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【SS】光り輝く世界の中で

 ▼ 1 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 12:47:24 ID:nLGUMWW6 [1/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告


時の流れは各々の感覚によって異なる。

ゆっくりと雲の様に佇んでいる者もいれば、光の様に鮮烈に駆け抜けていく者もいる。

これを表す言葉には、”十人十色”という言葉がしっくりと来るだろう。




………その中には、世界の全てが停止し、暗黒に満ちてしまった未来を生きた、とある二匹の命が存在する。
 ▼ 4 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 12:49:54 ID:nLGUMWW6 [2/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

周りの気温が急降下した。

その様に感じてしまう程の冷たい戦意を身に宿す両者。

淡く発光するライムグリーンの刃とダークグレーの拳。

長い様で短い、そんな静寂を経て………

「「………ッ!」」

双方の間合は瞬く間に詰められた。そこから一瞬遅れて、得物同士がかち合う甲高い音が響き渡る。
そのまま両者は超至近距離で攻め合い、相手を崩しにかかった。小手先の技が通用しない純粋な力比べ。

ここには2匹以外には誰もいないが、もし第三者が居たならば双方の力が拮抗しているように見えただろう。

しかし………


「くっ………!」

腕の刃を以て激しい鍔迫り合いを展開している真っ最中であるジュプトルはその整った顔をくしゃ、と歪めた。

対して、同じ状況下に置かれている筈のヨノワールは涼しげな表情を保ち、ジリジリと押し込み、追い詰めていく。
 ▼ 5 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 12:50:45 ID:nLGUMWW6 [3/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告



高いスピードを活かしたヒットアンドアウェイが最大の攻め手であるジュプトルにとって、ヨノワールの様な相手とのせめぎ合いはかなり分が悪かった。

このままではいずれ向こうに軍配が上がってしまうであろう事は彼が一番よく知っている。
それ故に、とある一瞬―――――ヨノワールの攻めの手がほんの僅かだが緩んだ刹那に、両腕で思い切り押し切った。

そこから間髪入れること無くバックステップし、距離をとる事でその結合を解除する事に成功した。
 ▼ 6 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 13:01:02 ID:nLGUMWW6 [4/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告


「―――――相変わらず、凄まじい馬鹿力だな」

「私が……ではない。お前が軟弱なだけだ」



売り言葉に買い言葉。そうは言うが、今更そんな事で惑わされる程、両者はヤワではなかった。彼らが生きてきた暗黒の世界はこんな事など日常茶飯事。生きるか死ぬかの瀬戸際だった。

生きる為なら何でもする。
死なない為に心を鋼鉄と化す。


言葉の掛け合いはそれで一旦幕を閉じる。その代わりに、戦況は先へと続く。先の手を取ったのは……ジュプトルの方だった。
 ▼ 7 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 14:44:52 ID:nLGUMWW6 [5/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

「………!」

研ぎ澄まされた速度は、最早神速の域にまで達し、数秒と掛からずして再び距離が縮まる。
今の彼から見れば、全ての物がゆっくりと動作している様に見えていた。

草花は少しずつ傾き、風は滑らかに体表面を撫でる。

そして、標的であるヨノワールの動きはスローモーションとも言える物だった。本来ならばそこまででは無いが、そう見えてしまう程にジュプトルの速度が高まっている証拠とも言える。

それを維持したままに、右腕の剣先を斜め上に向ける。楕円軌道を描きながら黄緑色の剣…リーフブレードが大きな口の開いた腹部へと吸い込まれる。

大岩はおろか、厚い鉄板さえも両断しかねない見事な剣筋を辿り、相手から見て左側目掛けて走り去ると同時に切りつけた………筈だった。

 ▼ 8 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 14:45:30 ID:nLGUMWW6 [6/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告


「甘いッ!」

「なっ……!?」


結論から言えば、ジュプトルの一閃は不発に終わった。

狙いを定め、圧倒的な速度を以て繰り出したその一撃は、地面から腹部に拡げられた黒く薄い壁に阻まれ受け止められた。

その壁の正体は、影。

自身の影を操り、攻撃する”かげうち”。

その技を瞬時に身の回りに障壁として展開することにより、見事に斬撃を防いだという訳だ。ヨノワールは身体こそは追いつくことは無いが、動体視力と技の発動スピードの話ならば別であった。その点ではジュプトルとも互角の猛者である。

 ▼ 9 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 14:46:24 ID:nLGUMWW6 [7/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

攻撃を防ぎきった影の大盾は、攻守一転その形状を流体宜しく変形していく。

より鋭く、より薄く、より大きく。

調整に調整を重ねた影は、最早盾ではなく………ジュプトルの刀の5倍は超える幅を持った大剣そのものと変貌していた。

本来、実体などある筈もない影。だが確かに、虚構の黒剣は空を切り裂きながら緑の剣士へと牙を向いている。

規格外の質量を伴った一太刀が命中する瀬戸際で、ジュプトルは捌く体勢を整えた。

二つの刃が触れ合い、黒の側面を辿るように撫ぜ、左斜め前に身体ごと逸れる。真正面から受け止めれば勝機は無い。単純に回避する事も脳裏に浮かんだが、それは即座に却下された。

”かげうち”はその特徴上、使用者が一歩も動かずとも驚異的な伸縮性により、かなりの範囲を攻撃対象とする。

 ▼ 10 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 14:46:51 ID:nLGUMWW6 [8/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

避けた所で範囲内から逃れなければ、追尾されてしまう。ならば、ギリギリまで攻撃を引き付け、それをすり抜ける事により影との距離を一気に突き放す。そのまま本体…ヨノワールに急接近し、素早く袈裟斬りを繰り出す。

「く……ッ!」

今度こそ、緑の刀が黒く弾力のある体に傷を付けた。相手の体勢に綻びが出来た所を好機と見て、立て続けに斬撃を放ち続ける。

頭上、腕、胴体。

両腕を存分に使い、縦横無尽に刃が動き回る。ヨノワールはその太い腕で耐え凌いでいるが、満足に反撃が出来ていない。技の発動機会さえ奪われた今の状況は文字通り、手足が出ない様にも見える。
見る見るうちに、倍々ゲームの如く体に切り傷が増えていく。
だが、ここでジュプトルはとある違和感を覚えた。

アイツともあろう者が、何故何のアクションも起こさないのか。

その思考に至った次の瞬間だった。

 ▼ 11 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 14:47:32 ID:nLGUMWW6 [9/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告


「ガッ……!?」

「……私が、ただ受けるだけだと思っていたのか?」

鈍い音を立てて腹部にめり込んだ、冷気を纏う左拳。

触れた部分は凍てつき、ジワジワとその範囲を広げる。ひたすらに守備に徹し、ここぞとばかりにカウンターを決め込む。正に狙い澄ました一撃。

れいとうパンチを展開していない方の腕で、黒い影を纏う。

一気にそれが肥大化したかと思うと、その巨腕で思い切りジュプトルを殴り飛ばした。

吹き飛ばされる緑の体。それが地面に落下する時を待たずして、ヨノワールは追撃を選択した。

再び発動したかげうちを、今度はジュプトルの影へと繋ぐ。両者が繋がっている奇妙な光景の次に広がったのは、緑の剣士の影が、自らの本体を覆い尽す姿。傍からは見えないがその中では、幾つにも分裂した刃が踊っているのだろう。


 ▼ 12 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 14:54:36 ID:nLGUMWW6 [10/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告


―――――しかし、技を解除したその先にはジュプトルの姿は無かった。

辺りをサッと見渡すが、姿が見えない。広大な草原に、身を隠せるような所は何処にもない。……ただ一つを除いて。



ヨノワールの真下の地面が僅かに盛り上がった。

即座にその異変を察知したヨノワールは、咄嗟にその場から離れ、念の為に影を盾として伸ばす。タイミングを同じくして、地中から飛び出し、下から切り上げるジュプトル。

またもや、二つの得物が衝突し、互いに弾かれた。それぞれ一定の距離で踏みとどまり、構える。

 ▼ 13 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 14:56:16 ID:nLGUMWW6 [11/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告


「―――――前よりも、腕を上げているようだな」

「―――――この程度で衰えていては、部下に示しがつく筈もないだろう」

「ああ、そうだな………だが、これで終わらせるッ!」


そう宣言した彼の周りに、風が吹き荒れる。

それは周りの草花を巻き込み、規模を拡大していく。

少しずつ、竜巻は緑に色づき、膨れ上がる。

舞っている葉は一枚一枚が凶器となり、無数に渦巻く。

やがては天に昇る程の嵐と化し、うねりを上げた。

 ▼ 14 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 14:56:44 ID:nLGUMWW6 [12/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告



「ほう………ならば、こちらも迎え撃つまでだッ!」

一方は、腹部の口腔をあんぐりと開ける。その奥底には、重力エネルギーの塊たるブラックホール。そして、両腕の間に生成した一つの影球。

それらを合わせ、限界まで濃縮、圧縮する。

そうして出来た物体は、妖しく輝きを放つビー玉ほどの大きさしか無かった。



それでも、内部に秘められたエネルギー量は想像もつかない。


 ▼ 15 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 14:57:15 ID:nLGUMWW6 [13/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告



最大と最小。

二つの力は同時に手元を離れる。

同速度で中心へと向かうそれらは、勢いが衰える事は無い。










やがては嵐が、小さな影球を飲み込んで―――――――その一帯を爆発で覆い尽くした。




 ▼ 16 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 14:58:02 ID:nLGUMWW6 [14/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告






嘘の様な爆風が過ぎ去り、草原は表面が所々抉れていても、彼らはその場に立っていた。




……とは言ったが、両者の体力はとうに限界を迎えていた。全身傷だらけで、立っている事すらやっとの事であった。

それでも、二匹は最後の力を振り絞り、前へ出る。



「うぉおおおおおおおッ!!!!!」


「はぁあああぁあああッ!!!!!」



拳と刀、先に届いたのはどちらか。

空は、これ以上なく澄み渡っていた。


 ▼ 17 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 14:58:29 ID:nLGUMWW6 [15/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・


「二人とも、一体何やってたんですか!!!」

「落ち着いてくれセレビィ、これはだな………」

「最近疲れてるようだからせっかく復興作業を休んで貰おうと思ったのに、家はもぬけの殻! おまけにこの有り様じゃあ意味ないじゃないですか!!」

「返す言葉もない、な………」

 ▼ 18 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 14:59:28 ID:nLGUMWW6 [16/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告



実はこの日、心配していたセレビィがジュプトルとヨノワールを一日休ませようとしていたのだが、いざとなると前者の方がどうも落ち着かなかった。

元から率先して働いていたが故にじっとしている事に耐えられなかった。

その後、軽い運動とばかりにヨノワールを巻き込み、先程のような戦闘に発展した……らしい。

因みに最後の一撃は、両者ともにクリーンヒット。要するに相打ちだった。そこで倒れ込んでいた所を、探していたセレビィが発見し、治療を施していた。目がさめたところで説教タイムと相まった訳だ。


その説教を聞きつつも、両者は奇しくも同意見…実感を得た。







”純粋に闘う事が出来る様な世界になったのだ”………と。



〜完〜

 ▼ 19 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 15:01:58 ID:nLGUMWW6 [17/17] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

この作品は
http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=860029
こちらの企画へ参加させていただきます。

ポケダンでバトル物を書きたかっただけでした。
お付き合い下さりありがとうございました!!!
 ▼ 20 ルズキン@ようせいジュエル 18/09/20 15:58:03 ID:rX/2Qbtw NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
乙!
 ▼ 21 ニャット@こだいのうでわ 18/09/20 16:54:18 ID:HrOsPmJY NGネーム登録 NGID登録 報告
乙でした
……夏を感じさせる要素ってどこなの?
 ▼ 22 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 19:04:26 ID:SSVEqC/A [1/5] NGネーム登録 NGID登録 m 報告
>>21
その点ですが、そこを見落としていたので参加取り消しを予定しています………お騒がせしました……
 ▼ 23 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 19:42:42 ID:SSVEqC/A [2/5] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

太陽で熱された鉄板の如き砂浜。

何処までも、何処までも広がり、先の見えない海原。

そして、なんと言ってもジリジリと焼き尽くさんばかりの日光。


正しく夏という概念が目の前に顕現した様な空の元、俺たちは……………
 ▼ 24 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 19:47:55 ID:SSVEqC/A [3/5] NGネーム登録 NGID登録 m 報告


「………はァッ!!!」

お世辞でも夏には合わないであろうダークグレーの剛腕から打ち出された一つの弾丸。その材質は固くなく……寧ろ柔い筈なのだが。

「クッ……!」

一度両腕で受け止めれば、ビリビリと痺れる感覚が全身に染み渡る。まるでイシツブテの体当たりを受け止めているかの様だ。このデタラメな火力のスマッシュを攻略しない限り、俺に勝機など訪れはしないだろう。
 ▼ 25 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 19:53:31 ID:SSVEqC/A [4/5] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

「二人とも頑張ってくださーい!」

横で飲み物を片手に持ちながら声援を送るのは、ピンクの時間旅行者であるセレビィ。傍から見れば実にのほほんとしているのだが、彼女は気づいているのだろうか。



「――――――次は、仕留める」

俺だけに聞こえる様に、そんな事を呟いているヨノワールを見て確信した。



(アイツ、俺を始末しに来てるだと……ッ!?)


夏の死闘―――――ビーチバレーが、俺達の生死を賭けた、文字通りの戦いとなった事を今更自覚した。
 ▼ 26 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 19:59:32 ID:SSVEqC/A [5/5] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

このゲームのルールとしては、11ポイント制。
レシーブは連続で3回までとなっている。技に関してはボール破壊、もしくは妨害をしなければ使用可能という仕様だ。

何故これが始まったのかは俺自身もよく覚えていないが、本気でやらねば生命自体が危険に晒されるということは理解したので、思考をフル回転させることにした。

現在の得点が、5対2。ヨノワールが優勢に立っている。
あの剛腕から放たれるスマッシュは、速度、コース、威力共に一級品。例えるならば、ドサイドンのがんせきほうだ。オマケにレシーブとしてかげうちで拾ってくるので隙が無い。

一方、俺が覚えている技はどれも斬撃系……使えばボール破壊で即敗北だ。
 ▼ 27 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 20:24:41 ID:WSNkwjEM [1/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

「どうした。次を始めるぞ?」

顔は敢えて笑ってはいるが、目が笑っていない。
どうあっても避けることは出来ない、それ故にレシーブの体勢に入る。太陽に照りつけられ、汗が出る中、集中力は保ち続けた。

そして、打ち出されたサーブが俺のコート目掛けて降り注ぐ。さながら流星の様なそれは、紛れもなく俺自身に向けられていた。何とかそれをギリギリで受け止め、空に打ち上げた。

「―――――――ッッッ!!!」

その直後に、天に向かって跳躍し……ボールの上を取る。
そこから重力をフルに、両腕でヨノワール(のコート)に叩きつけた。
 ▼ 28 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 20:29:48 ID:WSNkwjEM [2/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

これなら、行ける。

そう感じた次の瞬間、一歩たりとも山の様に動かなかったヨノワールの……”影”が、勢いよく伸びる。そのまま包み込むようにして威力を殺し、上へと投げ上げた。

「………ふんッ!!!」

精密かつ大砲のような渾身のスマッシュが、地上のコートに突き刺さった。空中にいる俺では受け止めることも出来ない。

「手強い………!」
 ▼ 29 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 20:36:06 ID:WSNkwjEM [3/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

そして空気を変えることも叶わないまま、ゲームは進行して行った。

俺自身も、幾つか得点する事は出来たが………それでもヨノワールの強さは圧倒的だった。

こちらの攻撃は尽く影に受け止められ、破壊槌の如きスマッシュが降り注いたのだ。


現在の得点…………………9対5。

俺の敗北まで、残り2点。
 ▼ 30 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 20:42:52 ID:WSNkwjEM [4/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

滝のような汗が流れ出る。このままこの体が干からびてしまうのではないか、そう感じる程ではある。

しかし………ここまで来て、倒れる訳にはいかない。

「ククククク…………」

ヨノワールのスマッシュとレシーブを如何にして攻略するか。



あの剛球を受け切るには何が足りないのか。

あの防御を打ち破るには何が必要なのか。

 ▼ 31 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 20:46:42 ID:WSNkwjEM [5/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

――――――――あのレシーブをくぐり抜けるには、どうすれば良いのか。

「………!?」

その時、ふと考えが泡のように浮かび上がる。

この状況を打破できるような、無謀な駆けが。

暑さなどは、既に気にも留めておらず、脳内にあるのはアイツを打ち負かす事のみ。改めて、心機一転防御の構えに入った。
 ▼ 32 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 20:50:39 ID:WSNkwjEM [6/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

「………ハァッ!」

このサーブは、既に見切っている。取り乱すこと無く、冷静にボールを拾い、打ち上げる。
今度は跳躍しすぎることなく、慎重にコートへと返球した。

「その程度で、私から得点できる訳が無いだろう?」

そのボールは、再び影が威力を殺し、包み込まれた。
そのまま、丁度ヨノワールの頭上を通り……その腕が捉えんとばかりに迫る。
 ▼ 33 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 20:58:13 ID:WSNkwjEM [7/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

運動エネルギーが、腕からボールへと伝導する。
それは真っ直ぐに、ジュプトルを狙い澄まし、飛来して、そのレシーブを諸共せず、明後日の方向へ飛んでいく…………様に思われた。





(………………ここだッ!!!)

レシーブに失敗したその直後、ジュプトルの姿が一瞬にして掻き消えた。

「なッ………!?」

これには、流石のヨノワールも困惑を隠せない。が、すぐに持ち直し、次に備える。

しかし、それは結果的に徒労に終わった。

 ▼ 34 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 21:02:34 ID:WSNkwjEM [8/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

「………どうした、自慢の影でも反応できなかったか?」

いつの間にか、ネット前に現れていたジュプトルが発したその言葉の意味を、ヨノワールはすぐ足元に見つけてしまった。

コロコロと転がり、ゆっくりと静止した、バレーボール。

影はおろか、本人でさえも認知する事が出来なかった。

 ▼ 35 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 21:07:15 ID:WSNkwjEM [9/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

ジュプトルが、先程気づいた攻略法とは、単純に”手数を増やす事”だった。

一度でダメなら二度、二度でダメなら三度………圧倒的移動速度を利用し、複数回に分けて受ける。それによって、あのスマッシュを防ぎ切ることが出来た。

また、攻撃に関しては、スマッシュの際にとある手法を用いた。

その手法は、居合切り。

無駄のない一閃を生み出すその軌跡……長年に渡り身に染みた動きから放たれたボールは例え影でさえも捉え切ることの出来ない剛速球……いや、”神速球”とも言える代物だった。
 ▼ 36 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 21:13:29 ID:WSNkwjEM [10/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

「さぁ、次に行くぞ」

「小癪な………ッ!」


そして、今度は俺からのサーブだ。

これで狙うは――――――サービスエースッッッ!!!


先程の様に、上から袈裟斬りの要領でまたもやボールを打ち込む――――――――――――――
 ▼ 37 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 21:17:05 ID:WSNkwjEM [11/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

――――――――筈だった。

クシャッッッ………。

そんな気の抜けた音を立てたのは、たった今まで使ってきたボール。力なく地面へと墜落し、見る見るうちに萎んでいく姿を、ジュプトルとヨノワールの両者はただ呆然と見ていることしか出来なかった。

そもそも、これまで散々全力で打ち込み合い、技まで使ってゲームを進めてきた事を考えると、とうの昔にこの状態になっていても何ら不思議はなかったのだ。それ所か、ここまで持ちこたえた事に疑問さえ感じてしまう。
 ▼ 38 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 21:20:01 ID:WSNkwjEM [12/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

「………………おい」

「………………何だ」

「替えのボールは、持ってるか?」

「…………持っている訳がないだろう。ここにあるのは、アレだけだ」

「…………そうか」


やるせなさと虚無感に襲われた二匹の耳に、喧しく鳴り響くテッカニンの鳴き声が染み渡った。
太陽は、今も高く上っている。
 ▼ 39 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 21:48:45 ID:WSNkwjEM [13/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告


「………海で遊ぶのも、すっごく楽しかったわ!」

「よ、良かったな………」

ボールが無残にも破裂した後、俺達は気を取り直して夏の海を楽しむことになった。

海で自由に泳ぎ、かき氷を掻き込み、カイス割りに熱中した。

そうしている内に、いつの間にか時は過ぎて見事な夕焼けが浮かび上がっていた。
 ▼ 40 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 21:52:12 ID:WSNkwjEM [14/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

「……今日は、中々楽しめたな」

「そうでしょう? 1週間前みたいに草原で戦闘するよりかは怪我の心配もないわ!」

「うぐッ……」

「……それは、本当に済まなかった」




こうして、俺達の初めての夏は過ぎ去って行くのだった。

〜完〜
 ▼ 41 メガ◆jnO9hG2JaU 18/09/20 21:54:32 ID:WSNkwjEM [15/15] NGネーム登録 NGID登録 m 報告

改めて、夏のエピソードを追加させて頂きました。
これで改めて、 >>19 の企画にバトル部門で参加を申請したいと考えています!
お付き合い下さり、本当にありがとうございました!
 ▼ 42 ルビル@ハンサムチケット 18/09/23 07:55:42 ID:rIS2SPdI NGネーム登録 NGID登録 報告
面白え……バトルシーンとか参考にしたい
 ▼ 43 マナッツ@いいキズぐすり 18/09/24 23:46:41 ID:PU2E9Zxo NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
乙!
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