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SS

夜行人間【コンビSS】

 ▼ 1 zJuMH0jN9Y 21/07/25 18:25:22 ID:CXwYlQyI [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
夜の帳が下りた時、夜行人は現れる────。


酔いたい夜だった。
何もかもがどうでもよくて、息をすることすら忘れてしまいそうになる。
頭の中では、あいつの顔が泉のように湧いてきていた。
笑った顔、泣いた顔、怒った顔、悲しい顔。
どれもが大事な記憶で、どれもがもう過去の記憶だった。
取り返しのつかないことを、俺はしてしまったのだ。

グリーン「はぁ」

息が白く舞い上がっていく。
それを見て、もうそんな季節かと心の中でつぶやいた。
口に出す気力なんて残っていない。
今俺にあるのは、醜い男の亡骸だけだ。

???「ねぇ君、僕とひとつゲームしない?」

突然、右耳の鼓膜が知らない声に揺らされた。
ふり向くと、紅眼の男が気味の悪い笑みを浮かべて立っていた。
突然のことで、俺は露骨に動揺した。
なんせ、今いるここは俺が住んでいるマンションのベランダなのだ。
階数は六階。
到底登って来れる高さではないし、オートロック付きのマンションのため、人が中から入って来たと考えるのは現実味がなかった。
 ▼ 2 zJuMH0jN9Y 21/07/25 18:31:09 ID:CXwYlQyI [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グリーン「誰、だ?」

反射的に俺は質問をした。
すると、紅眼の男はさらに口角を上げ、声高く言った。

???「夜行人だよ」

一瞬、自分の耳を疑った。
今、目の前のこいつはなんと言っただろうか。
夜行人……?
そんなワードは生まれてから一度も聞いたことがない。

グリーン「は……? 夜行人? 何言ってんだよ、さっきから」

夜行人「君は知らないのか、夜行人を」

夜行人と名乗る男は不思議そうに俺を見つめた。

グリーン「それと、どうやってここにきた? 警察呼ぶぞ……!」

そう叫びながら俺は腰のモンスターボールに手をかけた。

???「怖いなぁ、まったく。私は夜行人だから、夜のうちはどこにでも行けるんだよ」

言っている意味が全く理解できなかった。
夜のうちはどこにでも行けるなんて能力は、ポケモンだけの話だ。
人が持っているわけがない。
もしや、と思ったのも束の間、彼の一言に俺の考えは裏切られることになった。
 ▼ 3 zJuMH0jN9Y 21/07/25 18:37:30 ID:CXwYlQyI [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
夜行人「夜行人っていうのはね、その名の通り、夜を巡回する人間のことだよ」

グリーン「夜を巡回する……?」

夜行人「そう。夜行人として、生き続けるためにね。君には、その協力をしてもらいたいんだ」

グリーン「さっき言ってた、ゲームをすることか?」

夜行人「そうそう、物分かりがいいね。ほんの少し、ゲームをしてもらうだけでいい。そしたら私は生き続けることができる。そして君も、今の辛い思いから抜け出せることができるんだ。ウィンウィンの関係だろ?」

こいつが言っていることも、今起きている謎めいた状況もよくわからなかった。
だが、今こいつは『辛い思いから抜け出せる』と言った。
それは今、情けないと感じながらも俺が一番望んでいることだった。
この呪縛から解かれることができるなら、俺はどうなったっていい。
だから、

グリーン「するよ、そのゲーム」

俺はこいつにそう言い放った。

夜行人「ふふ、君、最高だね」

そう言って、彼は俺の額に手を当てた。

夜行人「君は今からある夢を見る。そこで、あるものと戦って欲しいんだ」

グリーン「あるもの……?」

夜行人「君の過去だよ。君はその過去に勝っても負けてもどちらでもいい。ただ、この夢には必ず結末がある」

こいつの手は信じられないほど冷たく、どこか儚くか弱いものだった。
その手に少しずつ力が加えられ、俺の額にじんわりと熱が伝わっていく。

夜行人「それを決めるのは、君自身だ」

その言葉が聞こえた瞬間、全身の力が流れるように抜けていった。
視界は真っ暗で、何も見えない。
声を出そうとしても、まるで体が自分のものではなくなったかのように、言うことを聞かなかった。
 ▼ 4 zJuMH0jN9Y 21/07/30 22:25:01 ID:E6SUR5i2 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「いってらっしゃい。そして、いただきます」

そんな声が聞こえて、俺の意識は、いつかの過去へと消えていった。


***


「おーい。どうしたんだよ、グリーン」

気がつくと、俺はクチバの居酒屋にいた。

周りには旅の途中で知り合った友人や、ジムリーダー、四天王達がいる。
どうして、俺がここに……?

「グリーンってば!」

俺が周りを見渡していると、隣にいた友人、ブルーが腕を叩いてきた。

「ほら、聞かれてるよ、キョウさんに。グリーンにとってのワタルさんがどんな人だったか」

ああ、そうか。
思い出した。
俺はあの夜行人にゲームへの参加を求められて、それに参加したんだ。
ということはここは……夢の中か?
あまりにも現実味帯びていて、夢の中であることを疑ってしまう。

「ああ、ごめんごめん。俺にとってのワタルさんは……そうだな、目指すべき目標。かな」

俺は適当にそう答え、今俺が置かれている状況を整理することにする。
夜行人が言っていたことが本当であるならば、ここは過去の出来事の中ということになる。
旅で出会った友人に、リーグ関係者。そして、居酒屋。
つまり、これはリーグ関係者の歓迎会だ(もっとも俺の記憶が正しければの話だが)。
そして、この日に『あいつ』と……。

シバ「成る程、グリーン君は若くも良き目標を見つけ、きたえたからこんなにも強くなれたのだな」
「ええ、そうかもしれませんね。」

それはそうと、確か今日は『あいつ』のチャンピオン就任の日でもあったよな?

ワタル「そういえばグリーン君、レッド君が今どこにいるか知ってるかい?」

ああ、なんとなく思い出してきた。
レッドに会いたくなって居酒屋から飛び出したんだ。

「ブルーごめん、任せた」
「えっ?」

俺はブルーに小声でそう言って立ち上がった。

「ちょっと外の空気吸ってくる」

俺はそそくさとあいつがいるところへと向かった。
 ▼ 5 zJuMH0jN9Y 21/07/30 22:26:39 ID:E6SUR5i2 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
***


扉を開けて、外に出た。

むわっとした居酒屋内とは対照的に、外はとても涼しかった。
外に出てすぐに、ピジョットを出す。

「ピジョット、シロガネ山まで頼む」

時計の針が十二を差しかかったところでポケモンセンターの前に降り着いた



俺は隣にいるチャンピオンに声をかけた。
俺の目指す目標であり、カントー最強の称号であるチャンピオンになった男だ。
でも、今この場面では違う。
今ここにいるのは俺の幼馴染でライバルだ。強さなんてカンケーない。


グリーン「やっぱりここか。」
レッド「ごめん。俺、ああいう集まりが苦手でさ」

レッドは驚いた表情を見せてから、笑いながらそう言った。

レッド「逆に聞くけどグリーンはこんなところまでどうしたんだ?」
グリーン「俺もお前と同じようなもんだよ」

現実で出会った時と、まったく同じ会話だった。
懐かしさと、寂しさが入り混じり合った気持ちが生まれる。
もう一度レッドと話すことができるなんて、思ってもいなかった。

レッド「なあグリーン、最強のポケモントレーナーってなんだと思う?」

レッドが笑みを浮かべながら話し始める。俺に顔を合わせる事なく。

「俺、子供の頃はチャンピオンが憧れだったんだ。旅をしてきたポケモンと一緒に勝利を掴んだり、時には負けたりしてそれでも着実に強くなっていって、そんな時間に憧れてたんだ。でも実際にチャンピオンになってみて、不満しか感じないんだ。チャンピオンなんてこんなもんなんだって。
なんの目標もなくただポケモントレーナーの目標としてレッテルを貼られている自分が嫌なんだ。なんかうまく言えないけど無責任な感じがして。ずっとチャンピオンを目指すポケモントレーナーでいたい」

夜風に吹かれて古ぼけた帽子の下で艶のある髪が靡く
とても様になったその姿は、ずっと俺が追いかけてきたレッドそのものだった。
前を見ただけで自分の目指す目標がいるという当たり前が、とても幸せなことであったと知らずただレッドを倒すことしか考えていなかったことに今更気づく。
俺は、本当に馬鹿だ。

「はあ…」と大きくため息をつく

わがままな願いなのかもしれない。
必ず人は歳をとって、子供は大人になってしまう。
でも、それでも、俺はそんなレッドの願いを叶えてあげたいと思った。
だから、俺は言ったんだ。
 ▼ 6 zJuMH0jN9Y 21/07/30 22:27:16 ID:E6SUR5i2 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「…………セ…………………ぜ……────ざざ、ざッ、ザアアアアアアアアアアア。




途端、目の前にノイズが走った。

見ていた風景も、隣にいたレッドも闇に紛れて消えていく。

そして、俺の意識までもが、荒々しく消えていった。
 ▼ 7 リリダマ@ハガネZ 21/08/01 11:25:21 ID:rzIoeJTQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 8 ラガラ@ピーピーエイダー 21/08/04 11:07:59 ID:stCgT.1c NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 9 ンノーン@かざんのおきいし 21/08/25 16:26:11 ID:UUG2.bFM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
続き気になってたんだけどんあー
 ▼ 10 リル@ぼうじんゴーグル 21/08/28 17:37:53 ID:ldc2Xyfg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あっちで晒されてたの見たけどそこまで悪くなくね?
気になるから再開して欲しいところ
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