【SS】歩怪物討伐記:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】歩怪物討伐記:ポケモンBBS

  ▼  |  全表示31   | <<    前    | 次  |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |   ▼   
                  スレ一覧                  
SS

【SS】歩怪物討伐記

 ▼ 1 /m/vJqYdX2 18/01/08 14:48:55 ID:VI71ufTE [1/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 今から四百年前。日本には歩怪物と呼ばれる凶悪な生物が生息していた。そして、それらを倒し、人々の平和を取り戻した者達も。

 月明かりすらもない深夜に、草原の中を歩く侍が一人。彼はボロボロで暗い色の衣服を身に付け、ワラで出来た笠を目深に被っていた。大変疲れているようで、歩幅は小さく、息も絶え絶え。だけどそれを顔に出さず、背筋もピシッとしている。
                        
 彼の背後に、歩怪物が迫っていた。風貌は茶色いネズミのよう。よだれを垂らしていることから、空腹だということがうかがえる。どうやら獲物として、彼を狙っているようだ。
 ネズミが音もなく、飛びかかる。不意に立ち止まり、柄に手を添える侍。そして振り向き様に抜刀。ネズミの身体は真っ二つに切り裂かれた。


「お前らの存在は決して認めない」


 そう吐き捨てながら、懐から懐紙を取り出す侍。彼がそれを使って、刃に付着した血液を拭き取る。それを済ますと再び歩き始めた。
 次第に町が見えてくる。彼は長屋の一室に入ると、あっという間に爆睡。
 ▼ 2 /m/vJqYdX2 18/01/08 14:51:07 ID:VI71ufTE [2/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 徳川家康が江戸に幕府を開き、戦乱の世は終結。その後も代が変わる毎に、世の中は安定していった。一方で、太平の世の中は、武士を腐らせるのに十分すぎた。大多数の武士は一度も人を斬ることの無くなった時代。
それは彼も同じ。ただしあくまで"人間は"である。
 何故このような生活を送っているのか、答えは簡単。
ポケモンが心底嫌いだからだ。


日本におけるポケモンの歴史


 まだ足利家が将軍職に就いていた頃。明との勘合貿易が切っ掛けで、ある生き物が日本へとやって来た。それがポケモン。日本ではその後、携帯獣や歩怪物と呼ばれるようになった。三代将軍・義満はそれをたいそう気に入ったとされる。
 
 しかし彼の息子である義持は、ポケモンの危険性を早くから察知。そのため、彼が将軍に就くや否や、貿易は取り止められた。その後六代将軍・義教の時代に日明貿易は復活するが、歩怪物の輸入だけは断固として拒否。  
 歩怪物は繁殖力こそ、大したことはない。しかし一頭辺りの強さが、並大抵のもので無いのだ。彼らは生態系を破壊し、やがて人間の生活を脅かすまでとなった。
 これに対し、当初は積極的な駆除が行われていた。しかしその数は増えるばかり。中には姿を変え、さらに凶暴になることもあった。ポケモンの生命力は人間の想像を遥かに越えていたのだ。

 延宝8年。福岡藩は身分や石高を越え、広く人材を求めた。条件はただ一つ、武芸に秀でる者ということ。集められた5五千人の豪傑達は、歩怪物を根絶やしにするために奮闘。しかし結果は惨敗。生き残ったのはわずか四人という有り様だ。そのうちの一人こそ、本作の主人公である上野一真。
 ▼ 3 /m/vJqYdX2 18/01/08 14:52:44 ID:VI71ufTE [3/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 彼は毎朝、朝食を済ましたあと仕事に出掛ける。この事で毎月特例的な録を貰っているため、彼にとっては貴重な収入源になっている。
 
 本日彼が向かう先は、小高い山の洞窟だ。そこには巨大な蛇型の歩怪物が生息している。元は彼の同士が仕事に当たったのだが、一匹殺し損ねていた。なので彼が、その尻拭いを受け持つことになったのだ。

 その蛇は体が鉄で出来ている。いくら強固な刀でも、何間もある鉄塊を斬ることは不可能。だが彼には、何か策があるように見られる。いつものように刀と脇差し、笹の葉で包んだ握り飯のみを携えて出発した。
 ▼ 4 /m/vJqYdX2 18/01/08 14:53:29 ID:VI71ufTE [4/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 洞窟の入り口まで辿り着く一真。そこの地面には、大きな穴が無数に開けられていた。蛇が地中に潜ったときに出来たものなのだろう。万が一落ちてしまえば、恐らく助かる見込みはない。


「穴の広さから推測するに、今回の獲物は大型獣か。一匹辺りの強さは厄介だが、個体数は少ないはずだ」


 彼の背後から、大蛇が頭から突っ込んでくる。巨体に似合わない素早さで。それを、跳躍して避ける一真。彼は飛び乗ってから抜刀。蛇に刀を突き刺した。


「いくらなんでも、体を作る組織がすべて硬い鉄だというのはあり得ない。それだと動くことさえままならない」

「お前の弱点は......関節!」


 彼が刺した場所は、人間で言うところの首。蛇が暴れる度に刀は深く突き刺さっていき、噴き出す血量も多くなる。しばらくすると、蛇の力が抜ける。完全に息絶えたのだろう。それを確かめた彼は、刀を引っこ抜き、取り出した懐紙で刀身を拭う。

 初めは二百五十一体生息していた歩怪物も、今ではそのほとんどが駆除されている。残すところ、あと二十一種類。この戦いはもうすぐ終わると、彼は信じていた。
 ▼ 5 /m/vJqYdX2 18/01/08 14:54:18 ID:VI71ufTE [5/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 彼が町に帰ってきたとき、一人の男に呼び止められる。顔見知りだったこともあり、素直に応じる一真。
 この男、身分としては下級御家人だが、内職のお陰でそこそこの暮らしを送っている。彼の行っている内職とは瓦版製作。現代で言えば、新聞記者のようなものだろう。ときどき彼に取材を行い、歩怪物討伐の記録を綴っているのだ。


「いつも思うが、本当にこんなのが売れているのか? ほとんど捏造じゃないか」

「売れてなかったらとっとと廃業して、爪楊枝でも作ってるさ」

「お前も歩怪物討伐に行ったらどうだ? あそこは慢性的に人不足だからな。一言お上に進言したら、すぐに雇ってくれるぞ」

「嫌だよ。俺なんか一瞬で殺されるって。それじゃ、また話を聞かせてくれ」

「わかった」


 彼は男に沢山の出来事を話した。鯉が変化した龍を倒して、海が赤く染まったこと。尾に火を灯して翼を生やしたトカゲを斬殺し、肉を地域住民に配ったこと。そして今日、生き残りの蛇を仕留めたこと。


「取材ありがとな。ほれ、お礼の銀貨だ」

「どういたしまして」

「お前もいい加減結婚したらどうだ?」

「余計なお世話だ。ではな」


そう言い残すと彼が去る。
 ▼ 6 /m/vJqYdX2 18/01/08 14:55:16 ID:VI71ufTE [6/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 歩怪物の強さはだいたい、数の多さに反比例する。つまりもし一匹しかいない歩怪物がいたとしたら、それが最強ということだ。
 今回彼が訪れているのは林。カマキリのような姿をした歩怪物が、そこに潜んでいる。 


「二刀流の使い手か。だが刀の多さと強さに因果関係はない」


 カマキリ型の歩怪物約十体が、一斉に襲いかかってくる。それに対して彼は、敵に背を見せて一目散に逃げ出した。
 とてつもない俊足を見せつける一真。その後ろを、カマキリ達がついてくる。初めは横に並んでいた虫たちも、素早さの違いから徐々に一列になっていく。

 それこそが彼の作戦だった。彼考案というわけではないが。これは古来より、人数に劣る軍勢がよく使ったとされる手だ。
 彼はある程度走ると、振り返って刀を振り下ろす。頭を切り裂かれた虫が倒れる。彼は返り血を浴びる前に再び走りだし、同じ作業を続けていった。

 だが彼らも決してバカではない。自分達に勝機が無いことを悟れば、追いかけてこなくなる。頃合いを見計らって彼が後ろを眺めたときには、すでに彼らは撤退を始めていた。
 ▼ 7 /m/vJqYdX2 18/01/08 14:56:14 ID:VI71ufTE [7/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「逃がさん!」


 彼にとってはここからが本番とも言えよう。彼は自慢の俊足で歩怪物に追い付くと、容赦なく刀を振るい斬殺。あっという間に全滅へと追い込む。

 最後に母親と子供を殺し仕事は完了。歩怪物はその習性上、同じ種族は一ヶ所に固まって暮らす。そのため、この場にいるすべての歩怪物を皆殺しにさえすれば、簡単に根絶やしにすることが出来る。

 もっとも歩怪物は、一匹でも町を容易く滅ぼせる程度の破壊力を秘めているのだが。
 ▼ 8 /m/vJqYdX2 18/01/08 15:27:09 ID:VI71ufTE [8/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「面倒だな......」


 半年に一度行われる定例会議。駆除隊の生き残りたちが、成果や近況を知らせるというものだ。そういうわけで、彼は今藩内のとある宿に向かっていた。

 彼が中に入ったとき、すでに他の三人は集結済み。周りからの視線を気にせず、畳の上に腰を下ろす一真。するとまとめ役の女が話し始めた。


「この半年間の間に駆除した歩怪物は何種類だ? 私は三種だ」


 三種類、四種類、と仲間達が口々に報告する。女が最後に一真へ話を振ったとき、彼はしたり顔で待っていた。


「一真、おぬしは何種類だ?」

「五種類、俺の勝ちだな。これで残る歩怪物は六種類。この調子で俺がすべて片付けてやるよ」

「そうもいかん。お主は知らないのか? 残る六種類はどれも異国では伝説や幻のように扱われている非常に凶暴な歩怪物だ」
 ▼ 9 /m/vJqYdX2 18/01/08 15:27:53 ID:VI71ufTE [9/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 火の翼、雷の翼、氷の翼、白銀の神、黄金の神、それらを統べる棟梁。彼女はこのような名前をつけ、全員に説明を始めた。
 前半三羽の歩怪物はそれぞれ、攻撃を繰り出してくる。滅多に人里に現れることはない。非常に強力であるが、強さは他の三体には弱冠劣るという。
 二柱の神は好戦的で、何度も深刻な被害を出している。付近の人々が皆殺しにされるために報告例が極めて少なく、伝説と評されるようになった。


「せめて二柱の神は俺にやらせろ」

「気持ちは痛いほどわかる。あの騒動を引き起こしたのは間違いなく神。おぬしの仇であり、歩怪物討伐の道を志した原点......」

「だがこやつらは一人でなんとかできる相手ではない。協力して打ち倒すのだ」


 返事をせずに黙る一真。一瞬の沈黙が過ぎた後、彼女が再び話始める。

 何でも棟梁は、他を圧倒する力を秘めているようだ。自分から攻め入ることはないが、その歩怪物のすみかを訪ねた者が戻ってきた試しは無いという。そのため出回っている情報のほとんどは、噂や出任せの域をでない。
 例えば、一切体を動かさずに敵を倒した、実は蘭学の優れた技術によって作られた、なんて話が出るくらいだ。
 ▼ 10 /m/vJqYdX2 18/01/08 15:28:27 ID:VI71ufTE [10/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「一週間後、こいつらを討伐しに行こうと思う。集合場所はここ。各々準備を怠るなよ」


 彼女の指示を受ける三人。それから最後に、もし伝説歩怪物と遭遇しても、絶対に戦わないように忠告。特に彼には、念入りに伝えた。

 それが終わると、宿の女将が料理や酒を運んでくる。これまでの静けさを取っ払うように、酒の席を楽しむ彼ら。彼もその日ばかりは、日頃の苦労を忘れて楽しんだ。

 宴会が終わると、彼らが解散。西の空には、上弦の月が輝いている。彼が帰ろうとするとき、女がもう一度忠告をいれる。それを生返事で返す一真。 
 ▼ 11 /m/vJqYdX2 18/01/08 15:29:20 ID:VI71ufTE [11/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 翌日、彼がみたらし団子を食べていたとき、事件は起きた。上空から数多の火の玉が降り注ぐ。家屋が次々に焼かれる。逃げ出す人々で、辺りは混乱に包まれた。


「何が起きた!?」


 抜刀し、警戒を張り巡らせる一真。するとバサバサはためく音が、彼の耳に届く。彼が視線を上に向ける。そこにいたのは、灯火のように輝く怪鳥。


「人間を滅ぼす」


 これまでと違い、怪鳥は人の言葉を使ってきた。知能の高さが伺える。
 怪鳥の翼が発火。それから羽ばたかされて、火炎が焼夷弾のように放たれる。それは無差別に、家や人に襲いかかる。逃げ遅れた女性達のものと思われる悲鳴が、あちこちから聞こえてきた。


「あいつが例の歩怪物か......お前は俺が討ち取る!」


 彼は決して、先の会合での忠告を忘れたわけではなかった。しかし今目の前にいるのは、彼が長年追い続けてきた宿敵。契りを破ってでも、仇を討つことを決めた一真。
 説明された特徴から考えるに、怪鳥は黄金の神にあたるのだろう。
 ▼ 12 ウオウのことね◆/m/vJqYdX2 18/01/08 15:30:17 ID:VI71ufTE [12/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 神がこれほど圧倒的な強さを見せつけてさえ、彼に恐怖を与えるには至らない。彼は神の攻撃をすべて、最小限の動きで避けきっていた。炎を当てられないでいる黄金の神。その顔には焦りが見られる。するとそれは、地上に降り立つ。


「たわけ者! 自分から利点を潰すとは」


 それを好機と見た一真。彼は刀を鞘から抜きながら、走って接近。素早い居合切りを放つ。
 しかし神は急上昇。彼は虚空に刀を打ち付けた。降りしきる火炎。彼がそれを前に転がりながら、すんでのところで避ける。


「たわけたことを抜かしていたのは、俺の方だったか」


 これまでも確かに、苦しい戦いを強いられてきたことは数多くあった。だが今彼の目の前にいる敵は、これまでとは素早さ、火力、体力、知能全てにおいて桁違い。

 
「だけど俺は、お前を殺すために歩怪物狩りに身を投じてきたと言っても過言ではない。あのときの落とし前はきっちりとつける」


 何となく、周りを見渡す一真。そこにあるのは、燃えている木造の家と、無惨な姿で横たわっている屍。彼は瓦礫を階段のように使って、長屋の屋根に飛び乗る。それから、瓦を一枚拝借した。
 ▼ 13 /m/vJqYdX2 18/01/08 15:31:01 ID:VI71ufTE [13/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「それで何が出来ると言うのだ?」


 右手に瓦を、左手に刀を持って走る一真。神が翼を大きく羽ばたかせ、大量の火の玉を放出。屋根の上をひたすらに激走し、彼はそれをかわす。次第に両者の距離が狭まれる。

 彼が瓦を少し上向きに投げる。現在風に言えば、まるでフリスビーのように。それを撃ち落とすため、炎を発射した神。しかし、彼はその前に瓦に跳び乗り、瓦を足場にもう一度高くジャンプ。遂に神の上をとった。

 彼が左腕を伸ばすと、刀が胸に突き刺さる。墜ちていく神。彼はその勢いを利用して、さらに深く突き刺した。神が地にぶつかる。土煙が巻き起こり、彼らの姿が見えなくなった。

 刀を大きく振りかぶる一真。そこから放たれた一閃。神の左翼が、根本から切り落とされる。
 ▼ 14 /m/vJqYdX2 18/01/08 15:31:40 ID:VI71ufTE [14/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「くっ......私は......負けるわけにはいかない......! 同胞の無念を......晴らす!」

「無念だ? たわけた口を聞くな。なにも、被害に遭っているのはお前達だけじゃない......」


 彼の脳裏に、とある映像が写し出される。記憶が確かでないため、破壊された家屋は白黒。人々の顔もぼやけている。だけど一組の夫婦だけは、綺麗に着色されていた。血まみれで横たわる彼らの横で、二人の少年たちが泣き騒いでいる。
 彼が首を激しく横に振ると、映像が途切れる。眼前には翼を失った巨鳥が。その首をはね、とどめをさした一真。


「俺は過去の憎しみを原動力として戦ってるわけじゃない」

「今を生きる人々を救い、未来に希望を繋げる」


 彼は懐から懐紙を取り出し、刀についた血を拭う。自らの炎に焼かれる神には目もくれず。


「これで残るは五種類......」


 疲れきった体を引きずり、その場を立ち去る一真。死体を回収する業者がいるため、彼が片付ける必要はない。
 まもなく、逃げていた人達が帰ってきた。彼らはすれ違い様、街を救った英雄に拍手を送る。だが気恥ずかしいのか、彼は足を早めて行ってしまった。
 ▼ 15 /m/vJqYdX2 18/01/08 15:32:44 ID:VI71ufTE [15/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 自宅に戻るとすぐに、彼は眠りにつく。眠っているとき、とある夢を見た一真。中身は彼の半生についてだ。

 万治元年、西暦で言うと1658年に、彼は上野家の次男として産まれた。特別な才能には恵まれず、学問や武術は平凡。とはいえ暮らしに困ることはなく、不自由の無い生活をおくっていた。しかし彼が十歳の頃、あの事件が起こる。

 博多の市街地にやって来た黄金の神。それは街をとにかく焼き尽くした。神が飽きるまでの時間、その破壊活動が続いた。建造物の類いはことごとく燃やされ、人々の阿鼻叫喚が鳴り止まない地獄のような光景。

 この事件により、彼は両親を失った。幸い兄は元服済みだったこともあり、貧しいながらも二人での生活が始まる。この頃から、彼は学問や武術に精一杯打ち込むようになった。すべては歩怪物に復讐するため。
 
 時が過ぎ、彼は齢二十五になっていた。ちょうどその頃福岡藩は、歩怪物討伐の人材を集めていた。それを知った彼は、すぐに志願。これまでの努力の成果を存分に見せつけ、戦場では鬼神のごとき活躍。多くの歩怪物を殺していった。
 
だが歩怪物の圧倒的な強さを前に、彼らは敗走を余儀なくされる。街に戻ってきたときには、生き残りはたったの五人だけだった。

 とはいえ、それで彼の戦いが終わることはなかった。単独で次々と歩怪物を滅ぼしていった一真。次第に復讐の心は薄れていき、人々を守りたいという思いが強くなっていった。
 ▼ 16 カチュウ@やけたきのみ 18/01/08 15:34:44 ID:vonM98ag NGネーム登録 NGID登録 報告
おー、ええやん……
支援
 ▼ 17 /m/vJqYdX2 18/01/08 19:28:20 ID:lfRTsld. [1/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 時間はあっという間に過ぎるもの。身分の違いなど関係なく平等に。気づけば会合から六日が経っていた。


「明日の結果で命運が別れる。万が一のことは頭にいれとかないとな」


 朝早く目を覚ました一真。彼はまず、いつか読もうと思っていた数々の書籍を読みまくる。思えばここ数年、彼はずっと仕事詰めだった。趣味に割く時間など無かった。
 本をすべて読み終えたとき、日は西の空に傾いていた。本を手に、街へ繰り出す一真。しばらくすると、それらがいくらかの銀貨へ変わる。黄金の神を仕留めたこともあり、質屋の主人が多少まけてくれたのかもしれない。


「最後に行くのはあそこかな」
 ▼ 18 /m/vJqYdX2 18/01/08 19:29:26 ID:lfRTsld. [2/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 ある民家の前に来た一真。彼が玄関を叩いたとき、中から出てきたのは瓦版売りの男。


「珍しいな。なんか用か?」

「何だかんだ、お前には世話になったからな。感謝する」

「急にどうしたんだよ......?」

「い......いいや? 何もないぞ?」

「あやしい......わかった! お前歩怪物が怖くなったから脱藩するつもりなんだろ!」

「するか、このたわけ者!」

「冗談冗談。大方強い歩怪物を駆除するために遠出するってとこか?」

「......そうだ」

「酒でも飲みに行こうぜ」

「そのつもりだ。あいにく金ならそこそこある」


 彼らが最後に酒を交わしてから、結構な月日が流れていた。なにしろ、その頃の一真はまだ、歩怪物討伐を始めてすらいなかったからだ。男だってまだ内職に精を出していなかった。

 しばし、思い出話に花を咲かせたり、たわいのない話に興じる二人。しかし楽しい時間ほどすぐに過ぎるのは古来よりの摂理。そしてそれは、遥か未来においても変わらない。
 
 あっという間に過ぎ去ってしまう時間。翌日は早いため、そろそろお開きにしなければならない。彼がその旨を伝えると、男はすぐに快諾。代金は彼が全額支払い、二人はその店をあとにした。
 ▼ 19 /m/vJqYdX2 18/01/08 19:30:05 ID:lfRTsld. [3/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 男は大分酔っぱらっているように見えた。なので仕方なく、一真は彼を家まで送り返すことに。男をおんぶして、彼の家を目指す一真。


「着いたぞ。いい加減降りろ」

「ご苦労」

「全然酔ってないじゃんか! 俺を利用したな?」

「半分はそうだ。だけどもう半分は違う。ちょっとそこで待っててくれ」


 時折暖かい南風が、彼に吹かれた。まだ肌寒い日々が続くものの、春の予感を感じずにはいられない。そんなことに思いを馳せていると、玄関が開かれた。そして男が、何かを包んだ風呂敷を持って、やって来た。


「餞別だ。受け取りな」


 荷物を彼に渡す男。形から察するに、それほど大きくないものが二つ入っているようだ。彼はそれを受けとると、小さくうなずいた。そして前だけを見つめて、足を踏み出す。
 ▼ 20 /m/vJqYdX2 18/01/08 19:31:31 ID:lfRTsld. [4/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 彼が宿屋に着いたとき、そこにはまだ誰もいなかった。いつもは彼が一番遅くに来るのだが。仕方がないので彼は、握り飯を食べたり、風呂敷に包まれた物を確認したりして、時間を潰す。
 しばらくすると、女がやって来る。


「随分遅かったな」

「これから死ぬかもしれないのに、いつも通りのあんたの方がおかしいのよ」

「何言ってやがる。俺はこれまで何度も、明日死ぬかもしれないと考え続けてきた。そんなの今更だろ」

「......それもそうね」


 やがて、男二人もその場に辿り着く。女が彼らに、今回の作戦を伝える。


「残る五体の歩怪物は、いずれもここから北西の位置で固まっている。つまりそこを叩けば、この戦いは終わる」

「私たちがそこに出向くと、最初に火、氷、雷を司る鳥が迎える。そいつらは、私達で倒す。一真には先を行ってもらう」

「一真が倒すべく相手は白銀の神。いい? それが終わるといよいよ正体不明の歩怪物との決戦。これを全員で打ち倒す!」
 ▼ 21 /m/vJqYdX2 18/01/08 19:32:53 ID:lfRTsld. [5/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 彼らが到着したとき、太陽はすでに沈んでいた。そこは、一面に短い葦の生えた草原。しばし、辺りを見回す彼ら。すると三匹の鳥が飛んできた。奇声をあげ、威嚇する歩怪物。しかし彼らは動じない。


「この場を頼む」


 彼は仲間達にそう告げると、一目散に前へと走り出した。鳥達が、彼を視線で追う。すると大量の矢が、それらを襲った。射たのは彼の仲間達。そんな助けもあって、彼は無事そこを切り抜けることに成功。

 疾走する一真。前方にあるものを見つけた。それは夜の草原に佇む一羽の鳥。翼を畳み、彼を見つめる白い鳥。それが翼を広げて羽ばたく。すると、とてつもない突風が巻き起こった。彼は自分の体が吹き飛ばされないように、なんとか堪える。

 鳥が飛び立つ。さすれば嵐が吹き荒れ、雲が湧く。綺麗な満月も星も、雲に覆われてしまう。さらに冷たい雨が降り注ぐ。
 彼は容貌を存じてなかったが、直感でわかった。こいつが、白銀の神であると。
 ▼ 22 /m/vJqYdX2 18/01/08 19:33:52 ID:lfRTsld. [6/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「何が白銀の神だ。ただでかいだけの鳥じゃないか」

「帰れ、人間ごときが我々に敵うはずない」

「黙れ。化け鳥につかわせるほど俺の耳は安くない」


 どんなに敵が強くても、何もせずに逃げ去るようなこと彼は決してしない。彼は刀を抜くと、中段の構えを取る。さらに蛙を狙う蛇のような形相で、神を睨み付ける。

 口から高圧力の水流波を吐き出す水神。彼はそれを容易く避ける。神は何発も放つが、彼に当たることはない。しかし、その攻撃の目的は一真に命中させることではなかった。

 乾ききっていた地面が、泥だらけに変貌。足を動かす度に、ぬちゃぬちゃと音が鳴る。これでは機動力を殺されてしまう。

 神が羽根をバサバサ動かす。幾重もの透明で丸い刃が、彼に浴びせられる。日本刀で懸命に弾く一真。
 だが飛来する刃すべてに、対応することは出来ない。初めは腕や足を傷つけられ、終いには全身を切りつけられた。
 ▼ 23 /m/vJqYdX2 18/01/08 19:34:29 ID:lfRTsld. [7/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「こんな掠り傷がなんだ......」

「これはお前の素早さを更に削ぐための攻撃に過ぎない。次の攻撃が、とどめだ」


 彼は咄嗟に、その場から離れようとする。神が次の一撃で、自分の息の根を止めてくると思ったからだ。全身の痛みを堪えつつ、懸命に走る彼。しかしぬかるみに足をとられ、転んでしまった。泥だらけになった彼は、力なくその場に寝っ転がる。

 天高く舞い上がる神。空中に制止すると、体を丸める。すると身体中に、紫のもやのようなものがうごめきはじめる。やがてそれは禍々しい光を発した。
 体の中心に集約される光。神がそれを右翼で掴む。どうやら一真にそれを投げようと、いや、落とそうとしているようだ。


「これで終わりだ」
 ▼ 24 /m/vJqYdX2 18/01/08 19:35:08 ID:lfRTsld. [8/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「俺は負けない......」


 何かを取り出した一真。それは二尺ほどある、木製の筒。もは勝利を確信した神は、何となくその様子を眺めている。すると彼は、それを口に近づけた。

 楽器の尺八のようにも見えたその筒。それはなんと吹き矢だった。彼が息を送ると、矢が素早く飛び出す。そしてそれが、神の足にかすった。吹き矢は命中に難のある武器であるが、それを彼は見事使いこなしたのだ。


「こんな掠り傷、何の役に立つ?」


 余裕綽々の神。だが、その態度も長くは続かない。矢に塗られていた毒が、身体に廻っていったのだ。だんだんと麻痺していき、空中に制止しておくことも苦しくなっていく。そして遂に、力の入らなくなった神が墜落。これまで自分が溜めてきた光が爆発し、大きな損害を被った。

 音をたてて地面にぶつかる神。彼がゆっくりとそれに近づく。そして刀を左から右に払い、首を切り落とした。傷口から血が吹き出す。


「あいつからの餞別が役に立ったな。ふぅ......あいつらが打ち損じるとは思えん。従って残る歩怪物は一種類か......」
 ▼ 25 /m/vJqYdX2 18/01/08 19:36:12 ID:lfRTsld. [9/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 刀についた血を拭うため、彼がいつものように懐紙を取り出す。息を整え、最後の一体に備える。するとどこからともなく、声が聞こえてくる。


「ここまで辿り着いた人間は久し振りだ。ようこそ」


 何の前触れもなく、何物かが虚空から姿を現した。尻尾を持った、人の形に似た姿。体色は不気味なほど白い。これまでの歩怪物とは違い、生物のようには見えない。その歩怪物が、彼に話しかける。


「来たか、人間」

「身の程を弁えろ」


 姿が多少違えど、こいつも歩怪物。そう考えた彼は、平生の主義を変えることなく対応。体力を大幅に奪われ、全身がボロボロになった状況でも、彼は気持ちを強く保ち続けていた。
 

「君では私には敵わない。例え君が全快でもね」

「失せろ」
 ▼ 26 /m/vJqYdX2 18/01/08 19:36:56 ID:lfRTsld. [10/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 先程までと変わらず初速で、駆け出す一真。彼が刀を横凪ぎに払う。しかし刃はなぜか、敵を切り裂くことが出来ない。これ以上、動かすことが出来ないのだ。まるで見えない何かに、押さえ込まれているように。
 

「だから言ったろ?」


 次に彼は、全身の動きを封じられた。そして上空へ飛ばされ、あちこちの方向に動かされ、地に落とされる。この間、ミュウツーは一寸たりとも動いていない。


「どういうことだ?」

「仕掛けなど何もないさ。ほら、こんなことも出来るのさ」


 歩怪物が指をくいっと上にあげる。すると地面が円上にくり貫かれる。そして彼は、地面ごと宙に打ち上げられた。
 彼は筒に矢を詰めると、その中に息を吹き込む。あの水神ですら、僅かな時で麻痺させるほどの劇薬。矢はまっすぐに標的を目指す。


「無駄だ」


 超能力により、矢は木端微塵に。彼の秘策を、歩怪物は一切動かずに破った。
 ▼ 27 /m/vJqYdX2 18/01/08 19:39:41 ID:lfRTsld. [11/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 だが彼はまだ、絶望しきっていない。これまでの攻防から、敵の操れる大体の範囲を悟った一真。彼の下した結論。それは、直線上にある物体にしか適応されないということ。つまりひたすら動き続ければ、術にはまることはないということ。

 確かに歩怪物は圧倒的な素早さを誇る。だけど素早さなら、彼にだって自信がある。

 足場の岩盤が粉々に砕け散る。それの一瞬前に飛び降り、あたかも巻き込まれたかのように装う一真。彼は着地すると、歩怪物の背後に走り出す。

 なぜかその歩怪物は少しも動かない。彼を仕留めたと思い込んでいるのだろうか。彼は構わず接近。後頭部に、刀を突き刺した。だが、手応えは感じられない。


「身代わりか?」


 瞬時に刀を引き抜き、でたらめに辺りを駆け巡る一真。もし動きを止めてしまえば、再び敵の呪術にかかってしまうからだ。
 姿の見えない敵が、どこかから狙いを定めている。その事実は、意図も容易く彼の背筋を凍らせた。

 背後から爆発音が轟く。見ると、宙に浮いた歩怪物が光の塊を落として、地面を無造作に壊していた。吹き飛ばされた破片が、彼に襲いかかる。それを背中や後頭部に受け、ずっこける一真。

 動きの止まった彼目掛けて、歩怪物が光線を放った。それは彼に直撃。彼は一度衝撃で宙に持ち上げられ、重力によって地に叩きつけられる。
 ▼ 28 /m/vJqYdX2 18/01/08 19:41:02 ID:lfRTsld. [12/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
「格の違いを思い知ったか? 所詮貴様ら人間は、我々ポケモンには勝てん」

「まだまだ......!」


 刀を肩の後ろで振り上げ、胴体目掛けて打ち込む一真。桃色に輝く光の剣を、あっという間に生み出した歩怪物。彼の攻撃は、難なく受け止められてしまう。踏み込んでいた右足に力を込め、彼は間合いの外に逃れる。

 今度は歩怪物の方が攻めてくる。振り下ろされる斬撃。彼も負けじと応戦。二度、三度、刀を交える両者。しかし次に二人が得物を打ち合ったとき、彼の刀が弾かれてしまった。彼の手を離れ、遠くへ飛んでいく自慢の名刀。

 すかさず、彼の左肩に剣を突き刺す歩怪物。敵が腕に力を込めると、それが剣先にも伝わる。膨大な力を送られ、苦しむ一真。

 それを尻目に敵がより出力を強めたとき、起点からいっきに爆発。耐えられず彼は倒れた。


「わかっただろ。お前達は、われわれには絶対に敵わない」

「......獣風情が俺に話しかけるな......」

「この期に及んでまだそんな口を利けるのか。とことん勘に障る奴だ」
 ▼ 29 /m/vJqYdX2 18/01/08 19:42:05 ID:lfRTsld. [13/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 いつの間にか、光の剣は消えていた。開いた右手の平を、彼に向ける歩怪物。するとそこが発光を始める。ここまで戦い続けた彼も、今や虫の息。歩怪物はもはや、彼を超能力で縛らない。そうする必要がないと、判断したのだろう。


「やるじゃねぇか......お前。最期に一つ......教えてやる。どんな戦況においても......油断は厳禁だぜ......」


 息絶え絶えにしながら、捻り出すように呟いた一真。そして彼は、懐から繰り出したものを投げつけた。

 それは真っ直ぐに進み、歩怪物の掌に深々と突き刺さる。放とうとしていた光線が逆流。体の内部から爆発し、痛みが原因なのか、地面をのたうち回る。


「なに!?」


 力を振り絞り、立ち上がる一真。彼は歩怪物に馬乗りになると、顔面を何度も殴る。そして、刺さったままの苦無を引っこ抜き、喉に刺し直した。


「これで......おわりだ......」


 敵の死亡を確かめ終わると、彼は力尽きた。そのまま死体に倒れ込む。そして意識を失った。
 ▼ 30 /m/vJqYdX2 18/01/08 19:48:13 ID:lfRTsld. [14/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 街では瓦版が行き交っていた。記事は当然、歩怪物全滅について。博多に住むすべての人は、これを聞いて安心。これでもう怯えずに暮らせると、誰しもが期待に胸を高鳴らせていた。

 その頃彼は、診療所にて眠っていた。彼をここまで運んできたのは、彼の仲間達。彼らは三羽の歩怪物を倒したあと、一真のあとを追った。そこで彼らは、歩怪物に重なって倒れる一真を発見。そしてここまで担ぎ込んだということだ。

 そして決戦が終わって三日後、彼はようやく目を覚ました。見回すまでもなく、彼は大勢の人々に囲まれている。その中には彼の兄と、その家族の姿も。


「もう気は済んだか?」

「うん。俺もようやく先に進めそうだよ」


おわり
 ▼ 31 /m/vJqYdX2 18/01/08 19:53:04 ID:lfRTsld. [15/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
お読みしていただきありがとうございました。時代考証はほとんどやっていませんので矛盾などあったらごめんなさい
  ▲  |  全表示31   | <<    前    | 次  |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |  ▲      
                  スレ一覧                  
荒らしや削除されたレスには反応しないでください。

. 書き込み前に、利用規約を確認して下さい。
レス番のリンクをクリックで返信が出来ます。
その他にも色々な機能があるので詳しくは、掲示板の機能を確認して下さい。
荒らしや煽りはスルーして下さい。荒らしに反応している人も荒らし同様対処します。




面白いスレはネタ投稿お願いします!
スレの消えている画像復旧リクエスト
スレ名とURLをコピー(クリックした時点でコピーされます。)
新着レス▼