それは何物でもない、目標だ。立派な夢たりうるものだ」

セレナ「…………」

サトシ「セレナは、夢を持ってみたいという夢を、既に持っていたんだよ」

セレナ「………………い、いや、でも。夢を見つけるのが夢って、何か変というか、矛盾してない?」

サトシ「でも、セレナの一番欲しいものは夢なんだろ? なら、それが夢でもいいじゃないか」

セレナ「サトシのそれと比べると、随分ちっぽけだよ?」

サトシ「ちっぽけでもいいよ。夢は夢なんだから」

セレナ「…………」

……それは、まさに、晴天の霹靂だった。
 ▼ 34 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/26 20:58:11 ID:uVKQwwk. [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告


セレナ「……ねえサトシ。夢って、どうやって見つけたらいいのかな」

サトシ「え? うーん。何にでも挑戦してみること、かな? 挑戦していくうちに、いつか本当にしたいと思えるきらきら印が見つかるかもしれないし。……普通のことでごめん」

セレナ「いいよ。確かに普通のことだけど、真っ暗ではないから。むしろ、見惚れてしまうくらいに輝いてるから」

サトシ「……真っ暗? 何の話だ」

首を傾げるサトシに向かって、私は微笑んだ。

セレナ「何でもないわ。こっちの話よ」



……これは、プレゼントだ。
サトシが私にくれた、ちょっと早いクリスマスプレゼント。
私に夢を与えてくれた――私が、既に夢を持っていると気付かせてくれた。
その夢は、宝石箱の類いではないけれど、私の内から涌き出た目標で。
……私が、殉じるとまではいかないけれど、達成したい、なってみたいと思わせるのには十分だった。

……何にでも挑戦してみること、かあ。

 ▼ 35 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/26 20:58:49 ID:uVKQwwk. [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告


翌朝。
木に向かって何やらブツブツ呟いているシトロンに向かって、私は声を掛けた。

セレナ「シトロン、何やってるの?」

シトロン「う、うわあ!? ……なんだ、セレナですか。驚かさないでくださいよ……」

セレナ「ごめんごめん。で、何やってるの?」

シトロン「これは、クリスマスパーティーに向けた発明の一つですよ。まあ発明というよりは工作と言った方が正しいのですが」

セレナ「工作?」

シトロン「はい。ちょっとプラスチックとかを加工して、即席のイルミネーションを作ってみたんですよ」

工作は工作でも電子工作だった。

セレナ「さ、流石発明家だね。私とは工作のスケールが違うよ……」

シトロン「そうでしょうか? それより今何してたのかというと、そのイルミネーションを設置しようとしてたんですよ。クリスマスといえばイルミネーションですしね」

セレナ「そうなんだ。…………! ねえシトロン、私もそれ手伝っていい?」

ふと思い付いたことがあって、私はシトロンに聞いた。
シトロンは面食らった様子だったが、

シトロン「いいですよ。でも、急にどうしたんですか?」

セレナ「いや、ちょっと、ね。イルミネーション作りに挑戦してみよっかな、って思っちゃって」

シトロン「はあ……」

シトロンは眉を傾げたが、すぐに気を取り直すと。

シトロン「じゃあ、よろしくお願いします。どういう風に飾るのかはセレナに任せますよ」

そう言って、私にイルミネーションを渡してきて……。

セレナ「了解! 任されました!」





こうしてみたところで、きらきら印が見つかるとは限らない。そう考えると、酷く恐ろしくなる。
だけど、それでも挑戦しない理由にはならない。やりたいことを探すこと以上にやりたいことを見つけるまで、私は頑張ってみようと思う。
だって、それが邁進するということなのだから。

だから、それを教えてくれたサトシのためにも。
そして、自分の欲しいものを入れるといいというユリーカのアドバイスに従って。
私のクリスマスプレゼントは、チャレンジックな、挑戦的なものにしてみようと思う。

要するに私のクリスマスプレゼントは何かというと、それは――!
 ▼ 36 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 17/12/26 20:59:25 ID:uVKQwwk. [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
これで終わりです。支援ありがとうございました!
 ▼ 37 ヤッキー@エレクトロメモリ 17/12/27 00:31:58 ID:ES5ZQthI NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 ▼ 38 ミツルギ@ものしりメガネ 17/12/27 03:31:55 ID:vWTKcNP6 NGネーム登録 NGID登録 報告
乙です!
 ▼ 39 ントラー@きょうせいギプス 17/12/27 06:54:57 ID:wFo0yOU. NGネーム登録 NGID登録 報告
お疲れ
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