【ホワイトデーSS】ホシ「お兄ちゃん!もうすぐホワイトデーだよ!!」:ポケモンBBS(掲示板) 【ホワイトデーSS】ホシ「お兄ちゃん!もうすぐホワイトデーだよ!!」:ポケモンBBS

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【ホワイトデーSS】ホシ「お兄ちゃん!もうすぐホワイトデーだよ!!」

 ▼ 1 aSS341n256 18/03/07 11:14:49 ID:55FEqXpI [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「お兄ちゃん!もうすぐホワイトデーだよ!!」

「あ、ああ!もうそんな季節か!!」

「お返しは三倍返しだからね!」

「わかってるさ、楽しみに待っていてくれ」

「ワーイ!!」

無邪気に笑うホシがホワイトデーの当日になって喜ぶ姿を想像するだけで、カキも思わず嬉しくなる。

毎年ホシがバレンタインに作ってくれるチョコレートのケーキのお返しに、カキは丹精込めてクッキーやケーキなどのお菓子を作って返すのだ。

そちらの方は今年もぬかりない、今年は趣向を変えてマカロンというものを作る予定。

きっと喜んでくれるだろう、作り方もバッチリだ。


だが。

「ホワイトデーか・・・」

それでもカキが、3月14日の日が来るのを憂鬱に思うのには、他に理由があって。

「逃げるわけにも、いかないな・・・」

そう何度も腹をくくって、心の中で呟いては見るものの、やはり簡単にはいかない。

結果、一月待たせることになった。カキにはやらなければならないことがあったのだ。
 ▼ 2 aSS341n256 18/03/07 11:29:54 ID:55FEqXpI [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「アローラ!」

「お、カキ!アローラ!!」

「マーマネ、サトシも!今日は随分早いんだな」

朝の配達を終えて、なお始業時間まではまだ早いといった時間帯に、カキは教室内にサトシとマーマネの姿を見つけた。

特に早くから来ることが珍しいサトシがいることに、カキは少し驚く。

「それがね、サトシが相談があるっていうからさ」

「相談?」

「ほら、もうすぐホワイトデーだろ?」

「ホワイトデー・・・」

確かにマーマネもサトシも、自分も、クラスメートの女子たちからバレンタインデーにチョコレートを貰った。

義理や友といった前置きのつくそれを、サトシは大層喜んで受け取っていたか。

「バレンタインデーにもらった人には、ホワイトデーにお返ししなきゃじゃんか、それで、どんなのがいいかなって参考にしようと・・・」

「それで、女子が来るよりも早くマーマネとスクールに来て相談・・・か」

「カキなら言わなくてもいつも早いと思ったし!」

マーマネだけでなく自分の意見もちゃっかり参考にしようとしてたのか、少しため息をついてカキはマーマネを見やる。

「俺もそういうのは得意じゃない。マーマネはどうするんだ?」

「無難にデパートでクッキーとか買って、それで済ませようかなって」

本命じゃないし、そこまで本気にならなくてもいいでしょ、っと眠たげなマーマネが言う。

確かに、同じクラスのよしみでもらったようなチョコレートなら、本気で応えるような必要性もないだろう。

「・・・どうした?カキ、なんか険しい顔して」

「別に、険しい顔なんてしてないさ」

「ほんと?」

無意識のうちに少し考えこんでしまっていたカキは、その様子をサトシ達に不審がられた。

心配するマーマネやサトシになんでもないと誤魔化していると、

「アローラ、みんな早いね」

「アローラ!」

「スイレン!マオ!」

道中で一緒になったのかスイレンとマオが登校してきた。
 ▼ 3 aSS341n256 18/03/07 11:48:21 ID:55FEqXpI [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「何の話してたの?」

興味深々でマオはサトシとマーマネの間に割って入る。

「うーん・・・まあ、別にいっか。ほら、ホワイトデーが近いからさ」

「マオたちへのお返し、何がいいかなって考えてたんだよね」

女子たちに聞かれないように早く集まったのではなかったのか、とカキは思ったが、サトシもマーマネも特に隠す様子もなくマオに話の趣旨を説明する。

「なるほど・・・そんな考えてもらわなくたって、別になんだっていいのに」

「ホワイトデーは、3倍返し!」

「ス、スイレンは手厳しいね・・・」

「楽しみにしてる!」

別に気を遣わないでもいいと控えめなマオと、冗談めかしてお決まりのフレーズを言うスイレン。

3倍返しを本気にして頭を抱えて悩むサトシをよそに、マーマネは二人が来てから黙りっぱなしのカキの方にも話をふる。

「で、カキはどうするの?」

「お、俺は・・・」

カキはそこで口ごもると、

「な、なんだっていいだろ・・・別に・・・」

と力ない返事。

「わ、私授業の準備するね!」

「準備?何かあったっけ」

マオの方もそそくさと自分の席に戻ってしまい、そんな二人の様子を訝しがりながらも、マーマネやスイレンもサトシの席から離れて自分の席へと戻って行った。


どこか、おかしいと思うことは度々あった。

三週間くらい前からだろうか、というとようするにバレンタインデーの後あたりになるか。

カキと、マオの関係性の話だ。

今のマーマネの席からは授業中のカキやマオの様子はよく見えたし、どうにもどこか余所余所しかったり、今まで感じなかった妙な距離感があったり。

「カキとマオってさ・・・なんかあった?」

「どうしたの?急に」

「だって・・・」

二人の違和感をサトシも薄々感じていたようで、朝二人になった時もサトシはマーマネにそんなことを聞いていた。

ホワイトデーという言葉を聞いて少し態度が弱弱しくなった二人。

今朝の反応を見てもバレンタインデーに何かあったのは明白というもの。

マーマネは気になって仕方がなかったので、放課後になってカキに率直な疑問をぶつけた。
 ▼ 5 aSS341n256 18/03/07 12:00:36 ID:55FEqXpI [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「マオと何かあった?」

「はぁ!?」

「ん?何かって?」

今度こそは女子に聞かれないようなタイミングで、サトシも含めた3人きりになって、マーマネはカキに聞いた。

「サトシも言ってたじゃん。カキとマオの様子がおかしいって」

「ああ、言った!なんか、変な違和感っていうかさ、他人ぎょーぎって言うの?そんな感じ」

「別に、そんなこと・・・」

やたらと鈍そうなサトシにまでそう言われてしまっては、カキはうろたえるばかりで。

「最近、目も全然合わせてないだろ、二人。よくしゃべってはいるけど」

「・・・」

「カキ?」

「別に!なんだってないんだ!!」

マーマネとサトシのもとから走り去っていくカキ。

正面からマオの目を見れないのも、無理して話そうとして妙にぎこちない会話が増えたのも、

一緒にいるとただ気まずいのも全て事実であった。

「カキ!!」

「サトシ!?」

「何かあったら、なんでも言ってくれていいんだぜ!?俺たち、相談乗るし!!」

リザードンに乗って早々と帰って行こうとするカキをサトシは走って追いかけて、大声で叫んだ。

カキにもその声は聞こえていて、それでも、

話したいけど、話したくない。

結局はマーマネ達に何も言えないまま、カキは家へと発ってしまった。

「行っちゃった・・・」

残されたマーマネとサトシは、茫然としながらカキの様子を思い出す。

「珍しいよね、あんな必死になって、顔も赤くして。余程触れられたくない事なのかな・・・」

悪いことをしてしまった、落ち込むマーマネの肩に手を置いて、

「別に、仕方ないだろ。言いたくないこともあるかもしれないけどさ、友達のこと心配するのは当たり前だよ」

マーマネは悪くない。

サトシはそう励ましてやるのだった。
 ▼ 6 aSS341n256 18/03/07 12:21:51 ID:55FEqXpI [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
別に、なんだってない。

そんなわけもなくて、

あまりに分かりやすいほど、

今の自分は訳ありで。

『あの・・・さ・・・』

あの時の顔も、声も、鮮明に思い出せる。

『これ・・・』

『ああ、バレンタインのチョコか。ありがとな、嬉し――』

『義理とか!』

それまでの自分は、そんなこと考えたこともなくて。

『友チョコとか・・・そういうのじゃ、ないんだ』

『・・・え?』

『マーマネやサトシにあげるものとも・・・違くて・・・』

だから、きっと、自分は、

『・・・好き、なんだ。私と、付き合ってほしいの・・・』

『・・・悪い』

頭の中もよく回ってなくて、

『俺、ほら、こんなんだから、そういうの、わかんないしさ』

交際を受けることも、フることもできないで、

『そんな状態で答えるのも、なんていうか、マオに申し訳ないというか・・・』

『・・・そうだね、ごめんね、突然変なこと言って』

保留、という選択肢をとった。

『私、ちゃんとカキがどっちか決めてくれるまで待ってるから。ゆっくり、考えてくれると嬉しいな』

そう言って笑うマオの姿は、自分にも分かるほどに綺麗で。

『・・・ああ』

あれからだ。マオの顔を、しっかりと見ることができなくなったのは。
 ▼ 7 aSS341n256 18/03/07 14:07:53 ID:55FEqXpI [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「お帰り、お兄ちゃん・・・どうしたの?難しい顔して」

「なんでもないよ」

ホシにも心配されてしまうほどに、カキはまた険しい顔をしていて、

刻一刻と近づいてくるその日があまりに恐ろしく思えた。

お返しをするのは絶対なのだから、その日に答えをださなければいけない。

ただでさえ待たせ過ぎたのだ、それ以上待たせるのも、答えを出さずに有耶無耶にするのもよくない。

簡単なことだ、カキは自分に言い聞かす。

マオは自分のことを好きだと言ってくれた。

なら胸を張って、俺も同じ気持ちだと言えばいい。

嘘ではないのは確かだろう。

彼女のことを綺麗だと思うのは、可愛いと思うのは、きっと彼女のことが好きだからだ。

俺とマオは、同じ気持ちだ。

同じ気持ちだ。

暗示をかけるように、何度も心の中で復唱する。

何かを正当化するかの如く。

それでも、それでも。

告白されて、すぐにOKを出せなかったことに、何か明確な理由があるのも事実で。

言ってしまえば、友達としての関係性が変わるのが一番怖かったのだろう。

恋人同士になって、距離感がさらに近くなって、二人で出掛けたり、手をつないだり、そして――

何か違う

そんな結末になるのが、自分は怖かったはずだ。

マオにそう言われることも、自分がそうなって、マオを傷つけてしまうことも。

「くそっ・・・」

カキの不安は留まるところを知らない。

男らしくもなく、はっきりとした答えを出せないでずるずると引きずってしまった。

そんな自分を、マオは今でも好きでいてくれているだろうか。

一度好きだと言ってくれたから、今でも俺のことを思ってくれているなんて、そんなものはただの傲慢だ。

「・・・俺は、俺はどうしたらいい」

ホワイトデーが近づくにつれて、カキは日に日に眠れなくなっていった。
 ▼ 8 aSS341n256 18/03/07 18:20:41 ID:55FEqXpI [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「新メニュー!?食べたい食べたい食べたい!!」

「分かった分かった!じゃあ今日の放課後に、アイナ食堂でね」

実家が食事処であるマオは度々クラスメートを誘って自身や親が考案した新作料理の試食会を開いていた。

こと美味しい料理に目がないサトシやマーマネの食いつきはよかったが、

「どうせマーマネも来るよね?」

「どうせって何さ」

「来ないの?」

「行くよ!!当たり前だろ!!」

「マオちゃん、私も」

他のメンバーも特に事情がなければ毎度アイナ食堂へ訪れた。毎度毎度、こうして披露されるメニューは皆に好評で、誰もがそれを楽しみにしていた。

「カキも来るよな?」

「わ、悪い、今日はちょっと都合がつかなくてな・・・」

「・・・そ、そっか。それは仕方ないね!」

「ああ、また誘ってくれ・・・」

サトシが少し離れた場所に居合わせたカキを何気なしに誘うと、カキはばつの悪そうな顔をしてそれを断ってしまう。

今は、なるべくマオと一緒にはいたくない、一緒にいるとどうにも息苦しいから。

カキと、その後のマオの反応を見てサトシは少し無配慮だったかと反省する。

こういった気遣いはサトシの苦手分野だが、だから仕方がないと済ませてしまうわけにもいかないだろう。

「リーリエも来る?」

「そうですね・・・ごめんなさい、私も今日は遠慮します」

「そっか、残念だね。マオちゃんの料理美味しいのに」

シロンと戯れながら話を聞いていたリーリエも少し逡巡してからマオの誘いを断った。


カキが理由を濁してマオの誘いを断ることは、今までそうはなかった。

家の手伝いや妹の勉強を見るなど、理由ならいくらでも繕うことができただろうに、それができないあたりにカキの不器用な性格が垣間見える。

恐らく、用事なんて何もないのだな。

リーリエはそう察していた。

だからこそ、

「カキ、今日の放課後、少し付き合ってくれませんか?」

「な、なんだ急に・・・」

カキに直接接触するために、マオの誘いを断ったのだ。
 ▼ 9 aSS341n256 18/03/07 20:30:12 ID:55FEqXpI [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「サトシやマーマネはどうか知りませんが・・・」

放課後になって、マオの誘いを断っている手前鉢合わせするのもよくないと思い、

4人がスクールから出たのを確認してからリーリエはカキに話しかけた。

「私とスイレンは知ってるんです。マオから、相談受けてましたから」

微妙な顔をして、リーリエから顔を逸らすカキに対し、リーリエは優しい口調で言う。

「だから、何も隠さなくてもいいんです」

「ああ・・・」

「この一月近く、カキはどうも苦しそうでしたから、一人で抱え込まなくたって大丈夫ですから」

「・・・ありがとう」

カキの声は相変わらず力がなくて、今もまだ悩みを抱えているのだと誰が見ても分かるほど。

その悩みの解消がリーリエの目的だった。

仲のよかったカキとマオが今のような状態では、クラスメートとしていい気はしない。

それに、いつまでもこのような感じだと、今日の様にみんなで遊ぶことも難しいかもしれない。

「まあ、わざわざ私が口を出すことでもないような気もしますが」

どのみち14日には何かしらのアクションをとるのだろうから、そこまで待ってもよかった。

実際二人の問題であるし、自分にできることは何もないかもしれない。

それでも、リーリエは黙って見ているのが嫌だった。

「・・・本当に、すまない。みんなに迷惑かけて」


「わからないんだ、自分がどうしたいのか。マオのことを、どう思っているのかも」

「なるほど・・・」

カキは自分の心境をリーリエに洗いざらい話す。既に事情を知られているのであれば隠す意味もなかったからだ。

「それに、今更どんな顔をしてマオに向き合えばいいのかも分からない。あいつが、今でも変わらずに俺を思ってくれているのかも、もう・・・逃げてしまいたい気分だ」

「シロン、粉雪!」

「コオォォォォン!!」

「なっ!」

「カキったら情けない!頭を冷やしてください!・・・なんて」

「な、なんの冗談だよ・・・」

「カキがこれからどうするにしても、あの時のマオは真剣だったのですから、ちゃんと彼女の思いに真摯に向き合わなければなりませんよ?」

「あ、ああ・・・」

カキの弱気を一声で吹き飛ばして、リーリエは笑った。
 ▼ 10 リガロン@アロライZ 18/03/07 21:42:10 ID:Rh2AcnUU NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
カキマオ派の私にはドストライクなスレ
期待!
 ▼ 11 aSS341n256 18/03/08 00:11:19 ID:DQdOhguA [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
自分に思いを告げる時、マオは震えていたな。

カキは、忘れたくて、忘れられなくて、それでも忘れたくなかったあの日の彼女を思い出す。

あの時のマオは、きっと、今の自分よりもよほど怖かったのだろう。

俺が今抱えるような恐れも、マオにはより重くのしかかっていたはずだ。

それを乗り越えて、俺に気持ちを伝えてくれた。

色々と理由をつけて逃げていた俺は、確かにあまりに情けない――

「カキ、マオが今でも自分を思ってくれているか分からないって言いましたよね?」

一人物思いに耽っていたところで、リーリエがカキに聞いた。

「あ、ああ」

「マオが自分を思ってくれているかどうか恐れるということは・・・」

カキの返答を聞いて、改めてリーリエはカキの目を見据える。

真剣な目つきに、カキは少し押されてしまう。

少しの間を取って、リーリエは、

「やっぱり、カキは、マオのことがちゃんと好きだということですよ」

そう、ゆっくりと、淀みなく言い切った。


「安心してください、それはちゃんと恋ですから」

「恋・・・か・・・」

恋が何か分からない、なんてことをそのまま放っておくと、それはもっとも利便な逃げ道になってしまう。

だから、リーリエは念入りにそれを潰す。

勿論、カキがマオに惚れているという事実も、リーリエはしっかりと確信していた。

「論理的結論として、そうでなければマオがカキのことを好きでなくなっていても、カキがそれを怖がる必要はないのですから」

「確かに・・・そうかもしれないな」

自分のことを好いていてほしいと願うということは、自分もその人のことを好いているから。

カキのような自分の感情に素直になれなかったタイプには、理論だてて理解されるのが効果的だ。

「例えば、マオが他の誰か、サトシでもマーマネでもいいです、自分以外の誰かと付き合ってしまったら・・・」

「嫌だ!!」

「そういうことですよ」

「はっ、俺は・・・」

客観的に根拠を数個ぶつけられてしまえば、それはもう認めざるをえないわけで、

こうして、カキは今、マオを好きな自分を受け入れることができた。
 ▼ 12 aSS341n256 18/03/08 01:00:38 ID:DQdOhguA [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「肝心の贈り物は、もう決めてるのですか?」

「いや、まだだ」

ホワイトデーはバレンタインのプレゼントのお返しをする日。

だから当然、何かこちらからもプレゼントを用意しなければならない。

そういえば、考えることが多すぎてマオへのプレゼントまでは気が回っていなかったなと、反省しながらも、

別段難しく考える必要はない、とカキは考えていた。

きっと贈るものが何か、というところで、よほど変なものでなければ評価を下げることもないだろうし、マオなら大体何でも喜んでくれるはずだ。

「やっぱり手作りの方が気持ちが伝わるかな。ホシに今年はマカロンを作ってやろうと思ってるんだが、その時に一緒に・・・」

「ダメですよ!!」

なんとなしに言った、別段まずくもないであろう策をリーリエに強く否定されてカキは狼狽える。

「男の子がホワイトデーに手作りは、ちょっと重いです!」

「なっ!?」

リーリエがあまりに真正面から斬ってくるので、カキとしても少し面白くない。

反撃を試みようとするが、それよりも早くリーリエがまくしたてる。

「それに同学年のガールフレンドと妹を一緒にしてはいけません!!」

「い、一緒にしてるわけじゃ・・・」

「それにそもそも、その妹の物を作るついで・・・という発想も気に食わないですね!!」

「いや、別に・・・」

「大体食堂の娘のマオに手作り料理のプレゼントはハードルが高いでしょう」

「確かにっ!」

いささか思考が女々しすぎたか、完膚なきまでに論破されて意気消沈とするカキ。

ならば、買うのだろうが、どんなものを選べばいい。

サトシも同じようなことで悩んでいたな、そういえばマーマネは何と言っていたっけ、そもそも義理と本命とでは勝手が・・・

「フフ、悩んでますね」

「笑うなよ・・・」

頭の中をぐるぐる回して熟考するカキが微笑ましくて、思わずリーリエは吹き出してしまう。

「ごめんなさい、でも、それでいいんですよ。マオもきっと、自分のためにカキがそうやって悩んでくれて、幸せだと思います」

「・・・そういうものか?」

「ええ、自分のために誰かが真剣に悩んでくれるって、幸せなことですから。デパートに行きましょうか、プレゼント選び、付き合いますよ」

一人で考えるよりも素直に人の手を借りたほうがいい。そう判断したカキは、リーリエの言葉を少し照れ臭く思いながらも、彼女の厚意に甘えるのだった。
 ▼ 13 aSS341n256 18/03/08 11:59:38 ID:DQdOhguA [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「・・・な、なんか・・・」

「どうしました?」

「いや、居づらいな・・・」

無数の洋菓子が立ち並ぶ店内はいささか甘ったるい雰囲気で、カキにはどうも馴染めない。

リーリエの先導で店に入ったものの、一人では絶対に来られなかっただろうと内心息をつく。

「どれがいいんだろうな・・・これは、マシュマロか」

優しい色でふわふわした、甘く優しいお菓子。

カキにとってあまりなじみ深いものではなかったが、それがどんなものであるかは知っている。

手に取ったマシュマロの商品は、可愛い包装の中に鮮やかな複数の色のマシュマロが入った一品だ。

「結構人気だと聞くし、これなんかいいんじゃないか・・・」

「マシュマロはお勧めしませんね」

「なっ!?」

黙ってカキがプレゼントを選ぶのを見ていたリーリエだったが、カキがマシュマロに決めかけた瞬間、それを止める。

思わずカキも気が削がれ、

「ど、どうしてだ?」

とリーリエに詰め寄るが、

「カキは知らないのですか?ホワイトデーの贈り物には、意味というものがあるのです」

「意味・・・?」

そんなものを全く知らないカキは、黙ってリーリエの話を聞くほかなかった。

「殿方がホワイトデーにマシュマロを贈るということの意味は、それすなわち拒絶」

「拒絶!?」

「あなたのことが嫌いだと、言っているようなものなのです」

衝撃の意味に声をあげて驚くカキ。

そんな意味を持っていると知って、わざわざマシュマロを贈ろうとは思えない。

「マオは・・・まあ、知ってるだろうな・・・」

「ですね、あの子、こういう話好きですから。まったく気にしない人もいるでしょうけど、避けた方が無難かと・・・」

「だな・・・」

その後もリーリエに贈り物に込められた意味を聞きながら、カキは真剣に悩んでマオに贈るものを決めた。

 ▼ 14 aSS341n256 18/03/08 13:10:16 ID:DQdOhguA [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「今日は、ありがとな」

デパートを出ると辺りももう暗くなっていて、外には既にリーリエの迎えが来ていた。

「色々と助かった」

「いえいえ、困ったときはお互い様です」

きっと当日になってしまうと、緊張に襲われてまた恐怖を抱くのかもしれない、

それでも、今のカキの心はとても楽になっていた。

他でもない、リーリエのおかげだ。

「そうだ、ちょっと早いけどさ」

カキはカバンの中から一つ、可愛らしい包装の商品を取り出した。

「買っておいた。バレンタインのお返しと、今日のお礼ってことで・・・」

「ありがとうございます」

リーリエは笑顔でそれを受け取って、問う。

「中身は、クッキーですか?」

「ああ、クッキーだ」

「ホワイトデーに贈るクッキーというのは、そういうニュアンスとは少し違うような気がします」

「別にいいだろ、受け取ってくれ」

クッキーの意味は、「あなたは友達」。

だからマオに渡すのはふさわしくないと、プレゼント選びの最中にリーリエがカキに教えたのだ。

広いデパートの中で、カキが少し見当たらなかった時に買っていたのだろうか。

案外マメな人だ、そんな彼だからこそマオは、なんてリーリエは考える。

「そうですね、嬉しいです。私たちは友達ですから、カキとマオのこと、応援してますよ」

「ありがとう、リーリエが応援してくれたら百人力だな」


お菓子に込められた意味なんて、本来どうでもいいのだと、リーリエ自身も思っていた。

それでマオの気持ちが変わるわけでもないし、なんならカキの最初の案である手作りのお菓子であったって別に構わなかったのだ。

それでも、ゆっくり悩むことによってカキのマオに対する思いは大きくなっていったはず。

相手のことを思って考えるから、なおさら相手のことを愛おしく思うのだ。

そうしてカキがこのクッキーに「友情の証」という意味を与えてくれたように、

マオに選んだプレゼントにも、借り物の言葉なんかじゃないカキ自身の気持ちが込められたのだろう。

「なんだか、妬けちゃいますね」

「キャンディ」で済ませてしまうのは勿体ないから、その意味だけは教えなかったことも、きっと正しい判断だったはずだ。
 ▼ 15 aSS341n256 18/03/09 01:37:05 ID:HJQb8Sww [1/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「マオ、昨日は悪かったな、行けなくて」

「あ、ううん、仕方ないよね!都合がつかなかったんなら」

「よかったらまた呼んでほしい、昨日はどんな料理を出したんだ?」

「えっと、カレー、なんだけどね。辛いだけじゃなくて、甘みもあるような不思議な味を目指したんだ!」

「ほう、それは面白そうだな」

「みんな美味しいって言ってくれたよ!」

リーリエのおかげもあって、次の日からカキは以前の様に明るくなった。

マオにもなんの淀みもなく話しかけられるようになって、それを見たサトシやマーマネも、

「なにがあったのか知らないけれど、あの様子なら大丈夫そうだね」

「ああ、カキが元気になってよかったぜ!」

と安心していた。

勿論マオの方はというと、以前の様にとはいかないのだが。


「ねぇ、リーリエ。昨日、カキに何か言った?」

カキの変化の要因を、スイレンはリーリエの影響によるものだと推測した。

二人の事情をマオから聞いて知っていたリーリエが、カキやマオのことをひどく心配していたのはスイレンも知っていたからだ。

「例えば昨日の放課後とか、リーリエも、アイナ食堂に来なかったし」

「エヘヘ、気づかれてましたか」

別に後ろめたいことは何もないのだが、それでも少し恥ずかしいなとリーリエはおどける。

スイレンとしても、だから別にどうってことはないのだが。

「二人の問題に、首を突っ込むのも野暮だなとは思っていたのですが、どうしてもほおっておけなくて」

「うん、いいと思う。リーリエは優しいね」

実際に二人の関係がいい方に転んだと見えるのだから、感謝こそすれど文句をつけるような事態ではない。

「あの様子だと、カキはやっぱり14日にちゃんと答えを出すのかな」

「ええ、カキの方からも、しっかり思いを告げるのだと思います」

「そう・・・いいことだね」

「そうですね〜」

明日と明後日が休みで、その次が14日。

マオに心変わりの様子も見られない。

だからその日は、マオと、カキが、恋人になる日。

「・・・うん、とってもいいこと」
 ▼ 16 aSS341n256 18/03/09 01:52:06 ID:HJQb8Sww [2/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「よーし、じゃあいっちょ頑張るか!」

いよいよホワイトデーも目の前になって、カキは休日を使ってお菓子作りに勤しんでいた。

ホシとの約束の3倍返しだ。

カキにとってはある意味で、妹のホシより可愛い物はなく、

この時ばかりは妹の笑顔だけを思って、慣れないマカロン作りもとても楽しく思えた。

「お兄ちゃん!マオちゃんがお兄ちゃんに用事だって!」

「!?」

そのホシの発言で、一瞬にしてカキの思考が凍る。

頭の中がマオのことでいっぱいになって、玄関へ向かう足取りも心なし重い。

一体、うちまで何をしに来たのだろうか。

用事とはなんだ、全く見当もつかない。

場合によっては今ここで思いを告げることも覚悟しなければならない。

遂に玄関へとたどり着いて、カキは扉に手を伸ばす。

「待たせたな」

なるべく平静を装って開けた扉の向こうに目を向けると、想定していたより低い位置に来客の顔があって――

「嘘です♪」

「ス、スイレン!?」


「ごめんねー、驚かそうと思ってわざわざホシちゃんに頼んだんだ」

「やめてくれよ心臓に悪い・・・」

ここまでわざわざ来たのだから帰ってもらうというわけにもいかず、スイレンを部屋にあげるとマカロン作りの作業をキリのいいところで中断した。

そもそも、マオではなくスイレンだったからといって要件がいったい何なのか、やはりカキには分からない。

「・・・お前は、知ってるんだよな」

「なんのこと?」

「・・・マオとのことだ」

リーリエの話によると、マオはリーリエとスイレンの両方に相談していたということだったから、当然スイレンも一月前に何があったのかは知っているはずだ。

その件についての用事である可能性も高い。カキはとぼけるスイレンに、口ごもりながらもそう尋ねた。

「知らないよ?マオちゃんがカキに告白してカキがそれを中途半端に保留してそれからうだうだ一月経とうと――」

「思いっきり知ってるんじゃないか!!」

一体何の用なのだ。

カキにはスイレンの要件がますます読めなかった。
 ▼ 17 aSS341n256 18/03/09 02:09:56 ID:HJQb8Sww [3/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「器用なもんだね、マカロン?」

「ああ、ホシに作るんだ」

甘い香りに誘われて、キッチンでカキの工程途中のマカロンを見つけたスイレン。

こういったお菓子とカキのイメージが合わなくて、予想外な特技があるものだと驚いた。

妹のために頑張って調べたり、勉強したのだろうか、とそこで率直な疑問をカキにぶつける。

「ホシちゃんに?マオちゃんにはあげないの?」

「男が手作りのお菓子は重いってリーリエに言われてな」

「なるほど・・・」

確かに、リーリエの言うことは一理あるな、とスイレンは考える。

一般論で、男子が手作りのお菓子を女子にプレゼントしても、女々しいといった印象を与えてしまったりするだろう。

女子のそれと違って、男子のこういった特技はアピールポイントとしてはいささか不適切だ。

「・・・でも、カキはマオにお菓子を作るべきだと思う」

「え?」

だが、その一方で、ただ出来合いの物を買って贈るだけでは、不十分だともスイレンは考えていた。

「ホシちゃんのために作るそのマカロンには、一生懸命なカキの気持ちがいっぱいに込められてるよね」

「あ、ああ」

毎年毎年、ホシの笑顔が見たい一心で慣れないお菓子作りにも頑張れる。

マカロンという当初は聞きなれなかった名前のお菓子にも、テレビで偶然見かけたホシが美味しそうだと言ったことがきっかけでこうしてに挑戦しているのだ。

「マオにも、同じようにカキの一生懸命を伝えてほしい」

「そ、そうか。考えは人それぞれだな・・・」

リーリエと正反対の主張をするスイレンに戸惑うカキだったが、スイレンは更に続ける。

「違うんだよ、だって、元々、カキとマオは、友達でしょ?」

「!!」

男と女、異性としての一歩引いた関係、これから互いのことを知っていく二人。

カキとマオは、そういった関係にはない。

既に十分にお互いのことを知っていて、そのうえで一歩次の段階に進む二人。

「だから、重いとか女々しいとかそんな上っ面の印象なんて気にせずに、精一杯の気持ちを込めて、手作りのお菓子を作ろうよ」

真剣にカキの目を見据えてそう語るスイレンに、カキは思わず言葉を失う。

「カキは一度マオの精一杯の気持ちを無下にしてるんだから、なおさらだよ」

「あ、ああ、そうだな・・・」
 ▼ 18 エトル@メタグロスナイト 18/03/09 08:57:57 ID:/x.Txuok NGネーム登録 NGID登録 m 報告
これは…
 ▼ 19 aSS341n256 18/03/09 11:46:09 ID:HJQb8Sww [4/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「・・・なあ、スイレン」

「なに?」

「ありがとな、わざわざ」

リーリエから話を聞いて、手作りの方がいいと思って、それでわざわざそれを伝えにここまで来てくれたのか。

そう思うとカキは少し申し訳なくて。

「皆には色々迷惑かけたな。明日に・・・そうだな、チーズケーキを作って、買ったものと一緒にマオに渡すよ」

「・・・うん、それがいいよ」

牧場の自慢のミルクを使った絶品のチーズケーキだ、きっとマオの口にもかなうだろう。

マオに対する真剣な思いを込めるべきなのだから、ホシに作るのと同じものというのも違うのだろうな。

クラスメートには沢山心配をかけて、色々と気を遣ってもらって、そして背中を押してもらって。

感謝しても、感謝しきれない。

繰り返すように、カキは礼の言葉を言う。

「・・・ありがとう、俺のために」

「・・・違う」

「ん?」

「違うよ、カキのためなんかじゃないもん」

だが、スイレンの返しはカキの予想していなかったもので。

ふとスイレンに目をやると、どこか震えていて、少し怒っているようで、

「他のみんなは知らないけど」

ポツリ、ポツリとつぶやくスイレンの声は、今日彼女がここに来てから薄々感じられたとげとげしさにあふれていて、

「私は・・・全部、マオちゃんのためだから」

そして、どこか憂いを帯びていた。


「ほんとはね、嫌なんだ。二人が恋人になっちゃうの」

「スイレン・・・」

「うまく説明できないけど、なんか、怖くて」

未だ恋に落ちたことのない自分から見た親友の姿があまりに眩しくて、嫉妬してしまったから。

クラスのみんなで遊ぶのにも、気を遣わないといけないのが癪だから。

親友が誰かのものになってしまうような、一緒に遊ぶ時間が奪われるような感じがしたから。

それまでの関係性が変わってしまうような気がして、怖かったから。

思いつく理由はいくらでもあった。当事者のカキが恐れるように、第三者のスイレンも、カキとマオの関係が変わることによる自分達への影響に恐れを抱いていたのだ。
 ▼ 20 aSS341n256 18/03/09 12:06:49 ID:HJQb8Sww [5/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「でも、マオちゃんは私たちを信頼して、相談してくれたんだよ。友達だからさ、ちゃんとマオちゃんの幸せを応援してあげないといけないじゃん」

マオにとっての幸せは、恋の成就、告白の成功。

だからスイレンは怖い気持ちも、嫌な気持ちも押し殺して、精一杯にマオを応援した。

「告白するまでにも色々と頑張ってたけど、カキは全然気づかなくて。でも、それはいいんだよ」

少しずつスイレンの声に熱がこもる。

カキは自分が責められているようで、心が締め付けられる思いだった。

「告白してさ、もし、フられたとしても、それは仕方ないことだなって。好きも嫌いも、押し付けることなんてできないから」

「ああ・・・」

「でも、どうして、どうしてはっきりと答えを出してあげられなかったの!?」

「・・・ごめん」

「私に謝ってもなんもないよ、マオちゃんは、マオは一か月、どんな気持ちで過ごしたと思ってるのさ!!」

返す言葉もなくて、カキはただ茫然と立ち尽くす。

スイレンの目からはいつからか涙がこぼれていて、マオを思って泣くのなら、それほどにマオは苦しい思いをしたのかと、改めて自分の罪を自覚する。

「気まずくて、うまく話せなくて、そのくせ自分の中ですっと落ちたなら距離感詰めてみたり、勝手だよ・・・カキは・・・」

確かに、この一月は自分のことばかりだったような。

マオのことを考えて、ただもがいてのたうち回ったり、決心と躊躇を繰り返したり、

どんな答えを伝えるのか、どんなものを贈るのか、そんな悩みの全ては自分よがりだったかもしれない。

「・・・ごめん、あたっちゃって・・・」

「いいんだ、スイレンの言う通りだ」

スイレンに言われた通り、マオの気持ちを理解してやれないと、これから先があったとしてもそのたびにぶつかってしまうかもしれない。

「八つ当たりだよね、自分は気持ちを押し殺して頑張ったのにどうしてお前は・・・なんて」

「それでも、言ってくれてよかったよ」

「・・・やっぱり、カキなんて嫌い」

涙を拭いて、スイレンはカキの方を向かないまま憎まれ口をたたいた。

情けない、と自分を叱ったリーリエも同じような気持ちだったのだろうか。

もう、大丈夫だ。

うまくまとめられていなかったとしても、スイレンが言いたかったことはしっかり理解しているつもりだ。

明後日になったら、ちゃんと、マオに真正面から向き合える。

マオの一月の苦しみも、自分には分かり得ないということをしっかり分かっている。

大丈夫だ、カキは心の内で何度も何度も言い聞かした。
 ▼ 21 aSS341n256 18/03/09 15:13:21 ID:HJQb8Sww [6/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「私、帰るね」

「送っていくよ」

「いいよ、別に」

陽が落ちる前に、スイレンが帰宅の準備をする。

「じゃあ、これ」

リーリエへのクッキーを買ったのと同じときに準備しておいたクッキーをスイレンに差し出す。

ベタだなとは思いつつも、魚を象った可愛らしいクッキー。

「ちょっと早いけど、バレンタインのお返しだ」

さっきの手前少し気まずいと思いながら、スイレンはそれを受け取って、

「私、ほんとは文句言いに来たの」

礼を言う代わりにカキに言った。

「文句?」

そういえば、結局スイレンがここへ来た理由は聞いていなかった。

マオにお菓子を作れという助言も、その場の成り行きのようだったし、さっき自分にぶつけられた怒りがスイレンの来訪の理由だったということか。

わざわざそのために家まで来たのか、カキは改めてスイレンにとってマオがどれだけ大切な存在なのかを思い知る。

「・・・もし、ひどいことしてマオちゃん泣かせたりしたら、その時はスーパーアクアトルネード」

「分かってる」

スイレンだけじゃない。

明るくて元気な、みんなの人気者。

マオは、カキにとっても、リーリエやサトシ、マーマネにとっても大切な存在だ。

傷つけることなんて、カキも望んではいない。

「約束だよ」

「約束だ」

俺が一度逃げた後、マオは泣いたのかな。

それとも泣かずに、明るく振舞おうと努力したのな。

マオは、こんな俺のどこを好きになってくれたんだろう。

もし、今の俺の思いを伝えて、彼女もそれを受け入れてくれたら、

話したいことも、聞きたいことも、沢山あるな。

リーリエに諭されたあと、スイレンに叱られた後、

今のカキは、真正面からマオに向き合いたい気持ちで、いっぱいだった。
 ▼ 22 ばちゃんねる◆4Uwy0xcD9E 18/03/09 15:16:32 ID:bqx/JwP. NGネーム登録 NGID登録 m 報告
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 ▼ 23 aSS341n256 18/03/09 16:18:24 ID:HJQb8Sww [7/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「はい、これ!」

「バレンタインのお返しだぜ!!」

「ありがとう、二人とも!!」

ホワイトデーが遂にやってきて、教室が甘い匂いで満たされる。

サトシとマーマネが、リーリエに、スイレンに、そしてマオに、各々準備したお菓子を渡す。

「結局無難にデパートのクッキーにしたよ」

「俺も、博士もそれがいいだろうって!」

「美味しいもんねぇ、ここの商品」

「はい、私も大好きです!」

「クッキーは正義!」

「言えてるね、スイレン!」

決心をしても、どれだけ心構えをしても、やはりいざとなると、最後の一歩を踏み出すのは難しいことだ。

伝えなきゃならない事、伝えたいこと、一つ一つを心の中でなんども復唱する。

深呼吸をして、大丈夫、大丈夫。

マオの周りからみんながいなくなって、意を決して彼女の元に歩み寄る。

「マオ、ちょっと、いいか?」

「え、何?」

第一声。

ビクンッと体が動いて、とぼけた声を出したマオ。

真剣な顔のカキを見ても、彼の要件が理解できない、なんてことはあるべくもない。

「話したいことがある」

「・・・うん」


教室から出て、二人きりの渡り廊下。

自然と二人の顔もこわばる。

あの時のカキは、こんな顔じゃなかったな、マオは思い出す。

バレンタインの日に二人になれるように呼び出したのに、好きだと伝えるその瞬間まで、

どうしたんだ?改まって、なんて、おどけた風だった。

彼の荷物は、バレンタインのお返し。

その気持ちまでは、マオには分からない。

ゆっくりと、考えたうえで、彼は、私の欲しい言葉をくれるのか――
 ▼ 24 aSS341n256 18/03/09 16:45:10 ID:HJQb8Sww [8/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「お前のことが好きだ」

「!!」

カキが伝えなければならないと思った言葉は、

マオが彼から聞きたかった言葉は、

「好きだ、マオ」

たった、それだけ。

ともすれば聞き逃してしまうほどに短く、

それでいて、聞き逃すわけもない、

何よりも暖かく、美しい言葉。

「ほんと・・・ほんとに?」

「待たせて、すまない。あの時に返事をだせなくて、ゴメン。情けない俺で、悪かった」

顔が赤くなっていくのが自分でも分かる。

だが、そんな相手の変化にはお互いに気づくこともなく、

見つめあった目と目はひと時も離れることもない。

「考えて、考えて、時間をかけてしまった。だから、俺は今の俺の気持ちを全く疑ってないよ」

「カキ・・・」

マオの目から涙が伝う。

嬉し泣きだったなら、スイレンも許してくれるだろうか。

「・・・その、お前は、どうだ?」

「そんなのッ――」

感情があふれ出して止まらないといった様子で、

カキの言葉にマオは全力で応えた。

「好きに決まってるじゃない!!ずっと、ずっと好きだった!!」

「ちょ、声が大きい!」

「うるさい!!もう、バカッ!バカッ!!待たせ過ぎよ!!ホワイトデーがあるからって一か月待たされるなんて思ってなかった!!」

ぶつけられることのなかった不安が、不満が、一斉にカキに降りかかる。スイレンのそれと比較にならない圧にカキはタジタジになりながらも、心の底から幸せで、暖かい気持ちになって。

「痛い痛い!そ、それなら、もっと早く聞いてくれても・・・」

「そんなことできるわけないでしょ!!ほんとっ、もう・・・」

言葉だけでは足りなくて、カキの胸を何度も何度もたたきつけたマオは、やがてその腕を止めて、カキのことを抱きしめた。

「・・・大好き。大好きだよ、カキ」
 ▼ 25 aSS341n256 18/03/09 17:20:27 ID:HJQb8Sww [9/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「そうだ、これ、ホワイトデーの・・・」

「チーズケーキとネックレス?」

「ああ」

マオを落ち着かせて、改めてカキはマオに贈り物を渡す。

丹精込めて作ったチーズケーキと、マオに似合うと思って買ったハートの形のネックレス。

「二つも?いいの?」

「まあ、色々あって二つになった」

「何それ〜・・・ん!美味しい!」

「よかった」

プレゼントは、やはりなんでもよかったのかもしれないな、

マオの反応を見てカキは思う。

真剣に悩んで、真剣に作って、好きな人のために準備したものを喜んでもらえるこの気持ちは、

何をプレゼントしたって、真剣に取り組んだ過程があってこそだ。

「俺たち、今日から恋人に・・・なるんだよな」

「改まって言わないでよ、恥ずかしいな」

「・・・なんか、嬉しいよ」

「カキがすぐにOKしてくれてたら、一月前から嬉しい気持ちだったのに」

「それは言わないでくれ・・・」

恋人になったのだ。

そんな実感は、そうすぐに来るものでもないのかもしれないが。

なんだか、むずがゆくて、心の奥が少しこそばゆい。

「マオはさ、どうして俺のことを好きだって言ってくれたんだ?」

「そ、そんなこと聞くの!?」

「ダメだったか?」

カキが一番気になっていたこと。

こんな俺のどこがいいのか。

「ダメじゃないけど・・・」

マオは顔を真っ赤にして、それでも純粋な興味の目を向けられては無下にもできなくて、

「なんだろね、一緒にいて楽しいし、男らしくてカッコイイって思ってたよ?カキは」

ボソボソとした声で、カキに伝える。
 ▼ 26 aSS341n256 18/03/09 17:32:08 ID:HJQb8Sww [10/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「俺は、別に男らしくなんか・・・」

「そうだね!肝も案外据わってないし、カッコよくもないかも!!」

「うぐっ!!」

無暗に待たせた一か月間はやはり思っている以上にマオを傷つけたのかも知れないな、

改めてカキは痛感する。恐らく、この先何度も、何度も。

「でも、私はカキが好き。明確な理由なんていいの、カキは、カキが思っているよりもずっと素敵な人よ?」

「マオ・・・」

そして、マオの言葉に救われて生きていくのだろう。

この先何度も、何度も。

「美味しかった!ありがとね、ケーキ!」

「ああ」

「ネックレスは、そうだな・・・デートの日に着けていくよ」

「デ、デート・・・そうだな、それは楽しみだ」

「フフ、二人っきりで出掛けるんだよ?どこに行こうか!!」

マオの笑顔は、今まで見たどんな時よりも輝いていて、可愛くて。

この笑顔が自分のためだけに向けられていることが、何よりも嬉しくて。

そうか、これが。

この気持ちが、恋。

改めて、感じる。

何度でも、思い直す。

プレゼントにネックレスを選んだのは、ある種の願掛けでもあった。

考えあぐねる中で、リーリエからホワイトデーに贈る「ハンカチ」に込められた意味を聞かされて、別にお菓子にこだわる必要もないのだと知り、

マオに似合うアクセサリーを探して、叶うならばこの先も自分の前でそれをつけてほしい。

その願いも、叶うのだな。

「どうしたの?ボォ〜っとして」

「なんでもないさ。幸せだなと思っただけだ」

ふと、カキの顔を覗き込むマオが愛おしい。

支えてくれたみんなに感謝する。

どうか、この顔を曇らせるようなことがないように、

カキは新たな決意を胸に秘めた。
 ▼ 27 aSS341n256 18/03/09 17:46:48 ID:HJQb8Sww [11/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「よかったですね、マオ」

「おめでとう」

「リーリエ〜、スイレン〜!!

何度も何度も相談に乗ってもらったリーリエとスイレンに、マオは改めて交際を報告する。

不安に押しつぶされそうなときも、親身になって話を聞いてくれた二人に、マオは感謝しても感謝しきれない。

「デートの話、聞かせてくださいね」

「もう、やめてよ〜!!」

「マオちゃん、早速カキが呼んでるみたいだよ」

「えっ!?」

幸せ絶頂といった様子のマオを見送って、リーリエとスイレンはひとまず、彼女の恋物語がハッピーエンドに終わったことについて安堵する。

「なんだか、私たちも報われた気分になりますね」

「そうだね」

スイレンの方は、やはり少し複雑な気持ちではあったが、それでも今は二人を素直に祝福できた。

「いつまでも、別れたりとかしなければいいけど」

「どうでしょう・・・割と気の強い二人ですから、喧嘩もあるでしょうし、今から大人になっても一緒なんて、なかなか少ない話でしょうね」

マオ達はまだまだ子供で、いつまでもいつまでも一緒なんて現実的な話ではないのかもしれない。

衝突や、別れを経験しない人なんてきっと、ほとんどいないのだ。

「でも、大丈夫」

「大丈夫?」

「約束だから、マオを泣かしたらスーパーアクアトルネードだって。ね、アシマリ?」

「アウゥ♪」

「お、お手柔らかにしてあげてくださいね・・・」

付き合うまでに、こんなに悩んだのだから、こんなに苦しんだのだから、

恐らく二人は大丈夫だ。

少しくらいの困難は乗り越えていける。

「それに、私たちもいるし」

「・・・ですね」

大きな困難なら、手を貸してくれる人がいる。

だから二人は大丈夫、窓から仲良く歩く二人を見て、スイレンとリーリエはそう確信した。


〜おしまい〜
 ▼ 28 ロアーク@フシギバナイト 18/03/09 18:21:19 ID:SQKkjYLc NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!面白かった!
 ▼ 29 ラカッチ@シールいれ 18/03/09 20:45:46 ID:34Ea2m7. NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
お疲れさま!
ニヤニヤが止まんないぜ!
カキマオに幸あれ
みんなに幸あれ
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