【SS】青空:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】青空:ポケモンBBS

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【SS】青空

 ▼ 1 g/SXBgh1y6 18/01/14 22:47:18 ID:KYc6rDmQ [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
※個人的な解釈アリ それでもOKという方はどうぞ


ぷしゅう。

カプセルが開いて、ワタシは中から上半身を伸ばして起きた。
頭の中もすっきりして、実に気持ちのいい目覚めだ。

ブロック状の保存食と飲み水を朝ごはんにして、ワタシはすぐに食いしん坊くんのデザインがされた防護服に着替えると、さっそくパイプをくぐって外へと出た。

パイプの先にあるのは、くすんだ橙色の空と倒れたビルや瓦礫、金属片、汚染物質、そしてその奥では食いしん坊くんがワタシより先に起きて、朝ごはんを食べていた。

「やぁ、おはよう。食いしん坊くん!」

「ドカグイイ!」

ワタシの挨拶を返すように、食いしん坊くんも景気のいい声を上げた。……ああ、食いしん坊くんにとっては、これが朝ごはんであって、昼ご飯、晩御飯みたいなものだよね。

さて、ここでボーっとしているわけにもいかない。他の食いしん坊くんたちがやってくる前に、ご飯を用意してあげなくっちゃ!

ワタシは荷車とシャベルを用意して、そこら中にあるゴミや汚染された土を運んで、
それを瓦礫の山まで運んで積み上げた。
力のいる大変な仕事だけど、食いしん坊くんが喜んでくれるのなら、なによりだよ。

すると、小さな地響きが遠くから聞こえてきた。目を細めて瓦礫の先を見ると、別の食いしん坊くんが周りのビルの残骸を口にしながら近づいてきた。

「やぁ、君はどこから来たのかな?」

「バクグイイ!」
 ▼ 2 g/SXBgh1y6 18/01/14 22:48:23 ID:KYc6rDmQ [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「せっかく来たんだし、ご飯もあるから食べていきなよ」

「モオオオオッ!」

遠くからやってきた食いしん坊くんはさっそくワタシが運んできた土やゴミを、ビルと一緒に大きな口へ放り込んだ。

食いしん坊くんは、せっせとセメントやヘドロを口の中に放り込んで光景を見て、ふと思った。

今まで当たり前のことだからどうとも考えなかったけれど、本当に食いしん坊くんってなんでも食べるなぁ。僕もずっと機械が作ってくれるあのブロックの栄養食ばかり食べているけど、あれだって、多少なりとも味の変化があるのに。

そういえば、みんなが他の星に旅立つ前、おじいさんの話で聞いたことがあったけど、昔の人たちはご飯もいろんなものを食べていたらしい。

パン、キノミ、ステーキ、スシ、ヤドンノシッポ、ゼットテイショク……特にワタシが寝泊まりしているここではマラサダなるものが有名だったようだ。

どれもみんな「おいしい」と言ってたけれども、「おいしい」って何だろうね。きっと、いつもと違った味の保存食を食べた時にこみあげてくるあの嬉しくなるような感じがそうなのかな?

だとしたら、ちょっと昔の人がうらやましいね。ワタシも是非、おじいちゃんが若かったころにあった食べ物を食べてみたいな。もっとたくさんの「おいしい」が体験できるかも。

ふと、ワタシは食いしん坊くんを見た。

さすがにワタシが瓦礫や金属片を食べるわけにはいかないけれど、食いしん坊くんも「おいしい」と感じるゴミや汚染物質があるのかもしれないね。
 ▼ 3 ストダス@こころのしずく 18/01/14 22:48:57 ID:GuYilTsc NGネーム登録 NGID登録 m 報告
僕は〜、青空に〜なー

ンア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙
 ▼ 4 g/SXBgh1y6 18/01/14 22:49:52 ID:KYc6rDmQ [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
食いしん坊くんたちのためにワタシはせっせと瓦礫やゴミを運んでいると、土の中になにかキラリと光るものを見つけた。おや? なんだろう?

シャベルでそれを掘り出すと、それはペラペラとした紙片だった。
だけど、黒色で縁取られた金色のそれは、空に掲げると太陽の光を浴びてキラリと輝いた。

「わぁ、きれいだなァ!」

これはきっとシールだ。金と黒の色合いがなんとなく食いしん坊くんを思わせるし、きっと昔、食いしん坊くんが好きな誰かが作ったシールかもしれない。後で睡眠用のカプセルにでも貼ろうかな。

ワタシは新しい発見にほくほくしながら、再び食いしん坊くんたちにご飯を届ける仕事に戻った。たまに瓦礫の中からこういう発見をするのがなかなか楽しくってしょうがない!

「……ふう!」

ちょっと一休みして、ビルの残骸に腰掛けながら、瓦礫だらけの街を見渡した。

「……うーん」

やっぱり、ちょっと食いしん坊の数が減ってきている。

ちょっと前なら、もっと食いしん坊くんが来てご飯を食べているのに、今はたった3匹しかいない。

ワタシの仕事の負担が減るからいいけれども、話せる相手が少なくなるからちょっと寂しい気がするね……。
 ▼ 5 g/SXBgh1y6 18/01/14 22:51:09 ID:KYc6rDmQ [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
そういえば、他の星に行ったみんなは元気にしているだろうか。

ワタシは食いしん坊くんたちの面倒を見るため、自分の意思でここに残ったけれど、最初はさみしくてたまらなくって、泣いちゃったっけ。もう今は慣れたし、食いしん坊くんたちがいてくれるから平気だけど。

でも、どうして食いしん坊くんの数が減ってきたのだろう? まさか、食いしん坊くん同士で共食いしているわけじゃないし。

そんなことを考えていくうちに、すっかり空は暗くなってしまった。

他の食いしん坊くんたちも、新しいご飯を求めて、どこかへ行ってしまったようだ。そろそろワタシも、シェルターに戻ろうか。

パイプを通ってシェルターへ帰ると、今日の日誌を書くことにした。

本当は機械を使って書いた方が楽だけれども、外にある機械は全部壊れちゃってるし、手でノートに書くしかない。


『今日は綺麗なシールを見つけた。せっかくなので睡眠カプセルに貼ろうと思っている。だけど、その一方で食いしん坊くんの数が減っていた。出来ることなら原因も調べたい』


鉛筆をさらさらと進めていくと、昔の人も『レポート』という形で、日記を書いていたことを思い出した。

今はキーボードで軽くたたけば難しい文字も打てるけど、こうして手で書いてみると、文字を書くのも頑張っている気がするし、昔の人の真似をしているみたいで、ちょっと自分がカッコいい、なんて思った。

一通り今日起きたことや思ったところを書き切ったところで、ノートを閉じてワタシは伸びをした。タイミングを見計らってきたようにお腹が鳴ったので一旦マスクを外すと、保存食を口にした。

今日はしっかりと保存食の味や触感を確かめてみることにした。

……うーん、やっぱり保存食はコリコリと硬くて、馴染みのある味が口の中に広がる。こういう味はなんていうんだっけ……。甘い、かな?

ワタシは防護服を脱いで、カプセルを開いてそこに横になった。明日も、食いしん坊くんたちが起きる前にご飯の用意をしなくっちゃ。

ワタシは横を向くと、目の前にあるカプセルの蓋を閉じるスイッチを押して、目を閉じた。
 ▼ 6 18/01/15 11:13:58 ID:ZDR86EPE NGネーム登録 NGID登録 m 報告
ヤケグイイ!
 ▼ 7 g/SXBgh1y6 18/01/15 19:32:26 ID:2mX04JWQ [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ぷしゅう。

カプセルが開いて、ワタシは起き上がった。
今日も昨日のシールの時のように、きっと素晴らしい発見がありそう。というか、あるよね! 食いしん坊くんもいることだし。

保存食を食べて防護服に着替えると、さっそく外へ出て食いしん坊くんのご飯の用意を始めた。

ワタシのすぐそばでは、食いしん坊くんがイビキをかきながら眠っている。時折お腹を掻いているのがたまに可愛く思う時があるね。

起きた時、山盛りのご飯が目の前にあったら、食いしん坊くんもきっと喜んでくれるだろう! ワタシは張り切って食いしん坊くんたちにご飯を運んであげた。

日が昇って、食いしん坊くんたちも目を覚ますと、さっそくワタシが用意したご飯を食べ始めた。

「ドカグイイ!」

「ハヤグイイ!」

「オオグイイ!」

ワタシは微笑んでそれを見守っていると、あるものが目についた。

ザー……ザー……

明るいところに置くと、勝手に電源がついて音声が流れるモニタ。以前、食いしん坊くんのご飯探しで偶然見つけたものだ。

『青い海! 青い空! この先 ビーチサイドです!』

「青い海、青い空、かぁ」

何気なく、ワタシの口から言葉が滑り出した。
 ▼ 8 g/SXBgh1y6 18/01/15 19:35:17 ID:2mX04JWQ [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
このモニタに映っているものは、鮮やかで爽やかさを感じさせる色の空や広い水たまりやそれに面する大きな砂の広場、そして立ち並ぶビルだった。

ワタシはモニタの中の空と、目の前にある橙色の空を見比べた。

モニタの中の空と違って、ワタシの目に映る空は油まみれのように汚れていて、さわやかさは感じられない。

「青色って、この空の色よりもっと綺麗なものなのかなぁ?」

この星の空が青色だったころ――おじいさんが若いころの時くらい昔なのだろうけれども――この街はどんな様子だったのだろう?

ここはたくさんのビルの残骸が転がっているから、きっと大勢の人やポケモンが住んでいたのだろう。

確か、近くには引っ越し届けのカードと、読み取るための機械があったっけ。ということは、この街には多くの人が暮らしていたはず。

お店とかもたくさんあって、食べ物や洋服を、街に住む人たちは毎日どんな服を着るのか、どんな食べ物を食べようか悩みながら選んでいるんだろうなぁ。

……今は服も食べ物も一つしかないから、悩むこともないし、らくちんだけど。
 ▼ 9 g/SXBgh1y6 18/01/15 19:35:45 ID:2mX04JWQ [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
そうそう、おじいさんたちの世代が燃やしちゃったあの発電所のポスター! きっとこの街には発電所が建っていたに違いない!

おじいさんたちに発電所の話をすると嫌な顔をしたし、ポスターもほとんど燃やされちゃったけれど、この街も発電所のおかげで、きっと豊かな生活を送ってたのかもね。

……じゃあ、なんでこの街は汚染物質だらけになっちゃったんだろう? おじいさんたちもみんな、ワタシにそのことを話してくれなかったから、よくは分からないや。

この星を離れる時が来たらおじいさんに聞いてみよう。おじいさんの先祖は昔、すごく有名だったトレーナーだったらしいし、きっと昔の人の生活のことも、どうしてこの街が汚染物質だらけになったのか知ってるはず。

きっとこの汚れた空も汚染物質が原因かもしれない。

いつかこの空も青色が戻ってくる時が来るのかな? それなら、食いしん坊くんたちはうんとご飯をたくさん食べてもらわなきゃ。

……ワタシがこの星を離れるのが先か、空が青色に戻るのが先かわからないけれども。どうせなら、青色の空を見てからこの星を離れていきたいな。食いしん坊くんたちにも、青い空を見せてあげたい。

「君たちも青色の空を見てみたいよね」

「グイイ!」

食いしん坊くんたちはワタシの言葉を分かっているのかどうか知らないけれども、なんとなく食べるスピードが速くなった気がする。

日が沈むころにはワタシが用意したご飯どころか、そこらにあった汚染物質やゴミも食べてしまった。食いしん坊くんたちも食べる気が増してなによりだよ。

ワタシはシェルターに戻ると、今日の日誌を書いてカプセルに入った。明日もいいことがありますように……。
 ▼ 10 スモッグ@ちかのカギ 18/01/15 20:16:37 ID:Ov.wOGas NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 11 g/SXBgh1y6 18/01/16 19:49:57 ID:/shrTP0w [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
橙色の空の下、睡眠カプセルから出て食いしん坊くんのご飯を用意してあげる。
いつもと変わらないワタシの生活。

そんなある日、シェルターで休憩していると訪問者がやってきた。

「……」

白い穴が何もない空間から現れて、その中から子供が現れた。
他の人たちが同じようにこの穴を通って、この星から旅立って以来久しぶりの人間だ!

ひょっとして、帰ってきてくれたのかな?

ワタシはうれしくなってたまらず、その人に声をかけた。

「わぁ! キミ、この星に戻ってきてくれたの!?」

「……?」

「……え? 違う?」

その子は違う、と首を振って否定した。
よく見れば、ワタシのように防護服を着てない生身のままだ。

「ひょっとして、別の世界の人間?」

「……」

うなずいた。
 ▼ 12 g/SXBgh1y6 18/01/16 19:51:40 ID:/shrTP0w [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
別の世界の人間やポケモンが穴を通してこの世界にやってきた事例はワタシが生まれるより昔からあったらしい。こちらから穴を開けて別の世界や星に行く技術もある。

現に、みんなが他の星へ逃げたときもこういった別の世界への穴を通って行ったのだから。

「まぁせっかく来たんだし、ゆっくりしていってよ。いろいろ散らかっているけどさ」

「……」

「外に出たい? なら、そこのパイプをつたって、どうぞ。なんなら、ワタシが案内してあげよっか?」

子供はお願いします、と言ってきたので、ワタシはその子を連れて外へ出た。

「そうそう、外の大気はあまり吸うと危険だから、長くはいないようにね」

「……?」

不思議そうな顔をする子供と一緒に外へ出ると、荒廃した街へとワタシたちは出た。

子供にとってビルの残骸や瓦礫は新鮮なものに映るみたいで、目を丸くしながらあたりを見渡しては、あれこれ質問してきた。

「その機械かい? 汚い水をろ過する装置だよ。でも、パイプが壊れてて水が漏れているんだよね」

「あのポスター気付いた? 瓦礫の中に埋まっていたものを貼ったんだよ」

「あの小さなカードには、多くの情報を記録できるんだよ」
 ▼ 13 g/SXBgh1y6 18/01/16 19:52:28 ID:/shrTP0w [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
子供が見つけたあれこれを説明しながら、瓦礫やゴミをかき分けて街の中を進んでいくと、一匹の食いしん坊くんが食事しているところにたどり着いた。

食いしん坊くんを見た瞬間、子供は目を丸くして身構えた。

「……!?」

「アクジキング? 食いしん坊くんのことかな?」

彼はワタシが生まれるより前にこの星に住んでいて、と説明しかけた時、食いしん坊くんは食べる手を止めて、こちらへ振り返った。

「ドカグイイ!」

「!」

なんと食いしん坊くんは咆哮を上げて、子供へと襲い掛かった!

「わわっ! どうしたの? 食いしん坊くん!」

「……!」

子供は下がって、とワタシを庇うように前へ出ると、モンスターボールを投げた。

「きゅきゅっ!」

中から飛び出してきたのは、ピカチュウそっくりの布をかぶった、不思議なポケモンだ。

「ドカグイイ!」

「きゅーっ!」

ワタシは無茶だ、と子供を制止しようとした。食いしん坊くんの巨体から繰り出される技はどれも強力で、こんな小さなポケモンではまず勝てない――そう思っていた。
 ▼ 14 g/SXBgh1y6 18/01/16 19:53:38 ID:/shrTP0w [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
でも、戦いを進めていくうち、小さなポケモンが有利になってきた。あの小さなポケモンが変わった踊りをしてじゃれついただけで、食いしん坊くんはあっという間に虫の息だ。

「グイ……イ!」

「……!」

そして、食いしん坊くんが大人しくなると、子供は不思議な青いボールを取り出して、それを彼に向かって投げた。

食いしん坊くんがボールに入ると、地面を転がってしばらく揺れた後、ボールは動かなくなった。
この子は食いしん坊くんに認められたんだ。

ワタシは初めて見るポケモン勝負に興奮していた。ましてや、食いしん坊くんに認められるトレーナーなんて、大人たちの中でもめったにいないのに。

「やるね、キミ! 食いしん坊くんと渡り合うだけじゃなくて、その力を認められるなんて!」

「……」

「なんでも食べちゃう奴だけど、大事にしてやってよ」

子供は顔の汗を拭いて笑顔で頷いた。

この世界の食いしん坊くんが一匹、いなくなっちゃうけど、外の世界で元気でいるなら、ワタシはなによりだよ。

そこでふと、子供はなにかに気付いたようで、落ちている看板に近付いた。

「おや? その看板かい?」

「……」

「その看板は、他のガレキより古い時代のモノらしいよ。サビの状態がひどいから全部は読めなくて残念……」

「……!!」

「どうしたの?」

急に子供は「嘘だ!」と叫んだあと、来た道を戻るように走り出してしまった。さっき食いしん坊くんを見た驚きよりも、遥かに仰天して。いや、むしろおびえているようにも見えたね。

「ねぇ、どうしたんだい? ねえってば!」

ワタシは子供をなだめようとして追いかけたけれども、スーツのせいで早くは走れなかった。子供はシェルターに戻ると、そのまま穴の中に飛び込んで消えちゃった。
 ▼ 15 g/SXBgh1y6 18/01/16 19:54:07 ID:/shrTP0w [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
どうしたんだろう? 食いしん坊くんにちょっとお別れの言葉もかけてあげたかったのに。

ワタシは踵を返して、あの子が目の色を変えた看板を確認した。

『......オ...役... あ...た... ...の なんで......る...』

うーん……ただのサビだらけの古い看板なんだけどなぁ。この書いてある内容自体があの子にとってびっくりするようなものなのかな?

……もしあの子がこの世界に戻ってきたら、どうしてあんなに驚いているのか、聞いてみたいな。

気が付けば空も暗くなっていたので、ワタシはモヤモヤした気持ちを抱えながらシェルターに戻って今日のことを日誌に書いた後、寝ることにした。





……あの子、戻ってこないかなぁ。
 ▼ 16 g/SXBgh1y6 18/01/17 20:47:06 ID:wLeTrYCU [1/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
それからはいつものように毎日、この街にやってくる食いしん坊くんたちにご飯をあげていた。

あの子がやってきて以来、ワタシは休憩しているときにそのことを考えていることがほとんどだった。

久しぶりに見た人の顔、というのもあるけれども、あの子が連れて行った食いしん坊くんの事や古い看板を見てびっくりした理由を知りたい。それにあの子の世界の事とか、話もしてみたかった。

どうしてだろう? 今まで食いしん坊くんたちと一緒にいるから平気だったはずなのに、今は気分が遠くなって、心の中に何かを巻き付けられたような気分になる。

ある日、ワタシはモヤモヤを抱えたまま、ため息をついてシェルターで一休みしている時だった。

再び空間に白い穴が開いて、あの子がやってきた。

「やぁ! また来てくれたんだね!」

「……」

願いが天に通じた、と舞い上がるワタシとは裏腹に、あの子の表情は浮かれないものだった。
そしてあの子は、あることをお願いしてきた。
 ▼ 17 g/SXBgh1y6 18/01/17 20:47:59 ID:wLeTrYCU [2/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……」

「え? この世界のこと、もっと調査したいから防護スーツを貸してもらえないかって?」

この世界の調査……ああ、そうだね。たぶん、前回来たときもきっと、調査が目的で来たのかも。
スーツ自体なら、予備のモノがいくらかあるから平気だけど、せっかくだから、とワタシはひとつ提案した。

「今、食いしん坊くんたちにご飯をあげる仕事をしてるんだけど、調査がてら手伝って欲しいな。キミが瓦礫の中で見つけたものは持って帰っていいからさ」

「……」

その子の浮かない顔色は変わらずだけど、二つ返事でオーケーしてくれた。

ワタシは予備の防護スーツを貸してあげると。その子はすぐに着替えて一緒に外へ出た。

さすがに防護服を着て、重いものを運ぶ仕事をするのは子供の体力ではきついものがあったけれども、時折その子は手持ちにいるポケモンの力を借りながら、食いしん坊くんのご飯を運んでくれた。

おかげさまで、普通なら丸一日かかる作業も数時間で終わらせることが出来た。

その子も、瓦礫の中を探したり、色んなものを見つけてはワタシに質問してくることもあった。それでもワタシは、誰かと一緒に食いしん坊くんにご飯を用意してあげるのが楽しくて、時間も忘れて過ごした。
 ▼ 18 g/SXBgh1y6 18/01/17 20:48:32 ID:wLeTrYCU [3/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
「いやあ、今日もいい一日だったよ。こうやって、誰かと一緒に食いしん坊くんにご飯をあげるなんて、今までなかったからさ」

「……」

「え? この星には本当にワタシ一人だけなのかって? うん、そうだよ。少なくとも、この街一帯にはもう誰もいないんだ。みんな、他の星に逃げちゃってね」

「どうしてこんなふうになったの、かぁ。ワタシにもよくわからないんだ。生まれた時からずっと、この街はこんなに散らかってたんだ。ワタシのおじいさんの世代に、なにかあったみたいだね」

会話が途切れた。
そこでワタシはここぞとばかりに、疑問をぶつけることにした。

「そういえば、前キミがここに来た時、あの古い看板を見てびっくりしていたね。あれはどうしてなのか、よかったら聞かせてくれないかな?」

「……」

その子は一度俯いて、言葉にするのをためらったようだ。だけど、意を決して喉から声を絞り出してくれた。

それは、ワタシにとって頭を金づちでぶつけられたような、衝撃的な話だった。
 ▼ 19 g/SXBgh1y6 18/01/17 20:51:30 ID:wLeTrYCU [4/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
その子が来た世界は、アローラ地方と呼ばれていた。

あの古い看板はその子がやってきた、アローラ地方にも同じものがあったと言った。

つまり、その子は、ワタシにとって過去の世界からやってきた人間なんだ。

そしてこの街はメレメレ島の『ハウオリシティ』という街にあたる場所だった。

ワタシは生まれて初めて、この場所が『アローラ地方』『ハウオリシティ』と呼ばれていることを知ったよ。

そりゃびっくりするわけだよね。下手をすれば、この子にとって未来の世界にやってきたわけだから。


だけど、その子の住んでいる世界には、食いしん坊くんはいないそうだ。だから厳密には過去の平行世界と呼ぶべきかもしれないね。

この子が最初にこの世界へやってきたのは偶然だったけれども、二度目に来たときは、どうしてこの世界が汚染されてしまったのかを調べに来たそうだ。

最初はあまりにも衝撃的な内容だったから、しばらくだんまりしていたけれども、なんとか冷静さを取り戻してワタシは口を開いた。

「そうだったんだね……」

「……」

「ねぇ、よかったら、キミの世界の話、聞かせてよ」

「……?」

口から出た言葉は、ワタシにとっても突拍子のない言葉だった。その子もちょっとびっくりしてる。
 ▼ 20 g/SXBgh1y6 18/01/17 20:52:54 ID:wLeTrYCU [5/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
その子の住むアローラ地方は自然が豊富で、多くの種類のポケモンが住んでいて、海に浮かぶ4つの島で成り立っているようだ。

それに、ハウオリシティには、ショッピングモールなる場所があって、そこではたくさんの服が買えたり、ポケモン勝負でおいしい食べ物を取り合うバトルバイキングがあるみたいだ。

また、アローラ地方には他にも島があって、11歳になった子供たちは島巡りに出てアローラ地方を旅するみたいだ。

その子からアローラ地方の話を聞き終えると、ワタシは心の奥底からついたため息を漏らして、一言つぶやいた。

「……いいなぁ」
 ▼ 21 g/SXBgh1y6 18/01/17 20:53:59 ID:wLeTrYCU [6/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
青い空、たくさんの服、おいしい食事、人々の笑顔、ポケモンと旅をする、もしもこの世界が汚染されていなかったら、ワタシも島巡りしてたのかもしれない。

そしたら、ワタシの最初のポケモンはなんだろうね? 食いしん坊くんだったらいいなぁ。

その後も、ワタシもその子も胸のつっかえが取れたのか、お互いの世界の話で花を咲かせた。気が付けば、お互いに笑顔が戻っていた。

そこでワタシは、もう一つ、聞きたいことを思い出した。

「そうだ、キミがゲットした食いしん坊くんは元気かい? お役に立ってるかな?」

「……」

「へぇ、今いるのかい? 是非見せてよ!」

その子は青いボールを懐から取り出すと、目の前の瓦礫の中へ投げた。するとボールの中から食いしん坊くんが勢いよく飛び出した!

「ドカグイイ!」

「やぁ、元気そうでよかったよ! そっちでもうまくやってるようだね!」

「バクグイイ!」

食いしん坊くんは元気そうに雄たけびを上げると、すぐに瓦礫を口の中に放り込んだ。

その子の話だと、どうやら向こうのアローラ地方でも処理しきれないゴミを食べてくれたり、ポケモン勝負で活躍しているそうだ。
 ▼ 22 g/SXBgh1y6 18/01/17 20:55:14 ID:wLeTrYCU [7/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
やがて楽しい時間が過ぎて、その子が元の世界に帰る時が来た。ワタシたちはシェルターに戻ると、その子は白いホールに向かっていった。

その子の背中を追っていくうち、ワタシはその子に声をかけた。

「ねぇ、もしよかったらまたこの世界に来て欲しいんだ」

「……?」

「また、食いしん坊くんのご飯の用意を手伝ってくれたら助かるし……それに、キミの世界の話、もっと聞きたいんだ」

「それに、ワタシと一緒にこの世界を調査すれば、きっとどうしてこの世界がこうなったのか分かるかもしれないでしょ?」

この子と一緒に話をしながら、食いしん坊くんの世話をするのは楽しい。

それに、この子と食いしん坊くんとなら、ひょっとしたら遠い未来、この星を元の綺麗な状態にすることが出来る気がするんだ。

根拠なんてまるでないけど、勇気が湧いてくる。本当にできそうな気がしてくる。

すると、その子は再びワタシがびっくりするようなことを言ってきた。

「ええっ? よかったらアローラ地方に来てみないかって?」

一瞬思い浮かんだのは、青い空や食べ物だった。……だけど。

「……うれしいけど、遠慮しておくよ。食いしん坊くんをほっとくわけにもいかないしね」

「……」

「それに、きっとこの世界も、キミの世界のアローラ地方のようにキレイに戻せるよ! だって、ワタシとキミ……そしてアクジキング……食いしん坊くんがいるんだからさ!」

「……!」

「うん! またね!」

ワタシとその子は再会の約束と固い握手を交わし、別れを告げた。
その子は聞いたこともないポケモンの雄たけびとともに白いホールに飛び込んで、消えてしまった。

あの時は戸惑いと寂寥感が心に残ったけれども、今は爽やかな風が吹き抜けるような晴れやかな気分だ。

きっと、青い空を見上げたら、こんな気分になるかもしれない。
 ▼ 23 g/SXBgh1y6 18/01/17 20:56:11 ID:wLeTrYCU [8/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
ぷしゅう。

カプセルが開いて、ワタシは中から上半身を伸ばして起きた。
頭の中もすっきりして、実に気持ちのいい目覚めだ。

ブロック状の保存食と飲み水を朝ごはんにして、ワタシはすぐに食いしん坊くんのデザインがされた防護服に着替えると、さっそくパイプをくぐって外へと出た。

パイプの先にあるのは、くすんだ橙色の空と倒れたビルや瓦礫、金属片、汚染物質、そしてその奥では食いしん坊くんがワタシより先に起きて、朝ごはんを食べていた。

「やぁ、おはよう。食いしん坊くん!」

「ドカグイイ!」

ワタシの挨拶を返すように、食いしん坊くんも景気のいい声を上げた。

ワタシは、橙色の空を見上げた。
相変わらず、油まみれのように澱んでいて、この汚染された世界を象徴しているみたいだ。

だけど、きっとこの空を青色に戻してみせる。この世界も、綺麗にしてみせる。

だってワタシには、食いしん坊くんと、別の世界からやってきた新しい友達がいるんだから。



to be continued…
 ▼ 24 g/SXBgh1y6 18/01/17 20:58:59 ID:wLeTrYCU [9/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
これで本SSはおしまいです。

以前書いたSSが鬱エンドだったので、今度は暗い世界に光が差し込むような話にしてみました。

ウルトラビルディングは過去だけでなくこれからスーツの人とアクジキングが歩んでいく未来とか色々想像できて楽しいところですね。

それではまたどこかで新しい作品をお見せできればと思います。
 ▼ 25 スラオ@カチャのみ 18/01/18 12:04:38 ID:aCMXA.Fo NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
アクジキイイ!

 ▼ 26 ストダス@しゅんぱつのハネ 18/01/18 17:33:33 ID:4y7v663o NGネーム登録 NGID登録 報告
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