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ジラーチ「千年待つって?」キュウコン「うん」

 ▼ 1 ラーミィ@まひなおし 18/03/22 19:34:20 ID:nai0RLeM [1/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


僕は何度目の人生を歩んできたか覚えていないよ。




時間というのは非常に曖昧なものじゃない?



楽しければ一瞬。

面白くなければ長い。


──眠れば一瞬。

──起きてれば長い。




うん。でもだよ。

もし一瞬で世界が変わってしまっても、時間はさ、連続してるのかな?





──続いていないの?


少なくとも僕の中ではね。


───じゃあ続けよう。


どうやって?



────私が待ってる。同じ世界で。同じ景色の中で。







 ▼ 2 ノガッサ@まがったスプーン 18/03/22 19:36:07 ID:TwgpsTNo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
最後のセリフがなぜかナイトスクリームで再生された
 ▼ 3 バメ@グラスシード 18/03/22 19:40:13 ID:nai0RLeM [2/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジラーチ「……」


千年に一度目覚める、それが僕に与えられた生き方。

だから、僕はさっき目覚めた。




ジラーチ「……いないなぁ」




目を閉じてみると、昨日のことが思い出される。


ピカチュウがいたっけ。

野原を駆け回って、追いかけっこをした。

かくれんぼをした。

他に何をしたか、鮮明に思い出せる。



そう。

僕にとっては昨日のこと。



だけど世界にとっては1000年前のこと。




だけど僕は叫んでみた。




ジラーチ「ピカチューー……」



森の中に木霊する声は決してかえらない。
 ▼ 4 ばちゃんねる◆j2vf44Ei6k 18/03/22 19:47:22 ID:aJFrXGCY NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 5 ガオニゴーリ@あおぼんぐり 18/03/22 19:48:08 ID:nai0RLeM [3/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガサッ。



森の木が揺れる音がした。



ヘルガー「……」



黒いポケモンだ。

夜の闇は彼の姿を隠していた。

月明かりは血に飢えた猛獣に、その獲物の在り処を教える役目しか果たしていない。



「見つかったかぁ!」

猛獣の後ろから、これまた黒い色の衣服を着た男がやってきた。


「ここに現れるってぇ情報は正しかったようだな……」



男の手から、不可解なボールが放たれる。

そこから、たくさんの犬が出てきた。



デルビル「ウゥゥ……」

デルビル「グルル……」




へぇぇ。そんな道具があるのか。


「願い事を叶えてくれる幻のポケモン……何日も張った甲斐があった。俺の野望の礎になってもらぉうかぁ!」




そうか。

でもこの森は傷つけさせない。


起きたばかりの目を凝らして、構える。
 ▼ 6 pope◆29thbc/0F6 18/03/22 19:48:42 ID:aNnIRRj6 NGネーム登録 NGID登録 報告
ああ、もう涙腺がヤバい
 ▼ 7 レッフィ@こうらのカセキ 18/03/22 19:51:08 ID:TjDOSbt. [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジラーチをフリーで酷使するのやめます
 ▼ 8 ンヤンマ@せいしんのハネ 18/03/22 19:52:58 ID:kZgnNp.I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今だけはアインシュタインに文句を言いたい気分
 ▼ 9 クレオン@きんのおうかん 18/03/22 20:30:13 ID:nai0RLeM [4/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「いけっ!ふくろだたき!」


左右から飛びかかってきた。



ジラーチ「『サイコキネシス』」


目の前のポケモンたちはあくタイプだろう。

エスパー技なんて効きはしない。



ボキッ。



「ぎゃぁぁぁ!!!」



男がのたうちまわる。

ヘルガーとデルビルは、思わずあるじの方を向く。



こうゆう輩はいつの時代も変わらない。



腕の骨をへし折った。

「ぎゃぁぁっっ!いてぇっ!いてぇぇ!」




ジラーチ「『じゅうりょく』」

ヘルガー「グゥッ!?」

デルビル「!?」


犬達は地面にひれ伏した。




憎しみのこもった目を上に向けて、僕を睨みつける。



その隙間を通り抜け、男の眼前に進む。
 ▼ 10 チコール@おこづかいポン 18/03/22 20:39:18 ID:nai0RLeM [5/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
悪党はだいたいリーダー格を潰せば、下は統率力を失う。

一昨日もそうだった。


でもその時は野原のポケモン達が追い払ってくれたっけ?



「ひぃぃ……」

ジラーチ「……」



ははは。

苦しんだ顔か。



生きてる方が苦しい時があることを知らないんだろうな。



ジラーチ「サイコキネシス」



ボキッ。



「あァっ!ギャァアッ!!」




脚を変な方向に曲げた。




夜の森に、震える男の声が鳴り響く。




「……ヒィィィィィ」



赤黒く、月の光が地面を照らす。

腕一本で後ずさりする男。


さっきの威勢は何処へやら。


もう一度構える。そしてエネルギーを放つ。
 ▼ 11 ヒドイデ@おまもりこばん 18/03/22 20:46:26 ID:nai0RLeM [6/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「じんつうりき!」



ドォン!



ジラーチ「……?」



「そこまでにしときなさい」



どこだろう。

声の主は?

誰だろう。



後ろを見ると、地面に這いつくばっていたはずの犬たちはいなくなっている。




そうしていると、いきなり周りの風景が変わった。




夜の闇は消え、光に溢れた海を思わせる風景。




ジラーチ「?」


流石の僕もこれには狼狽した。

その隙に、彼女は一瞬だけ姿を見せた。


そして僕がそれを捉えると、もう僕の意識は空へ旅立った。
 ▼ 12 ンベアー@ミアレガレット 18/03/22 20:52:38 ID:nai0RLeM [7/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
────

「ねぇ、もう寝ちゃうの?」


ジラーチ「うん。あと、少しだけ」


「じゃあさ、お願い、聞いて貰えない?」


ジラーチ「……いいよ?」


「またさ、遊ぼうよ!僕たちずっと待ってるから!」


ジラーチ「うーん。ずっとって言ってもねー」


「……」



ジラーチ「……わかった。約束!」


「……うん!またね。えっと、僕も約束する!」


ジラーチ「なに?」


「この場所を、もっといい場所にするよ!君が、ずっと眠っても、気持ちいいように!」

「たくさん木も植える!」

「きれいな川も流れるようにする!」

「夜は星を眺めるんだ!」


「だから、約束!僕のお願い!」



ジラーチ「……分かった!絶対、絶対、叶える!」


「約束!」


────
 ▼ 13 ロア@ブーカのみ 18/03/22 20:54:29 ID:TjDOSbt. [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援。
てか、悪の組織は願いを叶えるポケモンを拉致して暴行したら言うこと聞くとでも思ってるのか……
 ▼ 14 ットレイ@マゴのみ 18/03/22 20:54:56 ID:csLNsEPg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 15 サナン@ぼんぐりケース 18/03/22 21:03:20 ID:nai0RLeM [8/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
目が覚めれば、星が瞬いていた。



キュウコン「おきたかい?」

ジラーチ「んぅ……」



伸びをする。

欠伸をする。



キュウコン「あんなことしちゃダメじゃない」


ジラーチ「?」


キュウコン「あんなボコボコにしちゃったら、ニンゲンがたくさんやってくる。そしたら森が汚される」



そう話すキュウコンの目は真剣だったから、僕もなんとなく好感を持った。



ジラーチ「……じゃあ、息の根を止める」

キュウコン「だーめ。そしたら、それを調べるためにたくさんのニンゲンがくる」


ジラーチ「……」


キュウコン「悪く思わないでね。あなたは私が眠らせたの」



ジラーチ「?」



キュウコン「さいみんじゅつよ。」



ジラーチ「君は、この森に住んでるの?」

キュウコン「もう結構長いと思う」

ジラーチ「ふーん。どれくらい?」

キュウコン「わかんない。わすれちゃった。」
 ▼ 16 ロアーク@きいろいバンダナ 18/03/22 21:15:06 ID:nai0RLeM [9/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
忘れちゃったと舌を出しながら、空を彼女は見上げた。

僕もつられて見上げた。




ジラーチ「……ちょっとだけ、変わったかな」

キュウコン「何も変わらないよ。私が来た時から綺麗なまま」



一千年もすれば、星の位置はほんの少し変わる。

一つ、ひときわ明るい星を指差す。

そしてキュウコンに語るように、自分に言い聞かせるように僕は喋る。





『あの星はね、』

ジラーチ「あの星はね、」



『いつも同じ場所にあるんだ。』

ジラーチ「いつも同じ場所にあるんだ。」



『だから、自分の居場所が分からなくなっても、』

ジラーチ「だから、自分の居場所がわからなくなっても、」



『僕らは繋がってる』

ジラーチ「……」





最後の言葉を言う前に、口が震えてしまった。


キュウコン「そうね。私たちはつながれる。」



思わず彼女の方を向いた。


ジラーチ「……うん」
 ▼ 17 クティニ@よごれたハンカチ 18/03/22 21:18:36 ID:75MXoTTg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 18 ニスズメ@たわわこやし 18/03/22 21:23:44 ID:/kmUknFo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>17
なんて涙腺崩壊させる漫画だ…
 ▼ 19 ランセル@かなめいし 18/03/22 21:24:47 ID:nai0RLeM [10/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キュウコン「あなたは誰なの?」



ジラーチ「僕は、ジラーチ。旅の途中。」



キュウコン「旅!」




彼女は目を輝かせた。


キュウコン「どこからきたの!?」


がっつくように聞いてきたので、思わず顔を後ろに引いた。

目はキラキラとしている。




キュウコン「ああ。ごめんなさい。私も昔放浪してたの。旅っていいことよね!」


ジラーチ「……うん。」



キュウコン「もう夜も深いわね。とりあえず寝ましょう。」




彼女は丸くなり、九つの柔らかい尾で僕を包んだ。

凍える夜の風はなくなった。



空は、澄み渡っている。




この世界は美しいのかな。


────
 ▼ 20 ッポ@ゴーストメモリ 18/03/22 22:41:49 ID:nai0RLeM [11/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕が起きたら、彼女はもう目覚めていた。


キュウコン「お早う!」

ジラーチ「……おはよ」



キュウコン「はい、どうぞ」

モモンの実。



ジラーチ「どこで?」

キュウコン「これだけ森があってモモンがない方がおかしいと思わない?」




合点した。



淡いピンクをした果実にかぶりつく。

甘い汁が溢れて顔を伝う。



ジラーチ「おいしい」

キュウコン「そりゃそうだ」


笑った僕につられたように彼女も笑った。




キュウコン「それで、ジラーチくん。君はどこからきたの?」


ジラーチ「野原から」


キュウコン「どんな空気?」


ジラーチ「すごく澄んでる」


キュウコン「ここより?」


ジラーチ「うーん。それは……」
 ▼ 21 バルドン@ミストシード 18/03/22 22:48:55 ID:nai0RLeM [12/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ここと同じ場所、とは流石に言えないと思った。

こっちにも数えきれない年数のキャリアがあるから、言っていいこと悪いことは分かる。




キュウコン「いい場所なのね」

ジラーチ「それはそれはね。」




キュウコン「どうしたら行けるの?」




おっと。

これは想定内。




ジラーチ「教えない。秘密の場所」


キュウコン「ケチね」





互いにクスクスとした。

多分彼女は嘘なんてとっくに見抜いている。





キュウコン「じゃあ、旅のお話を聞かせて」

ジラーチ「いいよ」





多分僕は、今回の、この7日を彼女と過ごすんだろうな。

そんな気がした。
 ▼ 22 ォッコ@サイコシード 18/03/22 22:50:53 ID:gLwAbGfg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 23 MR00PBvMIc 18/03/22 22:51:24 ID:nai0RLeM [13/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
今日はここまで
明日か明後日で終わります
 ▼ 24 ルホッグ@マゴのみ 18/03/23 12:41:51 ID:DTnC9Ypo [1/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
取り止めがない話ばかりだった。

何より僕の記憶の中の風景を探すことはできないのだ。


それでもその記憶には色がある。




鮮やか。

汚れ。

美しさ。

絶望。




ある日目覚めたらそこは焼け野原だった、なんてこともあった。




それら記憶の断片を辻褄を合わせながら喋る。


それに彼女が頷く。

僕が笑う。

彼女も笑う。




だいたいは旅の中で出会った友達の話。



彼女もその一ページに加わる。

そのことをなんとなく思っていた。



一息ついたら、彼女からの質問に答えた。




そしてとりとめのない話が終わった頃、彼女はまた質問をした。
 ▼ 25 ンファン@のんきのおこう 18/03/23 12:48:23 ID:DTnC9Ypo [2/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キュウコン「どうしてあなたはあのニンゲンに狙われたの?」


ジラーチ「……僕には不思議な、そりゃあ不思議な力があるんだ」


キュウコン「どんな?」





ジラーチ「なんでも、願いを叶えてあげられる力」





キュウコン「ホント!?」

ジラーチ「うん。なんなら叶えてあげる!」



キュウコン「うーん」




しばらく、彼女は考える、考えるフリをした。




キュウコン「急に言われても思いつかないのね。また今度にする」

ジラーチ「うん」



多分彼女は何を望んでもいない。

ただ時間の流れに身を任せているように思えた。




キュウコン「この森、広いのよ。探検しにいかない?」

ジラーチ「いいよ!」



僕がかつて眠りについたこの場所は、野原だったんだ。

でも彼女はそれを知らない。
 ▼ 26 ンドパン@ディフェンダー 18/03/23 12:55:33 ID:DTnC9Ypo [3/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
彼女に連れられて、緑の木々の間を追いかけっこした。


それはそれはたくさんの生き物がいた。



中でも驚いたのは、ゾロアークという狐。

なんでも化かすことができるそうで。

あの時夜の森から僕を海の幻覚へと誘ったらしい。





そうしているうちに、日がくれた。

1日目が終わった。




森の生き物たちが集まる、大樹の上で僕も眠ろう。




彼女にそう頼んだら、喜んでくれた。





満点の星がよく見えるからだ。




ピカチュウは約束を守った。






僕は嘘つきだ。

僕は何でも願い事を叶えることなんてできないんだ。

君をここに呼ぶことすらできやしないんだ。

約束を破ってごめんすら言わせてもくれない。それが僕の一生につきまとう。
 ▼ 27 ブリー@ゴッドストーン 18/03/23 13:06:40 ID:DTnC9Ypo [4/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
────

「ねぇ、本当に寝ちゃうの?」


ジラーチ「……うん」


「神様がいたら、僕はきっとたたきたくなる」


ジラーチ「かみさま?」


「うん。この世界は、みんな神様が作ったんだって」


ジラーチ「うそ」


「みんなそういうけど、僕はほんとじゃないかなっておもうんだ」


ジラーチ「どうして?」


「どうして……うーん。そう言われるとあれなんだけど、でも、うーん……」


ジラーチ「……」


「そう!僕が君と友達になれたから!」


ジラーチ「えー?」


「千年に一回だけなんでしょ?君と会えるの」


ジラーチ「うん」


「じゃあ、その時に生まれさせてくれて!ありがとうって!神様が贈ってくれたんだ!」


ジラーチ「なにそれ?それじゃあたたけないじゃん!」


「違う!でもさ、君とはおわかれしなくちゃいけない!そんなことまで神様は決めたんだ!」


ジラーチ「ふーん」


「だから僕は、神様になるんだ!君とまた会える世界を、僕がきめるんだよ!」

────
 ▼ 28 ガディアンシー@クチートナイト 18/03/23 13:13:34 ID:DTnC9Ypo [5/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
目を開けた。

なんだか鳥が騒がしい。




飛び跳ねるように起きると、森の端っこに紅い光が見えた。



ジラーチ「きゅ……」



彼女を呼ぼうと思ったら、すでにもう彼女も、たくさんいた生き物たちもいなかった。




火事。




森が燃えようとしてる。

止めなきゃ。


ピカチュウの森が。




火事の隙間に鉄の怪物が見えた。




何千年と生きてきたけどあんなもの見たことがない。

恐らくはあれが森を燃やそうとしている。


させるか!




ピカチュウとの約束を守れなかった僕が、森だけは死んでも守る。


すぐに飛んだ。
 ▼ 29 カグース@ポケトレ 18/03/23 13:21:02 ID:DTnC9Ypo [6/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
────


「……んで、お前がやられたのは、この森で間違いないわけ?」

「すみません……兄貴」



「情けない弟じゃん。兄貴が助けねぇとなぁ。この特別製、戦闘・捕獲用車両までひっぱてんだからよぉ」



「でも兄貴、いいんすか?森焼いちまって」



「バーカ。だからお前は甘いんだ。あのジラーチだぞ?千年に一度しかチャンスがねぇんだ。こんな森の一つや二つどーってことねぇよ。どんな金になるかわからねぇ話だ」

「草の根かき分けてでも、森を全部燃やしてでも見つけ出してやる!」



「さすが兄貴!」

────
 ▼ 30 ゴジムシ@はつでんしょパス 18/03/23 13:28:27 ID:DTnC9Ypo [7/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
鉄の怪物の後ろまで廻り込んだ。

周りは既に燃えている。

この怪物が火を吹いているのか。



煙の混ざった空気を思いっきり吸う。



第三の目を開く。

短冊が輝く。






願い事。

大量の水!






空に穴が空いた。



そこから雨ではない。

水の塊が降ってくる。

滝が降っている。



轟音をあげて炎はあっという間に激流の逆鱗に消しとばされた。




鉄の怪物の上が回転して、筒のようなものがこちらを向いた。




『……あーもしもし?聞こえてますかー?』



男の声。

鉄の怪物の中にはニンゲンがいるらしい。
 ▼ 31 ミッキュ@かいのカセキ 18/03/23 13:38:18 ID:DTnC9Ypo [8/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『お前が、こっちにおとなしく来るなら、俺たちはもう森を焼かない!ただしだ!』


声が煩い。

さっさと出ていってもらうか。



『既に戦車の砲口がお前を捉えてる!さっさと降参しろ!さもなくば』




ジラーチ「『はめつのねが

「ダメ」




絶望の願いを遮ったのは他でもないあのキュウコンだった。


ジラーチ「……キュウコン」

キュウコン「ここにはここのルールがあるの」




ボゥン!




何やら喋り終わったらしい。

戦車とか言う怪物の砲口から網が放たれた。



迂闊だった。





網は、僕を制止していたキュウコンを捉えた。




キュウコン「うっ!」


『お前だれだよ!』
 ▼ 32 ノムッチ@ねらいのまと 18/03/23 13:46:08 ID:DTnC9Ypo [9/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キュウコン「……」


『まぁいい!お前も捕獲してやる!』




バチチチチチ!!!




網はいきなり閃光を放った。



ジラーチ「!」



黒い煙が燻る。



キュウコン「……」

だけど彼女は倒れない。



バチチチ!!



再び電撃が迸った。




キュウコン「……」

なおも不敵な笑みを浮かべる。





そして次の瞬間、世界の景色が一変した。


焼け焦げた森の姿は消え失せ、黒い雲が辺りを覆った。

電撃に包まれていたキュウコンの姿は、網を破りみるみるうちに獣となり、怒り狂う雷神を思わせる。




雷神「グゥォォォォ!!」
 ▼ 33 ザード@あおいバンダナ 18/03/23 13:49:26 ID:DTnC9Ypo [10/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
雷神が腕を振りかぶる。


キュウコン「ジラーチ、今!」


彼女の声が聞こえた。



ジラーチ「はめつのねがいっ!」




雷神の腕に絶望の願いが宿った。

全てを焼き尽くす絶望の色。



別れの哀しみ、自分への怒りを込めた願い。

一千年の時への。



雷神の腕が振り落とされる。










バキィィッ!










鉄の怪物は砕けた。
 ▼ 34 ガスピアー@メカニカルメール 18/03/23 14:02:23 ID:DTnC9Ypo [11/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
火薬が爆発して、鉄の怪物は地面に飛び散りゴミとなった。

雷神は消え失せ、黒い雲もなくなった。



地面には怯えた二人の男が残った。




ゾロアーク「ケケッ」

その首にはゾロアークの爪が立てられている。





「……ヒィィィ、あ、あに、あにきぃぃ……」


片方は一昨日見た。



「……うっは、こぇぇ……」

片方は知らない。




キュウコン「グゥゥ……」



「へぇ……この森の……守り神ってとこか?」



「……ちっ、折角、又とない機会だってのにな。千年に7日だけのチャンスなのにな……」



キュウコン「……」



「……わかった。帰る。もう二度とここへは来ない。ダメか?」



「……だめ?」
 ▼ 35 ントラー@プレシャスボール 18/03/23 14:06:41 ID:6GGS4ieU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 36 ブクロン@ウッディメール 18/03/23 14:13:31 ID:DTnC9Ypo [12/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゾロアークの爪が、男の首筋から離れた。

男は立ち上がり、半べそになっている一昨日の男に肩を貸して立ち上がらせた。




「……ああそうだ。そこの森の主。一つ忠告しとくぜ。」


キュウコン「……」


「そのジラーチは今すぐ追い出した方がいい。さもなきゃまたくるぜ、俺らみたいのが」




男は背を向け、踏み潰した木々の間を歩き、森の外へ消えていった。









ジラーチ「……いいの?」

キュウコン「うん。」


ジラーチ「でも僕は、許したくない」

キュウコン「いいんだ」


ジラーチ「どうして?」

キュウコン「森はみんなの場所なんだ。来るものは拒んじゃいけない」


ジラーチ「……そうかな?」

キュウコン「この森が育ったのは神様のお陰。この森が消えるのも、神様が決めたこと」


ジラーチ「……じゃあ僕は、神様をたたかないと」

キュウコン「……お爺さんもそんなこと言ってた」
 ▼ 37 リミアン@クオのみ 18/03/23 14:20:19 ID:DTnC9Ypo [13/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジラーチ「……ねぇ」

キュウコン「なに?」


ジラーチ「君は僕のことどれくらい知ってるの?」

キュウコン「……願い事を叶えてくれる」


ジラーチ「他には?」

キュウコン「……いろんなお話をしてくれる」


ジラーチ「他には?」

キュウコン「……一千年に7日だけ起きてる」


ジラーチ「他には?」

キュウコン「……わかんない」




嘘だ。




ジラーチ「ほんとに?」

キュウコン「ほんと」



ジラーチ「お爺さんの名前は?」

キュウコン「忘れちゃった」



ジラーチ「……一つ喋っていい?」

キュウコン「いいよ」



ジラーチ「一千年前にね、僕は友達がいたんだ」
 ▼ 38 ライオン@ていこうのハネ 18/03/23 14:29:47 ID:DTnC9Ypo [14/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



一千年前はこの場所、何にもない野原だったんだ。

前回目覚めたとき、いつの間にか捕まちゃって。



命からがら逃げ出して。



何にもない、隠れる場所もない原っぱに辿り着いて。



あるピカチュウに出逢った。

傷ついた僕を介抱してくれて、あっという間に仲良くなった。



原っぱのポケモンたちは僕にすごく良くしてくれた。




特にピカチュウとは凄く仲良くなった。

けど7日目はあっと言う間にやってきたんだ。





約束した。

ピカチュウは、僕がいても見つからないでっかい森を作る。


だからもう一度会おうって。



僕もそうお願いした。

もう一度逢えるようにって。




けど、逢えないんだ。もう逢えない。

一千年という時間は全部奪っちゃったんだ。
 ▼ 39 リーセン@おうごんのみ 18/03/23 14:38:57 ID:DTnC9Ypo [15/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キュウコン「……そう、じゃあ、願はきっと届いてる」

ジラーチ「どうして?」



僕の声が涙ぐんでいる。



キュウコン「だって、そのピカチュウの約束は果たされたじゃない」

ジラーチ「でも僕は、僕は、願い事を聞いてあげられなかった」




キュウコン「……また遊んでくれた。それで十分。」




彼女の方を見ると、彼女も僕を見ていた。





ジラーチ「君は……何者?」

キュウコン「今思い出したの。私のお爺さんのこと」



ジラーチ「ねぇ、話してよ」

キュウコン「いいよ。確かね……」
 ▼ 40 ライガー@サイキックメモリ 18/03/23 14:45:14 ID:DTnC9Ypo [16/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私はこの森で生まれ育ったわ。

お爺さんもそうだったってお父さんが言ってた。



雨が降ろうが、雷が落ちようが、雪が降ろうが、何が起きても絶対にここから離れなかったらしいの。



お母さんが、なんでって、聞いてみたことがあるって。




友達を待ってるらしいの。



絶対にまた会うって約束した友達がいるんだって。

それまではここから離れないって。




でも、私が生まれる前に死んで。

死ぬその前までずっと待ってたって。



死んでも離れないって。



だからお爺さんが死んだ後も、私の家族は待つことにしたのよ。





その友達の名前が、ジラーチって言うんだって。
 ▼ 41 ツケラ@ビスナのみ 18/03/23 14:49:13 ID:DTnC9Ypo [17/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジラーチ「……じゃあ」


キュウコン「約束は守ったわ」


ジラーチ「……」

目から水が溢れてきた。





死んでもなおこの場を離れなかった。




ジラーチ「……」





キュウコン「この森に住んでるみんな、野原にいたポケモンたちの子孫。みんな待ってたの」






姿形は変わったかも知れない。












でも、みんなあなたを待ってたの。

同じ心で。



同じ想いで。
 ▼ 42 スゴドラ@ふっかつそう 18/03/23 14:55:08 ID:DTnC9Ypo [18/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
────

ジラーチ「僕は何度目の人生を歩んできたか覚えていないよ」

「時間というのは非常に曖昧なものじゃない?」

「楽しければ一瞬、面白くなければ長い」





キュウコン「眠れば一瞬、起きてれば長い」




ジラーチ「うん。でもだよ。もし一瞬で世界が変わってしまっても、時間はさ、連続してるのかな?」





キュウコン「続いていないの?」




ジラーチ「少なくとも僕の中ではね」




キュウコン「じゃあ続けよう」




ジラーチ「どうやって?」





キュウコン「私が待ってる。同じ世界で。同じ景色の中で」








ジラーチ「あっ、条件増えたし」

キュウコン「ふふっ。心は同じよ。それに私なら1000年生きれるし。案外大丈夫」

ジラーチ「願い事、叶う?」

キュウコン「私たちが叶えたげるよ!」
 ▼ 43 MR00PBvMIc 18/03/23 14:56:30 ID:DTnC9Ypo [19/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジラーチ「千年待つって?」キュウコン「うん」


以上です
ありがとうございました
 ▼ 44 ゲチック@はかせのふくめん 18/03/23 15:13:27 ID:oQm8qB0U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
目から水が溢れてきた
 ▼ 45 ンタイン@マスターボール 18/03/23 15:40:11 ID:fo4/pXpw NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
 ▼ 46 ジギガス@かくとうジュエル 18/03/24 01:39:24 ID:KWA4u.tk NGネーム登録 NGID登録 報告
いいSSだった、1000年後に再開してほしい…
 ▼ 47 リリ@かいがらのすず 18/03/24 02:37:38 ID:uC0XdurQ NGネーム登録 NGID登録 報告
上げねば
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