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ルージュラの恋愛シミュレーションゲーム 「超娘冷凍美ー夢 〜甘くて苦い恋の味〜」

 ▼ 1 enPNohyjRg 20/02/14 19:47:04 ID:BjUwMIkk [1/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ルージュラ 「待って!ルカリオくん!」


アタシはハート型のチョコを持っている。

今日はバレンタインデー……それすなわち!
乙女がチョコレートに想いを込めて、雄ポケモンに渡す日である!


ルカリオ「オレに何か用?」


こっちを向く顔にドキッとする。

ルカリオくんこそアタシが、
チョコを渡したい = 想いを伝えたい相手だ。


クラスで1番のイケメンで、みんなと仲がいい優等生を絵に書いたような子。
アタシとも仲良くしてくれるけれど、もう"みんな"の内の1匹では満足できないの!

だからその想いを、今ここで彼に伝える!


ルージュラ「ずっとルカリオくんのことが好きでした! このチョコ、受け取ってください!」

ルカリオ「ごめん。キミは顔がキモくて生理的にムリ」


アタシの恋は一瞬で終わった ────
 ▼ 2 enPNohyjRg 20/02/14 19:48:03 ID:BjUwMIkk [2/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

──── という夢を見たのよ。

ベッドの上で目が覚める。
あまりのショックで心臓がバックンバックン鳴っていた。

アタシはルカリオくんにフラれた。夢の中で。

幸いにも現実のアタシはまだフラれてない。


だけどまだ安心はできないわ。

なぜって?
それはさっきアタシが見たのは、ただの夢じゃないからよ。


あの夢は ── "予知夢"よ!

 ▼ 3 enPNohyjRg 20/02/14 19:48:34 ID:BjUwMIkk [3/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

どういうことって?
オーケイ。じゃあもう1度だけ説明するね?


アタシはルージュラ。
エスパーとこおりのタイプを持つ美しき雌ポケモンよ。
ときどき顔黒ギャル系ポケモンなんて呼ぶ愚か者もいるけど、
気にしちゃ負けよ。


アタシたちルージュラ族は、
みんなある特性を持って生まれてくるわ。


それは寝てる間に、近い未来を写した夢を見るチカラ。

そのチカラで世界を何度も救った……というわけではないけど。
予知夢ってのはそういうことよ。

ちなみに、見た夢が予知夢なのか否か、
それはだいたい直感でわかるわ。


その直感がアタシに告げているのよ。
「さっきのは予知夢で、このままだと現実でもフラれてしまう」と!

 ▼ 4 enPNohyjRg 20/02/14 19:49:08 ID:BjUwMIkk [4/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

アタシは次のバレンタインデーに
チョコを渡して告白するつもりだった。
相手はもちろんルカリオくんよ。

その時の未来を予知したと考えて、間違いないでしょう。


さて、
好きな相手に顔を罵られて失恋する予知夢を見ました。
そんな時はどんな気持ちになると思う?
一般的な乙女の方々なら「もうマヂ病み」「リスカしよ」と落ち込むところでしょうね。

しかしアタシはそんな小娘たちとは違う!

生まれつき予知能力を持ってるのよ?
不幸な未来を見ることなんて慣れっこだわ!


それでも性格が良いルカリオくんに
『顔がキモい』&『生理的にムリ』
なんて罵倒されたのはとても悲しいけど……。

 ▼ 5 enPNohyjRg 20/02/14 19:49:45 ID:BjUwMIkk [5/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


だけど諦めるには至らないわ。

失恋する未来が見えたからって、
現実でもそうなるとは限らないもの!


予知の中のアタシは "予知夢を見る前のアタシ" だから、
予知夢を見た後の "今のアタシ" とは違う。

未来は変えられるのよ。


金色の髪に手ぐしを入れながら、カレンダーを見る。

今日の日付は1月14日だった。
2月14日=バレンタインデーまで、あと1ヶ月ある。


アタシはこの1ヶ月の間に、
ルカリオくんからの好感度を上げまくる。

フラれる未来を変えて、必ず告白を成功させてみせる!
 ▼ 6 enPNohyjRg 20/02/14 20:02:31 ID:BjUwMIkk [6/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


アタシたちは学生で、毎日学校に通っているわ。
通学路の途中で親友のクサイハナと合流して一緒に登校するの。


ルージュラ「バレンタインまで、あと1ヶ月ね」

クサイハナ「ルージュラは誰かにチョコ渡すの?」

ルージュラ「もちろん。クサイハナもそうでしょ?」

クサイハナ「同じ相手だったりして」

ルージュラ「まっさかー……」


若干空気がピリつく。
クラスの女子はみんなルカリオくんが好きだし。
彼を狙う女子の中にクサイハナがいても不思議ではない。

だとすればことバレンタインにおいては、
親友もライバルである。
 ▼ 7 enPNohyjRg 20/02/14 20:03:17 ID:BjUwMIkk [7/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

2匹の思惑が火花を散らす通学路に、
見慣れないポケモンが乱入してきた。


ジバコイル「オヤ? 登校中でショーカ?」

ルージュラ「そうですけど」

クサイハナ「……あなたは?」

ジバコイル「ワタシはこの付近を担当しているケーサツのものデス」


ケーサツ、警察……。
聞いたことはあるけど、あまり馴染みない存在だった。
理由は簡単でこの近所は平和だからだ。

その警察がなぜここに?


ジバコイル「ジツは最近この辺りで、学生のポケモンが行方不明になる事件が起きまして……」

ルージュラ「えぇ!? 初めて聞きました」

クサイハナ「そういえばこのあいだ学校で、謎のポケモンが近所を彷徨いてるって噂を聞きましたけど、もしかしてなにか関係が?」

ジバコイル「ハイ。ちょうどそのウワサと時期が合致するため、関連性があるのではないカト。今は誘拐事件とみて、調査とパトロールを続けておりマス」


クサイハナの証言はアタシも聞いたことがある。

何でもこののどかな町に、
巨大な伝説のポケモンが現れたとか、現れてないとか……。

とはいえ伝説のポケモンの噂なんて、
アタシはまるで信じていない。

 ▼ 8 enPNohyjRg 20/02/14 20:03:45 ID:BjUwMIkk [8/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

警察のジバコイルさんは
「行方不明者は君たちと同じくらいの年齢のポケモンだカラ、くれぐれも気をつけてネ」
と言い残してパトロールに戻っていく。


ルージュラ「この辺りも物騒になったんだねー」

クサイハナ「ま、大丈夫でしょ」

ルージュラ「そう? 怖くない?」

クサイハナ「だって私たちには "さいみんじゅつ" と "ねむりごな" があるじゃない」


その2つはアタシとクサイハナが使える。
ポケモンを眠らせるわざだ。


クサイハナ「何が襲ってきても、2匹で協力して眠らせちゃえば楽勝よ」

ルージュラ「ふふっ、たしかに」


今は不安に思っていても仕方ない。
いつものように談笑しながら歩いて、学校に着く。

 ▼ 9 enPNohyjRg 20/02/14 20:04:19 ID:BjUwMIkk [9/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ルカリオくんはすでに教室の席で誰かと話している。
同じクラスで、接近や様子見しやすいのはいい。

しかし彼の周りには常にたくさんのポケモンがいるのだ。
どちらかと言うとというか、
明確に日陰者なアタシとしては近づきづらい。


実際にルカリオくんを前にして、そもそも好感度を上げるって具体的にどうすればいいのかもよくわからない。そう思った。


時間はまだたくさんある。
まずはじっくり作戦を練るところから始めましょう。

そんな感じで予知夢あとの一日目は、
予知夢を見る前の生活と特に変化なかった。

一日を終えて、ベッドに寝転がる。

そしてこの夜も、予知夢を見たわ。
夢の内容はこうよ。
 ▼ 10 enPNohyjRg 20/02/14 20:04:44 ID:BjUwMIkk [10/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


────


???「うわあああ!!」


学校からの下校時のこと。
誰かの悲鳴が聞こえた。

まさかと思ってアタシは急いで声がした方に向かう。
するとその先では、ルカリオくんが謎のポケモンと戦っていた。

ルカリオくんはバトルに関してもかなりの実力者だ。しかしこの時は不意をつかれたのか。
すでに相当のダメージを受けている。


謎のポケモンは、フラフラのルカリオくんにとどめを刺すように襲いかかった。


ルージュラ「ルカリオくん! 危ない!」


アタシは思わず駆け出していた。

助けなければ!
だけどルカリオくんまでの距離を見て、
走っても間に合わないことは一目瞭然だった。

"れいとうビーム"なら遠くからでも攻撃ができる。

ダメ! それでも間に合わない!
どうしよう……!

このままじゃルカリオくんが ────

 ▼ 11 enPNohyjRg 20/02/14 20:05:25 ID:BjUwMIkk [11/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


── そこで目が覚める。

目覚めた瞬間に、
ジバコイルとクサイハナが話していたことを思い出す。

『謎のポケモンがうろついてる噂』
『近所でポケモンが行方不明になる事件』

そして今回の予知夢から言えること。

それは、このままじゃルカリオくんが危ない!
予知夢を見たなら助けるしかないわ!

 ▼ 12 enPNohyjRg 20/02/14 20:05:58 ID:BjUwMIkk [12/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

しかしここで問題になるのは、
予知夢だけでは何が起きるかは分かっても、それがいつ起きるのかはわからないことだ。


だけどその問題もちゃんと対策済みである。
伊達に17年生きていない。

まぁその対策はお母さんに教わったものなんだけどね。


その対策とは、
手首につけるアクセサリーを31種類用意することよ。ブレスレットとかね。

31個のブレスレットには、それぞれ順番を決めてある。
その順番通りに毎朝別のブレスレットを左手首に通す。
そうすると1ヶ月で1周して同じブレスレットに辿り着くという寸法よ。

こうすれば予知夢の中のアタシが付けているブレスレットの種類で、
いつ起きる予知なのかを予想できるわ。


そして今日の予知夢では赤いブレスレットだった。
それを付ける日に事件は起きる。

順番通りに数えると、
次にその赤いブレスレットを付ける日は……

……今日だ。


う、嘘でしょ……。


 ▼ 13 enPNohyjRg 20/02/14 20:13:08 ID:BjUwMIkk [13/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

今日のどこかのタイミングで、
ルカリオくんの命が危険にさらされるとわかった。


いきなりのことで心の準備が出来てないけど、これはチャンスでもある。

彼がピンチの時、
アタシが颯爽と現れて命を助ければ、
好感度急上昇 & 一目惚れ間違いなしよ!


アタシはいつもより大きく膨れたバッグを背負った。
ふと、自分の部屋に振り向く。

ドアノブに掛けた手を離して、
枕元に飾った写真を手を伸ばした。


その中には
幼い頃のアタシと、その頭を大きな手で撫でてるポケモンがいた。

写真を胸に当てて目を閉じる。
勇気を貰いたい時は、こうしてあのポケモンのことを思い出すようにしている。


大丈夫。アタシなら出来る。

いつもより少し早く玄関の扉を開けた。
 ▼ 14 enPNohyjRg 20/02/14 20:13:29 ID:BjUwMIkk [14/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

予知夢の出来事が今日とわかったのはいいものの。
何時何分に起きるかまでは流石にわからない。

ルカリオくんを守るためには、いつ事件が起きてもいいように常に見守るしかないだろう。


早めに家を出て、
ルカリオくんの家の近くまで来て、
彼が登校を始めたらその後を尾ける。


これはストーカーではない。
彼の命を守るために必要なことなのだ。
そう、これは彼のためである。

なので
決してストーカーではないことをご理解いただきたい。


そうやってルカリオくんを1日中尾行したものの……。

結局学校が終わる今になっても
何事もなく平和なため、だんだんストーカーの罪悪感が出てきた。

もしかしたら同じブレスレットの順番が来る
1ヶ月後のことを予知したのかもしれない。
しかしまだ下校が残っている。
とりあえず家に帰るところまでは見届けよう。

 ▼ 15 enPNohyjRg 20/02/14 20:14:03 ID:BjUwMIkk [15/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

なかば疲れながら、ルカリオくんの下校をストーキングする。


── ユラ……

──── ユラユラ……

ルージュラ「!?」


背後に何者かの気配を感じ、慌てて振り向く。
アタシが来た道には誰もいない。

誰かの気配に焦るのは、犯行の意識があるからだろうか。

実際のところ。
もし今のアタシが誰かに見られたら、
あらぬ誤解されてしまうだろう。

いや、ルカリオくんに黙って尾行してるのは事実なので、誤解ですらない気がする。


しかし周りにはアタシ以外誰もいなかった。
少しホットする。
いや、待って。

もしかしたらさっきの気配の正体がルカリオくんを襲うポケモンなのかも……!?

 ▼ 16 enPNohyjRg 20/02/14 20:14:42 ID:BjUwMIkk [16/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

そんな背後に気をとられ、
ルカリオくんから目を離していた。

その刹那だった……。


???「グオオオオオ〜!!」


聞いたこともないような、荒々しい雄叫びが聞こえた。


しまったと思ってアタシは急いで声がした方に向かう。
するとその先では、ルカリオくんが謎の巨大なポケモンと対峙していた。

しかしルカリオくんはまだ怪我をしていない。
それに相手のポケモンの姿も夢の中のそれとは別ものだった。

ただしその別のポケモンは、
昔ポケモンの種族図鑑で見たことがあった。

確か名前は……
伝説のポケモン "テラキオン" だ。

 ▼ 17 enPNohyjRg 20/02/14 20:15:08 ID:BjUwMIkk [17/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

どうやら例の噂は本当だったらしい。
何故こんなところに伝説のポケモンがいるのか。
そもそも予知夢と違うのはどういうことか。

疑問は山ほどある。

だけど今は考えてる場合じゃない!


テラキオンは凶暴に唸って、その巨体でルカリオくんに襲いかかった。


ルージュラ「ルカリオくん! 危ない!」


しかしルカリオくんはどういうわけか、
迎撃や避ける様子もなく棒立ちしたままだ。

アタシはすでに駆け出している。


助けなければ!
ルカリオくんまでの距離……今回は間に合う!


テラキオンの巨体がぶつかる寸前で、ルカリオくんを力いっぱい押しのける。


ルカリオ「ルージュラ!?」

ルージュラ「危なかった! 大丈夫?」


助けた結果、
思いもよらず顔の距離が近づいてドキッとした。
 ▼ 18 enPNohyjRg 20/02/14 20:15:49 ID:BjUwMIkk [18/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

しかし息付く暇はない。
すぐ後ろでテラキオンが威嚇している。


テラキオン「グオオ〜!」

ルージュラ「きゃーっ!」


バッグがパンパンになるまで色々準備してきたのに、
それを使う余裕もなく。怖くて顔を庇う。

そもそも戦いとか得意じゃないのに、
なんで守れる気でいたんだろうアタシ。


ルカリオ「大丈夫。危ないから動かないで」

ルージュラ「え?」


アタシとテラキオンの間に立ち上がる。
とんでもない勢いで迫ってくる敵に臆する様子もなく。

腕に不思議なオーラをまとわせて、敵の眼前にかざした。


ボンッ!


一瞬強い風に押されたみたいに、
テラキオンの体が煙になって吹き飛んでいった。

そしてそのカラフルな煙のなかから、
小さくて黒いポケモンが飛び出してきた。

ルカリオ「やっぱニセモノだったか」

???「イッテテ……なんだ今の!?」

 ▼ 19 enPNohyjRg 20/02/14 20:16:13 ID:BjUwMIkk [19/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ルージュラ「えっ、えっ、どういうこと?」

ルカリオ「僕は生物の波動を感じ取れるんだ。ポケモンはみんな波動を放っている。だけどテラキオンからはそれを感じなかったから、きっと幻だと思ってね」

???「くっそー!」

後ろで腰を抜かしているアタシは蚊帳の外に、
ルカリオくんとテラキオンに化けていたポケモンは話を続けた。


ルカリオ「で、君は?」

???「ゾロアだよ」

ルカリオ「ゾロアくんか。小さいね。まだ子どもだろ?」

ゾロア「うるせーな」

ルカリオ「どうしてあのポケモンに化けてたんだい?」

ゾロア「……アレになってたらみんなビビって逃げていくからな」

ルカリオ「怖がらせたくて?」

ゾロア「違う。家出してんだよ」


話を聞いていると、
ゾロアくんは家族と喧嘩して家出した。
親や警察に連れ戻されないように、色んなものに変身しながら逃走を続ける。

しかしそれだけでは限界があるため、
見つかりそうになった時は、凶暴なポケモンに化けてその場を凌いでいた。


それが謎のポケモンとして噂になったようだ。

 ▼ 20 enPNohyjRg 20/02/14 20:16:54 ID:BjUwMIkk [20/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルカリオ「なるほどね」

ゾロア「もう行っていいか? 長居してると見つかる」

ルカリオ「いーや。ダメだよ。最近ね、この辺りでポケモンが行方不明になる事件起きたんだ」

ゾロア「は?」


その話題で、ようやく後ろで聞いてただけのアタシにも、
話に参加できるタイミングがやってきた。


ルージュラ「その事件で、君が化けていたテラキオンがポケモンたちを攫ったんじゃないか、って話になったのよ」

ゾロア「何それ。さっきのでわかっただろ。オレの変身は見かけ倒しで、変身しても強さは変わらない。大人と戦ったら負けるよ」

ルカリオ「誤解だとしても、このままじゃ君の身が危険だ」


誤解が解けないままだと
警察や街のポケモンたちは、テラキオンを攻撃して捕まえようとするかもしれないし。

何よりゾロアくんを1匹で放浪させていては、
それこそ誘拐される恐れがある。


アタシたちは、ちゃんと家族と話せるようにゾロアくんを説得した。
その後警察の方々に届け出る。
ゾロアくんはちゃんと話を聞く良い子だし。
親御さんもきっと心配しているに違いない。

 ▼ 21 enPNohyjRg 20/02/14 20:17:25 ID:BjUwMIkk [21/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ジバコイル「捜査に協力してくれてアリガトウ。ご両親が到着するまではケーサツ署で預かっておきます」

ルージュラ「しかし変身があるとはいえ、警察の人から逃げ続けるなんてすごいね」

ゾロア「オレはな。めちゃくちゃ鼻が良いんだ」


文字通り鼻を高くした。ゾロアくんいわく
「家族や知り合いの臭いはだいたい覚えていて、ケーサツも臭いがわかりやすいから、見つかる前に隠れるくらい楽勝」との事だ。


ルージュラ「へえ〜すごい」

ゾロア「まーね」

ルカリオ「もしまた家にいるのが嫌になったら、僕の家に遊びに来るといいよ」

ゾロア「まじ? やった! そうじゃないときでも遊びに行っていい?」

ルカリオ「もちろん」


そういうわけで
謎の伝説のポケモンの噂は、家出したゾロアが化けていた。というニュースで終止符が打たれた。
 ▼ 22 enPNohyjRg 20/02/14 20:18:04 ID:BjUwMIkk [22/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

そして肝心のアタシとルカリオくんの仲はというと……


ルカリオ「ところで君さ、僕の後ろをずっと尾けてただろ」

ルージュラ「えっ! ごめんなさい……どうしてわかったの?」

ルカリオ「さっき言った。波動だよ」

ルージュラ「アタシは、ルカリオくんのことが心配で……。本当にごめんなさい!」

ルカリオ「……まぁ不審なストーカーに警戒してたお陰で、テラキオンの接近にも気づけたし。そういうことで許してあげるよ」


警察にアタシを突き出さなかったのは、
彼の優しさなのだろうか。

アタシはまた少しルカリオくんが好きになった。


しかしルカリオくんから見たアタシはどうだろう?

元々嫌われている説が濃厚なのに、
今回の件で好感度は上がるどころか下がったかもしれない。

そんな失敗を引きずりながら眠りにつく。

 ▼ 23 enPNohyjRg 20/02/14 20:18:50 ID:BjUwMIkk [23/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

今日もまた予知夢を見た。


予知夢の中身は、1番最初に見た"フラれる未来"とだいたい同じ。
しかし一つだけ違うところがあった。
それはフラれる時に言われる理由である。

前回の予知では
『顔がキモくて生理的にムリ』
という言い訳の余地がないほどの罵倒を受け、大敗北だった。

しかし今回は ────

 ▼ 24 enPNohyjRg 20/02/14 20:19:18 ID:BjUwMIkk [24/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


────


ルージュラ「このチョコ、受け取ってください!」

ルカリオ「ごめん。嫌いとかじゃないんだけど、もう二度と近づかないで」


────

 ▼ 25 enPNohyjRg 20/02/14 20:19:42 ID:BjUwMIkk [25/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


返事が少しだけマシになってる!

いや、マシになってはいるけど……!
本当にマシになってるのこれ?


『嫌いじゃないけど二度と近づかないで』
ってどういうこと……?

『二度と近づかないで』
ってそれ普通に嫌いってことじゃない?

捉えようによっては
むしろ悪化してる気がする……。


…………ともかく!
昨日の出来事で未来が少し変わったのは事実だ。

ストーカーしたことだって、命懸けでルカリオくんを守ろうとしたことに繋がっている。
だから意外と良い方向に影響したかもしれないし。


これからもこの調子で、
フラれる未来を変えられるように頑張ろう。


そう決意を固めて、
その日も学校に向かった。

 ▼ 26 enPNohyjRg 20/02/14 20:19:59 ID:BjUwMIkk [26/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

アタシは日頃からルカリオくんに限らず、
好かれるような生活を心がけた。

積極的に手伝ったり、声をかけたり、
と言った直接的な行動だけではなく。

彼が見ていないところでも、
なるべく他者から好印象に思われる行動をとる。

アタシが変えようとしているのは曖昧な未来だ。
なにがきっかけで未来が変わるかはわからない。

だからこそ日頃から地道に徳を積むことが、
意外と後に効いてきたりする。

 ▼ 27 enPNohyjRg 20/02/14 20:20:22 ID:BjUwMIkk [27/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

*

***

*****


日々そうした活動を続けているうちに1週間が経った。

この間に見た予知夢は今までの、
"告白→フラれる"部分に大きな変化はなかったものの。
ルカリオくんからの返事の内容は少しずつ変化していた。
良い方向に。

そしてこれは1月23日のこと……
正確には23日から24日に変わる夜に見た予知夢で、

遂にその時が訪れる!!

 ▼ 28 enPNohyjRg 20/02/14 20:20:48 ID:BjUwMIkk [28/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

────



太陽が沈みかけの時間帯、
世界がオレンジ色に照らされる。


ルージュラ「ルカリオくんのことが好きです。ちょっと遅刻しちゃったけど、このチョコ受け取ってくれないかな?」

ルカリオ「……」


一瞬間が空く。
その間には何を思考しているのか。

知りたい。
予知夢を覆すために頑張ってる間。
ルカリオくんの色んなことを知れた。

できるのなら、これからはもっと知りたい。


ルカリオ「ありがとう。嬉しいよ」

ルージュラ「……!」


彼はハート型のチョコを受け取って微笑んだ。


ルージュラ「ってことは……そのオッケーっていう、こと?」


混乱したのか焦ったのか、
ものすごく下手くそな聞き方をした気がする。


ルカリオ「うん。じゃあ付き合おうか」


あっさりとそう言われる。
それはまさに求めていた返事だった。

しかし何故か拍子抜けというか、心に満たされるものがなかった。
てっきりもっとドキドキするものだと……思っていたのに……。


アタシの手首には青色のブレスレット。
その表面でオレンジの光を反射させて淀んだ色を作っていた。


────
 ▼ 29 enPNohyjRg 20/02/14 20:21:06 ID:BjUwMIkk [29/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

──── 目が覚める。

起きて、
すぐに夢の内容を振り返る。

そして確認する。
あの夢とは思えないほど、くっきりした映像は……
絶対に予知夢だ。間違いない。

"叶わない理想を夢で見た"とか、
そういう話じゃない。


今のは確実に未来の出来事を見た予知だった!


つまりアタシは
このままいけば告白に成功する!


しかし。
どうしてだろう。
確実に上手くいっているのに、なにかモヤモヤする。

 ▼ 30 enPNohyjRg 20/02/14 20:21:23 ID:BjUwMIkk [30/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

胸に引っかかるものの正体を掴むために、
さっきの夢の内容について考察する。


夢の中のアタシは、
青色のブレスレットを付けていた。

念の為に
青のブレスレットを次に付ける日を確認する。そして衝撃の事実に気づく。


2月16日……。
あの夢は、バレンタインデー(2/14)の2日後の出来事だった。


"好きな相手にチョコを渡す" = バレンタイン
のように特別なイベントや記念日の場合は、
ブレスレット以外の情報からも夢の日付を推測することが出来る。

だからチョコを渡して告白してる時点で、
2月14日だと思い込んだけれど、
ブレスレットに聞いてみると、どうやら違うらしい。


バレンタイン当日にチョコを渡せなかった……?
予定が狂わされる何かがあったということだろうか?
だとしたら一体何が……?


 ▼ 31 enPNohyjRg 20/02/14 20:22:03 ID:BjUwMIkk [31/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


悶々と考えていたところで、
お母さんの呼び声が聞こえてくる。

もう登校の時間か……夢の中身に気を取られすぎた。


あとは外を歩きながら考えよう。
それに、引っかかるのは日付だけじゃない。

告白をOKしたルカリオくんの様子を頭の中に浮かべる。
最初に違和感を覚えたのは、彼の表情や返事だった。


1週間前の予知ではあんなに嫌われていたのに、
こんなに急に豹変するのもちょったおかしい。

夢の中のアタシの反応も
告白が成功した割にいまいち嬉しそうじゃなかった。
この違和感は一体なんなのだろう。


 ▼ 32 enPNohyjRg 20/02/14 21:37:04 ID:BjUwMIkk [32/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルージュラ「うーん……」

クサイハナ「最近調子良さそうと思ってたんだけど、なんか悩んでる?」

ルージュラ「うん。ちょっとね」

クサイハナ「よければ相談してよね」

ルージュラ「うん……」


その日はずっと予知夢のことを考えてしまって、
好感度を上げるような気配りは出来なかった。

どちらにせよ
すでに告白が成功する未来を見たのだ。
むしろこれ以上余計なことをして、
悪い方に未来を変えてしまわない方がいい。



そう思っていた……。



告白成功の予知を見たあと、次の夜が来る。

今夜見た予知夢は、告白とはあまり関係がなさそうな情報量の少ないものに感じた

 ▼ 33 enPNohyjRg 20/02/14 21:37:27 ID:BjUwMIkk [33/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


────


白のブレスレットを付けたアタシは
学校の校舎裏を歩いていた。
右には校舎の壁があり、左側には鬱蒼とした森が広がる。

すると地面にゴミが捨ててあるのを発見して驚いた。
校舎裏とはいえ、堂々と。

それも割と大きなものが、悪びれもせず、
壁沿いの雑草や森に隠すでもなく捨ててある。


そのゴミは風が吹けば飛んでいきそうな紙だった。
チョコを包んでいたのか、少し茶色に汚れている。

その青い包装紙は、
どこかで見覚えがある気がした……。


どこで見たんだっけ ────


──── それを思い出そうとしたところで夢から覚めた。

 ▼ 34 ドラン@くちたけん 20/02/14 21:47:32 ID:qHgs0zpg NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 35 enPNohyjRg 20/02/14 21:48:52 ID:BjUwMIkk [34/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


起きた後。
アタシはいつも通りに、今日はピンクのブレスレットを手首に通す。

準備しながらも予知夢について考えてみたが、流石に情報量が少なすぎてよくわからない。


告白の成否に直接関係は無さそうだし。
深くは考えないでおこう。


そうして家を出る。
いつも通りに途中でクサイハナと合流し、駄弁りながら学校へ向かう。


唯一いつも通りじゃないことと言えば、クサイハナの様子だろうか。


ルージュラ「大丈夫?」

クサイハナ「う、うん……」


ソワソワしていて、落ち着きがない。
昨日はアタシに『相談してよね』
なんて言ってたくせに、今日は立場が逆転したみたい。

 ▼ 36 enPNohyjRg 20/02/14 21:49:32 ID:BjUwMIkk [35/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


クサイハナ「ホントになんでもないよ」


そう突っぱねるからこっちも深くは聞かない。
どうしてそんなにソワソワしているのか、
気にはなるけど執拗に聞いてもウザがられるだけだ。


学校についた後も、
ひそかにクサイハナの様子を見守っていればいいだろうと思っていた。

しかしその日の昼過ぎから、彼女は姿を消した。

 ▼ 37 enPNohyjRg 20/02/14 21:50:15 ID:BjUwMIkk [36/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

昼休み。
彼女を昼食に誘おうと考えたのだが、一向に見当たらない。

先生に尋ねてみる。


ルージュラ「クサイハナちゃんがいないみたいなんですけど、どこにいるかわかりませんか?」

先生「ああ、どうやら体調が優れないみたいでな。今日はもう帰ることになったんだ」

ルージュラ「え!?」


まさか早退だなんて、
様子が変だったのは体調不良だったから?

しかしどちらかと言うと、
そういう方向の異変には見えなかったし。
なにか他の事情があるような気がする……。

 ▼ 38 enPNohyjRg 20/02/14 21:50:38 ID:BjUwMIkk [37/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

……下校中。
寄り道をしてクサイハナの家によってみることにした。
すると出てきたのはクサイハナではなく、
そのお母さんだった。
クサイハナとは昔からの仲だから両親のことも知っている。


ラフレシア「あら、ルージュラちゃん? どうしたの?」

ルージュラ「クサイハナちゃんが体調不良で早退したって聞いたので、心配になっちゃって」

ラフレシア「早退? 変ねえ。あの子は朝出たっきりまだ帰ってきていないわ」

ルージュラ「えっ!? そんな……!」


やっぱり変だ。
早退してから何時間も経ってるはずなのに、まだ帰ってないなんて。

ラフレシアさんに今日の彼女の様子を話して、
アタシも帰る前にもう少し探してみることを決める。

 ▼ 39 enPNohyjRg 20/02/14 21:50:59 ID:BjUwMIkk [38/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

クサイハナ宅から離れながら、
彼女がいきそうなところを考えてみる。

その時思いがけないポケモンと遭遇した。

警察のジバコイルさんである。


ジバコイル「オヤ? お久しぶりデス」



ここで出会ったのはやはり
「本官は本日もパトロール中デス」ということらしい。

偶然にもいいタイミングだと思った。
クサイハナのことを相談してみよう。


ジバコイル「それは確かに不可解ですネ。同時に心配ですネ」


その心配の意味はすぐにわかった。
ただ確認のためにもう一度ジバコイルさんに話を聞いてみる。

 ▼ 40 enPNohyjRg 20/02/14 21:51:29 ID:BjUwMIkk [39/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ジバコイル「以前話した、学生のポケモンが行方不明になった件を覚えていますカ? 実はあれからまた問題と進展がありまシテ……」


"謎のポケモンの噂"とセットで覚えてる話だ。

当初は噂のポケモンこそが、
消息不明事件の犯人かと思われていた。
しかしその正体は家出したゾロアくんが化けていたものだった。

ゾロアくんにそんな事件は起こせないため、"巨大なポケモンの噂"と行方不明のポケモンたちに関連性はない。
それで捜査は振り出しに戻った。

ここまでがアタシの知るところ。


問題アンド進展というのは初耳のはず。

 ▼ 41 enPNohyjRg 20/02/14 21:51:48 ID:BjUwMIkk [40/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ジバコイル「問題とは、行方不明者が新たに1匹増えたコト」


ジバコイルさんは1つずつを勿体ぶって話した。


ジバコイル「そして進展とは。行方不明になったポケモンが、何者かに誘拐される瞬間を目撃したという方からの目撃情報を得られたということです」

ルージュラ「じゃあ誘拐であることは決定なんですね。誘拐犯特徴とかがわかったんですか?」

ジバコイル「ハイ。その特徴というのが、白いユーレイのような姿のポケモンというのです。何か心当たりはありませんか?」


少なくともアタシの知り合いにそんなポケモンはいない。

 ▼ 42 enPNohyjRg 20/02/14 21:52:24 ID:BjUwMIkk [41/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ジバコイル「わかりました。今のところ被害者は2匹とも雄ポケモンですが、新たにクサイハナさんも被害にあった可能性があるト……」

ルージュラ「大切な友達なので、探してもらえると嬉しいです」

ジバコイル「もちろんです。いつもご協力感謝しマス。しかし今はルージュラさんの身も危険な状況ですノデ、お気を付けて……」


最後に「外を出歩く時はなるべく誰かと一緒に」とだけ言われる。
その忠告に従ってアタシは早めに帰宅した。


その夜は予知夢のことやクサイハナのことが、
どうしても気になって中々寝付けない。



ようやく眠れた後。やはり予知夢を見た。

 ▼ 43 enPNohyjRg 20/02/14 21:52:39 ID:BjUwMIkk [42/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


────
──

──
────

 ▼ 44 enPNohyjRg 20/02/14 21:53:20 ID:BjUwMIkk [43/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ルージュラ「なんでよ!」


思わず声に出して叫んでしまった。
そして次は心の中で声を張り上げる。


どういうことなの!?


アタシのこの怒りは当然、
予知夢に向けたものに決まっている。


ようやく眠れた後。
アタシが見た予知夢は、
1番最初に見たバレンタインデーの予知夢と全く同じ……。

つまりチョコを持って告白したアタシが
『顔面がキモい』&『生理的にムリ』
という強烈コンボで撃沈した。
あれと全く同じ未来をまた見せられた。

それが今回の予知夢の内容である。


しかもフラれないように頑張った結果、
1度告白が成功した予知を見た後なのに!

あれから未来を変えないよう、
嫌われるようなことはしなかったのに!

なんでまた戻ってるの!?
意味がわからない!


そんな怒りを向ける相手もいないため、
抱えたままとりあえず登校する。

 ▼ 45 enPNohyjRg 20/02/14 21:54:17 ID:BjUwMIkk [44/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

しかしやり場のない怒りも、
通学路であのポケモンの背中を見たら吹き飛んでいった。


クサイハナが歩いていた。
昨日いくら探しても見つからなかった彼女が。

嬉しくなったアタシは、
その背中がいつもより小さかったことにも気づかず。
元気に駆け寄って声をかけた。


ルージュラ「クサイハナ! どこにいたの!? 探したんだよ!」

クサイハナ「あ、ルージュラ。昨日はごめん。心配かけたよね……」


アタシのことはいい。
そのとてつもなく暗くて、聞いてるこっちまで沈みそうな語調が気になった。

それを問おうとした時、
クサイハナが突然涙を流し始める。

 ▼ 46 enPNohyjRg 20/02/14 21:54:45 ID:BjUwMIkk [45/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

クサイハナ「う、ううっ……」

ルージュラ「どうしたの、大丈夫?」

クサイハナ「ごめん。普通にしようって思ったんだけど……」


とても学校に行けそうな様子ではない。
ゆっくり話も聞きたいし。


ルージュラ「じゃあ今日はサボっちゃおうか」

クサイハナ「え……いいの?」


学校なんてどうでもいい。
しかし友だちは代わりがないもの。

しいて言うならバレンタインの予知夢が、あまりいい流れじゃないことが不安だけど。

そっちだって多分1日学校に行っただけで
どうこうできるものでは無いだろう。

 ▼ 47 enPNohyjRg 20/02/14 21:55:01 ID:BjUwMIkk [46/126] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

クサイハナが、
1匹になりたい時に行く場所があるというので。
アタシもそれについて行くことにした。

"1匹になりたい場所"なのだから、簡単には教えられないはずだ。
アタシがクサイハナにとって、それを教えてもよい相手になれているのは普通に嬉しい。


町にひとつしかない川に沿って、
上流の方向へ登っていく。

やがて町をはずれて、木々の匂いが鼻をさす。
それでもまだ川沿いを歩き、
しばらくすると開放感のある空き地に出た。

草原に、落ち葉が散らばっている。

たしかに自然が好きなクサイハナが好きそうな場所だと思った。
そこに座って、呼吸が落ち着いてくると、
クサイハナは問わず語り始めた。


クサイハナ「私ね。昨日ルカリオくんに告白したの」

ルージュラ「えっ……!?」

 ▼ 48 enPNohyjRg 20/02/14 21:55:22 ID:BjUwMIkk [47/126] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

クサイハナ「だけどダメだった」


さらっと告げられた事実に
呆気に取られて動けなくなった。


クサイハナ「そのあとショックで体調が悪くなって吐き気がでたりして、学校にはいられなかった。家に帰ったあともずっと寝込んでたの」

ルージュラ「それで……」

クサイハナ「こんなに引きずってるの。私がおかしいのかな」

ルージュラ「そんなことないよ」


反射的に相手を肯定する。
しかし特に深く考えずに発言するのは、今の彼女には不誠実に思われるかもしれない。
そう少し後悔した。


ルージュラ「どうしてバレンタインじゃなくて、今告白しようと?」

クサイハナ「ルカリオくんは人気者だから、他の誰かに取られたくなかったの」


それはアタシも考えたことがある。
しかし同時に、
他の誰かに取られるくらいの仲の相手なら、普通に告白しても成功する可能性は低いとも思った。
なんて……言うのは簡単だけど、不安は少なくしたいものよね。


クサイハナ「それに私、大好きだったの。ルカリオくんのことが。食べちゃいたいくらい」

 ▼ 49 enPNohyjRg 20/02/14 21:55:46 ID:BjUwMIkk [48/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

そっか。告白するのを決めてたから、
昨日の朝はあんなにソワソワしてたのか。

これで予知夢で見た。
あの青い包装紙の謎も解ける。

あれは多分バレンタインより先立って、
クサイハナがチョコを渡した。その残骸だろう。

さらに今の話をキッカケに思い出してくる。
昔一緒に買い物に行った時に、彼女があの青い包装紙を買っていた。
見覚えがあったのはそのせいか。

脳内で予知夢と事実を繋げるのに夢中になる。


クサイハナ「……どうして……」


夢中になっていたから、
彼女が呟いた大事な言葉を聞き逃した気がする。
しかしアタシは聞き返せなくて、
聞けなかった言葉がさほど重要じゃないものであることを祈った。

そんなわけは無いのに……。

 ▼ 50 enPNohyjRg 20/02/14 21:56:30 ID:BjUwMIkk [49/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


それから学校が終わるまでの時間は、
途中で帰ると親に怪しまれるので2匹でテキトーに過ごした。
幼い頃を思い出してなんだか懐かしくなる。

そして学校が終わるくらいの時間帯に帰路につく。
時間を潰すなかで近所を色々と回っていたため。その帰り道の途中にルカリオくんの家の前を通ることを忘れてしまっていた。


通るとき気まずくなりそうだなぁ……。
という若干の心配は杞憂だった。

なぜなら彼の家の前には、ゾロアくんがいたからだ。

ゾロア「ん?」

ルージュラ「あー! 久しぶり!」

ゾロア「うわっ。なんでここに?」

ルージュラ「ちゃんと家族と仲良くしてた?」

ゾロア「まぁそれなりに」


ゾロアくんは、
ルカリオくんとアタシで警察に預けたあと。
ちゃんと家族と仲直りして暮らせているらしい。

 ▼ 51 enPNohyjRg 20/02/14 21:56:56 ID:BjUwMIkk [50/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルカリオくんから聞いた話で、
たしかアタシが好感度を上げるのに必死だった時だったかな?
ルカリオくんが「ゾロアがうちに遊びに来た」
と嬉しそうに話していたのを印象深かった。


ゾロア「学校帰りに遊びに来たけど、オレの方が早く終わるから、ここで待ってる」

ルージュラ「そっかー。友達になれてよかったね」

クサイハナ「えーっと、誰? その子?」


そうか。クサイハナは知らないのか。
とゾロアとアタシたちの出会いを説明した。


クサイハナ「へ〜。謎のポケモンの正体が、こんな可愛い子だったなんてね」

ルージュラ「ビックリだよね」

ゾロア「ルカリオが帰ってきたら、ルージュラたちも一緒に遊ぶ?」

ルージュラ「え……」


子どもは容赦がない。
いや、別にクサイハナのことを知らないんだから普通か。
 ▼ 52 enPNohyjRg 20/02/14 21:57:15 ID:BjUwMIkk [51/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ルージュラ「うーん。アタシたちはこれから用事があるから……そろそろ帰ることにするよ」

クサイハナ「それじゃあ、さようなら」

ゾロア「ん」


声には出さず、小さい手を小さく振るゾロアがなんとも可愛らしかった。

その後クサイハナとも別れて、
ちょうど学校帰りくらいの時間帯に帰宅完了だ。
初めてのサボりはかなり有意義な時間になったと思う。

 ▼ 53 enPNohyjRg 20/02/14 21:57:42 ID:BjUwMIkk [52/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


自分の部屋で一息つきながらも、
クサイハナのことを思い出すと胸が痛くなる。


例えば、
バレンタイン前に他の誰かとカップルが成立してしまっていたら、どうしようもないし。
当日はよりたくさんのポケモンに迫られるだろうから、自分が告白する前に取られてしまうかもしれない。

そう考えると先に告白したくなるのはわかるし。
悪い手じゃないと思う。


だけど他の雌の告白を断る理由にさせるくらい好かれてないと、普通の告白だってたぶん成功しない。


恋愛は戦争なのだ。

未来や友達に影響されて落ち込んだって仕方ない。
アタシはアタシが出来るかぎりのことをやろう。後悔しないように。



アタシはふたたび頑張る決意をする。
しかしその意志を嘲笑うかのように、その日から予知夢の内容は変化しなくなった……。
 ▼ 54 enPNohyjRg 20/02/14 21:58:40 ID:BjUwMIkk [53/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


1月26日の夜……。


────

ルージュラ「ずっとルカリオくんのことが好きでした! このチョコ、受け取ってください!」

ルカリオ「ごめん。嫌いとかじゃないんだけど、もう二度と近づかないで」

────

 ▼ 55 enPNohyjRg 20/02/14 21:59:24 ID:BjUwMIkk [54/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


前にも見たことのある予知夢だった。
細部まで全く変化が見当たらない。

おかしい。そんなことあるはずない。


例えば、
予知を見た自分は意図してもしなくても、
予知夢の中の自分とは違う思考で違う言動とってしまう。

そういう少しの変化で未来は変わってしまうものだから、予知夢の内容は現実で再現されづらい。
意図的に再現しようとしても難しかったりする。


未来というのはそれくらい不安定なものなのだ。
予知と全く関係ないことばかりしてるならともかく。
アタシは変えようと行動してるのに、
その未来が全く変わらないなんて、ありえないはずなのよ。
 ▼ 56 enPNohyjRg 20/02/14 22:00:51 ID:BjUwMIkk [55/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ありえないはず……。
それなのに、この日(1/26)から。
毎日全然違うパターンの行動をとっても、毎日同じ予知を見るようになった。


次の日……1月27日の夜に見た夢も、さっきと同じ。
『ごめん。嫌いとかじゃないんだけど、もう二度と近づかないで』


1月28日も
『ごめん。嫌いとかじゃないんだけど、もう二度と近づかないで』

1月29日も
『ごめん。嫌いとかじゃないんだけど、もう二度と近づかないで』


1月30日も
1月31日も
2月1日も
2月2日も
2月3日も
2月4日も


バレンタイン当日が、
あと10日にまで迫っているのに。
未来予知の内容は変わらない。

2月5日〜2月11日までの夜も、
全く同じ内容でフラれる予知夢を見る。


そうして未来を変えられないまま。
あっという間に時が過ぎた。
 ▼ 57 enPNohyjRg 20/02/14 22:01:28 ID:BjUwMIkk [56/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告






……そして今は2月12日の夜である。



バレンタインデー(2/14)まで、
残された時間は2日。
そしてこの夜が終わればあと1日しかない。

 ▼ 58 enPNohyjRg 20/02/14 22:01:46 ID:BjUwMIkk [57/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


これまでを振り返る。
手を替え品を替えできるかぎりのことはやったつもりだ。
しかしフラれる未来は変わらない。


2週間以上にわたって全く同じ予知を見せられて、
それを変えるために毎日頑張り続けて、
ずいぶんと疲れが溜まっていた。

焦り……苛立ち……。

こんなに同じ予知を見続けるのは初めてで、
もう、この未来は変えようのない運命なのだろう。
そういう諦めも生まれ始めていた。

 ▼ 59 enPNohyjRg 20/02/14 22:02:40 ID:BjUwMIkk [58/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

身も心も鉛のように重いのは、どうして?
持ち上げるための前向きな気持ちが無いからだろうか。

それとも涙を流すまいと我慢したせいで、
飛び出し損ねた涙で体の中が
いっぱいになってるのだろうか。
一瞬でも気を抜けば涙が溢れてしまいそうなほどに……。


それでも学校にいる間の半日を、
なんとか耐え抜いて帰宅する。

家にいるからって気が楽になるわけではなく。
だけど自分の部屋にいる間は無理に気を張らなくてもいい。
だから学校よりはマシだ。
 ▼ 60 enPNohyjRg 20/02/14 22:03:33 ID:BjUwMIkk [59/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



夜が好きだ。

2週間前までは予知夢を見るのが楽しみで夜を求めた。
自分の行動で未来が変わると確信していたからだ。

だけど今は、鉛の体を動かすことが苦しくて、
夜なら倒れたまま動かなくて済む。

だから夜が待ち遠しい。

そして待ち望んだ
夜の訪れに合わせてベットに倒れ込む。


どうせ、
またあの夢を見る。

 ▼ 61 enPNohyjRg 20/02/14 22:04:25 ID:BjUwMIkk [60/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

────



これはアタシがまだムチュールだった頃の話だ。


ムチュール「一緒に遊びましょ〜」

フーディン「こらこら、年寄りを振り回すものじゃないよ」


アタシにはフーディンという祖父がいた

フーディンさんは物知りで、色んなことを教えてくれた。
かなりのおじいさんだったから一緒に走り回るとか、
そういう遊びは出来なかったけど。

何をするにも隣で応援してくれて、
悪さをした時はちゃんと叱ってくれる。

そんなフーディンさんが大好きだった。


そんな幼い頃のある日。

眠りにつくと、
夢の中でフーディンさんが死んだ。


 ▼ 62 enPNohyjRg 20/02/14 22:04:52 ID:BjUwMIkk [61/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


まだ幼くて予知夢を見た回数も少なく。
それが予知夢なのかそうじゃないのか、判別がつかなかった。

フーディンさんはいつも通り元気だったから、
死ぬわけない。きっと何かの間違いに決まってる。
そう信じていた。


そんなある晩……
アタシは目を擦りながら、フーディンさんの手に触れる。

フーディン「もう寝なさい」

ムチュール「やだー。もっとたくさんおはなし聞きたい」

フーディン「……ムチュールは本当に話を聞くのが大好きだのう」


フーディンさんは長生きだからか、たくさん面白いお噺を持っていた。
眠る前に子守唄代わりに聞かせてくれる。
それがアタシは大好きだった。

フーディン「じゃあ一つ。眠る前におはなしをしようかの」

ムチュール「やったー!」

フーディン「昔、あるところに……」

 ▼ 63 enPNohyjRg 20/02/14 22:05:25 ID:BjUwMIkk [62/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



お噺を聞きおえると、
満足したのか急に瞼が重くなってきた。

力が抜けて、フーディンさんの体に凭れる。


ダメだ。

眠ってはいけない。
どうしてかは分からないけどそう思った。
このまま眠ってはいけない気がした。


そんな意志とは裏腹に
視界はどんどん狭くなっていく。


────


 ▼ 64 enPNohyjRg 20/02/14 22:05:44 ID:BjUwMIkk [63/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


──── フーディンさん!


「いかないで!」そう叫びながらとび起きる。
夢の続きではなく、ルージュラのアタシだった。

涙が頬を伝う。
夢か……それも未来を覗いた予知夢ではない。
過去の出来事の夢だ。


フーディンさんはあの夜も、楽しいお噺を聞かせてくれた。
しかしそれを最後に2度と彼の噺を聞けることはなくなった。

アタシが寝たあと、
フーディンさんは安らかに眠って、今でも起きてこない。
元々高齢だったから寿命を迎えたのだろう。
と両親は言っていた。

 ▼ 65 enPNohyjRg 20/02/14 22:06:11 ID:BjUwMIkk [64/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


寿命で無くなった。
本当にそうだとすれば数日前に予知したところで、
死を遅らせれたり、死を免れることは出来ない。

だけど両親が予知のことを知ればきっと、
「ちゃんと教えてくれれば良かったのに」と思うだろう。
対策は打てなくても、
先に知っておくだけで色んな話や準備ができる。


お墓の前でみんなのすすり泣きを聞きながら、
自分の無力さと予知能力を呪ったっけ。

自責と後悔の念ばかりが募って、
フーディンさんの死を見ていたことは、誰にも言えずじまいだった。

 ▼ 66 enPNohyjRg 20/02/14 22:06:31 ID:BjUwMIkk [65/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


枕元に置いてある写真……
ムチュールのアタシとフーディンさんのツーショットを見ながら、そんなことを想起する。

一瞬を永遠にする写真と同じように、
アタシもあの頃と何も変わってないと思う。


"ルカリオくんにフラれる"。
という望まない未来を見た。

頑張って変えようとしてみたけど、
予知夢は「これがお前の運命だ」と
言わんばかりに変わらぬ未来を見せ続ける。

わからない。
なんでこんなチカラを持ってしまったのだろう。
肝心なところで役に立たない。


こんなことなら
予知なんかせず普通に失恋する方が良かった。


そう思いながら写真をゴミ箱に突っ込む。

枕に顔をうずめる。


布団に潜りながら、
目をギュッと閉じて、
現実から逃げだした。


 ▼ 67 enPNohyjRg 20/02/14 22:06:49 ID:BjUwMIkk [66/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


────



そこが何処なのかは、すぐにわかった。
家の玄関前だ。毎朝学校に行く時に通過する。


次に青いブレスレットをつけた腕と、その腕が抱いているものに目が向く。

顔の下で赤と黒の柔らかい毛が揺れた。
ゾロアくんだ。


ゾロア「ごめんなさい……ごめんなさい……!」


アタシの胸にすがりついて泣いている。
顔を覗こうとしても、謝るばかりでこっちを見てくれない。

諦めて顔を上げると、
すぐ目の前にジバコイルさんがいた。

そしてジバコイルさんの後ろには、コイルやレアコイルといった他の警察の方々が待機していた。


ゾロア「ごめんなさい。オレのせいで、ルカリオが……」

ルージュラ「ルカリオくんに何かあったんですか?」

ジバコイル「ハイ。ルカリオさんが2日前から行方不明になっておりまシテ。恐らく以前お話した誘拐事件と同様のものであると……」

ルージュラ「え……?」


ルカリオくんが、行方不明……?


────

 ▼ 68 enPNohyjRg 20/02/14 22:07:22 ID:BjUwMIkk [67/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


── そこで目が覚めた。

起きた瞬間に悟る。
今のは、予知夢だ。


信じられない。
ルカリオくんが事件に巻き込まれるなんて……。

つけていたブレスレットは青……

……2月16日。
もうすぐじゃないか。

以前に予知した"告白に成功した"あの夢でも青いブレスレットをしていた。
あの時も何かがおかしいと思っていたけど、
こんな形で異変が起きるなんて……。


とにかくこのままじゃルカリオくんが危ない!
助けなきゃ!

……って、何考えてんのアタシ。
なにを調子乗ってんの。今さらヒーローぶってどうすんのよ……。
 ▼ 69 enPNohyjRg 20/02/14 22:07:42 ID:BjUwMIkk [68/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


1ヶ月も気まぐれな予知に振り回され続けて、
これ以上何を頑張るって言うのよ……。

そもそもルカリオくんは(夢の中とはいえ)
アタシの告白を1ヶ月間も罵倒付きで断り続けた冷酷な雄よ。

どうせ結ばれないんだし。

いくら頑張ったって意味ない。


……誰かの危機を予知したことで、
フーディンさんの死を連想してしまう。

予知能力がなんだ。
知ったところで元々アタシが出来ることなんて何も無いのよ。
そんなことはフーディンさんが死んだあの日から、
わかりきっていた。


それなのに……。

それなのに何で、



なんでアタシは、
今まで前向きでいられたたんだろう?



 ▼ 70 enPNohyjRg 20/02/14 22:10:04 ID:BjUwMIkk [69/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




答えはとっくに自分の中にある。

フーディンさんのお陰だ。
彼が死ぬ前、最後の夜に彼が聞かせてくれたお噺のストーリーはこうだ。


『超能力を使える少年が、ある山奥に籠った雌ポケモンと出会い恋に落ちる。
その雌はなんと未来を見ることが出来た。
しかし愛する者が死ぬ未来を予知してしまい、
その未来を変えられなかった経験から、他者と関わらず1匹で、山奥で生きることにした。

少年は彼女に一生付き添うことに決めた。
雌は最初は疎ましく思っていたものの。少年が予知した未来を変え続けているうちに、だんだん惹かれていった。

そしてついに、
雌が寿命で命を落とすその瞬間まで、
少年は死なずに彼女のそばで生き続けた』


というお噺。

 ▼ 71 enPNohyjRg 20/02/14 22:11:11 ID:BjUwMIkk [70/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

そしてそのお噺を語り終えた後に、
眠りかけてるアタシに、フーディンさんは言った。

それがフーディンさんの、
正真正銘最期の言葉だ。


フーディン『きっとこれから、たくさん後悔したり自分が嫌になることが来る。だけど最後まで希望を捨てちゃいかんよ。きっと未来は、救いの手を差し伸べてくれる』


今になって思うと、
彼はその夜限りで自分が死ぬことをわかってたのかもしれない。
そして死んだ後にアタシが落ち込むのが分かっていたからこそ、
最期に自分の人生を語ってくれた。


フーディンさんのことを思い出すと、
前を向く勇気が出てくる。
悲しい記憶のはずなのに。

いつもそうだった。
悲しい記憶のはずなのに、不思議と希望をもてたんだ。

 ▼ 72 enPNohyjRg 20/02/14 22:11:45 ID:BjUwMIkk [71/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ゴミ箱に捨てた写真を取り出した。
クシャクシャになっているが、ちゃんと2匹の笑顔が見える。


たとえどんな理由があろうと。
予知が嫌いだからって、無力だからって、
それを理由に誰かの危機を見捨てることは許されるのだろうか。

許されないだろうな。


アタシは誰かの危機を知りながら、
何もしないようなやつにはなりたくない。

それじゃ結局フーディンさんにだって叱られてしまう。

そんなことでいい。
今は信じてみよう。
できるかぎりをやってみよう。
フーディンさんを、自分自身を。

 ▼ 73 enPNohyjRg 20/02/14 22:12:17 ID:BjUwMIkk [72/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


シワだらけになってしまった写真を見て、
ふと、同じようにクシャクシャだったものを連想する。

"青い包装紙" だ。
たしか24日に見た予知夢に出てきたんだっけ……。


……あれ?


その後、クサイハナがバレンタインより先立ってルカリオくんに告白してたことがわかった。
そのチョコを渡した時に、残ったゴミとして認識していた。


しかし予知夢の内容を詳しく思い出すと、
少しおかしなところがあることに気づく。


包装紙を拾う予知の中で、
アタシは白色のブレスレットをつけていた。

しかし予知を見た1/24から今日(2/13)までに、
白色の輪に手を通した記憶はない。


順番を確認すると、
次に白のブレスレットを付ける日は、
なんと明日(2/14)だ。

つまりクサイハナが、
明日(バレンタインデー)に校舎裏でチョコを渡すということになる。
フラれて、あんなに落ち込んでたクサイハナが……。


もしかしたらアタシが包装紙を発見するのが遅かっただけで。もっと前からあそこに落ちてたのかもしれない。

だけどよく考えれば彼女は、
「告白してフラれた」とは言っても、
「バレンタインより早くチョコを渡した」なんて一言も言ってなかったと思う。

バレンタインデーじゃないんだから、渡してない方が自然だ。


クサイハナは、バレンタインデーに1度フラれたルカリオくんに、チョコを渡すつもりらしい。

そしてさっきの予知夢の中で、
ルカリオくんが行方不明になったのは2日前……つまり2月14日だと言っていた。



まさかクサイハナが、ルカリオくんを……?
 ▼ 74 enPNohyjRg 20/02/14 22:13:12 ID:BjUwMIkk [73/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



流石にそう決めつけるのは早計すぎるか。

しかし今までの予知夢の中で、
不可解なことは他にもいくつかある。

それらを振り返ってみて、
アタシはもしかしたら、大きな思い違いをしていたのかもしれない。
そう思った。


 ▼ 75 enPNohyjRg 20/02/14 22:13:45 ID:BjUwMIkk [74/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


今日はそれから晩御飯を食べる時間になるまで、
ずっと机に向かって考え事をしていた。
そのお陰で2月14日に起きることがだいたい予想できた。

そして夜は台所に立つ。
お母さんにも手伝ってもらうことにした。
せっかくだから美味しくないとね。


作るものは勿論チョコレートだ。


そして眠る前に改めて決意する。
必ず悪党からルカリオくんを守る。
そしてバレンタインデーの告白も成功させてみせる。

その決意と同時に、寝転んだまた想像する。

今日見る夢がどんな内容か。
そこに強い興味があった。


 ▼ 76 enPNohyjRg 20/02/14 22:14:37 ID:BjUwMIkk [75/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


────


白いブレスレットが砕け散る。
全身に痛みが走った。

悲鳴が暗闇に反響して、アタシの耳に届く。
それが自分の悲鳴であることに気づいた。

痛い。痛い。痛い。

嫌な予感はあった。
その正体が掴めなかった。

これか。
これが唯一の誤算だったのか。


ルージュラ「きゃああああ!」

ゾロア「ルージュラ! もうやめてくれ! ごめんなさい! ごめんなさい!」


ああ、またゾロアくんが泣いている。
君が苦しむ理由なんて何もないのに……。

アタシが不甲斐ないせいだ。


???「今まで邪魔してくれたわね。危なかったけど、これで終わりよ。」


悪党はアタシに告げた。
そいつの顔を見る。特徴のある容姿だった。


???「さようなら」


アタシの顔に手をかざす。
体が凍りついていく……。

ごめんなさい。
ルカリオくん、ゾロアくん。助けられなかった……。


────
 ▼ 77 enPNohyjRg 20/02/14 22:15:41 ID:BjUwMIkk [76/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


──── 目が覚めた。

ついに始まる2月14日。
バレンタインデーの朝。


汗がびっしょりだ。
現実では寝てただけなのに体に痛みが残っている。

夢の中の出来事だけどとてもリアルで苦しかった。
夢で安心どころか、
今のが現実に起きるかもしれない予知夢なんだから……恐ろしい。


あんなショッキングな夢を見たら、
昨日までのアタシなら心が折れて、数日寝込むところでしょうね。


しかし今のアタシは違うわ!


 ▼ 78 enPNohyjRg 20/02/14 22:15:58 ID:BjUwMIkk [77/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


むしろ今の夢で、昨日立てた仮説に自信をもてた。

ただ学校に向かう前に確認しなければいけないことがある。
夢の中でアタシを攻撃してきたあのポケモンは誰なのかだ。


昔、テラキオンを見たのと同じポケモン図鑑で、
あのポケモンの種族を調べる。

そしてようやく掴んだ。

夢の中でアタシを攻撃していたあのポケモン……。
あまりに恐ろしい予知だったけど、
あれを見たことによって確信を持てた。
ヤツこそがルカリオくんを手にかけようとしている誘拐事件の犯人である。


そのポケモンの名は "ユキメノコ" だ!

『白いユーレイのような姿のポケモン』
ジバコイルの言っていた特徴にも一致する。

 ▼ 79 enPNohyjRg 20/02/14 22:18:10 ID:BjUwMIkk [78/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


誘拐犯の正体をようやく突き止めた!
と喜んでいたそのところで
外から足音が近づいて、部屋にお母さんが入ってきた。

慌てて図鑑を閉じる。


お母さん「あら、ちゃんと起きれたのね」

ルージュラ「お母さん、急に入ってこないで。こっちは年頃の女の子なのよ?」

お母さん「遅れるわよ」


昨日一緒に作ったチョコレートを、手に持っている。

優しい表情だった。
予知夢が見れるのはルージュラの種族みんならしい。
ってことは色んなことを教えてくれたお母さんにも、アタシみたいに悩んだ時期があったのかな……。


お母さん「今日は頑張るんでしょ?」

ルージュラ「うん。がんばる!」


チョコレートを受け取って、
手首に白いブレスレットをかける。

枕元のクシャクシャになった写真を持ち、
いつものように胸に当てた。

今までの頑張りは全部この日のためにある。


今日は2月14日、
待ちに待ったバレンタインデーだ。


ルージュラ「行ってきます!」



 ▼ 80 ガクチート@フレンドボール 20/02/14 22:23:13 ID:Dnj..b3. [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カロスでルカリオから悪だくみを遺伝させたなぁ
久しぶりにルジェリアとゆびふりしたくなってきた
支援
 ▼ 81 enPNohyjRg 20/02/14 22:59:25 ID:BjUwMIkk [79/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

学校に向かう通学路で、クサイハナと合流する。
いつも通り他愛もない話をしながら歩く。


クサイハナ「今日はバレンタインだね。やっぱ渡す相手いるの?」

ルージュラ「うん」

クサイハナ「そっかー。頑張ってね」


その応援がとても白々しいものに聞こえたのは、アタシの先入観や警戒からだろうか。

彼女が失恋してから、だいたい3週間も経った。
ちゃんと立ち直れたようで最近は元気でいる。

少しだけ探りを入れてみることにした。


ルージュラ「あなたは誰かに渡さないの?」

クサイハナ「……渡すよ」

ルージュラ「そうなんだ」


クサイハナは少し間を空けて答えた。
アタシの返事は少し変だったかなと思う。。親友なんだから、ここは「誰に渡すの?」とか食いつくべきだった。

 ▼ 82 enPNohyjRg 20/02/14 22:59:46 ID:BjUwMIkk [80/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


そして学校に着く。
いつも通り、教室に行く。
バレンタインデーだからか教室の雰囲気は少し変わっている気がした。

みんなソワソワしているのかな。

そしてルカリオくんの席を見る。彼は今まさに他の雌からチョコを受け取っていたところだった。

それを見た瞬間に、
フラれろ!と念じる。

いや、流石に性格が悪いというか……。
意地の悪い気がしたけど、心の中で思うくらいなら許されるはずだ。


念を送った雌はチョコを渡して、すぐに去っていく。
そうか。当たり前だけど、みんながチョコを渡して同時に告白するとは限らないのか。

それから数分観察していると、
ルカリオくんは机の中に手紙を発見したようだった。
思わず注視してしまう。


もしや、と思っていたらやっぱりだ。
ルカリオくんは周りの目を気にしながら席を立って、教室から出ていった。
行き先は心当たりがある。

しかし今は追わない……。

 ▼ 83 enPNohyjRg 20/02/14 23:00:23 ID:BjUwMIkk [81/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


そして学校に到着してから数時間、
落ち着かない心境で授業を受けた。


"その時"は刻一刻と迫っている。
鼓動が早くなる。手が震える。

しかし臆しても仕方ない。
次のチャイムに、狙いを定めた。


キーンコーンカーンコーン


休み時間に入って、みんながパラパラと席を立つ。
アタシは他の誰よりも早く立ち上がったと思う。


そして教室を出ていくルカリオくんの背中を追う。

 ▼ 84 enPNohyjRg 20/02/14 23:00:44 ID:BjUwMIkk [82/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルージュラ 「待って!ルカリオくん!」


ハート型のチョコは持っていない。


ルカリオ「オレに何か用?」


その振り向いた顔も、もう慣れた。
夢の中で何度も見たから。

アタシはここで告白して本命のチョコを渡すはずだった。
たぶん "彼にとっても" そのつもりだっただろう。

だけど今は違う。

ルージュラ「あなた本物のルカリオくんじゃないでしょ?」

ルカリオ「は?」

 ▼ 85 enPNohyjRg 20/02/14 23:01:03 ID:BjUwMIkk [83/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


最初にこの夢を見た時から違和感があった。
そしてルカリオくんのことを知れば知るほど、
その違和感は大きくなった。

育ちと性格が良さそうなルカリオくんは、
『顔がキモい』とか『生理的にムリ』なんて言わないし。

ルカリオくんの1人称は、
『オレ』じゃなくて『僕』だ。

そして1人称が"オレ"で、
変身できるポケモンをアタシは知ってる。


ルージュラ「ゾロアくんが変身してるんでしょ?」

ルカリオ「い、いきなり何を」


しらを切るつもりみたいだけど無駄よ。
多分こんなことをしてる事情は、なんとなく察しがついている……。


ルカリオ「とにかく、オレはこれで……」

ルージュラ「このままじゃ、ルカリオくんが苦しんで後悔することになるよ!」

ルカリオ「……っ!?」

ルージュラ「アタシを騙しても、ルカリオは助からない!」


彼は逃げようとした足を止めた。
背を向けたままの肩が震えていた。

 ▼ 86 enPNohyjRg 20/02/14 23:01:43 ID:BjUwMIkk [84/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルージュラ「アタシならきっと力になれるよ。ゾロアくん。責めたりしないから、話を聞かせて」

ルカリオ「分かってるよ……」


ルカリオの形が段々不安定になって、
輪郭から煙に変わっていく。


ルカリオ(?)「こんなことしててもダメなことくらい……だけど……」


そして煙の中から出てきたのは、あまりに頼りない小さな背中。
彼は振り向いて、涙を堪えた目をアタシに向ける。


ゾロア「どうすればいいかわからないんだよ……!」

ルージュラ「ゾロアくん……何があったか、教えてくれる?」

ゾロア「うん……」

 ▼ 87 enPNohyjRg 20/02/14 23:02:03 ID:BjUwMIkk [85/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


校舎を出て、静かな物陰に移動する。
誰にも聞かれそうにないのを確認して腰を下ろした。


ゾロア「……騙したりして、ごめん」


気にするな。とは正直言えない。
ここ1ヶ月間ずっと予知夢内のルカリオくんの返事に惑わされてきた。
それが最初から偽物だったなんて聞いて
怒りが全くないといえば嘘になる。


だけどこれで2週間以上ずっと同じ予知を見続けた理由も説明がつく。
いくらルカリオくんにアピールしても、
相手が本物のルカリオくんじゃないのだから意味が無い。

その証拠に予知が変化する時はいつも、
ルカリオくんとの関係性が変わった時ではなく、
ゾロアくんとの関係性が変わった時だった。


昨日のギリギリまでそれに気づかなかったアタシも間抜けだと思う。


 ▼ 88 enPNohyjRg 20/02/14 23:02:24 ID:BjUwMIkk [86/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

それに他の予知でのゾロアくんの様子を見た限り、
彼はこのことに関してかなり罪悪感を持っているようだったし。
怒っていても仕方ない。
事情を聞くのが先だ。


ルージュラ「それより、どうしてこんなことを? ルカリオくんのため?」

ゾロア「うん。ルカリオが悪いやつらに捕まっちゃったんだ」


やっぱり……。
予知夢の中でも、
ルカリオくんが行方不明になったことで、
警察が家に来て、ゾロアくんが凄く謝っている内容のものがあった。


ルージュラ「その悪いやつらっていうのは誰?」

ゾロア「白いユーレイみたいな奴と……」


ユキメノコだ。
そしてやはりもう1匹いるのか……。
ゾロアが少し言葉に詰まっているのを見て、察してしまう。


ルージュラ「クサイハナ?」

ゾロア「うん……」

 ▼ 89 enPNohyjRg 20/02/14 23:02:47 ID:BjUwMIkk [87/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ゾロアくんが
自身は何も悪くないのに申し訳なさそうに、
控えめに頷く。
それを見て、わかっていてもショックを受ける。

できれば考えすぎであって欲しかった。
昨日から覚悟していたことだけど、

あまりに飲み込みがたい事実に、喉がつまりそうな感覚になる。


ゾロア「ルカリオを助けたいなら、ルカリオになってルージュラと縁を切れ。って……」


だいたい思った通りだった。
けれど『言う通りにすればルカリオくんを助ける』と言うのはたぶん嘘で。
それをゾロアくんもそれをわかっていたようだ。


ゾロア「言う通りにしたって解放してくれるわけないのに……ごめん」


絞り出した声は、涙で濡れていた。
ゾロアくんは生意気そうに見えて、意外と罪悪感や自責の念を積み重ねてしまうタイプなのかもしれない。
予知夢の中で彼が泣きながら謝ってる様が強く印象に残ってる。


彼をこんなになるまで追い詰めた相手に、怒りが込み上げてきた。


しかし焦りは禁物だ。
絶対に許せないからこそ、慎重に正しく対応する。
アタシには予知で得た情報がついているのだから。

 ▼ 90 enPNohyjRg 20/02/14 23:04:48 ID:BjUwMIkk [88/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


── さて、ここで一旦、時間は遡る。


朝にルージュラたちが登校した少しあと、
ルカリオは机に入っていた手紙を読む。
その送り主に少々警戒しながらも教室を出た。

この時の彼の行先に、
ルージュラは心当たりがあった。
そしてその見込みは見事的中していた。

校舎裏だ。


ルカリオ「僕に何の用?」

クサイハナ「お久しぶり……」

ルカリオ「告白なら返事は変わらないよ」

クサイハナ「いいえ。ただ、これからも友達としていてほしいなって思って」


モジモジしながら言って、彼女はチョコを差し出した。
義理チョコというやつだ。


 ▼ 91 enPNohyjRg 20/02/14 23:05:06 ID:BjUwMIkk [89/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


しかし愛の告白ならともかく。
友達としてなのにどうして、校舎裏に呼び出す必要があるのか。
ルカリオは怪しんだ。

しかしみんなに好かれる一面でもある彼の誠実さが、
今回は裏目に出てしまった。


クサイハナ「食べてもらえますか?」

ルカリオ「わかった。これで"普通の友達"ね」


受け取って、青い包装紙を剥がす。
チョコレートの甘い匂いが鼻をつく。

一瞬ためらってから、茶色い四角形の角をかじる。


カリッ
 ▼ 92 enPNohyjRg 20/02/14 23:05:21 ID:BjUwMIkk [90/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


クサイハナ「どうですか?」

ルカリオ「うん。良いと思 ──」


味の感想を言おうと、
飲み込んだ瞬間に意識が朦朧とし始めた。

目に映るものが歪んで、立つこともままならないほど……。


クサイハナ「ごめんね」


倒れたルカリオを見下ろしながらほくそ笑む。
チョコレートの中には、彼女特製の"ねむりごな"が混ぜられていた。

校舎裏には丁寧に剥がされた青い包装紙だけが残る……。

 ▼ 93 enPNohyjRg 20/02/14 23:05:41 ID:BjUwMIkk [91/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



数時間後、ルカリオが目を覚ましたのはどこかわからない洞窟の中だった。


ルカリオ「ここは……」

クサイハナ「あっ、ようやく目を覚ましたんだルカリオくん」

ルカリオ「……っ! しまった……」


自分が眠らされていたことに気づいて、
その場から離れようとする。しかし手足が洞窟と一緒に凍らされており、その場から動けない。



ユキメノコ「残念。逃げられないわよ」

ルカリオ「お前は……!?」

ユキメノコ「初めまして。私はあなたみたいなイケメン男の子を捕まえて所有するのが趣味のお姉さんよ」

 ▼ 94 enPNohyjRg 20/02/14 23:06:20 ID:BjUwMIkk [92/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ルカリオ「まさかあんたが例の誘拐事件の犯人なのか?」

ユキメノコ「あらご存知?嬉しいわあ」


ルカリオは話しながら様子を伺う。
洞窟内は波動が反響してわかりづらいが、
どうやらこの2匹以外に協力者はいないようだった。


ルカリオ「あんたたちは何が目的なんだ? クサイハナは一体どうしてこんなことを?」

クサイハナ「ルカリオくんのせいに決まってるじゃない」


頭を勢いよくルカリオの鼻先に近づける。


クサイハナ「私はこんなにあなたが大好きなのに、あなたはどうしてあんな雌に!」

ルカリオ「あんな雌?」

クサイハナ「ルージュラのことよ! あなたたち最近できてるんでしょ!? あんな顔の黒いギャルみたいなブスがタイプとは驚いたわ!」

ルカリオ「それなら心配しなくても。あんたも十分顔が黒いブスだよ」

クサイハナ「黙りなさい!」


絶叫が洞窟内に響き渡る。

 ▼ 95 enPNohyjRg 20/02/14 23:06:59 ID:BjUwMIkk [93/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


クサイハナ「だからあなたは私のものにすることにしたの。知ってる? ユキメノコさんは若い男の子を捕まえて、イケメンのまま氷漬けにしてるんだって」

ルカリオ「い、イカれてるよ……」

クサイハナ「あなたはこれからユキメノコさんに冷凍保存してもらう」


これから行われようとしているおぞましい計画を知り、背筋が凍りつく感覚がした。
クサイハナは彼の恐怖にひきつった顔を撫でる。


クサイハナ「そうすればずっと私のものよ。一生私の横に置いて、愛でてあげる!」

ルカリオ「……っ」


至近距離まで顔を近づけたまま叫ぶと唾がかかり、緩んだ口元からヨダレが垂れ下がる。
クサイハナの口の中の体液は強烈な悪臭を放っていた。

 ▼ 96 enPNohyjRg 20/02/14 23:07:17 ID:BjUwMIkk [94/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ユキメノコ「それにしても、ガードが固いルカリオを、こんなに簡単に捕まえられるとは思わなかったわ」

クサイハナ「ねむりごなはどんな強いポケモンでも眠らせちゃうのよ。それにルカリオくんは優しいから、私をフった時の罪悪感もあったのかな〜?」


ユキメノコ「アタシも1ヶ月くらい前にルカリオを襲おうとして、ルージュラとかいう雌に邪魔されたわ」

クサイハナ「そうなの?」

ユキメノコ「だけどようやく捕らえられた。あなたのお陰よ。本当にありがとう。クサイハナちゃん」


ユキメノコはまさにユーレイのようにユラユラと、
音を立てずにクサイハナの背後に近づく。


ユキメノコ「そしてさようなら」

クサイハナ「へ?」


パキパキ……

パキンッ!
 ▼ 97 enPNohyjRg 20/02/14 23:07:38 ID:BjUwMIkk [95/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ユキメノコの放った冷気によって、クサイハナは一瞬で氷に覆われてしまった。

動かない氷像を手で払いのける。


ルカリオ「ひどいな。仲間じゃないのかよ」

ユキメノコ「あっちはそのつもりだったみたいだけどね。私はあなたを手に入れるために利用しただけ」

ユキメノコ「波動を操るあなたは隙がなかったから、普通に襲わず眠らせて拘束できるのは都合が良かったのよ」

ルカリオ「それなら眠らせてる間に氷漬けにしてしまえば良かったのに。僕が起きる時間を与えたら、拘束を解いちゃうかもしれないぜ」

ユキメノコ「ばかねえ」


クスっと笑いながらルカリオの胸にある角の、
鋭く尖った先端に手を置く。


ユキメノコ「それじゃあ面白くないでしょう?」

ルカリオ「うっ……!」


角を通して、一瞬のうちに体全体が冷えきった。
角の感覚がなくなっていく。

 ▼ 98 enPNohyjRg 20/02/14 23:07:56 ID:BjUwMIkk [96/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルカリオ「う、うあ……っ!」

ユキメノコ「こうして少しずつ凍らせた方が、苦しむ顔が見れて楽しいじゃない」


胸元から徐々に冷気を送られて、隅々まで行き渡る。
触れられたところからジワジワ凍りついていくのがわかる。
このままでは本当に冷凍保存まであっという間だ。


ルカリオ「くっ……」

ユキメノコ「ふふ、抵抗は無駄ですよ。あなたの体はすでに冷えすぎて、動かなくなっています」

ルカリオ「はっ、はっ」


体が体温をあげようと、懸命に震えているのがわかる。
しかしその程度の抵抗でどうにかなるものではなかった。


ユキメノコ「それでは永遠の夢へ。お眠りなさい」

 ▼ 99 enPNohyjRg 20/02/14 23:08:11 ID:BjUwMIkk [97/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ルカリオ「……」


冷気に耐えかね、意識を失いそうになった。
その時だった。


ゾロア「そこまでだ!!」


洞窟に少年の声が響く。


ユキメノコ「何ですか。今いいところなのに。邪魔は許しませんよ……」


ユキメノコが洞窟の入口を振り返ると。
そこにあったのは、ゾロアの小さな影だけではない。

ジバコイルやレアコイルといった
警察ポケモンたちや、見慣れないポケモン……フーディンの影まであった。


ジバコイル「ようやく追い詰めました。悪さはこれまでですヨ」

ユキメノコ「なっ!? 警察がどうしてここに……!?」

ジバコイル「ユキメノコ。アナタを逮捕します!!!」



────

 ▼ 100 enPNohyjRg 20/02/14 23:08:36 ID:BjUwMIkk [98/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




──── 再び時間を遡り、場面はルージュラたちに戻る。




 ▼ 101 enPNohyjRg 20/02/14 23:08:53 ID:BjUwMIkk [99/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

─── ゾロアくんから話を聞いた後、
アタシたちは予知夢を元に準備を始めていた。


ゾロア「ごめんなさい……」


彼は謝る必要が無いところでも執拗に謝る。
それほどに落ち込んでいるのだろう。

予知夢の中でもゾロアくんは、
泣きながら謝る姿を見せていた。

そのお陰でルカリオくんが偽物だと気づけたのだ。


ゾロアくんの変身に気づかないことが、
ルカリオくんを助けられるか助けられないかの境目なのだとすれば。

ゾロアくんが誠実に自分と向き合える"良い子"だったからこそ、
これからルカリオを助けられるのだ。

そんなことを考えるが、まだ口には出さなかった。

 ▼ 102 enPNohyjRg 20/02/14 23:09:17 ID:BjUwMIkk [100/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ルカリオを助けるために、
アタシたちは学校から少し離れた場所に訪れていた……。
そこは警察のポケモンたちがたくさん集まって会議とかしている場所だ。


ルージュラ「はぁ……はぁ……ジバコイルさん!」

ジバコイル「オヤオヤ、そんなに疲れた様子で、何か緊急事態ですカ?」

ルージュラ「はい! 誘拐事件の犯人がわかりました! 警察のポケモンをたくさん集めて、今すぐついてきてください!」

ゾロア「ルカリオが捕まってピンチなんです!」

ジバコイル「ナ、ナンデスッテ!?」


 ▼ 103 enPNohyjRg 20/02/14 23:09:42 ID:BjUwMIkk [101/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

警察のポケモンたちを引き連れて、
今度はまた学校の方へ急いで戻る。


ジバコイル「流石に子どもの証言だけで、ケーサツ署を留守にするわけにはいきません」


アタシとゾロアの後に増えたのは、
ジバコイル、レアコイル、コイルの3匹だ。
しかし戦力としては十分だろう。


前日に見た……ユキメノコにボコボコにされる予知夢を思い出す。


あれは多分だけど、
立ち上がったアタシがそのままの勢いで、
無謀にも1匹のみでルカリオを助けようとした結果、返り討ちにされたのだと思う。

敵の数はそんなに多くないっぽいし。

警察の方々がいれば心強い。

 ▼ 104 enPNohyjRg 20/02/14 23:09:59 ID:BjUwMIkk [102/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


そして次に来たのは、学校の校舎裏だ。

なんで校舎裏かって?
そりゃあアレを拾いに来たに決まってる。


ルージュラ「……あった」

ジバコイル「それは捨てられたゴミ?」

ルージュラ「はい。でもとっても大事なものです」


しゃがんで青い包装紙を取ると、そのままの姿勢でゾロアくんに目を合わせる。

ルージュラ「ゾロアくん。あなたが真面目な良い子だったからこそ、アタシたちはルカリオくんを助けるためにここまで頑張れたのよ」

ゾロア「い、いきなり何だよ?」

ルージュラ「だからもう一度だけ、ルカリオくんを助けるために力を貸してくれる?」


ゾロアくんは鼻が良い。
 ▼ 105 enPNohyjRg 20/02/14 23:10:26 ID:BjUwMIkk [103/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ゾロア「やってみる!」


とはいえチョコを包んでいた紙だ。
チョコレートの甘い匂いが染みついている。


ルージュラ「やっぱり厳しそう?」

ゾロア「いや、ほんの少しだけ変な臭いが残ってる」


幸いにも包装紙にまで、クサイハナの強烈な匂いが残っていた。
それを頼りにゾロアくんが臭いを辿り、道案内をしてもらう。

その道中でこんな話をした。


ルージュラ「ゾロアくんは、自分だけじゃなくて他人を変身させたりできないの?」

ゾロア「1匹までなら出来るよ。でもなんで?」

ルージュラ「アタシをフーディンってポケモンに変えてほしいの」


クサイハナの臭いを辿って森を抜けた先。
たどり着いたのは小さい洞窟だった……。

 ▼ 106 enPNohyjRg 20/02/14 23:10:43 ID:BjUwMIkk [104/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



──── そして、今に至る。



 ▼ 107 enPNohyjRg 20/02/14 23:11:05 ID:BjUwMIkk [105/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ジバコイル「ビビビッ、ゲンコーハンデース!!」

レアコイル「タイホ! タイホ!」

コイル「10万ボルト!!」

ユキメノコ「ぎゃああああああ!」


3匹による強力なイカヅチが、ユキメノコに直撃する。
なんと1発でダウンさせてしまった。
流石は警察! といったところか。


ゾロア「凄い……」

フーディン(ルージュラ)「ルカリオくんを助けないと!」

ゾロア「あっ! うん!」


ユキメノコがコイルたちに捕まってるのを横目に、2匹でルカリオくんの拘束を解く。

どうやら意識を失ってるみたいで、
本当は良くないけどアタシとしては少しホッとした。


 ▼ 108 enPNohyjRg 20/02/14 23:11:25 ID:BjUwMIkk [106/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


体が異常に冷たくなっており、
肌に霜までできているのが不安だけど、
熱を出すわざも持ってないのではどうしようも……。


ゾロア「んっ」


ゾロアくんがぎゅっとルカリオに身を寄せる。


フーディン「ゾロアくん……?」

ゾロア「ちょっとでもあっためないと」

フーディン「……そうね。そうよね……!」


同じように抱き寄せて、2匹でルカリオくんを挟みながら暖める。
そうしている間にユキメノコの拘束は終わり。
洞窟の端に凍ったまたクサイハナが残っているのが見えた……。


 ▼ 109 enPNohyjRg 20/02/14 23:11:42 ID:BjUwMIkk [107/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


その後。
警察に引き取られたルカリオくんとクサイハナの体は、
ゆっくり慎重に解凍されて、無事に意識が回復した。
そしてユキメノコとクサイハナは逮捕された。


アタシとゾロアくん、ルカリオくんはしばらく警察署に残って事件に関する詳しい話を聞かれる。
流石に誤魔化すべきじゃないと思って、未来予知のことも全部話した。

かなり長時間に渡ったため、
それぞれの両親も来てくれたがアタシは少しだけ話して帰ってもらった。

まだアタシには、やることが残っているからだ。

 ▼ 110 enPNohyjRg 20/02/14 23:12:01 ID:BjUwMIkk [108/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ジバコイル「この後も取調べがあるので、なるべく短くお願いシマス」

ルージュラ「はい。ありがとうございます」

クサイハナ「……」


ガラス越しのクサイハナがこちらを見て、目を見開く。
アタシは警察の方々にクサイハナとの面会を頼んだ。


ルージュラ「何でこんなことしたのよ」

クサイハナ「……あなたが、羨ましかった」

ルージュラ「アタシが?」

クサイハナ「私の愛は全然届かなかったのに、あなたはどんどん距離を縮めていく」

ルージュラ「だからって……」

クサイハナ「私を断る時、彼はなんて言ったと思う?」


クサイハナ「『他に好きな相手がいるから』って言ったのよ」


ルージュラ「え……」
 ▼ 111 enPNohyjRg 20/02/14 23:12:46 ID:BjUwMIkk [109/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ルージュラ「それって……」

クサイハナ「だからそんなやつより私の方があなたを愛してるって教えてやったのよ。ふふふふ」


クサイハナの動機よりも、
ルカリオくんが言ったとされる言葉の方が衝撃が大きかった。

他に好きな相手……?
一体誰のこと?
クサイハナはアタシだと思ってたみたいだけど、それはちょっと都合が良すぎる気がする。
アタシが卑屈なだけ?

そんなことばかり考えてる間に、貴重なクサイハナとの面会時間は終わってしまった。


 ▼ 112 enPNohyjRg 20/02/14 23:13:19 ID:BjUwMIkk [110/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



少し前にバレンタイン後に、
ルカリオくんと付き合うことになる予知夢を見た。

そのあと、告白が成功したはずなのになぜかモヤモヤが消えなかったのを覚えている
その理由も今なら何となくわかる気がした。


クサイハナがルカリオを愛していたのはわかる。
だけどそれはあまりに一方通行で、
独りよがりなものだった。

気持ちの押しつけで相手を傷つけちゃいけない。


アタシが洞窟に行く前、
ゾロアくんにフーディンに変身させてもらったのは、
ルカリオくんに恩を売りたくなかったからである。
 ▼ 113 enPNohyjRg 20/02/14 23:13:39 ID:BjUwMIkk [111/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


考えすぎかもしれないけど、
直接相手を傷つけたわけじゃなくても、
好きを押し通すために相手の気持ちをねじ曲げてしまうのは本意じゃない。

告白成功の予知夢で腑に落ちなかったのは、
あの未来のアタシは今回の件で命の恩を着せてしまっており、ルカリオくんが断りづらい状況ができていたからじゃないだろうか……。

未来に追いつく以外に確かめる方法はない。
追いついたところで、確かめられるかもわからない。

 ▼ 114 enPNohyjRg 20/02/14 23:14:04 ID:BjUwMIkk [112/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ゾロア「それじゃあ、先に帰るよ。今日はありがとう……ホントに」

ルージュラ「うん。またね」

ゾロアくんは早めに事情聴取を終えたあと、
迎えに来た両親と共に帰っていった。
家族とは上手くやっているみたいで嬉しくなる。

最後に照れくさそうにお礼を言った。


アタシとルカリオくんの聴取は本当に長くて、
特に被害者のルカリオくんは1番長時間かかっていた。


少し早く終わったアタシは、入口前で待つ。

ルカリオくんが目覚めて事情聴取を終えて、
ようやく入口から姿を現す頃には、
なんと夜の10時頃になってっていた。

流石に帰ろうか少し迷った。
しかしせっかくならやはり今日中がいい。

そしてルカリオが逆光に照らされながら出てくる時に、想定外の事態が起こる。


親が付き添っていた。

 ▼ 115 enPNohyjRg 20/02/14 23:14:23 ID:BjUwMIkk [113/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

いや、考えてみれば当たり前のことだ。
誘拐されたばかりの子どもに、1匹で夜道を歩かせるわけない。

しかしそれと同時に困る。
だってルカリオくんにとっては、助けてくれたポケモンはルージュラではなくフーディンだ。
ここでルージュラが声をかければ普通に不審者である。

それにルカリオは先刻の事件で、チョコを使って眠らされた後である。
尚更今はチョコレートなんて渡すべきじゃないだろう。


……仕方ない。今日は諦めよう。
そう思ってルカリオくんに背を向けた矢先のことだ。


ルカリオ「ねえ、君さ!」

ルージュラ「へ?」

ルカリオ「僕に何か用?」

ルージュラ「え?」

ルカリオ「待っててくれたんだろう?」


えっ、ええええええええ。
向こうから声をかけてくれるなんて……!

 ▼ 116 enPNohyjRg 20/02/14 23:14:45 ID:BjUwMIkk [114/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルージュラ「いや! えっと……」


彼は無言でアタシの言葉を待っている。
ヤバい。どうすればいい?

そもそもなんでアタシのことを呼び止めてくれたの?
何も知らないはずなのに……。


ルージュラ「えっと、ご、ごめんなさい!」


テンパってなぜか謝ってしまった。


ルカリオ「用ないの?」

ルージュラ「え……」


いや、ある!
あるけど……だけどどうすれば……。


ルカリオ「……それじゃ、また今度学校で」

ルージュラ「あ……」


ああ、ルカリオくんが行ってしまう。

離れてしまう。


 ▼ 117 enPNohyjRg 20/02/14 23:16:03 ID:BjUwMIkk [115/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


本当にこれでいいの……?

ダメ……!
良くない!

ホントは今すぐ彼の背中に抱きついてでも、止めたい……!

止めて、伝えたい!
予知夢のことも、事件のことも、
何もかも打ち明けて……想いを……!

この日のために頑張ってきたんだもの。
今言えなきゃ私は、きっと一生後悔する!

そんなのイヤだ!!



だけど……アタシのワガママかな。
本当に相手を想うなら、自分のために行動しちゃいけない。
アタシの自分勝手なワガママで、もしルカリオくんを傷つけてしまったら、
それじゃあクサイハナと同じになってしまう。

別に今日の今じゃなくたって
チョコは渡せるし。告白だってできるんだから。

今欲張って後悔するくらいなら、アタシは……。


告白するのを諦めかけた、その時 ── !

ルカリオくんが足を止めた。

 ▼ 118 enPNohyjRg 20/02/14 23:16:53 ID:BjUwMIkk [116/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルージュラ「……?」


そして背を向けたまま、こう言った。


ルカリオ「ありがとう」


…………え?
ど、どうして?


ルカリオ「ルージュラが助けてくれたんだろう? ポケモンが放つ波動はそれぞれ違うから、1度会ったことのあるポケモンは別の誰かに変身しててもわかるんだ」

ルージュラ「それって……」


アタシがフーディンに変身してたのを見破ってた……。
ってことは洞窟の時から起きてたってこと?
じゃあアタシがゾロアくんと抱きついて暖めてる時も……!?

みるみるうちに顔が沸騰するのがわかる。

 ▼ 119 enPNohyjRg 20/02/14 23:17:15 ID:BjUwMIkk [117/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルカリオ「だからフーディンの正体が君だってことはすぐわかった。僕のために警察の方々を説得したり、頑張ってくれたことも聞いたよ。だけど何でわざわざ変身してたのかだけがわからなかった」


ゾロアくんにも、ジバコイルさんたちにも、
アタシの存在は秘密にしてもらうようにお願いしておいた。


ルカリオ「警察のポケモンやゾロアにも聞いてみたけど、教えてくれなかったよ。だけど今の話してみて何となくわかったよ」

ルカリオ「君は優しいな」


彼はこっちを向き直して、

アタシだけにまっすぐ微笑む。



ルカリオ「僕はルージュラのことが好きだよ」

 ▼ 120 enPNohyjRg 20/02/14 23:17:38 ID:BjUwMIkk [118/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルカリオ「君もそうだったら、嬉しいんだけど……」

ルージュラ「好き。好きよ……」


色々考えてたのが全部吹き飛んで、食い気味に答える。


ルージュラ「私も、ルカリオくんのことが好き!」


バッグの中に手を突っ込んで、チョコを引っ張り出す。
しかし何故かバッグの底の方に落ちており、中々取り出せない。


ルージュラ「あ、ちょっと待って! 持ってきてるから!」


ガサガサと探してる時間で、ロマンチックだったはずのムードがだんだん気まずくなる。
耐えきれなくてチョコが出てくるまで、バッグの中に入っているものを全部出してしまうことにした。

空になったお弁当、違う!

水筒、違う!

お勉強道具、違う!

空のやかん、何でそんなの入ってるのよ!

目覚まし時計、だから何でそんなものが!?



ルージュラ「あったっ!」


ようやく赤い包装紙で
可愛くラッピングしたハート型のチョコが登場する。
 ▼ 121 enPNohyjRg 20/02/14 23:18:26 ID:BjUwMIkk [119/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


今のガサツな行動で嫌われたりしてないかな。
なんてさらに顔を赤くしながらチョコを両手で持つ。
落とさないようにしっかり持つ。

そしてずっと待っててくれたルカリオくんに駆け寄る。


ルージュラ「わっ」


勢いよく近づきすぎて、胸の棘に突き刺さりそうになった。
そんなアタシの肩をルカリオくんが支える。


ルージュラ「アタシが作ったチョコレート……受け取ってくれる?」

ルカリオ「もちろん」


ハート型なのは当然、"恋愛感情としての好き"表している。
その本命チョコがルカリオくんの手に渡って、見つめ合う。


ルカリオ「ここで食べてもいい?」

ルージュラ「もちろん!」


律儀な質問に笑顔で返す。ずっとアタシに見られてるのは、緊張とかでやりづらいだろうか。丁寧に包装を解いて中のチョコを取り出す。


ルカリオ「それじゃあ、いただきます」


ハートの2つの半円を持って、尖った先端に口をつける。

 ▼ 122 enPNohyjRg 20/02/14 23:18:46 ID:BjUwMIkk [120/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





ガリッ




 ▼ 123 enPNohyjRg 20/02/14 23:19:03 ID:BjUwMIkk [121/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルカリオ「甘い……」
ルージュラ「あれ、もしかして甘いの苦手だった?」
ルカリオ「いーや、大好物」


ガリッ、ともう一口。


ルカリオ「すごく美味しい」

ルージュラ「よかった……!」


その言葉が何より嬉しくて、安心した。

 ▼ 124 enPNohyjRg 20/02/14 23:19:55 ID:BjUwMIkk [122/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


あっという間に食べ終えた彼は、
途中から溶けて手についたチョコを見つめる。
迷ったのか少し時間を置いてから、右の手のひらをペロッとひと舐めした。


ルージュラ「ふふっ」

ルカリオ「ご、ごめん!流石に汚かったかな」

ルージュラ「ううん。大丈夫」


アタシの反応を確認してから、
また少し迷いながら左手についたチョコも舌で舐め取る。


ルージュラ「あはは」

ルカリオ「な、なんだよ。いいだろう?」

ルージュラ「うん。アタシね……ルカリオくんのことを、もっと知りたい」

ルカリオ「じゃあ……付き合おうか?」


ルージュラ「うん!」



2匹で家への帰り道を歩く。
その時間があまりに幸せで、わざとゆっくり歩いたり、途中で立ち止まったり、
1度しかないこの夜を最大限に味わっていた。

そして家に帰る頃には日付が変わっていて、
波乱のバレンタインデーは幕を下ろした。

 ▼ 125 enPNohyjRg 20/02/14 23:20:35 ID:BjUwMIkk [123/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



それからというものの、アタシたちは今までと特に変化なく生活している。


しいて違うことといえば。
・家は近くないけど、わざわざ登下校の道を変えて一緒に学校に通うようになったとか。

・お昼ご飯を毎日一緒に食べるようになったとか。

・休み時間に時間を見つけては、会ってお喋りをしたりとか。

・放課後に一緒に帰って寄り道をしたりとか。

それくらいのこと。
だけどそれが何よりも楽しくて幸せで。
まるで甘いチョコの海を泳いでるみたいだ。

 ▼ 126 enPNohyjRg 20/02/14 23:21:44 ID:BjUwMIkk [124/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


幸せすぎて
「このまま時間が凍りつけばいいのに」
そんなことも思う時もある。

今のアタシがただ1つ不安なことは、
ルカリオくんとお別れする予知夢を見てしまうことだ。
だげどもしそんな予知を見てしまったら、何がなんでも全力で覆してやろうと思う。

フーディンさんが教えてくれたから。
それがたとえ、どんなに苦くて飲み込めないような未来だったとしても。


未来は変えられる。


変えてやる。


だってアタシは、ルカリオくんのことが大好きだから。
 ▼ 127 enPNohyjRg 20/02/14 23:22:55 ID:BjUwMIkk [125/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


そして数ヶ月後……。
学年が代わり、クラスも入れ変わった。
残念ながらルカリオくんとは別のクラスだ。

それからは一緒に帰るために待ち合わせをするようになった。


ルカリオ「ルージュラ! 待った?」

ルージュラ「いいえ。今ちょうど来たばっかり」

ルカリオ「よかった。それじゃあ、これからどこに行く?」

ルージュラ「月が綺麗に見えるところへ」

ルカリオ「いいね。賛成」


アタシたちの、
どんな未来よりも美しい夢を、
チョコレートよりも甘ったるい恋を、
絶対に終わらせやしない。





ルージュラの恋愛シミュレーションゲーム 「超娘冷凍美ー夢 〜甘くて苦い恋の味〜」


────── 完。
 ▼ 128 キメノコ@おとどけもの 20/02/14 23:31:48 ID:Dnj..b3. [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しあわせにおなり
 ▼ 129 enPNohyjRg 20/02/14 23:42:02 ID:BjUwMIkk [126/126] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
読んでくださった方、ありがとうございました。

このSSはこちらのバレンタイン企画に参加しています。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1140087
 ▼ 130 ノムー@まひなおしのみ 20/02/15 00:43:45 ID:94WsbqL. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙!
ルージュラ視点でテンポがよかった
 ▼ 131 レザード@おかえしメール 20/02/15 00:59:21 ID:rGGghoAY NGネーム登録 NGID登録 報告
素晴らしい
 ▼ 132 ルガルド@みどりのバンダナ 20/02/19 07:57:21 ID:MsE6heG. NGネーム登録 NGID登録 報告
おっつおつ〜
 ▼ 133 ガカイロス@リザードナイトY 20/02/19 09:51:06 ID:/GP28hLA NGネーム登録 NGID登録 報告
ルージェラ主人公で面白いとか嘘だろ……
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