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ギンガの残光

 ▼ 1 クケイル@グラスメモリ 18/12/10 22:09:25 ID:Fl32Y2hk NGネーム登録 NGID登録 報告
本を読み終えたタイミングで、隣の席のハンサムが目を覚ました

ハンサム「あぁ…おはよう、ボス」

アイマスクを外したハンサムの目はまだ眠そうだ

リラ「おはようございます、ハンサムさん」

ハンサム「眠らなかっのか?」

リラ「寝ましたよ、あんまり疲れてなかったので、少しだけですが」

ハンサム「そうか」

リラ「そろそろ空港に着く頃ですね」

ハンサム「シンオウか、三年ぶりだな…」

リラ「三年前というと、ギンガ団?」

ハンサム「うむ。まさか、また奴等のせいで戻ってくることになるとはな」

リラ「一度倒した相手との再戦ですね。頼りにしてますよ?」

ハンサム「いやぁ、私一人の力ではなかったさ」

リラ「確か、一人の少年が協力してくれたんでしたっけ?」

ハンサム「ああ。この前のアローラで出会った彼のように」

リラ「どこの地方にもすごい子供がいるものですね」

ハンサム「時代は常に若者が作るものさ。私のような者は所詮はサポート役だよ」

リラ「ハンサムさんも充分に活躍していると思いますけど?」

ハンサム「ははっ…ボスにそう言われるとありがたいよ。さて、ちょっと私はトイレに行ってくるよ」

リラ「はい、どうぞ」

リラが脚を引っ込めて奥のハンサムの為にスペースを作ると、ハンサムはそこを通りトイレへと歩いて行った
 ▼ 25 ンチャム@はっきんだま 18/12/21 21:52:03 ID:biromhp6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハンサム「ボスのプライベートの全てを知っているわけではないが、少なくとも私とバディを組み始めてからはずっと捜査ばかりだ。まだまだ若いというのに、出会いがないのではないかと少し心配していたんだよ」

リラ「ふふっ」

リラがはにかむ

ハンサム「? 何かおかしいかい?」

リラ「それじゃあまるでお父さんですよ?」

ハンサム「そうなのか?」

リラ「私も本当の父親というのは覚えてないですけど、多分」

ハンサム「そうか…」

リラ「それ、何を読んでるんですか?」

ハンサム「ん、ああ。過去の資料だよ」

リラ「今回のに関係が?」

ハンサム「まだ分からない。とりあえずもう少しデータを遡ってみようとは思ってるんだが…」

リラ「ふーん」

ハンサム「アルコールも入っているから、なかなか集中できないからね。続きは明日にするとしよう」

ハンサムは端末を閉じた

リラ「何か本部から手がかりが?」

ハンサム「いや、良いんだ。今日はとりあえずもう休もう。明日ゆっくり話すよ」

リラ「そうですか」

お互いに話を切り上げ生活習慣を済ませ、その日は眠りに就いた
 ▼ 26 ロバンコ@かくとうジュエル 18/12/21 22:08:02 ID:biromhp6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
何処かの薄暗い道を歩く。自分の靴音だけが辺りにこだましていた

アオイはぴたと足を止めると、右側の壁に触れる。壁の奥から小さく低い機械音が鳴ると、触れている手の左から豆粒大のボタンが浮かび上がる

さらにボタンを押すとその壁の一部がドアくらいの大きさで浮かび上がり、引き戸のようにスライドする。奥に、部屋が見える

アオイがその中に入ると壁は元の位置へスライドし、ボタンも奥へ消える。元の壁へと戻った

「遅かったじゃない」

部屋の中で女の声がする

「どこで道草食ってたのよ?」

アオイはさらに奥へ進み、デスクにかけた

アオイ「面白い相手に合ってきた」

「面白い相手?」

アオイ「国際警察だ」

「そりゃあそうでしょ、本部に行ったんだから」

わかってないなと言いたげにアオイは小さくため息をついた

「何よ」

アオイ「いや、なんでもない。それより、データの解凍は終わったぞ」

ポケットからメモリスティックを取り出し、デスク上のノートPCへ差し込む

「そう、上手くいったのね」

アオイ「あぁ、次の段階だ」

PCがメモリを読み込み、データが開かれていく

「次はどうするの、サターン」

アオイ「慌てるな。まずは、このデータの解析からだ」

そう言うと、アオイ………サターンはかすかにニヤついた
 ▼ 27 イケンキ@ハンサムチケット 18/12/30 18:00:33 ID:ycmIj9jo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リラのss好き
支援
 ▼ 28 ノノクス@ボイスチェッカー 19/01/01 21:20:17 ID:MbpcXiy. [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
リラ「それで、昨日の話の続きですが」

翌朝、再び二人はテーブルで向かい合っていた

ハンサム「実は、クチナシから電話がきてね」

リラ「クチナシさんから? 珍しいこともあるものですね」

既に身支度は整っており、いつでも出かけられる状態だ

ハンサム「あぁ。面白い話があるとか言ってな。聞けば、プルートの件だったんだ」

リラ「確か先週刑が執行されたと聞きましたが」

ハンサム「冷凍刑だったそうだ」

リラ「冷凍刑?? 判決は極刑のはずですよね? それじゃただのコールドスリーブじゃ…」

ハンサムはタブレットをいじるとそれをテーブルに置き、リラの方へ画面を回転させる

ハンサム「クチナシが国際警察のメインサーバーへアクセスした情報だ。相手が同僚でも、口外はしないで欲しい」

リラ「………これって」

ハンサム「そう。刑執行後、脳が取り出してある」

映されていたのは、国際警察上層部のみ閲覧可能な電子書庫システムから抜き取られたデータだった

リラ「ぜったいれいど後、サイコキネシスによる脳の抽出……解剖、解析……こんなのっ」

ハンサム「そうだ、重大な倫理違反だ」

リラ「ははっ…クチナシさんも、ブラックジョークが好きですねぇ」

ハンサム「いや、事実だ」

リラ「でも、国際警察がこんなこと……それはプルートの経歴を見れば、有用な情報は手に入ることは考えられます。でも、たとえ捜査の為とはいえ、非人道的過ぎます」

ハンサム「私もそこが気になっているんだ」

リラ「やはり、あの噂は本当のようですね…」
 ▼ 29 ダック@アクロママシーン 19/01/01 21:20:44 ID:MbpcXiy. [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
近年、新たなポケモンの発見、研究が進むにつれポケモンと人間との関わりはますます深まってきている

中でもポケモントレーナーを志す者が増え続けており、ポケモンリーグを新設する地方も増えてきている

だがそれに伴い、ポケモンに関連した犯罪も増加傾向にあった。その中でもロケット団やアクア団・マグマ団、プラズマ団、そしてギンガ団など、テロ勢力と成りかねない大きな組織の台頭

数ヶ月前には、ポケモンリーグが新設されたばかりのアローラ地方において、某法人が大きなテロ組織を築こうとしたところを、初代チャンピオンの手を借りてハンサム達が阻止したばかりだった

ポケモンの保護に関する法律や制度などは年々整備されつつあるが、こういったことを起因として国際警察内部において一つの噂が広がりつつあった

それは、命の重きが人間ではなくポケモンに偏りつつあるということだ

捕らえたポケモン犯罪者に対する過剰な尋問や厳罰傾向などだ。公表される書面上では倫理的に問題ないものとなっているが、事実は違うのではないか、というものだ

ハンサム「私もあまり信じたくはないんだが」

リラ「だからってこれはやり過ぎでしょう?」

ハンサム「上層部内での情報だからな、バレなきゃOKなんだろう」

リラ「………」

ハンサム「それで、そのことが今回のギンガ団残党の動きと何か関係がないかと思ってな。昨夜はプルートの経歴を一から遡ってたわけなんだ」

リラ「………それで?」

呆然とした思考を深呼吸で整え、椅子にしっかりかけ直す

ハンサム「昨夜はアルコールが入ってたからな。今日改めて見返していくつもりだ」

リラ「そうだったんですか。………それにしても、ハッキングなんてクチナシさんこそ犯罪者じゃないですか…」

ハンサム「ボスは? どうする?」

リラ「他の町の窃盗現場を回ってみようと考えています」

ハンサム「うむ。私も資料の確認が終わったら出るよ。昨日話していなかったが、窃盗した電子機器の売却現場を見た市民がいるというんだ」

リラ「それを早く言ってくださいよっ!」

ハンサム「すまん…昨日は酔ってたからついな…」

リラ「はぁ……じゃあ後程連絡を」

ハンサム「了解」
 ▼ 30 ードラ@クリティカット 19/01/01 21:31:35 ID:v70QYlWg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 31 ダツボミ@ウタンのみ 19/01/01 21:54:29 ID:FGF2WEFA NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
面白い
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 ▼ 32 ーフィ@ペアチケット 19/01/03 23:20:28 ID:RtsE5tSA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 33 ガアブソル@ひでんのくすり 19/01/03 23:59:13 ID:Sr0EaiMk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 34 ャモメ@ふるびたかいず 19/01/07 20:48:18 ID:pGP2pSz6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
ミオシティなどを周ったが、特に新たな情報はなかった

リラ「噂、本当なのかしら…」

次の街への移動の為、手持ちのラティオスの背中に乗って空を飛ぶ

リラ「………」

国際警察はリラがこの「世界」にやってきてからの全てだった。それまでの記憶が失われている中、自分を受け入れてくれた拠り所

勿論自分がFALLであることがその所以であることも知っているが、それ以上にハンサムを始め周囲の人間達は偽りない善意で自分に良くしてくれている。かけがえのない仲間達だ

そんな拠り所である組織が、腐敗していると?

確かにポケモン犯罪は年々増加傾向にありはするものの、国際警察によるその解決率、防止率も高まっている。わざわざ人間への圧力を強める必要があるのか?

一部では上層部はポケモンによって乗っ取られたのではないかとささやかれてもいるが、どうだろうか

ラティオス「………」

リラ「?」

ラティオスがこちらを見ている。視線の先を辿ると胸ポケットの中で端末の画面が光っていた

リラ「ハンサムさんから着信。ありがとうラティオス、一度降りましょう」

ラティオスが頷き、近くの道路へと着陸する

リラ「はい、リラです」

ハンサム『すまない遅くなった』

リラ「いえ」

ハンサム『ボスの状況は?』

リラ「牛歩ですね。ハンサムさんは?」

ハンサム『いやぁ、こちらも。やはり歳だな、頭が回らん』

リラ「またそれですか? まだまだ若いんですから、自信持ってくださいよ」

ハンサム『ボスなどに比べれば充分老けてるさ』

リラ(若い、か…)

自分のリラという名前、そして生年月日はこの「世界」で目覚めた時服のポケットに入っていたトレーナーカードで知った。色はゴールド、顔写真が剥がれて無くなっていたから本当にそれが自分のものなのかは定かではない。だが、そのカードにどこか懐かしさを覚えそれが自分なのだと、なんとなく思った。

他にも懐かしさを感じたことがある。アローラ地方の事件解決後の有休中に訪れたバトルツリーでのことだった

ただひたすらに敵を倒す。倒した分だけ登り、ポイントをもらう。次々と倒していく感覚、勝利の快感……

アローラの初代チャンピオンとも出会ったが、返り討ちにしたのは良い思い出だ

リラ「それで、売却現場というのは?」

ハンサム『ノモセシティだ』
 ▼ 35 ンナ@ダークメモリ 19/01/07 21:27:56 ID:WjCsAfyw NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 36 ロピウス@たべのこし 19/01/07 21:55:48 ID:pGP2pSz6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハンサム『数週間前だったか、場所は港。そこに偶然いた釣り人がコンテナの運搬光景を見たそうだ。見た目は普通の運送業者のようだったが、コンテナに奴等のマークがあったらしい』

リラ「売却相手は?」

ハンサム『奴等だと分かった釣り人はそのまま警察へ駆けたそうだ。警察と共に戻った時には、もう奴等はいなかったという』

リラ「そうですか」

ハンサム『以来地元警察は港での張り込みを続けているそうだが、どうやら奴等は場所を変えたらしい』

リラ「現場に他の手がかりは?」

ハンサム『目ぼしいものはなかったそうだが、今から向かうのはアリだろうな』

リラ「場所を変えたんですよね?」

ハンサム『少し調べたんだが、その日は各地方からの定期輸送船が来る日だったらしい。恐らく他の地方の業者とのやり取りだったのだろうな。そして次回は今日なんだよ』

リラ「なるほど………地元警察へは?」

ハンサム『勿論連絡はしてある。私はこの後打ち合わせに向かう予定だよ』

リラ「………なんだか私だけ置いてけぼりじゃないですかぁ?」

ハンサム『まあ、一応私の方がこの地方には慣れているしな、任せて欲しい』

自信ありげな声だ

リラ「そしたら、私はひとまず先にノモセに向かいますね」

ハンサム『了解』

ハンサムとの通話を切ると、大きな溜め息が出た

リラ「なんだかここに来てからはペースが狂いっぱなしだわ……」

ラティオスが不思議そうにこちらを見ている

リラ「……考えても仕方ないか。さ、行きましょうか」

再びラティオスの背中に乗ると、ノモセシティへと飛んだ
 ▼ 37 ーブシン@つかまえポン 19/01/08 18:08:03 ID:kNqcnERo NGネーム登録 NGID登録 報告
ノモセシティの前で着陸し、ラティオスをボールへと戻す

空から港へ直行しても良いのだが、ラティオス自体がとても珍しいポケモンである為、街の上空を飛ぶのは不要な注目を浴びてしまう可能性があること。空から港へ近づくことで下手に敵に見つかる可能性を考慮してのことだ

ハンサムとの合流にはまだ時間がある。少しだけ街中を歩いてみることにした

リラ「なんだかジメジメするわね」

今日は快晴だし季節的にも空気が乾燥するはずだが、街中がジメジメしている

街の案内図を見つけると、北の方に大湿原があるという

リラ「……そういうことね」

ジメジメの原因を知り納得する

リラ「へぇ、サファリゾーンみたいなのがこの地方にもあるのね」

大湿原では有料でポケモンの捕獲が行えるという。リラはここでもどこか懐かしい感覚を覚えた

リラ「せっかくだし見学にでも行ってみようかしら…」

大湿原までここからそう遠くはない。時間的にも問題ないだらうと、リラは大湿原の方へと歩き出した

大湿原に着くと、ジメジメさがさらに増した

リラ「見学だけとかってできますか?」

「えぇ大丈夫ですよ。ただし、あくまでポケモンの捕獲がメインですので、見学の場合はお持ちのモンスターボールをお預かりいたします」

手持ちのモンスターボールを受付に預けて大湿原に入る。見学用のコースがあるのでそちらへ足を進めた

「くっそぉ、また逃げられたっ」

「待ってー、マリルちゃん待ってー」

ポケモンを捕まえるのに苦戦するトレーナーもいれば、可愛いポケモンを見つけて戯れているトレーナーもいる。ポケモンの数も多いし、見学用のコースを歩いているだけでも充分楽しめた

「もしかして、リラさんですか?」

遠くできのみを食べるポケモンの姿に見入っていると、誰かから声をかけられた

リラ「! アオイさん!?」

アオイ「どうも、偶然? ですかね?」

振り向くと、私服のアオイが立っていた
 ▼ 38 オスバメ@あいいろのたま 19/01/08 21:14:32 ID:T5goRXkg [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
アオイ「どうしました? そんな驚いた顔して」

リラ「いえ………ちょっとすごい偶然だなって」

アオイ「そうですね、昨日も二度だったし、確かにすごい」

俯きながら目を閉じてアオイは苦笑する

リラ「私服ってことは、今日はお休みですか?」

アオイ「えぇ。流石に出張の次の日くらい休みたいですから………。リラさんは、捜査?」

リラ「の、途中休憩かしらね」

アオイ「ここ、良いですよね、なんだか落ち着く」

アオイが先に進み出したので、リラも少し後ろを続く

リラ「よく来るんですか?」

アオイ「まあ、仕事に行き詰まったりした時とかにですね。今日は湖の方に用事があって、その帰りになんとなく寄ったんですよ」

リラ「湖というと、ここから北の?」

アオイ「えぇ。知ってます? シンオウにある三つの湖にはそれぞれ伝説のポケモンがいるんですよ」

リラ「仕事ですから、ここに来る前職場で」

アオイ「そういえば、噂のギンガ団はその三匹を使うことで新しい宇宙を作ろうとしたそうですね」

リラ「らしいですね、随分苦しめたそうで……可哀想な話です」

アオイ「えぇ、全く………」

アオイがポケモンの方へ顔を逸らしたのでその時の表情は見えなかったが、どこか暗い口調だ

アオイ「おまけにそんなことをした張本人は謎のポケモンと共に何処かに消えたとか。………国際警察ではそこらへん、どうなんです?」

リラ「どうって?」

アオイ「ギンガ団のボス、アカギでしたっけ? 何処に消えたのか、謎のポケモンって?」

やりのはしらでのギンガ団事件については既にメデイアでも報じられている。シンオウの元チャンピオン・シロナがアカギは謎のポケモンと共に消えたという証言をし、当時様々な方面で話題となった。特にオカルト好きを中心にテンガン山に登る者が増えたという

国際警察ではシロナ、そして現チャンピオンの少年からの証言により「やぶれたせかい」が存在すること、そこにギラティナが存在するという情報を得ている。メデイアへの公開はしていない為一般には知られていないが、国際警察内の専門機関による研究が進められている

しかし、そもそも「やぶれたせかい」とは何処にあるのか、どうすれば辿り着けるのかなどについては未だ不明だ。生還した二人は知っているようだが黙秘している。じゃあなんで教えたんだよ! と機関も憤慨しているが、二人はそれを無視した

リラ「さあ、私にも詳しいことは…」

半分は機密事項なので話せないから、もう半分は本音だ

アオイ「ま、知ってても話せませんよね…」

つまらないな…という風にアオイは肩を落とした

アオイ「あのニュースを見て以来私なりに考えてみたんですが、アカギという男はこの世界の反対側に行ったんじゃないでしょうか?」

リラ「この世界の、反対側?」
 ▼ 39 ャモメ@ジュカインナイト 19/01/08 21:31:54 ID:T5goRXkg [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
アオイ「そもそも新しい宇宙って本当に作れるんですかね。この宇宙の中にまた宇宙を作っても、その宇宙の外側は元の宇宙でしょう?」

リラ「アカギは、今の宇宙を全てその新しい宇宙に上書きしようとしたんじゃないですかね」

アオイ「確かにそうですよ。でも、じゃあこの宇宙の全てを上書きすることってできるんでしょうか? 今も宇宙は光の速さで広がり続けてるわけで、宇宙の中心は? 一番端っこは? 誰にも分からないじゃないですか」

リラ「だから、反対側?」

アオイ「えぇ。アカギが作った宇宙の入り口は、この世界とは反対側の宇宙だったんじゃないですかね。こちらが光なら、反対側の宇宙は影のような…。影の部分で全てを覆う。そうすれば、全てが無になる」

リラ「なるほど…」

アオイの鋭さに思わず感嘆してしまう。実際、「やぶれせかい」の定義を当てている

リラ「なかなか考えますね」

アオイ「いやいや、ただの妄想ですよ?」

アオイがまた苦笑したところで、コースの出口に辿り着く

アオイ「これから、捜査に戻るんですか?」

リラ「えぇ、ちょっと張り込みを」

受付からモンスターボールを受け取りながら話す

アオイ「良ければ私も何かお手伝いしましょうか?」

リラ「アオイさんが? 流石にそれは…」

アオイ「私はただの一般人ですが、それ以前に…」

アオイが自分のモンスターボールをこちらに掲げる

アオイ「一人のポケモントレーナーですから、お役に立ちますよ?」
 ▼ 40 ルー@ロックメモリ 19/01/08 22:03:00 ID:/OPgSqag NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 41 イリーフ@エレクトロメモリ 19/01/09 20:57:22 ID:tvQkKpbA NGネーム登録 NGID登録 報告
港付近に着くと端末で港のマップを確認する

ノモセシティの東側に位置する港は縦長の構造で、北には停泊所と輸送艇用のヘリポートが二つ、南には同じ大きさのヘリポートが一つ配置されていた

リラ「目撃情報があったのは北側だけど」

アオイ「合流地点もそっちですよね?」

未だにアオイを同行させることにあまり賛成できないでいるが、シンオウのバッジ八つにバトルフロンティアの全ての金プリントを見せられれば反対はしづらかった。本物ならばの話だが…

リラ「えぇ。港の作業員達の詰所の付近、ここね」

停泊所近くの四角のマークを指で示す

リラ「少し早いけど、行きましょうか」

アオイが頷き、二人は詰所へ移動する

作業員の話では今日の輸送船の停泊数は三つ、輸送艇の停泊数は五つだそうだ。これからの重労働に向け、詰所内外のあちこちで作業員達が忙しなくコンテナの搬送準備をしている

リラ「特に変わったコンテナは無さそうね」

目の前を往来するコンテナを眺めてそう呟く

アオイ「こんなにうるさく作業してる場所で釣りだなんて、どうなんでしょうね」

Gマークの入ったコンテナを見たという釣り人のことをアオイが不思議がる

リラ「作業が始まるまではとても静かだそうなの。始まったら帰り支度をするそうよ。その時だったみたいね」

アオイ「なるほど………あっ」

アオイが一つのコンテナに目を止めた

リラ「どうしました?」

アオイ「あそこ、違いますかね」

五メートル程離れた先、台車に乗せたコンテナを運ぶ男が見える。見た目は周りの作業員と変わらないが、

アオイ「ぱっとは見えないけど、ほら」

リラ「あっ」

作業員の胸部まで高さのある直方体のコンテナ。男の身体で隠れている面に、あのマークが小さく見えた

アオイ「追いますか?」

リラ「うーん…」

合流まであと数分だが…

リラ「待っていたら、逃げられそうね………行きましょう。但し、ここからはおしゃべりはなしよ?」

アオイ「了解しました」
 ▼ 42 ママ@ちかのカギ 19/01/12 22:40:04 ID:4NPUHODs NGネーム登録 NGID登録 報告
支援だ!
 ▼ 43 ィアンシー@もえぎいろのたま 19/01/16 18:14:51 ID:FIHIB0gE NGネーム登録 NGID登録 報告
物陰に隠れながら男とコンテナを追う。どうやら南側のヘリポートへ向かうようだ

リラ(南側はあと三時間しないと輸送艇は来ないはず……)

その時だ

「あ〜〜リングは〜〜おれの〜〜うみ〜〜」

突然のことで驚いたリラは物音を立てそうになるのを必死に抑えた。視線を向けると、桟橋から海に向かって気持ち良さそうに歌う人影が見える

リラ(覆面?)

平日の昼間にこんなところに覆面の男?? 我々の存在に気づいた敵によるトラップ?? それとも本物の不審者??

アオイ「この街のジムリーダーですよ」

困惑するリラにアオイがささやきかける

リラ「ジ、ジムリーダー…?」

あんなジムリーダーがいるのかという驚きに加えて、アオイに耳元でささやかれたことへの緊張が重なり完全に容量オーバーになる

アオイ「今は前の男を」

アオイに促されて我に返る

リラ「え…えぇ…!」

程なくして南側のヘリポートへと辿り着く。男はヘリポートの片隅で停まると時計を確認する

アオイ「取り押さえないんですか?」

リラ「まだよ。売却先が現れてから」

アオイ「敵の数は少ない方がいいんじゃないですか?」

リラ「得られる情報も得られる方が良いわ。優先度ではそちらが上なの。それに、応援が着くのももうすぐだから、たとえ数が増えても大丈夫なはず」

アオイ「なるほど」

リラ「もしもの時は、あなたのことも頼りにしてます」

アオイ「任せて下さい」

遠くの空からエンジン音が聞こえる

リラ(来たわね…)

小型の飛行艇がこちらへ近づいてくる。リラは胸ポケットにさしたボールペンのキャップをカチッと押す。小型のビデオカメラだ

飛行艇がヘリポートに着陸する。側面にはアルファベットが四つ時計回りに並んでおり、その中央に星のマークがある

リラ(あのマーク、どこかで…)

後部のハッチが開き、男が一人降りてきた
 ▼ 44 リキテル@つきのいし 19/01/16 20:43:51 ID:GTY6nYn. [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「つけられてないだろうな」

「大丈夫だろ、この前のは釣り人のせいだ」

「よし、積み込め」

男に促され作業員の方が飛行艇にコンテナを積み込もうとする

リラ「今ねっ」

すかさず物陰から飛び出す。アオイもそれに続く

リラ「あなた達! 止まりなさい!」

男達へ駆けながらモンスターボールを投げる。現れたラティオスも男達へ突進する

「なっ! 畜生!」

飛行艇から出てきた男が言うと自分のモンスターボールを放りながらコックピットへと駆ける

リラ「サイコキネシス!」

モンスターボールから現れたゴルバットに対し技を放つ

「やろぉっ!」

作業員の方はコンテナから離れ、一目散に逃げ出す

アオイ「いかせんっ」

アオイもボールを放る、ドクロッグが現れる

「!」

アオイの声に作業員が振り返る。一瞬その顔が凍りついたが、再び向き直り全力で走る

が、ドクロッグがすぐさま追いつき作業員の背中に突きを入れた

「がっ…!」

作業員は衝撃で前に倒れ気絶した。背中にドクロッグが飛び乗り作業員を抑える

リラ「くっ! 飛行艇がっ」

リラとラティオスはゴルバットの処理に手間取っていた。動きが素早くなかなか技を当てられない。その間にハッチが閉まり、飛行艇は離陸しようとしていた

リラ「そいつは無視してっ! コックピットにまわるのよ!」

ラティオスはゴルバットを突っ切りコックピットへと向かう

「くろいきり!!」

男の合図でゴルバットがくろいきりを吐くと、瞬く間にリラとラティオスの視界がブラックアウトする
 ▼ 45 ニスズメ@ヘビーボール 19/01/16 20:44:22 ID:GTY6nYn. [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
リラ「しまっ! りゅうのはどうで払って!」

ラティオスがりゅうのはどうを放ちながら一回転する、くろいきりが払われていく

リラ「っ……! 飛行艇は」

きりを手で払いながら飛行艇の位置を確かめる

リラ「………逃げられたか」

視界が戻る頃には、飛行艇は遥か彼方へと達っていた

アオイ「追いますか?」

アオイが駆け寄り言う

リラ「いいえ、深追いは禁物よ」

ドクロッグが作業員を引きずりながらやってきた

リラ「一人確保できたんだもの、充分な収穫よ。本当にありがとう」

アオイ「これぐらい」

ハンサム「おーーい!」

港の北側からハンサムと数人の警官が駆けてきた

ハンサム「状況は!?」

リラ「下っ端を一人、確保したわ」

ハンサム「すまない、遅れて」

リラ「いえ」

ハンサム「ん? 君は?」

リラ「あ、昨日話した」

アオイ「アオイです」

ハンサム「あぁ、君が」

ハンサムはそこでアオイの顔をまじまじと見つめる

リラ「どうかしました?」

ハンサム「いや、君をどこかで見たような…」

アオイ「?」

ハンサム「……ま、人違いだろう」

リラ「とりあえずこの男を運びましょう」

ハンサム「あぁ」
 ▼ 46 ラス@エレキシード 19/02/19 18:32:45 ID:NU5wZZD6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 47 ラブ@たいようのいし 19/03/14 07:57:14 ID:hNFER.l. NGネーム登録 NGID登録 報告
保守
 ▼ 48 ョンチー@レンブのみ 19/04/09 18:18:01 ID:LPVE0Szc [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「だからさぁ、頼まれただけだって」

取調室。出前のうどんを食べ終えた下っ端が満腹顔で答える

「誰に頼まれたのか、言えないかなぁ〜?」

パイプ椅子で向かい合う初老の刑事がにこやかに対応しているのを、リラは壁際に立って眺めていた

リラ(もう……完全に舐められてるじゃないですか…)

ノモセの署に着き取調べにかかろうとしたところ、『私に任せてください』とこの刑事が取調役に立候補してきたのだ

なんでもシンオウでは有名な刑事らしく、その穏和さと優しさが被疑者の心を揺らし自白を促すのだとか……

ギンガ団の真の目的が見えない以上、特に地元警察に秘密で取調べを行う必要はないし、昨夜歓迎の盃を受けたハンサムとしてはやはり断りづらかったので、二人はその立候補を受け入れた

なのだが…

名前や年齢など簡単な質問の後本題に入ったが、下っ端がなかなか口を開かないので刑事は出前でうどんを取り、与えた

『暖かくて美味しいものを食べさせれば、みんなちゃんと心を開いてくれるものですよ』

リラ(…………)

うどんを出されるや否や、下っ端は勢いよくそれを食べ出した。刑事の質問にも『だから知らないって』の一点張り。悪気も見せずに一気に胃へと流し込んでいく

そして今に至る

すでに数時間だ……

リラ(これは長期戦になりそうね……)
 ▼ 49 ガオニゴーリ@こだいのせきぞう 19/04/09 18:39:34 ID:LPVE0Szc [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
アオイ「ここにいていいんですかね? 私」

取調室の外、廊下に並ぶ長椅子の一つにハンサムとアオイは腰掛けていた

ハンサム「ん? あぁ……ボスの許可は下りているからな、問題ないさ」

自分の端末で何かを読んでいたハンサムはアオイの問いかけに気づくのに少し時間がかかった

ハンサム「君のおかげであの男を捕まえることができたんだ。今回のことについて知る権利はあると思うぞ?」

アオイ「そんなものですか?」

ハンサム「あぁ。それに、君のような若者の協力は、得てして事件を早急な解決へと導くものだよ」

アオイ「はあ」

ハンサム「私やボスは、以前幾度かそういうことがあったんだよ」

アオイ「そうなんですか?」

ハンサム「このシンオウでだってそうさ。実は数年前にギンガ団の計画をくじいたのも、恥ずかしながら一人の少年の協力があったからなんだ」

ハンサムが遠くを見るような目で語る

アオイも、その少年のことは知っている

自分達のアジトに単身乗り込んできたり、爆破した湖に乗り込んできたり、ことごとく邪魔をされた……

新たな計画を発動させた今奴への憎しみは無いが警戒は続けなければならない

ハンサム「ところで、君はボスをどう思う?」

突然ハンサムが深妙な視線をこちらに向けてきた

アオイ「どう、というと?」

ハンサム「いやね、最近のボスは……」

そこで廊下の向こうから数人の男達がやってきた
 ▼ 50 ッツー@ミストシード 19/04/09 21:27:59 ID:G90wey8Y NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
更新きたー
ありがとう!支援
 ▼ 51 ビゴン@ダークストーン 19/04/09 21:54:32 ID:LPVE0Szc [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「おやおやハンサムさん、こんなところで一服ですかな?」

三人の男達の真ん中、白髪の老人がハンサムに声をかける

「いけませんなぁ、喫煙は喫煙スペースでやって頂かなければ」

ハンサム「ジェイムズ…」

ハンサム達の前まで来ると立ち止まる。三人共アオイには見向きもしない

ハンサム「生憎だが煙を貯蓄しにたくさんのドガースがやってきてね。喫煙スペースは爆破されたよ」

ジェイムズ「ほう、それは興味深いですなぁ」

ハンサム「で、あなたが何故ここに?」

ジェイムズ「聞いてませんかな? 本部からの命令ですよ、捜査を進めろとね」

ハンサム「それは私のチームの任務のはずだろう?」

ハンサムの言葉を無視するように、ジェイムズ達は取調室へと入っていく

中では未だに無意味な問答が続いていた

ジェイムズ「どうですかなリラさん、進展は?」

突然現れたジェイムズ達に、そこにいた全員が動揺する

リラ「ジェイムズ!? どうしてあなたが?」

ジェイムズ「私は『進展は?』と聞いているのですが?」

リラ「っ………特には」

ジェイムズ「そうですか……。相変わらず甘いですなぁ、あなた方は」

従える男の一人に視線を向けると、男は満腹顔の下っ端に近づいていく
 ▼ 52 ェルダー@きちょうなホネ 19/04/09 21:55:07 ID:LPVE0Szc [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ん? なんですか、何言われたって、言わないぜ?」

下っ端の言葉を無視して男は下っ端の手首を掴むと、その小指を通常とは逆の可動範囲へと折り曲げた

ごっ!

骨の折れる鈍い音と、痛みによる下っ端の叫びだけが部屋を埋め尽くした

ハンサム「おい!! ジェイムズ!!!」

ジェイムズ「あなた達は黙っていなさい」

リラ「これは許されないわ!」

二人を無視して、ジェイムズは続ける

ジェイムズ「喋りなさい。小指の一本や二本ならいつでも元に戻りますが、場合によっては…」

下っ端「やめてくれっ!! 頼むっ!! 話すからっ!! やめてくれっ!!」

ハンサム「おい! お前にその権利はないはずだ!」

ハンサムがジェイムズの肩を掴む。ジェイムズは冷ややかな視線を向けた

ジェイムズ「あなた達はすでにこの件の捜査からは外されています。ご退室を」

もう一人の男がハンサム達に一枚の書類を提示する

ハンサム「なんだというんだ!!?」

男から書類をかすめ取り内容を確認する

書類は国際警察内で運用されている辞令書。記されていたのは、

ハンサム「本捜査に関し、捜査一課への業務移譲……」

リラ「捜査二課の二名については速やかに本部へ帰還せよ……ですって?」

ハンサム「どういうことだ…」
 ▼ 53 ァイアロー@ポケトレ 19/04/09 22:46:18 ID:5ZBgL2J6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
めっちゃ引き込まれる

支援
 ▼ 54 ビルドン@コダックじょうろ 19/04/10 18:49:50 ID:SVDcqK8A [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
宿に着いたのは日が暮れた頃だった

ハンサム「しかし、ジェイムズが来るとは」

リラとアオイは椅子にかけ、ハンサムはベッドに腰掛けていた

リラ「なんだかきな臭くなる予感がしますね」

ハンサム「まーだアローラの件を根に持ってるんだろうな、あの態度は」

アオイ「………あの人、何かあるんですか?」

アオイが躊躇いがちに口を出してみる

ハンサムがリラへと視線を向けると、彼女は少し考えてから答える

リラ「まあ、色々。個人情報だから詳しくは口外はできないんですけど………以前彼の故郷であるアローラ地方に捜査派遣されたことがあるんですよ」

ハンサム「自分の故郷だからぜひ自分にやらせてくれとあいつは上に掛け合ったが、叶わなかったんだ。それを根に持ってるのさ」

リラ「根に持たれることは今に始まった話じゃないんですけど………なかなかうまが合わないんですよね、あの人とは」

アオイ「なるほど」

ハンサム「それにしても早過ぎではないか、何もかも」

リラ「えぇ、私達がこちらに来てからまだ二日も経っていないし、あの男を押さえてからジェイムズが現れるまでたかが五、六時間くらい……」

ハンサム「何かあるんだろうか、ここには…」

リラ「うーん……」

………

ぐー……

くぐもった音が響く
 ▼ 55 ライガー@スピアナイト 19/04/10 18:50:18 ID:SVDcqK8A [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハンサム「……おっと……これは失礼……。つい。昼を抜いていてね…」

ハンサムの反応にリラもアオイも苦笑した

リラ「まあ、今は深く考えていても仕方ないですよね。私もお腹が空きましたし、何か食べに行きましょうか」

ハンサム「賛成だ」

リラ「あなたも、一緒にどうですか?」

アオイ「いいんですか?」

リラ「勿論。奢りますよ?」

アオイ「それは流石に申し訳ないですよ」

リラ「いえ。お礼をさせてください」

ハンサム「そうだ、私からも歓迎するよ。ぜひ一緒に。何でも食べていいぞ!」

アオイ「じゃあ、お言葉に甘えて」

リラ「あのぉ、それを言うのは私ですよぉ? 出すのは私なんですから〜」

ハンサム「おっと、またもや失礼したな」

三人は笑い、宿を出発した
 ▼ 56 バット@アシレーヌZ 19/04/11 18:13:53 ID:rQfIJbko [1/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハンサム「やはり、システムエンジニアというのは大変なのかい?」

宿から少し離れた場所にあるレストランで、三人は夕食を食べている

アオイ「そうですね。大概はネットで書かれてるような通りですよ。深夜帰りはざらです」

軽くため息をつくと、アオイはビールを口へ運ぶ。三人とも少しだがアルコールが入っていた

リラ「はあ」

アオイ「でも、こういうことを言うと失礼かもしれないですよね。自分は毎日決まった時間働けば良いけど、あなた達は常に任務なんだから」

リラ「確かに。思うようにプライベートを過ごせないことは多いですね」

ハンサム「そうだな。おかげでボスにもなかなか出会いがない…」

リラ「ちょっとハンサムさん?」

ハンサム「おっと失礼」

リラ「なかなか出会いがないのは確かですけど、ちゃんと考えてたりはするんですよ?」

ハンサム「そうなのか?」

リラ「そりゃぁ、私だって結婚とかしたいし……20代だってそろそろ折り返すんですからっ」

ハンサム「うーむ。そうだったのか。私も何か協力できれば良いのだがな」

リラ「私こそ、ハンサムさんが少し心配なところですよ」

ハンサム「私をかね?」

リラ「えぇ。あちこちで若い女の子と仲良くなるのが得意なだけだなんて、だらしない大人ですよ」

ハンサム「ひどい言い様だな……」

リラ「だってそーじゃないですかぁ。カロスにいるあの子にちゃんと連絡取ってあげてるんですかぁ?」

ハンサム「最近は……忙しくてな」

リラ「ほら、そーいうところですよ? ちゃんと一人の人を想って、身を固めてもらわないと困ります」

ハンサム「何故ボスが困るんだ?」

リラ「だって、だらしないだけで何の取り柄も無い寂れた独身のおじさんとバディだなんて、イヤですもんっ」

ハンサム「………ひどい…」

アオイは思わず吹き出してしまった
 ▼ 57 ルーラ@きょうせいギプス 19/04/11 20:44:55 ID:rQfIJbko [2/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
レストランを出るとハンサムの端末に着信が入る

ハンサム「私だ。………あぁ、明日な。………そうか、では遠慮なく」

リラ「何かありましたか?」

ハンサム「いや、ここの警察からだ。我々の本部を帰還を聞いて、お別れ会がしたいのだとさ」

リラ「大げさな」

ハンサム「それだけここは平和だし、人情ある奴が多いってことさ」

リラ「ハンサムの人望が厚いとも言えます」

ハンサム「だと、有難いがな。私は向かうが、ボスはどうする?」

リラは無意識にアオイに視線を向ける。その行動に自分で驚いてしまう

ハンサム「ま、若者で若者で楽しみたまえ。ではっ」

リラの返事を待つことなくハンサムは駆けて行った

リラ「あ、ハンサムさん!?」

アオイ「良かったんですか?」

リラ「まあ、男の人は男同士の方が楽しいでしょう、きっと」

車通りも無く、辺りは静まり返っている

リラ「………」

アオイ「………」

リラは何故だか意味不明なぎこちなさを感じる。心拍も上がってるような……いや、それはアルコールのせいだ……多分……

アオイ「楽しかったですよ。ご飯も美味しかった」

先に口を開いたのはアオイだった

リラ「でも、私とハンサムさんの話ばかりでなんだか申し訳なかったかもしれないですね」

アオイ「いや、漫才みたいで面白かったですよ?」

アオイがはにかむ

リラ「まっ、漫才!?」
 ▼ 58 リキリ@こだいのツボ 19/04/11 20:45:24 ID:rQfIJbko [3/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
アオイ「夫婦漫才というか、親子漫才?」

リラ「えぇ…周りからはそういう風に見えてるんだ…恥ずかしい…」

リラの反応にアオイの頬がますます緩む

リラ「………でも、良かったかもしれないですね」

アオイ「というと?」

リラ「あなたのその顔」

アオイ「自分の?」

リラ「えぇ、笑うと、とっても良い顔ですよ」

アオイ「そうですか」

リラ「今の、褒め言葉なんですけど?」

アオイ「おっと、これは失礼。ありがとうございます」

ぺこりと頭を下げると、互いに微笑んだ

リラ「………私達、もう友達ですかね?」

アオイ「友達……?………ええ」

リラ「じゃあここからはタメ口でいきましょう? もう」

アオイ「ええ」

何となく、二人は歩き出した。行く当てもなく、何となく。

リラ「………」

アオイ「………」

沈黙が続く。何を話せばいいのか、分からない。心拍がますます上がっているような……いや、これは運動によるものだ……きっと

アオイ「………これから、少し時間あるかな?」

アオイがまた先に口を開く。ちゃんとタメ口だ

リラ「え……えぇ」

アオイ「せっかくだから、シンオウ特有の場所に案内するよ」

リラ「特有の? 観光地?」

アオイ「観光地のような、そうじゃないような」

リラ「?」

アオイは自分の手荷物を探ると、二つのキットを取り出した
 ▼ 59 レキッド@ヒコウZ 19/04/11 21:15:31 ID:rQfIJbko [4/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
リラ「それは?」

アオイ「たんけんセット、知らないかな?」

リラ「聞いたことはあるけど、見るのは初めて」

アオイ「と、いうわけで」

リラ「ちかつうろね?」

アオイ「たんけんセットが初めてなら、行くのも初めてだ?」

リラ「ええ」

アオイ「なら良かった。これを腰の辺りにつけてみて」

たんけんセットの一つを受け取り、リラはアオイを真似て腰にそれを付けた

アオイ「じゃあ、行こうか」

突然アオイに手を取られ動揺してしまうが、続けて視界がぐらぐらと揺れて思考がかき消される

………………

数秒で視界が安定する。薄暗く少し狭い道に出た

リラ「ここがちかつうろ?」

アオイ「ああ」

道は舗装されているが、両壁と天井はごつごつとした石や泥砂で覆われていた

リラ「地下、なのよね? どうやって地上から移動したの?」

アオイ「このたんけんセットはケーシィのテレポートを応用して作られてるのさ」

リラもいつだったか資料を読んだことがあったが、実際に体験してみると不思議な気持ちが込み上げてきた

アオイ「ま、自分も詳しく知ってるわけじゃないけど、シンオウじゃ一般的なものさ」

リラ「そうなのね」

アオイはちらっと腕時計を確認する

アオイ「こっちだ、行こう」

アオイに続いてリラも移動する。繋いだ手はそのままだったが、初めての世界を前にリラは気を取られてそれを意識していなかった
 ▼ 60 ェローチェ@ボイスチェッカー 19/04/11 21:35:33 ID:rQfIJbko [5/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
アオイ「あ、そこ気をつけて」

リラ「え?」

反応に遅れたリラは踏み出した右足に違和感を覚えた

リラ「何か踏んだのかしら」

足を上げると、スイッチがあった

アオイ「トラップだよ」

リラ「トラップ?」

思わずその場から離れようと右にズレようとする

リラ「?」

おかしい……右にズレたはずだが、体は左に移動している……

リラ「あれ??」

アオイ「逆方向トラップだね」

リラ「どういう…うっ」

後ろに下がろうとしたが、何故か前に進み、アオイの胸にぶつかりかける。アオイがそっと受け止めた

アオイ「移動しようとした方とは逆方向に行ってしまうトラップだよ」

リラ「そんなの…」

トラップについても知ってはいたが、実際引っかかると厄介だ

アオイ「効果は一分くらいだから、少し待とうか」

リラ「ごめんなさい」

アオイ「いいんだ」
 ▼ 61 ワムラー@ポイズンメモリ 19/04/11 21:36:10 ID:rQfIJbko [6/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
リラは仕方なく動きを止める。そこでようやくアオイと手を繋いだままでいること、彼の胸がすぐ目の前にあることに気づいた

リラ「!………」

おかしい……心拍が……おかしい……

アオイ「そろそろ大丈夫かな?」

少しの沈黙の後、アオイに聞かれてハッとする

リラ「あ……ぇ、えぇ、うん、大丈夫みたい」

試しに動いてみる、大丈夫だ

アオイ「じゃあ、進もう」

再び移動を開始する

手は繋いだままだ

離そうかどうか迷いつつその手を見ていると、

アオイ「トラップ、またかかるのイヤでしょう?」

察したのか、アオイが聞いてきた

リラ「まあ」

アオイ「ここは、まあ、そういうことで」

リラ「………」

終わった………耳たぶまで発熱している………思考が死んだ………

アオイ「とか言いつつ、君にスキンシップを取りたいだけだったり」

リラ「あら、私を口説こうと??」

精一杯の返事だ

アオイ「どう受け取るかは、君次第だ」
 ▼ 62 ッキー@ソクノのみ 19/04/11 22:01:04 ID:rQfIJbko [7/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
数分歩いたところで二人は立ち止まった

アオイ「ここだな」

腕時計のように見えていたのはポケッチだと気づく

アオイはたんけんセットの小ポケットからピッケルを取り出すと、壁をカリカリと削り始めた

リラ「?」

不思議そうに見ていると、削られた壁から小さな玉が露出する

アオイ「よし」

ピッケルを元のポケットに仕舞い、その玉を壁から取り出した。別のポケットから布を取り出し、玉に付着した泥を拭き取る

アオイ「これを、君に」

リラ「綺麗な玉ね」

アオイがそっとリラの手のひらに玉をのせる。これも知っている、見るのは初めてだが。

アオイ「せっかくだから、記念に」

リラ「ありがとう」

青色の小さな玉。透き通るように綺麗だ

リラ「本当に綺麗。大切にするわ」

アオイ「シンオウじゃ珍しくはないんだけどね」

リラ「それでも、大切にする」

アオイ「そう言ってくれると嬉しいよ」

リラ「よくここにあるってわかったわね」

アオイ「ん? あぁ、ポケッチさ。埋まってるものを探すセンサーがあるんだよ」

リラ「ポケッチで? 他の地方じゃ見ない機能ね」

ポケッチは今ではシンオウに限らず様々な地方に普及しているが、センサーについては初耳だ

アオイ「シンオウじゃちかつうろは産業の一部でもあるのさ。埋まってるものを掘り出して売り買いできる。だからそういうニーズに答えて追加されたんだ。シンオウ特有だよ。そして、実はその玉も、通貨みたいなものなんだ」

リラ「へぇ」

アオイ「通貨でもあり、エネルギー源でもある」

リラ「エネルギー源?」

アオイ「ああ。………ま、最近発見されたことだから、自分もよくは知らないけどね」

リラ「そうなの」

アオイ「………そろそろ行こうか、宿まで送るよ」

リラ「ええ、ありがとう」
 ▼ 63 シギダネ@ロックメモリ 19/04/11 22:10:53 ID:rQfIJbko [8/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
少し移動してからたんけんセットを使うと、宿の前に出た

リラ「ホント、不思議な感じ」

アオイ「仕組みが判れば簡単だよ」

リラ「ええ」

未だ、手は繋いだまま

リラ「………」

アオイ「………」

リラ「………」

アオイ「………それじゃ、元気で」

アオイから手を離す

リラ「ええ、あなたも」

アオイ「連絡するよ、捜査に役立つような情報があれば」

リラ「私達がまだ今回のことに関わるのかはわからないけどね」

アオイ「それでも、連絡する」

リラ「ありがとう。気をつけてね、帰り道」

アオイ「ありがとう。実は、なんとちかつうろを歩けば意外に早道なんだ」

リラ「へぇ」

アオイ「………じゃあ」

リラ「………ええ」

アオイは微笑むと、再びたんけんセットを使い、地下へ消えた

リラ「………」

そこからベッドに入って明日へ向けて意識が無くなるまで、リラの心拍はばくばくのままだった
 ▼ 64 トカゲ@ハッサムナイト 19/04/11 22:26:58 ID:rQfIJbko [9/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
アジトへ戻ると、マーズがニヤニヤとこちらを見てきた

マーズ「随分あの女とイチャイチャしてたじゃない?」

彼女が座るデスクにはいくつかのディスプレイが並び、それぞれちかつうろの様子が映し出されている。各所に埋められた小型監視カメラの映像だ

サターン「見てたのか」

マーズ「見たくて見たんじゃないわよっ。あんたらが見せびらかしたんでしょう? このクソリアッ」

サターン「面白いことを言うな」

自分のデスクに掛け、PCで作業に移る

マーズ「あんなことまで教えてさ。気づかれても知らないわよ?」

サターン「玉のことか? 問題ないだろう。あのエネルギーを解析し切れているのは未だプルートだけだ」

マーズ「どうだかねぇ」

サターン「それより、どうやらジュピターはようやく上まで行けたようだな」

マーズ「新しいのが来たでしょう?」

サターン「あぁ、偉そうな奴だったよ」

マーズ「で、あんたの今日の成果は?」

サターン「もどりのどうくつ自体は確認できた。目視だけだが」

マーズ「目視だけ?」

サターン「周辺は霧が濃過ぎる。霧払いも殆ど無意味だった。目視できる距離までは近づけたが、辿り着けなかった」

マーズ「なるほど。んじゃ、どっちにしろプルートのデータ解析待ちってわけ」

サターン「まあ、そうだな。だが場所の特定は出来たんだ、計画の実行までもう少しだ」

マーズと話しながら頭を切り替える、サターンの自分に。

だが、どうしても、

サターン(良い顔か…)

リラに言われた言葉が浮かぶ

生の感情を押し殺してどれだけの年月が経つか……

その日は眠りに着くまでリラのことが頭を離れなかった
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