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【SS】シアーハートアタック

 ▼ 1 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/28 01:19:24 ID:kAONyLZU [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
自分の巣を守護する一羽のポッポに氷の礫を不意打ちでお見舞し、急襲に狼狽しているところちを冷凍パンチで仕留める。二三痙攣して、こいつはもう二度と動かなくなった。遺された巣には小さい卵が三つ安置されている。これらが今日の俺の昼食になった。

俺は先ず、まだ死後間もない親ポッポから食い始める。こいつは体格的に雌だろう。巣に一羽しか居なかったことを考慮すると、雄の方は餌を探索しに行ってるんだろう。帰宅して目前に広がる光景にそいつはどんな表情をするだろう。どんな事を思うだろう。愛妻と愛子を喰い殺されて、怒るだろうか、悲しむだろうか、またどちらもか、えもいわれぬか。どの道そいつもいたぶった挙句晩餐にする予定だから、どう思おうとも構わない。構わんが古今真面目に生きてきて相方を手に入れて、ようやく卵が生まれて人生の絶頂これからと云う時に想像もせぬ惨劇が起こったんだから激しく動揺するに違いない。その姿を想像して貪る母親ポッポの味は格別だ。頭頂部と羽と尾を食い残して、お椀状の巣の淵に立てておく。大航海時代の海賊ごっこをやりながら、今度はタマゴに手をかける。一個目は卵の頭頂部を自慢の爪で切断して、飲むようにちゅうちゅう吸ったもか。これがまた美味かった。二個目も同じように食って、三個目に手を伸ばそうとすると、父親ポッポご出勤から帰宅する。さあどんな苦悩を見せてくれると期待したが、あいにく余りの悲惨な場面にぽっくり気絶してしまった。木下にさっき捕まえてきたみみずが嘴から落ちていく。余り反応が面白くないので辻斬りでさっさと断首して引導を渡す。周囲にポケモンは俺だけになった。

 ▼ 6 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/28 06:49:13 ID:kAONyLZU [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>5
別のサイトで日記を書いてました。ですが新年以来更新した試しがありません。

気づいた方も居ると思います。シアーハートアタックはキラークイーンの左手から一発だけでる追撃爆弾です。
元ネタはロックバンドのクイーンの曲です。どちらかと云うとこっちのシアーハートアタックから題をとりました。無茶苦茶かっこいい曲です。聞いて損することは無いと思います。
訳すると、「心臓発作」、また「暗殺者のナイフ」と云う意味になるそうです。冷酷な殺し屋ニューラに似合ってるものと思います。

僕はSSの序文を書いた次のレスに、補足を抄き上げる様にします(少なくとも今はそうします)。長い追記はこれくらいになると思います。

僕は大体夜に更新するものと思います。それじゃあ夜までおやすみ。Good night! pokémonBBS!
 ▼ 7 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/28 10:07:06 ID:cVStMQMs [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
ポッポ一家を屠殺して、彼らの残した樹上の枝巣で昼寝をして、起きたら夜の帳が降り始めていた。
西方の橙と東方の闇が天上で交差している。今の所は西軍のが陣地が広い。
俺がただいま鎮座する古巣を付けたこの大木は、標高五十米のさくらんぼ山の頂上にある。さくらんぼ山は、見渡す限り俺の餌か植物しか無い場所である。天敵も居らんから、ここ一帯山頂から麓までは俺の縄張りになっている。
たまにふらふら迷い込んでくる眷属は、服従の意を表明せんかぎり駆逐する事にしている。ここに来てから今まで三匹は来たが、皆判を押した様に唯我独尊を主張するから、蹴たぐっていじめて、どっちが強いか知らしめてから二度と来ないよう忠告して、情けで一遍の無礼を甘受して逃がしてやる。もし破戒してのこのこまたやって来たら今度は崖の方が崩れないように人柱にしてやると脅すと、頞部陀地獄に放り込まれたような青い顔をして逃げていく。俺の支配する境界に無断で侵入するんだから当然の報いだ。
この山は俺が統治している様なものだ。だから外敵の侵入にはいの一番に駆けつけて追い払っている。治安維持にも尽力している。ある時は十匹位のオニスズメがトランセルを虐めているのを発見したから、その現行犯の暴徒どもを根絶やしにて助けてやったこともある。そいつらのおかげで二三日は獲物を採りに出かけなくて済んだ。一方トランセルは俺に助けてもらったにも関わらず「殺さないで、やめて」とか命の恩人、眼前の英偉に感謝もせずびくびくしていた。癪に触ったから背中をザクッと斬り裂いてやった。黄色いべとべとした汁が噴出して爪が汚れたのには困った。絶命してなお俺に反旗する様ではだめだ、あんまり腹が立ったのでえいと亡骸を蹴り飛ばしてやった。緑の蛹は麓まで転がって、後日確認すると他の鳥ポケモンに食われていた。
 ▼ 8 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/28 10:07:26 ID:cVStMQMs [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
野蛮だったり不敬の悪意を持っているやつをことごとく成敗してこのさくらんぼ山の治安維持に努めているのである。そんなら少しくらい、山から恩賜を頂いても良いだろう。良いだろうと云うことで、俺は毎食この山から主に鳥ポケモンを飯として頂いている。これは天道の理に適った事だ。だから俺を残酷とか無慈悲とか軽蔑してこき下ろすのは論外だ。しかし実際そういう輩が居るのも事実だ。特に人間がその傾向にあるらしい。奴らはあることないこと出鱈目を製造して、我々ニューラ属の讒訴に切磋琢磨する。奴らが製造、使用するポケモン図鑑と云うものには、例えばこんな事が書かれている。

ずるがしこく どうもうな せいしつ。 おやが いない スキに すあなに しんにゅう。 タマゴを ぬすみだす。

盗むとか、獰猛とか、ずる賢いとか、まったく的の外れた事を云うのには閉口する。高等なる文明を所持しているにも関わらず我々一属の一般の性向も一向に理解していない様でどうして我万物の霊長なりと威張る事ができようか。それなら、俺の方が人間属と云う存在について有識している。人間とは私利私欲に環境を破壊し、山を開闢し道路を繋ぎ、海を埋め立てて狭め、ごみをあちこちに投棄し、空気を汚染し、家畜を拷問して刻んで食い、魚を釣って殺し、鳥獣を射殺し、大樹を切り殺す残任最悪の連中だと、熟知している。俺が生まれて間もない頃、この辺りを征服していない頃である。突然大爆発叫喚の怒号が周囲に響き渡ったと思ったら、満点が紅に染まっている。震源地の方を見ると絶大な灼熱と黒煙が大宇宙に向かって伸びている。後から聞くとそれは人間が作りだしたガスか何かを保管している所で、中の者が誤って大惨事を起こしたのだという。そんな、自分達で作り出したものを手懐ける事も出来ない馬鹿連中が我々を愚弄するのはまったく釈明の余地無き蛮行である。
 ▼ 9 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/28 10:29:21 ID:58CF3XAE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
人間の悪行の数々は星の数程あるが、余り多くて書ききれないので今回はこれまでにする。

ところで話を戻すと、俺がポッポ一属を食うのは正当な理由と権利あっての事であって、それを下品下生鬼畜の蛮行と軽蔑するのは間違いだと云うことである。それでも雌ポッポの骸で遊んだ事を追求する者があるかも知れない。この行為は確かに森羅万象の食物連鎖の現象には不要の行動である。だが、これには進化論の大原則による呪縛が関係していて、とても俺一人がどうこうできる、改める事のできるものでは無いのである。元来俺は細身で漆黒の体型と鉤爪を身体的特徴としてこの世に生を受けた。これはまごうこと無く事実である。その俺の親も、俺と同じような姿形をしていただろう。祖父も、曾祖父も、曾々祖父もそうだったんだろう。そして、先祖が子孫に世代交代をするに当たって__これは俺と云うか、ニューラ属と云うか、地球上の全生物に云えることだが、子孫は一定のDNAを先祖が引き継ぐ。そのDNAには動物的本能は無論、先祖の性格や今まで行ってきた所業、善業が一切の推敲無く、地球誕生から原始生命体の頃からの歴史が連綿と受け継がれるのである。そして子孫の性向は先祖から受け継いだDNAに大きく左右されるのである。ここまで論究すれば分かるだろうが、俺の悪趣味はまったく先祖の趣味から来ているものであり、つまりDNAが俺をそうさせたのである。DNAが原因である以上それは変えようが無いし、別に修正しようとも思わんので胎芽から今日に至るまで先祖の呪縛に従って生きているのである。
 ▼ 10 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/28 14:34:43 ID:uPH48D4I [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
東方太陰軍が満天に黒曜を敷き詰めた頃には俺の夕飯は終わっていた。勤労父ポッポ君の羽を剥ぎ取って、頭からかぶりついて平らげた。ちょっと固くなっていたが嫌いじゃあない。固いので困るのはオニドリルだ。一度激闘の末食ったことがあるが、筋肉ばかりで顎がつかれてとても食えなかった。あの時は仕方が無いから肉片を小さく切って、しゃぶってどうにかした。残りは普段通わない草むらに捨てた。末路はどうなったか知る由もない。

一家を食い尽くして満腹になったが、あんまり眠くなかった。そろそろ母ポッポから異臭が漂ってくるので爪の先で払って棄てた。卵の殻や羽や骨も親子共々樹上葬する。面積がすっかり広くなった。とは云え元はポッポ用だから真横に成程広いというわけでもない。ハンモックぐらいの用途ができる。妙にもこれが俺の体に適合して気持ちがいい。俺はこの古巣を故鳩庵(こきゅうあん)と名付けて時々休みに来ることにした。
 ▼ 11 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/28 15:24:50 ID:uPH48D4I [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
故鳩庵に寛ぎながら夜の世界を見下ろしていると、万物の支配者になった気分だ。遥か日の沈む方には、人間の街の光がある。確か養老町(ようろうちょう)とか云う。大人災の発生したのも、あの町の工場地帯でだ。よっぽど科学は発達しているんだろうが肝心の智慧が足りてないようでは意味が無いだろう。その点俺なんかは日々、山の為に働いて、毎日その日の供給の飯を食って、慎ましく暮らしている。人間は豪華絢爛を追求し過ぎるから、飢えている。目前の幸福と云うものに気づかないのは種族云々を捨てた境地から達観するとなんとも哀れである。

大空中には眩燿する星々諸惑星を凌駕して、蜂蜜に濡れた満月が浮かんでいる。なんだか俺は満月の権現である気がした。紅は園生に植えても隠れなしの慣用の如く俺もあらゆる大小の星を従えた非想非非想の帝王である気がした。
流石に誇張かもしれない。俺は身の程を知っているからあまり欲張らない。ただこのさくらんぼ山の王者なのは確かである。その事を確認できたら、また眠くなったので、朝まで故鳩庵に一睡した。俺は夜には働かない様にしているのだ。
 ▼ 12 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/28 15:43:22 ID:uPH48D4I [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
故鳩庵を__俺の住処はこのさくらんぼ山一帯だが、別荘にしてから、鳥ポケモンをあまり見なくなった。あちこち探してみるが、巣から根こそぎ無くなっている。ここ一週間で俺はオニスズメを三羽ほどしか食っていない。空腹に体が自在に動かせない。

この辺に俺の他に鳥を食うやつと云うと検討がつかない。他所からアーボでも現れたのかと、力を振り絞ってちょっと探索してみる。

岩穴から小池から木の裏まで、隠れられる場所は大方索敵したが、アーボどころか虫ポケモンも見なかった。天変地異の予兆か何かだろうか。この山にポケモンが俺しか居ないのかと思うとちょっとぞっとする。始めて遭遇する千古未曾有の事件に狼狽する。これでは食えなくて餓死してしまう。だが新しい餌を尋求して居を移す気は毛頭無い。
仕方が無いので木の実を食って飢えをしのぐ。この山にはモモンとベリが生っている。今まで肉食で無視していたが、こんなに美味いとは思わんだった。疲労と飢餓の身に果汁の甘さが浸透する。母胎から飛び出して以来最も美味く感じた。
 ▼ 13 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/28 23:11:16 ID:uPH48D4I [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
五六日もすると、果物ぐらしも飽きてくる。元々俺は肉食を主とする種族である。ついでに先祖から受け継いだ残虐性も有る。どうも何か殺しておかないと、調子が乗らない。毎日早起きして、泉の清水に沐浴、口をすすいできのみを食う。故鳩庵まで登って山下を見回しながら日向ぼっこをする。昼になるとまたきのみを食いに降りていく。食い終わるとまた庵に戻る。暗くなると岩を枕に寝る。これじゃあ仙人だ。終いには霞を食い出すかもしれない。

俺も一般の煩悩を持ち合わせている。ついでに生き物を殺さずにはいられないという性もある。これは飛躍した云い方だから語弊を生む。大抵のポケモンと云うか、動物は自分より弱いものを食い殺して生きている。俺も苦海の衆生の月並みに漏れない。これは先祖のDNAとか置いておいて、尋常なのである。

その尋常の鬱憤を晴らさんと俺は五六七日飛び越して八日目の朝に、さくらんぼ山から外出した。実にいつ以来だろう。見当つかない。

俺の推測によると、俺は山中の動物を殆ど食ってしまった。親だけならいいが、若く柔らかくて美味いからと云って子供や卵まで食ったのが間違いだった。次の世代の成長を待たずに一帯の連中を根絶やしにしてしまったのだ。辛うじて生き残ったものはもっと生気活発な場所に引っ越してしまう。だからさくらんぼ山は過疎なのだ。この推測だと虫どもも居ないのが説明出来ないが、これ以外まるで検討がつかんから、そうなんだと自認する。

 ▼ 14 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/28 23:23:48 ID:uPH48D4I [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
山から麓の森を歩いて五六分もすると、久しぶりに生きたポッポを発見した。嬉しくって天を疾走する心の動悸を抑え、二十メートル先の木に一休みしている標的に礫の標準を定める。俺が草むらから見上げている形になっているから、ばれる事は無いだろう。正にここという所で御無沙汰のシアーハートアタックが爪と爪の間から発射され、若いポッポを襲撃する。よし仕留めたと思ったら仰天、無敵の遠距離必殺技は遥かポッポから見当違いの方向へ猪突猛進して、無関係の楢の木にぶっ刺さる。驚いたポッポは一目散に逃げ去っていく。しまったと焦って高速移動で追撃するが、何せ広い森なのですぐに見失ってしまった。俺は深く落胆した。
 ▼ 15 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/28 23:39:09 ID:uPH48D4I [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
何が原因だったんだと困惑するが、すぐに答えが出る。鈍っていたのだ、久方ぶりに技を使ったんで、感覚を忘却したのだ。これはまずい。今まで俺は戦闘と云うか、技の訓練なんてしたことが無かった。と云うかする必要が無かった。氷の礫は百発百中だ。接近戦には辻斬りとけたぐりがある。速い奴には高速移動で応戦できる。技使いの天才だった。現に今まで狩りに失敗したことなんて無いし、バトルも百戦必勝だった。その俺が数日の休暇で感覚を鈍らせるなんて、考えていなかった。まるて想像の範囲外だ。

俺は、悩んでも意味が無いから今のは仕方ないと割り切って次の獲物を探索する。暫くしてコラッタを発見した。

鼠はあんまり食わんから、何かの縁と思って、氷の礫で急襲する。紫の体の横腹に直撃した。よしいいぞと近づいて、瞬刻の反抗も許さぬために直ちに体を真っ二つに切り裂く。八日ぶりに真白の爪に紅花が乱れ咲く。取り敢えず腹ごしらえと、その場で死体を十六片くらいに刻んで食う。ちょっと大味な気がするが久しぶりの肉なので美味く食った。皮はと骨とは草むらに棄てた。
 ▼ 16 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/28 23:52:20 ID:uPH48D4I [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
コラッタを喰った後は、奇怪だがまたポケモンを見ない。これは流石におかしい。さっき殺し損ねたポッポが周りの連中に伝達したんだろうか。だとすると皆隠れてるのか、そう思って今度は草の根岩の根掻き分けてじっくり探す事にした。また暫くすると、俺の頭二つ分位の穴が土に空いているのを発見した。何かの巣だろうと見当をつけて、暫く近くで様子を見る。すると穴に比例する程のまるまる太った狸みたいな奴がにゅっと出てきて、周囲を見回している。推測の通りだった。ただ一つ面妖と思うのは、穴から出現した狸君が二ミリほど浮いてるように見えることだ。なんのトリックかしらと鋭い目で観察すると、尻辺りに何か生えている。どうやらこの種族は尻尾で自らの体を持ち上げる習性があるらしい。山に引きこもって外界のいろはを知らない俺は新鮮なものをみた気分になる。
 ▼ 17 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/29 01:06:29 ID:BJjAapQs [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
狸君は、周囲一体をひたすら目睹する。俺はその間動けんから、じっとする。まだ彼の戦力とか未知数だから、下手に動く訳にはいかん。少なくとも当番交代までこの茂みに息を潜めていなければならない。

狸君、尻尾を器用に操作し、まるまるした体を三百六十度回転させる。俺はその度に見つかりやしないか緊張する。そろそろ足が痺れてきた。

無言の激戦から一時間位たった。いい加減にしろと思った瞬間、狸君が落下したように巣穴にしゅっと戻っていく。
やっと開放されたかと安堵した束の間、今度はもっと体格の長いやつがにゅっと出てきた。流石にこれは意表だ。図らずも狸二号と目が合う。突然、

「外敵ィィィィィィィィィッッ!!」

耳を劈くような絶叫で有事を伝達する。役目を終えると二号は巣穴に退却する。これは不味いことになった。あいにく俺は長時間しゃがんでいたから足がうまく動かない。一匹二匹ならどうてことないが、もし狸が雲霞の大軍を差し向けてきたら今は太刀打ち出来ない。屈辱だが、身の安全を第一にできるだけ速やかに未知の森林を撤退する事にした。
 ▼ 18 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/29 22:18:22 ID:BJjAapQs [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
麻痺した両足を高速移動で懸命に疾駆させて退避する。二分かかってようやくさくらんぼ山の麓まで帰還できた。
あまり速くしたんで喘息が発症する。苦しい。息ができない。無理に息を吸おうとするときゅぴぃと喉から高い声が出てくる。深呼吸してようやく体を落ち着かせた。

喘息を対処したらこんどは太股脛に激痛、青天の霹靂の如く疾走する。体力が無いのに無理をするからこうなる。金輪際二度と体に負担をかける様なことはやめようと決意した。にしても散々な日だった。コラッタを一匹食えたのを除けば厄災だらけだ。自慢の礫は外すし、狸風情に戦いて、無様に逃げ帰ってきた。二度とあの辺には行かん。酷い目に会うくらいなら敷地で木の実をくって日暮らす方が賢明だ。出来るだけ苦労から避けて一生を過ごそうと思ってるから、サヴェージ・ガーデンの脅威に怯えながら肉食するよりは平安なるさくらんぼ山に引きこもっていた方が好い。
 ▼ 19 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/29 22:33:50 ID:BJjAapQs [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
とかなんとか云っても、人生から狩猟を剥奪して仙人ぶった生活も非現実的だ。前述の如く、俺は生来の殺し屋である。遠ざけても性は紅華繚乱を求める。血を寄越せと先祖の亡霊が耳元で囁く。五体六十兆の細胞が血を啜れの大合唱をやる。とても理性で制御出来るものでない。だから山から出たのに__振り出しに戻ってしまう。取り敢えずきょうは疲れたから、水を飲んでから昼寝する事にした。

ちょっと登った山の隅っこの泉で、顔をあらう。ぬるい。爪で顔を傷つけないように慎重にやる。洗い終えると口を濯ぐ。鼠を食っておいて何もしないのは不清潔だ。やつらは何でも食うし、食い物があれば何処にでもいくからよからぬ雑菌を所有していないとも限らない。
後は肌についた血を吹いて水分補給をすると、故鳩庵を目指してまた登っていく。この時俺は二三匹のポケモンの気配を察した。何か戻ってきたかと感じる方を見るが、特に何も居ない。草むらに虫でも隠れているか。あいにく俺は虫食の文化は持ち合わせていない。無視して登っていく。
 ▼ 20 クホーク@こだいのおうかん 18/01/29 22:36:20 ID:PORC8uEg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
湧き出る文豪感
 ▼ 21 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/29 23:08:00 ID:BJjAapQs [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
山頂の木を慣れた手つきでひょいひょい登っていく。故鳩庵は葉陰にある。
やっと休めるとふかふか木製の布団に身を委ねる。葉がちちょうど良く日光を遮ってくれる。ぼかぽか陽気に時々涼風が舞う。気持ちいい。

にしてもポッポの割には好立地に居を構えたものである。前世は大工だったのかもしれない。俺はこの珍嘉なる才能に驚嘆して多少なれど畏敬の念を今頃ご遍路旅行中であろう一家に表明するために雅な名前をつけて供養している。普段そんなことせんから、よっぽど俺はここを気に入ってるのだ。意図せんでも、必ず眠くなってしまう。俺を幽深なる安楽の深渓に誘う天才的設計である。やっぱり、俺は眠たくなって夢裏の彼方に落ちていく。
 ▼ 22 ンリュウ@ゴーストジュエル 18/01/29 23:13:31 ID:zLYf8KK2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 23 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/30 22:16:16 ID:.JF1D5tk [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告

近頃無人に近くなったさくらんぼ山に気配を感じることが度々ある。不可思議なのはそれらの姿を目視出来ない事だ。鳥どもが帰ってきた訳では無さそうだし、虫でも内容だ。コラッタかと思ったが、やはり違う。やつらは何でも食うが、出現する場所には必ずものを齧った痕跡を残す。何でかは分からない。それに糞も無い。移住民の気配では無さそうだ。では何かと云うのがいまいち検討つかぬ。だが確実に何か居る。正体暴いてやろうと噴気したのが昨日の夜だった。

俺は洗顔とかの例日の儀式を済ませて、森内に意識を集中する。がさっと、遠方から木の葉を踏みしだいて近付いてくるものが数匹居る。暫くすると背後5メートルまで客が近付いてきた。今だと刹那振り返って、気を発する方へ氷の礫を発射する。

「グエー」

間抜けた声が静寂の深山にこだまする。直撃したらしい続けて五六発炸裂させる。ぎゃっ、とかげっ、とか云う悲鳴を絶叫して二匹が倒れる。直ちにそいつらの前に飛んでいく。見るとそいつらは、前に俺に恥をかかせた狸達と同種族だった。追撃しに来たんだろうか。

「この狸ども、何者だ。どこから来た。」

戦慄している狸共に追求する。逃げないように爪を向ける。

「……」

涙目になりながら、みんな黙している。言葉が話せない訳ではあるまいし、これでは俺に敵対する存在だと示しているようなものだ。

「あの森から来たんだな、そうだろう」

「……」

狸連中、断固として暗黙を続行する。話さないのは、うんそうですと回答しているのと同義だと気が付かないんだろうか。
 ▼ 24 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/30 23:03:27 ID:.JF1D5tk [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
埒があかないから、全員葦で縛って岩穴に連行する。結構肥って居やがって、運ぶのに苦労した。
着くやいなや俺は連中を放り投げる。重いから空中に孤を描くとかは無く、叩きつけた様になる。

「話せばこれ以上痛めつけないで、帰してやる。ここは俺の縄張りだ。それを無断で侵入するのは狼藉じゃあないか。貴様らの時代に一辺でも巣に侵入したものを生きて帰した時があったか。いや、知らんが無いだろう。先だって俺が貴様らの縄張りに踏み込んだ時は見張りが大声で外敵の侵入を叫んだんだ、大方俺が逃げおくれたら虐めまくって駆逐していたろう。生物の一切は住処が有って、それを侵すのは全く全生物暗黙の了解を破壊している様なものだ。本来なら極刑処分が上等だろうが慈悲をかけて、殺さないで置いてやる。始終独白したらの話だがな」

狸どもがあの巣穴出身の前提で話を進める。口上では生かしておくと云ったがどの道殺す予定だ。生還させて援軍を呼ばれても困る。

「近頃俺の周りをうろちょろしていたのもお前らか。とかくに全部話せ」

脅迫するがどうも一向口を割らん。厳しくしつけられたんだろうか。三匹とも泣涕しながら上下の唇を固く結束させる。弱そうながら小さい黒い目は生きては帰れないだろうと云う覚悟の眼差しをしている。


 ▼ 25 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/01/31 23:42:25 ID:QZ0sJcG. NGネーム登録 NGID登録 報告
「帰す、もんか」

その内一匹が口を開く。何を云うと思ったらとんだ無礼である。核心はついているが無闇に疑われるのは不服だ。

「なんでそう思う?」

なるべく落ち着いた口調で返してやる。恐怖政治より、優しさを見せた方が上手くいく事が多い。

「獰悪で、残忍な下品下生が、僕達を生きて返すものか」

これには流石に閉口する。愛玩的な容姿から反発的な態度をとるのは反骨精神盛んなんだろう。だが俺の敷地で俺を愚弄するのは道理を心得ない者である。所詮四足歩行の野蛮な畜生に違いない。「ンー」と唸って考えるようなふうを見せる。気がつくと、先発が俺に反旗してから、奴らの目は俺に対する軽蔑と憎悪の眼差しに変わっている。この野郎ども、俺が下手に出てるとおもって舐めている。その中の一匹の目の下を爪できっさく。「イャァー」と哭いて痛そうにする。顔を手で抑えようとするが縛られていて身動きが取れない。ごろんと転がる。まわりの奴らは視点を変えて心配そうに目をやる。

「話せば帰すと云っているんだよ、あんまり馬鹿にすると無駄に痛い目を見るんだよ」

爪についた血を舌で舐めながら見下ろす。「悪魔だ」 「無間地獄行きだ」とか二匹が云う。無駄口を叩いたものから順に虐めることにした。
 ▼ 26 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/02/02 23:31:37 ID:VDOsXsp2 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
蛮勇を振るった狸共を二三時間拷問して、都度白状を脅迫するが一向口を割らん。牙城要塞に隠蔽された真実を披瀝させんと尽力する俺の努力も虚しくその内一匹が死んだ。脳天を蹴った打撲が死因だった。
残り二匹心身創痍した頃にはもう話す事もあるまいと皆ずたずたに斬り裂いてしまった。情報は口頭から検出させることはできなかったが、少なくともこいつらが近頃俺の周りをうろついている、例の獣穴出身のものだと云うことは検討がつく。もういいやと殺してしまったが、帰還しない事を訝しく思った第二の詮索隊が来るかもしれない。取り敢えずこの亡骸は二日以内に平らげるとして、来たる狸軍の始末について考える。人質にして親玉と交渉しようか。索敵部隊を派遣すると云う事は俺と戦争する気が須臾にも芽生えているんだろう。なら遠慮する事は無い。相手が見方をを蔑ろにする様な連中かは知らんが、人質作戦は基本有効だろう。戦闘力には自信があるから四匹くらい来てもどうてことない。皆葦で縛って倫敦塔の様にこの洞窟に幽閉してやる。取り敢えずこの狸共を食いやすいように解体して昼飯にしてから作戦を練ろうと思った。
 ▼ 27 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/02/02 23:44:17 ID:VDOsXsp2 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
狸を一匹食い終えて、俺は自分の不利を考えさせられた。俺は奴らに関する情報を殆ど有していない。それはあちらもだが俺のまずいと悟らざるを得ないのは人数の問題だ。俺が孤軍奮闘するのに対してやつらの戦力は検討がつかん。三匹偵察に寄越したのを察すると少なくとも三十以上はいそうだ。組織の十分の一以上を喪失するのは大打撃だ。最悪の自体にあっても一応の戦力を保持できる位を派遣させるはずだ。流石にそれを考慮すると、一斉に突撃されたら一溜りもないかもしれない。なら俺から先制してやつらに攻撃するか。しかし以前の如く見張りが居るだろうから、少なくとも実行するなら夜襲になる。しかしすれ違いになって、俺のいない時に第二索敵部隊にさくらんぼ山を占領されると、それも困る。どうも下手に動くと俺の命が危うい。こっちは既に三匹のを奪ってる訳だから、その事実が発覚した場合極刑は免れないだろう。死ぬまで拷問を受け続けるかもしれない。先祖の血の呪いがここで唸りをあげてきたのかと思うとまったく祖を恨むばかりである。
 ▼ 28 バメ@たいようのふえ 18/02/02 23:50:07 ID:.dP8SOQQ NGネーム登録 NGID登録 報告
純文学好きそう
 ▼ 29 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/02/03 00:19:39 ID:RCJYnYiw [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
運命はまったく固定されているのだと思う。でなくて血の呪いなんてものがあるはずが無い。俺の性向が呪縛の産物であることが証明している。だが三千世界にあらゆる皇帝も、乞食も、厭世の聖者も、現人神と祀られる詐欺師も、筮卜師も、煩悩の下天にあるも、皆揃って未来を予告する事は不可能だ。もし、我は天神の加護に寄りラジエルの書を頭脳に有しておるから古今東西の森羅万象を確認できると大声で張り上げるものが居るならそれはまったく仏法を曲解した外道か、脳に重大な障害を負った狂人か、九、十くらいの子供の戯れ虚言である。である以上苦海の怒涛を航海する我々凡夫のすべくは運命の打破とか華厳の滝に巖頭の遺書を置いて身投げしたりするのではなく、運命の緩みを飄々と泰然自若に生き続ける事である。であるから俺は他者を屠殺して今までのうのうと生きてきたのである。他の命を奪魂するのが道理に沿った生き方かと追求する者がいるなら、そいつは昨晩の夜に自分が何を食ったか思い出すがいい。牛豚鶏卵魚草云々、生者は生命の継続にあたり食欲を有しているのだから、殺して食うのがまったく当然なのである。弱肉強食こそまったく六道を支配する大原則である。その原則に則って俺は狸共を食ったし、ポッポ一家を食ったし、オニドリルを食ったのである。そしてその狸だってきのみをくうし、ポッポだってみみずをくうし、オニドリルだって俺を食おうとしたのである。食ったものは更なる強者にくわれる、遂には最上位種が死んで地に帰り、それを微生物がくうという循環を三千年前からリーインカーネイションと云うのである。まったく俺に楯突くものは三千年前の頭脳にも敗北している。ひょっとしたら打製石器でマンモスでも狩って暮らしているのかもしれない。やはりここでも骨肉の争いが繰り広げられている。世界は食物連鎖なのである。
 ▼ 30 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/02/03 00:27:52 ID:RCJYnYiw [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
その食物連鎖の運命を達観し鎮座する我ニューラ大明神であると豪語したいが俺も所詮ポケモンの一班に過ぎんのは自覚している。しているからこその尊さである。俺は自らを満月に比喩したように、高騰生命体だと思っている。本当は色天辺りに居てもいいんだがそこが運命の厭なところで、殺人衝動と残虐性によって俺は哀しくも息のしづらい畜生道に堕ちてしまったのである。堕ちてしまったが最後、こんな狸共に平穏を脅かせる日が来てしまったのである。とかくに苦労は嫌だし自尊心もきずつけたくない。死ぬのは以ての外だ。だから殺す。れんちや
 ▼ 31 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/02/03 00:29:28 ID:RCJYnYiw [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
連中が売ってきた喧嘩をかって、皆殺しにして俺の独尊孤王たるを証明すると決心した。
 ▼ 32 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/02/06 22:30:52 ID:2RdvYMRc [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
征服を決心してから三日たつ。俺は雨の降るのを待っている。雨が降っていれば、見張りの仕事も薄くなるだろうと考えて、ついでにそれが夜だったら見張りも居ないだろうと考えての待機だ。警戒のされていない所を奇襲して根こそぎ支配する。ひれ伏すものは下僕にする。歯向かうものは皆死刑。わはは、いい気持ちだ。いい気持ちなのはいいが近頃狸とかそんな甘いものじゃないものがさくらんぼ山の上空を飛び回っている。確かエアームドとか云う。そいつが列を成して、六匹巡回するように山を見下ろしている。時々列を崩すと思うと三匹ゝゝで二手に分かれる。また暫くすると合流して、今度は二匹ゝゝゝゝで三手に分かれる。決して一羽で行動することが無い。どうもこの山で何か探索しているような風ではある。強そうだから関わらない様に隠れているがなんとも不気味だ。俺に関わりは無いだろうが、いや関わってほしくないが、とっととどこかに行ってほしい。もしここに巣とか作ったら追い払える自信が無い。

やつらは毎日来る。俺も毎日雨を待つ。五六日するとようやく空が怪しくなって、七日目の夕方にようやく降った。エアームドはもう居ない。やっと来たかとはやる思いを少し堪えて夜を待つ。暗雲の漆黒が増した頃に俺はとうとう窟を飛びだして狸共を征伐しにさくらんぼ山を下山した。
 ▼ 33 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/02/06 22:35:49 ID:2RdvYMRc [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
穴までつくと俺は目前の光景に狼狽した。あのエアームドが見張りをしてやがる。野郎、強そうなやつを雇いやがって、あの畜生。エアームドの体格は少なくとも俺の倍はある。どうやって買収したんだろう。それかそもそもあの狸共はあのエアームドの支配下にあったんだろうか。理由はなんでも奴をこの場から除外せねば俺は巣へたどり着けない。しかし方法と云えば見張りの交代時の一瞬の不意をついて突撃するしか無い。しかし勝つ見込みは少ない。そもそもそんなに雨の中待っていられない。俺は屈辱だが諦めて、今夜は山に帰った。
 ▼ 34 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/02/06 22:42:24 ID:2RdvYMRc [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
あの夜からもエアームドは日課でやってくる。俺は見つかりたく無いから影に隠れてる。近頃はまともに運動も出来んから体が鈍ってきている。それに退屈だ。しばらくは狸の亡骸をおもちゃに遊んでいたがうっかり骨を折って以来済に放置している。こうもやる事がないといっそ死んだ方がましと思う。なんだか泣きたくなってくる。

何日か経って、今日はやつら居ないなと思って大はしゃぎで外に出ると仰天二匹が林に居る。やばいと思って大急ぎで帰宅する。あの鳥どもめ、とうとう領域に侵略してきやがった。あいにく奴らを迎撃する力は保有しておらん。このままだと俺の森が奪われてしまう。談判して出ていってもらおうかと考えた。木の実をたくさんあげるのでどっか消えてくださいと頼もうかと思った。しかしあげたら俺の食う分が無くなる。共存する気は無論無い。俺はこの山の支配者であり続けなければならない。
 ▼ 35 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/02/06 22:46:45 ID:2RdvYMRc [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
夜になると決まってやつらは帰っていく。方角は街の方だ。都市開発が進んで住処を失った浪鳥がここが次の巣に相応しいか視察しているのかもしれない。まったく人間の自己中心の被害を被ることになってしまった。とにかくこのまま逃げ続けてもいずれ見つかるだろう。ならさっさと出向いて交渉するしかない。おれは両腕いっぱいにベリーを抱えてある日、鳥に会いに行った。日を増す事にやつらは行動範囲を広めてくる。遭遇はすぐだった。
 ▼ 36 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/02/06 22:54:17 ID:2RdvYMRc [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
中腹の林にやつらは三匹で居る。決して単独行動を取らないところがいやらしい。俺はありったけの勇気を振り絞って話しかける。

「おい」

初対面のやつにおどおどした話し方では舐められてしまうのは知っているが、緊張で声がちょっと震えていしまう。話しかけるとやつらはびっくりした様子で、仲間と目で話している。

「近頃、君らはこの当たりをうろうろしているが」

おい、の対句をやる。鳥どもは黙ってこっちを見ている。

「この山は俺の縄張りだ、君らの巣として提供する場所は無い。この木の実をくれてやるから、どっかに行ってほしい」

よし、云いたいことが云えた。あとはやつらの返句を待つばかりだ。待っていると、

「撤退ィ」

真ん中の奴が云う。

「撤退」

「撤退イィ」

後の二匹が続いて云う。云うかと思うと最初に喋ったやつが先頭になって、後の二匹が続いて彼方へ飛んでいった。
 ▼ 37 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/02/06 22:55:54 ID:2RdvYMRc [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
なんだ、俺に戦いて逃げていきやがったか。なんだ大した事無いじゃあないか。安堵しておれは木の実を地において、その内一個を一口で頬張って故鳩庵に帰った。怖いのと色々で疲れてしまった。
 ▼ 38 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/02/11 08:59:51 ID:21ZXH1xA NGネーム登録 NGID登録 報告
俺はよく寝る。そしてよく食う。食った分寝て、起きたらまた食う。運動はあまりしない。強いからしようがない。うまれてこの方俺より強そうなやつというと近頃のエアームドくらいだ。だがやつらは俺が睨んで追い返したので二度と来るまい。これで俺はこの辺りで唯我独尊の確固たる地位を手に入れた。そう思っていた。エアームドを追い払った次の日の朝だ。俺はいっぱい昼寝してたからあんまり眠くなくて、東雲くらいの頃に起きた。習慣で口をすすいで顔を洗う。毎度々々、水が腕を伝って気持ち悪い。起床の儀式を終えて、朝飯を食う気分ではないと思ってちょっと霜の降りるさくらんぼ山を散歩した。
 ▼ 39 ーイーカ@ねっこのカセキ 18/02/12 16:10:52 ID:sIRzY9g. NGネーム登録 NGID登録 報告
最後は無限闇夜のいざないに引き込まれて死ぬのかな?
 ▼ 40 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/02/12 23:50:58 ID:S6py6yQg NGネーム登録 NGID登録 報告
散歩したって特別面白いものがある訳では無い。梅はまだ咲かないし、桜は無論、松は常緑だ。きのみは不思議といつでもある。ポケモンにも出会わないし、いつもとまるで違った後継が無い。降りて狸巣穴に殴り込みに行く気分でも無いし、俺にできる気の紛らわせ方と云えば散歩くらいしかない。中腹の林の方はあまり行かないが、頑固な雑草がぼうぼうして行くところではな無い。あそこならキャタピーの一匹くらいいるかも知れんが、わざわざ会うために行く気は無い。偶然遭遇したところでごめんなさいを連呼するのみだろう。俺には天涯孤独が合っている。俺の他に存在するのは敵か餌だけだ。
 ▼ 41 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/02/15 23:14:44 ID:EFYPJ8eI NGネーム登録 NGID登録 報告
気の紛らわせ方といっても、不穏は無い。ただ暇なのが嫌なのだ。暇にも段階というのがあって、一定の段階を越すと、死んだ方がましだとか思うくらい気分が悪くなる。そういう時はとにかく暴れたりする。そのおかげでこの山のある地点は木が無造作に倒れたり、砕けていたりする。それを紛らわすためには散歩しかない。といってもどこも見慣れているからつまらない。いじめるポケモンも居ない。久しぶりに山を降りようかと思った。
 ▼ 42 ェローチェ@くさのジュエル 18/02/19 02:04:54 ID:AvnSGZL. NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 43 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/02/20 01:01:28 ID:9z0zDH0. NGネーム登録 NGID登録 報告
ミスクーズィ。これから更新が遅くなると思います。
今は起承転結の結に差し掛かっているので、出来れば今週中に完結させたいと思います。ボナノッテ。
 ▼ 44 路翠泡◆5gBcX6RAcw 18/03/01 21:18:19 ID:Cr5VYM/I NGネーム登録 NGID登録 報告
乾燥無味なる破れ山を降下すると森へ続く道に出る。さくらんぼ山は森の中に隆起した一部分という点でいえば、森とたいして変わらないかもしれない。支配者が確立しているかどうかなんだろう。所詮狸に広大な森林の支配権があるわけもなかろうし、エアームド飛行隊も外様だ。俺だって制圧は難しい。山を一個自分のものにしただけでも十分だ。

麓に出て数分歩けば生臭い畜生の匂いがする。少しそっちには敏感になった気がする。せっかくだから生け捕りにして、戻って虐めてから食おうと思った。そう云えば狸はまだ食ったことが無い。見張りを須臾に拐ってやろうかと思った。
 ▼ 45 ンカラス@ひこうのジュエル 18/03/19 11:18:08 ID:2tu/PoNg NGネーム登録 NGID登録 報告
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