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【SS】アシレーヌ「ポケモンサーカス団エクリプス!」

 ▼ 1 1◆J44kAZeDOM 17/03/28 06:26:17 ID:cWAt11WY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







――太陽と月が交わる時、新たな光が産み落とされると言う。






 ▼ 43 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:26:06 ID:nE37tYMA [1/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







2章 ジュナイパーの旅路






 ▼ 44 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:26:51 ID:nE37tYMA [2/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
森の外れにある、小さな一軒家。

そこが、今回の依頼主であり、顔見知りのご近所さん、ジジーロンの自宅だ。

たまに付き合いであがった事はあるが、仕事で伺うのは初めて。

なかなかにない事だからこそ、僕は冷静になっていた。

慌てても、何もいい事なんてない。

ジュナイパーという種族の常で、計算外の事に対しパニクる事が多々ある。

しかし、そうなった時、物事が上手く運んだ事は、一度もない。

立ち止まって深呼吸。僕は、自分で考えられるから。


ジュナイパー「さて、ジジーロンへの依頼主、一体誰なんだろ」


疑問を脳裏に浮かべ、僕はすべての緊張を振り払う。

疑問さえ与えれば、僕は満足なのだ。納得いくまで考え続けられる。


ジュナイパー「すいません! 来ましたよジジーロンさん!」


扉を開き、僕は声をあげた。
 ▼ 45 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:28:46 ID:nE37tYMA [3/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジジーロンは、お茶を淹れてもてなしてくれた。

僕はそれをすすり、思わず顔をしかめる。

熱い。何度飲んでも、この感覚には慣れない。


ジュナイパー「すいません、熱くて……」

ジジーロン「ほっほっほっ。ワシぐらいの歳になると、熱い飲み物が沁みるのじゃ」


そう言って彼もお茶をすする。

そして幸福そうに吐息を漏らすのだ。

「ところで」と僕は切り出す。


ジュナイパー「どのぐらい、ウルトラビーストと、エクリプス事件をご存じなんですか?」
 ▼ 46 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:29:50 ID:nE37tYMA [4/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕が当事者である事実は知っていた。

この辺に来てすぐに、どこから来たのか、と言われた時に、隠す必要も感じなかったためそのまま説明してしまったから。

けれど、僕がエクリプスの元メンバーである事以上に情報はなかったはずだ。

はたしてジジーロンは「まったく知らないのお。ただ、ジュナイパーがエクリプスのメンバーじゃったと思い出したのじゃ」と答えた。

きっと、新聞に載った以上の情報はないはずだ。

――そして、それは半ば、僕も同じだ。

積極的に関わる立場だったとはいえ、ウルトラビーストに関してはほとんど何もわからない。
 ▼ 47 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:30:50 ID:nE37tYMA [5/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
話題を変え、エクリプスの公演を見た事があるか問う。

ふっと思い立っての事だが、もし最近見ていれば何かしらの手掛かりになる。

残念ながら、そこまで都合よく物事は進まない。


ジジーロン「ううむ……何年か前、孫にせがまれて連れて行っただけじゃのう……」

ジュナイパー「司会は誰でした?」

ジジーロン「ええと……赤くて、威厳のある……誰じゃったかのう」


アマージョ。僕が抜けてからの話である事が、これで確定した。

そして、エクリプスとルテーの合併が、真実である事も。


ジュナイパー「それで、そのパフォーマンス、お孫さんは喜んでました?」

ジジーロン「ああ、喜んでおったぞ! 感動したとはしゃいでおった」


アシマリたちは、たゆまず成長しているらしい。

きっと、誰かを喜ばせられる。みんなのパフォーマンスには、力があるから。

そんな安堵を僕は内心で呑みこんだ。
 ▼ 48 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:31:45 ID:nE37tYMA [6/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少し冷めて来たお茶をすすりつつ僕はしばらく待っていた。

どんなポケモンがやって来るのか。聞いてしまいたかったけれど、好奇心が満たされるのはもう少し後でいい。

このじれったい時間が気持ちよく、そしてこれ以上の情報も引き出せないと踏んで、僕は世間話を続けていた。

と、扉が開く音がする。

ようやくだ。僕は、視線をそちらに向け、次いで下へとスライドさせる。

こちらを見て、少し警戒するような表情を浮かべている。

このイワンコが、依頼主なのか。僕は一層の興味を惹かれた。

大人を想定していたからこそ、僕よりもまだ年若い少年がやって来た事に驚きながら、僕は尋ねた。


ジュナイパー「あっ、この子が依頼主ですか?」

イワンコ「へ?」

ジジーロン「イワンコ、彼はワシの友達で、探偵の……」


ああ、なんだ。イワンコも僕同様、僕の事は聞かされていないのだ。

そう判断し、僕は威圧感を与えないように微笑んで、自己紹介をした。


ジュナイパー「ジュナイパーです。よろしくお願いします」
 ▼ 49 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:32:45 ID:nE37tYMA [7/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコは困惑したような顔をこちらに向け、問い掛けた。


イワンコ「探偵なんて雇った覚えないですけど……」

ジュナイパー「大丈夫。直接の依頼主はジジーロンだから。君のために、凄く割り引いたとはいえお金出してくれたんだよ」


思わず付け加えてしまう。料金の話は、意外にしんどく、だから早い段階でそれを済ませてしまいたかった。


イワンコ「え? あ、ありがとうございます!」


イワンコは、ジジーロンに向けて慌てたようにお礼を告げた。

ジジーロンは笑いながら言う。


ジジーロン「構わんよ。して、ミミッキュはどこかの?」


ミミッキュ? 複数匹で来る事は想定のひとつであったが、今ここにいない依頼主がいるとは思っていなかった。


イワンコ「ああ、あいつちょっと今日は忙しいらしくて。僕だけで来ました」

ジジーロン「そうか。よろしく伝えといてくれ」

イワンコ「はい」
 ▼ 50 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:33:48 ID:nE37tYMA [8/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジジーロンは、僕を置いてけぼりにしていた事に今さら気付いたのか、彼らとの関係を語る。

思い出しながらの話を要約すると、こうなる。

森の中で攫われた孫を探し出してくれたのだという。

しかし、攫ったというのは勘違いで、実はそのポケモンと孫が意気投合し、仲良く遊んでいただけだったのだ。

攫ったのがウルトラビーストだという事実も聞いた。

驚いたが、そんな事だろうとは思っていた。だからこそ、僕にウルトラビーストの事を聞いたのだろうと。

驚きを顔に出さないように気を付けながら、僕は呟く。


ジュナイパー「なるほど、だからいいポケモンと断言してたのか……」


そちらの疑問が氷解し、僕は頷いた。
 ▼ 51 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:34:33 ID:nE37tYMA [9/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかし、そこから、驚きの事実が伝えられる。

彼は、記憶喪失なのだ。

ウルトラビーストの一種、ウツロイドに、彼の記憶が根底から揺さぶられたのか、激しく動揺してしまったのだという。

簡単にイコールで結ぶのもどうかとは思うが、僕はシンプルな結論に落ち着く。


ジュナイパー「記憶喪失。その鍵を握るのが、ウルトラビースト……」

イワンコ「はい」

ジュナイパー「君は、どこまで知ってるの?」

イワンコ「えっと……」


ここから先は、すべてイワンコの言葉だ。
 ▼ 52 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:35:49 ID:nE37tYMA [10/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は、ある日草原に倒れてました。

行き場もわからなくて、どうすればいいのか困ってるとこに、ミミッキュが来たんです。

そして、助けてくれた。

まあ、それからいろいろありまして、森の中を2匹で散歩してたんですよ。

そしたら、ジジーロンさんの叫び声が聞こえて。

行ってみると、そこにウツロイドとミニリュウがお孫さんがいたんです。

で、動揺して、僕はそれに襲い掛かった……けど、為す術なくやられちゃいました。実力、けた違いです。

まあ、そのまま和解して、僕はミニリュウをジジーロンさんに引き渡しました。

そして、協力をお願いしたんです。まあ、そこはさっき説明したけど。

で、そこから僕もいろいろと調べてみました。

その結果、わかった事があります。

ウルトラビーストは、日食の時にこちらへやってくる侵略者である事。

サーカス団エクリプスがそれを止める鍵を握っている事。

今の所2匹と接触しています。ウツロイドと、フェローチェ。

もう、日食は近付いてるのかもしれない。
 ▼ 53 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:36:56 ID:nE37tYMA [11/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「でも、腑に落ちないんです」

ジュナイパー「ウツロイドが意外と優しそうだったんだ」


イワンコの言葉を、僕が引き取る。

けれど、イワンコは首を横に振り、続けた。


イワンコ「だけじゃない、フェローチェも気品系お姫様かっこバトル脳って感じだったけどいて不快じゃなかったし、敵意がある感じでもなかった」


僕は、ふと思い出す。

エクリプス事件で、ヤレユータンが動きを止めたあの赤い奴。


ジュナイパー「……あの赤い奴、乱暴だったけど、今会ったらどうなんだろ……」

イワンコ「赤い奴?」


口に出してしまっていた。それから気付く。僕は、まだロクに自己紹介をしていない。


ジュナイパー「ああ、そうか説明してなかった。僕は、元サーカス団エクリプスのメンバー」

イワンコ「え」
 ▼ 54 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:37:54 ID:nE37tYMA [12/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
彼は、驚いた声を出す。当然だ。

話題の中心に、どっしり腰を据えるサーカス団。僕は、そこの元メンバーなのだから。

少し懐かしさを覚え、それを呑み下しながら、続けた。


ジュナイパー「言葉にするとひとつの物語になるぐらいの複雑な事情があって僕は妻と一緒に抜ける決心をしたんだけど、まあそれは何もウルトラビーストに関係ないから割愛させてもらうね。

        一度、僕が入ってすぐの頃、エクリプスはウルトラビーストの接近を食い止めるために公演をしたんだけど、でもその時は、エクリプスが鍵を握ってるなんて誰も知らなかった。

        大昔からの伝承が、廃れちゃってたんだよね。親友の提案でサーカスをしたのが正解だったんだけど」

イワンコ「はあ、それで?」

ジュナイパー「その時に、ウルトラビーストに関してそのミリスの街のポケモンから聞いてる最中、襲われたんだよ、真っ赤なウルトラビーストに」


間髪入れずにイワンコが問い掛ける。


イワンコ「そのビーストの特徴は?」
 ▼ 55 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:38:56 ID:nE37tYMA [13/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「えっと……口が針みたいに尖ってて、凄い筋肉質だった。

       まだ、モクローだったなぁ、あの頃は」


えもいわれぬ寂寥感が僕を襲う。

今では遠い日々の思い出が脳裏を駆け巡る。

僕は、ため息をこっそり吐き出し、それから言った。


ジュナイパー「エクリプスの居場所……と言うより、エクリプスに所属してる親友の居場所は特定済み。

       ウルトラビーストの狙いが侵略その他こちらに不利な物なら、いつでもとは言えないが、封印自体は可能だ」

イワンコ「そうですか。あっ、でもそうなると、こっちに来たウルトラビーストたちは……」

ジュナイパー「強制送還って事になるだろうね」

イワンコ「……でも、それじゃ駄目。僕の友達の、コスモッグってポケモンが、実はウルトラビーストらしいんだ」

ジュナイパー「……友達、ウルトラビースト?」

イワンコ「そうなんだ。だから、ただ封印するだけじゃ……」
 ▼ 56 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:41:32 ID:nE37tYMA [14/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コスモッグ。初めて聞く名前だが、当然だ。

ウルトラビーストに関わる知識は、エクリプス元メンバーだろうと普通のポケモンと大差ない。

しかし、ウルトラビーストの中に、コスモッグはカウントされていなかった。

彼の中で、まだ、コスモッグはウルトラビーストなのかどうか、微妙な所なのかもしれない。

イワンコは、諦めたような微笑みを浮かべ、それから続けた。


イワンコ「……だけど、侵略が狙いなら、それは封じないといけない。

     わかってます。そりゃ、そうだ」

ジュナイパー「ここで気になるのは……やっぱり君だ、イワンコ。

       君というイレギュラーな存在が、この件に関して何かしらの鍵を握っているのか。

       記憶の謎は、ウルトラビーストにどう絡むのか」


彼は、首を横に振る。そりゃそうだ。
 ▼ 57 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:42:30 ID:nE37tYMA [15/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「だよね。わかるはずがない。記憶がなくて、わからないからこそ、僕に依頼して来てるんだから」

イワンコ「……とにかく、僕らにできる事と言えば、探す事ぐらいだ」

ジュナイパー「その通り。僕がエクリプスの場所を特定してる間に、少しでも捜索できればいいんだけど」

イワンコ「……頑張ります」

ジュナイパー「ところで、僕“ら”?」

イワンコ「え? あっ」


ふと気になり、口をついて出た言葉。しかし、探偵としての数年間で、僕の思考能力はどんどん高まっているらしく、考えている事に後から気付く事すら多い。

僕は、気付かぬ内に、何かが欠如している事に気付いていた。

フェローチェと戦った存在。聞くに、イワンコとミミッキュは、ウツロイドに歯が立たなかったらしい。

コスモッグもウルトラビーストなら、さすがに同士討ちはしないだろう。

その3匹だけで、バトル脳のフェローチェを相手にできたとは到底思えない。

事実、イワンコは動揺を浮かべた。その気配はすぐに、彼のあどけない表情の奥に消えたが、探偵業で培った目は、それをキチンと捉えていた。


イワンコ「ミミッキュですよ。今はいないけど」
 ▼ 58 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:44:10 ID:nE37tYMA [16/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「……何か隠し事してるんじゃないか?

       ウルトラビーストの一種と互角にバトルする程の仲間がいるというのに、そっちに関して一切の言及がないって。

       ウツロイドに負けたミミッキュが、バトル脳と言われる程のウルトラビーストに勝てるとは……」

イワンコ「……ミミッキュ、バトルが凄い強いんです。ばけのかわを駆使して、相手の攻撃をかわすかわす。

     ある意味人質みたいなもんだったから、ウツロイドには本気を出せなかったって」

ジュナイパー「そう」


僕は、思案を巡らせる。

ミミッキュが強いというのは本当かもしれないが、今の話だけだと、戦うきっかけがつかめない。

バトル脳、という事は戦ったとみなしていいだろう。気品系お姫様(バトル脳)という相反する2つの性質は、実際に戦った後に話すという流れでしか付かない印象であろう。

順序が逆であれば、()の外の感想が付かないはずだ。
 ▼ 59 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:44:40 ID:nE37tYMA [17/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だが、まあいいとしよう。

今ここで、何かを暴く理由は見当たらない。

嘘を吐いている他は、イワンコに、悪い感情を一切抱けない。

本当に、等身大に記憶を失った事に悩み、それを希求する少年。それが彼だ。

僕はふっと笑う。


ジュナイパー「ま、そんな事はどうでもいいや。僕の依頼主はジジーロン。

       そのジジーロンが君をいいポケモンだっていうんだし、話してて悪いポケモンに見えないのは事実。

       協力させてもらうよ」

イワンコ「ありがとうございます!」


露骨な表情は浮かべない。悪いポケモンではないようだが、中々に賢いようだ。

何か理由があるのだろう。記憶喪失の彼が嘘を吐く理由が。

完全にシロとみなすのは得策ではないが、それでもある程度は信じても構わないような気がする。
 ▼ 60 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:45:19 ID:nE37tYMA [18/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そんな風に考えていると、唐突にイワンコが告げる。


イワンコ「そうだ、ジジーロンさん。探検隊リアライズってここに来ました?」

ジジーロン「ああ、いや知らぬが」


探検隊リアライズ。聞き覚えがある。

最近街を賑わす盗賊を追うという、チラーミィとニューラの2匹組。

かのプクリンのギルド出身との噂もあるが、目下盗賊を捕まえる気配はないらしい。


ジュナイパー「ああ、最近盗賊を追っているっていう、あの」


その発言に、イワンコが少し、動きを止めた気がした。

しかし、その違和感は、すぐに掻き消える。

そのままイワンコは言葉を続けた。
 ▼ 61 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:45:58 ID:nE37tYMA [19/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「ええ、あのです。協力してくれる事になってるんですけど、情報があればここにって事にしちゃったんです。

     事後承諾になって申し訳ないんですけど」

ジジーロン「ほう! 構わんよ。こんな老いぼれの所でよければ、いつでも使ってもらっても」

ジュナイパー「リアライズが協力してくれるんだ」

イワンコ「ええ、まあ」


どのように接点を持ったのか。彼は、どうして探検隊に近付く事ができたのか。

疑問は尽きないが、今は恐らく関係ないだろう。

僕は、話をまとめにかかる。


ジュナイパー「なるほど。僕、君たち、それからリアライズ。3者でそれぞれウルトラビーストを追う訳だ。了解」

イワンコ「では、そういう事で、これからよろしくお願いします」


イワンコはそう言い、そしてそのまま別れを告げ、去って行った。
 ▼ 62 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:46:36 ID:nE37tYMA [20/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は、大した情報を彼に与えられていない。改めて考えると、彼はもう、相当に調査を進めていた。

僕が持つ中で、彼が持っていた以上の情報はない。エクリプス事件は、ハッキリ言ってしまうと、底が浅い。

けれど、逆に言うと、この浅い情報だけで考えなければならない。これは、相当に難易度が高い事だ。

エクリプスが消息を絶つ理由。それさえつかめれば、何かわかるのかもしれない。


ジュナイパー「急ぐしかないか。僕が。ジジーロンさん、ありがとうございました」

ジジーロン「いやいや。ワシの依頼に答えてくれてありがとうの」

ジュナイパー「いや、違う」


これは、僕にとって有意義な会談だった。

彼が持つ知識。彼がこれから掴むであろう事実。

その全てが、何かしらに関わるであろう。

僕が、彼にこの段階で接触できたのは、幸運としか思えない。
 ▼ 63 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:47:18 ID:nE37tYMA [21/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
思考を中断し、僕もジジーロンに声を掛けた。


ジュナイパー「これから、忙しくなります。

       迷惑をかけるつもりはありませんが、もしかするとまた、僕もここを拠点にさせてもらう事があるかもです」

ジジーロン「ああ、構わんよ。賑やかなぐらいが楽しいわい」

ジュナイパー「ありがとうございます。それじゃあ、もうお暇しますね」

ジジーロン「ありがとうの」


僕は彼の家を出て、それからアママイコの待つ自宅へと戻って行った。
 ▼ 64 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:48:17 ID:nE37tYMA [22/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アママイコ「お帰りなさい。バッグ、用意しといたよ」

ジュナイパー「ありがとう」


中身を検める。リンゴ、エイダー、地図に、それからプチ復活のタネ。

完璧だ。


アママイコ「お昼ごはん食べて、すぐ行く感じ? それとも明日出発?」

ジュナイパー「急ぎたいから、今日行くよ。お昼は?」

アママイコ「オレンサラダ! 疲れを癒すには、やっぱオレンだしね。

      ラサーシャ、結構遠いでしょ? 万全の体勢で行って欲しいから。

      無事に帰って来てくれないと、あたしも辛いし」

ジュナイパー「……ありがとう。ホントに」


それしか言えない。ただ、もう、大好きだ。


アママイコ「ほら、早く食べて食べて!」

ジュナイパー「いただきます!」
 ▼ 65 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:48:47 ID:nE37tYMA [23/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オレンサラダはあっという間に口の中へ飛び込んで行き、僕はごちそうさまを言って立ち上がった。

おいしかった。

余りに速く食べてしまったせいで、アママイコはまだ半分残している。

けれど、世界の明暗がかかっているのかもしれない。


ジュナイパー「行って来るよ。大丈夫。絶対、無事に帰って来るから」

アママイコ「わかってるよ! 頑張ってねジュナイパー!」

ジュナイパー「うん! 行ってきます!」


アママイコに微笑みかけ、それから僕は、顔を引き締め、前を向く。

ラサーシャへの道のりは、長い。危険という事はないが、急がなければ。
 ▼ 66 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:49:36 ID:nE37tYMA [24/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルートの途中に、ミリスの街がある事に気付いたのは、地図を眺めていた時だった。

一度、寄ってみてもいいかもしれない。目算だと、ラサーシャまでが5日、ミリスは2日目の夜を過ごす辺りだ。

きっと、僕なら歓迎してもらえる。

そして、尋ねたい事もあるのだ。関係者へあたるのは、警察だけじゃなく、探偵にとっても必須だ。

むしろ、権力を行使して情報を集めるという事ができない分、探偵の方がその必要性に迫られるとも言える。

ミリスのポケモンたちは、間違いなく関係者だ。新聞風に言うなら、重要参考ポケモン。

エクリプスの方が先決ではあるが、道中に尋ねられるのなら、しておくに越した事はないだろう。

そんな事を考えながら、ダンジョンを進んで行く。

敵は、たいして強くない。かげぬいで動きを止め、それを避けながら行動するだけで安全に進める。

だからこそ、こうやってボーっと考え事をする事ができるのだ。
 ▼ 67 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:50:15 ID:nE37tYMA [25/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ダンジョンを抜けると、空には上弦の月が浮かんでいた。

瞬く星々が、辺りを照らす。

かばんからリンゴを取り出し、それにむしゃぶりついて、そのまま眠った。

食べてすぐ寝ると太る、とは言うけれど、時間が惜しい。

早寝すると睡眠時間が短くて済むのは、僕だけだろうか。

少なくとも僕はそうなので、早く寝てしまいたかった。

瞼を閉ざすと、思いが巡る。

イワンコはこの件にどう絡んで来るのだろうか。

記憶を失い、しかし事件に身を投じて行く存在。

何か、知っているのか。ウツロイドは、彼の記憶のどこに存在しているのか。

アシマリたちは、どうして姿を隠すのか。

まとまる気配もない思考は、くるくるとニャヒートの空中ブランコのように頭の中を巡っていたが、やがてそれも闇の中へ溶けて行った。
 ▼ 68 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:50:58 ID:nE37tYMA [26/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
光がフードの中に入り込んで、僕は目を覚ます。

ひとつ伸びをし、目をこすって立ち上がった。

今日も進まなければならない。

目的地は、ミリスの街だ。

地図を確認する。

幸い、ダンジョンはこの道中にないらしい。

昨日以上に楽な道のりとなるだろう。

僕は足取りも軽く歩き始めた。
 ▼ 69 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:52:48 ID:nE37tYMA [27/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
特筆すべき事は何もないまま、夕方にはミリスの門を叩いていた。


ジュナイパー「すいませーん!」


身元を明かすのは、まだ早い。

今エクリプスを名乗ると、逆に警戒されるかもしれない。

味方と呼べるのか、完全に確信できるまでは、明かさないつもりでいた。

門番がやって来て、僕に問うた。


門番「誰だ?」


種族を名乗り、それから尋ねた。


ジュナイパー「エクリプスに関して、何か知ってますか?」

門番「……それは、どっちの?」

ジュナイパー「どっちもです」
 ▼ 70 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:53:39 ID:nE37tYMA [28/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
門番「どうしてそれを聞く?」

ジュナイパー「日食、近付いてるらしいじゃないですか。なのにエクリプスが見付からないって」

門番「……ああ。どこにいるのか、皆目見当も付いてないんだ。

   どこにいるんだあいつら……エーフィとブラッキーも連れてるってのに……」


吐き捨てるような言葉が、心の底から漏れ出たようなものだった。

そもそも、こんな事をどこの誰とも知らない僕の前で明かそうとする時点で、嘘だという可能性は限りなく低い。


ジュナイパー「僕、元エクリプスメンバーです。居場所に心当たりがある。

       とりあえず、ヤレユータンと話をさせてくださ――」

門番「エクリプスの居場所がわかるだと?! それなら来てくれ! こっちだ!」


ここでもゴーリキーに連れられたように強引に腕を引っ張られて行く。

荒々しさは、焦りの裏返し。彼は、味方だ。

ミリスの街は、何かを隠している訳ではないと見ていいだろう。
 ▼ 71 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:54:19 ID:nE37tYMA [29/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤレユータン「あれから……師匠の後を受け継ぎ、僕が向こうとこちらを繋ぐ神主をやってます」

ジュナイパー「先代は?」

ヤレユータン「……最期まで、幸せそうな顔をしてました。

       僕も、しっかり成長してましたし、皆に囲まれて……」

ジュナイパー「そうですか。ご冥福をお祈りします」


第一次エクリプス事件(簡便化のため、僕がモクローだった時代のエクリプス事件をこう呼ぶ事にした)以来の旧交を温める。

出されたおいしそうな料理を頬張りながら、会話を続けて行く。


ヤレユータン「ところで、どうしてエクリプスをおやめになられたんですか?」

ジュナイパー「……いろいろありまして。今は結婚して、探偵をやってます」
 ▼ 72 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:55:03 ID:nE37tYMA [30/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤレユータン「そうですか。じっくり伺いたい所ですけど、時間も余りありませんしね。

       そろそろ本題に入りましょう。エクリプスの居場所を、ご存じなのですか?」

ジュナイパー「エクリプスの、かはわかりませんが、少なくとも何匹かは」

ヤレユータン「そうですか。やめてる可能性は……」

ジュナイパー「ないです。サーカスが命ってポケモンたちですもん。それに、今のエクリプスは、環境も整ってるし」

ヤレユータン「ならよかった……」


厳密には、一時解散までは視野に入れている。けれど、正式な解散を何も言わずにするとも思えない。何か、考えがあっての事だと思っている。


ジュナイパー「僕は、アシマリたちを捜します。今日は、その道中にたまたまミリスがあったので」

ヤレユータン「そうですか。僕たちも付いて行きましょうか?」

ジュナイパー「結構です。ここはここで、いつでもホールを開けるように、準備をしておいてください」

ヤレユータン「了解です。……とりあえず、今日はどうします?」

ジュナイパー「早寝して、明朝には出発しようと思っています。時間も惜しいですしね」

ヤレユータン「ええ。それでは、藁布団、用意しますね」

ジュナイパー「ありがとうございます」
 ▼ 73 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:56:00 ID:nE37tYMA [31/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤレユータン「それにしても……何が狙いなんでしょうか」


ポツリと彼は漏らす。

本当にそうだ。アシマリたちは、何を思っているのだろう。

考えてはいる。けれど、答えは見付からない。


ジュナイパー「それじゃあ、おやすみなさい」

ヤレユータン「きっと、エクリプスを見付けてください」

ジュナイパー「任せてください」


そう言うと、僕は布団に倒れ込み、すぐに軽い寝息を立てていた。
 ▼ 74 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:56:32 ID:nE37tYMA [32/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌朝、まだ皆が寝静まっている時間に目を覚ました僕は、「ありがとうございました」と呟いてミリスの街を後にした。

そこからは、特に何もなかった。危険も、情報も、何も。

ただ、一切の疑問が、もうすぐアシマリと会える、という感慨にすり替わって行くのみ。

まあいいさ。会った時に聞けばいい。

僕はそんな事を思いつつ、ラサーシャの街へ帰って来た。
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