▼  |  全表示257   | <<    前    | 次  |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |   ▼   
                  スレ一覧                  
SS

【SS】アシレーヌ「ポケモンサーカス団エクリプス!」

 ▼ 1 1◆J44kAZeDOM 17/03/28 06:26:17 ID:cWAt11WY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







――太陽と月が交わる時、新たな光が産み落とされると言う。






 ▼ 201 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:32:01 ID:ahuEvCG. [1/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







5章 ガオガエンの告白






 ▼ 202 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:32:37 ID:ahuEvCG. [2/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「レイディースアーンドジェントルメーン! ようこそ! ポケモンサーカス団エクリプスへ!」


僕は声を張り上げる。

星空のステージ。ソルガレオとルナアーラの空間に、僕たちエクリプスは今、立っている。

観客席には、その2匹を含むウルトラビースト。

それはもちろん、ネクロズマも含めて。

そして、愛しの妻アママイコ、この事件に密接に関わっていたフラワーズのメンバー、そして探検隊リアライズのチラーミィとニューラ。

サーカスの事をわかっているアママイコが、皆を静めていた。

そこに向けて、僕は、高らかに声をあげる。


ジュナイパー「それでは、皆さんを新たな世界へと誘い(いざない)ましょう!

       それでは、アシレーヌのパフォーマンスをどうぞ!」


僕は、舞台袖に引っ込んで行った。

それと同時に、照明が落ちる。

この、瞼の裏に残る眩い照明。懐かしい感覚に、思わずめまいがする。
 ▼ 203 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:33:33 ID:ahuEvCG. [3/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシレーヌは、バルーンを創りあげ、そしてその中へと飛び込んで行く。

舞台裏から、僕はそれを眺めていた。

誰も、何も声を掛けて来ない。

恐らく、わかってくれている。僕の想いを、みんな。

だから、思いっきり、親友が生み出す幻想的な光景に浸った。

大きなバルーンの中を、自由自在に飛び回る。

そのバルーンが空へと浮かぶ物だから、次第に次第に、当のアシレーヌも高みへと上がって行く。

バルーンから、長い尾だけをはみ出させ、それからしばらくくるくると、アイドルのように回り始める。

アシマリの短い胴体ではできなかった、新たなパフォーマンス。

僕が知らない景色だ。

観客席から喝采が起こる。

手がないビーストがほとんどなので、拍手を催促しようにも、ウルトラビーストの中では恐らくマッシブーンとネクロズマの物しか帰って来ないのだ。

けれど、声なら、口がなくともどこか発声器官を震わせる事によってか出せる。

それが、このパフォーマンスを讃えている。

さすがだ。僕がいない間にも、ずっと、留まる事なく成長を続けていた。
 ▼ 204 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:34:34 ID:ahuEvCG. [4/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシレーヌが、今度はバルーンから顔を出し、それから歌を奏でた。

それは綺麗な音。アシレーヌ特有の、美しい声。

バルーンを震わし、そして破裂。

地面と呼べる箇所に向けてバルーンを打ち出し、それをトランポリンのように駆使して着地を決めた。

その真上に、虹。

エーフィの光に照らされて、アシレーヌが大きくお辞儀をする。皆、見惚れたようだった。

掴みは抜群だ。僕は、小さくガッツポーズを作る。


ニャヒート「ジュナイパー、ガッツポーズなんかしないでよ。まだ何も終わってない。むしろ、今が始まりだよ。

      この公演は、あたしのパフォーマンス、そしてあんたの司会で終わるの。喜ぶには早過ぎる」


おもむろに声を掛けて来たニャヒート。

それに対し、僕は依頼を持ち掛けた。ワガママばっかりだ、僕。でも、少しぐらい、僕は周りを頼るべきなんだ。


ジュナイパー「……それもそうだね。……ニャヒート。お願いだ。君も、最後、一緒に司会をしてくれ」

ニャヒート「はあ?!」

ジュナイパー「しっ、音が漏れる」
 ▼ 205 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:35:37 ID:ahuEvCG. [5/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャヒートが慌てたように口を堅く引き絞り、それからひっそりと、しかし顔には動揺と怒りを浮かべて言った。


ニャヒート「どういう事よ。あたし、司会なんてできない」

ジュナイパー「言い方が悪かった。いてくれればいい。

       ……エクリプスを巡る物語は、アシレーヌと、それから君と一緒に決着を付けたいんだ」


と、そこに自らのパフォーマンスを終え戻って来たアシレーヌがやって来た。

僕の仕事は、司会。最初と最後。日常と非日常、2つの世界を繋げるのが司会の役目だ。

だから、この時間は、僕の仕事なんてないに等しい。


アシレーヌ「何? どうかしたの? オイラの事呼んだ?」

ジュナイパー「うん」

ニャヒート「聞いて驚かないでよ。こいつ、あたしとあんたを最後司会一緒にさせようとしてる」

ジュナイパー「僕の、最後のワガママだ。もう、充分迷惑を掛けたのはわかってる。それで――」
 ▼ 206 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:36:20 ID:ahuEvCG. [6/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕の言葉を、アシレーヌが強く遮った。


アシレーヌ「ワガママ? とんでもない!

      ジュナイパーがオイラの事心配してくれてるのはわかってるし、

      自分を犠牲にして、オイラを育ててくれた。

      いくらお礼しても足りないぐらい、オイラは君に感謝してる。

      司会でもなんでも、やってやる!」

ニャヒート「…………」

ジュナイパー「声が漏れるから静かに。でも、ありがとう」


涙は流さない。それこそ、終わった後でいい。
 ▼ 207 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:37:29 ID:ahuEvCG. [7/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャヒートが、苛立った声で、しかし潜めて言った。


ニャヒート「あーもう、わかった。いるだけでいいのね?」

ジュナイパー「……ありがとう」

ニャヒート「でも、なんであたしなの? アシレーヌだけでいいじゃない」

ジュナイパー「……君が、全てを繋いでくれたから。

       僕と、アシレーヌと、それからエクリプス。君と、それから君の……」


僕は、言葉を呑み込んだ。ルテー事件で明かされた彼女の過去は、改めて語るまでもなく、伝わったらしい。


彼女はふっと息を吐く。そして、それから言った。


ニャヒート「とにかく、みんなのパフォーマンス、見てあげて。

      あんたがいなくなってからの、あたしたちの成長、見て欲しいんでしょアシレーヌ」
 ▼ 208 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:38:05 ID:ahuEvCG. [8/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシレーヌ「うん。ほら、凄いよ。あのミス、ワザとやってる。

      ジュナイパーがいた時には、ここまでの事はできなかったよね」


ステージの方に目を向けると、スリーパーがボールを落としていた。

5個のお手玉。その難易度は確かに高いが、慣れていればミスをする要素は確かにない。

それでも落とすのは、難しさを演出し、それから観客を引き込むためだ。

案の定、共にステージに出ていたエテボースが2本の尾を叩き合わせ、皆の積極的な参加を求めている。

それに真っ先に答えるのはアママイコ。ある意味サクラだ。


アママイコ「頑張れ! 頑張れ!」


リズムに乗せて、手拍子と共に。

それを見たチラーミィとニューラも手拍子を合わせる。

盗賊団のメンバーたちも、各々に調子を取り始めた。

ウツロイドが楽しそうに体を揺らし始め、それからそれが徐々にビーストたちに伝播する。

マッシブーンとフェローチェだけが、最後まで恥ずかしそうにしていた。
 ▼ 209 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:39:05 ID:ahuEvCG. [9/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サーカスというのは、やっぱりこういう何気ない場面での、積極的な参加を求める。

斜に構えてしり込みするより、飛び込んでしまった方が、間違いなく楽しい物だ。

ウツロイドが何やら伝えたように見えた。フェローチェが頭を掻き、マッシブーンが筋肉を見せつける。

スリーパーが、今度は2つから始める。

そして、1つ、エテボースが投げ込む。2つ、3つ。

そして……計6つ。彼は何の躊躇いもなく、お手玉を回していた。

僕は、思わず笑みを浮かべる。懐かしい、この感じ。舞台袖からしか見えない景色。

サーカスは、ここに向けられていない。けれど、ここの景色は、僕の根底に刻み付けられていた。

離れて、ようやくわかる。そんな事もある。


アシレーヌ「ほら、オイラたち、成長してるでしょ?」

ジュナイパー「まあね。ここまで積極的に観客を惹き込めてなかった。僕がいた頃はね」

ニャヒート「実力はあったけど、そういう大技ばっかだったから。小技で楽しませられるようになったって事」


ニャヒートの解説が入る。

照明が2匹を照らし、深々とお辞儀をして引っ込んで来た。
 ▼ 210 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:39:45 ID:ahuEvCG. [10/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そこからも、成長をまざまざと見せつけられる事になる。

僕がいた時より、さらにという事だ。

火の輪くぐりのカエンジシは、見事、くるりと飛び込んで、綺麗に着地を決めた。

ドンファンの球回しも、鼻先で決めながら、自らも転がるという芸当をこなしている。


フェローチェ「頑張れー!」


恥ずかしがっていたフェローチェが誰よりも大声で叫ぶ。

周りの視線を浴び、白い体を赤く染めて座り込んでしまった。僕は、思わずクスリと笑う。

そして――


ニャヒート「んじゃ、行って来る。あたし、最後をきっちり決めるから」


ニャヒートが、すっくと立ちあがった。
 ▼ 211 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:40:15 ID:ahuEvCG. [11/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
照明が落ちる。

そしてブランコに昇ると彼女は、自らの体を炎で包んだ。

突如現れた煌めく炎は、観客の興味を惹いているはずだ。見えないが、その気配が伝わって来る。

ニャヒートは、口を真一文字に結び、それから跳んだ。

勢いを付けて揺れるブランコ。ニャヒートがその勢いをさらに増す。

2つのブランコの継ぎ目で、彼女は跳躍する。

くるりと、まずは1回転。炎の勢いが増し、辺りを照らす。

そして、ようやく気付く。もはや、彼女はブラッキーの光を必要としていない。

自らの過去を断ち切り、前を向いて進めたのであろうか。

もう、誰もいない世界へ潜ろうとする彼女はいない。

彼女自身が、誰かを、光を必要とする誰かを照らすため、太陽となっている。

本当に、楽しそうだった。真顔でも、その感覚が体中から溢れている。


アシレーヌ「凄い……今までで、最高の出来だ……」


アシレーヌも、その白い顔をステージに向け、見呆けていた。
 ▼ 212 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:40:46 ID:ahuEvCG. [12/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
最高の出来。

アシレーヌは彼女を、そう評した。


ジュナイパー「え?」

アシレーヌ「……オイラと、ニャヒートが、混ざってる。それで、最高なんだ」


そうか、楽しさが伝わるパフォーマンス。

彼女が、アシマリに見出した物。

僕が戻って来て、彼女は、ようやくそこに辿り着いたと言うのか。

ニャヒートは、くるり、3回回って、それから、前脚でしっかりとブランコを掴む。そのまま逆上がりの要領で棒の上に立つと、ニコリと笑った。

その笑顔のまま、大きく飛んだ。そのままくるりと回転する。

1回。2回、3回……4回。


アシレーヌ「練習でも、4回はできてない……」


僕は、ただ、彼女のパフォーマンスを眺めていた。
 ▼ 213 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:41:46 ID:ahuEvCG. [13/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルテーの事件で明かされた彼女の過去、その呪縛。

もう、呪縛は解かれている。それが、ハッキリわかった。

彼女は安定した台に飛び乗り、そのまま炎を消す。

後には、星の煌めきだけが残っていた。

拍手喝采が鳴り響く。

僕はアシレーヌに呼びかけた。


ジュナイパー「行こ、アシレーヌ――」

アシレーヌ「ねえ、見てあれ……」


震える声のアシレーヌに釣られ、僕はそちらを――ニャヒートの方を見やる。

コン、と乾いた音がした。


アシレーヌ「あれ、かわらずのいし……」
 ▼ 214 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:45:18 ID:ahuEvCG. [14/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「えっ?!」


かわらずのいしを、外した?

つまり、彼女は進化する。同い年の僕どころか年下のアシレーヌすら進化していたのだ。きっと、そうなる。

あたし、最後をきっちり決めるから。

最後って、そういう事なの、ニャヒート。

もう、自分は飛ばないって、宣言してるの。

彼女の体は、光を纏った。
 ▼ 215 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:45:49 ID:ahuEvCG. [15/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は、それすらも気にせずに、アシレーヌと共にステージに立った。

いや、気にはしている。つとめて気に留めないだけ。

だって彼女の出す答えはいつだって唐突で、だからこそ真実味を孕むのだから。

案の定、進化の光を放ち切ったガオガエンが、何も言わないままに僕の横に立つ。

その反対には、生来の大親友。

エーフィとブラッキーのライトが、僕たちを照らした。


ジュナイパー「皆さん! お楽しみ頂けたでしょうか?!」


叫び声。観客たちから喝采があがる。

しばらくそれを聞き、それから続けた。


ジュナイパー「今まで、様々な事が起こりました。あなた方にとってもいろいろな事が起こったでしょう。

       きっと、これからだって。あまりあなた方の事を快く思わないポケモンがいないとも限りません。

       だけど、交わるという事は、難しくて、そして楽しいものです」
 ▼ 216 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:46:26 ID:ahuEvCG. [16/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は、2匹を抱き寄せる。

驚いたような声を無視して、僕は声を張り上げる。


ジュナイパー「この2匹は、正反対です! 何から何まで、サーカスに懸ける情熱以外、全て!

       片や全部を骨肉に変えて成長して来ました。

       片や、ひたすらに閉じこもって上を目指して来ました。

       どうだったでしょうか? 全く異なる2匹の出会いが起こした化学反応は!

       2匹とも、お互いがいたからこそここまで来られた!

       ……綺麗事を言うようですが、悪くない関係ですよね?!」

アシレーヌ「ちょ、ちょっと……」

ガオガエン「なんであたしたち……」

ジュナイパー「僕らは、混ざり合って、上を目指してます! 僕らの舞台は、これからも!」
 ▼ 217 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:47:06 ID:ahuEvCG. [17/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
2匹は、諦めたように頷くと、それからすっくと立ちあがった。


アシレーヌ「どうだった?! オイラたちのパフォーマンス!」

ガオガエン「サーカスってのは、全体で創るもの。たぶん、ある意味交流の理想形があると思う」


僕は、頷いて、それから声を張り上げた。


ジュナイパー「きっと、覚えていてください! いつでもあなた方みんなを、歓迎します。僕たちが……。僕たち!」


2匹と、示し合わせた訳でもないのに、セリフがピッタリ噛みあった。
 ▼ 218 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:47:45 ID:ahuEvCG. [18/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







――ポケモンサーカス団エクリプス!






 ▼ 219 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 20:48:45 ID:ahuEvCG. [19/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「それでは、ご覧くださりありがとうございまし――」


不意に、力が抜けて行く。あっ、と自覚した時にはもう、仰向けに倒れていた。


――――――

――――

――
 ▼ 220 ガフーディン@クサZ 17/04/10 21:55:10 ID:F2LgM7Yc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 221 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 22:32:47 ID:ahuEvCG. [20/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――

――――

――――――

「……イパー! 起きてよ! しっかりしてよ!」


アママイコの声だ。


「早く……どうしちゃったのジュナイパー?!」


アシレーヌの泣き声も聞こえる。

どうやら、気絶していたらしい。うめき声を漏らして目を開けると、2匹の心配そうな顔が真っ先に飛び込んで来た。

アママイコが、頭部から突き出た突起を振りかざし、僕をはたき続けている。タイプ相性の暴力で無効化してはいるけれど、驚いた。


ジュナイパー「う……がぁ……」
 ▼ 222 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 22:34:55 ID:ahuEvCG. [21/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アママイコ「……なんで、なんでこんななるまで頑張ってたのよ! バクガメスさん、言ってたよ?!

      ジュナイパー、司令塔だったんでしょ? ほとんど休まず、ここまでぶっ通しで!

      疲れ果てるのも当然だって! ねえ、なんでよ……あなたの苦しみ、あたしに分けてよ……。

      楽しい事、分けてるんだから……」


彼女は、強引に、僕に接吻した。アシレーヌがいるにも関わらず。

しばらくそれを味わった後、そっと唇を離して、問うた。


ジュナイパー「公演は、どうなった?」

アシレーヌ「あれから、気絶したジュナイパーをエクリプスの何匹かで運んだの。

      ウルトラビーストはしばらく話し合って、どうするか決めるって。

      盗賊団のみんなはこれからの事を考えるらしくって、自分のテントに待機してる。

      探検隊の2匹はやる事がないってうろついてるらしいよ。

      公演は、もちろん大成功……だと思うんだけど、ドタバタがね……」

ジュナイパー「……ごめん。ありがと」
 ▼ 223 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 22:36:43 ID:ahuEvCG. [22/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
と、ガオガエンが隅にいるのに気が付いた。

彼女は、腕組みしてもたれかかっている。


ガオガエン「まあ、起きたばっかだし、あんまり喋らせるのもよくない。しばらく、ゆっくりしなよ」


僕は、けれどじっとしているのも違和感で、何か、気付いたら話し始めていた。


ジュナイパー「今でも、たまに夢に見るんだ。

       もし、僕らが出会ったのが、サーカスじゃなかったとしたら、どうだったんだろって」

アママイコ「その中に、あたしは?」

ジュナイパー「夢で見なくても、君はすぐ傍にいてくれたから」

アママイコ「むぅ、なんか焼いちゃうな」
 ▼ 224 1◆FvXQeTACDA 17/04/10 22:37:28 ID:ahuEvCG. [23/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「僕と、アシレーヌと、ガオガエン。

       僕ら3匹が、まだ進化してない頃に、サーカス以外の何かで出会ってたらって。

       例えば――」

アシ・ガオ「物語の評価。え?」

ジュナイパー「え?」


僕は、唖然として2匹を見詰める。2匹も僕と同じような反応だった。


アシレーヌ「ポケモンだけじゃない、ニンゲンも出て来たリ、時にはポケモンがまったく出て来ない話に関して3匹でワイワイ言い合って……」

ガオガエン「めっちゃポケモンが出て来ない奴、酷評したよね。」

ジュナイパー「同族が出てくる話について言い合ったり……」

アシレーヌ「うん。なんだか、自分がホントは知らないような事まで知ってたり……え?」

ジュナイパー「……夢ってのが、外からやって来るって説がある。ダークライのナイトメアとか考えても、あながち間違いじゃないと思う。

       もしかしたら、僕ら3匹とも、何か凄い力で、同じ夢を見るよう仕向けられてたのかもね」
 ▼ 225 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 22:39:32 ID:ahuEvCG. [24/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
子どもっぽい笑い声を聞いた気がした。

――さっすが、鋭いねー。ずっと1匹で、ヒマだったしさー。

誰だかわからないけれど、ありがとう。

――お礼言われる事でもないよー。それじゃあ!

ふっと答えが脳裏に現れた。思考もクソもない。ただ、そこに答えができた。創造神アルセウス。

いや、さすがにないだろう。こんな無邪気な創造神が、いてたまるか。


彼は、何年も前のとある事件の最中、この時代にいる事をやめたという。

そんな事を、僕は後から知るのだけれど、だからと言ってそれが何になるというのだろう。

ただの退屈しのぎ。残留思念のクセに、やる事がいちいち大袈裟だ。
 ▼ 226 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 22:40:09 ID:ahuEvCG. [25/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アママイコ「ほんっと、嫉妬しちゃうよ」

ジュナイパー「だからー、そういう事じゃなくてさぁ」

アママイコ「なーんて、冗談よ。わかってる。恋愛してるのは、あたしだけ。でしょ?」


僕は、しっかり頷いた。

たぶん、これで本当におしまいなのだ。もうたぶん、あの夢を見る事もない。


アシレーヌ「まあ、やれる事はやったよね。ウルトラビーストのみんな、楽しんでくれたかな」

ガオガエン「まあ、祈るしかないね。あたしたちの想いが、届いた事を」
 ▼ 227 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 22:40:43 ID:ahuEvCG. [26/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「あ、そうだ」


ふと思い立ち、ガオガエンを見詰める。

彼女は不思議そうにこちらを見返して来た。僕は問いかける。


ジュナイパー「なんで進化したの、ガオガエン。かわらずのいしを捨ててまで、わざわざ公演中に」

ガオガエン「あー、知りたい?」

ジュナイパー「いや、ちょっと待って。考えさせて」

アシレーヌ「えー! 教えてくれるんだから、聞けばいいじゃん!」

アママイコ「ふふ、アシレーヌ。あなた、全然わかってない。これがジュナイパーよ」

アシレーヌ「そうだけどさぁ……気絶したばっかなんだよ?」

アママイコ「それでも、ジュナイパーは考える。息を吸うのと同じだからね」

アシレーヌ「うーん、やっぱり?」

アママイコ「やっぱり。考えるのが好きなのよ」

アシレーヌ「いよいよ重症化したみたいだね。

      でも首回さず考えてるジュナイパーなんて新鮮だなぁ」
 ▼ 228 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 22:41:14 ID:ahuEvCG. [27/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アママイコ「あたしは新鮮じゃないもーん」

ガオガエン「つまんない事で張り合わないの。妻と親友じゃ求める役割は違うでしょ」

アシ・アマ「う……」

ガオガエン「ほら、本当にジュナイパーのためを思うなら黙ってあげて」


僕は、思考の世界に潜って行く。

ガオガエンが頑なに進化を拒んだのは、体格の変化を恐れたから。

体格の変化は、モロに空中ブランコに影響がでる。

それを受け入れたという事はつまり、もう飛ばないという事。そのぐらいは考えるまでもなくわかる。

なぜ、この段階でそう決意したのか。

自意識過剰ではない。こうとしか考えられない。僕が、また彼女の……彼女たちの公演を見たからだ。

ガオガエンは、でも僕に拘泥する理由はないはず。拘泥しているのはむしろ、アシレーヌだ。

しかし、彼女はアシレーヌと強く結ばれている。彼女の決意は、そこのラインに影響されたと考えるのが妥当だろう。

彼女は言っていた。「飛ぶ事があたしの命。飛ぶのをやめる時、少なくとも新たな命が始まる」。

彼女は、新たな一生を始めるのだ。サーカスを除いて彼女が愛しているもの。恐らくは……。
 ▼ 229 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 22:41:49 ID:ahuEvCG. [28/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告















ジュナイパー「アシレーヌ。幸せにしてあげないと駄目だよ。結婚するからには」
 ▼ 230 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 22:42:20 ID:ahuEvCG. [29/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシレーヌ「ふえ?!」

ジュナイパー「あっ……」


行き過ぎた。アシレーヌの前で、こんな答えを提示して、いいはずがない。

恐る恐るガオガエンを振り向くと、彼女は呆れたような顔で笑っていた。


ガオガエン「ったく、そこまで察するのか。鋭いってもんじゃない。……ねえ、アシレーヌ」

アシレーヌ「あ、いやその……」

ガオガエン「あたし、ずっとあなたの事……」

アシレーヌ「待って! そっから先は、オイラに言わせて」

アママイコ「あたしたち、席外そうか?」

アシレーヌ「いや、いて。ジュナイパーと、ジュナイパーが愛したポケモンに、いて欲しい。

      オイラたちの事、見届けるのは、2匹以外いないよ」

アママイコ「……そっか。わかった」
 ▼ 231 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 22:42:51 ID:ahuEvCG. [30/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシレーヌは、覚悟を決めた。僕には、確かにそれを見届ける義務がある。


アシレーヌ「オイラ、ガオガエンの事――」
 ▼ 232 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 22:43:32 ID:ahuEvCG. [31/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フーディン「おーい! 起きたかジュナイパー! ん? あ、あれ?」


僕らは、全員でずっこけていた。アママイコがむくれたようになじる。


アママイコ「もー、空気読んでよダンチョー!」

フーディン「ど、どうかしたのか?」

アシレーヌ「は、ハハ……どうしたの、ダンチョー」

フーディン「ああ。エクリプスを待つまでもない。ウルトラビーストが、答えを出したんだ。

      共存だってよ」


共存。その言葉が、ここまで快く聞こえた事があっただろうか。

できる事なら、もっと気合いを入れて聞きたかった。こんなずっこけた状態ではなくて。


アシレーヌ「やった……みたいだね」

フーディン「ん? 嬉しくなさそうだが」

アシレーヌ「いや嬉しいんだけど……話してた話が話だったから」

フーディン「ん? なんかすまない。思う存分続けてくれ」
 ▼ 233 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 22:44:02 ID:ahuEvCG. [32/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フーディンは出て行った。

僕らは、座り込んで、笑った。誰からともなく、笑った。

ひとしきり笑った後、アシレーヌが言った。


アシレーヌ「大好きだよ、ガオガエン」

ガオガエン「あたしも。アシレーヌ、あなたの事が好きだった」


2匹はまっすぐ見詰め合い、それから照れたように視線を背ける。
 ▼ 234 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 22:45:17 ID:ahuEvCG. [33/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アママイコ「えー、では誓いのキスを」

ジュナイパー「なっ……」

アママイコ「いいでしょ別に。ほら、2匹とも」

アシレーヌ「ふえっ?!」

ガオガエン「あんたバカなの?」

アママイコ「あー! 今のちょっとグサッて来たよグサッて!」

ガオガエン「ったく……ま、いいや。とりあえず今は、喜ぼう。全部終わった事をね」


僕らは皆、それぞれに頷いた。


そう。これで終わりだ。エクリプス事件はこれで終わり。空中ブランコ乗りのニャビーの物語も終わり。
 ▼ 235 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 22:45:54 ID:ahuEvCG. [34/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシレーヌ「でも……終わらないものもあるよ。例えば、オイラたちの絆とかね」

ジュナイパー「ハハ! 恥ずかしい事言わないでよ!」

ガオガエン「ま、間違っちゃいない。言葉にすると冷めるけど」

アママイコ「でも、言葉に出すのも大事だよ」

アシレーヌ「だよね! ……でも、寂しくなるな。また、ジュナイパーは行っちゃうんでしょ?」

ジュナイパー「うん。……そういや、2匹、子ども産めるじゃん。どうするの? やっぱサーカス?」

ガオガエン「うーん、あたしは、サーカスしかできない訳だから、むしろ子どもにはサーカス以外の道を示してあげたい」

アシレーヌ「オイラも賛成」

ジュナイパー「それなら、うちに預けてみない? 少なくとも一か所に定住してるから、普通の子どもと同じ暮らしをさせてあげられるよ」

アシレーヌ「そっか。それも楽しそう。どう?」

ガオガエン「まあ、考えとくよ」


そう、と僕は微笑んだ。
 ▼ 236 1◆J44kAZeDOM 17/04/10 22:46:31 ID:ahuEvCG. [35/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
きっと、これからも、それぞれに道を進んで行く。それぞれの幸せを目指して。

アシレーヌたちは、サーカスに留まる。

僕たちはサーカスから離れる。それぞれに違う。けれど。けれど、きっと。


ジュナイパー「ま、とりあえず、そろそろ起きたい。そんで、風に当たって来るよ」


みんな、描く未来がある。そこに向かって、進んで行くんだ。
  ▲  |  全表示257   | <<    前    | 次  |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |  ▲      
                  スレ一覧                  
荒らしや削除されたレスには反応しないでください。
書込エラーが毎回起きる方はこちらからID発行申請をお願いします。(リンク先は初回訪問云々ありますがこの部分は無視して下さい)

. 書き込み前に、利用規約を確認して下さい。
レス番のリンクをクリックで返信が出来ます。
その他にも色々な機能があるので詳しくは、掲示板の機能を確認して下さい。
荒らしや煽りはスルーして下さい。荒らしに反応している人も荒らし同様対処します。




面白いスレはネタ投稿お願いします!
(消えた画像の復旧依頼は、問い合わせフォームからお願いします。)
スレ名とURLをコピー(クリックした時点でコピーされます。)
新着レス▼