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SS

【SS】マグマラシ「オレと俺の世界で」

 ▼ 1 1◆v1GnTfaqxg 21/02/10 20:11:39 ID:FTuU0JrI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





とある街の片隅……




夕焼けが照らす、街を割る大きな川沿いの真っ直ぐな一本道……



一匹のポケモンが歩いていた。



背負った大きなカバンを右に左に揺らしながら、その小さな身体をオレンジ色に染められている……



マグマラシ「あーあ、明日からテストか……だるいなー……学校行きたくねぇ」



そのだらしのない嘆きは、夕焼け空に吸い込まれて消えた。

そんな空には、マグマラシの辛さを嘲笑うかの様にぷかぷかと……呑気な雲達が浮かんでいた……

 ▼ 298 1◆v1GnTfaqxg 21/02/17 21:19:15 ID:D.Y2/S.. [1/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


歩き出す、ボサボサの黒い背中はのらりくらりとフラフラと……

だらんと下げた、事故で動かない左腕……


そして、右の指先でカッコをつけて挟むタバコも……



周りから見れば、ただの痛い背中かもしれなかったが、それでもマグマラシは良かった。




バクフーン「じゃあな。俺……ありがとな」


マグマラシ「おう。おっさん……いつか必ず、おっさんみたいになってみせるからな」



バクフーンは鼻で笑う……



バクフーン「バカ言うな。お前の為に俺も少しは努力して……まぁ……今よりもう少しだけマシになっとくっての」


マグマラシ「おう。期待してるからな!」



そんな返事に笑う……遠ざかるその背中は曲がり角を曲がった。


 ▼ 299 1◆v1GnTfaqxg 21/02/17 21:19:48 ID:D.Y2/S.. [2/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告










じゃ、またいつか……未来でな









 ▼ 300 1◆v1GnTfaqxg 21/02/17 21:20:24 ID:D.Y2/S.. [3/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



そう言い残す……曲がり角の向こうが強い光を放った。



マグマラシはその光から本当の別れを悟ると、微笑む……



マグマラシ「ありがとな。おっさん……俺の憧れの……へへっ」



カバンからチュッパチャプス(ストロベリークリーム)を取り出すと、それを咥えて歩き出した……


まるで、タバコでも吸っているかの様に……


あの背中を真似して歩き出す。



マグマラシ「そうだ。せめておっさんに一つだけ……俺からプレゼントだ」



何かを思い、マグマラシは夜の闇の中を駆け出した。


 ▼ 301 1◆v1GnTfaqxg 21/02/17 21:21:06 ID:D.Y2/S.. [4/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


同じ月の下……一匹のマグマラシが歩いていた。



マグマラシ「……」



真っ暗な闇の様に落ち込む暗い顔、他に誰もいない道をトボトボと……


小さな灯りの下、見上げれば綺麗な月が……まるで自分の事をバカにしている様に煌めいて……その心を掻き乱す。 



マグマラシ「なんだよ……くそっ!」



その怒りをぶつける様に、足元に転げていた石ころを蹴り飛ばした。


石ころはカラカラと音を立てて闇の中に吸い込まれ……た直後、カラカラと音を立てて足元に返ってきた。



マグマラシ「え?」

 ▼ 302 1◆v1GnTfaqxg 21/02/17 21:21:43 ID:D.Y2/S.. [5/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



思いもしなかった石ころの動きに驚き、顔を上げる……


灯りの向こう……闇の中にぼんやりと影が見えた。



自分と同じくらいの背丈の影がゆらりと動く……



マグマラシ「え、えっ? ……誰だ?」



焦りながらも言葉を捻り出す、その影は動じる事なく、闇の中から返事を飛ばしてきた。



「バカだな。親父と喧嘩なんかしやがって……」


 ▼ 303 1◆v1GnTfaqxg 21/02/17 21:22:20 ID:D.Y2/S.. [6/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


マグマラシ「!?」



何故自分の事を……驚き目を見開く……


闇の中の影はまた、続けた。



「今すぐ帰れ。親父は怒ってねぇからよ……」



マグマラシ「あ、あわわ……」


よくわからない……ただ、得体の知れない影に怯えて後ずさると、引き返して逃げだそうと……



その肩を「何者か」が掴んだ。



マグマラシ「ひっ!?」



「ただ、一つだけ約束しろ」



マグマラシ「なっ、なんだよぉ!!」

 ▼ 304 1◆v1GnTfaqxg 21/02/17 21:22:52 ID:D.Y2/S.. [7/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告










親父と……親父と仲良くしてやってくれ。









 ▼ 305 1◆v1GnTfaqxg 21/02/17 21:23:34 ID:D.Y2/S.. [8/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


マグマラシ「わ、わかったっての! 離せ!」


マグマラシは肩を掴む手を振り払うと、来た道を引き返し、闇の中に駆け出し消えた。


小さな灯りの下、ため息が響くと同時に……同じ姿、同じ顔が現れる。



マグマラシ「はぁ……俺、どんだけビビリなんだよ……」



あまりに臆病な自分……普段は隠しているが、それも自分の事だからこそわかる。


だから、こうして不気味な雰囲気で脅かした訳だ。


ブロロロロロ!!!


マグマラシ「!」

爆音に振り返れば、あの忌々しき暴走車が走り抜けていくのが見えた。


音が遠ざかる……それに安心して、マグマラシは歩きだした。


マグマラシ「おっさん。受け取れよ……腕が動くなら後は、未来は俺達の努力次第だ。もう言い訳は無しだぜ」


歩くマグマラシは腕に巻いた装置をいじる……


すぐにその身体は眩しい光を……そして……


小さな灯りの下……その姿は消えてなくなった。




風の音が響く街……


夜空には、皆を平等に照らす月が空高く輝く。


そんな月は小さな街の片隅……誰も知らないおかしな事件をただ、ひっそりと……



眺めていたのだった。


 ▼ 306 1◆v1GnTfaqxg 21/02/17 21:24:26 ID:D.Y2/S.. [9/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告






……




風が……気持ちいい。




…………





あれ?





 ▼ 307 1◆v1GnTfaqxg 21/02/17 21:25:12 ID:D.Y2/S.. [10/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


目を覚ます……その目に広がるのは青空……



マグマラシ「ん……? あれ、俺……」



見渡す……ここはいつも学校帰りに通る河川敷……

その土手の草原に寝転がっていたらしい。



マグマラシ「はぁ? なんで俺……」



頭をポリポリと……何も思い出せない。


まだ寝起きでボーッとしている頭を夏の日差しが照らす……



マグマラシ「ま、いいか……とりあえず帰ろ」



マグマラシは勢いをつけて体を起こすと、河川敷を歩き出した……




子ども達やウォーキングを楽しむ夫婦などで賑やかな河川敷……

マグマラシの寝転がっていた場所が太陽の光を浴びてキラリと輝いた。



陽の光を反射して輝いた腕時計の様なそれは……



光の粒になって、風に乗り……




空に消えた。


 ▼ 308 1◆v1GnTfaqxg 21/02/17 21:25:49 ID:D.Y2/S.. [11/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告









第八話 スタンドバイミー・バクフーン


続く。







 ▼ 309 1◆v1GnTfaqxg 21/02/17 21:26:29 ID:D.Y2/S.. [12/12] NGネーム登録 NGID登録 報告

第八話おわり。


明日で最終回な。

ここまできたら、どうか最後までお付き合いくださいな。


んじゃ、また明日。

 ▼ 310 ーラオス@メガラペルピン 21/02/17 21:31:19 ID:hmVcQFAU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>309
多分今までの反応的にほぼ100%誰も読んでないよ
 ▼ 311 レユータン@オッカのみ 21/02/17 21:57:41 ID:PWk2pdRo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
次回で最終回ですか......
終わってしまうと考えるとなかなか寂しいです
本作の時系列をまとめてみたのですがこれであってますかね?
 ▼ 312 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 00:07:57 ID:9NawPU9g NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>311
ほぼそれでオッケーす。
一部ネタバレ含むと思うんで、自分で書いたメモは明日最後に貼りますね。
 ▼ 313 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 20:48:51 ID:O4tAKzC. [1/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



そうして、俺の夏休みは終わった。



長い様で短い今年の夏は、なんだかいつもより暑くて辛くて……




でも




いつもより早く宿題を終わらせたから、沢山自由な時間があった。


だから、色んな場所に遊びに出かけたり、色んな事に挑戦できた。



……そんな、夏休みだったんだ。

 ▼ 314 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 20:49:24 ID:O4tAKzC. [2/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告










最終話 未来は俺らの手の中








 ▼ 315 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 20:49:55 ID:O4tAKzC. [3/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




太陽はギラギラと、まだまだ暑い……



でも、暦の上ではもう秋の始まりに片足踏み出している。



微かな秋を感じる風吹くあの街……あのアパート……






突然、怒鳴る様な大声が響いた。



 ▼ 316 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 20:50:25 ID:O4tAKzC. [4/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ガオガエン「がぁぁあああ!! 目覚ましかけ忘れてたぁぁぁあ!!」


布団から飛び起きたガオガエンのその声に、マグマラシは目を擦りながら……


マグマラシ「……るせぇなバカ親父」


ガオガエン「だぁぁあ! マグマラシ早く起きろ! もう8時すぎてるぞ!!」


マグマラシ「……で?」


ガオガエン「お前今日から学校だろ!!」



マグマラシはその返しを聞いて……1秒、2秒、3秒



マグマラシ「あああああああ!!!」


 ▼ 317 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 20:51:08 ID:O4tAKzC. [5/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


バタバタと部屋を駆け回る二匹……

完璧にやり終えた宿題をカバンに突っ込むと、ガオガエンが急いで焼いた「バターの塊のせ生焼けトースト」を咥えて玄関へ駆け出す……



ガオガエン「あ! 待てマグマラシ!」


マグマラシ「なんだよ!」



ムッとした顔で振り返る……ガオガエンはマグマラシの頭の寝癖を手櫛で直した。



ガオガエン「寝癖ぐらい直さないと、友達に笑われるぞ?」



ニッと笑うその顔……マグマラシは食パンを齧って少しごまかしながら……



マグマラシ「……あ、ありがとな」



目を逸らし、聞こえるか聞こえないかくらいの声で返した。


そんな素直じゃ無いマグマラシを見て、ガオガエンはガハハと笑っていた。

 ▼ 318 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 20:52:10 ID:O4tAKzC. [6/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

食パンを食べ終えて、今度こそ出発……しようとしたが……



マグマラシ「そうだ。親父……」


ガオガエン「ん? なんだ?」


マグマラシ「今日、仕事休みなんだよな……」


ガオガエン「ん? ああ……まぁ」



マグマラシは暫く黙っていたが……



マグマラシ「たまには病院行って定期検診くらい受けろよ……なんか最近調子悪そうだし」



ガオガエンは、マグマラシらしからぬ気遣いに少し驚いたが……


ガオガエン「なんだ、優しいじゃねぇか」


ニヤニヤと笑う……


その顔に、急に恥ずかしくなってマグマラシは玄関を飛び出した。



マグマラシ「ばっ、バーカ! 病気になって死んでもしらねぇからな!」



勢いよく玄関が閉まる……ガオガエンはポツリと呟いた。


ガオガエン「……そうだな。俺があいつの唯一の家族なんだから、長生きしてやらねぇと」



ガオガエンは禁煙時のタバコの代わりだと、マグマラシから貰っていたチュッパチャプス(ラムネ味)を咥えた。

 ▼ 319 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 20:52:48 ID:O4tAKzC. [7/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




夏休み、ちょっとしたきっかけがあって、何度か親父と出かけたんだ。


なんだか最近親父とは上手くいってなかったけど、休みの日に親父と一緒にいるうちに、なんで俺って親父にやたらと噛み付いてたのか……不意にバカみたいになったんだ。


親父って不器用だしバカで足が臭いけど、でも、一匹で俺を育ててくれた訳だし……なにより、俺の大事な家族だ。



だから……まだ、それ程上手くいってないけど、少しずつ仲良くできたらなって……




……




こんど、親父の誕生日にプレゼントを渡そうとしてるんだ。


限られた小遣いだから買えるものなんてしれてるけど……親父、喜んでくれるかな……


 ▼ 320 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 20:53:31 ID:O4tAKzC. [8/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



マグマラシ「はぁ……はぁ……」



いつもの夏休み前以来、久しぶりに走った通学路は何も変わらず……


ただ、沢山の学生が同じ方角へ歩いていく景色が懐かしかった。



マグマラシ「あぶねぇ……危うく遅刻だったけど、ここまで来ればとりあえず大丈夫だろ……」



胸を撫で下ろす……立ち止まった事で吹き出した汗を拭ったその時、マグマラシの小さな背中を誰かが叩いた。



「おっす! マグマラシ!」



調子の良い声に振り返ると、そこにクラスメートのヒコザルがいた。

夏休みの最中、何度も通ったゲームセンターでたまたま出会って意気投合した、マグマラシの最初の友達だ。

 ▼ 321 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 20:54:14 ID:O4tAKzC. [9/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


マグマラシ「おう、元気そうだな」


軽く手をあげて挨拶……なんだかヒコザルはモジモジと、なにやら後ろめたそうな顔をしていた。



マグマラシ「どうした?」


ヒコザル「その……ちょっと頼み事があるんだけど……聞いてくれるか?」


マグマラシ「なんだよ」


ヒコザル「それが……その……俺、国語と英語の宿題終わってないからさ……その」


マグマラシ「やだ。自分でやれよ」


ヒコザル「えぇえ! 酷くねぇか!? 友達だろ!? 友達を見捨てるのか!?」


マグマラシ「そんな風に楽ばかりしようとするから、テストで赤点取るんだよ」



呆れ顔のマグマラシにヒコザルは驚く……



ヒコザル「えー……お前も勉強あんまりできないだろ? 休み前のテストもそんなよくなかったんじゃなかったっけ?」


マグマラシはそんなヒコザルを見ながら自慢げに……



マグマラシ「じゃあ、次のテストで勝負するか?」


 ▼ 322 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 20:55:01 ID:O4tAKzC. [10/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ヒコザル「あ! なんだよお前! なんか秘策でもありそうな顔しやがって! まさかカンニングか!?」


マグマラシ「ばーか。そんなリスク背負わなくても、シンプルに勉強すればいいだろ?」


ヒコザル「えぇー……けど、勉強めんどくせぇじゃん」


マグマラシ「めんどくさいけどさ、こうして賭け事みたいにするとやる気出ないか? 例えば……次のテストの平均点で勝負して、負けた方が勝った方の言う事なんでも聞く……みたいな」



ヒコザルはそれを聞いてポカンとしていたが……



ヒコザル「いいじゃん! じゃ、俺が買ったら俺の冬休みの宿題、全部マグマラシにやってもらうからな!」


マグマラシ「へへっ、その勝負受けるぜ! けど、その前にお前は夏休みの宿題終わらせてからだろ!」


ヒコザル「だから! それはマグマラシも手伝ってくれよ!」


マグマラシ「やーだよ!」



マグマラシは駆け出す……



マグマラシ「じゃあこうするか! 学校にどっちが早くつけるか勝負して、俺に勝てたら手伝ってやるよ!」


ヒコザル「えええ! ちょっ! クラスで一番走るの早いおまえに俺が勝てる訳ねぇだろ!!」



二匹は通学路、他の学生を避けて駆け出した。


まだまだ熱いアスファルトの上を跳ねる様に駆けぬける二匹……

遠くから、1ヶ月と少しぶりのチャイムが聞こえる。



二匹は笑い合いながら、その音の元へ……



面倒で騒がしくて……そして、楽しい学校へと向かった。


 ▼ 323 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 20:55:38 ID:O4tAKzC. [11/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




なんでか知らないけど、この夏休みは俺を大きく変えた気がした。



嫌々だけど自力で宿題やってるうちに、前より勉強が少しはわかる様になったし……親父とも、前より関係はマシになった……

こうして、おかしな奴だけど気の会う友達もできた。



……



まだ、素直にそんな事言える気は全然無いけど、誰にも聞かれない心の中でなら言える。


俺は、これからの学校での生活も、親父との毎日も……




すげー楽しみなんだ。



 ▼ 324 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 20:56:39 ID:O4tAKzC. [12/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


そうして、騒がしい学校での一日が終わった。



夕日の照らす河川敷沿いの道……

秋を告げる涼しい風がそよぐ中、ヒコザルがため息をついた。



ヒコザル「はぁ……また学校始まったんだよなぁ……明日から秋休みとかならねぇかなぁ……」


マグマラシ「……」



そんなバカな妄想に呆れて物も言えずにいると、ヒコザルは夕焼け空に呟いた。



ヒコザル「それにしても、夏休みの間にベイリーフちゃんが引っ越すなんてマジでありえねぇ……俺、ベイリーフちゃんの事好きだったのによぉ……」



マグマラシはチラと、その横顔を見ながら返す。



マグマラシ「俺も好きだったから、悲しいのはわかるっての」


ヒコザル「なーんだ、お前もベイリーフちゃん狙いだったのかよ! ……それにしちゃあ、それ程悲しがってないな」



マグマラシは頬をぽりぽりとかきながら、不思議そうに呟いた。



マグマラシ「なんでだろ、ベイリーフちゃんの引越しなんて、知らない筈なのに……なんか、知ってた気がするんだ」

 ▼ 325 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 20:57:24 ID:O4tAKzC. [13/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ヒコザル「はぁ? 知ってた? んな訳無いだろ! 仲良かった奴でも知らなかったらしいのに、お前が知ってる訳無いって!」


マグマラシはそう言われて少しムッとした。


マグマラシ「俺も知らないけど、知ってる気がするんだって……それに、こんな事言うと変だけど、なんて言うか……うん。俺、お前ともずっと前から仲良くしてた気がするんだよ」




二匹の間に、少し肌寒い秋風が吹き抜ける……




やがて、ヒコザルはプッと吹き出した。


ヒコザル「なんだそれ! そんな訳無いだろ!」
 

マグマラシは、やっぱり……と、頭をかいた。


 ▼ 326 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 20:58:11 ID:O4tAKzC. [14/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ヒコザル「けどさ……俺、お前のそう言う変なとこ好きだな! お前、なんか変だから一緒にいて退屈しないし!」



褒められているような、馬鹿にされたような……


どう反応すべきか悩んでいると、ヒコザルが急に走り出した。



ヒコザル「俺家こっちだから! じゃあな!」



走り出した……遠くなるその背中を見ると、寂しさがすぐに……

そんな気持ちを止められず、その背を呼び止めた。



マグマラシ「おい!」


ヒコザル「ん? どうした?」



見つめられるのにはまだ慣れてない。恥ずかしかったが……少しだけ勇気を振り絞った。



マグマラシ「明日もちゃんと学校来てくれよ! お前がいないと俺……他に遊ぶ相手いないからよ……」


 ▼ 327 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 20:58:48 ID:O4tAKzC. [15/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



すぐにヒコザルは吹き出した。



ヒコザル「そりゃ、休みはしないっての! 休んだら俺、かーちゃんに殺されるから!」



そんなヒコザルの答えにマグマラシも笑う。



マグマラシ「じゃあな! ヒコザル!」


ヒコザル「おう! また明日な!」




夕日に照らされ伸びる影、二つの大きな影が手を振って遠ざかった。

 ▼ 328 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 20:59:38 ID:O4tAKzC. [16/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



遠くの山の向こうの空は、もう夜の準備をしている。


それに気づいたマグマラシは、やや早足で歩き出した。



マグマラシ「やべ、また親父に小言言われちまう……」



門限破った時にいつも言われる小言を思い出してうんざり……そして、その気持ちを忘れるためにカバンに手を突っ込んで取り出したのは……チュッパチャプス(コーラ味)だった。


袋を剥いで口に突っ込む……まるでタバコを吸う真似事の様に……




……?




そう言えば、この真似はいつから始めたんだろうか?


タバコの真似ならガオガエンかと思ったが、よくよく考えると、ガオガエンの癖のあるタバコの持ち方とはやや違う。



なら、これは……



マグマラシ「!」




脳裏に浮かんだのは、ガオガエンに似た大きな背中……




マグマラシは忘れていた「あの背中」を思い出した。


 ▼ 329 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 21:00:22 ID:O4tAKzC. [17/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


思い出した。思い出してしまった。



あれだけ、もう全て忘れると言われていたのに……思い出してしまったと……

なんだかそれがおかしくて……たった一本のチュッパチャプスから、こんな小さな奇跡を起こしてしまった事が面白くて、一匹で笑ってしまった。



マグマラシ「おっさん、おっさんの未来は……どうなってんだ?」



きっと、十数年後も変わらない夕焼け空に問いかける。


……


いや、自分の事だ。聞かなくたってわかる。


だって、腕も動くんだ。


それに、あの前向きな背中なら……



そして、あんな背中になれる様……自慢できる背中になれる様……もっと頑張らなくてはと、改めて誓う。



例え、誰かに「痛い奴」と言われても構わない。


誰が何と言おうと「あの背中」になるのがマグマラシの夢になっていたから。



マグマラシ「おっさん……待ってろよ。いつか俺も、おっさんみたいに……」


 ▼ 330 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 21:00:58 ID:O4tAKzC. [18/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





いや




おっさんより、もっと大きい背中になってやるからな。




だから……




……





またいつか……未来でな。






 ▼ 331 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 21:01:49 ID:O4tAKzC. [19/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

呟いたその背中はまだまだ小さく……でも


とても、大きな夢を持っていた。



マグマラシ「へへっ!」





あの背中に負けない様に笑ってみると、少しだけ近づけた……そんな気がした。





……直後、突然近くの踏切が鳴り響いて、そのうるささに我に帰る。



ついで現れた特急は突風を巻き起こし、マグマラシなりにセットしていた頭をボサボサにして去っていった。


マグマラシは暫くポカンとしていたが……やがて、ボサボサにされた頭を触って確認すると……



マグマラシ「……ちくしょお! なんだあの電車! ふっざけんな!!」



ボサボサにされて突然スイッチが入り、一匹でキレ散らかす。


さっきまでの彼は、どこへやら……


 ▼ 332 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 21:02:32 ID:O4tAKzC. [20/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




そう。



ちょっとした事で夢を見て、ちょっとした事で、その夢を全力で追いかける。



そして、ちょっとした事で……




それが、マグマラシと言う存在。



中二病真っ盛りで……そう。悩みの多い……





そんな、お年頃。





おしまい。



 ▼ 333 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 21:04:53 ID:O4tAKzC. [21/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

って訳で終わり。

全体通してテーマは「悩み」と「成長」やな。

これ書き終わったし、俺も成長する為に一歩踏み出してみようかと。

……ま、とりあえず、読んでくれた方は乙乙&サンクスや!


じゃ、またいつか、気が向いたら。


(バクフーンの未来、バクフーンのその後は読み手側に任せる結末で書いていたので具体的な答えはありません。自分なりの初期設定やらなんやら↓)
 ▼ 334 ゲキ@ダイキノコ 21/02/18 21:50:11 ID:y1xocVyE [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やっぱりあなた様の書く小説は何回読んでも面白いし新しい気づきがあって好きです......

完走お疲れさまでした。
 ▼ 335 ガサメハダー@タポルのみ 21/02/18 22:40:45 ID:y1xocVyE [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
読み直して気づいたのですが

"マグマラシ「あの日の俺はまだまだガキで……いや」"

この科白(253レス目)の後はマグマラシの一人称が「オレ」から「俺」になっているのですね......
こういうネタたまらないほど好きです。
 ▼ 336 バゴ@まひなおしのみ 21/02/18 22:41:32 ID:yDocMeGA NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
乙 面白かった
 ▼ 337 1◆v1GnTfaqxg 21/02/18 22:52:47 ID:O4tAKzC. [22/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>335
SSのタイトル回収を理由に、一人称をマグマラシが覚醒するタイミングでひっそり自己満で変えてましたが、バレたんすね。
これは最終話でマグマラシが記憶を失っていない証明の一つにもなります。

結局今回も急ぎで仕上げたとこもあるんで完璧とはいきませんでしたが喜んでもらえて嬉しいっす。
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