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【SS】ザシアンvsザマゼンタ!愛を懸けた決闘!!

 ▼ 1 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/07 22:15:29 ID:x.hMDEjw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
荒涼たる地に、伝説のポケモン2体が相対していた。
かつてガラル地方を守るために戦った「剣」と「盾」は、今は主人たる少年たちの思いに応えんと――片や主の臨む変化をもたらすため――片や主の求める安寧を守るため――互いに口端から牙を覗かせている。

ザシアン『……まどろみの森以来だな。我らが対峙するのは』

ザマゼンタ『全く。よもやこのような形で姉上に見えるとは思いませんでした』

目の前の「敵」にしか通じぬ言葉で姉弟は語り合う。
冬空の下でも、相手の瞳に燃える闘志は1秒ごとにその熱を増しているかのようだ。
視線を交錯させる2体の耳に、高らかな号令が鳴り響いた。



「行きなさい、ザシアン!」



「行け、ザマゼンタ!」



勝負の幕が、今、上がった。
地面の塵を浚っていく一陣の風に合わせて、彼らは相手へ目がけて駆け出していた。
 ▼ 120 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/11 23:03:09 ID:uMqEhA3Y [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おかしい、とマサルは思った。
ホップたちが乗せた通りの告白なんてする気はなくて、ただ……。

……そう。マリィと会って話せるのは楽しいから。

彼女と直接話すのが楽しみだったから、ネズの問いかけに自信を持って返事をしたはずなのに。



マリィ「…………」



いつも通りの髪型。
いつも通りの恰好。
なのに、今日のマリィはいつもより……。



マリィ「……あ、あのね、マサル?」




マサル「  『うん!?』
     →『はい!?』」



こんがらがった思考をまとめるより先に、マリィがひとこと声をかけてきただけでマサルは心臓が飛び上がるほど驚いてしまうのだった。
 ▼ 121 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/11 23:16:21 ID:uMqEhA3Y [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マリィ「あの、あたし、急かさないから。……マサルが落ち着いて話してくれるの…………待ってるっ」



マサル「……!」



目の前の彼女は、服の裾をぎゅっとつかんで、こちらから見ても分かるくらいに朱く染まった頬を隠そうともせずに、言った。



マリィ「……」



すごくすごく緊張して、たくさんの勇気をふりしぼって言ってくれたのだろうか。
もどかしげにそわそわ動く指やつま先が目に入り、マサルの方までどぎまぎしてしまう。



マリィ「……あ、ごめん! あたし今……その、キョドってるだけやから……気、気にせんといてねっ!」



彼女はそう言って、一瞬だけ作り笑いの表情を見せると……すぐに真横へ振り向いた。
表情は隠れても耳まで真っ赤になっている横顔までは隠せない。

マリィの様子を間近で見ているマサルは今まで味わったことない困惑と興奮で顔から火が出そうな思いだった。
 ▼ 122 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/11 23:23:11 ID:uMqEhA3Y [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ネズ「がんばれマリィ! アニキのエールを受け取ってください〜〜〜〜!」

ホップ「くそっ、マサルは固まったまま何してんだよ!」

ビート「全く、ぼくが代わってやりたいくらいですよ……」

ネズ「クッ、抑えられない! ホップ、ビート、オレがここから飛び出しそうになったら2人がかりで速攻捕まえるのですよ」

ビート「……仕方ないですね」



いかにも「やれやれ」といった身振りをして、ビートは手持ちのカバンを漁った。



ビート「ブリムオン、ネズさんを見てあげなさ……」

ホップ「いや、お前ボール壊れてるだろ」

ビート「……あっ」



ネズは、いかにも「やれやれ」といった身振りをして、マサルとマリィを見守るのであった。
 ▼ 123 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/11 23:27:02 ID:uMqEhA3Y [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キリがいいので書き溜めなしの投下一旦やめてまた書き溜めます…


ビートが可愛くてたまらない…礼儀をわきまえつつも程よく畜生なクソガキでい続けてほしい……うぅっ
 ▼ 124 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/13 11:34:38 ID:3vxgfdRg [1/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『他人は自分を映す鏡』という格言がある。
その本来の趣旨とは別として、緊張しているマリィを目の前にマサルの気持ちも千々に乱れているのである。

マサルが想像していたのは、いつも通りの無表情で「バレンタインの話ってなに?」とたずねてくるマリィの姿だった。
普段ポケモンバトルをしようと持ち掛けるときと同じように。なんでもないことのように話題を出そうと、思っていたのに。



マリィ「……〜〜……っ」



あからさまに両手の指をもじもじさせては、こちらの様子をちらちらとうかがうマリィ。



マリィ「! ぁ……にゃ、…………なんでも、なか」



なにか言おうとしただけで慌てて、普段がウソのように噛み噛みなマリィ。



こんな……こんなマリィは見たことがない!
今すぐここから逃げ出したいと思いながらも、今のマリィを心ゆくまで眺め続けていたいとも思う。マサルはそんな矛盾する感情に襲われていた。
 ▼ 125 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/13 11:35:55 ID:3vxgfdRg [2/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マリィの姿をよく観察してみると、見た目は普段と変わらないのに肌がどことなくしっとりしているように見えて、言葉にしづらい妙な気持ちになってくる。
それに――せわしなく遊ぶ彼女の指先を見ていると、上手く言い表せない違和感が――。



マリィ「……あっ! その、あたしの……指、気になる?」



自分を向いた視線に気付いたのか。
彼女のことをしげしげと眺めていたのが恥ずかしくて、ごまかそうと思ったけれど……マサルはマリィの問いかけについて首をタテに振った。



マサル「ネイルね。あたしいつもはブラックにしとーけど……今日は気分ば変えてみた。……ちょびっとだけ、オトナっぽい色がいいかな……って」



言うと、マリィは手の甲をマサルへ向けて指を広げる。
華奢な指先に艶めいているワインレッドが強く印象に残った。

 ▼ 126 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/13 11:37:00 ID:3vxgfdRg [3/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

マリィ「……ど、どうやろ……か?」



どう、とは!?
相手が訊ねていることの意味は流石のマサルでも理解できたが、それに対してすぐ返事ができるかというのはまた別の話である。
別の話、であるが……。

自分の爪を見つめるマリィの表情が不安げに見えて、マサルはすぐにその言葉を口にした。



マサル「  『似合ってる!』」
     →『かわいいよ!』



マリィ「……〜っ」



緊張にひっくり返った声でマサルが言うと、マリィは「そ、そうっ!」とだけ返してそっぽを向いてしまう。

こんなにマジメな場面で異性に「かわいい」と言ったのは初めてだった。
その言葉を口にしただけでマサルは恥ずかしくてたまらず、ふき出る汗が背中を湿らせていく感触にいやらしいものを覚える。


 ▼ 127 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/13 11:38:59 ID:3vxgfdRg [4/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ホップ「――マサルのやつ、見るからに青ざめてる! なにがあったんだ!?」

ネズ「――マリィ、心なしか喜んでいますね! 何を言われた!?」

ビート「え? そんなにハッキリ2人の表情見えますかね……?」

心の目で見るのですよ、とネズが講釈してきたがビートは釈然としない。
鋭い目を持たないとな、と得意顔のホップにも少し腹が立った。

ビート「……位置、変えてみましょうよ。同じ所から見てばかりだとマンネリでしょうに」

ホップ「おい待て押すなってば……!」

ネズ「転ぶんじゃないですよ。音がしたり身を乗り出したりしたら向こうにバレますからね」

寒空の下だが、おしくらまんじゅうしている3人は寒さをちっとも感じることはなかったのである。

 ▼ 128 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/13 11:40:08 ID:3vxgfdRg [5/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そっぽを向いたマリィが、目を逸らしたまま何も言ってくれないのが、気になって仕方なかった。
『オトナっぽい』と言っていたネイルを『かわいい』と褒めたのが失敗だったのだろうか?
彼女が機嫌を損ねていないか、そのことばかりが気にかかってマサルは背中に流れた汗が急速に冷えていくのを感じるのであった。

自分の言葉がマズかったのかが気になるものの、本人相手にそう簡単に確かめるのも図々しい気がしてならない。
そう思ってひたすら固まるマサルを――マリィはちらりと見やって――。



マリィ「……ぷっ、ふふふ……」



――小さく笑ったので、マサルも思わず気が抜けた。



マリィ「だっておかしいんだもん……っ。あたしは何もしとらんのに、マサルったら急にあわあわしてさ……」



笑いをこらえる彼女の表情は、口惜しくも本人の手によって隠されている。
わざわざ「笑顔の練習」なんてしていたマリィが、今、どんな顔をしているのかを見てみたかったけれど……とにかくマサルはホッとする心地だった。

 ▼ 129 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/13 11:41:33 ID:3vxgfdRg [6/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マリィがくすくすと笑う。
それだけで、2人の間にわだかまっていた空気が見る見るうちに弛緩していった。



マサル「 →『マリィは怒ってないの?』
      『変なことでも言ったかと……』」



マリィ「怒る? どうして?」



「ホメてくれて嬉しかったよ」と続けた彼女の言葉にマサルも頬を緩める。
自分で言っておきながら、マリィは「かわいい」と言われたことを思い出して再び彼から目を背けるのだった。

 ▼ 130 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/13 11:45:06 ID:3vxgfdRg [7/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
向こうを向いて口を開かない彼女を見て、マサルはまたこの繰り返しか……と一瞬だけ思った。



マリィ「…………」



……けれども、似たようなやりとりを続けたからか……今は自分にもマリィの気持ちが伝わってくる気がした。

どうも、そっぽを向くのは彼女なりの照れ隠しらしい。

そのことが分かった彼に、もう恐れるものは何もなかった。



マサル「 『あのね、マリィ』
    →『言いたいことがあるんだ』」



マリィ「……うん」



「14日に、いっしょにどこかに出かけてみない?」と。
頬をかきながら提案してきた少年の声に、少女は小さく「うん」とうなずき返すのだった。

 ▼ 131 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/13 11:47:07 ID:3vxgfdRg [8/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
町はずれの広場で少年と少女が2人向かい合っていた。
ぎくしゃくしていた彼らの雰囲気もすっかり和らいで、今は談笑中である。

マリィ「え、どこ行くかって全然決めてないの?」

マサル「 『ごめんごめん』
    →『急に思い立ったからつい』」

マリィ「しょんなかやねぇ。あたしといっしょに考えるばい」

やがて、2人は肩を並べるように歩き出した。

これからバレンタインの予定を決める必要があるのだ。
わざわざ、殺風景な広場で話すこともないだろう…………。



マリィ「……?」



横で歩いていたマリィが、唐突に目を細めた。
遅れて、彼女の見つめる先に動く"何か"を発見して、マサルは途端に背筋が凍る気持ちを味わうのであった。
 ▼ 132 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/13 11:50:00 ID:3vxgfdRg [9/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ほんの些細な変化に、大きく揺れ動くような。
まさに思春期まっただ中といった様子のマサルたちのやりとりを、夢中で観察していたのが彼らの仇になった。



マリィ「……………………」



彼女の目は、オーロンゲの豊かな触毛に捕まえられている男たちを眺めていた。

そのポケモンの体毛は自在に動き、筋肉のようにも働くという。
マリィに鍛えられたオーロンゲの髪に体ごと捉えられた3人はマリィの目を見つめ返すのが精一杯である。

宙に持ち上げられて動けない3人を見る彼女の瞳は、路傍に転がるゴミでも見るかのように無造作で冷たいものだった。



マリィ「……言い訳はあとで聞くよ」



肚の底まで凍らせるような彼女の声に、マサルは女子の怖さを思い知った気がした。

 ▼ 133 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/13 11:52:46 ID:3vxgfdRg [10/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ビート「ネズさんが悪いんですよ! そんな目立つ髪型でのぞき見なんてするから……っ」

ホップ「見苦しいぞ……」



ロン毛に捕まって宙に浮いている2人を尻目に、ネズはマリィをきっと見据える。



ネズ「妹よ……よく聞いておきなさい」

マリィ「…………」

ネズ「確かに、事の発端はガキの悪戯かもしれません。ですがお前とバレンタインを過ごしたいと感じた彼の想いはニセモノなんかではあ痛ててててててててて……っ」



無言・真顔で容赦なく兄の頬をつねるマリィにマサルは心底恐怖した。

 ▼ 134 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/13 11:56:02 ID:3vxgfdRg [11/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マリィ「こいは特別な特訓やからね。ちゃんと言いつけば守るんよ?」

頭上で嘆く少年たちに目もくれず、オーロンゲは主人の言葉にしっかと耳を傾けている。



マリィ「3人捕まえたまんまでスパイクタウンを一周してこい! レッツ、ゴー!」



トレーナーの指示を確かに受け取ったオーロンゲはドスドスと音を立てて走り始める。
「しゃべるな、舌をかむぞ!」と叫ぶ友の声がマサルの耳に儚く響いた。

 ▼ 135 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/13 12:00:18 ID:3vxgfdRg [12/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マリィ「……マサル? どうしたの?」

3人の顔を再び見るまで忘れかけていたことだが、マサル自身も件の騒動の当事者である。

裁判にかけられた被告のような気持ちで許しを乞うと、マリィは鼻を鳴らして答えた。

マリィ「はぁ。……今になっちゃ、きっかけなんて何でもよか。あたしと話そうとしてたアンタの目ば見てたら……ほんなごつくらい、分かったもんね」

マサル「 『ほんなごつって、なに?』
    →『なにが分かったって?』」

マリィ「!! ……恥ずかしかっ!」

うつむいたまま肩をぺしぺし叩いてくるマリィの姿が愛らしくて、マサルは笑みをこぼす。
揺れ動く拍子にボールが開いたのだろうか。
マリィの足元には、いつのまにかモルペコが立っているのだった。



モルペコ「うらら♪」



マリィ「…………」



マサル「…………」



何も知らず、とぼけた表情で種をかじり始めた相棒を見てマリィは真顔で吹き出してしまう。
そうして2人は顔を見合わせ、くつくつと笑い合うのであった。
 ▼ 136 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/13 12:02:37 ID:3vxgfdRg [13/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マリィ「それじゃあ、いっしょに考えるばい! バレンタインの過ごし方っ♪」

マサル「  『うん!』
     →『楽しみ!』」



2人は自然と手を取り合って歩き出す。
これから先を話し合う楽しみに、彼らの足取りも喜びに溢れていた。





翌日、から風に吹かれて冷たくなっているネズたち3人が発見され、新たな話題の出現に彼と彼女の決闘も人々の記憶から静かに消えていった。
 ▼ 137 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/13 12:07:23 ID:3vxgfdRg [14/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
とりあえずここまで〜!

明日の投下でこのSSを完結させます 他のバンアレン帯SSも日付合わせて完結させてくる人がいそうで楽しみでごんす
 ▼ 138 ビィ@ロックカプセル 20/02/14 18:25:53 ID:jsHkXs7c [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おもしろくて一気に読んできました
支援!
 ▼ 139 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 19:58:08 ID:aWSk8RTc [1/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その日はついにやってきた。
バレンタインを楽しみにしていた女の子も、そうでない男の子も。

心のどこかでワクワク、そわそわ。



家族で愛を確かめ合う者もいれば……

メロン「ほらほら、照れてんじゃないの。あんたがなんだかんだで家族思いなのは分かってるんだからさっ」

マクワ「離しなさい! これはファンのためのチョコです……っ」



友情を深める者、

ヤロー「ええと、これがルリナさんにサイトウさん。こっちはポプラさんで、メロンさんのが1サイズ大きい……マリィちゃんに贈るのは初めてだけど、気に入ってくれるかなぁ」

ウールー「めぇぇ」

ヤロー「……うん。お前たちのお陰でできた編み物だもの、大丈夫さ!」



秘めた想いを告げる者や……、

ミニスカートA「サイトウ先輩! 何も言わずに受け取ってください!」
ミニスカートB「こ、これ本命チョコ! 同じクラスになったときから……ずっと気になってて……!」
ミニスカートC「ああああの……、か、か、か、カード……書いてきた、ので……。お、お家に帰ってから、読んでくださいぃ……!」

サイトウ(……なんでわたしは女子ばかりから貰う……?)



果てはバレンタインを気にしてすらいなかった者も、

キバナ「あっ、今日だったか! ……映えるのってやっぱ花束かデカい菓子だよな……。なぁ、どんな写真あげたらみんなにウケると思う?」

スマホロトム「ビビビビッ! ケンサクチュウ、ケンサクチュウ……」



思い思いに楽しむ中で、彼らも彼らのバレンタインを楽しもうとしていた。
 ▼ 140 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 20:01:50 ID:aWSk8RTc [2/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ソニア「ねえホップ! こっちに置いてた講演の原稿知らない?」

ホップ「知らない。原稿ならPCにあるし、コピーで出せばよくないか?」

ソニア「手書きで赤(ペン)入れちゃったからさ〜……。一から見直ししたら二度手間だよぉ」



ポケモン研究所はバレンタインでも大忙し。
研究者として有名になり始めたソニアと、まだまだ勉強中のホップ。
2人で一緒に一日中がてんやわんやの毎日である。



ホップ「やれやれ。夜までこんな調子じゃバレンタインも何もないな……」

ソニア「本当それなんだよね! 毎年お菓子をくれるダンデくんもやけに遅いし、いっそホップがわたしにバレンタインしてよ」



苦笑しているソニアがこちらを見ていないのを確かめて、ホップはこそりこそりと移動する。



時間も遅いし、子どもの自分はもうすぐ帰らなくてはいけないのだ。

この機を逃すと次はない……緊張に胸を騒がせつつ、持参しているバッグの中へ慎重に手を伸ばしていく。

そのプレゼントは、研究所へやってくる直前、密かに購入していたものである。
握り締めた一輪の花は、店頭で見かけたときから変わらず美しい花弁を誇っていた。

 ▼ 141 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 20:03:06 ID:aWSk8RTc [3/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
花を後ろ手に持って背中の後ろに隠す。
バレないように少しずつ彼女に近づいて、後は……。

ソニア「あっ見てよホップー! わたしったら、原稿ひっくり返して裏にメモ書きしてた……」



ホップ「――ソニア! これ、オレからのバレンタイン!」



頭の中で思い描いてきたように、相手の目の前に花を持った手を突き出す。


ソニアとホップの間に、一輪の白バラが顔をのぞかせた。
 ▼ 142 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 20:05:51 ID:aWSk8RTc [4/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ダンデ「――ようソニア! ご両親からまだ研究所だって伺ったよ、遅れてすまな――」





ソニア「あんたってやつはなんて良いコなの〜〜〜〜〜!! マジで泣きそう〜ってか泣いてるしぃ〜!」

ホップ「やめろよソニア! その……苦しいってば!」

ソニア「いいからちょっとジッとしてて。お返しのキスができないじゃん」



ダンデ「……あっはっは! 邪魔してスマン、バレンタインを済ませたら声かけてくれよな!」



ホップ「アニキ!? 頼むからソニアになんか言ってやってよ、オレ……」

ダンデ「そんなに顔を赤くするなよ。大事な人からの愛情は素直に受け取るもんだぜ?」

ホップ「違……そ、ソニアがくっついてきて暑いだけだって! 照れてるわけじゃ……」

ソニア「……わたし……アンタが研究所に来てくれて……良かった……っ!」

ホップ「〜〜! なぁアニキ、助けてくれよぉ〜……」



研究所に朗らかな声が響く一方、彼の過ごす町でも……。
 ▼ 143 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 20:07:19 ID:aWSk8RTc [5/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ここは、アラベスクタウンのとある食堂。
テーブルに用意された豪奢な食事を前に、パーティーへ招かれた関係者たちが和気藹々とトークを重ねていた。



ビート「……まったく。このぼくがディナーを提供するというのに、あの人は何をしているんですかね」



ゲストの不在に苛立ちを隠せないこの少年こそ、食事会の主催である。

日頃から世話になっている女性陣……ジムの関係者であり”彼女”が主宰の劇団員らに協力してもらって開いた、皆で楽しむバレンタインのパーティーなのに。



会を始める刻限のギリギリになって、彼女はようやく姿を現したのであった。
 ▼ 144 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 20:08:38 ID:aWSk8RTc [6/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ビート「遅いですよポプラさん!」 

彼は弾むように席を立ち言葉を投げかける。



ビート「パーティーの主催たる! このぼくが!! 挨拶を始めるところだったじゃないですか!!!」

ポプラ「すまないね。せっかくの会だ……相応しい衣装を引っ張り出して、整えるのに手間がかかったのさ」



その言葉にビートは改めてポプラの姿を確かめる。
オフショルダーの無地、薄桃色のドレスに身を包む彼女がそこにいた。
シンプルなデザインが与える清潔感に加え、首に巻いたストールが肩口を隠して身に着ける者の気品を感じさせる。

普段の彼女と全く異なり、またビートの記憶とまるで重なるところのない衣装だった。



劇団員「あら懐かしい。そのIラインは確か……ジム就任の60周年パーティー以来でしたかね?」

ポプラ「さて、そんなに古かったかねぇ。あのときに着ていたものかそうでないか、当ててみるかい?」



彼女らの会話へ傾けていた耳に、隣席の女性がそっとささやきかけた。
 ▼ 145 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 20:12:40 ID:aWSk8RTc [7/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「あれはポプラさんのお気に入りだよ。親しい関係者から招かれたときにだけ着るパーティードレスさ」



ビート「…………!」



そのとき感じた気持ちを、彼は決して「感動」とは呼ぼうとしないだろう。

けれども、家族とも師とも友とも敵とも味方とも言い難いけれど確かにつながりを持っている彼女から認められた――。

嬉しさと気恥ずかしさ、むずがゆさと誇らしさを同時に味わいながら彼は席を立つ。



ビート「皆さん! 今宵はぼくの開いたバレンタインパーティーにご出席いただき――本当に、ありがとうございました!」



一片の曇りもない瞳で口上を述べる彼は、堂々と主催の責任を果たそうとしていた。



そんな風に、アラベスクタウンに喜びを知る少年が居た一方で……。
 ▼ 146 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 20:22:19 ID:aWSk8RTc [8/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『愛してーるのエールをあげーる!』

「「「愛してーるのエールをあげーる!!!」」」

『愛してーるのエールをあげーる!』

「「「愛してーるのエールをあげーる!!!」」」



ネズ「おまえらもっと"来い"よ!! 日付も場所も関係ないのが音楽ってもんでしょうが!!」



エール団員「「「おーーーーーーー!!!」」」



ネズ「愛しのお嬢は今日は来ねえぞ! わかってるバカは全員声出せ! わかってなかった大バカヤローはおれらの3倍大声出してけ!!」



エール団員「「「おぉーーーーーーー!!!」」」



『愛してーるのエールをあげーる!』

「「「愛してーるのエールをあげーる!!!」」」

『愛してーるのエールをあげーる!』

「「「愛してーるのエールをあげーる!!!」」」
 ▼ 147 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 20:37:03 ID:aWSk8RTc [9/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


マリィ「……町の人たち、みんな楽しんでるみたいやね……」



つぶやく彼女は、他人よりずっと高い視点に立っていた。

360°遮るものがないパノラマの景色。
夕食時でも賑わう市場。喜色満面に街道を歩く親子連れ。町の端っこ、トンネルを行き交う人々の反対側には夜闇に輝くスタジアムが見えた。



マリィ「ねえ、見て。あんなところまでライトアップされとうよ」



指差した先は、電飾によって派手な色に光を放つ船着き場だ。
端っこに見えるベンチに男女のカップルが座っている。

遠目に見える2人は、水面を眺めて穏やかな表情をしていた。
 ▼ 148 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 20:42:29 ID:aWSk8RTc [10/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マリィ「ありがとう。あたしだけじゃ、こんな素敵な場所でバレンタイン過ごすなんて思い付かんかったと」



彼女のお礼に対して、マサルは首を横に振る。
こんなに見晴らしがよく、ロマンチックな場所で――バウタウンの灯台のてっぺんで――景色を楽しめるなんて、自分だけでは考えたこともなかったから。



マリィ「そうだね。相談に乗ってくれて、町の人にも言ってくれたルリナさん……今度改めてお礼しないとね」



2人がバレンタインの過ごし方に頭を悩ませていたとき、何人かのジムリーダーが相談に乗ってくれた。
そのとき、このロケーションを提案してくれたのがルリナだったのだ。




ガラル地方指折りの港町であるバウタウン。

関係者以外立ち入り禁止の灯台も、今夜だけは彼と彼女のものなのだ。

 ▼ 149 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 20:47:49 ID:aWSk8RTc [11/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マリィ「でも、色んな人に知られちゃったね。あたしとマサルでバレンタインに出かけるって」



マサル「  『しょうがないよね』
     →『別に気にしないよ』」



マリィ「……うん。あたしも別に……気にせんったい」



「他人に知られても気にしない」その言葉にマリィが頬を染めるが、その真意はマサルには分からない。
むしろ、高い場所にいるせいで彼女の体が冷えたと勘違いして――灯台のすぐ下でイベントがあるからと――この場から移動することを勧めるのだった。



マリィ「ん? ああ……ミニライブ、すぐそこでやるんやっけ」



灯台のそばにある、1対のストリンダーたちの石像。
その脇に広がる芝生の上で、地方を代表するポケモンバンド・マキシマイザズがウォーミングアップに励んでいた。
 ▼ 150 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 20:51:35 ID:aWSk8RTc [12/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
センターを陣取るタチフサグマにハイandローのストリンダー、そしてドラムのゴリランダー。
4体が奏でるミュージックは非常に人気で、幾多のスタジアムを沸かせてきた。

そんな彼らがバレンタインに合わせたミニライブを開くことは町の間でも話題になっている。
調律している現段階で、既にちらほらと観衆が集まり始めていた。



マリィ「降りなくていいよ。せっかくの特等席じゃん」



けれども、ここに居続けて寒くないかと心配するマサルに、彼女は正直に「寒い」と返す。
その返事に慌てたマサルに、マリィは堂々と言い放った。

 ▼ 151 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 20:56:33 ID:aWSk8RTc [13/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マリィ「こんくらいの寒さ、別に我慢できるばい」



「それに……」と続けて、彼女は言葉を紡ぐ。



マリィ「下に、降りたらさ。……あんたと2人きりで見られないもんね」



ふ、とマリィが微笑む。

マサルは――彼女の言葉になにやら叫びだしたいような衝動を覚えたけれど――それをグッと我慢して、「そうだね」と返事をした。

 ▼ 152 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 21:03:54 ID:aWSk8RTc [14/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
荒涼たる地に――町はずれの荒れた広場で対峙した――伝説のポケモンたちの闘いを、誰が覚えているだろうか。



ダンデ「なになに? 白バラの花言葉は……『尊敬』『純潔・純粋』『私は貴方にふさわし』……」

ホップ「わあああああやめろよアニキ!! お店の人にススめられただけだって!」



かつてガラル地方を守るために戦った「剣」と「盾」。
少年たちの思いに応えんと矛を交えた彼らの決闘は、見た者、関わった者の心血を大いに沸騰させた。



ポプラ「こらっ。テーブルマナーは直々に仕込んでやったはずだよ」

ビート「こんな時くらいやめてくださいよ! ……ぼくが主催のパーティーなのに」



バレンタインの愛を懸けて戦った2人。
バレンタインの愛を懸けて闘った2体。



ネズ「はー……。つまんねえなぁ…………」



そこで決したものは、2月14日の運命だったか。
あるいは、もっと先の――更にその先の2人の行方か――。
 ▼ 153 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 21:11:44 ID:aWSk8RTc [15/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

マリィ「ねぇ……マサルさえよかったらさ、来年も……」



マリィが何かを言いかけた矢先、少しだけ強い風がバウタウンの空を薙いだ。

地上よりも高い場所で風を受けてよろめく彼女。

転びかけた相手を前に、反射的に助けようとした彼は身を乗り出して……必然2人の体が重なっていく。



マサル「…………っ!!」



マリィ「ぁ……っ」



灯台の上は2人きり。すぐ傍にいる人々はみな、演奏を控えたマキシマイザズの挙動に夢中だ。

だから、頭上の2人に何かが起きているなんて露ほども気に留めることはなかった。
 ▼ 154 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 21:14:50 ID:aWSk8RTc [16/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



彼と彼女が、その後にどんな会話を交わしたのか。



バレンタインの秘め事の行方は、二人の他の誰も知らない。






(おわり)

 ▼ 155 ハビリ中◆Bt64IWMOO2 20/02/14 21:27:31 ID:aWSk8RTc [17/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
剣盾で初めてSS書いたけどクソ楽しいっスね 忌憚のない感想ってやつっス

ここまで読んでくださり、誠にありがとうございました
バレンタインデーとかよく知らないので自分は味噌ラーメンを食べてきます





これは宣伝ですが、本SSは下記URL↓↓↓の企画に参加しているものです
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1140087&l=1-


後日、これに関して「最高!」「おもろ!」「死ね!」ってお気持ちと共に投票してくれたら>>1が喜ぶわよ! 以上!!!
 ▼ 156 ニーゴ@ひかりごけ 20/02/14 22:53:40 ID:jsHkXs7c [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ありがとう!
とても楽しませていただいた!
乙!
 ▼ 157 ニータ@ヤゴのみ 20/02/19 12:52:48 ID:MsE6heG. NGネーム登録 NGID登録 報告
おっつおつ〜ァ!!
 ▼ 158 プラス@ゴーストジュエル 20/02/22 21:14:08 ID:B0GQrRg2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
このSSクソ良いぞ
 ▼ 159 ルマイン@にじいろのはね 20/02/23 12:39:12 ID:j2homZLo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
面白くて一気読みしました
めっちゃよかったです!
乙!
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