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眠らない街と言われたイッシュの大都会ヒウンも、妖怪達が騒ぎ踊りだす頃には人々の生活の証をまばらにしか見せなくなる。街を彩るネオンも、民家に灯る明りも、少しずつその存在を潜めていってしまう。
彼は僅かも視線をそらすこと無く、しかし特別熱心にそれらを観察するでもなく、ただ漆黒の瞳にその光景を焼き付けていた。
もう、何度この景色を眺めただろう、何度期待を抱いただろう。
考えても仕方の無い事を、彼はこの日も、壊れたラジオのように何度も何度も頭の中に響かせていた。
ゼクロム「今日も徒労に終わるのだろうか……」
そう言って彼は肩で息をするようにして、大きくため息を吐いた。
苛立ちや焦燥、様々な感情がない交ぜになり彼の心を容赦なく抉っていく。
その感情がとても理不尽なものである事は彼自身よくわかってはいたが、木々が白い化粧をし始めるこの季節のそよ風程度では、彼の心の昂りはおろか、それに伴って僅かに上昇する彼の体温を冷ます事さえできなかった。
今日「も」もう諦めよう。そう思い彼は最後に大きく空を仰ぐ。
美しく大きな月が、煌々と輝いていた。