【SS】密林までゴミを捨てに行くだけの話:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】密林までゴミを捨てに行くだけの話:ポケモンBBS

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【SS】密林までゴミを捨てに行くだけの話

 ▼ 1 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/16 23:01:53 ID:SPso2qfc NGネーム登録 NGID登録 報告



『ダメだ……』


その時、確かに彼は戦った。


『またダメだ……!!』


戦っていた。


『ダメだ、ダメだ、ダメだっ!!』


足掻いていた。


『また……また、ダメ、だった……!!』


しかし。


『もう、無理だ……!!』


もうそれは、ずっと遠くの物語。



──
───
 ▼ 65 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/18 21:56:14 ID:V6VcQsG6 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ソウタロウ「勝つぞ、相棒」

ベトベター「……」


ヘドロの口が、にっ、と笑った。
ここまで高揚したのは、きっと二人にとって、初めての体験だった。懐かしい体験にも思えた。

さあ、旅を続けよう。


ソウタロウ「ダストシュート!!」

ベトベター「ぎゅるるるぁっ!!」


最後に放ったのはとっておき。今まで誰にも見せなかった飛び道具。
ベトベターの口から放たれた奔流は、有無を言わさず荒れ狂い、ドヒドイデを飲み下さんと口を開く──
 ▼ 66 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/18 21:58:29 ID:V6VcQsG6 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告





ソウタロウ「……はぁ、はぁ……やったか」

ベトベター「ぎゅ……ぐぅ」

ソウタロウ「……お疲れ」


ベトベターをボールに戻す。まだ周囲には毒の障気が残っていた。火もちろちろと燃えている。
ソウマはフィールドの反対側で立ち尽くしていた。勝ったのは、子供の方だ。


ソウマ「なんで、耐えたの? 絶対に倒せるはず、だったのに」

ソウタロウ「……そりゃ、『アシッド』だからさ。酸性の毒での攻撃なら、アルカリ性になる植物灰で少しは中和も出来る。……まあ、危なかったことに変わりはないよ」


勝敗を分けたのは、昔とった杵柄、とかいう奴だった。ゴミ処理場で得た知識を応用しただけ、それだけだ。ベトベターの体力は、それなしにはきっと削りきられていただろう。それだけ危ない戦いだった。
 ▼ 67 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/18 22:07:38 ID:V6VcQsG6 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ソウタロウ「強かった。前よりもずっと」

ソウマ「もう遅いよ。今さら、そんなこと言われても……」

ソウタロウ「だろうね。君は、大人になったんだろう?」

ソウマ「なったよ。もう」


憑き物が落ちた顔、というのはソウタロウには分からない。分からないからそんな表現は使えないが。
彼には、ソウマの顔はさっきよりかはマシに映った。


ソウマ「これはあげる。君にあげる。もう、私にはいらないから」


ソウマは不意にそう言って、ソウタロウにZリングを突き出した。クリスタルもついている。ソウタロウは受け取りかけて、途中で思い止まった。


ソウタロウ「いいの?」

ソウマ「うん」

ソウマ「今の君、今まで見たことないくらいとっても良い顔してるから、あげる」


そう言われて初めて、ソウタロウは自分の表情が気になった。フィールドに落ちている毒液に映る自分の顔は確かに、前よりはマシに見えた。

手に重みが伝わる。
Zリングが置かれていた。

もう、彼女はいない。
 ▼ 68 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 00:59:37 ID:eqHUEhjw [1/31] NGネーム登録 NGID登録 報告
───
──



『バトルは楽しいですか?』

『ああ……はい、とても』


あの頃は、そうは思わなかった。
でも今では、そう思えるのかもしれない。


『新しい仲間はどんなポケモンがいいですか?』

『うーん……その場で仲良くなった子ならいいかなって』


あの頃からそうは思っていない。
今でもだ。自分の相棒は、最初からベトベターだけだ。


『目標は何ですか?』

『島巡りを、一番に突破』


あの頃は、そうは思わなかった。
でも今は、島巡りにやり残したことを見つけている。どうしようもなく重いもの。成し遂げたいこと。

ああ、それはあの頃には、確かに無かったものだった。



──
───
 ▼ 69 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 01:01:09 ID:eqHUEhjw [2/31] NGネーム登録 NGID登録 報告



オニシズクモ「きしゃっ……きしゃっ……!!」

ソウタロウ「決めるぞベトベター、ダストシュートっ!!」

ベトベター「ぎゅるるああっ!!」


現在のせせらぎの丘の主、オニシズクモとの戦いは簡単に終わった。
相性の問題だった。元来水上での行動をメインとするオニシズクモでは、ヨワシ以上に水中のベトベターへの打点が無かったのだ。
その上、オニシズクモは自らの顔の周囲に水泡を生成している。ベトベターがその中に己のどくガスを染み込ませるだけで、オニシズクモは一気に弱体化した。


オニシズクモ「っ……」

ソウタロウ「……倒したね」


最後に土手っ腹にダストシュートをもろに受けたオニシズクモが、弱々しく逃げていく。それを横目に、借り物のラプラスに跨がったソウタロウはベトベターを戻した。試練突破だ。
次の試練の相手はガラガラ。そしてその次は、間違いなく──
 ▼ 70 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 01:01:37 ID:eqHUEhjw [3/31] NGネーム登録 NGID登録 報告

ソウタロウ「……」


せせらぎの丘を出た彼は、5番道路を下っていた。目的地はヴェラ火山公園。しかし今日中に辿り着けるとも思えなかったので、目的地はロイヤルアベニューで考えてある。

どれだけ道路を進んでも、ソウマの姿は見えなかった。交代でもしたのだろう、別の試練サポーターが道の脇に立っている。
興味はない。道を進むだけ。

オハナ牧場の東端を抜ける。この辺りは障害もない一本道。ライドポケモンもなく道連れもないソウタロウにはただただ暇な歩みであった。
そうともなれば、考え事をするのも道理。


ソウタロウ「……」


思い出すのは昨晩の戦い。うっかり熱が籠っていた、思わず叫んでいた、あの戦い。あの高揚感は、初めての筈なのに。
体が覚えていた。それを知っていると疼いていた。そして、焦燥が心をくすぐっていた。
この感覚の名前を、ソウタロウは知らない。
 ▼ 71 ーブシン@リーフのいし 18/09/19 13:27:56 ID:OS8I2trs NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 72 ドラン♂@いかずちプレート 18/09/19 16:30:03 ID:pGfkbVAM NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 73 ガルデ@ホイップポップ 18/09/19 16:53:29 ID:btt6f3r. NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
支援
 ▼ 74 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 17:52:28 ID:eqHUEhjw [4/31] NGネーム登録 NGID登録 報告



ロイヤルアベニューについた頃には、既に夜になっていた。月が上っている。気温はやや蒸し暑かった。火山が近いからなのだろうか。
しかしやはり発展した通りであるだけあって、一歩建物に入れば涼しいものだ。


ソウタロウ「これと……これで、いいかな」


ソウタロウはさっきポケモンセンターの一室を予約して、今はその近くにある大型スーパー、メガやすに入っていた。喧騒と宣伝が混じりあって、辺りは音に満ちている。
一通り商品棚は確認したが、確かに商品は安い。儲けが出てるのかあやしい程に。どこでどう金を遣り繰りしてるのかは少し不安になるが、しかし安いことは良いことだ。
ソウタロウはカートに水とパンを多目に投げ込んでレジへと向かう。

そして自分の番が来て、彼は店員に品を差し出した。
一瞬目が合う。


店員「……あんたは」

ソウタロウ「……あっ」


見たことがある顔だった。
 ▼ 75 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 17:53:27 ID:eqHUEhjw [5/31] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
少し後。
メガやす内にポツンと置かれたベンチにソウタロウは掛けていた。

さっきの店員を、ソウタロウは知っている。夢に出たことがある。……いや、ソウタロウはあまり人の顔を覚えるような質でもないから、夢にでも出てこない限り思い出せる訳がない。
あの店員の名前は──


店員「よお……」

ソウタロウ「……ドロン君、だっけ。合ってる?」

ドロン「おう……合ってるよ……」


ドロン。
……知っていることは、名前と、ドガースを手持ちに入れていたことだけ。

それ以上のことは知らない。知る前に、ソウタロウは彼に避けられるようになっていた。彼が特別なのではない。かつてのソウタロウの在り方では、それが普通だった。

彼はソウタロウの隣に腰掛ける。仕事は休憩時間なのだろう。
 ▼ 76 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 17:54:02 ID:eqHUEhjw [6/31] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ソウタロウ「今、仕事は何をしてるんだい?」

ドロン「仕事? フリーターさ」

ソウタロウ「……」


何気無く聞いたら、あまり良い感じではない返事が帰ってきた。ソウタロウは顔をしかめかけて……状況なら今の自分の方がもっと酷いと自戒する。
無職と、フリーター。外から見れば評価はそれだけだ。例え本人達がどう思っていたとしても。


ドロン「……変な目をするとは……思ってたよ」

ドロン「でも……仕方ないのさ。これが一番……効率良いから」

ソウタロウ「効率?」

ドロン「……ここで稼いで、ポニまで行って……泊まり込みでバトルツリーに挑む。負けて金が尽きたら戻ってくる……」


そこまで聞いて、ソウタロウは目を見開いた。

バトルツリー。噂に聞いたことがある。島巡りを成し遂げ、そしてポケモンバトルに心奪われ続けた猛者達の修練場。他の地方のチャンピオンや四天王、またアローラのキャプテンも集うという、あの。


ソウタロウ「バトルツリー……!?」

ドロン「いや……ひひ……バトルが、楽しくてさ」


そういう姿は、顔色は悪くともどこか得意げだった。
今の自分に満足しているように見えた。
 ▼ 77 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 17:57:27 ID:eqHUEhjw [7/31] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ドロン「今思えば……あの時のあんたの戦いかたも……参考にしてるんだろうなぁ……?」

ソウタロウ「……」


彼は成し遂げたのか。
何よりも安堵の感情が先に来たのはどういう理屈なのかソウタロウは分からない。

ただ。
彼のような大人もいるのだな、と感じた。
彼は大人だ。誰がどう言おうと。
大人の基準もまだ曖昧だが、それは確信を持って思えた。


ドロン「そういうあんた……今は、何を?」

ソウタロウ「……仕事を止めて、島巡りをやり直しに来たんだよ」


告げる。相手はそれを聞いて一瞬豆鉄砲を食ったように黙り込んだが、少し黙ったあと笑いを漏らす。


ドロン「……ひっ」

ドロン「ひっひっひ……そうか……オレ、先輩だな……!!」

ソウタロウ「……そうだね」


不思議と、嫌味は感じなかった。


ドロン「やっぱり……バトルは……楽しいだろう?」


そう言われる。
別にバトルが楽しかった訳ではない、と彼は否定しようとして……昨日の戦いを思い出す。

そうか。そうだったか。
あの高揚は、昂りは、紛れもなく、楽しいという名前だったのか。実感の湧かなかった言葉を、名前を知らなかった体験に当て嵌めるだけで、パズルが一致したように納得がいった。
そうか。あれが、愉快だったのか。自分は。困惑が嘘のように消えていく。

ならば。
 ▼ 78 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 17:57:57 ID:eqHUEhjw [8/31] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ソウタロウ「ああ……そうだね。バトルは、楽しいよ」

ドロン「……けひひ、もうあんたは……気持ち悪くねぇなぁ」


ドロンは時計を見た。気づかなかったが、もう10分程時間が経っていた。
彼はゆっくりと立ち上がり、伸びをする。


ドロン「今から一戦……と思ったけど……残念、休憩は終わっちまった」

ソウタロウ「今のボクでは、君には勝てないさ」

ドロン「そうかい……そうかい……オレも、来るとこまで来たなぁ……!!」


彼はソウタロウに背を向けた。一歩一歩、歩き始める。


ドロン「……出来ればバトルツリーで……会いたいもんだね」
 ▼ 79 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 21:29:11 ID:eqHUEhjw [9/31] NGネーム登録 NGID登録 報告
───
──



『君は天才だよ。エリートだ』


かつて、そう呼ばれた者がいた。


『ソウタロウ君凄いよ!! ヒーローだよ!!』


かつて、そう呼ばれた者がいた。


『このまま行けば、次のキャプテンは彼かもしれない』


かつて、そう呼ばれた者がいた。


『何だアイツ、調子のってやがる』


かつて、そう呼ばれた者がいた。


『アイツ、島巡り止めたんだってよ。ざまあないね』


かつて、そう呼ばれた者がいた。


『それでもオイラの息子か!!』


かつて、そう呼ばれた者がいた。

全てを背負える、訳がなかった。



──
───
 ▼ 80 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 21:30:55 ID:eqHUEhjw [10/31] NGネーム登録 NGID登録 報告



太陽は東に輝いていた。それは岩場に影を作り、試練の様を淡々と映し出していた。


ガラガラ「グルル……」

ベトベター「……ぎゅらぁ」


ヴェラ火山公園での試練は、最終段階を迎えていた。火山の主、ガラガラと睨み合うベトベター。距離を測り、歯を剥き出して攻撃に備える。
ガラガラの武器は炎を纏う骨の棍棒。まともに食らえばベトベターの体は抉られかねない。迂闊に近づくのは危険が過ぎる。


ガラガラ「ガッ!!」

   タッ

ソウタロウ「下がれ!!」

ベトベター「ぎゅるるっ!!」


ならば、常に距離を取り続けるまで。
ガラガラがこちらに迫ってきたタイミングを見計らって、ベトベターは後ろに飛び退いた。振り抜かれた棍棒が空を切る。
そしてベトベターは着地し、すぐにガスの方向を切り替えて前へと飛び込んだ。大口を開け、歯を剥き出す。
 ▼ 81 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 21:32:11 ID:eqHUEhjw [11/31] NGネーム登録 NGID登録 報告
ソウタロウ「かみくだく!!」

ガラガラ「ガッ!!」


確かにベトベターの歯は、ガラガラの首筋を捉えていた。
だが。


   スカッ

   ガチッ

ベトベター「!?!?」


当たらない。思いきり口を閉じたベトベターは自分の歯の勢いで目を白黒させる。
一瞬の内に、ガラガラはベトベターから大きく飛び退いていた。まるで最初からそうするつもりだったように。


ソウタロウ「……見切りか」


見切り。それで、こちらの動きを先読みしたのだろう。
だが好都合だ。向こうからの反撃はなかった。ここで一度見切らせたなら、次の読みまでは時間が空く筈。一気に攻める。

距離を詰める間も惜しくて、ソウタロウはZリングに手をかけた。貰い物で、初めて使うもの。だがどう踊るかは……もう、手本を見ている。
 ▼ 82 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 21:33:26 ID:eqHUEhjw [12/31] NGネーム登録 NGID登録 報告
ソウタロウ「行けるね?」

ベトベター「ぎ……ぎゅるるっ!!」


左手を前に。肘を曲げ、なるべく硬く。右手は上に。手首は下に固定、指先は震わせて。目は鋭く、狙いを定める。決して勝利を逃がさない。
ベトベターの後ろ姿は堂々としたものだった。やり方は、分かっている筈だ。


ソウタロウ「アシッドポイズンデリートっ!!」

ベトベター「ぎゅるるぐああっ!!」

   ザバッ


ベトベターを軸にして、沸き上がった毒液が渦を巻く。
 ▼ 83 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 21:34:24 ID:eqHUEhjw [13/31] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告





ガラガラは下した。アシッドポイズンデリートの引き起こす毒の沼に引き込み、蝕みながら動きを封じたところで、がら空きになった首を今度こそ噛み砕いた。

こうして、ヴェラ火山公園での試練もいよいよ終わった。下山を終えたソウタロウは空を見上げる。中天に輝く夏の太陽は、ソウタロウも、それ以外も、何の区別もなく無造作に照らしていた。

鞄から水を取り出す。一本には自分で口をつけ、一本はボールから出したベトベターに投げ渡した。


ソウタロウ「……」

ベトベター「ぎゅらぁ!!」ゴキュゴキュ

ソウタロウ「……いよいよだね」

ベトベター「ぎゅ」ゴキュゴキュ


静かに、ソウタロウは呟いた。ベトベターはひっくり返したペットボトルを口の中に放り込みつつ頷く。
ここまで来るまで、とてもとても長かったような気がした。

きっと、本当に長かった。一度目の旅で心折れたあの時、もうこの旅は始まっていたのかもしれない。
 ▼ 84 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 21:37:12 ID:eqHUEhjw [14/31] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ソウタロウ「分かったことがあるんだ」

ベトベター「?」バリバリ


一つ、結論が出た。

別に今さっきのバトルとは何も関係ないが、バトルが終わってすっきりした頭で考えたら案外簡単に出てきた答えだった。

本当はこの世界に、『大人』なんていないのだ。
いるのは、挫折を経て、経験を経て、自身の世界を作り上げた一人の子供、いや、一人の人間なのだ。
でなければ、セイジロウも、ソウマも、ドロンも等しく大人だなんて思える筈がないのだ。

今まで、誰も教えてくれなかった。知っている大人しか知らなかった。でも。

なんだ、簡単だ。本当に簡単じゃないか。


ソウタロウ「どう思う?」

ベトベター「……」
 ▼ 85 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 21:38:33 ID:eqHUEhjw [15/31] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ベトベターは頷くでもなく首を振るでもなく、ぼんやりとソウタロウの目を見つめていた。
それなら、それがベトベターの意見なのだろう。

答えを出す必要すらない。人は多様で良いのだ。決まった生き方なんてどこにもない。共通の理想なんてどこにもない。ならば、己を確立した者こそが、大人なのだ。

では、自分はどうすれば大人になれるか。


ソウタロウ「……行こうか」

ベトベター「ぎゅらぁ♪」


答えは、道の先にある。
二人は8番道路に足を踏み入れた。
太陽はまだ煌めいている。
 ▼ 86 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 21:56:39 ID:eqHUEhjw [16/31] NGネーム登録 NGID登録 報告
───
──



『ベトベター、どくどくのキバ!!』


燦々と照りつける太陽。


『っ、躱された……!?』


草の臭いに囲まれた森。


『まだだ、かみつけ!!』


湿っぽくて軟らかい大地。


『……ダメだ、下がれ、下がれ!!』


そして、立ち上る光の柱。

それを見て、あの時、何を思ったのか。



──
───
 ▼ 87 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 22:01:05 ID:eqHUEhjw [17/31] NGネーム登録 NGID登録 報告
シェードジャングル前のポケモンセンター、玄関先にて。


ソウタロウ「おはよう」

   ポンッ

ベトベター「ぎゅるらぁ……」

ソウタロウ「……いい朝だね」


今日の空も、やっぱり晴れていた。
太陽を見上げる。眩しくて目を細める。口元は笑っていた。

あの時何を思ったのか。
今ならもう、鮮明に思い出せる。

悔しかった。そして、楽しかった。

二つは決して矛盾しない。楽しいの上に悔しいは成り立ち、成長を望み、挑み、破れる。二つの思いは、彼を初めて高揚させたもの。初めて芽生えたもの。彼の知らなかったもの。
勝ちたい、と明確に思ったのだ。勝てない己に怒ったのだ。それは、彼が初めて得た旅の目的で、初めての避けては通れない遠い目標で、胸の内を覆い尽くした知らない感情で。

その感情の。思いの重みに、自分で耐えきれなかったのだ。それが喜びだと分からないから恐れたのだ。
耐えきれなくて、戻りたくて、忘れたくて、それで逃げたのだ。


ソウタロウ「はい、水。しっかり補給しといてね」

ベトベター「ぐぎゃあ」バリバリ
 ▼ 88 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 22:02:06 ID:eqHUEhjw [18/31] NGネーム登録 NGID登録 報告
本来はそれはちょっとした逃亡でしかなかった。普通なら暫く休めば切り換えられる物だった。気付きの切っ掛けさえあればよかった。
だが、たまたま世界はそれを許さなかった。子供は切り換えも何もないままに、あれよあれよと言う間に『大人』の皮を被らされ、大人として動くことになった。そして中身の子供は訳もわからず逃げ惑い、大人の片隅に踞った。
誰かが悪いという話ではない。間が悪かった。運が悪かった。そうとしか言い様のない話。

それでも。勝手に子供は消えやしない。己の子供は、乗り越えることでしか消滅しない。後悔を濯ぐまで、悔しさと喜びを受け入れるまで、未知と困惑を捨てるまで、その存在を残し続ける。

だから。


ソウタロウ「……飲んだ?」

ベトベター「ぐ♪」

ソウタロウ「じゃあ、準備はいいね?」


責任を持って、きっちりと。

捨てなければならないのだ。


ソウタロウ「相棒」

ベトベター「ぎゅる」


入り口に辿り着く。それに向き合う。
かつて、ここに何度入ったろうか。何度敗走して出てきたろうか。諦めるまでに何度迷ったろうか。
要らない過去が、頭を占めて止まない。

それも今度こそ、終わらせよう。
眩しい太陽は、あの時のように挑戦者を照らしていた。


ソウタロウ「行こうか。ゴミを捨てに」

ベトベター「ぎゅらぁ!!」
 ▼ 89 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 22:05:18 ID:eqHUEhjw [19/31] NGネーム登録 NGID登録 報告



そしてソウタロウは、シェードジャングルに踏み入った。試練を開始する。

若い少女のキャプテンの要望に従い材料を集める間、ソウタロウの手は震えていた。一歩ごとに、負けた時の記憶が甦った。
……そして、今度こそ勝つという意思も湧いた。つまりそれは武者震いだった。

そして、いよいよ試練は本番に入る。ソウタロウの『試練』がいよいよ始まる。
主を呼び出す料理とやらは中々酷い出来だったが、ゴミ処理場でいつも嗅いでいる臭いよりよっぽどマシな臭いだった。そして、しっかりと仕事もしているらしい。


   ガサガサ

ソウタロウ「……さあ、リベンジだよ」

ベトベター「ぎゅ」


草を踏み分ける音がする。臭いに誘われやってくる。
奴が、来る。

それの脅威を、ソウタロウは知っている。ベトベターは知っている。空に立ち上る光の柱の高さを、太さを、眩しさを知っている。
それでも。
ここに、二人は帰ってきた。今度こそ、大人になるために。子供に、決着をつけるために。

闇の中に影が立つ。そのシルエットは、昔とちっとも変わっていない。


ソウタロウ「久しぶりだね」

ラランテス「……」


そして、敵は現れた。
それの名前はラランテス。今でも健在の、シェードジャングルの主。
 ▼ 90 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 22:06:05 ID:eqHUEhjw [20/31] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ラランテス「……キュル?」

ソウタロウ「ゴミを、捨てに来させてもらったよ」

ベトベター「ぎゅらぁ!!」


視線が交わって。
戦いの合図は、それで十分だった。


ラランテス「シャランシャランラッ!!」


ラランテスが両手を振り上げる。声を張り上げて、仲間を呼んでいるのだろう。
そうはさせない。ソウタロウはラランテスの鎌を睨みながら叫ぶ。


ソウタロウ「掻き消せ!!」

ベトベター「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃあっ!!」


いやなおとが、ベトベターの全身から響いた。音量には自信がある。タイミングを合わせてこれをやれば、ラランテスの仲間呼びは封印できることを、ずっと昔にソウタロウは知っている。
だがそれだけだと、勝てない。
このままだと、光の柱が大地を凪ぎ、一息にベトベターを消し飛ばす。
 ▼ 91 ノアラシ@ヤタピのみ 18/09/19 22:08:10 ID:ujmosifk NGネーム登録 NGID登録 報告
密林と聞いて真っ先にジュカインが思い浮かんだ
 ▼ 92 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 22:08:20 ID:eqHUEhjw [21/31] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ソウタロウ「飛び上がれ!!」

ベトベター「ぎゅっ!!」

   ブワッ


地を這っていては、どう頑張っても敵わない。ならばとベトベターは舞い上がった。どくガスに加圧に加圧を重ね、己を熱し、ジャングルの木々を突き抜けて、太陽を背に受ける。こうすることで、ラランテスの反撃を太陽光で妨害できる。ここまでは定石通り。
問題は、ここからだ。

自由落下していくベトベター。その方向を操作するのは、下から見上げているソウタロウなのだから。


ラランテス「キュルキュルキュル!!」

ソウタロウ「左方向にどくガス!!」

ベトベター「ぎゃっ!!」


ベトベターは加速していく。半ば液体のような性質のベトベターは硬いポケモンに比べて空気抵抗は少ない。だから落下の勢いは増すばかりで……ベトベター本人にも何が何だか分からないのだ。
当たったならば、ラランテスに痛い一撃を与えられるだろう。しかし外せば、確実にベトベターはしばらく反動で動けない。その間に、間違いなくやられる。そしてラランテスだって、ただで当たってはくれる訳がない。


ラランテス「キュルキュルキュルキュル!!」サッ

ソウタロウ「背中方向に噴射!!」


だから、ソウタロウが下から操作しなければならない。当てなければならない。
ラランテスが移動する。現在のベトベター落下予測地点との距離1m、現在ベトベターは高度50m。


ラランテス「──」サッ

ソウタロウ「左!!」

ラランテス「──」サッ

ソウタロウ「右上!!」

ラランテス「──」サッ

ソウタロウ「腹方向に噴射!!」


ベトベターの影が濃くなって行く。ベトベターの高度10m。ラランテスは現在動いていない。
今度こそ、当てられる。
 ▼ 93 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 22:09:09 ID:eqHUEhjw [22/31] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
そこで、ラランテスは上を見上げた。ベトベターを視界に捉える。
その鎌が光った。


ソウタロウ「シザークロスか……!!」


しかし、向こうが攻撃に転じたならば、即ちそれはこちらの技とのぶつかり合いを選んだということ。それなら、競り勝てるかもしれない。


ソウタロウ「かみくだくっ!!」

ベトベター「ぎゅらぁ……っ!!」

   ガンッ


衝撃。

歯と刃とがぶつかり合い、巻き起こった風が辺りの草を揺らした。


ラランテス「キュル……っ!!」

ベトベター「がっ……っ!!」


ラランテスの鎌はベトベターの口に食い込み、またベトベターの歯は確実にラランテスを捉えている。
だが、駄目。まだ足りない。ラランテスは耐えている。この一撃では倒せない。


ソウタロウ「っ……!!」


高所から繰り出した質量任せのベトベターの一撃の威力は、ここから加速度的に落ちていくだろう。大してラランテスのシザークロスは単純な力業、威力が落ちるにしてもそれは微々たるもの。このままだと、押し負ける。

負けたくない。勝ちたい。

あの時負けた自分に、悔しかった自分に決着を。この葛藤に決着を。

Zリングに手が伸びる。一瞬は躊躇ったが、勿体振って勝てないなら意味がないというもの。
足を踏ん張る。左手を前に、右手を上に。指の向こうに標的を捉える。未だ相棒と拮抗するラランテス。その足元を。
 ▼ 94 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 22:10:25 ID:eqHUEhjw [23/31] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ソウタロウ「アシッドポイズンデリートッ!!」

ベトベター「ぎゅああああっっ!!」

   ボチャン


ベトベターの足元に……ラランテスの足元に。毒の沼が生成された。二匹のポケモンは共に落ち、沈む。気泡が二度程浮かんで、途絶える。
一瞬、倒せたかと思った。

だが思い直す。まだだ。まだ倒れている訳がない。あの光の柱は、こんなものじゃあなかった筈だ。


ソウタロウ「……来る!!」





   カッ

ラランテス「キュルキュルキュルキュル!!」


光の柱が、沼の中から立ち上った。

光は毒を消し飛ばし、ベトベターを吹き飛ばし、地面すら抉り、ジャングルの木々をへし曲げて天へと届く。
そしてラランテスは砂にまみれた己の体をほろいながら、何でもないように現れた。

いや、違う。確実にその足はふらついている。傷は負っている。
ここで畳み掛ければ。
 ▼ 95 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 22:11:44 ID:eqHUEhjw [24/31] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ソウタロウ「ダストシュートッ!!」

ベトベター「ぐるるぎゃあっ!!」


吐き出された紫の雪崩。行軍するゴミの山。その歩みは速く、地面を巻き込んで加速していく。
当たったならば、今度こそ。

と思ったその時に、上から影が降りてきた。


   グシャッ

キュワワー「きゅ……」バタン

ソウタロウ「……っ!! やられた!!」


……倒れていたのはキュワワーだった。アシッドポイズンデリートを破壊した際の方向に呼び寄せられていたのだろう。つまり肉壁だ。
当然、ラランテスはその向こうで戦闘の体勢を整えていた。あと数秒早ければ、とも思うが、惜しんでいるだけ時間の無駄だ。


   カッ

ベトベター「ぎゅら……!!」

ソウタロウ「日差しが……」


そして。最悪なことに、キュワワーはもう一つ仕事をしたらしい。

にほんばれを使われた。

日差しが強くなっている。燦々と降り注ぐ太陽は『日除け』の名をつけられた密林であろうと容赦なく照らし出し、ラランテスを一杯に輝かせる。


ラランテス「シャララララァッ!!」


一際、ラランテスが鋭く叫んだ。右の鎌を高く掲げる。黄緑の光が集っていく。
 ▼ 96 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 22:19:27 ID:eqHUEhjw [25/31] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ソウタロウ「……どくガス、構えて」

ベトベター「──」


光の柱が立つ前兆だ。太陽を一杯に浴びたラランテスは、何度でもそれを繰り出してくる。
その攻撃の名はソーラーブレード。太陽の刃。光の刃。

それが、降り下ろされる。
軌道は縦。脳天に食らえば命の危機、両側に逃げるだけなら衝撃で身が持たない。
なら、逃げ場は一つ。


ラランテス「キュルキュキュラアアアッ!!」

ソウタロウ「噴射!! ラランテスの左手すぐ横まで飛び込め!!」

ベトベター「ぎゅるるあっ!!」

   ブワッ


ベトベターは一気に加速した。最も衝撃を受けないであろう場所。最も相手の意表をつけるであろう場所。光もかくやの速度でそれはラランテスの足元まで至り、その左足のくるぶし辺りに噛み付いて、捻る。


   グキッ

ラランテス「シャラッ……ッ……!!」


ソーラーブレードは、ベトベターのいない空を切った。しかも威力も落ちている。観測すれば、左足の付け根があらぬ方向へと曲がっていた。
これなら、踏ん張れない。踏ん張れなければ、ソーラーブレードの威力が高まりきらない。
 ▼ 97 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 22:20:13 ID:eqHUEhjw [26/31] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ソウタロウ「ダストシュートっ!!」

ベトベター「ぐぎゅぐばぁっ!!」

ラランテス「シャランシャランラッッ!!」


再び、ダストシュート。
未だ日差しに照らされるラランテスはソーラーブレードで応戦するが……弾き返すには至らず、焼き尽くすだけに止まった。


ソウタロウ「相打ち……行ける、行けるぞ!! 距離を詰めるんだ!!」

ベトベター「ぎゅるるっ」

   ブワッ


勝てる。勝てる。今度こそ勝てる。
確信があった。ベトベターは高く舞い上がる。いっきに距離を詰めて、首筋に食らいつけば、確実に落とせる。

ベトベターは空を駆けて──


   スカッ

ベトベター「──っ!!」


……途中で、勢いが失せた。ガスが出なくなり、ベトベターは緩やかに落ち始める。


ソウタロウ「──」


PP切れだ。

さっきの加速に配分を使いすぎたらしかった。
堕ちていく。堕ちていく。ベトベターが堕ちていく。ガスを使いきった彼を押し上げるものはもう何もない。何も彼を支えない。落ちれば、敗けだ。
 ▼ 98 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 22:32:36 ID:eqHUEhjw [27/31] NGネーム登録 NGID登録 報告
視界が白くなりかけた。
ここまで来たのは初めてだった。いつも、すぐに負けていたから。
負けたくない。でも、負ける光景しか見えない。この状況である打点はダストシュートのみ。この速さで狙いが定まる訳がない。勝てない。また勝てない。

ソウタロウは天を仰ぐ。ベトベターが落ちてくる天を。太陽を遠くに望む天を。
天を仰いで──

その最中に、一瞬ベトベターと目が合った。

……まだだ。まだベトベターは、ラランテスを睨んでいた。指示を待っていた。


ソウタロウ「……っ」


拳を握る。

自分は何をしにここまで来た?
胸の中のゴミを捨てに来た。

今、胸の中のゴミは何だ?
後悔。困惑。恐怖。不安。

……なら。


ソウタロウ「ダストシュートだぁっ!!」


悪い予感を投げ捨てよう。不安を無かったことにしよう。恐怖を踏みつけて、困惑に唾を吐き、後悔を嘲り笑おう。そして、最後まで希望に賭けよう。考えるのは後でいい、反省するのは後でいい。それでいい。


だから、今するべきは。


ソウタロウ「いけええええええええええっ!!」

ベトベター「ぎゅるるぎゅららららあぁああっ!!」


堕ちていく。堕ちていく。ベトベターはゴミを吐き、回転し、それでも敵を睨み続けた。逆さまになっても、目にゴミが入っても、歯が折れても、脳が揺られても。
狙いはラランテス。最後まで、外すな。


ベトベター「らああああ"あ"あ"あ"あ"っ!!」

   ドサッ


そして。

ヘドロは大地に落ちた。落ちきった。動けない。意識を保つだけ。

ラランテスは。
 ▼ 99 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 22:36:09 ID:eqHUEhjw [28/31] NGネーム登録 NGID登録 報告
ラランテス「シャラ……キュルル……!!」


立っている。まだ立っている。捻られた左足で立ち、片方が白く濁った目でソウタロウとベトベターを交互に見る。
太陽はまだ光っていた。


ラランテス「……キュルキュ……キュラアアアッ……!!」


そして、両方の鎌が同時に光る。

光って。


ラランテス「キュル──ッ」

   ドサッ


……倒れた。

戦闘、不能。


ソウタロウ「……」

ベトベター「……」


ソウタロウは立ち尽くしていた。
ベトベターは地に伏したままだった。
ラランテスは目を回して、動かない。


ソウタロウ「……やった」


ゴミ捨ては、終わったのだ。


ソウタロウ「やったぁあああああっ!!」

ベトベター「ぎゅらあああああっ!!」
 ▼ 100 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 22:37:16 ID:eqHUEhjw [29/31] NGネーム登録 NGID登録 報告










司会『さあやって参りましたポケモンリーグ、チャンピオン戦でございます。今回もチャンピオンは変わらず、ヨウ。ヨウ選手であります。五年連続で王座に座り続ける新たなる生ける伝説と名高いチャンピオン、それに立ち向かうのは? チャレンジャーの入場です』


司会の声を除くなら、そこは驚くほど静かだった。あらゆる観客はテレビの向こう側、ここにいるのは、審判と、チャンピオンと。


ソウタロウ「行くよ」

ベトベター「ぎゅらぁ♪」


チャレンジャー。


司会『何と今回のチャレンジャーは変わり種も変わり種、マリエ北にありますクリーンセンター、ゴミ処理場からの刺客、社長業の傍らトレーナーとしても頭角を見せる天才!! ソウタロウ選手!!』


ラランテスを下してからはや数年。ソウタロウにもまあ様々なことがあった。困難もあったし、行き詰まりも見つけた。だが面白いことに、そういった場所には面白さも見つけられた。
だから彼はそこにいる。


ソウタロウ「……皆こう言うね」

ベトベター「ぎゅる」


人は再び、彼を讃えた。
天才。秀才。奇跡。エリート。ホープ。スター。
どれも与えられたものだ。拒みはしないが、受け入れる必要もどこにもない。

彼らは、彼らだ。
 ▼ 101 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 22:38:21 ID:eqHUEhjw [30/31] NGネーム登録 NGID登録 報告
司会『相棒はたった一匹のベトベター!! 一度は島巡りに挫折したものの、後にやり直し見事制覇したという、現在の自由の風吹く新時代の島巡りの先駆者であります!!』

ヨウ「……」

ソウタロウ「久し振りだね。いや、覚えてないかな」


人生は長い。命の全ては通過点でしかない。その間に出会う全てはいつか過ぎ去るもの。評価は廃れ、名誉は薄れ。人の生命のその中で、最後まで輝くのは。

己の意思だ。
生きている限り最後に感じるのは自分の体、自分の魂。人間を肯定するのは、結局は己の自信である。

他者の評価は所詮外からの言葉に過ぎない。それは己を完全に理解しての物ではない。己にすらはっきり分からない己を、他者が評価できる訳はない。
故に生命に王道はなく、正解はなく、満点はない。
ならば、好きに生きたものが勝者だ。


ヨウ「……」

   ポンッ

ジュナイパー「……」

ソウタロウ「言葉は要らない、って感じかな」

ベトベター「ぎゅる」


要らない物は捨ててしまおう。大切なものだけ持てば良い。全ての拘束を振り捨てて、己のみの最善を探し出そう。最期までの時間を全て使って、そして自分は自分になるのだ。


司会『両者ポケモン出揃いました、今回はチャンピオンの意向により一対一のポケモンバトル。どちらが勝つか、全ては始まるまで分かりません』

ソウタロウ「じゃあ、始めようか」


旅はまだ、終わらない。





【SS】密林までゴミを捨てにいく話 未完
 ▼ 102 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 18/09/19 22:39:49 ID:eqHUEhjw [31/31] NGネーム登録 NGID登録 報告

話としてはここで完結です

SMには色んな親が出てくるけど、一番のクズ親って実はセイジロウだったんじゃないかと思ったのを切っ掛けに書きました

ありがとうございました
 ▼ 103 イガニ@レインボーパス 18/09/20 07:29:09 ID:EH6QwMiI NGネーム登録 NGID登録 m 報告
 ▼ 104 ンシカイオーガ@しんかいのキバ 18/09/20 22:21:03 ID:qL8QfsTk NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
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