【スワップSS】Mr.ECHO:ポケモンBBS(掲示板) 【スワップSS】Mr.ECHO:ポケモンBBS

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【スワップSS】Mr.ECHO

 ▼ 1 リジオンの人◆QhqpxfPSAI 18/10/23 00:07:59 ID:wBE6qXB2 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は吟遊詩人

世界中を飛び回っては訪れた地で歌を歌う

ある時は自然豊かな町で

ある時は山に覆われた村で

ある時は海岸沿いの街で


そして今、僕はホウエン地方のとある洞窟にいる

中は冷たく、白い霧に覆われていた

足場も悪くゴツゴツとした岩が転がっていた

しばらく歩いていると、地面に倒れている1匹のポケモンを見つけた


「ドゴォォ……」


腹でも空かせているのだろうか

丸い耳をしたその青いポケモンは何やら呻き声を出している


「おーい君、大丈夫かー?」

「ドゴォ……」

「こんな所で倒れてたら危ないぞー?」

「ド……ドゴォ……」

「はぁ〜、仕方ないなぁ。このまま放置するのも可哀想だし、近くのポケモンセンターに連れてってやるか」

「ドゴ...」


この時僕は知る由もなかった

今にも息絶えそうなこのポケモンと僕がコンビを組み、詩人として大ブレイクするという事を


そして、この時もう既に



彼の"耳が聞こえていない"という事に……
 ▼ 2 リジオンの人◆QhqpxfPSAI 18/10/23 00:10:05 ID:wBE6qXB2 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
このSSはこちらのSS企画に参加しております↓
http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=897810

企画ルールとしてこのSSの続きは別の方が書く事となっております
 ▼ 3 トデマン@あやしいカード 18/10/23 00:11:41 ID:M.7wcYyc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あ、そうなの
 ▼ 4 TOg35azcXc 18/10/24 20:46:39 ID:Zs92P0l6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
任命されました

よろしくお願いします
 ▼ 5 TOg35azcXc 18/10/24 22:18:24 ID:Zs92P0l6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「もしもし、ポケモン君? 動けるかい?」

僕はそのポケモンに近づいていき、その背中をポンと叩いた

意識があるかどうかだけ確かめようと、本当に軽く

それだけなのに それだけのはずなのに


「ド!? ドゴォ!? ゴ、ゴーーーム!!!」


「うわっ なんだなんだ!? どうしたっていうんだ!?」


彼はまるで“不意打ち”に打たれたかのように跳びあがって辺り構わず攻撃を始めた

僕も危うくダメージを受けそうになって、慌てて距離を取る

そしてしばらく暴れまわった青いポケモンは疲れてしまったのか座り込んだ


落ち着いたとみて、僕は彼にもう一度近づく

「さっきまで呻いていたのに無理し過ぎじゃないかい? 木の実でも食べて落ち着きなよ そんなに背中触られるのが嫌だったかな?」

木の実を差し出しながら、警戒心を抱かせないようできるだけ優しい声を作る

『僕は君の敵じゃないよ』 そう伝えたくて


彼はしばらく戸惑っていたようだったけれど、やがて僕の手から木の実を受け取り美味しそうにかじり始めた
 ▼ 6 ンパッパ@フレンドボール 18/10/24 22:20:42 ID:Sjhszmww NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
NICO Touches the Walls定期
 ▼ 7 TOg35azcXc 18/10/25 22:12:40 ID:9I2Y/YX6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ドォゴォォォーーーーム!!!」


木の実を食べ終えた彼は感謝のつもりか、腰(?)を折って僕に向かって吼えてくる

感謝されるのは嬉しいのだが、いかんせん声が大きい

更に言えばここは洞窟の中

滅茶苦茶に反響して耳が痛い

同じ環境にいるのに声を発した彼自身は平気そうなのが不思議である


「ド...ドゴ......」


僕が思わず耳を抑えて苦渋の表情になると彼は消え入りそうな小さな声を出す

まるで謝っているようで笑ってしまう

ボリュームの大小が激し過ぎる

 ▼ 8 TOg35azcXc 18/10/25 22:40:56 ID:9I2Y/YX6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ゴニョ...ゴニョ...」

いつの間にか回りには薄桃色の小さなポケモンが大勢いた

見た目の可愛らしい彼らは怯えたようにお互いに身を寄せ合って何事かささやいていたが



「「ゴ「「ゴーーーー!!!「ーー!!」「 「ニョーー」ーー!!!」ニョーー!!!」」」



唐突に大音声の鳴き声を発し始めた

耳が割れそうだ

(なんだなんだ!? 自然豊かでポケモンが身近だって聞いてたけど、ホウエンってこんな大変なとこだったのかよ!!? くっ…… 酷い音だ 逃げるよ! ポケモン君!!)

声が音として通じない空間だから、僕は青いポケモンにジェスチャーで指示を出す

状況を判っているのかどうか、彼は不思議そうな顔して僕を見ていたが、僕が我慢できずに出口に向かうと慌ててついて来た



反応が変わっていて、随分とぼけたポケモンなのだなと

僕はその時そんな勘違いをしていた
 ▼ 9 TOg35azcXc 18/10/27 22:38:02 ID:FGMcpF7k [1/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「あー、五月蠅かった……」

全く、酷い体験だ 吟遊詩人である僕の耳が潰れたらどうしてくれる

歌えなくなってしまうじゃないか

まあ、あのポケモン達は自衛のためにあんなことしたんだろうから一概に責められはしないのだろうけれど



「おっと、そうだ 君は何で倒れていたんだい? 案外平気そうだけど、ポケモンセンター行っとく? 野生に戻ってもいいんだよ?」

「ゴ……ゴォ……?」

僕が洞窟を一緒に抜けてきた彼に問いかけるも、彼は戸惑うばかり

また声も出ていないし、どうしたのだろう?

歩くのについては来る様子は何かほほえましくもあるのだけど

「わかんないや とりあえず、ボールがないから捕まえらんないけど、ポケセン行こっか」

手を振って「行くよ」と示すと彼は頷いた


「ドゴーム!!!!」


「う…… 声大きいね、やっぱ」
 ▼ 10 TOg35azcXc 18/10/27 22:39:25 ID:FGMcpF7k [2/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「え…… こいつ耳が聞こえていないんですか?」



倒れていたこともあるし、一応ジョーイさんに診て貰ったところ、予想だにしなかった言葉を聞き、衝撃が走る

確かにそう聞くとあの反応にも納得がいくけれど、そんなのって……

「ええ このドゴームは聴力が著しく悪くなっているわ
 多分、音が一切聞こえてないのでしょう」

「そんな…… それじゃこいつ、野生に帰ることもできないってことですか?」

「野性だなんてとんでもない! それでもこの子のおやですか!」

「いや、僕のポケモンじゃないんです」


僕はさっきの洞窟でのことをジョーイさんに話した

危うく行き違いでお説教されるところだ それはご勘弁願いたい

「あら、それはごめんなさい でも、それじゃこの子は保護施設行きになるのかしら……」

そうなるのだろうか 


……なんだろう 施設が悪いところとは限らないが、折角関わり合ったのにここで見放すというのは違う気がする

「あの、だったら僕が面倒を見ますよ この、ドゴーム? っていうポケモン」

「いいのですか? 色々と大変なこともあると思いますが……」

「大丈夫ですよ これでも前はトレーナーやってましたし 今丁度手持ちいなくて手持無沙汰ですから」

「それならよかった 因みに、ポケモンを飼うのもタダじゃないわけですが、貴方今ご職業は?」

「流れの吟遊詩人をやっています」



……なんでそんな微妙な顔をなさるので?
 ▼ 11 TOg35azcXc 18/10/27 22:51:47 ID:FGMcpF7k [3/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「――で、障碍ポケモンを飼う訳になったんだけど、どうしたらいいかな?」


僕は手に握ったポケギアに今までのいきさつを話して友人に助言を求めた

友人はポケギア越しでも聞こえる程大きなため息を吐いた


「どうしたら――じゃないわよ しばらく連絡付かないと思ったら別の地方にいるの?
 アラサーにもなって置手紙一つで消えるとか…… 本当に心配したんだからね」

「だって、そっちじゃ僕の歌を誰も聴いてくれないじゃないか」

「そんなこと…… あたしは…… ゴニョゴニョ……」

「ん?」

「なんでもない! と、とにかく戸惑ってるってことね?」

一瞬友人があの薄桃のポケモンみたいになった気がしたけど気のせいかな


「全く、なんでそんな無計画に厄介ごとに関わろうとするのかしら」

「着の身気のまま 流れの身だからねー」

「だまらっしゃい」

「それに、育て屋の娘である君というアドバイザーもいるわけだしね」

「………… ……まあ、いいわ」

今の沈黙は何だろう?

「でも、申し訳ないけど、あたしも障碍ポケモンのことはよくわからないわ」

「……そっか 残念」

「ごめんね 育て屋では責任持てないから預かったことなくて……」
 ▼ 12 TOg35azcXc 18/10/27 23:07:03 ID:FGMcpF7k [4/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「大丈夫! なんとかなるなる! 僕は運がいいんだ!」

「……そうなのよね なぜか問題事に巻き込まれてもうまいことやっちゃうのよね
 でも、困ったことがあったらあたしに言いなさいよ? そうでなくても連絡は細目に入れること ね?」

「はいはい 了解 じゃあ、また」



ポケギアを切り、ドゴームの下へ向かう

当てが外れたことに若干の落胆を覚えないでもなかったが、気にし過ぎることはない

きっと彼に出会ったのも何かの縁なんだと思う

僕は楽観的なんだ



さあ、今日はこの町で歌おう
 ▼ 13 TOg35azcXc 18/10/27 23:36:22 ID:FGMcpF7k [5/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
“地元離れて遠い空の下 誰にも知られない無名の唄は

 誰かの胸に届くのだろうか 君の耳には届かないのだろうな

 遠い 遠い 君にとって このマチはどう視えてる?

 歌う 歌う 僕は歌う 届かないと知っている けど

 風に乗って遠くの君の その心震わせる

 そんな奇跡があるといいな そう願って”



町の公園のような広場で僕は歌った

思うまま即興で作った曲 事前予定のないゲリラライブ 更に言えば僕には知名度がない

勿論、聴衆なんてほとんどいない

それでも、僕は達成感に満たされていた

だって、遊んでいた子どもは立ち止まって拍手をくれた

休憩していたらしいご老人は微笑んでくれている

なにより、いつの間にかいたドゴームが身体を揺すって楽しそうにしていたのだ

聞こえない筈なのに 不思議だ
 ▼ 14 TOg35azcXc 18/10/28 20:45:00 ID:ZEo6B0YM [1/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「聴力はないって言ってたけど、楽しそうじゃないか ねえ、ポケモン君?」

「ゴォ! ド〜ゴ〜〜ム!!」


ドゴームは足を踏み鳴らしている ドン ドン ドン ドン 4拍子


ドゴームは拍手をした パ パ パ パ パ パ パ パ 8拍子


ドゴームはゆっくり回っている くるーり くるり 2拍子


成程、音楽は何も、歌や曲だけじゃない

サウンドが通じなくともリズムは解る

さらに、踊りや歌詞の意味、雰囲気、表情なんかも楽しむことが出来るんだ



『音楽』とは文字通り『音を楽しむ』もの

『音』とは『振動』 つまり肌で感じることもできるんだ

『耳で楽しむもの』なんて先入観に過ぎなくて、彼のような存在でも音楽は開かれている


胸が高鳴る

考えてみれば当たり前なのだけど、これは発見だ

目から鱗が落ちたように先のビジョンが見えてきて、楽しい

「よし、早速練習だ もっと振りを大きくしてみようか もっと楽器を大げさに掻き鳴らしてみようか
君も一緒に楽しめるように さ」
 ▼ 15 TOg35azcXc 18/10/28 20:45:39 ID:ZEo6B0YM [2/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
それから僕らは、このホウエンを旅してまわって色んな歌を歌った

賑やかな港町では元気になるポップを

火山の傍の温泉街ではゆったりできるエモロックを

火山灰降り注ぐ静かな場所では雰囲気重視のバラードを


何に縛られることもない気ままな流しの旅はとても楽しいもので

本当に、好きな歌のことだけを考えていられる時間が幸せで


だから、多分 忘れていたんだ

世の中は綺麗なことばかりじゃないってこと 

彼とあそこで出会った理由を考えるってことも すっかりね
 ▼ 16 TOg35azcXc 18/10/28 21:18:42 ID:ZEo6B0YM [3/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ある道路を通っていたときのこと、そいつが飛び出して来たのは唐突な出来事だった

僕はドゴームを抱えるように突き飛ばして道の脇に転がった


「ちょっとあんたら! ここは俺の練習コースなんだよ! 鈍間に歩いてないでくれる!?」


チリン チリン

自転車に乗ったアスリートらしき男は警鐘を鳴らしながら怒鳴る

……なんて奴だ!


「危ない目に遭ったのはこっちなんだけど……! っていうか君のいつもの行動とか知らないし! 道路は公共のものであって通ってることに文句言われる筋合いもないし!」

「はあ? 何言っちゃってんのおっさん こっちはベル鳴らして警告してやってんじゃねえか ちんたら歩いてねえで道開けんのが筋だろ 邪魔
 てか避けたじゃん 当たってもねえのにグチグチ言うなようっせーな」

「な……」

とんだ言い草に思わず絶句する

常識ってものがなっていない

交通法規上からしても歩行者優先なのは当然だろうに

しかしそれを言っても効かなそうな顔だ 最近の若いのって……


「聞こえなかったらどうするんだ……! それでなくともスピードの出し過ぎは危険なのに! 当たったらゴメンじゃ済まないんだぞ!」

「さーせんしたーww てかこの音で聞こえないなんてある?ww」

煽るような口調だ 全く嘆かわしい 想像力が足りていないよ
 ▼ 17 TOg35azcXc 18/10/28 21:20:01 ID:ZEo6B0YM [4/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「世の中君みたいに耳のいい奴ばっかりじゃない コイツ……ドゴームは耳が聞こえないんだ あんな真似されたら大怪我しちゃうじゃないか」

「えー そいつポケモンじゃねっすか 大したことないない
 ていうかw プッwww 思い出しちゃったww マジ受けるww」

唐突に男は腹を抱えて笑い出した

何がツボに入ったのか判らず戸惑っていると面白くてたまらないというように自分から説明してくれる



「いやーww 耳つんぽのぶっさいポケモンってどっかで聞いたと思ったら


 そいつ 俺が捨てたゴミじゃねーすかww


 まだ生きてたんすねーww あー受けるww」



そうだ 忘れていた

ポケモンを生き物として扱わないクソッタレが存在することを

 ▼ 18 TOg35azcXc 18/10/28 22:02:34 ID:ZEo6B0YM [5/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「捨てた? ゴミだって?」

はっきり聞こえているというのに信じがたいがあまり、思わず聞き返してしまう

「そーすよ だって聞こえないってことは、指示が通じないってことでしょ? バトルで使えない奴は手持ちの圧迫、タダ飯食らいの屑っすわ
 ゴニョニョの時はちっとは可愛げがあったから情もあったすけど進化すっとそんなんでしょう? いらね」


「訂正しろっ!! ポケモンをなんだと思っているっ!!?」

腹に据えかねた

激情のまま相手を睨みつける

しかし男はせせら笑うばかり


「文句あるなら勝負すっかよ、おっさん? そのドゴームで?」


言われて、少しだけ我に返った

この腸煮えくりかえる思いをぶつけたくはあるが、当の彼はどう思っているのだろう

かつての主人だった男を前にして、かつて捨てられた彼は


「ドゴ…… ドォゴーーーム!!!」


確認するように彼を見ると帰って来たのは力強い雄叫びだった

話の内容を理解してはいないだろうに、彼は僕に合わせてくれているらしい

ならば、何も思うところはなくなってくれる



「尋常なるポケモンバトルを申し込む ――お前に間違いを認めさせてやる!」
 ▼ 19 TOg35azcXc 18/10/30 22:30:17 ID:aI9koOgA NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ああ、いやだな 僕はこういうことから逃げ出すために遠く遠くまで来たっていうのに

それでも許せないのだから仕方ない 君の手を借りても為さねばならない



「おいおい、本気でやるのかよ? 今なら謝ったら許してやるぜ? 俺の手持ちは……こいつだ!」


「ボォスゴォォォーーー!!!」


相手が懐から出したボールを頬ると、鎧に覆われた姿の巨大な怪獣が出てくる

「こいつは友達に譲ってもらった、最高の能力を持つ一体なんだぜ 基礎ポイントも惜しげもなく与えて育てた最高傑作よぉ ポケモンってのはこうじゃなくちゃな」


男は自分のポケモンを誇る

その口調にはこちらを貶す意図が散々に含まれているのだろう

しかし僕には、自慢気な御託はもう『聞こえない』

僕はもう一度ドゴームに向き直る

バトルが始まる前に、臨戦態勢の彼にジェスチャーで一つ指示を出した

ぶっつけ本番になるけれど、きっとうまくいく そう信じる


「さあ、行こう」
 ▼ 20 TOg35azcXc 18/11/01 23:13:18 ID:mT1oUYjk [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「行け! サクッと終わらせて黙らせろ! アイアンヘッド!!」

「ドラァァ!!」


巨体が動き、こちらに向けて思い切り振り下ろされた

その重厚な見た目に違わず強力な一撃はすごい迫力で地を揺らす

僕の指示に従おうとしていたドゴームはその一撃に掠ってしまい、相手のポケモンの後ろへ飛んで行く

「解るか? おっさん そんなポケモンで俺に勝てるわけねえんだよ!」

確かに、良く育てられた強いポケモンであるらしい


しかし、まだ終わったと思うのは早い


「ド…… ゴォォーーム!!!」

彼は立ち上がり、遠吠えを上げた

「ちっ まだ立つのかよ 無駄なんだからさっさと斃れろ ストーンエッジ!」

「ゴームッ!」

相手の技が彼の身体を掠める

続いて襲ってきた冷凍パンチは当たってしまったが上手く受け身を取って耐えたようだ

だんだん動きが良くなってくる いい調子だ

逆に相手は苛ついてきているのが見て取れる


「おい! ちゃんと当てろよ! さっさと斃せ!!」

「ド、ドラ…… ボォォ!!」


怒りの込められた指示からのアイアンヘッド

致命傷になり得るその攻撃は、しかし当たらない



「ざっけんな! なんで当たんねえ!? おっさん、なんだその動きは!? ふざけてんのか!!?」



ふざけてるとは酷いな ただちょっと『止まっていない』だけじゃないか
 ▼ 21 TOg35azcXc 18/11/01 23:14:06 ID:mT1oUYjk [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
そう、僕はこのバトル中ずっと体を動かしていた

左腕は常に同じ動き 指揮棒を振るような四拍子

他はばらばら 右腕を挙げたり回したり方向を示したり 身体をスライドさせたり足の動きを早くしたり 常にバトルの様子を見ながら臨機応変に



音が解らなくとも、リズムは解る

声が通じずとも、ジェスチャーなら

ハンデがあったって、それがなんだ

どんな存在にだって、道はある



相手の動きが鈍ってきたところで、僕は両腕を上げて前へ突き出す

こちらの意図を読み取った彼は相手に近づき



「ド ゴ ― ― ― ム ッ ! ! !」



ハイパーボイスを撃ち放った

己の耳を労わる必要がないが故の、本当の全力で


余りの音量に、ポケモンだけでなくトレーナーも瀕死になり欠けだ

僕も先に耳を塞いでなかったら倒れていたかもしれない
 ▼ 22 TOg35azcXc 18/11/02 00:09:10 ID:viZM02gU NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「負けた……? 俺が?」

男は呆然自失といった面持ちでいる

そして何を思ったか倒れたボスゴドラに向き直り



「お前のせいだ!! 俺が耳つんぽとおっさんに負けるわけがねえ!! お前が技を外したから――「止めろ!!」


僕は叫んだ


「お前は――お前らは本当になんなんだ? ポケモンを――ポケモンバトルをなんだと思ってる?

ポケモンバトルは人とポケモンを繋ぐための手段だ 本当の絆を持ってこそその強さは発揮されるし、意味が生まれるんだよ」


『能力が高い』だけのポケモンなんてまやかしなんだ

だというのに、そんなものを手に入れるためにポケモンを道具のように消費する輩が増え過ぎている

そんな真実、見てられなくて 理想はあると信じたくて

僕は男に問いかけた


「ねえ、君にとって彼はどういう存在なんだい? 戦いの道具? それとも――」


若者ははっとしたように自らのポケモンを見つめ、そっと近づく

そして二言三言呟くと傷薬で治療を施しボールに戻した



僕はそれをただ静かに見守った
 ▼ 23 TOg35azcXc 18/11/03 00:12:24 ID:e/ykTQSc [1/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「なあおっさん いや、あんたは何者なんだ?

俺がボスゴドラの息が合っていなかったから強さを引き出せなかったってのは解ったが、
それでも、あれにそのドゴームで勝ってしまう技術とか、只者だとは思えねえ……」

しばらく自分の手の中のボールを見つめていた若者はふと思い立ったように尋ねてくる

何者だって言われてもな

「僕は吟遊詩人

 世界中を飛び回っては訪れた地で歌を歌う

 それだけの人さ

 まあ、まだまだ無名で地元ではトレーナーとしての方が知られてるんだけどね」


「バッジの数は?」

バッジ

ポケモン協会公認のジムリーダーが授ける勝者の証だ

ジムリーダーは全員、実力者として有名で

つまり所持するバッジの数はトレーナーの実力も表される


けど、僕の場合少し特殊なんだよね

「んー 16個 だね」


「ははっ そりゃすげえ」

あ その顔は信じてないな

まあ、普通は8個以上の数字を言ったらモグリと思われてもしょうがない


といっても、別に信じて貰わなくていいし訂正とかしないけど

「そう 凄かったんだよ

そんなこんなで有名だったから挑みに来るトレーナーが多くてね

バトル三昧の日々だったよ」
 ▼ 24 TOg35azcXc 18/11/03 00:13:45 ID:e/ykTQSc [2/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ただ、人間好きじゃないと続かないもんさ

 それに、さっきまでの君みたいな強さを履き違えてポケモンを消費する輩ばっかりだったこともあって、嫌んなっちゃって

 『疲れたのでやめます』っていう置手紙だけ残して地元から出てきちゃった」

そのバトル三昧の日々のお蔭でお金も溜まって吟遊詩人なんてやってられるんだけどもそれはそれ


まるであの黒装束の一団のような人の醜さをさんざ見せられてほとほと呆れて

好きな音楽と共に綺麗なものが見たくて旅をしてきたんだ



それなのにイキった男に出会ってしまったのは災難だと思ったものだけど

「おうふ…… 皮肉んのは酷えや
 もう勘違いはしねえっす コイツを大事にして息を合わせていきます」

こうして反省も促せたようだし結果オーライ、いい出会いだったかな
 ▼ 25 TOg35azcXc 18/11/03 01:11:33 ID:e/ykTQSc [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それから

僕は若者と別れた後少し旅を満喫して地元に戻った


というのも、若者との会話で地元の話が出たとき、友人にあれ以来連絡を取っていないことを思い出したからだ


ドゴームの件や旅の話など伝えたいこともあったから丁度いい

話しがてら怒られに行くと、出会い頭泣かれて困ってしまった

必死に謝って歌でご機嫌を取ると泣き止んでくれたようでほっとする



昔から泣き虫な友人を泣き止ませたのは僕の歌だったっけかな

歌を好きになった原点はそこだった気がする 余談だけど



友人にあれこれ語っていく中で、自分の中で今回の出来事なども纏まって一つの歌になった

今回の旅で感じたこと 伝えたいこと 想いを込めて

更には耳の聞こえない彼でも楽しめるように、遊びも加えて



僕の元々の知名度のお蔭か、ハンデ持ちのポケモンを連れているためか、「見て楽しむ音楽」というジャンルの話題性か

僕等は大ヒットを修めることが出来たんだ



やっぱり音楽って素敵なものだ

もっと色んな人が楽しめるものになれば、それはきっといいことだ

僕自身がその一助となれるならこれ以上のことはない



君の心にも届きますように

そんな願いを込めて音を響かせる
 ▼ 26 TOg35azcXc 18/11/03 01:12:21 ID:e/ykTQSc [4/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
完結です

ビリジオンの人さん 素敵な1レス目をありがとう
 ▼ 27 リジオンの人◆QhqpxfPSAI 18/11/03 18:19:16 ID:JNG6CC0s NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です

とても素晴らしいお話でした
ありがとうございます( ∩ˇωˇ∩)
 ▼ 28 トラポット◆Pcf6Vw29GM 18/11/05 17:31:54 ID:uRFIbGYI NGネーム登録 NGID登録 報告
乙です!
実はこのSS、吟遊詩人の何を表現すればいいのかわからなくてあまり当たりたくなかったんですよね
あなたに当たって正解でした 心理描写もバトルの展開も流石
雑ですが挿絵(?)描かせてもらったので上げます
主人公の見た目は勝手に補完しました
 ▼ 29 更後書き的な◆TOg35azcXc 18/11/05 18:48:20 ID:7bXYiPBU [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
小説作品で歌や音、まして聾など表現が難しいよな
スレタイも何かを特定するほどの情報でもなく朧げ
そして1レス目の最後には結末が明記されている

確かにこれは中々に難しい課題だったかもしれない


私は正直無難なのに当たったと思って喜んだけどね
ギャグ物やアニポケやルカリオに当たったら詰んでた……
折角の祭りだし苦しみながら書いてたと思うけど

「左利き」の話は好きだし
自己解釈で好きにやらせてもらった

個人的にはスレタイの回収が出来たので満足


>>29こそお疲れ様ァ
 ▼ 30 TOg35azcXc 18/11/05 18:49:22 ID:7bXYiPBU [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>28だった…… 自分に言ってどーする……
 ▼ 31 TOg35azcXc 18/11/10 22:00:54 ID:sQ3kPGyc NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Mr.ECHO→ヒビキ=サン
友人→コトネ

金・銀発売から19年だってお
当時11歳(推定)の少年もアラサーになりますよね
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