【SS】夢亡き里の変わり者:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】夢亡き里の変わり者:ポケモンBBS

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【SS】夢亡き里の変わり者

 ▼ 1 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 17:04:29 ID:PPD.tvug NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「オラッ! 夢の煙を出せ!」

 黒い影が蠢いて、執拗に打撃を食らわせてきた。痛覚は麻痺しているのか、痛みはさほどではないが、体にまるで力が入らない。
 息ができない。吸うことも吐くことも、当たり前のことができない。口と肺だけを残してその途中が跡形もなく消え失せてしまったかのようだった。
 内から外から、苦悶が肉体の至るところを苛む。掠れた喘ぎを発する乾ききった喉から、生命力が流れ出ていくような感覚。

 一体、どれほど続いていたのだろう。

 どこか、暗い場所だった。影の主の輪郭は判然とせず、何匹いるのかも窺い知れない。

「こいつはもうダメか。これ以上搾り取れそうにねえ」

「なら処分するか!」
「次を探そう!」

 低く暗い声と、2つの高いキーキー声。

「もう手の施しようもない……仕方ないか。長いことお疲れ様でした、ってな。せめて苦しまず死にな」
 
 低い声が答えた。次いで、息を吸い込むような音。そして。

 暗闇の中で不思議なほど鮮やかに浮かび上がった、黒い閃光。
 眼前に迫り来る。
 気力も体力も尽きたこの身では、とても避けられない。
 これは。

 ――あくのはどう
 ▼ 119 ルノーム@メタグロスナイト 18/11/24 22:22:21 ID:7HwoIsMM [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「メタ、グロス、さん」

 あああぁ

「ーーッッ!!」

 声にならない慟哭。

 これしかなかったのか。他に手はなかったのか。


 たとえば僕がもっと強ければ。それなら里の戦力は今よりも多くて。サザンドラを正攻法で倒すこともできたんじゃないか。

 それ以前に、サザンドラが現れた時に僕が進んで身を差し出す選択をしていれば。メタグロスを失うことはなかったんじゃないか。
 
 僕が死に追いやったようなものじゃないのか。
 僕はいつまで、流されるまま、守られてるだけなんだ。
 ▼ 120 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/24 22:28:25 ID:7HwoIsMM [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「目的は果たした。帰るぞ」

 声がした。誰もいないはずなのに。
 もしかしたらメタグロスが戻ってきたのかも、と。声は似ても似つかないのに、そんなことを思うほど僕は錯乱していた。

「我はここだ。気配を消していた。ヨガを極めれば、これしきは容易いこと」

「チャーレム、さん。どう、してここに」

「友の最期を見届けに。何かあったときのバックアップも兼ねていた」
 ▼ 121 ルメタル@ミストシード 18/11/24 23:50:04 ID:0yOkKlyM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 122 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 11:37:51 ID:VMkEX3ww [1/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「あの爆発、は。どうして無事で」

 範囲外から駆けつけたにしては、チャーレムの第一声はあまりにも早かった。

「うむ、実はな。我の立ち木のポーズには、僅かだが無敵判定があるのだ」

「はっ?」

「冗談だ。言ったろう、お主と同じだと。変わり者というやつだ。いわゆる、夢特性」
 ▼ 123 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 11:42:14 ID:VMkEX3ww [2/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「サザンドラは圧倒的に強い。しかしサザンドラさえ撃破すれば、後はサーナイトやエルレイドら残りの戦力でも十分対処できる。というのが、あやつの見立てであった」

 遠くを見るような目でチャーレムは語る。

「あれほどの大駒と刺し違えるならウデッポウでカイオーガを釣るようなもの、と言っていたが。我らにとってあやつはグラードン以上の価値だ」

「止めなかったんですか」

「あやつは我よりも遥かに聡い。我が思い付く程度のことは、すべて考慮している。あやつが必要だと判断したなら、我の説得など何の意味も持たぬ」
 ▼ 124 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 11:50:19 ID:VMkEX3ww [3/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「こんなテロ紛いの手段をとったからには、もはや交渉の余地もないだろう。狂暴化など関係なしに、互いを憎みあう連鎖。狭い島で、どちらかが滅ぶまで争う。これは戦争だ。どちらも引けぬ」

「これでよかったんでしょうか」

「いずれはこうなっていた。それがいつかの違いだけだ。根本的な解決ができぬ以上はな。その引き金を引く業をも引き受けて、あやつは逝ったのだ」

 根本的な解決、憎悪のジュエルの破壊。
 そこへ至る道筋は、もはや完全に途絶えた。一方が生き、他方が消える。生存権を巡る争いが、この島を血で染めることになる。

 避けられないことだった。誰も悪くない。全部仕方ない。

 いくら言い訳したって結果は変わらない。
 ▼ 125 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 11:55:15 ID:VMkEX3ww [4/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「引き揚げるぞ。戦に備えねば」

「先に戻っててくれますか。僕はやることがある」

「今の内に一暴れしてゾーオの戦力を削る、ということなら勧められぬ。帰還し、確実に合流する方が重要だ」

「違います。必ず戻りますから、お願いします」

「……よかろう。ではこれを。お主に渡すよう、あやつから預かっていたものだ」
 
 そう言って差し出されたチャーレムの掌には、1つの石が握られていた。
 夜空のように暗い不思議な石。メタグロスのコレクションにあったものだった。
 ▼ 126 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 14:11:56 ID:VMkEX3ww [5/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 
 破壊された門の脇を抜け、ゾーオの里へと踏み込んだ。
 いくらか雑多で大雑把な感じはしたが、思ったよりマカフと変わらない風景だった。

 僕にはやらねばならないことがある。
 
 目的地の場所は、大体見当がついていた。
 憎悪のジュエルは里の中心付近の地下で見つかり、そこから動かせなかったという。

 ここだ。
 ぽっかりと、縦穴が口を覗かせていた。

 そして、憎悪のジュエルが瘴気を吐くのなら。
 それを相殺するための夢の煙も、当然、その近くで放たなければならない。
 
 だから。
 ▼ 127 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 14:13:14 ID:VMkEX3ww [6/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 
 そこに、いた。
 穴の底に、力尽きた姿で横たわっていた。

 分かってはいたのだ。
 あの時僕は、『また』と思った。また死なせてしまう、と。
 だから薄々勘づいてはいたのだ。

 父さんがそこにいた。
 ▼ 128 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 14:15:55 ID:VMkEX3ww [7/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 
 父さんはもう、事切れていた。

 この穴の暗さは、あの夢で見た場所と考えて違和感がなくて。

 だからやっぱり、あの夢は予知夢なんかじゃなく。

 未来の出来事を見たんじゃない。
 まさにあの時、起こっている出来事を見たんだ。

 ゾーオにいる変わり者から、マカフの変わり者へのテレパシーによって。
 力尽きる寸前、最後の力を振り絞ってのメッセージだったんだ。

 ▼ 129 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 17:45:56 ID:VMkEX3ww [8/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 穴の底に降り立つ。

 これが。
 底から露出している、こいつが。
 憎悪のジュエル。すべての元凶。

 聞いた通り巨大なその宝石は、半ば地面に埋まったままの状態で、全容が見えない。見えていない部分を含めると、どれほどの大きさなのか。

 重さも相当なはずだが、ここから動かせないというのはサイズや重量だけが理由ではないらしい。

 サイコパワーで引き抜こうとしても、動かないどころかまるで手応えがない。力の強弱の問題ではなく、そもそも効いていないようだった。
 何か、この場に止まろうとする力が働いているようにも思える。
 ▼ 130 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 17:54:41 ID:VMkEX3ww [9/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 そのジュエルが、今も尚、黒い煙を吐き出し続けていた。

 穴から少しずつ、里の方へと流れ出ている。
 まだ大きな影響は出ていないようだが、父さんが力尽きた後は中和できていないのだから、時間の問題だ。

 スカタンクの姿は見当たらない。スカタンクだけでは何もできないのだから、当然か。

 この里から避難すればなんとかなる、という話ではない。
 絶えず放出される瘴気は、薄まりながらも島に広がり全土を汚染していく。逃げ場はない。

 では島を捨てて逃げるか。
 どこへどれだけ進めば陸地があるかも分からないし、この数のポケモンが海を渡るのは現実的でない。全滅の恐れが高かった。

 思えばこの島には、泳ぎが得意なポケモンや長距離を飛行できるポケモンがほとんどいない。それができる者は、とうの昔に脱出を試みたのだろう。
 ▼ 131 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 18:00:49 ID:VMkEX3ww [10/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 こんなものが無ければ!

 ジュエルに頭突きをかます。痛みなんて構わず、何度も何度も、打ち付ける。
 無駄なのは分かっていたが、そうせずにはいられなかった。

 やっぱり、ダメか。
 それなら、覚悟を決めよう。
 
 ――父さん。
 亡骸に軽く触れた。

 ありがとう。絶対に、僕は強くなるから。

 決意と共に、光が満ちる。
 託された月の石が、その役目を果たそうとしていた。
 ▼ 132 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 18:07:29 ID:VMkEX3ww [11/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 
 光が止む。
 
 少しだけ、新しい自分に生まれ変われた気がした。
 でも、僕は僕だ。弱くて何もできない、変わり者の僕のままだ。
 だから、これから変わらなきゃいけない。

 父さんのしたことを無駄にはしない。
 父さんと母さんと同じ、この姿で。心に誓う。

 入って来たときより幾分狭く感じる穴を抜けて、僕は父に別れを告げた。
 ▼ 133 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 20:18:54 ID:VMkEX3ww [12/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 わたしのママは殺された。
 
 2年前、あの悪魔どもの卑怯な騙し討ちにあったんだ。
 
 ママは強かった。
 里の誰よりも強くて、あんな汚い手さえ使われなければ、負けるはずがなかったんだ。
 ▼ 134 観マーイーカ◆MXEqJ3ztRI 18/11/25 20:21:28 ID:VMkEX3ww [13/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 
 わたしは『それ』をすぐ近くで見ていた。
 あの、おぞましい爆発。毎晩のように、夢に出てきてうなされる。

 ママには、わたしを叩いたり噛んだり、いつも暴力を受けていた。きっと酷い母親だったんだろう。
 でも、それでも、わたしはママが大好きだった。

 大好物のモモンの実、悪の波動の使い方、無愛想な子守唄。
 たまに、ほんのたまに見せてくれる優しさが、すごく嬉しかった。

 そんなママが、殺された。
 だから必ず、わたしは復讐してやる。
 ▼ 135 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 20:26:35 ID:VMkEX3ww [14/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 あの時、爆破から生き残ったムンナ。
 あいつはムシャーナとなって、今も遠征兵団に所属しているという。
 遠征兵団。ゾーオの里を破壊し尽くして、みんなを苦しめる敵。 

 敵は強い。
 散り散りに逃げ惑い応戦する日々に、仲間の数も減っていった。残された仲間でゲリラ的に立ち回っているけれど、戦況は苦しい。
 だけど、わたしは諦めない。悪魔を滅ぼすその日まで。

 強くなるんだ。この地獄を終わらせるために。
 ▼ 136 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 20:35:00 ID:VMkEX3ww [15/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 自然と足が向かっていたのはゾーオの里、その跡地。
 奪われた故郷。

 マカフの攻撃で壊滅し、荒れ果てた姿を見るたびに、悲しみと憎しみが込み上げてくる。
 来る度に後悔して、それでも足を運んでしまう。 

 見慣れた光景。けれどその日は、何かが違う気がした。
 空気というか。里を覆う黒い煙の質が、少し変わっている気がした。

 ジュエルに何かあったのかな?

 かつて里の中心部だったその場所へ、足を速めた。 
 ▼ 137 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 20:41:40 ID:VMkEX3ww [16/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 あの頃と変わらぬ様子で。憎悪のジュエルが潜む穴は、口を広げていた。
 その底を覗き込んだ瞬間だった。

 血液が沸騰する。
 何も考えられない。
 殺す。殺す。マカフのやつだ。殺す!

「があァッッ!!」
 
 殺す。すぐそこだ。噛みちぎってやる。

「グウオアァッ――あっ?」

 牙を剥き、まさに突き立てようというところで唐突に我に返る。
 狙った敵はあっさりと身をかわし、わたしは無様に転がっていた。

「正気に戻ったかな。僕と仲良く、はしなくていいけど。暴れるのは我慢して欲しい」

「お前は……ムシャーナッ!」
 ▼ 138 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 20:45:50 ID:VMkEX3ww [17/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 穴の底には薄い桃色の空気が満ちていた。
 今も放出され続け、瘴気を打ち消している。

 これは、夢の煙に毒素が混じったもの。と、いうことは。

 その場にはムシャーナだけじゃなく、スカタンクさんもいた。狂暴化して我を忘れていたさっきのわたしは、そのことにも気がつかなかったんだ。
 ▼ 139 ストダス@りゅうのキバ 18/11/25 20:48:57 ID:ItI6CaYw NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 140 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 20:49:53 ID:VMkEX3ww [18/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 
 マカフのポケモンを見た瞬間に巻き起こる暴走は、何度経験しても慣れない。
 怒りと憎しみが掻き立てられて、自分が自分でなくなってしまう。

 ああして理性のない間に命を落とせば、おかしくなっていると気がつきもせず、怖い夢の中で全てが終わってしまう。そう考えると恐ろしかった。

 でも。
 わたしの怒りは、憎しみは、ジュエルのせいなんかじゃない。
 これはわたしの、わたし自身のものだ。
 ありったけの恨みを込めて睨み付ける。

 ムシャーナ。
 マカフの悪魔の中でも指折りの実力を持つ、要注意対象。

 その気になれば、わたしなんて簡単にやられてしまうだろう。でも、構うもんか。
 最後まで、こんなやつに屈したりしない。
 ▼ 141 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 20:55:49 ID:VMkEX3ww [19/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「何でお前がここにいるの!」

「まあ落ち着こうやモノズちゃん。話をしてーんだとよ」

 スカタンクさんが仲裁に入ってきた。近所の優しいおじさん、という印象だったけれど。

「なんで、そいつに協力してるの!? 裏切り者!」

「やってやり返して報復して、そんなのはもう懲り懲りさ。俺はどっちの味方でもない」

 彼は疲れた様に寝そべる。
 ▼ 142 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 21:01:51 ID:VMkEX3ww [20/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「まあ、いいけど。それで、なんでお前はこんなところで、今になって煙なんか焚いてるわけ?」

「君と話がしたかった。君たちのことを、知っておきたかったんだ」

「話すことなんて何もない! それとも、ジュエルを壊す方法でも見つけたの?」

「いや。残念ながら」

「あっそう。まあ、今さら壊せたとしても遅いわ。わたしたちをこんなに苦しめて、許して貰えるとでも思ってるの!?」
 ▼ 143 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 21:10:18 ID:VMkEX3ww [21/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「いや。許してなんて、貰えないだろう。だって、僕たちも許せないんだから。僕たちの方も、たくさんの仲間が倒れた」

「何、被害者面してるの!? 卑怯な手でママを殺して里をぶち壊して! お前たちのせいでどれだけのポケモンが苦しんだと思ってるのこの悪魔!!」

「どっちが多く殺したかなんてもう分からないし、どうでもいいことだ。どっちも悪いし、どっちのせいでもないと思う。けど」

 一旦言葉を切ったムシャーナ。
 閉じていた両目を開き、真剣な眼差しで向き直った。
 ▼ 144 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 21:15:20 ID:VMkEX3ww [22/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「君のお母さんが死んだのは、僕たちのせいだ。争いは避けられなかったけど、いつ始めるか決めたのは僕らの側だ。あの時始める道を選んだんだ。だから」

 ――ごめんなさい、と。
 彼はただ頭を下げていた。
 
 わたしの体は震えていた。
 なんだ、この気持ちは。
 いろんなものがごちゃ混ぜになっていた。その中で真っ先に言葉になったものは。
 ▼ 145 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 21:20:24 ID:VMkEX3ww [23/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「ふ――ふざけるな!」

 今更なにを。だったらあの時、どうして。どうして!?

「許さない! 絶対許さない! 返してよ!」

 ママを、みんなを、大切な場所を!

「僕も許さない。けして許すことはできない」

 口ではそう言っているのに。一体、どうして。
 ムシャーナの瞳は驚くほど穏やかで、澄んでいた。
 ▼ 146 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 21:25:30 ID:VMkEX3ww [24/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「でも、君個人への恨みはない」

「……はぁ?」

「君のことを憎んでるわけじゃない。もし争わずに済んでいたなら、いい友人になれたはずだと思う。だから、君たちのことをけして忘れない」

 そんな、ありもしない『もしも』は虚しいだけだ。思い切りバカにして罵ってやろうとして。

 できなかった。
 真っ直ぐに向けられるムシャーナの視線に、思わずたじろいでしまっていた。
 そんな眼をできるポケモンが、どうして、あんなことしたんだ。
 ▼ 147 ミラミ@バーゲンチケット 18/11/25 21:27:29 ID:Yuoklr16 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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今更に悪エスパーだからどちらでもなく傍観なのかと気づいた
 ▼ 148 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 21:30:25 ID:VMkEX3ww [25/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 いや。
 なんとなく分かった。ムシャーナも、その仲間も、きっと悪いポケモンなんかじゃなくて。
 彼らの正義があって。
 誰のせいでもなく。運命を呪うしかなかったんだろう。

「……わたしだって、お前自身のことは、そこまで嫌いじゃない。許せないのは変わらないけど。たぶん、話せばいいやつではあるんだ。――それと」

 穴底を漂う夢の煙に包まれている内に、1つ思い出したことがあった。

「お前のお父さんに。ありがとうって、言っておいて」

 大好物のモモンの実、悪の波動の使い方、無愛想な子守唄。
 この煙が、ママを元に戻してくれたから。
 大好きだった、ママの小さな小さな優しさは、この煙なしにはありえなかったから。

 だから、どれだけ時が経ったって、きっと忘れない。
 ▼ 149 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 21:37:10 ID:VMkEX3ww [26/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 穴から這い上がっていくモノズの背を見送って、僕は嘆息する。
 瘴気を打ち消すだけの夢の煙を吐くのは、想像以上に体力を消耗するものだった。この短時間でこれほどなら、父さんは一体どれほど。
 そう思うと、やっぱり僕はまだまだ弱い。

 なぜ今になって、こんな会合を取り計らったのか。正直言って、自分でも明確な答えは見出だせずにいた。

 モノズの最後の言葉が、頭の中で繰り返し反響している。
 あんなささやかな繋がりを持ったところで、僕の自己満足でしかないのだろう。

 次に顔を合わせる時には、きっと互いの命を奪うために死力を尽くすのだ。そこに容赦などない。

 共存は、できない。
 ▼ 150 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 21:41:49 ID:VMkEX3ww [27/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 
 結果は、何も変わらない。

 どれだけ言葉を交わしても、許しあうことなんてできやしない。許されてはいけない。
 それでも。争い合う他ない僕たちの間に、ほんの些細な、奇跡のような光を垣間見た。

 彼らを知っておきたかった。
 彼らに知っておいて欲しかった。

 いなくなった者たちのことを、残された者が忘れなければ。
 そうして、記憶の中に生き続けることができるなら。
 きっと、無駄なんかじゃない。そんなことを信じる変わり者も、いたっていいと思った。

 ▼ 151 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 21:42:07 ID:VMkEX3ww [28/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




 ▼ 152 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 21:44:45 ID:VMkEX3ww [29/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 
 俺たちの戦いはこれからだ!

 傍観マーイーカ先生の次回作にご期待ください

 
 というわけで完結です。
 今回が初投稿でして、びくびくしながら書き込んでおりました。
 読んでくださった方、支援コメくださった方、本当にありがとうございました!
 ▼ 153 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/25 21:56:39 ID:VMkEX3ww [30/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 一点、注釈です。

 ゲームの仕様だとこの家族構成で隠れ特性が遺伝するのは本来おかしいのですが、これは分かってて設定無視をしました。
 どうぞご容赦のほどを。
 ▼ 154 ノズ@ぎんいろのはね 18/11/26 00:15:32 ID:u8Rwvius NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
 ▼ 155 ネコロロ@まひなおしのみ 18/11/26 02:50:08 ID:FEfs8DSc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
悲しいな…
 ▼ 156 ュリネ@ジャラランガZ 18/11/26 06:53:39 ID:Xo.g/44s NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
 ▼ 157 カルゲ@ふといホネ 18/11/26 08:04:12 ID:s4v2jXUk NGネーム登録 NGID登録 報告
>>153
特に気にならなかったわ
 ▼ 158 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/26 12:34:15 ID:oUKUA7UA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
皆様、乙をありがとうございます!

>>147
気づいてくださって嬉しいです!
元々マーイーカかカラマネロを登場させる案もあった名残でこの名前となりました

>>157
であればよかったです!
もともとそこまで重大な矛盾というわけではありませんが、気にさせない程度には勢いでごり押せたと前向きに解釈することにします
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