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SS

「ブイズのパーティー」 【SS】

 ▼ 1 ッキング@かがやくいし 18/02/02 22:43:57 ID:RXwlpi1o NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「この度、カロス地方はアサメシティにてイーブイ族のための婚活パーティーを催すことになりました

是非ともご参加下さいますよう宜しく申し上げます」

ある日そんな手紙が各地方に届いた

主催者はとある大財閥で、パーティーは数日に渡って盛大にやるようだ

しかし奇妙な注意事項がいくつかあり、どうやらただのお見合いとはいかないらしい

それでも、招待された者たちは続々と参加を表明していった

“イーブイ族のための”というフレーズがとても魅力的だったのである

雌雄比が非常に偏ったイーブイ族の♂にとって、イーブイ族を伴侶とすることは憧れであり、同時に競争率の激しい夢である

そのような経緯から、大事にされるので♀の方もイーブイ族と結ばれることを望む傾向にある

怪しくもまたとないチャンスを求め、招待された十名が集まった

 ▼ 500 TOg35azcXc 19/12/08 13:45:01 ID:f6GsaJvc NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
渡された道具を手に幽霊に向き直る

相手は体に馴染んだのか、踞っていた姿勢から立ち上がり

鋭く『腕』を突き出し攻撃を始める

プラスル「す、姿が変わりました!?」

眼だけのお化けは、先程投げた"ドール"に似た姿に変貌していた

キノガッサ「……何か凄い強そうなんだけど」

ただし、何倍も巨大で禍々しく凶悪にした姿にだ

サマヨール「えぇ…… 適応しちゃうんですか……」

困惑した声で不穏な単語が聞こえる

キノガッサ「……適応?」

サマヨール「稀にあるんですよ 霊と波長の合う物が
しかし初っ端からとは運の悪い」

キノガッサ「先に聞いておきたかったなぁ!!」

今更言っても仕方ないが、叫ばずにいられない

身振りでプラスルを下がらせ、自分は前に出る

インファイトに出れば目標を集中してくれるだろう

そう思い、相手の腕を避けつつ攻撃を仕掛けるが

キノガッサ「く…… 影を殴ってるみたいだ」

一応試してみるものの、すり抜けるばかり

こちらの技を受け付けないというのは本当らしい

あちらの攻撃は今にもこの身を引き裂きそうだというのに



プラスル「あ、悪霊退散!!」

放心から立ち直れたようで、後方から"塩"が送られてきた

幽霊の動きが目に見えて鈍く、大雑把になる

お陰でじり貧状態が緩和され、隙を狙いやすくなった

キノガッサ「そらっ! "精霊球"!!」

ここぞというところで投げた紅玉に、幽霊が吸い込まれた

抵抗するように何度も揺れる

しかしやがて静まり、後には"精霊球"と"ドール"が残された

キノガッサ「……捕獲、完了?」
 ▼ 501 TOg35azcXc 19/12/08 19:31:08 ID:o2A6KegQ NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
サマヨール「ひょひょ いきなりの想定外でしたね」

サマヨールは落ちた道具を回収しながら言う

適応による超強化は、本来起こり得ない確率らしい

だというのに、いきなりぶつかったのは本気で不運だった

サマヨール「初めてなのにあれに対応出来ていたのは上々です」

キノガッサ「…………」

お褒めの言葉を頂いたが、余り喜べそうもない

サマヨールがいなければ早々に脱落していたのだから

霊が適応する以前の初接触でさえまともに動けなかった

気を抜いてはいけないと、先に注意されたにも関わらずだ

もしかすれば、自分かプラスルが憑依されていたかも知れない

そう考えると震えが止まらなくなってしまう

乗っ取られると、果たしてどうなってしまうのか

あれに…… あんな気味の悪いものに……

そんなのって



プラスル「キノガッサさん!!」

名前を呼ばれて、恐ろしい想像から引き戻された

俯いていた顔をあげ、プラスルの方を向く


プラスル「次は、大丈夫です」

強い目をした彼女は、震えながらも確と宣言する


プラスル「初めてだったから、怯んだだけです」

それはどちらに言い聞かせる言葉なのか

こっちか、それとも彼女自身だろうか


プラスル「次は、動けますよ」

ただ一つ言えるのは、彼女の言う通りだということだ

 ▼ 502 ビルドン@ピーピーエイダー 19/12/13 07:41:01 ID:oeHUBvSE NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ
 ▼ 503 TOg35azcXc 19/12/14 10:34:16 ID:Dk.MbahE [1/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
サマヨール「また浮遊霊が接近しています」

幾許の間も置かずに告げられた

騒めく気配が近づいて来るのが解る

笑いそうになる膝を叱咤して、息を詰めて待ち

キノガッサ「……さっきのとは、姿が違うんだな」

姿を現したのは大口が特徴的な何か

これまた生前の面影はなく非常に不気味

目は見受けられず、小さな手はあるがやはり足もない

地につかれずふわふわと浮いているそれに、鳥肌が立ってしょうがない

奴の喉奥から響く音声は低く耳障り

全ての要素が生理的嫌悪感を刺激する

この世にあるべからざる存在なのだとよく知らしめてくれる



だがしかし一度目と違い怯むことはない

怯んでなどやるものか

プラスル「……! ……!」

震えながら悲鳴を出すまいと力む気配がする

プラスルが気丈なのに府抜けているわけにはいかない

深呼吸をして、身構え直す

彼女もまた覚悟を決めたようで、

プラスル「何かに取り憑く前に……お"塩"!!」

早速幽霊を弱らせに掛かった

相手の動きが鈍り隙が生まれる

キノガッサ「そして逃がさず"精霊球"だ!」

間髪を入れず紅玉を投げつける

あっという間に球は幽霊を収め、静まった

サマヨール「お見事でございました」

幽霊入りの"精霊球"を回収し労ってくれる

大丈夫、ちゃんとやれる

巧くいった実感と共に、彼女とハイタッチした
 ▼ 504 TOg35azcXc 19/12/14 10:43:00 ID:Dk.MbahE [2/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
サマヨール「本来、ただの浮遊霊はあんなものなのです」

幽霊入りの"精霊球"を回収しつつそいつは言う

確かに、息込んでいた割にはあっけなかったかも

幽霊自体に耐性のないこちらとして、拍子抜けとはいかないけど

それでもやはり最初の奴とは比べ物にならない

適応強化はそれだけ危険なのだ

サマヨール「先程奴等が厄介なのは適応だけではありません
ひょひょ 丁度来たようですよ」

プラスル「ま、また!? そんなすぐですか!?」

息を整えるインターバルはそんなに与えられないらしい

こちらが引き寄せてるという話だから、仕方ないのかもしれないけれど


次に姿を現したのは、首から上のないサーナイトと覚しき影

その後ろから、尻尾が腹を突き抜けたボスゴドラらしいもの

更に骨と腐肉だけの魚系

どの霊も、原型を留めていて生前が想像付く

キノガッサ「うぇ……」

言っては悪いのかもしれないが、気持ち悪い

生前がわからないタイプの方が易しかったかも

それに

プラスル「さ、三体も……!?」

そう、同時に複数体なのだ

奴らの厄介さとはそれか

想定して然るべきだったかも知れないが油断してた

サマヨール「お二方は首無しを あとは私が」

思考停止しかかったところで横からの声が聞こえる

指示を出したそいつは、魚に"ドール"を投げつける

と、同時にボスゴラに突っ込んでいった

キノガッサ「……オーケー、仕事しないとか」

その勇姿のお陰か、首無しとはまだ距離のあるうちに立ち直れた

 ▼ 505 TOg35azcXc 19/12/14 10:55:11 ID:Dk.MbahE [3/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

「取り憑かれちゃ堪んないから、ね!」

顔もないのに睨んでくる幽霊に怖気を覚えるが、"ドール"を投げつけ足止めをする

しかし、巧く当たらなかった!

テレポートのように一瞬で横にずれて避わされてしまう

キノガッサ「そ、そんなのあり!?」

予想外の行動に絶句してしまった

その隙に霊は一気に距離を詰め覆い被さろうとしてきて

プラスル「――所長、危ない!!」

間一髪、彼女の投げたものが霊にぶつけられる

不意打ちを受けた霊は瞬く間に姿を消した



難を逃れて慌てて下がりつつ辺りを見回す

また、テレポートか? 奴はどこへ……?

プラスル「あ、あれ? 今私が投げたの、"精霊球"?」

彼女の戸惑った声が上がる

どうやら無我夢中でそのとき持っていたものを投げただけらしい

急いで先程霊が来た地点に目を向ける

そこには、動かない"精霊球"が一つ転がっていた

キノガッサ「"塩"無しでも、捕獲できるん、だ?」

プラスル「そ、そうみたい……ですね?」

気を張り詰めていただけに、今度は拍子抜けした



キノガッサ「! そうだ、他の二体は!?」

気がついて慌ててサマヨールを探す

サマヨール「ひょひょ 終わりましたよ」

丁度、幽霊入り"精霊球"を押さえ込んでいるところだったようだ

ていうか、それで抵抗を無力化するのか……

 ▼ 506 TOg35azcXc 19/12/14 20:38:40 ID:Dk.MbahE [4/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「これ、僕ら、要る?」

一匹で二体を軽々片付けてしまった様を見て、つい弱音が口から零れた

足手纏いにしかなれていないような気がする

だったら、いない方がいいのかも、とか

サマヨール「いえいえ、お二方のお陰で対処出来ているようなものです」

相変わらず煽てるような口調だ

本気で言っているのか怪しいものである

サマヨール「それに、先に言ったように生者がいた方が効率がよいのです」

足手纏いでも結果として早く片付くということか、

そう言われてしまうと納得するしかない



その後も次々に霊が現れた

見た目がバグった奇怪なもの

樹木や石に憑依していて、普通動かない物体が襲いかかってくるもの

極小さく素早くて"精霊球"を当てるのに苦労したもの

数体纏めて襲ってくることも何度もあった


どれもこれも恐ろしく、油断はできなかった

それでも、どんなことでも慣れてくるもので、動きはどんどん良くなる

しかし本当に沢山いる

中には苦戦を強いられたものもいた

三匹がかりでも捕獲し損なって逃がした個体もいた

確かにこれはサマヨールだけで対応するのが難しい

依頼してきた理由もよく解った
 ▼ 507 TOg35azcXc 19/12/14 20:44:25 ID:Dk.MbahE [5/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
疲れを圧し殺しつつ動き続けて、丑三つ時の頃ようやく小休止が訪れる

キノガッサ「……いや、多、過ぎない?」

もう息も絶え絶え

プラスルに至っては近くの木に凭れてぐったりしている

サマヨール「本当、こちらの不徳の致すところで」

サマヨールは気拙そうにするばかり

起きてしまったことに文句をいってもしょうがないんだけど

事前になんとかする術はなかったのかと考えてしま





キノガッサ「ーー!!」

不意に背筋が凍った

何かが見えたわけでも、聞こえたわけでもない

強いて言えば、第六感が告げたといおうか

途轍もなく危険な何かが近づいてくるのが解った

恐らく、この日一番

あの"ドール"に適応した奴よりもだ

サマヨール「何が起きるかわかりません! 固まってください!」

倒れているプラスルの方へ行きながらサマヨールが言う

指示にしたがい、竦みかけた足をなんとか動かした

短い距離なのにうまく進めずもどかしい



プラスル「はっ……! かっ……!」

辿り着いた先で彼女は威圧に当てられて過呼吸になっていた

だがそれをどうにかする猶予もなく





「O-ro-ro-ro-ro-ro-ro-ro-ro!!」

気配の主が、その姿を現した

 ▼ 508 TOg35azcXc 19/12/14 20:49:02 ID:Dk.MbahE [6/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
目の前に出た相手は、強烈な存在感を放っていた



余りにも強大で、凶悪で、狂暴な気配はそれだけでこちらを押し潰しそう



その姿は悍ましく歪なもので



獣の体に竜の翼、角付きの頭に蛇の尾に種々雑多な七本脚


身体中あちこちにある目玉は感情が読めず気色悪い


薄気味悪い靄に包まれたそれはこれまで以上に異常そのもの



膝が笑って仕方ない



あんなもの、どうすればいいっていうのだ






サマヨール「霊憑依とはまた悪趣味な……
存在値が三乗……いえ、四乗?」

そいつでさえ呆然としたように呟き

サマヨール「ここは一時退却します!」

叫ぶや否や、プラスルを担ぎ上げ、こちらの腕を掴み走り出す

縺れそうな脚をそれでも振り上げ、一目散に逃げ出す
 ▼ 509 リバード@あおいビードロ 19/12/15 01:00:29 ID:Bb2EAhcI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 510 TOg35azcXc 19/12/15 15:10:11 ID:EXHokJVs [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「プラスル、大丈夫、なの」

サマヨールの背中で苦しそうに目を瞑ったままの彼女を見遣る

乱暴に駆けているためすごく揺れていて、苦悶しているようだ

サマヨール「気を失っていますね 大丈夫、責任を持って守りますとも」

あちらから巻き込んできた手前義務感はあるようだ

それをいえば、こちらも所長としての義務感に苛まれてしまう

やっぱり、無理にでも止めておけばよかったかな

怖い思いをするのは目に見えていたのだから

……トラウマになってなきゃいいけど



キノガッサ「ところで、なぜ、真っ直ぐ、走らない?」

キメラ霊の巨大な気配が迫る中、頻繁に曲がったり大回りさせられる

それが気になって尋ねた

真っ直ぐ行った方が速い上に疲れないと思ったのだが……

サマヨール「それが、地縛霊共が待ち構えているのです」

……中々そうもいかないらしい

サマヨール「奴等も片付けなければいけませんけれども」

相手にしている余裕はないということだ

確かに今は逃げるのだけで必死である

同時に処理などできようはずもない

キノガッサ「……そういう、こと」

任せればいいと理解してそいつの誘導を追いかける
 ▼ 511 TOg35azcXc 19/12/15 15:16:05 ID:EXHokJVs [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
質問ついでにもう一つ

キノガッサ「霊憑依、ってなに」

少しでも現状を打破する手段が知りたくて問い掛けた

サマヨール「あれは一体の霊ではありません
幾体もの霊が溶け合い、混ざりあったなれの果てです」

霊は何にでも憑くと言っていたな

つまり霊同士でも例外ではないようだ

サマヨール「霊憑依は二者の適応に依るので、存在値が非常に高まります
あれは、四者のようなのであれだけ巨大になったのでしょう」

一体の適応でも恐ろしかったのに……

複数体分などとても手に終えたものじゃない

酸欠の所為だけではなく血の気が引く

後ろの気配がぐんと大きくなった気がした


サマヨール「ただ、霊憑依には我々にとって利となる欠点もあります」

サマヨールは努めて明るい声で切り出す

サマヨール「憑依の厄介なところは、此岸との繋がりを持つところです
しかし霊憑依ではそれがないのです」

それはつまり、此岸に留まる力が働かないと言うこと

なら

キノガッサ「……勝手に、弱、まる?」

彼岸に引っ張られ続け、存在値は消費されるということだ

サマヨール「ええ 一時的に強くなりますが、それきりです」

キノガッサ「……やっと、朗報、だね」

走っていて弾んだ息と、見えた光明に弾んだ気持ちと

二重の意味で弾んだ声が出た

しかしサマヨールはというと思案顔

サマヨール「意思持つものに憑依するので、混在し混乱し歪みが加速します
混濁した意識は意志が統一されず動きが鈍るものです
また、一度憑いてしまった以上剥がれるときにも存在値を必要とします
要するに割に合わないのですよね
だから早々起きないし起きても意味のない現象なのです
それがあんなにも膨れ上がって脅威になるとは……」

独り言のような説明を続けていた

 ▼ 512 TOg35azcXc 19/12/21 20:06:32 ID:v/VkuNBE [1/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
時間を稼ぐのだと疲労が貯まった脚に鞭打ってどれくらいか

何度目か大きく曲がっていたときとうとう距離を詰められきってしまった

まあ仕方ない

こちらが右往左往しているうち相手は直進してくるのだから

元々逃げ切る算段ではなかったからそれは良いのだけど……

キノガッサ「これ、最初から逃げるべきじゃ、なかったんじゃ?」

相対した霊を見て疑問が口をついて出る

だって話と違う



「「「Gya-a-a-a-a-a-o-o-o-oh!!」」」



キノガッサ「さっきより随分、でかくなってるんだけど!?」

始めに目に入ったときの何倍にもなっている

しかも形姿まで大きく違う

部位ごとにはあくまで何かしら動物らしかったはずが、いまや見る影もない

全体的に、肉塊と呼ぶべき醜いブヨブヨになっていた

そのくせあちこちにある眼はギラギラしてるし大小様々な脚が変な位置でうごうごしてる

気迫も強まってるし、これは存在値が下がっている気がしない

キノガッサ「なんでこんな膨れ上がってんの!?」

サマヨール「そ、想定外です 理解ふの……あっ!?」

視界の端に新たな浮遊霊が現れる

そしてこちらに突っ込んでこようとし



肉塊に呑み込まれ消えた


「「「Do-ka-gu-u-u-i-i-i-i-i!!」」」


途端、肉塊の気配が大きくなった
 ▼ 513 TOg35azcXc 19/12/21 20:10:16 ID:v/VkuNBE [2/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「……そういうカラクリね」

理屈は単純っぽい

ただ霊憑依が繰り返されているだけ

それでも消費より加速の方が上回っているのだから堪らない

弱体化が狙えなくなるどころか追い詰められるばかりだからだ

サマヨール「一ぃ二ぅ三ぃ…… これは浮遊霊だけじゃないですね
地縛霊まで貪欲に呑み込むとは……」

もはや呆れるしかない

只管強くなっているのを恐れるべきか、バラバラだったのが一つに纏まっているのを喜ぶべきか

結局、やるしかないってことは変わらないんだ

負けたときのことなど考えたくもないが

キノガッサ「立ち向かわなきゃならない、かな」





「Ba-ri-ba-ri-dha-a-a-a-ah!!」



キノガッサ「でかいってのは、脅威だな、っと!」

幸い、相手の動きは単調だった

突っ込んで来るだけ

特に奇策や行動パターンの変化などもないようだ

お陰で行動の先読みは簡単

しかし巨体であるが故に全力で駆けなければ直撃コースから逃れられない

もし当たってしまったら、怪我をするだけじゃ済まなそうだ

一度でも受けたらお仕舞いと考えて、慎重に

焦らず、しっかり隙を見つけて

キノガッサ「取り敢えず、"塩"、喰らえ!」

逃げる合間に何発か攻撃を加えてみるも

キノガッサ「……あんまり、効いているように見えないな」

どうやら焼け石に水のよう

"精霊球"は既に投げたが弾かれている

他に有効な手立てはないものだろうか
 ▼ 514 TOg35azcXc 19/12/21 20:15:59 ID:v/VkuNBE [3/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
サマヨール「一応、霊は霊に弱いというのが通例ですが……」

新たな弱点の開示は、しかし苦々しい声である

サマヨール「……これは私の方が圧しきられるでしょうね」

そりゃそうか

先程呑まれた霊を思い出せば納得だ

サマヨールに太刀打ちできる範囲はとうに越していた



敵の攻撃は当たらないようにして

相手が更に霊を呑み込むのを避けるため一ヶ所に留まって

新たな浮遊霊は近づく前に処理して

無理しない範囲で"塩"をかけて

ミスできないプレッシャーに疲れも合わさって体力がガリガリ削られる



それでも必死に刃向かい続け

"塩"を投げたつもりで"ドール"を投げてしまった

キノガッサ「あっ……!? 」

遂に犯してしまったミスに途方に暮れかけ

キノガッサ「…………!?」

相手の気迫が弱まったことに驚く

奴もまた戸惑ったのか、進行方向を変えて"ドール"へ突っ込んでいく

"ドール"を呑み込んだ霊はまた力を増していたが、これは……

キノガッサ「引き寄せ、られる? いや、一体引き剥がせる、かな?」

偶然だったが、これこそ光明だった
 ▼ 515 TOg35azcXc 19/12/21 20:22:48 ID:v/VkuNBE [4/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
考えてみれば単純な攻略法だった

霊は此岸への繋がりを求める

生者は特に引き寄せ易い

"ドール"は生体のダミー

そして剥がれるときにも存在値が減る

あと、複数体の適応は一体の適応より厄介という理解もしてた

で、一体の適応はそうそう起きないというのも忘れていた

一番最初に"ドール"に適応した個体がいた所為か、失念してしまっていたようだ



そうと決まれば、

キノガッサ「これで、いけるでしょ!!」

十個纏めて"ドール"をぶつける

肉塊はたちまち分裂し、十体の憑依霊と一体の浮遊霊になる

一体一体の存在値は、極小規模で

……浮遊霊は勝手に消えてしまった

サマヨール「では、"精霊球"を!!」

そして十体とも"精霊球"に収める

拍子抜けしてしまう程抵抗は全くなかった

キノガッサ「捕獲、完了、と」

サマヨール「なるほど、これは…… すみません、全然思い付きませんでした……」

気付いてみれば、なんであんなに苦労したのかという感じだ

本当にヘトヘト もう動きたくない……

 ▼ 516 ロア@ざいりょうぶくろ 19/12/23 09:55:25 ID:UNPkTs1s NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ
 ▼ 517 TOg35azcXc 19/12/27 22:53:26 ID:tMxoUwqc NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「おいおい、俺のエントリー、何してくれちゃってんのさあ!?」

唐突に聞いたことのない声が響き渡る

驚き、慌てて声の方を向き構える

何やら妖しい奴が猫背気味に立っていた

キノガッサ「………………何者?」

ヤミラミ「けひゃひゃ 俺はヤミラミだ てめえこそ何者だ、邪魔立てしやがって」

名前を答えられたが、よく解らない

少なくとも敵意を向けてきている以上、味方ではなさそうだが

キノガッサ「……霊を捕らえることが邪魔立てになるのかい」

ある種確信を持ちつつ尋ねる

ヤミラミ「そりゃそうだ 俺が折角でかくしたってのに、お前らと来たら……」

肩を竦めて大袈裟にため息を吐かれた

……どうにも、嫌な感じがする奴だ

サマヨール「……おかしいとは思いましたよ
霊憑依なんて珍しい現象があれだけ重複するなんて」

サマヨールが、ヤミラミを睨みながら呟く

自然に起こることが少ないらしい現象

それがあれだけ続くのは、やはり不自然だったようだ

自然でなく起こったのなら、納得もいく

ヤミラミ「おう、面白かったろ?
もっと一杯集めたらもっと強くなる そう思わねーか?」

暗に事実だと認める供述

その内容は此岸にとって危険極まりないものだ

相容れない思想に身震いする

 ▼ 518 TOg35azcXc 19/12/28 16:41:45 ID:ll2cJkMA NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
サマヨール「ーー此岸に非認可の霊を手引きしたのも貴方ですね?」

相手の主張は無視して、サマヨールは追求を続ける

その口調は疑問ではなく、確認だった

ヤミラミ「けひゃひゃ おう、俺たちだ」

対して相手は至極あっさりと答える

別に隠すことでもないと言うようだ



元々の原因からして作為が絡んでいたということか

……サマヨールばかり責めるのは筋違いのようだ

しかも奴は今、俺『たち』と言った

つまり、単独犯ではないということ

話の規模がどんどん膨れる…… 厄介な……



ヤミラミ「けひゃひゃ 誰が一番強いのを作れるか競争なんだ
それで俺ぁ霊憑依で最強を目指そうってな」

理由まで自供しだした奴はまたもやケタケタ笑う

ヤミラミ「俺が、一番、強いってこと、思い知らせてやるんだぜ? 最高だろ?」

何が可笑しいのか笑い続け

ヤミラミ「それを手前ぇら、台無しにしやがって!! 絶対ぇ赦さねぇ!!」

突然感情を振り切り、怒りの雄叫びをあげる

ヤミラミ「手前ぇらの魂引きずり出して、ぐちゃぐちゃにして新たな核にしてやるよ!!」



ヤミラミ が 襲いかかってきた !!


 ▼ 519 ルチャイ@こだわりスカーフ 19/12/28 19:24:05 ID:DMZAgl.k [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ヤミラミ「おぅらっっ!! "シャドークロー"!!」

キノガッサ「ぐ……! "まも、る"……!!」

奴は鋭い爪を武器に突っ込んでくる

一方こちらは度重なる戦闘と逃走の所為で膝が笑っている

それでも一撃目はなんとか受けて凌ぐ

流石に力量差で押し込まれそうになるが、それでも

ヤミラミ「おうおう! フラフラじゃねぇかよ?」

続け様に相手は腕を振るってきた

これは避けきれなさそうだ

咄嗟の判断で相手の腕を白刃取りの要領で掴む

受けきれもせず爪が食い込むが裂かれるよりはましだ

ついでに抑え込み振るえなくした

ヤミラミ「は!! 姑息な真似しやがって!!」

鬱陶しそうにこちらを振り払ってくる

それにあわせて距離を取ろうとするが脚がうまく動かない

ヤミラミ「けひゃひゃ! もらったっ!!」



サマヨール「させま……せん! "シャドーボール"!」

まごついていたら、味方が援護してくれる

意識外だったのか、敵が姿勢を崩した

キノガッサ「"塩"、と"精霊球"、喰らえ!!」

生じた隙を見逃さず攻めに出る

これで、捕まってしまえばいい

駄目なら、繰り返すまで
 ▼ 520 TOg35azcXc 19/12/28 19:29:54 ID:DMZAgl.k [2/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ヤミラミ「あん? 何のつもりだ?」

しかし"精霊球"はいとも容易く弾かれた

"塩"も不快感を催させただけのよう

ヤミラミ「ああ、そうか 実体ねぇ奴と同じ対応かよ」

しまったと思った

疲れの所為か先に言われていたことを失念している

効かない相手もいたのだった

ヤミラミ「あんま嘗め腐ってんじゃねぇぞ!!」

無意識の失敗だったが、それが敵の神経を逆撫でしたらしい

ヤミラミは全力を込めて向かってきた

その速度は俊敏で、かつ隙がない

走馬灯のような感覚で、避けられる筈もない攻撃を眺めて



サマヨール「ぐ……あ……」

苦痛の呻き声を、『聞いていた』



 ▼ 521 TOg35azcXc 19/12/28 19:40:06 ID:DMZAgl.k [3/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「ーーな、なんで……?」

いつの間にか相手の爪を免れていることに驚く

しかも、代わりに味方が傷付いているなんて

二重の意味で理解ができなくて、目を見開く

サマヨール「"サイドチェンジ"です ひょひょ ご無事、ですか?」

深い傷を負ったそいつは、しかし飄々と言う

サマヨール「私の方で巻き込んだのです
せめて貴方がたが怪我ないよう努めるのは当然です」



キノガッサ「そんなの、意味ない……!」

依頼人が怪我したら本末転倒だ

こちらは、依頼人の安全も請け負ってたつもりだったのに

そういうつもりで発した言葉は

ヤミラミ「けひゃひゃ その通り、無意味さ
順番が変わっただけだぜ?」

字面だけで敵に同意される

反駁したくはなるが、しかし事実であろうことはどこかで認めていた

こちらの三者はほぼ瀕死

ゆっくりと弄ぶように迫ってくる敵から逃げることも儘ならない

せめてなんとか抵抗しようと、やられるのは先伸ばしにしようと力を込める

ヤミラミ「は! 無駄無駄ぁ!! 碌に身体がついてきてねえよ!!」

挑発するような嘲りの声が響く

右へ左へと撹乱するように動く敵を、必死で狙う

技が出せるかも怪しい体力だが、諦めるわけにはいかない
 ▼ 522 TOg35azcXc 19/12/28 19:45:49 ID:DMZAgl.k [4/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



プラスル「"手助け"!!!」



後方から声が聞こえると同時に力が湧いてきた

その力に身を任せるように腕を挙げ

キノガッサ「"種、爆弾"!!」

丁度目の前に来たヤミラミの横っ面に撃ち込んだ

更に

キノガッサ「"タネマシンガン"!!」

ヤミラミ「んなっ……! タンマ! タンマ!!」

キノガッサ「"エナジーボール"!!!」

ヤミラミ「んなっ!!? ぐあぁ……!!」

とことん、撃ち込む

相手の懇願など聞く耳持たない

こっちはさっきも言ったように瀕死一歩手前

ここでしっかり抑えなければ、後がない

もはや死に物狂いである

プラスル「所長、ストップ! ストップです!!」

言われて手を止めてみれば、相手の意識を奪うことに、すでに成功していた

ああ、何て卑怯な戦闘だったろう

自分の行いに反吐が出る
 ▼ 523 TOg35azcXc 19/12/28 22:01:05 ID:viB.RUmM [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
サマヨール「……任せてしまってすみません」

サマヨールは、自らの傷を応急処置しながら言う

それはどの事を言っているのだろう

ヤミラミを気絶させるまでのことか

或いはこうしてヤミラミをヤドリギで縛っていることか

いずれにせよ、やらなきゃいけないことだ

キノガッサ「君が謝ることはないよ いや、誰も」

やれる者が行うべきことであり、それが誰でも問題あろう筈もない

サマヨール「あいててて…… これは中々キツイ……」

プラスル「あ、私、手伝います 薬、少しは教えてもらってるので……」

なんでも、ロロの手腕を見習っているらしい

プラスルは森の中の木の実を見繕ってペーストを作ってしまった

サマヨール「おお、これはありがたい」

さっそくとばかりにそれを傷に塗り込む

 ▼ 524 TOg35azcXc 19/12/28 22:01:40 ID:viB.RUmM [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「……目、覚めたんだね」

倒れた敵の拘束を終え、彼女に声をかける

プラスル「は、はい なんとか……」

キノガッサ「助かったよ 支援ありがとう」

プラスル「間に合って、良かったです」

感謝の言葉を告げれば、ほっと息を吐いて言う

だが、その視線は何か物言いたげで

キノガッサ「それで、こいつどうするの
"精霊球"に入らないみたいだけど」

目を逸らしながら話を逸らす

実際気になっていたことでもあるけど

サマヨール「そのまま直接"黄泉の道"経路で彼岸へ連行します」

キノガッサ「"黄泉の道"があるんだ? "ひみつきち"じゃないよね?」

サマヨール「ええ、以前のは閉じたままです」

彼岸と此岸を繋ぐ場所、"黄泉の道"

以前は今の拠点たるギルドの場所にあった

夜間の"黄泉の道"は生者には危険らしいから、前と同じ場所でないのはありがたい

キノガッサ「急いで連れていくとしようか そろそろ、夜明けちゃうよ」

"黄泉の道"は朝になると閉じるものではなかったか

移動することも考えれば時間がない気がする

サマヨール「いえいえ、盆の時期はいつでも通れるんですよ
無論、誰でもではなくーーなかった筈なんですがね」

急ぐ必要はないと、やんわりと言う

敵の所業を考えて苦々しい口調になったのは仕方ないか

 ▼ 525 TOg35azcXc 19/12/29 19:31:04 ID:6MQ2pIFU NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「ヤミラミ、どこに運べば?」

疲れてはいるが、怪我はしていないため、手伝う意思を表明する

サマヨール「ひょひょ これはありがたい
今回の"黄泉の道"は崖下にありましてね」

先に立って案内してくれるのを、気絶した敵を背負って追う

そして辿り着いたのは復活草が自生している崖だった

プラスル「あれ? ここって……」

キノガッサ「……なんか縁深いよね」

薬の材料を良く採りに来る場所だ

……何度か落ちている場所でもある

いつの間にか崖の一部が崩れて、急斜面とはいえ歩ける道が出来ていた



サマヨール「さあ、ここです」

崖下の茂みのそばに立ち止まった

覗いてみると、茂みの陰に霧立ち込める空間が開いていた

以前の"黄泉の道"と同じ感じがする

サマヨール「ここからは私だけで行った方がいいでしょう」

生者は引き込まれる危険があるのだったか

頷いて敵の身柄を引き渡す

サマヨール「では、私は一度戻り、此奴らに厳重に閉じ込めを施します
それと、霊共の流出量が多いので再度システムの確認もして参ります」

システムに不具合が起きているのなら、直すことで霊を制限できるだろうと言う

確かに、それは助かる

今日の騒動は明らかに許容量オーバーだった

キノガッサ「忙しいかもだけど、宜しく」

サマヨール「はい お休みなさい 辿るまた今夜」

依頼の解決は未だだが、一旦小休止



そして空が白み始める

死者の時間は終わり、霊は息を潜めてしまったようだ
 ▼ 526 ュラルドン@クチートナイト 19/12/29 20:56:06 ID:1yQU.AuU NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ
 ▼ 527 系列◆TOg35azcXc 19/12/30 17:36:27 ID:DqP6NMqs NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「弟子入り志願?」

一眠りしたあと"ひみつきち"に顔を出すと、依頼者とは違った訪問者が来た

どうやらギルドの仕事に興味を持ってくれたらしい

そして、是非ともキノガッサに師事したいという

ポチエナ「はい! おれ、皆さんのようになりたくて!」

訪問者は元気良くアピールする

尻尾まで振って遣気満々なようだ

ゴクリン「へえ、見る目あるんじゃん ねえ、所長?」

リンは気に入ったらしく、頻りに頷くが

キノガッサ「同意を求められても……」

こちらとしては困ってしまう

自分が大層な者ではないことは自分で判っているのだ

キラキラした眼差しを向けられるのが居たたまれない

キノガッサ「弟子とか、取る気ないし……」

気まずい思いをしつつ期待には添えないと率直に告げる

訪問者は露骨に肩を落としてしまう

ゴクリン「断っちゃうの? 折角来てくれたのにそれはないんじゃない?」

リンはがっかりした相手を見て、茶化してくる

意外と気遣い屋なんだよね

キノガッサ「じゃなくて、仲間になろうよ」

リンの促しもあってスムーズに言葉になる

師弟ではなく、仲間がいい

そっちの方が気詰まりがない

キノガッサ「依頼が増えてきて人手不足だからさ そうしてくれると嬉しい」

折角来てくれたのだから、歓迎しよう

仲良く働けたらいい
 ▼ 528 系列◆TOg35azcXc 19/12/30 18:37:07 ID:3fBYfGl2 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ちなみに、手が足りないというのは大袈裟じゃない

少し前まで暇を持て余してたのが信じられない程に

夜動く者と昼動く者で分かれただけじゃない

今は、森全体が不安定になっているそうだ

それ故、依頼もかなり舞い込んでいるという

……全部リンからの又聞きだ



一応、"猫の手も使いたい"なら手伝うと申し出たものの

ゴクリン「この事態を解決するためにも所長は体力温存して」

と言われてしまった

問題の原因は彼岸からの闖入者にあると思われた

そのため夜の依頼に支障なくする方が結果的にいい

理屈では判っても、もどかしいものである

そうやって悩んでいれば

ゴクリン「それとも、下りる? あいつの依頼」

リンはいとも簡単だというように提案してくる

……耳を疑う提案だ

キノガッサ「下りれるわけない 最優先事項だよ?」

とても放っておける問題ではない

それはリンも解ってるだろうに



キノガッサ「第一、僕が下りたら誰がやるんだい」

薬を完璧に作れるロロには回せず

プラスルにも無理させられない

新入り君にいきなりこの依頼を託すのも可哀想だ

あとは早々に下りた面々だけ

サマヨールは手が足りないと言っているのに、この現状では

キノガッサ「下りるわけないじゃない」

言い直すように、宣言した
 ▼ 529 TOg35azcXc 20/01/10 04:11:16 ID:mAuw.L/. NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ポチエナ「……? なんの話ですか?」

ゴクリン「こっちの話さ!」

ポチエナ「……?」

新入り君は首を傾げてしまう

そして伺うようにこちらに目を向けてくる

なんと言うべきか判らず、手振りでなんでもないと誤魔化した

キノガッサ「君は掲示板に貼られた依頼をこなしてもらえるかい」

"ひみつきち"の壁に設置してある掲示板

そこに今解決待ちの待機依頼が張り出されている

手空きの者で片付けて貰わなくてはいけない

ポチエナ「は、はい!」

いい返事が返ってくる 素直でよろしい

……実は昨日まで日の目を見なかった代物なのは内緒だ

大変なときに来てしまった彼に少し申し訳なく思う

キノガッサ「困ったらなんでも聞いていいからね」

できることはそれぐらいだけど、便宜は図ろう

と思ったのだが

ゴクリン「所長、君は下りないんだろうに」

呆れ果てた声で言われてしまう

暗に顔を合わせないだろうと言われて後ろめたくなる

キノガッサ「……僕は勿論、リンでもロロでも、ねえ?」

たじたじになってつい付け足した

ゴクリン「ま、いいんだけど」

ポチエナ「はい! よろしくお願いします!」

元気良く頭を下げる新入り君

初々しくてちょっと眩しい

そんなキラキラな目で見ないでと言いたくなってしまう
 ▼ 530 ネコ@サイコシード 20/01/11 07:57:59 ID:JkawFVCA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シエンネ
 ▼ 531 TOg35azcXc 20/01/11 22:57:11 ID:QlQYLmP. NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ポチエナ「行ってきます!!」

ゴクリン「頑張ってきてね〜」

依頼を受注して新入り君が出掛けていく

ルリリ「お邪魔するねー」

プラスル「今擦れ違った方も依頼者ですか?」

エネコロロ「今度はどんな依頼かしら」

マイナン「ひー 忙しすぎて混乱しちゃうよ」

と、入れ替わるようにして残りのメンバーがやって来た

ゴクリン「おー お揃いで」

キノガッサ「いらっしゃい さっきの仔はーー」

丁度よいので新入り君の加入と経緯を説明する

キノガッサ「だから、よろしく頼むよ」

マイナン「やった! 後輩だ!」

キノガッサ「しかもなんか皆に憧れてくれてるらしい」

ルリリ「本当!? これはもう可愛がっちゃうよ!」

どうやら、好意的に受け入れてくれるようだ

独断で許可したが、間違いじゃなかったようで安心

手が増えれば依頼も片付くし仲良くなれれば楽しいし

いいことづくめだ



エネコロロ「それよりキノ、あんたまた無茶してるわね?」

ーーぎくり

ジト目を向けられ、つい目を逸らしてしまう
 ▼ 532 TOg35azcXc 20/01/13 19:57:38 ID:Fk1wSDyw NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「む、無理は、しない、つもりで……」

視線から逃れようと一応主張する

その主張こそ無理があることは半ば自覚がある

当然、見逃されるわけもない

エネコロロ「この仔、魘されてたわよ?」

キノガッサ「ーーそれは……」

……他者を引き合いに出されると弱い

というか、やっぱり深い傷になってしまったのか

力不足が身に沁みる

プラスル「えっ!? あの、副長さん……
それは、私が行くって言ったので……」

エネコロロ「それは聞いたわ」

弁明するように言ってくれたが一言のもと黙らされた

エネコロロ「ねえ、キノ 止めにしない?」

始めから無理難題なのだとロロがいう

キノガッサ「でも、放っておける問題じゃない」

実際ぶつかってみて尚更そう思う

そして

キノガッサ「僕がやらなかったら、誰がやる?」

交替要員がいないことはさっきも確認した事実だ

ロロはそれに苦々しい顔をして

エネコロロ「こんなことならこの仔に皆伝しとくんだったわ」

自分を責めるように呟く

プラスル「……物覚え悪くてすみません」

エネコロロ「ああ、勘違いしないで 貴女が悪いんじゃないの
……タイミングが合わなかったわね」

ロロは、もう少し遅く起きていれば、と歯噛みした
 ▼ 533 TOg35azcXc 20/01/25 18:46:11 ID:gzJUfmGE NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「よしっ! マイナン、君に決めたっ!!」

マイナン「えっ!? な、何!?」

ゴクリン「いけ!! いけよ!! いけってば!! チクショー!!」

マイナン「いやだから何!?」

ゴクリン「だから、代われって話」

マイナン「いやだからなんで!?」

キノガッサ「……ちょっとリン、なんでそんなマイナンに手厳しいの」

彼も相当怖がっていたのに……

ゴクリン「やー、だって受けちゃった以上投げ出すのもないじゃない?」

マイナン「お前は最初から投げっぱだろうが!!」

ゴクリン「だから、キノの代わりに行ってよ ねえ 依頼達成しなさいよ」

マイナン「無理無理!! 無理だって!! お化けとか、ない!!」

首と手を振って必死にお鉢が回ってくるのを拒否している

……気持ちはわかる



エネコロロ「でも、それがいいかもね」

キノガッサ「ロロまで?」

マイナン「ゴクリン側っ!?」

なんでまたマイナンに手厳しいのかと思えば、

エネコロロ「……プラスルが駄目なのよ」

なんのことはない、より弱い立場の味方だっただけらしい

……確かに、彼女に無理させないとなると負担が大きくなる

キノガッサだけでは厳しいのは“火に当たるより明らか”か



エネコロロ「妹が頑張ったのにあんたはそれでいいの?」

マイナン「……うっ」

エネコロロ「それで、いいの?」

ロロは繰り返して尋ねる マイナンは口籠ってしまった

 ▼ 534 TOg35azcXc 20/01/26 00:43:03 ID:aYPwgV9U [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン「……分かった、分かりましたよ! 行きますよ!」

やけくそ気味にマイナンが言う

マイナン「ただ、所長は一緒!! じゃなきゃ嫌だ!!」

そして懇願するように言うのだ

ゴクリン「あらやだ、♂同士でまーお熱いこと」

マイナン「違うっ!!」

また始まった……

揶揄いの言葉に過剰反応するから、また揶揄われるんだけどな……

キノガッサ「大丈夫だよ 始めから下りるつもりもないし」

マイナン「所長……!!」

マイナンの円らな瞳が輝いてこっちを向く

ゴクリン「やっぱそっち系なの……」

マイナン「だ・か・らぁ!! お前は!!!」

ゴクリン「おお、怖い怖い ライバル続出じゃんね ね?」

エネコロロ「そこでなんで私を見るの……?」

ゴクリン「こっちの話さ!」

プラスル「ま、まあまあ……」

マイナン「…… ――ふんっ!!」

マイナンの喧嘩腰はプラスルが仲裁に入りやっと収まった





ルリリ「……ぉ ……たし、も」

会話に混ざっていなかったルリリが何か呟いた

キノガッサ「え?」

回りの会話にかき消されてしまったため、聞き返してしまう


ルリリ「……私も! ……行く」


身体を震わせて尻すぼみ気味だが、彼女は確かに意思を表明したのだった

 ▼ 535 TOg35azcXc 20/01/26 01:52:00 ID:aYPwgV9U [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
キノガッサ「え、でも、君……」

参加したくないから先にリタイアしていたのではなかったか

ルリリ「う…… だ、だって…… マイナンが足引っ張るじゃん絶対!!」

マイナン「何をぉ!?」

ゴクリン「言っていいことと悪いことがあるんだけどなぁ」

マイナン「何をぉ!!!? それお前もそう思ってるってことかぁ!!?」

プラスル「ど、どうどう…… 私は頼りにしてるよ、お兄ちゃん」

マイナン「なら良し!」

ゴクリン「いいのかそれで」



エネコロロ「はいはい それよりルリリよ」

脱線しかけた話をロロが戻す

エネコロロ「本当にいいの? 私的には有り難いけど」

ロロの視線が痛い そんなに頼りないかなあ……

昼の手が減ってでも夜の人員を厚くするなんて

エネコロロ「あ、それは大丈夫よ プラスルがこっちだから」

マイナン「ちょ…… それって」

ゴクリン「どうどう」

エネコロロ「プラスルが有能なのよね」



ルリリ「……その有能なプラスルが駄目なら、皆でやらないとでしょ」

エネコロロ「あら、僻んじゃった? ごめんなさいね」

ルリリ「……別にいい 私たちが弱いのは今更だもん」

マイナン「たち? ……なんか引っかかるけど、確かに手が多い方がいいよね」

いやはや、メンバーに助けられてばっかりだ

カゲボウズ「じゃあ、そろそろ幽霊退治出掛けちゃおっか」


 ▼ 536 TOg35azcXc 20/02/17 01:56:54 ID:idLA5UN. [1/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
キノガッサ「ああ、もうそんな時間なんだ」

話してるうちにいつの間にかまた時間が経っていたか

プラスル「あ、あの、気を付けて下さいね」

カゲボウズ「はーい 気を付けるよー」

皆で“ひみつきち”を出てくれ始めた森へ向かう

今日こそ全部片づける……は、無理でもできるだけ進めたいものだ



マイナン「って…… うあああああ!!?」

キノガッサ「……!!?」

ルリリ「な、何々!?」

いきなり傍で叫ばれて驚く まさかもう襲ってきたのか

カゲボウズ「もー、いきなりさけばないでよ、びっくりするなあ」

呑気な声を聞く限りどうやら安全は保たれているらしいが……?

マイナン「いや、お前だお前!! いつからそこに!?」

ルリリ「うあ! 本当だ!!」

……今日の案内役に気付いていなかったらしい

カゲボウズ「えへへ おじさん、今手がはなせないからかわりにきたよ!!」

キノガッサ「へえ、そうだったの カゲボウズが来たのはちょっと驚いた」

マイナン「いやなんでちょっとで済むのさ!!」

何度も驚かされて慣れてしまったのは自分だけだったか……



ともかく、夕闇に染まる森へ出る

やはり異常な気配が揺蕩っていて不気味だ

ルリリ「く、暗い…… ねえ、な、なにかでそうじゃない?」

マイナン「や、止めろよそういうこと言うの……!!」

二人共随分と怯えたようで足が竦んでしまっていた

こちらが促しても、動かない いや、動けないようだ

キノガッサ「いや、これから出てくる幽霊を何とかしなきゃいけないんだけど……」

……先が思いやられる
 ▼ 537 TOg35azcXc 20/02/17 02:38:18 ID:idLA5UN. [2/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
――――ガサガサッ



ルリリ「ひっ……!!」

カゲボウズ「おねえちゃん! “塩”かまえて!!」

今宵も早速とばかりに幽霊が現れる



しかし対処法は心得ている

まず“ドール”を投げ、“塩”で弱らせ、“精霊球”に閉じ込める

昨日相応の修羅場をくぐっているお蔭か流れるように動けた

そして残ったのは、転がった“精霊球”のみ

カゲボウズ「いっちょあがり! だね!」

弾んだ声が響く



が、その声は一つだけで

キノガッサ「君たち……大丈夫?」

残る二匹はと言えば……

マイナン「――あ…… ああ……」

ルリリ「――う…… う……」

震えあがって蹲ってしまった

……初体面なら仕方ないだろうとは思うけど



ルリリ「な、なにあれ…… やだ……! 怖い……!」

カゲボウズ「だ、だいじょうぶだよ! ちゃんとたおせるんだから!」

恐怖に震える二匹をカゲボウズがなだめようとする

しかしあまり効果はないようだ……


 ▼ 538 TOg35azcXc 20/02/17 03:04:24 ID:idLA5UN. [3/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
キノガッサ「これは、慣れるしかないんだよね……」

少なくとも、それ以外の手段は知らない

……やっぱり無理に連れてくるべきじゃなかったんじゃないかな

ルリリ「う…… な、慣れるかなあ……?」

マイナン「無理無理!! 絶対無理!! こんな暗い中であんなん見たら――」

そこでマイナンは何かに気付いたように言葉を止め

マイナン「……そうだ! 暗いのがいけないんだ!!」



まるで名案でも思いついたかのように叫ぶ

マイナン「――よし! そうとなれば」

カゲボウズ「!! まって! それは」



マイナン「“フラッシュ!!!”」



カゲボウズが生死の言葉を掛けようとした瞬間、眩い光があたりを照らす


それと同時に、そこかしこからこの世ならざる気配の存在が溢れ出した

奴らは雪崩うつようにこちらに向かってきて


カゲボウズ「ああ!! ちょ、おおすぎ――」

ルリリ「うあああああああ――」

マイナン「な、な、なんじゃこりゃああ――」

キノガッサ「み、みんな――」




キノガッサ の めのまえ は まっくらに なった ……
 ▼ 539 TOg35azcXc 20/03/14 00:37:41 ID:HfQAqwd2 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン.「だから下りたら? って聞いたじゃない」

気付いたら“ひみつきち”にいた

キノガッサ「――み、みんなは!?」

部屋の中にはゴクリンの姿しか見えない あれからどうなったのか

ゴクリン.「慌てなさんな みんな眠ってるよ 夜だし」

キノガッサ「無事、なの? どうして……」

ゴクリン.「覚えてないか ま、寝てたもんね 彼岸からサマヨールが駆け付けたんだよ」

キノガッサ「そっか…… 結局助けられちゃったか」

依頼を受ける側としてあまりにも情けない

やっぱり、強がってもまだまだか

ゴクリン.「あ、大丈夫だよ 始めから期待なんかしてないし」

キノガッサ「――え?」

ゴクリン.「所長は臆病だからね いつかこうなるんじゃないかと思ってさ」

キノガッサ「そりゃ、まあ……」

ゴクリン.「だから再三背伸びし過ぎないように苦言を呈していたじゃないの」

キノガッサ「…………」

何も言い返せない いや、言い返すべきではないのだろう

ただ焦燥感に駆られる どう逃れるべきだろうか

ゴクリン.「まあ、これも一つの教訓だよね」

キノガッサ「…………」

ゴクリン.「どうせ何もできないんなら出しゃばらない方が良いってことさ」

キノガッサ「…………」

ゴクリン.「ついでに私設ギルドとかいうごっこ遊びも止めにしようよ」

キノガッサ「……なるほど、判ったよ」

ゴクリン.「あ、判ってもらえた? じゃ、早速看板畳んで」



キノガッサ「もうリンの顔で喋るな! ……怨霊!!」



キノガッサ は “塩” を 使った !

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