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【SS】アシレーヌ「ポケモンサーカス団エクリプス!」

 ▼ 1 1◆J44kAZeDOM 17/03/28 06:26:17 ID:cWAt11WY [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







――太陽と月が交わる時、新たな光が産み落とされると言う。






 ▼ 2 1◆J44kAZeDOM 17/03/28 06:26:36 ID:cWAt11WY [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







プロローグ






 ▼ 3 1◆J44kAZeDOM 17/03/28 06:27:10 ID:cWAt11WY [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
高くバルーンを跳ね上げる。

そう簡単には割れない奴だ。これを、いかにして声で割るか。

最終形態まで進化したオイラは、以前までの軽やかなジャンプは失われてしまった物の、代わりに美しい音を得た。

もちろん、跳ぶ事自体は可能であり、それを活かしたパフォーマンスだって、当然練習している。

けれど、そちらの感覚は、水による浮力のお陰か、感覚だけで言うならそこまで酷くは変わっておらず、そのリズムを取り戻すために、ニャビーが進化した時程厳しい練習は不要だった。

そして、その分を、新たに手に入れた、この声の練習に費やしているのだ。

小さくオイラは息を吸い込み、そして高らかに歌い上げる。

意味なんて何もない、ただ、綺麗な音を。

しかし、それはバルーンを震わせるだけで終わる。


アシレーヌ「あっちゃー、失敗かー……」


オイラは空を見上げて、そう呟いた。

まだまだ、声とバルーンの融合には程遠い。もっとしっかり練習しなければ。
 ▼ 4 1◆J44kAZeDOM 17/03/28 06:27:42 ID:cWAt11WY [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
と、思った時の事。

バルーンが、突如として弾けた。

それは雨となり、屋外で練習していたオイラの体を濡らした。

え、と声が漏れる。

そう簡単に、それこそ、オシャマリとニャヒートが中に入っても割れない強度のバルーンを、いとも簡単に破壊した、何かがいる?


アシレーヌ「な、何……?」


問い掛けに、スッと横切る白と赤を基調とした5つの刃が答えた。


「綺麗な声だったね、カグヤちゃん」
 ▼ 5 ウワウ@ずがいのカセキ 17/03/28 06:30:25 ID:cWAt11WY [5/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
このSSは
【SS】ポケモン不思議のダンジョン 花の盗賊団(http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=563163
と相互補完しながら進行していきます
単体でも読めなくはないと思いますが、こちらも合わせて読む事を推奨します

基本的に盗賊2章→サーカス1章の順に読む事を想定しています
 ▼ 6 リリダマ@れいかいのぬの 17/03/28 14:33:27 ID:TpkDBWug NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リオルとイーブイとチョロネコのSSとレントラーのシンオウ1周のSS書いてた人か
支援
 ▼ 7 1◆J44kAZeDOM 17/03/29 20:43:15 ID:WmToOqec [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
盗賊団編 プロローグ・1章・2章

http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=563163&l=1-37
 ▼ 9 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 20:54:25 ID:o.RG/8e6 [1/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







1章 エクリプスの再来






 ▼ 10 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 20:55:00 ID:o.RG/8e6 [2/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ウルトラビースト、というのを知っておるかの、ジュナイパー」


……知っている。僕は、確かにそう呼ばれる生命体と一度接触した事がある。

けれど、どうしてその単語が、急にこの顔なじみのジジーロンの口から飛び出して来たのだろう。


ジュナイパー「知ってますけど……」


僕とウルトラビーストとの接触は、数年前、僕がまだ、サーカス団エクリプスの団員として勤め始めたばかりの頃だった。

入団してすぐの公演で、照明係のエーフィとブラッキーのツインズを追いかけて、ミリスの街からヤレユータンと後1匹、あれ誰だっけ、まあいいや、の2匹でやって来て、それからいろいろあって、事情を説明してもらう直前に、2匹はそのビーストにやられた。

ヤレユータンはやられてこそいないけど動きを止めるため異世界へ2匹でワープしたのか、そのビーストと。

そこに、僕とアシマリは居合わせた。だから、会った事さえあると言ってもいい。


ジュナイパー「でもなんで、なんで急に?」

ジジーロン「ワシからの依頼みたいなもんじゃよ。そのウルトラビーストとやらに関する情報を、あるポケモンに聞かせてやって欲しいんじゃ」
 ▼ 11 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 20:56:03 ID:o.RG/8e6 [3/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あの事件以来、僕はアママイコと共に探偵事務所を開いた。

考えるのが好き、という特性を活かしてそうしたら、とアママイコからアドバイスをもらったのだ。

で、その事務所兼住居を構えた場所のすぐ近くに、このジジーロンの家があり、それから顔なじみとしてヒマな時は話に付き合ったりする仲にはなっている。

その彼から、依頼。これは、初めての事だった。

意外な展開に僕は彼の顔を見詰める。穏やかなその顔からは何を内に秘めているのかさっぱりだ。

僕はため息を吐くと、今となってはもう進化前のようにぐるぐるとは回らない首を傾げ、しばし思考を巡らせた。

ジジーロンはいいポケモンだ。それは断言できる。

けれど、騙されているのではないか。お年寄りは、詐欺に引っかかりやすいともいうし、まして今回の目的はウルトラビースト。

世界を破壊しかねない話題だ。そうやすやすと広めたくはない。


アママイコ「すいませんねジジーロンさん。うちのこれ、考え込むと潜り込んで止まらないから」

ジジーロン「構わんよ。年寄りからしたら、少し待つ事ぐらい気にもならんわい」

ジュナイパー「いえ、もう大丈夫です」
 ▼ 12 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 20:57:03 ID:o.RG/8e6 [4/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「その前に、ひとつだけ。そのポケモン、いいポケモンですか?

       ウルトラビーストを利用しようとする悪いポケモンだったら世界がとんでもない事になる」

ジジーロン「そこは心配せんでよい。間違いなくいいポケモンじゃよ」

ジュナイパー「どうしてそう言えるんですか?」

ジジーロン「ワシの孫を助けてくれたからの」

ジュナイパー「……そうですか。まあ、その辺はジジーロンさんを信じます。いつですか?」

ジジーロン「1週間後じゃよ。場所はワシの家じゃ」

ジュナイパー「わかりました。受けますよ。ただし、依頼になりますし、料金は発生しますけど」

ジジーロン「構わんよ」

ジュナイパー「まあ、内容も内容だし、依頼主があなたなので、格安でいいですよ」

アママイコ「ちょっとジュナイパー?!」

ジュナイパー「ごめんごめん。でも、時間はそう取られない。元とは言えエクリプス団員の務めも果たしたいし。

        貯金はあるでしょ?」

アママイコ「あるっちゃあるけど……わかった。仕方ない。あなたの好奇心はもう、止まらないんでしょ?」

ジュナイパー「うん」
 ▼ 13 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 20:57:41 ID:o.RG/8e6 [5/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
なぜ今、ウルトラビーストに関して調べたいポケモンがいるのか。

悪いポケモンでないとすれば、その狙いは何なのか。

隠していたのだが、やっぱりアママイコは欺けない。

今の所あり得ないけど将来別の♀に言い寄られたら死にそうだな、と思う。


ジュナイパー「ありがとね、わかってくれて」

アママイコ「仕方ないよ。じゃあジジーロンさん、料金は……」
 ▼ 14 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 20:58:22 ID:o.RG/8e6 [6/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジジーロンが自宅へ帰って行き、僕はまず、天文台の街イスカーを目指す。

次の日食……エクリプスはいつかを確かめるために。ウルトラホールの奥の世界とこの世界が最もつながりやすい日、それ即ちエクリプス。

ウルトラビースト。異世界からの侵略者がやって来る日だ。

懐かしい響きに、思わず僕は俯く。

今日は、数日の旅の準備に追われていた。

明日の朝出発し、情報を集め、帰って来た辺りで、ちょうど1週間ぐらいになるだろう。

そう遠くはないのだ。けれど、決して近くはない。


アママイコ「この保存用リンゴと、ピーピーエイダー、後保存用オレンと……」

ジュナイパー「こんなもんかな。よし、ありがとう」

アママイコ「どういたしまして!」


彼女はニコリと微笑んで見せる。
 ▼ 15 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 20:59:14 ID:o.RG/8e6 [7/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ああ、この顔が、アママイコだ。数年の間一緒にいるが、この顔だけはいくら見ても飽きる事がない。

ふと空を見ると、辺りには星が煌めいている。もう夜だ。

月はない。新月のようだ。


アママイコ「もう、寝なくちゃね」

ジュナイパー「だね……でも、ちょっとだけ……」
 ▼ 16 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 20:59:57 ID:o.RG/8e6 [8/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌朝、少しのつもりが大幅に伸びてしまったせいでまだ眠い目をこすりつつ僕は翼をはためかせた。

アママイコはまだ眠っている。だいたい責任は僕のお誘いだから仕方ない。寂しく出発するとしよう。

かばんを背負い、そして飛んだり歩いたり。

微妙な所なのだ。進化して以来、純粋な飛行は苦手になった。

滑空ならできるのだけれど、移動にはあまり有利にもならない。

過去を割り切ったつもりで、結局過去に縋る。まあ、縋る過去は別種なのだけれど。

でも、なんだかこの訳のない空想が、何かの暗示なような気がして、僕の背筋は思わず震えた。

はあ、とため息を吐く。

エクリプス時代を彷彿とさせるような単語に、思わず辟易した。

まだ、少し眠たいらしい。

そしてしばらく後、寝ぼけ眼では危険な箇所に差し掛かる。

不思議のダンジョンと呼ばれるものだ。もっともここは、そう危険度の高いダンジョンではないが。

それでも自我をなくして狂暴化した敵が襲い来る、探偵業務でもなければあまり近寄りたくはない箇所。

アシマリと、リンゴを回収しに行ったっけ。そんな風に、僕の胸を懐かしさが襲う。

頭を振り、僕はかばんの感触を感じながら、ダンジョンへ突っ込んだ。
 ▼ 17 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:00:42 ID:o.RG/8e6 [9/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
羽を1本、敵の影を縫い付ける役割で弓のように放つと、彼らは動けなくなる。いわゆる「かげぬい」だ。

後は遠距離攻撃にだけ警戒しつつ、それをゆうゆうとかわして階段を捜すだけでいい。

バトルもできない事はないのだけれど、気付けばそれを避けるようになっていた。

もちろん避けられるものは避けるに越した事ないが、大人になったと言う事か、とも感じる。


ジュナイパー「さ、行くか」


簡単にダンジョンを抜けると、もう夜。細い細い月が出ていた。

今夜はここで野宿だな。

そう決めると、僕はその辺に寝転がる。

羽毛やフードが保護してくれるから、藁を敷く必要もない。あればそれはもちろんいいのだけれど、なくても支障はないのだ。

草タイプに加えて、ゴーストタイプ。もはやたき火をする必要すらない。

野宿と言うのはだから、僕にとって、荷物を取られないように気を付けながら屋外でただ眠るだけ、特別な準備は不要なのだ。
 ▼ 18 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:01:14 ID:o.RG/8e6 [10/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
食料は別に特別ではない。荷物に入っている。

保存用リンゴを手に取り、その体勢で1つ頬張る。煌めく星空の元、何も考えないで、ボーっとしていた。

冷たい風がフードを撫で、軽く揺らめいた。

フードの前面を閉ざし眠る体勢に入って僕は、そのまま眠りに落ちた。
 ▼ 19 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:02:25 ID:o.RG/8e6 [11/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フードから漏れ入る朝の陽射しに目を覚まし、それから徐々にフードを開く。

抱き抱えていた荷物はきちんとそこにある。中を確認するが、なくなった物は何もない。

行くか。

僕は起き上がり、1つ伸びをすると、イスカー目指して再び足を進め始めた。

穏やかな、陽射し。何かが起きる気配もない。

けれど、確かに、何かが動こうとしているのかもしれなかった。

――

イスカーに辿り着いたのは、結局その日の夕方。

今から情報集まるだろうか、と沈みつつある太陽に背を向けながら考えている内に夜になってしまうという大ポカをしでかし、結局宿屋へ直行した。

前金で代金を支払った。一応領収書は貰っておく。経費で落とせる。

割安とはいえさすがに経費は割り引けない。損が出るのは厳しい。
 ▼ 20 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:03:28 ID:o.RG/8e6 [12/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そもそも、もしエクリプスが近付いて来ていたとしても、それこそエクリプスが止めてくれる。

文面だけ見ると訳がわからないけれど、でも僕は、もうそこに関与する必要もない。

だから、これは、あくまで仕事なのだ。

損を出す訳にはいかない。僕だって、2匹分の生活を背負っている。

そしていつかは……と思っていたが、どうにも僕とアママイコでは子どもは産めないらしい。

草、ゴーストタイプ、特性新緑なのにタマゴグループは飛行しかない。ううむ、謎だ。ジュナイパーという種族は何者なのだろう。

話を戻して。

布団に潜りながら、明日は朝一で天文台に行こう、と考え、そして思う。

……天文台って、夜も活動してるのでは?

星の観測など、仕事はむしろ、夜の方が多そうだ。

即断即決は美学に反するが、それでもどう考えてもその考えが胸を離れないために僕は立ち上がり、おかみさんに声を掛ける。


ジュナイパー「すいません、今からちょっと外出してきます」

おかみさん「はいはい。帰って来たらそのまま部屋へどうぞ」


了承は得た。さあ行こう。と息せき切って歩き始める。
 ▼ 21 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:04:12 ID:o.RG/8e6 [13/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
夜闇に隠れて歩くのは得意だが、生憎不要だ。

急ぐ必要はまだないが、かと言って過度に慎重になる必要もゼロ。

つまり、普通に歩いたり飛んだりしてればいい。

もう月は沈んでしまっている。昨日一昨日から鑑みるにまだ三日月、満月には程遠い。

日暮れのすぐ後に沈んでしまう。

星が瞬く空を見上げ、けれど何も考える事はなかった。
 ▼ 22 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:04:45 ID:o.RG/8e6 [14/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イスカー天文台。

その文字が書かれた看板の下に立つ。

警備員とかもいるだろう。もちろん疚しい事はないので普通に頼み込めばいいのだが。

この天文台は、昼は科学館としての役目を果たすが、夜は観測施設。

そう、もらったパンフレットに書いてある。

僕の考えは、半分辺りで、半分外れだ。昼に行った方が訊きやすそうではある物の、夜も活動している。


ジュナイパー「すいません」


室内に入りそう声を掛けると、受付の所に座っているポケモンがこちらを見た。


「夜中は開いてないよ」

ジュナイパー「いえ、ひとつ聞きたいんです。次のエクリプスがいつなのか。

       わかってる限りで構わないんですけど」

「一般人には教えられねぇよ」

ジュナイパー「元とは言え、サーカス団エクリプスのメンバーでも、ですか?」
 ▼ 23 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:05:40 ID:o.RG/8e6 [15/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そう言うと、彼ははじかれたように立ち上がり、受付の仕切りを跳び越えて僕に詰め寄って来た。

鬼気迫る表情が、僕を少し驚かせる。


ジュナイパー「ど、どうかしましたか?」

「お前エクリプスのメンバーか?! なら話は違う! 来てくれ!」


そう言って彼は僕のフードをひっつかみ、そして駆け出した。

人の入って来ないような通路に僕を引っ張り込む。


ジュナイパー「痛い痛いっ! 何するんですかっ?!」

ゴーリキー「あ、悪い悪い……。俺はゴーリキー。ここの警備を担当してる職員なんだが……。

      まあ、詳しい事は話せばわかる」

ジュナイパー「わ、私はただ、エクリプスがいつなのか知りたいだけで」
 ▼ 24 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:06:44 ID:o.RG/8e6 [16/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴーリキー「1か月後だ」


えっ、と思わず声が漏れる。

そんな……すぐに?

言葉を失った僕に、彼は「おいうち」を決めた。


ゴーリキー「だってのに、サーカス団のエクリプスが見付からないんだよ、どこ捜してもな」


日食が接近している。

それなのに、サーカス団エクリプスが見付からない。

脳内でその事実を反芻し、それから叫んだ。


ジュナイパー「マズイじゃないですか!」
 ▼ 25 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:07:43 ID:o.RG/8e6 [17/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴーリキー「ああ、非常にマズイ。生贄なんだろ?」


かいつまんで説明すると、そうなる。

エクリプスが止めなければ、次善の策として、生贄2匹。

けれど。


ジュナイパー「でも駄目。生贄も、たぶんもう用意できない」


エクリプスが見付からないとはそれ即ち、そういう事だ。

システムを詳しく聞いた訳ではないが、恐らくミリスに新たな生贄は生まれていないだろう。

だってまだ、彼らはこの世にいるのだから。


ゴーリキー「じゃあどうするんだよ」

ジュナイパー「どうする? 答えはひとつしかない。エクリプスを見付け出すんです。

       それしか道はない」
 ▼ 26 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:08:42 ID:o.RG/8e6 [18/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴーリキー「お前は知らないのか」

ジュナイパー「元、ですから」


ため息と共に言葉を吐き出す。場を陰鬱な沈黙が支配した。

再び、今度は双方のため息。

僕は、頭を切り替え、質問を開始する。


ジュナイパー「噂も聞かないんですか?」

ゴーリキー「ああ」


驚いた。エクリプスは、あのまま順当に行けば歩くだけで噂を残すぐらいには成長しているはずだ。

そこまで行かずとも、情報を意図的に収集してなお噂ひとつない。

僕は、ひとつの事実を確信した。

けれどまだ、続けて尋ねる。


ジュナイパー「この事、ミリスのポケモンたちには伝えましたか」
 ▼ 27 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:09:20 ID:o.RG/8e6 [19/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴーリキー「もちろん! エクリプスが見付からない事までな。ったく、日食はもうすぐって事すら知らねえんじゃねえのかあいつら……」

ジュナイパー「そうですか。……僕の方でも探します」


それにしても、大変な事になった。世界の危機は、こんなにも近付いていただなんて。

一般ポケとなり、初めてわかる。あの時、エクリプスに押し寄せた人たちの感情。

――どういう事? 世界を救ってくれないの?

全然違うか。
 ▼ 28 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:09:57 ID:o.RG/8e6 [20/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
別れを告げ部屋に戻り、それからしばらく考えを巡らせた。

ミリスは、生贄すらもエクリプスにいる事を伝えなかった。

騒ぎが大きくなるのを恐れたのだろう。それは、実際正しい。

天文台は、知らないのだ。その事実を。だから、生贄、なんて発言できた。

どうやら、僕が捜すしかないらしい。世界が本当に危ない事を知っているのは、ミリスの住民、エクリプスメンバー、そして僕。この3者だけだ。

ウルトラビースト。それに関して興味を持つポケモン。

彼ら彼女らは、何を狙っているのだろう。俄然興味が湧く。彼らは、この事実を知っているのか。

後1か月もしたら、ウルトラビーストが侵略してくる、という事実を。

――妙な塩梅になって来た。不確定要素が多過ぎる。

まあ、それは後でハッキリさせればいいのか。まだ、情報収集の段階だし。

ただひとつ、エクリプスは意図的に身を隠している。目的は知らないけれど。噂も聞かないのは、たぶんそういう事だ。

それがわかっただけでも収穫か。

そう割り切ると、僕は藁の布団に身を埋めた。
 ▼ 29 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:10:29 ID:o.RG/8e6 [21/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まだ帰るまでに数日ある。時間はないが、予定は前倒しにできない。

翌朝目を覚まし、朝食を食べて僕は、しばらく思考を巡らせた。

意図的に隠れている以上僕が捜しても情報はあがらないだろう。

それならいっそ、足りないままでも考えた方がいい。

まず、考えられる場所として、ミリスに匿われている場合。

けれどこれを僕は候補から外した。もしそうなら危険度は恐らく低い。

何を狙っているのかしらないけれど、彼らと共にいれば寸前で止める事も可能だ。

可能性は高そうではあるものの、考えなくていい。

となるとだ。一体どこだ?
 ▼ 30 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:11:26 ID:o.RG/8e6 [22/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いやでもそうか、全員が一緒にいると目立つし噂も立つな。

となると、今は一時的に解散しているのかもしれない。

ただそうなると、ニャヒートが死ぬな。

そんな風に考えて、思わず苦笑する。

ニャヒート。誰とも交われなかった、孤高の天才空中ブランコ乗り。

彼女は練習していないと死ぬ。これは彼女と一番親しくなった、僕の親友アシマリの弁だ。

当のニャヒートも否定してはいなかった。自虐的に自分から言う事さえあった。

けれど、解散しているとなると、彼女が練習を続けられる場は確かに必要となる。

そして恐らく、あの事件で、2匹の距離も一層近付いたはずだ。あの危険な火の中を2匹で抜け出したのだ。ならないはずがない。

きっと、今解散しているなら、2匹は一緒だ。

で、練習できる場所。


ジュナイパー「ラサーシャ……あり得るかも」
 ▼ 31 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:12:10 ID:o.RG/8e6 [23/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラサーシャ。僕の生まれ故郷であり、エクリプスに入団するまでアシマリとの関係を築いた場所である。

アシマリも、エクリプスに入るまでに関して言えば、ラサーシャの光景しか記憶にないはずだ。

そして、僕の家は、街外れの木立の中にあった。そこにロープを吊るして、バランスを取る練習をすれば、ブランコの練習にもなる。

あの家は放置していた。どうなっているかわからないが、調べる価値はある。

ただ、もし外れだった時、ラサーシャまでの距離が無駄になるのは結構痛い。

事務所と故郷は、存外遠い。

助手がいれば違ったのだろうけれど、生憎そんなの、アママイコしかいない。遠出させたくはないし。

ジジーロンの依頼に答えてもらえればいいのだけれど、やはりそれも駄目。概要程度は知っているだろうけれど、僕の方が詳しいのは確実だ。

ひとつ唸って、立ち上がる。

とりあえず、手紙でも書くか、アママイコに。現状を伝えたら不安がるかもしれないが、彼女には知る権利がある。

彼女も元サーカス団員なのだ。それに、噂の収集を実行してくれるかもしれない。

ダメ元ではあるけれど。
 ▼ 32 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:12:54 ID:o.RG/8e6 [24/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
で、アママイコに手紙を認め(したため)ながら、僕はふっと思い付いた。

手紙は、目的の場所に届けられる。

そこに誰かがいれば読まれるし、いなければ宛先不明として差し出した家に戻される!

つまり僕の実家に手紙を送り、そこにアシマリたちがいれば伝わるし、いなければそうわかる。

ペリッパー便、ありがとう。こんな素晴らしいシステムを維持していてくれて。

取る物もとりあえず僕はアシマリに向けて久しぶりに会いたいという旨の手紙を認め、それから走り出した。
 ▼ 33 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:13:29 ID:o.RG/8e6 [25/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「いるかどうかわからないんですが」

ペリッパー「いなかったら自宅まで送り返させていただきますっぺり!」

ジュナイパー「ありがとうございます。私の自宅は……」


こんな会話の後、僕は、郵便局を去った。

なるべく急いでもらえるとありがたい、と伝えはしたが、ワイロとかも特に渡してはいない。普通になるだろう。

となると、やっぱり自宅に一回帰るのが得策か。


ジュナイパー「あ」


アママイコへの手紙。書き終わってるのに出すの忘れてた。

まあ、いいや。また会える時はそう遠くない。

とりあえず、エクリプスの噂を当たってみるか……。
 ▼ 34 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:14:13 ID:o.RG/8e6 [26/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
当然のように収穫はゼロ。

ダンジョンを練り歩いてリンゴを探す方がまだ期待値は高かったように思う。

どのみちイスカーは天文台が調べ尽しただろうから、僕が出る幕がないのは当然とも言えるけれど。


ジュナイパー「まあ、でしょうね」


そう呟いて、僕は宿に戻った。
 ▼ 35 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:14:44 ID:o.RG/8e6 [27/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
荷物をまとめておく。

明日、朝一で帰りたい。一日で帰れる訳ではないが、それでも進めるだけ進みたいから。

前金で料金を払っているので心配は不要だが、それでも一応おかみさんに声を掛けておく。


ジュナイパー「おかみさん、明日朝一で帰りますので」

おかみさん「あいよ。朝飯はいらないのかい?」

ジュナイパー「ええ。ありがとうございます」


晩ごはんを給仕してくれた際にそんな会話を交わした。

ここの食事はかなりおいしい。ブラッキーから学んだアママイコには劣るけれど。

エクリプスの事を思い出したせいで、ブラッキーの料理が無性に恋しくなって来る。

あの天にも昇る心地な絶品料理は、直接彼から料理を学んだアママイコでも再現できていない。まあ期間が短かったってのもあるけれど。

それにも劣ってはいるとはいえ、それでも充分に及第点だ。いい所を選んだ。
 ▼ 36 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:15:15 ID:o.RG/8e6 [28/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
完食し、部屋に戻って、エクリプスが姿を隠す理由について、しばし考えを巡らせる。

2パターンあるだろう。エクリプスの接近を知っている場合と、知らない場合。

どちらにせよわかりづらいけれど、でも知っているか否かで随分変わる。

そして、恐らく知らないのではないか。

天文台が伝える前に消息を絶っているのは先のゴーリキーの発言から明らかで、そうなると知る術はないだろう。

だとすると、動機はエクリプス……日食の接近以外にあるのかもしれない。

思考は、楽しい。彼らが今、何を考えているのか。

それを寄せて行くのが、凄く面白い。

けれど、眠気は僕を襲い、明日も早いのだからとそれに抗うのを自らに禁じた。
 ▼ 37 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:15:52 ID:o.RG/8e6 [29/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌朝、部屋を出る時に、おかみさんから声を掛けられた。

彼女は笑顔で僕に何かを手渡す。


ジュナイパー「なんですかこれ」

おかみさん「お弁当よ。料金には朝ごはん代まで含まれてたからね。ま、気にしなさんな」

ジュナイパー「えっ?! あ、ありがとうございます!」

おかみさん「しーっ。まだ他のお客さん寝てるから」

ジュナイパー「あっ、すいません……」

おかみさん「ま、またイスカーに来る事があれば、どうぞご贔屓に」

ジュナイパー「今度は妻も連れてきます。本当にありがとうございました」


料金は出しているとはいえ、この暖かさに胸を打たれた。

いつか、アママイコにも紹介してあげようと心に決めて、僕はイスカーを発った。
 ▼ 38 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:16:37 ID:o.RG/8e6 [30/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
帰り道。特別な何かが起こる事はなかった。

ただかげぬいでダンジョンを攻略し、野宿して、自宅を目指す。

少しずつ太って行く月。日食は確か、新月の時に起こるんだっけ。

となると、あの月が満月になるまでは心配いらないと言える。

そんな風に考えながら、旅路を行き、そして自宅に帰り着いた。


ジュナイパー「ただいま!」

アママイコ「お帰りなさいジュナイパー! あなたに手紙が来てる! ニャヒートたちから!!」


アママイコが、息せき切ってそう伝えて来た。

アママイコは、早く読みたくて仕方ないと言うように、けれど僕が開けるのを律儀に待ってくれている。

僕も慌てて開封した。
 ▼ 39 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:17:10 ID:o.RG/8e6 [31/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
久しぶりフクスロー。もう進化してたんだね。

なんでここにいるってわかったのかわかんないな。まさか手紙が来るとも思わなかったし。

アママイコとは仲良くやってる?

さて、オイラたちは今、いろいろとしないといけない事があるんだよね。

もし会いたいのなら、こっちに来てよ。住所はわかってるみたいだし。


アママイコ「これ……」

ジュナイパー「話すと、長くなるよ」


僕は、イスカーで得た情報を、そのままアママイコに伝えた。

彼女は一言も口を挟まず真剣に聞いてくれる。
 ▼ 40 1◆J44kAZeDOM 17/03/30 21:17:52 ID:o.RG/8e6 [32/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アママイコ「なるほど、わかったわ。で、どうする?」

ジュナイパー「まずは、ジジーロンさんの依頼を片付けるよ。そしたら、ラサーシャへ向かう。

       アママイコ、どうする? 来ても構わないとは思うけど」

アママイコ「……いや、いいや。あなた以外のメンバーとは、最後までちょっと仲いいぐらいだったし。

      それなら、あなただけで行かせてあげたい。大丈夫。事務所の留守はあたしがきちんと預かるから!」

ジュナイパー「ありがとう」

アママイコ「あたしも、危険が及ばない範囲でなら、エクリプスの噂、調べてみてもいい?

      ニャヒートたちがどうしてるのかわかればわかりそうだけど、でも何かしたいし」

ジュナイパー「いいよ、むしろありがたいぐらい。でもこれだけは約束して。危険は冒さないでね。絶対だよ!」

アママイコ「わかってますよーだ」


アママイコが頬を膨らませた。

僕は、そんな彼女に、思わず口付けをしてしまう。浅いタイプではあるけれど、それだけでもう幸せだ。ああ、大好きだ、アママイコ。

唇を離し、彼女は微笑んで言った。


アママイコ「じゃ、今からジジーロンさんとこだよね。行ってらっしゃい、頑張って!」
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