▼  |  全表示98   | << 前100 | 次  |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |   ▼   
                  スレ一覧                  
SS

【地の文系SS】シュバルゴ「……我が、姫」ドレディア「え……っ!?」///【ポケモンCP】

 ▼ 1 羽真◆9nlytNSHx. 18/10/18 22:51:12 ID:EVa.GB5. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
空を見上げたら、森の木々の間からチラチラと薄黒い雲が見えた。

大気は湿気ているというよりは乾燥していて、雨はたぶん降らない。

草タイプだから、周りから水分を取り込むこともあって大気の状態を読むのは得意。

とはいえ辺りの暗さが段々増していくことを考えると早く住処に戻りたかった。

でも、わたしは動かなかった。

なぜなら住処はすぐ目の前だから。

わたしは恨みを込めた目線を住処へ向けた。

正確にはその住処の入り口の前に陣取ってかしましくお喋りを続けている3匹のミノマダムへ。

3匹が入り口前を邪魔して、住処に入ることができない。

でもこれは昨日今日に始まったことじゃない、いつものことだ。

なんでわざわざわたしの住処の前を陣取ってお喋りするのか。

決まってる、ただの嫌がらせ。
 ▼ 59 羽真◆9nlytNSHx. 19/01/28 22:17:42 ID:1ZFw03xk [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
単にわたしのイメージ像なのかもしれないけれど、旅って昼間に少しずつ移動するものだと思っていた。

なのにシュバルゴさんは、夜になってから、それもこんなに急いで場所を変えている。

それが不思議に思えて仕方がなかった。

何か事情があるんじゃないか、そう勘ぐってしまっても仕方ない……と思う。

「そんなに急ぐなんて、普通じゃないです!」

シュバルゴさんが、急停止した。

勢いでシュバルゴさんにぺたっとくっつく。

シュバルゴさんから降りて、目の前に回り込む。

うつむき気味で、凶器みたいな目が揺らいでいる。

「なんで、そんなに急ぐんですか?」

黙るシュバルゴさんに、さらに聞いた。

「関係ない……わけではなかったな」

言いかけて、訂正した。

これまでのシュバルゴさんっぽくない濁し方。

「…………、」

逡巡してわたしの肩越しに遠くを見るシュバルゴさんの顔を、ひたすら見つめる。

シュバルゴさんの口は固く結ばれたまま、動きそうにない。

このまま待っていても言ってはくれなさそうだなぁ。
 ▼ 60 羽真◆9nlytNSHx. 19/01/28 22:18:07 ID:1ZFw03xk [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「別に、同行しているからって秘密があっちゃいけないわけじゃないです。……それは、わかってるんですけど」

後方を映していたシュバルゴさんの瞳がわたしを捉える。

「バンギラスさんが言ってましたよね。『困った時に横に誰かしらいるのは心強いもんだぜ』って」

シュバルゴさんが困っているなら、手伝う。一緒に困る。

それがわたしがもらった役目だと思うから。

「何かに困ってるなら、教えてくれませんか? ……わたしが力になれるかなんて分からないですけど、一緒にいるのに何もできないなんて、悲しいです」

思ったままに、シュバルゴさんに言葉をぶつけた。

シュバルゴさんの口が重々しく開く。

「……だめだ。巻き込むわけにはいかん」

「わたし、もう巻き込まれてます!」

考えるよりも先に口をついて言葉が出た。

下がりかけていたシュバルゴさんの視線が跳ね上がる。

「……いえ、巻き込んでもらいました。わたしは心配しなくていいんです」

シュバルゴさんは、考え事をしているみたいに呆けてわたしを見た。

「もう巻き込んでる、か。確かにもう遅いかもしれないな」

シュバルゴさんの目はもう揺れていない。
 ▼ 61 羽真◆9nlytNSHx. 19/01/28 22:18:29 ID:1ZFw03xk [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
かちゃりとシュバルゴさんの鎧が鳴った。

辺りと同じ薄闇をまとった両槍の先端が、わたしに向いている。

「逃げるなら今にしておけ」

無理矢理にでも、わたしを離そうとしている。

それくらいの考えはすぐにわかる。

「逃げないです! 話を、聞かせてください」

両槍が鋭く突き出された。

「っ……!」

反射的に目を瞑る。

恐る恐る目を開けると、槍の先端は顔のすぐ先で止まっていた。

シュバルゴさんの顔を、わたしを凝視する瞳をにらみ返す。

「……逃げないのか」

「逃げません!」

数瞬の間、わたしたちはにらみ合った。

槍の先端が、徐々に下りていく。

最後まで槍が下りきったあと、シュバルゴさんが、長く長く息をついた。

まるで、今まで溜めていた緊張を全部吐き出したみたい。

「もう一度乗れ。話せる場所を探す」

「……はい!」

話してくれる、と決まったのがただ嬉しかった。

出会った時に助けてもらった、恩返し。

わたしに何ができるかわからないけれど、お礼ができたらいいな。



やっこー、とまたヤヤコマの鳴き声が聞こえた。
 ▼ 62 プ・レヒレ@きれいなウロコ 19/01/28 23:24:04 ID:WWw.qaAo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
われが姫
 ▼ 63 羽真◆9nlytNSHx. 19/01/30 22:39:44 ID:T/9AUo9. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
喜びに浸りながらシュバルゴさんの背中に手を伸ばそうとして、ハッと気づく。

鎧があるとはいえ、またくっつくんだ。

後ろから抱きしめるみたいな、そんな妄想みたいな事態に。

腕が少し引っ込んだ。

でも、ここで躊躇してたらまた迷惑かけちゃう。

こんなにどきどきしてるのは、わたしだけなんだ。

そう言い聞かせて、目をつぶってシュバルゴさんの背中に抱きついた。

足を地面から離した途端、シュバルゴさんは急発進。

振り落とされないように必死で掴まった。

さっきは暗いし速いしで怖かったけど、明るんできたのと速さに慣れてしまったのとで少し楽しい。

怖さがなくなってくると、別のことを考える余裕が出てきちゃって。

シュバルゴさんの腕が細いけど筋張ってすごく硬いこと。シュバルゴさんの腕の暖かさ。そんなものを妙に意識してしまって。

聞こえて、ないかな。わたしの鼓動。

怖くはないけど、恥ずかしさにやっぱり早く降ろしてほしかった。

――そういえばわたし、なんでこんなにどきどきしてるんだろう。

浮かんだ疑問は、シュバルゴさんのスピードについてこれずに一瞬で置いていかれた。
 ▼ 64 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/02 22:36:32 ID:BEPUVjD2 [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
たどり着いたのは、荒野を抜けた先の渓谷だった。

霧に包まれて、あたりが見にくい。

逆に言えば秘密な話をするにはもってこいだからシュバルゴさんは来たのかも。

わたしを下ろし、シュバルゴさんは適当な岩盤にドリルライナーで横穴を作った。

「ここで話すぞ」

霧の中、唯一見えるのはシュバルゴさんだけ。

わたしが奥で目の前をシュバルゴさんが塞いでいる状況。

なんでかな、頭の花が熱くてたまらない。

でも、これ以上ないくらい真剣なシュバルゴさんの目を見たら、そんなことを考えてるわたしが恥ずかしく思えた。

「何から話せばいいか……」

いざ話すとなると混乱するみたいで、シュバルゴさんは一言ずつ訥々と、喋り始めた。
 ▼ 65 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/02 22:36:52 ID:BEPUVjD2 [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シュバルゴさんにはさすらう前、とある仕事をしていたみたい。

ここよりずっとずっと西。

ある1匹のポケモンが広大な土地を縄張りにしていた。

バシャーモさん。その縄張りの主だ。

縄張りの中には主がバシャーモさんだからかほのおタイプが多く住んでいたみたい。

近くには他のポケモンの縄張りも多く、縄張りを巡っていくつものトラブルがあって。

唯一の娘、アチャモに万一のことが起こることをバシャーモさんは恐れた。

バシャーモさんは常にアチャモの身の回りで警護をするポケモンをつけた。

それが、シュバルゴさん。

ほのおタイプの苦手は、水と岩と地面。

万一に備えるなら弱点に対応できなければ困る。

シュバルゴさんは水タイプにも岩タイプにも地面タイプにも比較的強めだから選んでもらえたみたい。

……身の回りにつけるポケモンが娘に危害を与えないよう、自分たちが有利になるタイプを選んだんだろう、ってシュバルゴさんは言ってるけど。

シュバルゴさんの唯一の弱点はほのおタイプ。

たとえシュバルゴさんがアチャモに襲いかかろうとしても、周りにはたくさんのほのおタイプがいるだろうからアチャモを守れる、そんな不信も理由の1つってことなのかな。

理由はともかく、シュバルゴさんは護衛として毎日気を張り詰めてる日々だったみたい。

バシャーモさんの危惧通り、何度もアチャモを狙った襲撃があって、その全部をシュバルゴさんは払い退けた。
 ▼ 66 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/02 22:37:12 ID:BEPUVjD2 [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかし。

ジュナイパーというポケモンが襲いにきた夜から、シュバルゴさんの生活の全てが変わった。

3体のジュナイパーが周囲の警護をかいくぐってシュバルゴさんが守るアチャモの部屋まで入ってきて。

シュバルゴさんはいつも通り押していたのだけれど、3体同時に相手をするのは流石に辛かったみたいで囲まれちゃって。

自分が守れなくてはアチャモが危ない、とアチャモに一番近いジュナイパーにシュバルゴさんはメガホーンを放った。

それを狙っていたようなジュナイパーの笑みは忘れない、とシュバルゴさんは腕に力をこめながら言った。

メガホーンが突き刺さる直前、ジュナイパーはゴーストダイブって技を使って姿を消した。

標的を失ったシュバルゴさんの槍はそのままアチャモへと一直線。

運が悪いことに、駆けつけた増援が発見したのはびしゃぁっ、とあたりに血が舞う様子だけ。

シュバルゴさんがアチャモを故意に攻撃したとみなされるのも仕方がなかった。

命からがらその場を逃げ出すことには成功しても、縄張り内の多くのほのおタイプからシュバルゴさんは追われることになる。

そして今。

逃げるように、場所を問わず転々とさすらっている……。

だから、会った時にわたしをあんなにも拒絶したんだ。

旅をしているんじゃなくて、逃げ回っている身だから、わたしにまで敵意が及ばないように。

全部聴き終わって、わたしは一言だけ、『優しいんですね』とだけ言った。

わたしだって辛い思いをしていたと思ってたけど、そんなの霞むくらいにシュバルゴさんは辛い。

それでも、自分以外のことを考えて楽に流れないのは、やっぱり優しいからなんだと思う。

シュバルゴさんは困惑してたけど。
 ▼ 67 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/02 22:38:16 ID:BEPUVjD2 [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「話すことは話した。去るなら今のうちに去れ」

シュバルゴさんは、ポケモンを寄せ付けない目でわたしを睨む。

確かに、わたしはいても役に立たないのかもしれない。

わたしはバトルなんて得意じゃないし、そもそも相手のほのおタイプはもちろんわたしも不利。

むしろ足手まといなのかもしれない。

でも。

わがままかもしれないけれど。

わたしはシュバルゴさんの側にいたい。

……最悪の場合でも、役立つことはできるし。

もう一度、シュバルゴさんを見る。

シュバルゴさんはまだわたしを睨み続けている。

けれど、その瞳の奥に、親を見失った子供みたいな寂しげな色が見えたのは気のせいなのかな。

気のせいじゃないと思う。
 ▼ 68 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/02 22:38:34 ID:BEPUVjD2 [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一歩、二歩、進む。

シュバルゴさんは、引き下がったりもせず動かなかった。

シュバルゴさんがすぐ近く。

手を伸ばさなくても簡単に触れてしまえる距離。

わたしは、両手を真っ直ぐに伸ばした。

その両手を優しく、折り曲げる。

ちょっと背伸びして、覆いかぶさるように、頭も預ける。

包み込むみたいに。

「なっ……!?」

シュバルゴさんが動揺したような声を出した。

でも、振り払いはしなかった。

わたしはひたすらシュバルゴさんを抱きしめた。

シュバルゴさんは何も言わずにわたしに少し体重を預けた。

何回も、何回も、シュバルゴさんの背中を撫でる。

シュバルゴさんの頭の鎧に顔を押し付けて、一言だけ宣言した。

「わたし、逃げません」

「……勝手にしろ」

そう言葉ではカッコつけながら、やっぱりわたしに体重を少し預けるシュバルゴさんが――

シュバルゴさんが、なんだろう。

言い表せない。

可愛いでも、いじらしいでもなくて……。

「…………さぁ。もう、出るぞ」

優しく、振りほどかれた。

くるり、と私に向けられたシュバルゴさんの背中はやっぱり力強かった。
 ▼ 69 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/04 22:31:41 ID:6SfUMOrw [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シュバルゴさんを先頭に横穴を出て、さらに渓谷を進もうとした途端のことだった。

「待てッ!!」

鋭い叫び声に突き刺され、体が跳ねた。

「誰だ、とは聞くまでもないな……」

シュバルゴさんは、逃げるでもなくおもむろに振り向いた。

さりげなくわたしを背中に隠しながら。

「ほう……? 逃げないのだな」

呼び止めたポケモンは、霧のせいでよく姿は見えない。

けど、そのシルエットは、見るからに大きくて強そう。

「一度は逃げた。……もう、逃げぬ」

シュバルゴさんは、一歩も引かない。

「いいだろう。……ファイアロー、霧払いを頼む」

シルエットのポケモンが、別のポケモンに言う。

足元から、体ごと吹き飛ばされてしまいそうな強風が吹く。

もやは風にのってどんどん飛ばされて、薄くなっていった。

目の前には、3匹のポケモンがいた。

「……バシャーモ。久しぶりだな」

シュバルゴさんが、大きなシルエットの正体を睨みつける。

「あぁ。久しくならないほうがよかったがな。ファイアローとヤヤコマがあれだけ探しても見つからなかったのは初めてだ」

「お前たち2匹が伝達用に鳴くことは俺だって知っている。そりゃ逃げたさ」

「元仲間だからこそ手の内がバレていた、というわけか。一本取られたな」

表面上は何事もなく会話しているだけだけれど、2匹の間に穏やかならぬ火花が散っているのはわたしでもわかった。
 ▼ 70 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/04 22:32:04 ID:6SfUMOrw [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
なに食わぬ顔を装っていたバシャーモさんのオーラが、一気に膨らむ。

「ここで、取られた一本、取り返そうじゃないか!!」

「ッ……!!」

瞬間移動のように。

気づいたらバシャーモさんは、距離が空いていたはずのシュバルゴさんへ蹴りを放っていた。

それでも食らわずにおさえているシュバルゴさんも、流石なんだと思う。

シュバルゴさんはすぐさま受け止めたバシャーモさんの脚をがっちり固定した。

お互いがお互いを攻撃できない拮抗状態に陥る。

いつまでも続くのかと疑問に思いかけた刹那。

上空で静止していたファイアローさんが、炎をまとって2匹に突っ込んでいった。

瞬時にそれを察知したシュバルゴさんは、バシャーモさんを跳ね上げて後ろに回避。

一瞬後にさっきまでシュバルゴさんがいた場所をファイアローさんが通り過ぎ、火の粉が舞った。

バシャーモさんは、シュバルゴさんが引き下がった時の隙を見逃さない。

再びの蹴り。

今度はバシャーモさんの脚も炎を纏っていた。

受けられないと判断したシュバルゴさんは左に動いてよけ、蹴りのあとで隙を晒しているバシャーモさんに槍の一突き――

「ぐッ……!」

バシャーモさんを守るように、ファイアローとヤヤコマが同時に炎を纏ってシュバルゴさんに突っ込んだ。
 ▼ 71 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/04 22:32:34 ID:6SfUMOrw [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……3対1なんて、卑怯!

心の中で叫ぶけど、本当はわかっていた。

わたしが入れば少なくとも3対2にはなる。

わたしがシュバルゴさんを助けなきゃいけない。

はずなのに、わたしの足はさっきの凄まじい戦闘に圧倒されて棒のように動かなかった。

唯一の苦手な炎技を受け、流石のシュバルゴさんでも怯んでしまっていた。

バシャーモさんが全身に炎を纏って、畳み掛けるようにシュバルゴさんへ突進を繰り出す。

立て続けの攻撃では、シュバルゴさんも避けきれなかった。

シュバルゴさんの軽くない体が後ろの岩盤までいとも簡単に吹き飛ばされる。

ガゴン、と岩盤の一部が崩れる音さえした。

――シュバルゴさんが……!

バシャーモさんたちが、追撃を仕掛けるべく動き出した。

このままじゃやられちゃう……っ!

気づいたらわたしも動いていた。

手の中にエネルギーを集め、シュバルゴさんの近くの岩盤向けてエナジーボールを打ち込んだ。

思わぬ方向からの攻撃に驚いたようで、3匹が一瞬立ち止まった。

バシャーモさんがこちらを振り向いている間に、シュバルゴさんが起き上がったのをわたしは見た。

ファイアローさんへ向けて捨て身タックル、ヤヤコマへ向けてはたき落とすを立て続けに食らわせて、2匹を一撃でノックアウトしてしまった。

一応、貢献できたのかな……?
 ▼ 72 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/07 13:02:15 ID:X8lc3OcU [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかし、まだバシャーモさんが残っている。

攻撃した後のシュバルゴさんを、容赦のない火炎放射が飲み込んだ。

シュバルゴさんは間一髪で横に移動して、クリーンヒットを免れた。

決して当たらなかったわけではなく、シュバルゴさんの槍は凄まじい温度によって赤熱している。

じりじりと、バシャーモさんが逃げるシュバルゴさんを追い詰める。

わたしは、何かを考えるよりも先に2匹の間に割り込んでいた。

ギロリと、闘争本能に満ちたバシャーモさんの眼球がわたしを捉える。

「貴様は先程からなんのつもりだ」

体がすくんで、体の葉緑素の一個一個が震え上がる。

……シュバルゴさんが後ろにいるんだ。

今更、怖気付いても仕方ない。

「わ、わたしは……シュバルゴさんについていくって、決めたんです!!」

「連れに罪はない、と攻撃はしなかったものを、先程から邪魔しおって……!」

バシャーモさんは、怒りが一触即発だとすぐわかる顔でわたしを睨み続ける。

バシャーモさんには到底及ばないわたしと、相当な攻撃を受けて疲弊しきったシュバルゴさん。

この状況で、バシャーモさんを倒すだなんて。
 ▼ 73 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/07 13:02:43 ID:X8lc3OcU [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――ううん。ひとつだけ、方法がある。

わたしが普通に生きてきたポケモンじゃなかったからこそ持っている、あの技が。

たった一回きりの、わたしの必殺技。

バシャーモさんが攻撃するより先に、わたしは二つの手を胸の前で一つに合わせる。

――シュバルゴさん。

――シュバルゴさん、元気になって。

頭の中で、シュバルゴさんの姿を思い描く。

鍛錬している時の、力漲るシュバルゴさん。

体に力を込めて、頭の中のシュバルゴさんへイメージを送る。

一瞬だけ、わたしの体がフラっとよろついた。

……そろそろかな。

目を開ける。

わたしの体からはいくつもの光の玉が溢れては天に飛んでいく。

そう、これは、「いやしのねがい」。

自らの体力を天に捧げて、味方を回復する技。

戦うのが苦手なわたしでも、役立てないわけじゃないんだ。

ふっ、と体から力が抜けて、わたしはその場に崩れ落ちる。

体力の全てを出し切ったおかげで、体がカビゴンにのしかかられているみたいに重い。

残る体力を振り絞って、周りを見渡した。

バシャーモさんはなにが起こっているのかわからないみたいで、不意をつかれたように呆然としている。

シュバルゴさんはわたしが捧げた光に包まれている。

光がシュバルゴさんの鎧に染み込んだ時には、シュバルゴさんは傷ひとつない健康体になっていた。

「ありがとう。……ドレディア」

ありがとう、は普通に、ドレディア、だけをささやき声でシュバルゴさんが言う。

わたしが一番シュバルゴさんの役に立てた瞬間だった。

顔にも力が入らかったはずなのに、自然に口角が上がる。
 ▼ 74 トベター@まんぷくおこう 19/02/07 22:09:15 ID:hrNoigN. NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 75 シコ@ゴールドスプレー 19/02/07 22:55:08 ID:MOBErzTk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 76 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/08 22:30:34 ID:oW7wzpZ6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「いやしのねがいッ……瀕死になってまでこいつを……?」

バシャーモさんはさっきから微動だもしないで呟いた。

「終わってはいなかったみたいだな」

シュバルゴさんの、少し自信づいた声。

「回復しようが結果は同じだ……ッ!」

バシャーモさんもすぐに我に返った。

倒れたわたしの目の前には、脚を軽くあげて攻撃体制のバシャーモさん。

シュバルゴさんは、回り込んだりなんてしないで正面から、両槍をつきだしてバシャーモさんに襲いかかる。

バシャーモさんは両脚を地面にしっかりつけて、シュバルゴさんの体重の乗った槍を手で押さえ込んでしまった。

しかし、シュバルゴさんは不敵に笑う。

合わさった2つの槍、そしてシュバルゴさん自体が回転をし始めた。

「なっ……!?」

ドリルライナー。

押さえられて突くことはできなくても発動できるし、何よりバシャーモさんには効果抜群の地面タイプの技。

回転の摩擦が痛かったのか、バシャーモさんは手を離してしまう。

そのままシュバルゴさんがバシャーモさんに突き刺さる。

「ぐっ……」

バシャーモさんの顔が痛みに歪んだ。

これでシュバルゴさんも一方的に不利じゃなくなる。
 ▼ 77 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/08 22:30:53 ID:oW7wzpZ6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バシャーモさんもすぐさま至近距離からの火炎放射を放とうとした。

シュバルゴさんはそれを察知して距離を取る。

しかし、バシャーモさんの口から放たれた火柱は、さっきよりもずっと太く燃えたぎっていた。

火の勢いが予想外に強かったせいで、シュバルゴでさえ避けきれない。

竜のようにうねる炎は、シュバルゴさんの頭をがぶりと丸呑みにしてしまった。

シュバルゴさんは倒れこそしなかったものの、片槍を地面についてしまうくらいにはダメージを負ってしまう。

「やはり相性には敵わないようだな……」

不敵な笑い。

バシャーモさんがゆっくりゆっくり、追い詰めるようにシュバルゴさんに近づく。

シュバルゴさんも地面から槍を離して戦闘態勢を作る。

――作ろうとした時だった。

「させるかッ!」

バシャーモさんの鋭い声。

同時にバシャーモさんが炎を吐き出した。

その炎は今までとは違って、アーボのようにうねりながら進んで、シュバルゴさんに巻きついた。

「っ……っ……!?」

シュバルゴさんの力でさえ、炎の束縛は解けなかった。
 ▼ 78 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/10 23:00:52 ID:lFNEnLdw [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チリチリと少しずつ焼けていく、残酷な音が聞こえる。

「貴様は娘の仇だ……楽に死ねると、思うなよ?」

怒りを燃料にして燃え上がる拳が、振り下ろされる。

炎に押さえつけられて無抵抗なシュバルゴさんは、それを受け入れるしかない。

ゴスッ、鈍い音が谷に響く。

「ぐッ……ぁ、ァ……」

「声も出ないか。まだ死ねないがな」

再びバシャーモさんが拳を振り上げる。

全力であろう力を振りしぼって、叩きつける。

――やめて。シュバルゴさんを、傷つけないで。

わたしは、ほとんど言うことを聞かない腕を地面に突き立てる。

「貴様には信頼を置いていたんだ。過去の話だがなッ!」

シュバルゴさんの鎧が拳の熱を受け取って赤熱する。

――やめて。シュバルゴさんは、今でも頼れるんだから。

わたしは、両腕をついて体をゆっくりと起こし始める。

「貴様が、アチャモを突き刺した光景……忘れないッ!」

シュバルゴさんの腕に、深い火傷の跡が刻まれる。

わたしは、地べたに這うように動いて立ち上がる。

「貴様のようなッ! 軽はずみに裏切るポケモンがッ! 同じ世界で生きていることが腹立たしいッ!!」

拳の3連打に耐え切れず、シュバルゴさんの兜が折れる。

――やめて。シュバルゴさんは、軽はずみに行動するようなポケモンじゃないんだから。

脚なんて少しも動かなくて、全身を使って跳ねるように一歩ずつ近づく。

「その血にまみれた槍……へし折るッ!!」

シュバルゴさんの両槍がバシャーモさんのオーバーヒートによって焼けただれ、中程から重力に従って垂れてしまう。

――やめて。その槍は、わたしを守ってくれたんだから。

最後の、一歩。

「これで、終わり……」

全霊の力がこもっているであろうバシャーモさんの右手が振り下ろされるよりも先に、わたしはシュバルゴさんとバシャーモさんの間に割って入った。
 ▼ 79 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/10 23:01:19 ID:lFNEnLdw [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「貴様は……貴様は、いやしのねがい で瀕死になったはず……」

怒りから呆気にとられた表情に変わるとともに、拳にまとっていた紅蓮に輝く炎が一旦消えた。

「シュバルゴさんを、守りたいんです……っ!」

「……どうしてだ。どうして、娘の仇に、味方するッ!!」

「シュバルゴさんは、最後までアチャモさんを守ろうとしました!!」

「虚言もいい加減にしろッ! 此奴は、確かにアチャモをその槍で突き刺したのだ!!」

「確かにそうです。でもそれは、襲ってきたジュナイパーの策略だったんです!」

「何……?」

「ジュナイパーがシュバルゴさんの攻撃を誘導したんです!」

「……捕らえたジュナイパーのあの不気味な笑み、はっきり覚えている。…………まさ、か」

「シュバルゴさんは悪いポケモンなんかじゃありません。嫌がらせを受けていたわたしを、助けてくれました。あの森を出たかったわたしを、連れ出してくれました。わたしの価値を、認めてくれました。たった数日付き添っただけのわたしに、過去まで打ち明けてくれました」



「……絶対に。絶対にシュバルゴさんは悪いポケモンなんかじゃないですっっ!!!」



意識は朦朧として、すぐにでも手放してしまいそう。

それでもわたしは、夢中で喋った。

バシャーモさんを説得するために。

焼かれたっていい。シュバルゴさんが 許してもらえるなら。

バシャーモさんの顔を、ぼやける視界のまま、キッと睨む。
 ▼ 80 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/10 23:01:46 ID:lFNEnLdw [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
果たして――バシャーモさんは、糸が切れたみたいに振り上げていた腕を下ろした。

くるり、とわたしたちに背中を向ける。

「……もう二度と目の前に現れるな。俺たちの縄張りに近づきもするな。お前がアチャモを刺した事実は、変わらない」

ファイアローとヤヤコマを抱え上げて去っていく。

「……お前を許したわけではない。そこのドレディアに免じてでしかないぞ」

バシャーモさんの姿は、再びかかりかけてきたもやの中に消えた。

ぷつんと緊張の糸が切れて、わたしは地面にへたり込んだ。

なんでさっき立ち上がれたのかわからないくらいに力が入らなくて、地面に体が押さえつけられているみたいに身動きが取れない。

大丈夫か、と叫ぶシュバルゴさんの声を遠くに聴きながら、わたしの意識は薄れていく。

倒れたわたしの薄い視界にシュバルゴさんが映る。

体が揺らされるリズムが、心地いい。

ぽっ、と何か、体の中から湧き上がるものがあった。

温かくて、優しい気持ち。

なんだか物足りなくて、もっと近づいてほしい。

きゅぅ、と体の中に綿が詰まるような感じがして、息が苦しくなる。

葉脈もざわざわとどよめく。

……どこかで、同じようになった話を聞いた気がする。

その時誰かは、なんて言ってたっけ。

――――好き。

視界は閉じて、意識もさらに薄れていった。
 ▼ 81 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/11 22:52:41 ID:82HM5gV2 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ふっと意識が急浮上する。

体は、重くない。

たっぷり寝て起きた朝みたいに体力満タンだった。

うっすらと目を開ける。

シュバルゴさんと目があった。

びっくりして目を見開くと、視界のうちシュバルゴさん以外は真っ青に突き抜ける空。

わたし、寝てるんだ。

それで、シュバルゴさんがのぞきこんでいて。

シュバルゴさん、すごく近い。

寝ている状況で、半分上から覆い被さるようにシュバルゴさんが見ている。

「あ、あの……」

「……あぁ。すまない、つい」

つい?

浮かびかけた疑問は、そのままシュバルゴさんが話し始めたことでかき消される。

「体はどうだ」

「なんだか、すごく元気です」

「ふっかつそうは効いているようだな」

そっか、シュバルゴさんがふっかつそうをくれたんだ。

……くれた?

どうやって?

も、もしかして……。

顔を手で覆って、悶える。

顔が熱い。

口が熱を帯びて冷めない。

別のことかんがえなきゃ。
 ▼ 82 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/11 22:54:06 ID:82HM5gV2 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
わたしはいやしのねがいで体力を使っちゃっただけだから、ふっかつそうで回復したらもう元気なんだ。

あれ、じゃあダメージ受けてたシュバルゴさんは……?

顔なんか覆っている場合ではなくて、シュバルゴさんを確認した。

戦っていた時と変わらない消耗した姿だった。

「シュバルゴさんこそ大丈夫なんですか!?」

「俺は戦闘慣れしているからな。炎技は少々効いたが」

「わたしじゃなくてシュバルゴさんが寝ていないとダメですよ!!」

「……そうか」

起き上がったわたしの後ろに回って――

「借りるぞ」

わたしの背中にもたれかかった。

やっぱり鎧越しだけど、とても温かい。

その温かさは単純な熱量以上の温かさを持っていた。
 ▼ 83 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/12 23:03:27 ID:LfSAo/hY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そのまま意識していたら頭がパンクしてしまいそうで、辺りを見回す。

一面ほとんどが草原で、なにもない。

別のことを考える余地もなくて、こっそり途方に暮れる。

「お前に1つ聞いておきたいことがある」

背中越しのシュバルゴさんの声。

不意打ちにびっくりして背筋を正した。

「な、なんでしょうか?」

「いやしのねがいは、普通ドレディア族が使えるものではなかったと思うが。違ったか?」

その質問は、あまりされたくなかった。

自然と正した背中が丸まって俯いたのも背中合わせではシュバルゴさんには確認できない。

「……はい」

追求されるのが怖い。

あまり思い出したくはないから。
 ▼ 84 ンメン@バーゲンチケット 19/02/13 01:08:46 ID:qhEkCLeM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 85 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/16 22:36:16 ID:DiQs1fHo [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
でも、シュバルゴさんの言葉はわたしの予想なんか少しも当たっていないものだった。

「……俺は、いやしのねがいが使えるドレディア、いやチュリネを知っている」

「……え?」

わたし以外にも、同じような境遇のチュリネがいるんだ。

「俺は物心ついた時から親なんていなかった。親代わりならいたがな」

それって、わたしと同じ……?

シュバルゴさんと違って、わたしには小さい頃だけ親がいた。

お母さんはわたしと同じドレディア。

でも、お父さんは、お母さんで遊ぶだけ遊んでお母さんを捨ててしまった。

このいやしのねがいは、そんなお父さんから受け継いだものみたい。

遊んで捨てるような親から受け継いだ技がいやしのねがい、だなんていい皮肉。

お母さんはしばらく面倒を見てくれた。

けれど、心の中で何があったのか、わたしは唐突に森の中に捨てられた。

さまよい歩いたわたしがたどり着いた先は――
 ▼ 86 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/16 22:36:42 ID:DiQs1fHo [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ニンフィア。あのポケモンのもとで俺は育つことができたんだ」

わたしの心の中を、シュバルゴさんが言葉にした。

何が起こったのかわからなかった。

心の中が見透かされただけか、それとも。

「いやしのねがいが使えるチュリネは、同じように親がいなくてニンフィアのもとに来たポケモンだった。あそこはそういうポケモンが集まっているからな」

ニンフィアさんは、優しかった。

親がいない子を拾ってきては、みんなを養って。

住んでいるみんなが満足する量のきのみを用意するための手段は選ばなかった、ということはあとから知った。

自分の身を粉にしてわたし達を育ててくれたポケモンだった。

……でも、今考えるのはそんなことじゃない。



「もしかして……あの時の、カブルモ?」

「もしやとは思うが……あの時の、チュリネか?」



2匹の声が完全に重なった。

シュバルゴさんに会ってから一番の衝撃だった。

「やはり、そうか」

シュバルゴさんは納得したように3回も頷く。

ちょっと前初めて助けてもらったと思っていたのに、実はずっと前に一緒に暮らしていただなんて。

運命的、としか言いようがない。

「一回だけ、あったな。外から別の子供が食糧庫を荒らしに来たのに立ち向かおうとして、返り討ちにされて。そんな俺をチュリネが、お前が。いやしのねがいで助けてくれたんだ」

「あ、あの時は、必死でしたから。あとでニンフィアさんに『あんな危ない技使っちゃダメ』って怒られちゃいましたけど」

「ニンフィアは心配性だからな」

背中越しの笑い声に、わたしもくすりと少し笑った。
 ▼ 87 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/24 22:31:05 ID:ZfXA9j7Y [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シュバルゴさんの鎧が、わたしの背中から離れる。

もう行っちゃった、と思ったのもつかの間。

わたしが何かするよりも早くシュバルゴさんはわたしの目の前に回り込んだ。

そうして、さっき笑ってたとは思えないくらい真剣な表情でわたしを見つめる。

「あの時も、今回もだ。――何故そこまでして助けてくれるんだ」

「え、えと……うーん……?」

なぜ……?

そんなこと急に聞かれたって、わからない。
 ▼ 88 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/24 22:31:39 ID:ZfXA9j7Y [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あの時だって、さっきだって、ただ必死だった。

気づいたら飛び出ていたし、気づいたら技も使ってた。

……あの時は。

昔のわたしはカブルモくんのことどう思ってたのかな。

いじめにはならないくらいの、今となってはかわいい意地悪を受けて泣いてたわたしをいつも助けてくれたっけ。

守ってくれる背中を眺めて、よくわからない感覚に襲われてた。

体の内側が綿でいっぱいになったみたいな胸の圧迫感を、今でも覚えてる。

あの時の気持ちを心の中で反芻して、はたと気づいた。

――その、綿の感じって、わたしがさっき倒れる前に感じたやつかもしれない。

グレイシアにバンギラスさんのこと聞いたら、グレイシアはいつも言ってた。

『見てると、胸が綿でいっぱいになるの。……好きなのよ』

好き。

好きだって思ってるのは、わたし。

誰が?

1人しかいない。

わたしはシュバルゴさんが好きなんだ。

心の中で明確に言葉にした。

胸のうちにつかえた綿はまだ取れない。

けれど、かかっていたもやを払って綿の正体がわかった。

綿はどんどん膨らんでいって、もう喉まで出かけてる。

言ったら迷惑かもしれない。

けど、言わずにはいられなかった。

考えながら泳がせていた視線をシュバルゴさんにしっかり向ける。

シュバルゴさんは相変わらず何も言わない。
 ▼ 89 羽真◆9nlytNSHx. 19/02/24 22:32:06 ID:ZfXA9j7Y [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「あ、あの! 迷惑かも、しれない、んですけど……」

「構わん。言ってくれ」

もう戻れない、言うしかない。

そう意識しながら、口が動く。

「……わ、わたし。シュバルゴさんが、



好き……なんだと思います」



シュバルゴさんの眉がぴくりと動く。

「に、ニンフィアさんのもとにいた時から、そうだったんです。助けてくれて、カッコよくて……たぶん、その時から、好きでした」

ふふっとシュバルゴさんは我慢しきれなかったように笑った。

困惑半分、でも心なしか嬉しそうに見える。

「奇遇、だな」

「……はい?」

「さっきの戦闘で助けてもらってから、お前に使うふっかつそうを探して駆け回った。お前を助けたかったんだ。……これも、好き、と言うんだろう?」

言葉が、出なかった。

シュバルゴさんの声は聞こえているし、言葉の意味も理解できてる。

けど、まるで夢としか言いようがなくて、状況の理解が追いついていなかった。
 ▼ 90 羽真◆9nlytNSHx. 19/03/02 12:42:51 ID:lhIYwmqU [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
シュバルゴさんがわたしの手を取った。

地面に体を突いて、わたしの前に跪いたような格好。

「生涯を賭けて、お守りしよう」



「我が、姫……」



「え……っ!?」

姫。

……姫。

――姫。

頭の中で、たった一言が延々とこだまする。

姫。お守りしよう。――――

つー、と頬がくすぐったくなった。

涙。

わたし、泣いてる。

「だ、大丈夫か? 騎士が好きだ、と言っていたのを思い出してみたんだが……」

シュバルゴさんは少し恥ずかしそうにわたしを見る。

かっこいいけど、なんだかかわいい。

「その、嬉しくて……嬉し涙なんて、初めてです」

「そうか。なら、よかった」

お互いの安堵の息が重なって、わたし達は笑い出した。

それから、どちらからともなく近寄って、腕を相手の背中に回した。

温かい。

朝に比べて高くなった気温のおかげか、同じくらい暖かくて優しい草原の風が一陣吹いていった。
 ▼ 91 羽真◆9nlytNSHx. 19/03/02 12:43:18 ID:lhIYwmqU [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告



  完
 ▼ 92 羽真◆9nlytNSHx. 19/03/02 12:44:24 ID:lhIYwmqU [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
以上でドレシュバSS終了となります
書き続けてはいたのですが諸事情で投稿頻度が不定期でした
その節は本当に申し訳ない限りです
そんな事情で数少ない、ここまで見てくださった方
最後までご覧いただきありがとうございました
当分ここには落とさないと思いますが
思いつきで書いたのを投げることはあるかもしれないのでまたどこかでお会いしたらどうぞよろしくお願いします

それでは、さようなら
 ▼ 93 ーナイト@ミックスオレ 19/03/02 14:09:29 ID:ctdUQmd2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙 良かった
 ▼ 94 ピンロトム@きゅうこん 19/03/02 14:28:23 ID:pWWgKS8M NGネーム登録 NGID登録 報告
 ▼ 95 ラブ@アシレーヌZ 19/03/03 00:40:28 ID:l62sEJsw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です!
 ▼ 96 ガネール@やけたきのみ 19/03/03 08:32:36 ID:HQzsBuQU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おつおつのおつ
 ▼ 97 スラオ@ゼニガメじょうろ 19/03/03 09:14:33 ID:v/H2xc5c NGネーム登録 NGID登録 報告
面白かった!乙!
 ▼ 98 ネネ@でかいきんのたま 19/03/03 21:47:40 ID:GoMAkJsg NGネーム登録 NGID登録 報告
最高
このページは検索エンジン向けの機能制限版の旧ページです。
下URLから閲覧下さい。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=897244
  ▲  |  全表示98   | << 前100 | 次  |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |  ▲      
                  スレ一覧                  
荒らしや削除されたレスには反応しないでください。
書込エラーが毎回起きる方はこちらからID発行申請をお願いします。(リンク先は初回訪問云々ありますがこの部分は無視して下さい)

. 書き込み前に、利用規約を確認して下さい。
レス番のリンクをクリックで返信が出来ます。
その他にも色々な機能があるので詳しくは、掲示板の機能を確認して下さい。
荒らしや煽りはスルーして下さい。荒らしに反応している人も荒らし同様対処します。




面白いスレはネタ投稿お願いします!

(消えた画像の復旧依頼は、お問い合わせからお願いします。)
スレ名とURLをコピー(クリックした時点でコピーされます。)
新着レス▼