【SS】夢亡き里の変わり者:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】夢亡き里の変わり者:ポケモンBBS

  ▼  |  全表示158   | <<    前    | 次100 >> |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |   ▼   
                  スレ一覧                  
SS

【SS】夢亡き里の変わり者

 ▼ 1 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 17:04:29 ID:PPD.tvug [1/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「オラッ! 夢の煙を出せ!」

 黒い影が蠢いて、執拗に打撃を食らわせてきた。痛覚は麻痺しているのか、痛みはさほどではないが、体にまるで力が入らない。
 息ができない。吸うことも吐くことも、当たり前のことができない。口と肺だけを残してその途中が跡形もなく消え失せてしまったかのようだった。
 内から外から、苦悶が肉体の至るところを苛む。掠れた喘ぎを発する乾ききった喉から、生命力が流れ出ていくような感覚。

 一体、どれほど続いていたのだろう。

 どこか、暗い場所だった。影の主の輪郭は判然とせず、何匹いるのかも窺い知れない。

「こいつはもうダメか。これ以上搾り取れそうにねえ」

「なら処分するか!」
「次を探そう!」

 低く暗い声と、2つの高いキーキー声。

「もう手の施しようもない……仕方ないか。長いことお疲れ様でした、ってな。せめて苦しまず死にな」
 
 低い声が答えた。次いで、息を吸い込むような音。そして。

 暗闇の中で不思議なほど鮮やかに浮かび上がった、黒い閃光。
 眼前に迫り来る。
 気力も体力も尽きたこの身では、とても避けられない。
 これは。

 ――あくのはどう
 ▼ 2 カRIO◆N33wRk6RAs 18/11/22 17:05:18 ID:JQj.hpRE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 3 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 17:05:32 ID:PPD.tvug [2/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ガバッ、と。
 僕は跳ね上がるように飛び起きた。
 酷い汗だ。

 今、見たものは。
 予知夢というやつだろうか。
 ――いや。そんなはずはなかった。だって僕は、夢を見られないんだから。

 どうも気分が良くない。疲労感と倦怠感。
 寝床から浮かび上がると、僕は水辺を目指す。とにかく水を浴びてさっぱりしたかった。
 ▼ 4 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 17:06:53 ID:PPD.tvug [3/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 辺りはまだ薄暗い。まだ里のみんなは寝静まっている頃だが、これだけのポケモンが集まって暮らせば、中にはこんな時間に起きているような者もいるものだ。

「よおムンナ、こんな時間に起きてるなんて珍しいなあ」
 
 リグレーだ。寝起き早々、嫌なやつに出くわしてしまった。

「ああ、おはよう。今夜も星空を見てたの」

「おう……いつにもまして酷い顔してやがるなあ。今日こそはいい夢でも見れたのか?」

 またか。いつものこれだ。
 ▼ 5 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 17:08:23 ID:PPD.tvug [4/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「な、わけないか。おまえは母ちゃんと違って出来損ない……変わり者の役立たずだもんな」
 
 ギギシリ、と歯軋りして耐える。

「俺の母ちゃん言ってたぜ。お前の父ちゃんも、変わり者のろくでなしだったって。母ちゃんの方に似れれば良かったのになあ」
 
 言い返せなかった。
 リグレーが言ったことはどれも、まさに僕が感じてる劣等感そのものだったからだ。
 ▼ 6 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 17:11:04 ID:PPD.tvug [5/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 エスパータイプのポケモンたちが暮らすマカフの里。
 この里は、山を挟んで向かい合うゾーオの里、そこに暮らす悪タイプポケモンたちの脅威に晒され続けてきた。
 彼らの度重なる襲撃で、存亡の危機にあった里。その窮地を救ったポケモンがいた。
 それこそが、僕の母であるムシャーナだった。

 ムシャーナの特性『よちむ』。
 断片的ではあるけれど、夢によって未来の危険を知る能力。
 この能力によってゾーオの襲撃に先手を打ち、返り討ちにすることが可能になったのだ。
 お陰で、マカフに暮らすポケモンたちの被害は格段に減った。
 ▼ 7 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 17:11:31 ID:PPD.tvug [6/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 里の救世主として讃えられて、それを鼻にかけるでもなく。 
 穏やかで物腰の柔らかな母は、みんなの人気者で、僕の自慢だった。

 そんな母が、死んだ。
 ▼ 8 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 17:21:04 ID:PPD.tvug [7/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 母は病気だった。もともと体が弱かったが、7年前からは一際酷く、病床を離れられずにいた。
 弱った影響か、やがて予知夢を見ることもなくなって。
 長老をはじめ、里のみんなが手を尽くしてくれた、けれど。

 結局助からなかった。3年前のことだ。
 そして。

 母が亡くなった後、息子である僕に、予知夢で里を守る役目が期待されるのは自然な流れだった。

 だけど。

 ダメだった。僕にはできなかった。僕は『よちむ』じゃなかったんだ。
 ▼ 9 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 17:26:56 ID:PPD.tvug [8/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 『よちむ』の特性を持つポケモンといえば、ルージュラやスリーパーもそうだ。だけど生憎、マカフの里に彼らは暮らしていなかった。
 つまり、今、この里は無防備といっても過言じゃない。
 しかし不思議なことに、この数年というもの、ゾーオからの襲撃はぴたりと止んでいたのだった。

 一方、僕の父親についてだけれど。
 僕の父もムシャーナだ。
 珍妙な研究をする変わり者との評判で、母とは対照的に少し煙たがられているところもあった。
 かといって、嫌われもの、というほどでもなかったのだが――。
 ▼ 10 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 17:29:03 ID:PPD.tvug [9/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 そんな父は。7年前、母が倒れた少し後に。
 どこへいくとも言い残すことなく、姿を消した。

 はじめは治療法を求めて旅に出たのかとも思った。
 だけど結局、それから一度も里に戻ることなく、今に至る。
 
 みんなに好かれていた僕の母。
 それを見捨てて逃げた無責任な臆病者、役立たずのろくでなし。
 それが僕の父の現在の評判だ。

 ああ、それから、もう一点。
 父もまた、予知夢をみることはできなかったらしい。

 ――父に似て、変わり者の役立たず。

 予知夢を見られない。そのことに、嫌でもろくでなしの父親との共通点や繋がりを意識せざるをえなくて。
 それは消えない呪いのように感じられた。
 ▼ 11 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 17:38:49 ID:PPD.tvug [10/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「気にしすぎなんだよ、キミもみんなも」
 
 朝食の席。ぴょんぴょんと跳ねつつ、木の実をかじりながらバネブーが言う。
 僕はもう食べ終えているが、寝坊してしまったバネブーはまだまだこれからというところだった。

「たしかに君のお母さんは立派な方だったけど、その子供だからって勝手に期待して、勝手に失望して。役立たずだなんだと陰口を叩く、そんなのは、やっぱりおかしい」
 
 ジャンプのペースがどんどん速まっていく。バネブーが怒っているときの癖だ。

「キミは努力家だし、親切だし。十分立派だよ、キミは」

「そんなの、僕にはそれぐらいしかできないし……」

「いいや、キミをキミとして見れば出来損ないなんかじゃないのはすぐ分かることだよ。大体、キミを酷くいうやつのどれだけが、そんな偉そうにできるほど大層な生き方をしてる!? リグレーのやつなんか――」

 自分のことのように怒ってくれる友達がいることが嬉しかった。
 だけど僕自身がどうしても納得できない。
 母のこと、父のこと、僕のこと。僕はどうしてこうなんだろう。
 ▼ 12 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 17:43:18 ID:PPD.tvug [11/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 その時、里の入り口の方から何やらざわめきが聞こえてきた。

「英雄の出陣だ! 行こう!」
 
 里の子供たちが歓声をあげ、我先に駆けていく。慌てて木の実を飲み込むバネブーと顔を見合わせ、僕も駆け出した。

「いってらっしゃぁい!」
「いっぱい取って来てねぇ!」
「うおおおおおおおお!!」

 里のみんなの声援を浴び、ポーズを取ったり、頷いたり、叫んだり。それぞれの反応を見せるポケモンたち。
 彼らこそ、マカフの里が誇る、特別遠征兵団――平たく言えば、食料調達班だ。
 ちなみに、命名は長老のヤレユータンの趣味による。
 ▼ 13 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 17:51:47 ID:PPD.tvug [12/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 かつてゾーオの襲撃が苛烈を極めた頃、里の外へ出ての食料確保には大きなリスクを伴った。
 そこで里では精鋭たちによる部隊を組織することとしたのだ。
 それが、特別遠征兵団。

 ここ数年は襲撃が止んでいるとはいえ、いつまた攻撃が始まるか分からない。故に現在の遠征兵団も無論、里における最高峰の戦力。

 ナンバーツーとスリーの実力を誇るサーナイトとエルレイドの姉弟を筆頭に、腕に覚えのあるポケモンたちが揃っていた。
 サイコパワーを利用することで、少数でも多くの食料を運べるのはエスパータイプである利点だ。
 ▼ 14 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 17:59:53 ID:PPD.tvug [13/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「任せなさい! 里のみんながたらふく食べられるぐらい、山ほどの食べ物を! 必ずや持ち帰って見せましょう!」
 
 団長を務めるサーナイトの、高らかな宣言に沸く民衆。

「姉貴、ハードル上げるなって……。まあ、ほどほどに期待して待っててくれ。決してみんなを飢えさせたりはしない」
 
 やれやれ、といった様子の副団長エルレイドの言葉に黄色い歓声があがる。
 
 余談だがこの二匹はモテる。それはそれはモテる。勇敢、強い、カッコいい、と揃っているのだから無理もない話だ。

 彼ら遠征兵団はみんなの称賛と憧れの対象で、紛れもなく、役に立っている存在だった。
 ▼ 15 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 18:03:33 ID:PPD.tvug [14/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 なら。きっと。
 気づけばそんな思いが口から漏れていて。

「僕も、入りたいなあ」

 それを聞いたバネブーはすかさずニヤニヤ笑いを浮かべ、とんでもないことをのたまいだした。

「ふふふ、まあサーナイトさんキレイだしねえ」

「は!? い、いや、そんなんじゃないって、ホントに」

「でもライバルは多いし、まずは強くならないと入れて貰えないからね。麗しのサーナイト団長への道は険しいぞお」

「だからやめてよねそういうつまんない冗談ただの憶測ですよね証拠でもあるのかよ変な誤解されたら迷惑だろっていうかうんたらかんたら!!」

「うん、そんな感じの方がいいよ。まったく、キミは気にしすぎなんだ」
 
 ニッと笑ったバネブーは、やけに速いペースで跳ねていた。でも、これはきっと怒っているわけではなさそうだった。
 ▼ 16 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 18:14:10 ID:PPD.tvug [15/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「では、行きましょうか!」

 ひとしきり声援を受けた遠征兵団は里を後に、門をくぐっていく。そんな光景を眺めながら、僕は今朝見た夢のことを思い出していた。

 あれは予知夢ではない。なぜなら僕は予知夢を見れないから。
 そう思っていたが、万が一、ということはないか?
 今になって能力が目覚めた、という可能性だ。

 もしそうなら。あの夢が未来に起こる出来事を示しているなら。あれはとても不穏だった。

 夢に出てきた黒い影は、夢の煙を欲していた。
 夢の煙というのは、ムンナやムシャーナが放出する特殊な煙のこと。
 遠い地方ではコレ目当ての人間に狙われた、なんて話も聞こえてきたし、何か利用価値があるんだろう。

 しかし、この里にムシャーナはもういない。
 そして、唯一のムンナが僕だ。

 僕の身に危険が及ぶ、そういうことなのか。
 だとしたら、きっとそれはゾーオの襲撃だ。近く、ゾーオがまた攻めてくる、ということになる。

 なんだか嫌な予感がした。
 居ても立ってもいられず、僕は門の方へと飛び出していた。
 ▼ 17 ータス@じゅうでんち 18/11/22 18:16:04 ID:Mh929QtE NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 18 観マーイーカ◆lX0nF9ikQo 18/11/22 18:21:24 ID:PPD.tvug [16/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「あら?」

 気配を察知したのか、立ち止まり振り向くサーナイト。全速力で突っ込んでいたものだから、急には止まれなかった。
 そのままの勢いで、彼女の胸元の赤い突起へまっしぐら――。

「オラァーッ!」

 あわや顔面を埋めかねないところで、急速に引き離される。浮遊感。
 やり遂げた、という満足げな表情のヒヒダルマが目に入った。
 僕は彼の豪腕でひっつかまれ、ぶん投げられていた。

 ヒヒダルマといっても、普段はダルマモードの姿をとっているわけではなく、ノーマルモードの方だ。

 果たして彼をエスパータイプのポケモンとして扱ってよいのか。里の中でも意見が別れるところだが、わざわざ軋轢を生む理由もない。
 ましてや、ゾーオに対抗する戦力が少しでも欲しい現状では尚のこと。
 図抜けた怪力を買われ、マカフの里の貴重な戦力として数えられていた。
  ▲  |  全表示158   | <<    前    | 次100 >> |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |  ▲      
                  スレ一覧                  
荒らしや削除されたレスには反応しないでください。

. 書き込み前に、利用規約を確認して下さい。
レス番のリンクをクリックで返信が出来ます。
その他にも色々な機能があるので詳しくは、掲示板の機能を確認して下さい。
荒らしや煽りはスルーして下さい。荒らしに反応している人も荒らし同様対処します。




面白いスレはネタ投稿お願いします!
スレの消えている画像復旧リクエスト
スレ名とURLをコピー(クリックした時点でコピーされます。)
新着レス▼