【スワップSS】雪の向こうへ:ポケモンBBS(掲示板) 【スワップSS】雪の向こうへ:ポケモンBBS

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【スワップSS】雪の向こうへ

 ▼ 1 デンネ@スチールメモリ 18/10/21 20:49:21 ID:.ls.EDEI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あともう少し……あともう少しで手が届く……

スミレ「……ハッ! あ……夢か……」

私はスミレ。職業は考古学者なの。数年前から記憶がなくなっていて、時々今のような夢を見るのよ

相棒「スミレさ〜ん!」

もう相棒が来たわね、今日はアルセウスの遺跡を調べにいくわ

スミレ「ハイハイ!」

その瞬間、私にいきなり頭痛が襲いかかった

スミレ「ウウッ…………アルセウス…………雪ののなか…………何かを…………何よ…………これ」

相棒「スミレさん!?」

スミレ「ハッ! ごめんなさい」

さぁ! 気を取り直してLet'sgo!
 ▼ 2 g1iw1bLYns 18/10/21 20:50:26 ID:hC/YG3Pc NGネーム登録 NGID登録 報告
このSSは、スワップSS祭
(http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=897810)
に参加しています

続きは他の方に書いて頂きます
 ▼ 3 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/10/24 20:31:44 ID:3YhUolNE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
続きを書かせていただくことになりました
フフ……腕がミシミシ鳴る……!
 ▼ 4 g1iw1bLYns 18/10/24 20:42:29 ID:Vao.liks NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノコ野郎さん、よろしくです!
 ▼ 5 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/10/29 01:17:24 ID:o.V2Mi36 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
あともう少し……あともう少しで構成がまとまる……(遅い)
すみません、もうしばらくお待ちください
 ▼ 6 ブネーク@ドリームボール 18/11/02 14:49:15 ID:6nGgDiNs NGネーム登録 NGID登録 報告
キノコ野郎さんだー頑張れー!
 ▼ 7 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/03 23:36:58 ID:CSQYZeHs [1/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
スミレ「そうそう、どうだった? 分析の結果は?」

相棒「はい! 実はあの遺跡、テンガン山の中でもそう見られない石で出来てまして……」

相棒と一緒にまだ雪が溶けきらない山道を歩く。もう春なのねぇ

今回、私たちの目的地はテンガン山の外れにあった

スミレ「……噂以上に、みずぼらしいわね」

数年前に発見されたものの、大した調査もされず捨て置かれた小さな遺跡。どことなくさびしそうに口を開けている

相棒「内側はけっこうきれいです。ちょっと気に入っちゃったかも……」

と相棒は言うものの、あるのは二本の石柱と真正面の壁画くらい

遺跡として最低限って感じ。人気が出なかったのも無理ないわ……

相棒「ところでスミレさん、やっぱり成分が一致してます」

スミレ「……ついに、か」

相棒に二つのかけらをわたされる。一つはこの遺跡のもの

もう一つは……私が思い出せる最初の日、手のひらに握りしめていたもの

つまり、私の過去を探る唯一の手がかり。この遺跡には私の過去が眠っているかもしれない……

私たちは息を大きく吸い込んだ

「よろしくお願いしまぁす!」

さあ! 調査開始よ!
 ▼ 8 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/03 23:38:04 ID:CSQYZeHs [2/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
スミレ「くぅ……イマイチだったわね……」

相棒「おなかすきました……」

夕焼け空を見上げながら、とぼとぼ歩く

今日の収穫

・壁画(アルセウスと人間、エスニック)の写真

・壁画に刻まれた文章(短い上にかすれてる)のメモ
 →「はじまりのとき かみは …… だった にんげんが うまれたのは …… だった」

以上

こんな内容でどうして夕方になってしまったのかと言うと

相棒『帰りたくないです……』

相棒が遺跡を気に入りすぎて、ダダをこね始めたからでした

知識豊富で優秀だけど、シャイで甘えんぼだったり、よく居眠りしたり、そういう子供っぽいとこあるのよこやつ

まあでも、相棒が気に入ったってことはやっぱり何かあるのかもね

あの遺跡がかけらの出所だってことは、ほぼ間違いないはずだし……

スミレ「よぉし、帰ってじっくり検証よ……(することあるのかしら)」

相棒「はぁい……」

ふわぁ〜あ、二人揃ってあくびが出ちゃった
 ▼ 9 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/03 23:38:46 ID:CSQYZeHs [3/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
スミレ「はじまりのとき かみは …… だった にんげんが うまれたのは …… だった」

机に向かい今日のメモを見返す。相棒はもう寝ちゃった

“はじまりの とき”は宇宙が作られた時、だとすると“かみ”はアルセウス。これは多分間違いないわ

だとすると、『人間が生まれたのはアルセウスよりもっと後』ってことが言いたいのかしら?

それにしても、わざわざ遺跡を作ってあの一文だけってずいぶん雑よね……

スミレ「……これ以上考えても無駄かなぁ」

静かな寝息を立てている相棒を見ていると、数年前のあの日を思い出す

——あの日はたしか、新月だったっけ
 ▼ 10 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/03 23:39:59 ID:CSQYZeHs [4/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……私はテンガン山のふもとに倒れてた

スミレ『うう、ここは……?』

覚えてるのはスミレという名と、考古学者ということだけ

そして、そこで同じく倒れていた相棒と出会った。

いえ、出会ったと言うのはおかしいかも。前から知り合いだったかもしれないし……

ともかく、それすらわからないのよ。なぜなら

相棒『あなたは……わたしのお母さんですか?』

相棒もまた、記憶喪失なのだから
 ▼ 11 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/03 23:40:51 ID:CSQYZeHs [5/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その後、私たちは街の灯りを目指して歩き、そこで顔を知らない知り合いに助けてもらった

相棒のことはかなり驚かれたわ。彼女によると『そんな知り合いは知らない』だそうで

それから大なり小なりイザコザはあったけれど、とりあえずは無事に考古学者に復帰した

今はもっぱらアルセウスについて調べてるの。理由は当然、あの頭痛や夢のせい

あれだけ『私の過去とアルセウスには、深い関係がありますよ〜』って言われちゃ、調べないわけにはいかないじゃない?

相棒「ううん……むにゃ……」

……それに、私の過去について調べるってことは、相棒の過去について調べるってことでもあるの

私は、相棒のためにも自分の真実を知りたい

相棒「お母さん……どこ……」

スミレ「よしよし……」

そういえば、今夜も新月ね……
 ▼ 12 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/03 23:42:12 ID:CSQYZeHs [6/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



あともう少し……あともう少しで手が届く……



「ひかりの ない よる へいめんの アルセウスが にらむ」


雪が降り始めている……



 ▼ 13 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/03 23:42:52 ID:CSQYZeHs [7/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

スミレ「……ハッ!」

…………夢?

時計を見るとまだ真夜中。私はものすごく汗をかいているらしい

スミレ「“ひかりの ない よる”……」

前から、新月の日にはハッキリした夢を見ることがあった

スミレ「“へいめんの アルセウスが にらむ”……」

けれど、ここまでメッセージじみた夢を見たことはなかった

何か、強い衝動みたいな物を感じる

スミレ「行かなきゃ……あの遺跡へ……」

私はベッドから飛び起きた。一分一秒でも早く、身支度を整えなければ

……そういえば、相棒はどこかしら
 ▼ 14 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/03 23:43:34 ID:CSQYZeHs [8/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
遺跡に着くと、先客がいた

相棒「すみません、わたし……眠れなくて」

スミレ「そっか」

もちろん、勝手に出かけた相棒を責めるつもりはこれっぽっちもない

むしろ、相棒もこの遺跡に何かを感じている……ということね

難事件の手がかりを見つけた刑事さんって、こういう気分なのかしら? 面白くなってきたわ……!

スミレ「さあ! 推理開始よ!」

相棒「それ、探偵さんのセリフでは?」
 ▼ 15 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/03 23:45:56 ID:CSQYZeHs [9/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
まずは“ひかりの ない よる”。これは新月のことだろうからOK

次に“へいめんの アルセウスが にらむ”。ちょうど私たちの目の前には、平面のアルセウスがいるわ

それはつまり……壁画。壁に描かれたアルセウスが、じっとこちらを見つめてる。ぼんやりとした赤い光で……

つまり、『ひかりの ない よる へいめんの アルセウスが にらむ』!

このメッセージはこの光景のことを指していたのよ!


スミレ「……だから何?」

メッセージが指していたのは、新月の夜に目が光る壁画……それで? ここから先はどうすればいいの……

ううん、ともかく徹底的にやるしかないわね。押したり引いたり、さすったりするのよ!

スミレ「さあ、ここからが本当の推理……!」
 ▼ 16 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/03 23:46:41 ID:CSQYZeHs [10/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
スミレ「ゼェ……ゼェ……」

かれこれ1時間が過ぎましたが何も進展なし

クッ、どうやら私、刑事さんを甘く見ていたらしいわ……

相棒「あの、スミレさん」

スミレ「なぁに?」

相棒「一つ、気になったことがあるんです」

スミレ「……!」

これは相棒の何気ないヒトコトで物語が進展するパターンね! いいわ、話してみなさい……

相棒「あの壁画の目、コケです」

……ん?

相棒「新月の日にだけ赤い光を放つ……あれは確か、すごく珍しいヒカリゴケの一種ですよ!」

……なんだあ、そんなことか。推理とは関係なさそうね……
 ▼ 17 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/03 23:47:49 ID:CSQYZeHs [11/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
スミレ「そんなものが生えてるなんてラッキーね。もしかしたら建材の石にもともと付いてたのかな?」

相棒「違うんです! あのコケはテンガン山には生えません!」

スミレ「え……?」

相棒「普通、湖みたいな水の多いところに生えます!ここはテンガン山特有の石で出来てるのに、それが不思議なんです……」

……わざわざ、環境に合わないところから持ってきたの?

そりゃ、いいギミックかもしれないけど、見られるのは新月の夜だけなのよ?

そうよ

そもそも、どうしてあのコケはまだ枯れずに生きているの……?
 ▼ 18 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/03 23:48:23 ID:CSQYZeHs [12/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
スミレ「……もしかしたら」

私は持っていた水筒のふたを取った。そして中身の紅茶をようく冷まし……

淡く光を放つコケに、ゆっくりかけてみた

相棒「す、スミレさん……?」

スミレ「ようく見ててね、これが私の推理よ……」

突然、赤い光が強まった

相棒「うわあっ!」

それはまるで睨みつける眼光のように鋭くなり……

スミレ「ウッ……!」

私を、激しい頭痛へと誘った
 ▼ 19 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/03 23:49:11 ID:CSQYZeHs [13/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



あともう少し……あともう少しで手が届く……


雪を溶かした手のひらを……アルセウスの瞳に当てた……


「ひかりに つづく みち その さきで」


アルセウスは……雪の中…………私に何かを………………



手渡した
 ▼ 20 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/03 23:52:03 ID:CSQYZeHs [14/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「……レさん」


相棒「スミレさん!!」

スミレ「……ハッ!」

気がつくと、私は元どおり遺跡にいて、そばには水筒を持った相棒がいた

スミレ「あ……キャッチしてくれたのね、ありがとう」

相棒「いえ……そんなことより、ほ、ほら!」

相棒に促されて振り向くと、遺跡のど真ん中に大きな穴が開いていた

スミレ「こ、これは……!」

2対の石柱の中心でぽっかり口を開けていて、見るからに深そう……

スミレ「でも、今さら引き返せるワケないわよね! 相棒、手伝ってくれる?」

相棒「もちろんです!」
 ▼ 22 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/04 23:37:51 ID:OS3w5lLM [1/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
地下にはまっすぐ伸びる通路があった。それはまるで道のような……

向こう側に光は見えなかったけれど、大丈夫。ライトは考古学者の必需品だからね

スミレ「平気? 怖くない?」

相棒「へ、平気です…………あっ」

相棒に袖をひっぱられたのでそちらを照らすと、壁には壁画と文章が刻まれていた

もしかして、上の階の続きかしら?

スミレ「……読みながら進みましょっか!」
 ▼ 23 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/04 23:38:34 ID:OS3w5lLM [2/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
最初の壁画には、上空のアルセウス、その真下にいるポケモンたち、それから端に避けられた人間たちが描かれてる

「かみは あらゆる いのち を つくった しかし にんげん だけは ……た」


次の壁画は、アルセウスが山の上に降りてくる様子

「かみは にんげんを …… そんざいだと かんがえた」


その次では、座るアルセウスの横に、沢山の人間が列をなしているみたい

「かみは …… ばしょを つくった あらゆる にんげんが おとずれ ねがいごとを いった」


そして、急に壁画は途切れた。短い文章だけが刻まれていた

「その とちの にんげんは ほろびて しまった」


……私たちはいつの間にか、道の終わりまで来てたらしい

上にのぼる階段がのびていて、その先にかすかな光が見える

頭痛がゆるやかに鳴っている
 ▼ 24 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/04 23:40:37 ID:OS3w5lLM [3/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
相棒「……スミレさん、待ってください」

階段を登ろうとする私の袖を、再び相棒がひっぱった

スミレ「なぁに?」

相棒「その……」

相棒はモジモジと袖を握りしめている。何を言おうとしてるのかしら

相棒「もし……もしわたしたちの真実がわかって……それがどんなことだとしても……」

相棒「私たちはずっと相棒のまま……ですよね?」

……なんだ、そんなことか。訊くまでもないじゃない!

スミレ「もちろん、私たちは永遠に相棒よ!」

相棒の顔は、ほっとしたようにほころんだ。私も微笑み返す

相棒「……でも、永遠だなんて……ふふふ」

スミレ「ちょっと、そっちから訊いたんでしょ?」

相棒「そうでしたっけ? 寝ぼけてたかもしれません〜」

スミレ「もう! ほら、行くわよ!」

相棒「は〜い」

笑い合いながら、私たちはゆっくりと階段を登り始めた……
 ▼ 25 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/04 23:42:04 ID:OS3w5lLM [4/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
スミレ「……白いわね」

相棒「ですね」

階段を登りきった先は、白い小部屋だった

白い、と感じたのは部屋全体にほのかな光が満ちていたから。またヒカリゴケかしら?

そして異様にさっぱりした部屋でもあった。長方形にくり抜かれてて飾りも一切なく、どっちかというと現代っぽい感じもする

その部屋の中央に、大きな石盤【プレート】のようなものがあった

私たちは一歩進み、石盤の文字を読み始めた……
 ▼ 26 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/04 23:43:14 ID:OS3w5lLM [5/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
この ばしょで ねがいを ききいれた にんげんたちは みな ひげきを むかえる

それを わすれぬ よう その なを したに しるす ことに する

まったく おろかなものだ にんげんは えいえんには なれないと いうのに

わすれた ほうが みのためだと いうのに
 ▼ 27 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/04 23:44:49 ID:OS3w5lLM [6/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ユキ ハナ イオウ ケヤ ダイチ……

その石碑に刻まれていた名前は数百、数千人はいそうだった

スミレ「すごいわ……これほどの人間がここを訪れたなんて……!」

相棒「そんなに広いようには見えません……」

名前をどんどん目で追い続け、ふと石碑の最後に刻まれた名前に目が止まった

その瞬間、私の背筋が凍った


スミレ


そこには紛れもなくそう書かれていた
 ▼ 28 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/04 23:45:39 ID:OS3w5lLM [7/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
スミレ「え……?」

私は目眩に襲われ、膝をついた

相棒「スミレさん!? 大丈夫ですか!?」

私はここに来たことがある? 願いを叶えてもらったことがある……?

わからない、頭が割れそう

そうだ、これほどの人数よ。同名の別人ってことも……

石碑をもう一度見て、気がついた

スミレ「……石碑の端が、欠けてる?」

ポケットから、かけらを取り出した。あの日の私が握りしめていた、あのかけら

かけらは、石碑にぴったり合わさった


間違いない

私だ

私がここに来たんだ


スミレ「ウッ……グアアああっ!!」

私は立っていられないほどの頭痛に襲われ……


不意に、全てがよみがえった
 ▼ 29 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/04 23:46:01 ID:OS3w5lLM [8/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
……

…………

小さい頃から遺跡が好きだった

友達と遊ぶよりも、考古学者の父さんの研究によくついていった

古代の知識だけが私のともだち……なんて

母親のいない私たちだったけど、なかなか仲のいい親子だったと思う


重い病気にかかった父さんは、うわ言ばかり言うようになった

亡くなる前夜、父さんは二人きりの部屋でこんなことをつぶやいた


「かみの やまの はずれ ひかりの ない よる へいめんの アルセウスが にらむ ひかりに つづく みち その さきで……」


「あらゆるねがいが かなう」


言い終わると、私にあのかけらを渡した。それきり父さんはまたうわ言を繰り返し始めた

「あともう少し……あともう少しで手が届く……」

それはもしかしたら、父さんの叶えられなかった夢のかけらだったのかもしれない
 ▼ 30 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/04 23:46:24 ID:OS3w5lLM [9/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
私は山に篭った。何ヶ月も、テンガン山の遺跡を調べあげ……

ついにあの遺跡を見つけた

そこからは順なりに進んでいき、あの白い部屋にたどり着いた

そして、私は光に包まれ……


いつの間にか、空の見える場所にいた

そこは円形の広場のようで、いくつもの柱が立ち並んでいるのが見えた

不思議なのは、激しい雪が見えるのに広場には一つも入ってこないこと。広場は暖かい気さえした

そのうちに、声が聞こえて来た

「数百年ぶりか 人間 そなたの名前を問おう」

私たちはいくつかの問答……会話と言ってもいいかもしれない、を交わした

声の主はアルセウス

荘厳で、でもどこか温かみのある声で……

姿は見えないのに、まるで目の前に座り込んでいる気がした
 ▼ 31 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/04 23:47:09 ID:OS3w5lLM [10/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「……そろそろ時間切れか 人間 最後に何か言う事はあるか」

ああ、願い事を言うんだな。私はすぐにわかった

そして……なんて言ったと思う?

「私は……永遠の知識が欲しい」

なんでそんなことを言ったのかしら。それはもう覚えていない

けれど、アルセウスはすぐに承知した。そして


雪の中、アルセウスは何かを……手渡した

初めは小さな光だったそれは、だんだんと一つの生命の形をなしていった

「そのいのちは 永遠の知識の化身として そなたの“相棒”となるであろう」

新しい光は

ユクシーになった
 ▼ 32 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/04 23:47:40 ID:OS3w5lLM [11/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「許せよ かつて 永遠の命を与えた人間はやがて海底に身を沈め 無限の力を与えた人間はやがて自らを打ち砕いた 人間は永遠にはなれぬ」

「しかし それでもかりそめの永遠を望むのなら」


「一度 そなたと言う人間をリセットするほかはあるまい」

ユクシーが私の腕の中でその目を開いた

その金色の瞳に私は吸い込まれ……


気がつくと ユクシーと共に あのテンガン山のふもとに倒れていた
 ▼ 33 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/04 23:51:49 ID:OS3w5lLM [12/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



スミレ「…………思い出した」

そうだ。私は全てを思い出した

私はずっと、父さんの夢を追い続け……たどり着いた瞬間に全てを奪われた

「スミレさん……」

この声は相棒……いや、ユクシーの声か。心配そうな眼差しを向けている

ユクシー「お、思い出せたんですか? 真実を……」

スミレ「ええ。私の記憶が消えたのは、ユクシーの目を見たから」

ユクシー「………!!」

それに、取り戻すべき相棒の記憶なんてものもなかった。ユクシーはあの瞬間生まれたのだから

なんてあまりに空っぽな真実だろう。これならいっそ……

ユクシー「……知りたくなかった」

スミレ「……」

ユクシー「スミレさん、キライになったんですか? 記憶を消したわたしが……」

ユクシーの声は、反応するにはあまりに悲壮すぎた

予想していなかった……いや、むしろ予想していたからこそ、ショックは大きかったのかもしれない

ユクシー「嫌です、そんなの、そんなの……!」

ぽろぽろ溢れる涙に、心はズキリと傷んだけれど

私はユクシーの目がゆっくり開いていくのを、ただぼうっと見つめるだけしかできなかった

どこかで……それを望んでいる気がした

ユクシー「うわああああっ!!」

耐えきれないほどの光が視界を包んだ

私の意識も、光にのまれた
 ▼ 34 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/04 23:53:13 ID:OS3w5lLM [13/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



「……レ」



「スミレや」

「なあに、パパ」

「……私は心配になる。おまえ、ともだちとは遊ばないのかい」

「いやよ。だってたんけんごっこのほうがたのしいもん」

「あのなぁ、気持ちは嬉しいけれどね。ともだちは大切なんだぞ? スミレの知らない色んなことを教えてくれるんだ」

「なら、ちしきがわたしのともだち。それでいいもん」

「………」

「ねえ、つぎはいつたんけんするの?」




「……なんてな」

「え?」

「残念だけど、もうお前を連れて行くことはできないんだ」

「どういうこと……? ねえ、どこにいくの……?」

「私は行かなければ」

「まって……わたしもつれっててよ……」

「ダメだ。これからは自分の足で前に進むんだ」

「いや!そんなのできっこないよ!」

「大丈夫さ、お前はもう、大切なものを見つけたじゃないか」

「……!!」

「お前はもう、私がいなくても大丈夫……」


「…………父さん」


「スミ……レ……げん……き……で…………」


 ▼ 35 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/05 00:06:46 ID:mQy6fI.o [1/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
スミレ「……ハッ!」


……ここはどこだろう

どこかの山のふもと……?


私は、どうしてここに……?


……何かが倒れてる

黄色くて、小柄で……



……相棒?


スミレ「相棒っ!大丈夫!?しっかりして!」

ユクシー「う、ううん……」

スミレ「私よ、スミレよ!」

ユクシー「スミレ……さん……」

スミレ「……!! よかった……!」

ユクシー「ごめんなさい……わたし、あんな……」

スミレ「もういいの、もういいのよ……こっちこそごめんね……」

思わず相棒を抱きしめた。相棒もそれに身を委ねて……

ユクシー「ぐう……すう……」

スミレ「えっ」

……そーか、そういえば今は深夜。散々夜更かししたものね……

スミレ「ふふっ……」

安堵と共に、涙がこぼれた。腕の中の温もりが本当に愛おしく思える……

そうだわ。父さんが言っていた大切なもの……

今のわたしには、それがわかる


スミレ「あ……雪……」
 ▼ 36 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/05 01:16:05 ID:mQy6fI.o [2/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ユクシー「わたし、夢の中でお母さんの声を聞いたかもしれません」

スミレ「ほ、ホント!?」

真実にたどり着いたあの夜から一夜明けて、私たちはいつもの部屋にいた

相棒の気になる発言。これは身を乗り出さざるを得ないわ!

ユクシー「暖かくて、優しい声で、『許せよ』って……ただ一言だけでしたけど」

スミレ「……『許せよ』?」

そういえば、相棒のお母さん……つまり生みの親にあたるのって、もしかしなくても……

ユクシー「やっぱり、顔や性格もとっても優しいんでしょうか? すごく会いたいです……」

スミレ「……うぅん」

相棒は、自身の能力を把握する一方で、誕生の伝説などはあくまで伝説としているフシがある

相棒のうっとりした顔……どんなお母さんを浮かべているのやら……

私はこの真実を、一体どうすべきなのかしら……

スミレ「くそう、アルセウスめ……」

ユクシー「?」
 ▼ 37 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/05 23:35:12 ID:mQy6fI.o [3/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

なんて言いつつ、アルセウスには感謝してるの

だって私が相棒と出会えたのは彼(?)のおかげ

それに父さんが逝ってしまってからの私はなおさら遺跡の調査しか眼中になくて

そのままユクシーと会っていたとしても、単なる『資料』としてしか見なかったかもしれない

ましてや『相棒』だなんて……

記憶を取り戻した時は“真実”のあっけなさと何も無さに愕然としたけど

あの出会いだけは決して空っぽじゃなかった

空っぽだったのは私の心の方だったんだ

全てはアルセウスに見透かされていたのか、はたまたただの気まぐれだったのか……

本当、神様の考えることってのは分からないわね
 ▼ 38 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/05 23:37:55 ID:mQy6fI.o [4/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ザザーン……

スミレ「わぁ……綺麗な日の出……」

ユクシー「ふわぁ……」

私たちは他地方へ向かう船の上にいた。もちろん、そこの遺跡調査に行くのよ!

ユクシー「やっぱりまだ眠たいです……流石に早朝便は張り切りすぎですよ……」

スミレ「ごめんね相棒、無理に連れ出したりして」

ユクシー「まあ、わたしはいいですよ……? スミレさんと一緒ならどこでも……?」

スミレ「うふふ、ありがと!」

ユクシー「……あっすごいスミレさん! キャモメの群れです!」

スミレ「もう! 楽しんでるじゃない!」


ああ、やっぱり相棒と一緒だと遺跡調査だって旅だって、なんだって最高に楽しい

父さん、今はまだ寂しいけれど……私は一歩ずつ歩きはじめました

過去を乗り越え、雪の向こうへ!
 ▼ 39 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/05 23:40:09 ID:mQy6fI.o [5/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




久方ぶり


久方ぶりの 来客だった

しかも ふたたびあの人間とは

……不思議だな

数百年もの間 独りを過ごした後でも

数年程度の空白を 久方ぶりと感じたのは
 ▼ 40 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/05 23:41:01 ID:mQy6fI.o [6/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

はじまりの とき かみは ひとりぼっち だった 

にんげんが うまれたのは ぐうぜん だった

かみは あらゆる いのち を つくった しかし にんげん だけは わからなかった

かみは にんげんを ゆいいつ たいとうに なれる そんざいと かんがえた

かみは にんげんと おはなし できる ばしょを つくった あらゆる にんげんが おとずれ ねがいごとを いった

そのとちの にんげんは ほろびて しまった
 ▼ 41 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/05 23:42:45 ID:mQy6fI.o [7/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

いつ以来だろうか

願いを叶えた人間が幸福になれたのは

いや 自らの手で掴み取ったと言うべきだ

彼女らの名前は 石盤には刻まぬ

私の心に 刻んでおこう


私は いつの時代も 人間を忘れることが できぬ

本当に 愚かなものだ

しかし 彼女らのような存在が 私に希望を抱かせるのだ

私は いつか孤独を埋める者が現れる時を 待とう

いつまでも 雪の向こうで


〈おわり〉
 ▼ 42 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/06 00:00:57 ID:cR0o4VLs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
以上になります
正直4日の夜は焦りまくっており……締め切り延長に超ほっとしました。お恥ずかしい限りです
◆g1iw1bLYnsさん、謎とワクワクに満ちた素敵な1レス目をありがとうございました!
 ▼ 43 g1iw1bLYns 18/11/06 06:51:42 ID:wDSgMvf2 NGネーム登録 NGID登録 報告
お疲れ様です!
キノコ野郎さん、ありがとうございました!
 ▼ 44 トラポット◆Pcf6Vw29GM 18/11/09 00:17:28 ID:nRfE6BbY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です!
スミレと相棒の絆に感動しました
すっかり人間だと思ってましたね
雑ですが挿絵(?)描かせてもらったので上げます
スミレの見た目は勝手に補完しました
 ▼ 45 ノコ野郎◆GThDaauUQM 18/11/09 00:22:50 ID:qi6Eu6vI NGネーム登録 NGID登録 報告
>>44
おお! ありがとうございます……!
スミレさんもユクシーもかわいいなぁ……へへ
ありがたく保存させていただきます
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