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【バレンタインSS】イワンコちゃんのバレンタイン大作戦

 ▼ 1 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/09 20:26:17 ID:.2GkDS3s [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


イワンコ「……ふぁぁ」


イワンコはその日、かなり遅い朝に目を覚ました。飼い主に与えられたベッドから時計を見やり、時刻を確かめて跳ね起きる。


イワンコ「いっけない!! もうこんな時間!!」


今日はバレンタインデー。大好きな人にチョコをあげる日だと、イワンコの飼い主も言っていた。
イワンコは心を踊らせながら、飼い主の女性を揺さぶる。
 ▼ 2 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/09 20:27:00 ID:.2GkDS3s [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「起きて!! 起きて!!」ユサユサ

女『う、うーん……』

イワンコ「今日はバレンタインだよ!! お姉ちゃんもチョコあげるんでしょ!?」

女『んー……あっ、もうこんな時間!!』


寝ぼけ眼で時計を確認した女はベッドから跳ね起き、慌てて支度をして家を飛び出していく。
勿論チョコを鞄の中に忍ばせて。


女『じゃあ私行くね!! いつも通りポケモン用の出入り口は開けておくから、夜には帰ってくるのよ!!』

イワンコ「うん!!」

   ガチャン
 ▼ 3 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/09 20:27:40 ID:.2GkDS3s [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコは尻尾を振りながら飼い主が出ていくのを見送った……そして、鍵が掛けられる音を聞くと同時に台所へ向かった。


イワンコ「じゃあ私も行こうっと!! チョコ喜んで貰えるかな……」ワクワク


そう呟き、お菓子などの詰まった棚を開ける。ポケモンには開けにくいタイプの物であったが、今のイワンコの前では大した障害では無かった。


イワンコ「ええっと、チョコチョコ……」ガサゴソ


クッキー、ポテチ、堅揚げ煎餅。どれも食べ慣れたイワンコの好物。だがそれは今日に相応しくない。


イワンコ「……あった!!」


茶色く甘く香るそれ……板チョコレートをイワンコは二、三枚盗み出し、家の外へと飛び出した。
 ▼ 4 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/10 18:38:36 ID:HgXzK/TQ [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――――

イワンコ「おはよーっ!!」

ガーディ「あ、おはよっ!!」

ポチエナ「おはよう」


外に飛び出したイワンコは、他の人間に飼われているポケモン達と合流した。


イワンコ「今日も晴れて良かったね!!」

ガーディ「だね!!」

ポチエナ「……うん」


ガーディとポチエナ。二匹はよくここで会う飼いポケ仲間だ。今日も彼女らは話に花を咲かせる。
 ▼ 5 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/10 18:39:10 ID:HgXzK/TQ [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガーディ「そういえば、今日バレンタインデーだよね!!」

イワンコ「うん、そうだね!!」

ガーディ「今日はきっとご主人様がチョコくれるんだ!! ポチエナもそうでしょ?」

ポチエナ「……多分」


そんな話をしながら、イワンコは咥えていた板チョコに砂やゴミが付かないように見張っていた……彼に贈るときに、汚れていたら嫌だから。
それを見たガーディが、からかう口調で彼女に喋りかける。


ガーディ「ねえイワンコ……そのチョコ誰にあげるの?」

イワンコ「ぎくっ」

ポチエナ「……気になる」

イワンコ「えっと、その……」
 ▼ 6 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/10 18:39:53 ID:HgXzK/TQ [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
返答に困り、頬を染めながら目を泳がせる彼女は何とかして話題をそらそうと考えた。


イワンコ「そっ、そうだ!! ポチエナちゃんそろそろ誕生日だったよね!!」

ポチエナ「……話題そらし、見え見え」

イワンコ「……しょぼん」


だが失敗。尾を垂らしながらイワンコはその場に伏せる。


イワンコ「うー……」

ガーディ「えっと……イワンコがチョコあげる相手は、誰かな……」

ポチエナ「うーん……」


そんな声を聞きながら、イワンコはその頬を恥ずかしさに真っ赤に染めた。
でもそれがバレたらさらにからかわれるので、なんとか無視しようと努めていた。
 ▼ 7 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/11 10:39:23 ID:fTA480vs [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガーディ「あっ、分かった!! この前言ってたヨーテリーでしょ!!」

イワンコ「さっ……さあね〜……」

ガーディ「ほら図星だ」


そんな会話を頑張って聞き流し、イワンコは辺りの草むらに目を向ける。
まあ、分かりきっているだろうが、好きな人……というか好きなポケモンを探していたのだ。


イワンコ「……」キョロキョロ


そして、彼女はそのポケモンを見つけ、声をかける。
 ▼ 8 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/11 10:39:56 ID:fTA480vs [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「あっ、ヨーテリー君!!」

ヨーテリー「?」

ガーディ「ほーらやっぱり」


それは草むらから顔を出した、薄汚れたヨーテリーであった。イワンコはガーディとポチエナの間をすり抜け、チョコをくわえて彼に駆け寄る。


イワンコ「こんにちは!!」

ヨーテリー「どうも……」


必要以上に迫ってくるイワンコに少し引き気味な姿勢を示しながら、ヨーテリーは彼女の挨拶に答えた。
 ▼ 9 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/11 17:44:10 ID:fTA480vs [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヨーテリー「……良いのかい? 野良と接するのは君らにとって良くは無いと思うんだけど」

イワンコ「そんなこといいじゃん!! それよりこれ……」


怪訝そうな顔のヨーテリーの鼻面に、イワンコはチョコを差し出す。
後は告白の言葉を言うのみ。


ヨーテリー「……何?」

イワンコ「プレゼント。その、いつも……えっと……」


……だがそこで、彼女の声は止まってしまった。
好き。その言葉が喉元まで出かかる。
好き。それが言えたらどれだけ楽だろう。
 ▼ 10 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/11 17:44:40 ID:fTA480vs [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「いつもありがとうって、そ、それだけ!! それだけだよ!!」


好き。その言葉が言えなかった。
好き。でも口には出せない、そんな思い。
そんな思いを抱えて、彼女はヨーテリーに背を向ける。


イワンコ「じゃ、じゃあ……行くねっ!!」

ヨーテリー「……あ、うん……」


どこか呆気に取られた様子だったヨーテリーは、イワンコが去るのを見つめ、チョコレートに口を伸ばした。


   バリッ

ヨーテリー「……美味しい」


深い甘味の中に少しのほろ苦さ、それらが程よい柔らかさと、それと共にあるしっかりとした固さに包まれて、彼の口の中へと入っていく。
そして、飲み込んだ。
 ▼ 11 ミラミ@ジュカインナイト 17/02/11 22:04:24 ID:SFOhtFi6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 12 コガシラ@ダイブボール 17/02/11 23:28:30 ID:2ZYYroZk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 13 ケッチャ@エレキシード 17/02/11 23:59:48 ID:1vM2/q9s NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援なのだ
 ▼ 14 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/12 12:16:51 ID:50Tcmfy. [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
   ゴクンッ

ヨーテリー「……ごちそうさまでした」


そう呟くヨーテリーに冷ややかな視線を贈るポケモンが一匹。


チョロネコ「……馬鹿」

――――――

その暫く後。イワンコは彼女の家に帰ってきていた。


イワンコ(ああああああ!! バカバカバカ!! 私のバカ!! 可愛く言ってあんぽんたん!!)バタバタ
 ▼ 15 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/12 12:17:48 ID:50Tcmfy. [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコは、恥ずかしさに悶えていた。チョコ渡しちゃった、どうしよう恥ずかしくてもう顔も合わせられない。
しかも質の悪いことに、私は『好き』だとは言えていない。……つまり相手が私の気持ちに気づかない可能性も多分にあると言うわけだ。


イワンコ「うわぁぁぁあ……」バタバタ

女『あっ、お帰りイワンコ!!』

イワンコ「あっ……ただいまお姉ちゃん……」


そこに、彼女の飼い主である女が現れた。彼女はどこかウキウキとした様子で、イワンコにある物を差し出す。
 ▼ 16 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/12 12:18:20 ID:50Tcmfy. [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女『うふふー、今日バレンタインじゃない? イワンコにプレゼント!!』

イワンコ「……チョコだ!!」


そう、チョコであった。四角に型どられた白とピンクの小さなチョコに、イワンコは思わず涎を垂らす。


女『ふふー、イワンコチョコ好きでしょ? 奮発しちゃった』

イワンコ「ありがとう!!」


そして、イワンコはかじりついた。とても甘く味わい深く、彼女の心にまで染み入るようなそれは、悶えていたイワンコを落ち着かせるのに十分な効果を持っていた。
 ▼ 17 カルゲ@ウルトラボール 17/02/12 12:21:14 ID:hK6EgMkE NGネーム登録 NGID登録 報告
犬にチョコ云々
 ▼ 18 ガハガネール@りゅうのプレート 17/02/12 12:24:29 ID:DcPJ19zs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>17
は、ハートスイーツ……
 ▼ 19 ガルカリオ@コスメポーチ 17/02/12 13:04:53 ID:rax/coWo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポケモンだからセーフ
 ▼ 20 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/12 18:44:30 ID:50Tcmfy. [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――――

イワンコ「……zzz」


暫く悶えて落ち着いたイワンコは、温かいベッドの中で夢を見ていた。
不安定に揺れる彼女の世界に、ヨーテリーの尻尾がちらつく。


イワンコ「んっ……zzz……」


バレンタインだったからだろうか、夢の内容はちょっと昔の……彼との出会いの物だった。
 ▼ 21 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/12 18:45:02 ID:50Tcmfy. [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――――
――――
――

イワンコ『痛い……痛いよ……』プルプル


夢の中で、彼女は草むらの中で震えていた。
散歩の途中でうっかり道を間違え草むらの中に入ってしまい、野生のグランブルに襲われた際に怪我を負ってしまっていたからだ。


イワンコ『ううっ……何とか、逃げないと……』プルプル


なるべく動きたくはない。だが、動かなければ直に発見されるだろう。幼い彼女には何をされるかまでは分からなかったが、とにかく酷いことには違いない。
 ▼ 22 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/12 18:45:34 ID:50Tcmfy. [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
   ガサッ ガサッ

イワンコ『ひいっ……』プルプル


誰かが迫ってくる。イワンコは目を強く瞑り、なけなしの意思で覚悟を決めた。


ヨーテリー『……大丈夫?』


だが、顔を出したのはヨーテリーだった。イワンコは震えながらも、彼の顔に一抹の希望を見出だす。


ヨーテリー『……怪我してるね。何で?』

イワンコ『そっ、そのっ、草むらに入ったら、追いかけられて……』


ヨーテリーはそこまで聞くとイワンコの側に歩みより……地面を掘り始めた。
 ▼ 23 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/12 18:46:05 ID:50Tcmfy. [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヨーテリー『取り合えず……』ホリホリ

イワンコ『……何してるの?』

ヨーテリー『いや、すぐにここから出るのは疲れるでしょ? 取り合えず隠れられるように、ね』ホリホリ


ヨーテリーが慣れた手つきで穴を広げていく。聞くところによると、こうして定期的に棲家を作っているらしい。


ヨーテリー『よし、出来た……暫く動かないでいて。適当に治療するから』

イワンコ『う、うん……』
 ▼ 24 バコイル@サファイア 17/02/12 22:13:27 ID:AWfYih/o NGネーム登録 NGID登録 報告
犬かわゆい
モフモフ支援
 ▼ 25 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 00:50:10 ID:PPTr0aMQ [1/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
出来た窪みに踞ったイワンコは、ヨーテリーに身を任せ手当てを受けた。
傷口に薬草を刷り込まれ、適当な葉で簡易的な包帯を施される。それはイワンコにとって全く未知の経験だった。


ヨーテリー『……』テキパキ

イワンコ『……』


暫しの沈黙。イワンコの表情が手当てによって恍惚に歪んでいたことは、ヨーテリーには気付かれなかった。


   ガサガサッ

イワンコ『!?』


そこに、また新たな来客がやって来た。黒い体躯を持った小さな猫……チョロネコだ。
 ▼ 26 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 00:50:46 ID:PPTr0aMQ [2/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チョロネコ『はぁ……何やってるのかと思ったら』

ヨーテリー『別に良いだろ……はい終わった』

イワンコ『あ、ありがとう……』


治療が終わり、痛みが引いたのを確かめるイワンコ。それを他所に、ヨーテリーとチョロネコは話し合っていた。


チョロネコ『はぁ……あんた、その首輪付きを守ってるわけ? 馬鹿ね……』

ヨーテリー『目の前で死なれたら気分悪いしね』

チョロネコ『ふーん……あんたも馬鹿になっちゃったの?』

ヨーテリー『かもね』

チョロネコ『……後々後悔するかもね。 人間も、それに飼われるポケモンも馬鹿ばっかりなんだから』スタスタ

  
そう言い残して、チョロネコは去っていく。
イワンコが彼女を見つめる目はいつの間にかきつくなっていて、ヨーテリーはそれを笑った。
 ▼ 27 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 00:51:22 ID:PPTr0aMQ [3/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ『何あれ……』

ヨーテリー『……気分悪くしちゃった? 彼女は人間が嫌いだからね。訳は知らないけど』ホリホリ

イワンコ『……そう』


そこで会話は途切れ、一瞬の静寂が辺りを包む。
イワンコはヨーテリーを眺め、彼がどんなポケモンだったかを記憶しようとした。
毛並みは決して綺麗ではなく、体には傷も多い。だがその分身体は丈夫そうだし、顔つきも良かった。


   ガサガサッ

ヨーテリー『……おっと、追っ手が来たみたいだ。取り合えずこの窪みに隠れて』
 ▼ 28 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 00:52:01 ID:PPTr0aMQ [4/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そんな思考を断ち切って、何処かから足音が聞こえてくる。イワンコはヨーテリーの掘った窪みに潜み、息を殺して彼を見つめた。
ヨーテリーの前に、大柄なグランブルが顔を出す。


グランブル『……なあヨーテリー、さっきここいらを可愛いイワンコが通らなかったか?』


やはりこいつはイワンコを探していた。ヨーテリーの拵えた小さな窪みに身を潜めながら、イワンコは恐怖にうち震える。


ヨーテリー『ああ、いたね。さっきあっちの方に走ってたよ』

グランブル『おおそうかそうか、ぐへへ……』ダッダッ


ヨーテリーは震えるイワンコを庇うように立ちながら咄嗟に嘘を口にし、グランブルを走らせた。
 ▼ 29 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 00:53:17 ID:PPTr0aMQ [5/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヨーテリー『……』

イワンコ『……行った?』

ヨーテリー『うん。……ふぅ、嘘をつくのは疲れるね……彼はロリコンだから、君みたいな子を襲うんだ。今の内に逃げるといい。戻ってこない内に。早く』

イワンコ『う、うん……』


ヨーテリーに促され、イワンコは草むらから出るために立ち上がる。
でもこのまま出るのは後ろ髪が引かれる気がして、イワンコは振り向いた。


イワンコ『あの……また、会えるよね』

ヨーテリー『……気が向いたらね』


そしてイワンコはヨーテリーに押し出され、草むらからの脱出に成功した。

――
――――
――――――
 ▼ 30 ンドパン@ネコブのみ 17/02/13 03:55:27 ID:WExDIck6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 31 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 18:40:24 ID:PPTr0aMQ [6/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「zzz……はぁ……」


良いところで夢から覚めた。イワンコは溜め息を漏らし、ヨーテリーを思う。


イワンコ「はぁ……」


何とかして彼を得たい、イワンコはそう思った。
飼い主は説得すればなんとかなる、きっと上手くいく……確証は無かったが、それはイワンコの中では確定事項だった。


イワンコ「明日こそ。明日こそ……」


そう唱え、イワンコは目を瞑る。


イワンコ「明日も、会えるよね……」
 ▼ 32 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 20:05:24 ID:PPTr0aMQ [7/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





――――――

その暫く後。太陽が沈みきり月が顔を覗かせる真夜中。
何時ものように草むらの窪みで休んでいたヨーテリーは、なぜか寝付けず寝床に踞っていた。


   ギュルギュル

ヨーテリー「うぅ……お腹、痛い……」


先刻からどうにも腹が痛い。定期的に唸る腹を軽く舐めながら、彼は夜明けを待っていた。
 ▼ 33 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 20:07:02 ID:PPTr0aMQ [8/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヨーテリー「……トイレ行こう」


彼がそう立ち上がった。そしてその拍子に……


ヨーテリー「……ぐはっ」ベチャ


吐き出された血糊が、地面に張り付いた。
……彼は無知だった。そしてイワンコも無知だった。
本来人間用に作られたチョコレートが……ポケモン用のハートスイーツならまだしも、人間が食べる為に作られた『チョコレート』が、有害だと言うことに。


ヨーテリー「ぐっ……うっ……」


再び大地に倒れ込み、その呼吸を荒げるヨーテリー。静かな、ただただ静かに冷たい大地は、少しの泥濘と共に彼を受け入れた。
 ▼ 34 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 20:07:51 ID:PPTr0aMQ [9/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヨーテリー「はあっ、はあっ……」


息が荒さはピークに達し、彼の意識は闇の中へと溶けていく。
茶色く、少しの柔らかさを持って一匹を受け入れる大地は……さながらチョコのようだった。


ヨーテリー「……くぅっ……」


彼の最後の一声は、喉に詰まった血に防がれ、微かな音にしかならなかった。


ヨーテリー「」

チョロネコ「……」


……そしてその一部始終は、あの黒猫によって観察されていた。
 ▼ 35 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 20:51:27 ID:PPTr0aMQ [10/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――――

朝になった。何処かでヤヤコマが鳴いている。
イワンコは寝床から跳ね起き、主人を起こしに行っていた。


イワンコ「起きて!! 起きて!!」

女『うう……うう……』

イワンコ「ほらほら、今日も仕事でしょ!?」


主人を何時ものように揺さぶり、布団から連れ出す。
 ▼ 36 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 20:51:57 ID:PPTr0aMQ [11/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女『うっ、うーん……はっ!! もうこんな時間!!』

イワンコ「だから起こしたのに……」

女『急がなきゃ急がなきゃ!!』


慌てて支度する主人の横で、イワンコもまた不安に耐えていた。
フラれたらどうしよう。あの泥棒猫が邪魔してくるかもしれない。


   ギュルギュル

イワンコ「うぅ……」


そう考えるとお腹が痛くなってきた。が、そんな事考えている暇はない。


女『行ってきまーす!!』バタバタ

イワンコ「……私も、行かなきゃ」


鍵が掛けられる音を聞くと共に、イワンコも外へと飛び出した。
 ▼ 37 ェリム@ライブキャスター 17/02/13 21:18:44 ID:W5e78JLQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
ハートスイーツじゃなかったか……
イワンコ前にも食べてたみたいだけどその時は平気だったのかな?
 ▼ 38 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 21:34:16 ID:PPTr0aMQ [12/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――――

イワンコ「……」スタスタ


イワンコは、昨日ガーディとポチエナと話をしていたあの場所にやって来た。その二匹は見えないが、イワンコは気にしなかった。


イワンコ「どこかな……」キョロキョロ


ヨーテリーを探して周囲を見回す。
……だが彼は一向に姿を見せない。おかしい。
イワンコがそう思い始めた時。


   タッタッタッタッ

イワンコ「……?」

ガーディ「大変大変!! 実は、その……」

イワンコ「何?」
 ▼ 39 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 21:35:12 ID:PPTr0aMQ [13/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコの隣にガーディが駆け寄ってきた。額には汗が伝い、ただ事では無い雰囲気はイワンコにも否応なしに理解できる。


イワンコ「どうしたの……?」

ガーディ「あの、昨日のヨーテリーが、今朝、……死んでたって……飼い主さんが……」

イワンコ「……!?」


死んでた。その言葉と共に、イワンコの世界を静寂が襲った。
視界はモノクロに明滅し、鋭い何かが体表を撫でていくような感覚にイワンコは意識を失いかける。
 ▼ 40 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 21:35:58 ID:PPTr0aMQ [14/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガーディ「遺体はもう近所のおじさんが始末したって。それで、これから――

イワンコ「……」


ガーディが何か言っているが、もう話の内容すら頭の中には残らない。頭の中にはただ衝撃のみが鳴り響いている。
好き。その言葉を言うことはなく、彼は死んでしまった。それが重く頭にのし掛かっていた。


ガーディ「――で、だからこれからは

イワンコ「だ……誰が、そんな……」

ガーディ「え……?」

イワンコ「誰が、彼を……殺した……の……?」

ガーディ「……誰って、そもそもあれは多分事故だよ!! だって回りに誰も居なかったんだもん!!」
 ▼ 41 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 21:36:47 ID:PPTr0aMQ [15/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガーディは、ヨーテリーが勝手に死んだのだと言った。だがイワンコはそれを受け入れられなかった。
とにかく誰かを責めたかった。この心に籠った思いを発散したかった。


イワンコ「いや、きっと……きっと誰かが殺したんだ……許さない……!!」


そんな思いもあってイワンコはガーディから離れ、単身ヨーテリー殺しについての捜査を開始した。


イワンコ「……」ガサガサッ


かつてヨーテリーがいた草むら。あのときの窪み。あのときの土。
イワンコは野生ポケモンが襲ってくる可能性をも恐れずに、周囲を嗅ぎ回る。
 ▼ 42 ケッチャ@コダックじょうろ 17/02/13 22:04:43 ID:WExDIck6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
うぅ…これは辛い
 ▼ 43 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 22:36:25 ID:PPTr0aMQ [16/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「……ヨーテリー君……」ガサガサッ


そこに、一匹のポケモンが顔を出した。


チョロネコ「あんたも馬鹿ねぇ……」

イワンコ「な、何よ藪から棒に……」


チョロネコだった。イワンコはかつてのあの嫌味な言動を思いだし、思わず顔をしかめる。
 ▼ 44 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 22:37:06 ID:PPTr0aMQ [17/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チョロネコ「もしかして、ヨーテリーが死んだの、誰かが殺したと思ってるんでしょ」

イワンコ「そ、それは……」

チョロネコ「……馬鹿ね。知らない方が身のためよ」


知らない方が身のため……その言葉に弾かれたかのように、イワンコは考えを巡らせた。……もしかしたら彼女が犯人では無いか、と。
根拠はない。だがさっきの言葉から鑑みるに、それは絶対的な真実に思えた。


イワンコ「もしかして……あなたが彼を!!」

チョロネコ「……ふーん」


焦る様子もなく適当に返す彼女に、イワンコはさらに確信を重ねる。
 ▼ 45 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 22:37:47 ID:PPTr0aMQ [18/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「やっぱり……」

チョロネコ「……貴女がそう思うのは勝手だけど……で? 私が彼を殺していたなら、どうするの?」

イワンコ「勿論……敵をとる!!」


素早く身構え、チョロネコに体当たりを仕掛けるイワンコ。一発当てられれば、そこからどうにかして押さえ込める……イワンコはそう踏んでいた。


イワンコ の たいあたり!!

イワンコ「はあっ!! はあっ!!」スカッ スカッ

チョロネコ「……本気?」
 ▼ 46 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 22:38:24 ID:PPTr0aMQ [19/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だが攻撃は当たらない。全て軽々と回避され、眼前の敵は涼しい顔。
さらに仕掛けるも、結果は変わらず。苛立ちのみが募っていく。


イワンコ「はあっ!! えいっ!!」スカッ スカッ

チョロネコ「はぁ……これだから首輪つきは」

イワンコ「煩い……私は……ヨーテリー君の……」


そうもがくイワンコ。チョロネコはその姿を冷ややかに見下し、唾を吐いた。


チョロネコ「全くおめでたい頭ねぇ」ペッ

イワンコ「なっ……」ベチャ

チョロネコ「良いわ、そんなに言うなら教えてあげる」
 ▼ 47 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 22:39:07 ID:PPTr0aMQ [20/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
唾を拭うイワンコに、チョロネコはそう言った。真実……イワンコはそれを求め、息を呑む。


チョロネコ「彼を殺したのは……貴 女 よ」

イワンコ「……!?」


だが、その真実は……


チョロネコ「貴女、彼にチョコレートあげてたわよね。それも大量に。分量にすれば……板チョコ二枚分くらいかしら?」


チョロネコの語る真実は、イワンコが犯人だとするものだった。
そんなもの彼女に納得が行く筈がなく。
 ▼ 48 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 22:40:36 ID:PPTr0aMQ [21/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「そうよあげたよ!! でもそれが何!? 私だってチョコ食べるし、とっても美味しいんだよ!?」


そう反論するイワンコ。私はチョコが好きだ、勿論食べられる。そして私は生きている。だからチョコで死ぬ筈がない。
彼女なりの理屈の通った弁解であった。
そんな言葉を一蹴し、チョロネコは続ける。


チョロネコ「貴女の飼い主が馬鹿だっただけよ。チョコレートは有毒……ヨーテリーは毒殺されたの。貴女にね」

イワンコ「っ……!!」
 ▼ 49 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 23:58:22 ID:PPTr0aMQ [22/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
再度突きつけられたその言葉は。その言葉はそれでもイワンコには到底受けいられられ無くて。彼女は反論する事を止めようとはしなかった。


イワンコ「そんな、嘘よ出鱈目よ!! チョコは皆が美味しい美味しいって食べてる……食べてる……私だって……食べてる……」

チョロネコ「別に? 私の話を信じないのは勝手だけど……」


必死に言葉を探す彼女を見ながらチョロネコはそう言い、何処からか一枚の紙を取り出す。


チョロネコ「そう言ってるのは、あんたの大好きな人間よ?」
 ▼ 50 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/13 23:59:00 ID:PPTr0aMQ [23/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そこに書かれていたのは、『犬、猫系ポケモンに与えてはいけない食物一覧』だった。
チョコレートは……一番上に堂々と書かれていた。


イワンコ「……あ……」

チョロネコ「全く……皆馬鹿ばっかり。この程度の文も理解できないなんて、本当人間って馬鹿。それに飼われる貴女達も」

イワンコ「……」

チョロネコ「分かった? 自分が何をしたのか。ま、私は楽しめたからこれ以上とやかく言うつもりはないし、人間は貴方が彼を殺したなんて気付かないから、貴方も知らないふりして生きれば良いじゃない」

イワンコ「ああ……あ……」

チョロネコ「じゃあね。貴方の罪と共に、お幸せに」
 ▼ 51 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/14 00:00:00 ID:H8LIbKFc [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チョロネコはそう言って去っていった。
イワンコは彼女を気に止めることもなく、ハイライトの消えた目で空を見上げる。


イワンコ「あ……あ……ああああああっ!!」


彼女の号哭は、やはりヨーテリーの命を受け止めたその大地に吸われていく。
声が意味なく溶けていく様は、さながらチョコのようだった。


【バレンタインSS】イワンコちゃんのバレンタイン大作戦 完食
 ▼ 52 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/14 00:01:20 ID:H8LIbKFc [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バレンタインで浮かれる奴等を徹底的に潰していくスタイル
リア充死すべし慈悲は無い
因みに小型犬の場合、ミルクチョコレートの致死量は板チョコ二枚。だからイワンコは死ななかった。致死量より少なかったら案外耐えるし、犬もチョコを好むのでついついあげてしまいがち
皆さん気を付けましょう
 ▼ 53 イチュウ@グラスメモリ 17/02/14 00:56:03 ID:dtits7Ro NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ほのぼのしたタイトルからこの陰鬱な内容、場面転換がさすがとしか言いようがない
面白かったです、乙
 ▼ 54 ァイヤー@エドマのみ 17/02/14 18:26:42 ID:I9jaUA1Y NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です
 ▼ 55 フーライ@ちかのカギ 17/02/14 19:03:56 ID:bRAAks3I NGネーム登録 NGID登録 報告
すげぇ イワンコ好きだから何気なく見たら衝撃的すぎたw
 ▼ 56 リジオンの人◆QhqpxfPSAI 17/02/16 00:04:42 ID:ckUYfAHI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です
やっぱり表現の仕方が上手いですね〜
物語もとてもよかったです
 ▼ 57 ガイドス@あなぬけのヒモ 17/02/17 22:40:31 ID:tv9trnpo [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
うぇぇ……
飼い主がその子のためにやったことが結果としてその子の大好きな存在を失わせることになりその子を傷つける……
自分のする事には責任を持たないといけませんね……
乙です。
 ▼ 58 レビィ@ミミロップナイト 17/02/17 23:24:18 ID:tv9trnpo [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
なんでチョロネコは人間が嫌なはずなのに文字が読めたりチョコの有害性を知ってたんだろ……
 ▼ 59 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 17/02/17 23:59:33 ID:KrG00Kyw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ホワイトデーに続編書きます(予定)
消化不良な部分はきちんと始末します
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