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【スワップss】社会不適合

 ▼ 1 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 20/04/08 13:50:47 ID:R.Lo3Zd6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「何者にでもなれる」ということは、「今は何物でもない」と同義だ。

「大人になる」ということは、「何者かになる」と同義だ。

「何者かになる」ということは、「選択をする」と同義だ。

「選択をする」ということは、「責任を負う」と同義だ。

 しかし、「責任を放棄する」ということは、「何物にもならない」と同義ではなかった。


 〇


 一体どういうつもりなんだ、と言われているような気がする。特定の誰かからではなく、世界から。何か行動を起こす度に胸ぐらを掴まれて、お前は一体何をしているんだと唾を吹きかけられている。「何でそんなことをしているのか、お前にはやるべきことがあるんじゃないのか」と、食事をする度に、排泄する度に、息をする度に問い詰められているような気がするのだ。

 もっとも気がするだけであって、実際に言われているわけではない。あくまでも私の思い込み。しかしながら、言ってこないだけで思われてはいるだろう。根拠は視線だ。私が街中を歩く度に向けられる怪訝な色を伴った視線、「あいつ、進化もしないで何をやっているんだ」「大人なんだから進化しなさいよ」「将来性の塊とは言うが、その将来がいつになっても訪れないんじゃ話にもならんな」……。そんな幻聴が聞こえてくるほど、私の姿を見たポケモンはぎょっとする。

 人間でいう、成人を果たしたくらいの年齢のイーブイ。通常のポケモンは進化先は一種類に固定されているのに対して、私たちイーブイは八種類以上もの進化先がある。

 進化先とは、可能性だ。ポケモンは進化すれば、進化前に比べて圧倒的な力を手に入れることができる。その可能性がイーブイには何種類も用意されている。まさに可能性の塊。「将来性」という言葉の体現。

「私たちは何物にでもなれる。だから精いっぱい生きて、いろんなことを体験して、自分の道を決めていってくださいね」幼い頃からタコができるほど聞かされてきた言葉。確かにあの時、私には将来性があった。それは言わば、私が生まれながらにして持っていた才能のようなものだった。何にでもなれるという才能。それを発揮しないまま、時間だけが流れていった。

 気づけば、私は大人と呼んでも問題ない、どころか子供と呼ぶ方が差し支えのある年齢になっていた。私はまだ進化先を決めていないのに。進化しようがしまいが、時間は平等に流れ去る。

 あのとき確かに私は何物にでもなれた。しかし今の私は「何者かになる決断をしないまま大人になったイーブイ」だ。つまるところ、かつての私は己の才能にあぐらをかいて碌に自らの今後について思いも馳せなかった未来の加害者だった。

 結果として、こんな惨状になってもまだ私は進化先を決断することができない。何者かになれる才能をみすみす手放したくない。そうして私はひとり閉じこもり、一丁前に進化することもしないまま、進化しなくてごめんなさいと泣き濡れる社会不適合者。誰に向かって謝っているというのだろう。許してもらおうとしているのだろうか。

 はあ、まったく嫌になる。最悪の人生だ。青く澄んだ、澄み過ぎて黒色にすら思える空を睨みつけ、私は溜息を吐いた。
 ▼ 2 ープルフレイム◆mL2ZRk1cK. 20/04/08 13:52:39 ID:R.Lo3Zd6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1189712

この作品はスワップss企画に参加しております。これ以降は別の方が執筆されますので、ご了承ください。
 ▼ 3 タシラガ◆96J.feuEfk 20/04/13 21:54:04 ID:rntE81ms [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
このスレを担当することになりました。


初SSですが、頑張っていこうと思います。

雰囲気を尊重していければと。
 ▼ 4 タシラガ◆96J.feuEfk 20/04/13 22:48:40 ID:rntE81ms [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 もっとも、溜息を吐くばかりでは何も変わることはない。この3秒間の溜息の間でも、適合者はこの社会を支えている。時間の流れは彼らを浮かばし、私を詰ませていくようなものだ。
「お前にはやるべきことがあるんじゃないのか」
またこの言葉が流れる。そんなことは身をもって解っている。進化するという解ならもう導いている。
 何者かになれる才能。私が持つ唯一の特徴であり、嘲笑の材料でしかない。それを捨てることが出来るのなら、とうに捨ててる物だ。それを手放した瞬間、私は虚無となる。

 「この時間はいったい何だったのか」
 碌でもないことに7分を捨ててしまった。
 
 そんな時、友人であるブースターから電話が入った。どうせ...と思いながらも、幼馴染の彼からの目線は無視するわけにはいかない。
 彼の連絡は、このようなものであった。

 「お前、才能あるぞ。なんせトレーナー間では進化先の俺より人気らしいからな」

 人気?才能?少々理解に困惑したが、何かこの困窮を脱する手掛かりになるかもしれない。

 というわけで、翌日私はブースターの家を訪れることにした。
 
 ▼ 5 ンシカイオーガ@ちかのカギ 20/04/13 22:50:40 ID:ePl.0DtE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シャフテキは神
 ▼ 6 ロデスナ@まがったスプーン 20/04/14 20:26:24 ID:McQcgLRA [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌日

「来てしまった・・・」

今となってはこの思いが強くなっている。
思えば幼馴染とはいえどもあいつは進化済み。人気才能なんだか知らないが、進化している以上格上であって、進化前など存在価値なしと思っていた。

この先に、掌をひっくり返すような出来事が起こるとも知らず悲観に浸ったままブースターの家の扉を叩く。

「ブースター?来たぞー!」

人前ではとりあえず自分を繕おう。
 ▼ 7 タシラガ◆96J.feuEfk 20/04/14 20:26:50 ID:McQcgLRA [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>6
コテハン忘れましたすみません
 ▼ 8 タシラガ◆96J.feuEfk 20/04/15 22:27:53 ID:/Y1.ZRdY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ブースター「お前、まだ進化先決まっとらんらしいな」
イーブイ「ああ、どうせ貶したいんだろ。お好きにどうぞ」
こう質問されたときには、すでに本性は出ていた。
ブースター「違う。進化前だからといって、貶されるだけの事はない。」
イーブイ「は?」
ブースター「まず、お前はお前にしかないものを持っているはずなんだ。 」
イーブイ「例えば?」
ブースター「例えば、お前はブイズの中で最も弱点が少ない。」
イーブイ「等倍多すぎだが」
ブースター「あと、電話でもいったが俺より人気がある。トレーナー間の調査やから信憑生は高いで。」
イーブイ「確かにそうだな。でも、ポケモン社会的には地位は低いだろ。所詮進化前なんだから、できる事はねえ。」
ブースター「うん?そうとも言い切れないぞ。こいつを見てくれ」
イーブイ「これはかなり有名なポケモントレーナーの手持ちか。ランクもマスター、かなり強そうだな。で?」
ブースター「このパーティ見てみろ。ガラルサニーゴとか、ニダンギルとか。なんか気づかないか。」
イーブイ「・・・そいつら進化前だな。」
ブースター「そう。こんなトップレベルの試合でも、進化前に出番は与えられているんやで。昔はもっと多かったらしい。」
イーブイ「何で使っているんだ?しかも何で強いんだ?普通に相手の技耐えてるし。」
ブースター「それはな・・・」

そう言ってブースターは私に紫色の石片を差し出した。
 ▼ 9 タシラガ◆96J.feuEfk 20/04/16 22:44:46 ID:6c7ws0y2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
渡された石片をよく見る。進化石ではなさそうだ。だからといって、石でないわけでもない。しかし、持っているだけで不思議と何かに守られているような感覚がしてきた。

イーブイ「こいつは何だ?」
ブースター「しんかのきせきというアイテムでな、これこそが進化前が活躍しているカラクリなんだ」
イーブイ「この守られている感覚でいうのがその効果なのか?」
ブースター「うん。そうらしいな。」
イーブイ「らしいなって、お前今まで持っていたんじゃ。」
ブースター「このアイテムは君みたいな進化前にしか効果ない。結構最近、僕と同じように進化したサンダースくんからもらったんだ。『なかなか進化先を絞れない悩める幼馴染がいるだろう?』と言って。自分も進化した時のこと思い出したんだけど、やっぱり僕は進化するの早すぎた感じがあったなあ。」

内心引っかかるところもある発言だったが、これをきっかけに子供だった頃の私とブースターを思い出す。
彼はいつも一番になりたがっていた。順位はもちろんだが、その他のことにもいろいろ熱くなっていた。消極的な私とは正反対の性格だったかもしれない。

彼の弱点ははやとちりがちだというところか。彼が進化先に選んだのは、見ての通りブースターなのだが、あまり生きやすい種族ではない事は周知の事実であった。
彼が進化したのは、まだ子供と言っても過言でない時期だった。周りは「なりたい進化先を決めてから」 −私もそうであったが といっていた頃だった。もちろんブースターにもブースターなりの生き方があるのだろうが、実際社会的地位は他の進化先に比べては低かった。まあ、彼が進化した当時は情報もあまり伝わってなかったし、彼自身は上手くやっているが。

ところで、この「しんかのきせき」とかいうアイテム。なかなか面白そうではないか、そしてこの自分を救ってくれるアイテムのように感じてきた。

「よし、久しぶりに街へ出るか」

私は無意識のうちにそう決めていた。
 ▼ 10 タシラガ◆96J.feuEfk 20/04/17 22:43:11 ID:fCM2toI2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
書き手です。

誠に勝手ですが、本日の更新はお休みさせていただきます。

(尚、このコテハンは基本この企画のみでの使用となります。違うスレで見ても見なかったことにしてください(笑))
 ▼ 11 ブト@ソルガレオZ 20/04/18 12:03:11 ID:Twk.Ng7. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 12 タシラガ◆96J.feuEfk 20/04/18 22:44:01 ID:VI8s3P4U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 私は、「しんかのきせき」とともに街に出る。今までのように、軽蔑の視線を感じることは無くなっていた。私が街に出たのはなぜか、自分でもはっきり分かってない。でも、目的地はあるはずなんだと思っている。
 自分の進化先を決めること。このことを考える余裕がようやくできた。同時に、今まで進化を諦めかけて自暴自棄になっていた所に光が差した気がした。
 自分について考える余裕ができた事で、実際私は進化した方が良いということを、そして前向きに考えていくことのちょっとした愉しさも感じている。あの「しんかのきせき」は、まさに奇跡を起こしてくれたのかもしれない。

 今一度、私が街に出た理由を考える。その答えは、私の目の前にあった。
 ▼ 13 タシラガ◆96J.feuEfk 20/04/19 22:39:37 ID:RFr23WDI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
目の前に広がっていたのは、イーブイの集いであった。いやむしろブイズの集まりであろう。私の進化系であるかもしれない7体。そこには私と同じくらいの年齢の進化前イーブイもたくさんいた。
ここは、街のど真ん中を通らないといけない場所である。あの道具がなければたどり着けなかった場所であろう。
「ありがとう、ブースター君。」
そう思いながら、私はその集いに入っていった。やはり、このことに抵抗を感じる事はなかった。

集いに交わった私は、いろいろな話を耳にした。
「進化するために大切なのは、経験もだけど意志が最上位よ。」
「遅咲き早咲き気にするな。いつか開花すればいい。」
「進化先は、しっかり悩め。悩みも経験の一つだからな。」

どれも自分の心に刺さりつつ、激励の言葉のように聞こえる。

私が最も気に入った言葉は、ニンフィアの言ったこの言葉であった。

「進化に選択肢はない。だからさ、自分のやりたいようにすれば良いんだ。」

進化はしなくてはならないと自覚するとともに、なりたいようになれば良いという解が生まれた。

ニンフィアは、最近になって見つかった新しいブイズである。
 ▼ 14 タシラガ◆96J.feuEfk 20/04/20 22:46:24 ID:ZihMSVYc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
すみませんが、本日も休みを取らせていただきます。
因みに、物語はあともう少しで終わりかと。
 ▼ 15 タシラガ◆96J.feuEfk 20/04/21 21:22:52 ID:vW0MgWwU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
挨拶も何もしないで立ち去るのもあれなので、少しばかり話してみようと思う。
イーブイ「こんにちは。ニンフィアさんですよね。」
ニンフィア「はい!あなたは...まだ進化してないのかぁ。相談ですか?」
イーブイ「いや、あの...挨拶だけ。ここに来るのは初めてなので、どのような場所なのか分からなくて。」
ニンフィア「ああ。ここはただのイーブイ達の集いかな?でも、ここでは色々な進化に出会えるから進化先を迷っているイーブイ達の受け皿みたいな感じのところだね。」
イーブイ「...もしかして見透かされていますか?自分が大人相応の年齢なのに未だに進化できてないこと。恥ですよね。」
不意に、いやいつも通りにあの言葉を思い出しかけていた。
イーブイ「自分、進化したら本当に何にでもなくなる、つまり虚無になる気がして。だからといって進化しないかというと、そうすれば周りの視線が怖くて。今はこの石のおかげで外出できるようになりましたが...」
ニンフィア「それ、昔の私と同じ。きっと『進化する才能しかない』みたいなグロッキー状態でしょう。」
イーブイ「はい。進化したら、可能性を失ってしまう。でも、今となってはその可能性も無用の長物。虚無になりたくないから仕方なく持っているだけという感じなんです。」
ニンフィア「ふーん。確かにイーブイは可能性の塊。でも、進化したから可能性が無くなるのは違うんじゃないかな?」


 ▼ 16 タシラガ◆96J.feuEfk 20/04/22 22:45:06 ID:DTuYYs06 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「なんか、自分の話ばっかりするみたいになっちゃうけど、あなたの悩みに応えられたらなと思って話すね。」
 私のこの負のスパイラルに終止符を打ってくれるかもしれない。そんな期待を抱えながら、私は佇まっていた。
ニンフィア「知っていると思うけど、私は初めてのニンフィアなの。イーブイの進化先では、一番新しいといわれているフェアリータイプ。
なぜフェアリータイプを選んだかって聞かれても、自分でもよく分からない。でも、私もリーフィアから聞いたんだ、『進化したから可能性を失うなんて事はない』って。」
イーブイ「もしかして、あなたも私と同じような境遇でいらっしゃったので?」
ニンフィア「うん、もしかしたら...って、そんなにかしこまらないでって!だって私達は同じブイズなんだから。」
イーブイ「そういってくれるならありがたいです!」
ニンフィア「ちょっと話がズレちゃったね。んで続きなんだけど、私も可能性を失いたくなかったって言えるのかな?まあ、冒険好きというのもあるけど。イーブイの進化先はいくつあるか知っている?」
イーブイ「確か、8種類?」
ニンフィア「そう、じゃタイプの数は?」
イーブイ「えーと...ドラゴン,ゴースト......フェアリー」ざっと18種類?
ニンフィア「そうらしいね。うろ覚えだからつい調べちゃったけど。
ともかく、あなたの進化先の数よりはるかに多いタイプがある。2つタイプを持つならもっとたくさんね。」
イーブイ「それと、私の悩みがどう関わるのですか?」
ニンフィア「『誰もなったことのない何か』になるというのは、可能性をなくしてしまうなんて事はないよね。もちろん、普通に進化しても全く可能性が無いわけではないと思うよ。だって、才能が有ろうか無かろうが、個性という括りではどちらも見れるから。」
イーブイ「『誰もなったことのない何か』」

ー脳裏を閃光が走った。一種、神格的な発想も生まれてしまった。

私には、可能性がある!私はその可能性を軽視し続けてきてしまっただけだ!
今までの自分の考えが馬鹿みたいだ!何が腐らせた将来だ!
何処にも、その8種類に進化しろなんて決まりはないではないか!
そして、経験もなんも特別なものでなくていいんだ!
この鬱憤も、ブースターの優しさも、ニンフィアの助言も
こんな普段のものでも、よく考えると十分な経験ではないか!
そんな糧を、それぞれの好きなように変えていける可能性が無用の長物な訳がない。上手く使えていないだけだ!


私は社会不適合者ではなかった。いや、むしろ流されすぎていたのだ。


進化先、進化の方法

という概念に。

 ▼ 17 タシラガ◆96J.feuEfk 20/04/23 22:18:18 ID:yzQsqfCI [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


後日

私は、可能性を持ったポケモンだと、自信を持って言える。

しんかのきせきをくれたブースターや、可能性の力の権化であるさまざまな進化先、いつも新しいものを探すというニンフィアの教え。

それらは全て、経験という糧になり自信という財になる。

その自信を胸に、私は今日進化したいと思う。

今までにとらわれない、新しい進化先として。

もちろん、人生が大変になるのは承知だ。でも、自分には自分なりの。社会不適合には社会不適合なりの生き方があるんだ。可能性を失いたくないという事は、いつも何かを得たいと思っているということだった。自分の責任だが、どうせ負うものになるし、言っていくとキリがない。

そんな、冒険と可能性に満ちた新しい進化先。

「どのタイプにしようかな...」

《 完 》


 ▼ 18 タシラガ◆96J.feuEfk 20/04/23 22:21:47 ID:yzQsqfCI [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
無事完結いたしました!

初めてのSSだったので、急転直下な展開が多くなってしまいましたが、楽しんでいただければ幸いです。

そして、>>1の作者のパープルフレイムさん。正直雰囲気を保つのが難しかったですが、豊富な設定のおかげで書ききれました!ありがとうございます!

 ▼ 19 リテヤマ@しんせんクリーム 20/04/24 10:54:54 ID:gq9YtOt. NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
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