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【旅SS】女「コータス達とぶらり旅」

 ▼ 1 ャラサブレイーター 15/08/17 09:42:50 ID:4EBE4AI. NGネーム登録 NGID登録 報告
コータスを中心とするポケモン達と一緒に、のんびり旅を続ける少女の物語。

名産品を味わったり、イベントに参加したり。時々バトルしたり。

展開と更新はゆるめです。



女「よし行くぞぉ」

コータス「OK,Let's go.」

女「」クルッ

コータス「こぉ?」


この町(街、村)行けば?という提案にのっかるかも。
 ▼ 861 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/04 15:03:21 ID:hlqCsSbg [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(でもくらくらする……後で病院行った方が良いな)

シザリガー「ざりっ」

女「シザリガー」

女(みんない……ない?)

コータス「ムッ君には人を呼びに行ってもらったよ」

コータス「他の子はボールから出してない」

女「そっか」

女「………」

コータス「どうしたの?」

女「」ギュッ

コータス「むぐ」

シザリガー「ぐぇ」

コータス「どうしたの?頭大丈夫?」

女「うん、大丈夫。安心しただけ」

シザリガー「泣いとらん?」
 ▼ 862 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/04 15:04:07 ID:hlqCsSbg [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「泣いとらんし」ズビッ

女(生きてる)

女(良かった。生きてて、本当に良かった)

コータス「変なの」

女「?」

女(そういえばあの火……どうして、コータスにもらったって思ったんだろう)

女「一体、あれは……」

「逃がさないよ」


───いつの間にか、いた。

真正面に、そいつは。


シャンデラ「」キラーン


女「オレンジのシャンデラ……!」

女(そうだ、こいつは、最初からそのままの姿で私の前に現れていた)
 ▼ 863 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/04 15:05:27 ID:hlqCsSbg [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(なのに、私はそれを認知できなかった)

女「やっぱり、こいつは変だ」

コータス「あいつのこと、何か知ってるの?」

女「気絶してるときに会った」

女「私のこと食べたいんだってさ」

コータス「それは……引くねぇ」

シャンデラ「へぇ。そいつも特別なんだぁ」

シャンデラ「どんな味がするのかなぁ」

女(図鑑!)

図鑑『シャンデラ。いざないポケモン。妖しげな炎で燃やされた魂は行き場をなくし、この世を永遠にさまよう。』

女「」ゴクッ

女「コータス、気を付けて」

コータス「わかってる」

シャンデラ「気を付けてどうにかなるような僕じゃないんだよねぇ!」ニタァ
 ▼ 864 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/04 15:07:00 ID:hlqCsSbg [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───言い終えるや否や、シャンデラは炎をコータスに向けて放った。

当然効果はいまひとつ、のはずが。


コータス「いでででででで!!!」

こうかはばつぐんだ!

女「え!?」


───炎に包まれ、苦痛にもがくコータス。

それを見つめて、シャンデラは愉快でたまらない、とばかりにケタケタ笑っている。


シャンデラ「なぁーんだ!よわっちーの!」

女「コータス!戻って!」カチッカチッ

女「コータスを戻すことが出来ない!?」ハッ

女「かげふみッ!」

シャンデラ「言っただろう。逃がさないって」ニィイイ

シャンデラ「だぁれも逃がさないからねぇ」
 ▼ 865 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/04 15:08:22 ID:hlqCsSbg [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「シザリガー!アクアジェット!」

シザリガー「任されい」バシュゥ


───戻せないなら戻さない。

戻さずに、次の戦力を投入。

その判断への切り換えはよかったが。


女「はたきおとす!」

シザリガー「シィザァッ!!」ブンッ


───アクアジェットで接近し、シャンデラをぶっ叩くために振るわれたハサミはしかし。

空を切るようにシャンデラを通り抜けただけだった。


シャンデラ「何も持ってないけど?」ニヤニヤ

女(そういう効果じゃないんだけど!)

女「クラブハンマー!」
 ▼ 866 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/04 15:09:06 ID:hlqCsSbg [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───透かされたハサミに水をまとわせ、再び殴りかかる、が。


シャンデラ「燃えちゃえ」


───火柱が上がり、シザリガーがふっとばされた。

黒焦げになって転がる彼をしかし。


女「やっぱり戻せないッ」カチッカチッ

女「なんでこう、ほのおタイプに水タイプで勝てないかなぁ!」


───巡り合わせに毒づきながら、ドリュウズ、オノノクス、ラプラスを一斉に繰り出す。

どっち道かげふみで逃げられないのだ。

背水の陣。


シャンデラ「みぃんな、おいしそう」

女「オノノクスとドリュウズは前に出て!ラプラスはコータスにまとわりついてる火をなんとかして!」

女「ちょっとくらい水かけても良いから!シザリガーにも!」
 ▼ 867 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/04 15:10:27 ID:hlqCsSbg [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───通常のバトルではないのだ。

なりふりかまっていられない。

オノノクスとドリュウズが左右に広がり、シャンデラに迫っていく。


シャンデラ「燃えにくそうなのとよく燃えそうなの、かぁ」

シャンデラ「どっちも燃やせるけどね」


───続けざまに炎弾を放つが、オノノクスはそれを手刀で振り払い、ドリュウズは床に穴を空け、潜って身を隠すことでかわした。


シャンデラ「燃えにくそうなのはパワフル」

シャンデラ「燃えやすそうなのは地面でもないのによく潜るねぇ」

シャンデラ「魂胆丸見えだけど」


───背後の床から飛び出したドリュウズに、難なくはじけるほのおを浴びせて、振り向き様、チョップを振り落とそうとしていたオノノクスを幅広の炎で、焼く。


シャンデラ「2対1は初めてだけど、なんだ簡単じゃん!」

シャンデラ「弱い弱い!よく燃える!」
 ▼ 868 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/04 15:11:22 ID:hlqCsSbg [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シャンデラ「ぼくってやっぱさいきょうのポケモンだなぁ!!」

シャンデラ「ばんごはんはどうしよっかぁ!うけけけけけけけ!!」

シャンデラ「うけけけけけっ」


ぱきんっ!!


───澄んだ快音が響き、耳障りな笑い声がピタリと止んだ。

直後、急速に廊下の温度が下がっていき、この現状を招く指示をした本人も、寒さで身を震わせた。


女「寒っ」

女「ラプラス、グッジョブ」

ラプラス「らぁぷらす」ゼェ


───シャンデラのいた場所には、わずかに原型がそれとわかるような氷塊がたたずんでいた。

そしてそれは、ピクリとも動くそぶりを見せない。

いちげきひっさつ!
 ▼ 869 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/04 15:12:59 ID:hlqCsSbg [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「セルシウス温度−273.15 ℃───ぜったいれいどの、氷の彫像か」

女「一撃必殺技で強引にノックアウトすれば、なんとかなるかと思ったけど、うまくいってよかった」

女「みんなをボールに戻さなきゃ」ガクガク

ムクホーク「ケーーン!」バサバサッ

山男「寒っ!なんだここは」

女(ムクホークが人を連れてきてくれたのか)

女「ありがとう」ホッ

ムクホーク「ぴぴっぴぴぴぴぴるぴぴぴぃぴぃぴぃぴぃ!!!」バサバサバサバサッ

女「大丈夫、大丈夫だよ!たんこぶだけだから!」

山男「洋館に入ったら、迷ってしまって。ようやっとここまで来れた次第なんだが」

山男「こいつは、どういうことなんだい?」


───こいつ、とは恐らく。

シャンデラの氷像だけでなく、弾けた氷があちらこちらに張り付き、穴やら焼け跡やらでめちゃくちゃになっている、この廊下のことを指しているのだろう。


女「あのシャンデラに襲われて………応戦していたら、こんな風になってしまって」
 ▼ 870 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/04 15:14:48 ID:hlqCsSbg [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
山男「あれが噂の火元ってわけだな。お手柄じゃないか。よし、ジュンサーさんを呼ぼう」

女「ありがとうございます」

山男「君、顔色悪いぞ。救急車を先に呼ぶよ」

女「……すみません」



───彼女とポケモン達は救急車でポケモンセンターに運ばれ、一通りの検査と治療の後、事情聴取を受けた。

今回の一件は、どうやら刑事事件に発展したようであった。

どうしてそんな大事になったのかというと、洋館にやってきたジュンサーやおまわりさんの捜索で、とんでもないものが見つかったからだそうだ。

聴取をしたジュンサーさんは端的にしか教えてくれなかったが、そのおぞましい光景は想像に難くなかった。

ある部屋に、人間とポケモンとの種類を問わず、老若を問わず、雌雄を問わず、無差別に見境なしに集められたとおぼしき焼死体の山があったそうだ。

奇妙なことに、焼死体の欠損具合から、それらは館内で燃やされたものであるはずなのだが、館内にはこれほどの火が発生したとおぼしき場所はなかったのだという。

くしくもその部屋は、※※※※※達がシャンデラと戦った廊下の突き当たり。

夢の中で彼女が、シャンデラにいざなわれて通った扉の部屋だった。


 ▼ 871 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/04 15:16:03 ID:hlqCsSbg [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「シャンデラの特性って……もらいびとほのおのからだ。ごく稀にいるのがすりぬけだそうです」

女「かげふみのシャンデラは存在しないんだって」

女「───私達が会ったのは、本当にポケモンだったのかな」



おまわりさん「おかしいな。さっきまでここにあったはずなんだが」

ジュンサー「旅のトレーナーさんが凍らせたっていう?」

おまわりさん「今回の事件に関わっている重要なポケモンだ。何より危険だからな。身柄を確保しておかないと」

おまわりさん「ついさっきまでここにあったはずなんだ。あの厚い氷がもう解けたなんて考えにくいが……」


「うけけっ」
 ▼ 872 クノシタ@メタグロスナイト 16/05/04 15:54:06 ID:U8LxZEYA [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こわっ
 ▼ 873 ブカス@まがったスプーン 16/05/04 16:05:55 ID:7qvjWoM. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゲスマイルさんかと思ったけど違った(´・ω・`)
 ▼ 874 ルマッカ@ダークボール 16/05/04 18:47:56 ID:y3uFyfWk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
幻となったかげふみシャンデラ・・・
 ▼ 875 リヤード@ハガネールナイト 16/05/04 22:45:00 ID:U8LxZEYA [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゲスマイルさんはこんな極悪じゃないよね・・・?
 ▼ 876 ンバーン@げんきのかけら 16/05/11 18:14:54 ID:djjpjNyQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あげ
 ▼ 877 ャローダ@こだわりメガネ 16/05/19 00:15:40 ID:3RtQa4hE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
待ってます。支援です
 ▼ 878 トライク@ラムのみ 16/05/25 13:35:51 ID:6Ixsr9/I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 879 ブンネ@ネットボール 16/05/25 13:54:56 ID:bIf.uq1U NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
支援
 ▼ 880 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:12:50 ID:95yqQlRI [1/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
保守ありがとうございます

更新します
 ▼ 881 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:13:57 ID:95yqQlRI [2/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ぐうえっへっへっへ!ジュースィな子どもはっけーん!今日はてめぇらを食材に、シチューを作ってやるぜぇえー!」

「「「ギィェアアアアアキモイィイイイイイイ」」」

「そこまでだ!マスクド仮面!」

マスクド仮面「き、貴様は!」

?「緑の鎧と、強靭な糸のごとき精神で悪を討つ!」

トランスマン「中間進化ヒーロー、トランスマン!」バシィイイイ

トランセル「イヤン、イヤンセル!」ヒョコッ

「「「でたートランスマーン!」」」ヒューヒュー

女「」アゼン


───とある街の一角にある公園。

併設されている保育園の園児達が遊び回っている、昼過ぎ。


女(用事のある時間まで暇だったので、ここでアイスかじって時間を潰していたら)

女(すぅっと現れた小太りのお兄さんが、「ヒーローショー・怪人マスクド仮面vsトランスマン」とか書かれた看板を、しれっと設置し)

女「ヒーローショーの始まり始まり〜……と相成りました」
 ▼ 882 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:15:15 ID:95yqQlRI [3/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
女「フラッシュモブってやつかな?」


マスクド仮面「行けぇい我が手下たちよ!」

ドッコラー「らっせ!」

ガバイト「キシャアァ」

ホーホー「……」クワッ



ホーホー「」ガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチ……

女「表情が怖い」タジッ


トランスマン「行くぞ相棒!いとをはく!!」

トランセル「オルウエェェェェ」ブシュー

ホーホー「」ビクッビクビクビクッ

トランスマン「とぉおう!」

園児「「いっけートランスマーン!マスクド仮面なんかやっつけちゃえー!!」」

ドリュウズ「」クギヅケ
 ▼ 883 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:16:26 ID:95yqQlRI [4/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
女(さっきまで子ども達がドリュウズとじゃれあったりしてたのに、すっかりあっちに取られちゃった)

女(ドリュウズも楽しそうに見てるし……有名なご当地ヒーローなのかな)

女「」グーグルセンセーオシエテチョ

Go○gle『そんなヒーロー知らん』

女「」

女「……ドマイナー?」


マスクド仮面「ぐわぁあーやられたぁー!」イトグルグール

トランスマン「低い知名度にも屈しない!地道な努力家……トランスマッ!!」

園児「「「キャーキャーキャー」」」

女(やっべ聞こえてた)

トランスマン「マスクド仮面!これにこりたら、もう悪さをするんじゃないぞ!」

マスクド仮面「ひぃーん、ごめんなさいぃ」

トランスマン「反省したな!では心を入れ換えたお前は、今日から友達だ」

トランスマン「こどもたち!誰かが悪いことをしても、反省すれば許して、仲直りが出来るんだ!」
 ▼ 884 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:17:15 ID:95yqQlRI [5/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
トランスマン「だからみんなも、悪いことをしたり、失敗をして誰かを困らせてしまったとき、ちゃんと謝るんだぞ!」

トランスマン「お父さんやお母さん、先生や友達は君たちの正しい心をわかって、きっと許してくれる!」

女「!」

トランスマン「マスクド仮面!これからは、正しい心をもって、一緒に頑張ろう!」

トランスマン「さぁそうとなったらレッツゴー」テキパキテキパキ

マスクド仮面「あぁ!」オカタヅケピューン


───和解した、という体で、素早く片付けをしたトランスマンとマスクド仮面は、手際よく撤収していった。


園児「トランスマン、またねー!」

園児「マスクドかめん!わるいことすんなよー!」

女「……嵐かよ」

女(ショーの内容がただの勧善懲悪じゃなくて、許す心を持とうっていう教訓を孕んでた)

女(珍しい作りだなぁ)


 ▼ 885 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:18:13 ID:95yqQlRI [6/38] NGネーム登録 NGID登録 報告

───移動中。


女「あれっ」

女(トランスマンだ)


───ヒーローショーの時の格好のままで、彼は地下鉄の出口から姿を現した。

その腕には、ベビーカーが抱えられている。


女「?」


───そっとベビーカーを地面に下ろし、脇にいた女性と二言三言話して、彼は足早に去っていった。

女性は、ベビーカーを押して、その場を離れていく。


女「あ、階段だから運んであげたのか」

女(変わった人だな……)


 ▼ 886 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:19:20 ID:95yqQlRI [7/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
───用事(限定スイーツの整理券の受け取り)が済んだ彼女は、ポケモンセンターに戻る道を歩いていた。


女「……えっ」


───そこで目にしたのは、またしても、ヒーロースーツ着っぱなしの、あのトランセル男の姿だった。

今度は、自分と同じ方向───つまりはポケモンセンターに向かっているようであった。

何かを抱えて、必死な様子で駆けていく。


女「……まさか」



ジョーイ「デデンネの容態は安定しました。もう、峠は越しましたよ」

トランスマン「そうですか、それはよかった」ホッ

「トランスマーン!」


───駆け込んできたのは、10歳にもなっていないくらいの女の子だった。


少女「デデンネは!?デデンネはどうなったの!?」
 ▼ 887 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:20:17 ID:95yqQlRI [8/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
ジョーイ「もう大丈夫ですよ。あと数時間もすれば、すっかり回復するはずです」

少女「よかったぁ……」

トランスマン「君もここまで走ってきて疲れたろう。ベンチで休みな」

少女「で、でも……」

トランスマン「」テクテク


───トランスマンは自販機にお金を投入すると、ミックスオレを購入した。


トランスマン「ここで待つのも良いが、デデンネが快復した頃には、もう夜だ。ご両親が心配する」

トランスマン「これを飲んで休憩したら、いったん帰りな。デデンネは、ジョーイさんがしっかり見てくれる」

少女「本当?」

トランスマン「もちろんさ。そうでしょ?」

ジョーイ「はい。任せてくださいね」


───ジョーイの笑顔には、少し呆れの感情が混じっていた。


少女「……わかった」ストン
 ▼ 888 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:21:08 ID:95yqQlRI [9/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
トランスマン「よろしい」コクン

トランスマン「では、私はここで!」


───ポケモンセンターから駆け出していくトランスマン───に見つからないよう、ボールを投げた。


女「ムクホーク、あの人をちょっと追いかけてきて」

ムクホーク「ぴぃ」バサッ


───トランスマンとムクホークを見送りながら、ひとりごちる。


女「まさか、ね……」






 ▼ 889 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:22:09 ID:95yqQlRI [10/38] NGネーム登録 NGID登録 報告


───数時間後。

ムクホークは、苦虫を噛み潰したような顔で戻ってきた。

雨が降り出していたため濡れていた彼を、バスタオルでくるんでから、コータスに出てきてもらった。

ムクホークの話を聞くため、である。


ムクホーク「気付かれて巻かれた」

女「えっ」フキフキ

ムクホーク「あいつ、結構追われ馴れてんな」

女「でも、時間的にはそこそこ追いかけられたんでしょ?」モフモフ

ムクホーク「ああ。気付かれるまで、色々やってたぜ」

女「色々」ドライヤーブワァー

ムクホーク「交通事故が起きかけたんだけどよ」ムカイカゼブオォ

女「起き"かけた"?」

ムクホーク「ババァが車に轢かれそうになったんだが、さらっと助け出した」
 ▼ 890 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:23:09 ID:95yqQlRI [11/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
ムクホーク「そんで、車の運転手が慌てちまって道路脇に突っ込みそうになったのを、トランセルの糸で止めやがった」

ムクホーク「機転利かせたってより、車の自爆も想定して立ち回ってる感じだったな」

女「他には?」

ムクホーク「買い物袋の中身ぶちまけたリーマンの手伝いしたな。野菜とかパパッと拾ってよ、自分の懐から新しい袋出して、ひとまとめにしてから返してたよ」

女「……他には?」

ムクホーク「ポイ捨てされてるタバコの吸い殻をこまめに拾ってたぜ」

女「…………他には?」

ムクホーク「倒れてる酔っ払いを介抱してた」

女「………………他には」

ムクホーク「路地裏で喧嘩してるやつらの仲裁」

女「………」

ムクホーク「ティッシュ配りのバイトから大量にティッシュもらってた。ビラ配りのバイトからも、必要以上に」

女「」

ムクホーク「街頭募金に万札突っ込んで」エーット

ムクホーク「大通りの横断歩道を渡ろうとするガキを誘導して」
 ▼ 891 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:24:31 ID:95yqQlRI [12/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
ムクホーク「ゲーセンでカップルの代わりにクレーンゲームで景品取って」

ムクホーク「女の子に声かけた怪しい女に説教してたな。ここは繁華街じゃない、とかなんとか」

ムクホーク「傘泥棒をいさめてたぜ。「自分が盗まれたからって他人のを盗っていいなんて道理はない」ってよ」

ムクホーク「「あなたの傘を取り戻してきますから、どんなデザインか教えてください」っつって、走り出して……」

ムクホーク「その途中で気付かれた」

女「いやいや、もう十二分だよ。ありがと」ゴハンタベテ

ムクホーク「ぴぴるぴ」イタダキマス


女「まさかとは思ったけど……」

女「事故を未然に防いだり、喧嘩仲裁したり、傘泥棒を制止したりとか、超正義の味方っぽいことしてる……」

女「てか、拾い物のお手伝いに、声かけの注意に、酔っ払いの介抱、ゴミ拾い、道路横断の誘導って」

女「コスプレした雑用係じゃん!!」

コータス「世の中、変なのがいるもんだねぇ」フワァー

女「……今も」


───外は雨が降り続いている。
 ▼ 892 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:25:19 ID:95yqQlRI [13/38] NGネーム登録 NGID登録 報告



女「困ってる人を助けてるのかな」
 ▼ 893 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:26:05 ID:95yqQlRI [14/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
───翌日。

整理券をもらったスイーツの店にやって来た。


女(当日並ぶ人の列と、昨日の整理券を持ってる人の列がある)

女(整理券+αで用意してるのかな)

女(整理券組からパパパッと捌いて、当日分を順番にって感じだから、割と早めに買えそうだな)


───その推測通り、開店してから人の波はスムーズに進み、30分足らずで、限定スイーツの詰め合わせを購入することができた。

店側───ピッピ屋という───もだいぶ進行に馴れていると見える。


女「"品質が落ち、味が劣化してしまう恐れがありますので、購入した当日中にお召し上がりください"、か」

女(ポケセンに戻ったら、みんなと食べよう)ルンルン

「待ってください」

女「?」クルッ


───その声は自分に向けられたものではない、とわかったが、思わず振り向く。

見れば、当日列の方で、青年が中年の男性を呼び止めていた。
 ▼ 894 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:27:05 ID:95yqQlRI [15/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
青年は列の外にいて、詰め合わせの箱を手にしている。

彼は整理券組の人のようだ。


青年「今、割り込みましたよね」

男性「な、何言ってんだ!失礼だぞ君」

青年「大声で怒鳴っても無駄です。僕は見ていました」

青年「この人や周りの人が何も言わないからって、当然のことみたいに、あなたは割り込みをした」

青年「そうやって威嚇すれば誰も彼もが怖じ気づくと思ったら大間違いです」

青年「いい大人が、ガキ大将のような真似をしないでください!」

男性「な、なんだと……!」ガシッ

男性「お前、何様のつもりd」

おばちゃん「そうよあんた、元の場所に戻りなさいよ!」

ギャル「場所返せー!」


───青年の態度につられて、周囲の人々も声を上げ始めた。

"一人目"がいるだけで、人の行動とはガラッと変わるものである。
 ▼ 895 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:28:11 ID:95yqQlRI [16/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
元の場所に戻れ、と次第に人々の声が大きくなっていき、男性もさすがに気圧されはじめた頃、誰かが言った。


「割り込み野郎は出てけ!」


───その声に続くように、皆、声を荒げ始める。


「そうだそうだ、お前なんか列に並ぶ資格はない!」

「出ていけ!」

女「!」


───凍りついた。

正しい行いが、集団心理によって、正当化された迫害に変わった瞬間を見た気がして。

男性の表情も、脅えに変わった。

出ていけ、出ていけ、と、人々が口にする。

たかが甘味のせいで、こんなおぞましい光景が生まれるなんて、誰が予想したろうか。


女(人って、残酷だ)
 ▼ 896 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:29:34 ID:95yqQlRI [17/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
───そんな場面を見ていられなくなった彼女は、足早に去ろうとした。

と。


青年「み、皆さん何言ってるんですか!この人だって 30分は並んでるんですよ!買う権利はあるに決まってるでしょう!」

女「え」

青年「へっ、へくしっ!」

青年「……それに、ちょっと出来心で割り込んだだけじゃないですか!元の場所に戻って、この話はおしまい!」

青年「そうでしょう!?」


───男性を糾弾する声が止んだ。


「そ、そうだな……熱くなりすぎたぜ」

「おっさん、早く謝ってこの場をいさめろよー」

「割り込みは害悪だろ。さっさと出てけよ」

「んな当たり強いこと言うなよ」
 ▼ 897 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:31:37 ID:95yqQlRI [18/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
男性「」

男性「〜……ッ」プルプル

男性「やってられっか!クソッ!」ダッ

青年「あ、ちょっと!……へくしっ!」

青年「謝るくらいしてください!」


───脇目もふらず、男性は走り去っていった。


女「」ポカン

青年「ああ、連れ戻さなきゃ……あっ」

青年「やばい、時間……へくしっ!」

おばちゃん「いいよ、お兄さん。あんなやつ、ほっときな」

ギャル「自業自得だって」

青年「でも、あぁっ……けど……ううむ…………すみませんっ!」ペコ


───男性はすっかり見えなくなってしまい、青年は結局、男性を追わずに別の方向へ走り去っていった。
 ▼ 898 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:32:21 ID:95yqQlRI [19/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
残された人々の間には、「何で君が謝るのさ」という疑問の空気が漂っていた。


女「……」


 ▼ 899 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:33:32 ID:95yqQlRI [20/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
女「」カジッ

女「」モグモグモグ

女「おいし」

女(……あの人、なんだろう)

女(何て言えばいいのか……)

女(悪い人、を作り出さないようにしていた……のかな)


───そう考えたところで、頭の中で何かが繋がった。

だが、それを説明する理由は、もう少し考える必要がありそうだ。


女「……その前に、ちょっとお手洗い」



───トイレは、一度ロビーに出ないとたどり着けないようになっている。

ちら、となんとなしに受付を見てみると、ジョーイさんの姿がない。

昼休憩をしているのだろう。

ベルが置かれているので、有事の際にはそれで呼び出せばいい。
 ▼ 900 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:34:29 ID:95yqQlRI [21/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
視線をそのまま泳がせると、「staff room」とかかれた引き戸で止まった。

小窓から、ジョーイさんが食事しているのが思いっきり見えている。


女(休憩中のとこ見られるの、あんまり気にしない人なのかな)

女(のんびりとお菓子食べて、お茶を啜ってら……)

女「?」

女「……あれは」



女「」コンコン

「はーい」

がらっ。

ジョーイ「あら?ご用でしたら、ベルを押していただければよかったのに」

女「すみません。ものすごく私的なことを伺いたかったので、休憩中の方がいいかなって」

ジョーイ「私的なご用に、せっかくの休憩を邪魔されちゃうのね」フンス

女「はい。かなり図々しい話で恐縮なんですが」
 ▼ 901 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:35:32 ID:95yqQlRI [22/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
女「トランスマンについて、ちょっと教えてほしいなって」

ジョーイ「……あなた、マスコミの回し者?」

女「いえ、ただの知りたがりです。今日中には、この街を立つつもりですし」

ジョーイ「……残念だけど、わたしはトランスマンについて、人並み程度にしか知らないわ」

ジョーイ「珍妙な格好でヒーローショーと人助けする人ってことくらいしか、ね」

女「でも、中の人とはお知り合いなんじゃないですか?」

ジョーイ「?」

女「昨日、デデンネを連れてきたときにちょっとやり取りしたのを見てたんですけど、様子がなんだか親しげに見えて」

ジョーイ「よく来るのよ。どこからか、衰弱してるポケモンを見つけてきて、「このポケモンをお願いします」って」

ジョーイ「いい加減慣れちゃった」

女(あくまでシラをきるつもりか……そうだろうな)

女(マスコミの人、って聞いたとき、警戒心剥き出しだったし)

女「……ジョーイさん、お菓子好きなんですね」

ジョーイ「ええ、そうだけど」

女「ピッピ屋のお菓子、おいしいですよね」
 ▼ 902 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:37:01 ID:95yqQlRI [23/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
ジョーイ「あら、お目が高い」

女(こんなことでテンション上がるようなぼろは出さない、と)

女「限定スイーツ食べてましたよね」

ジョーイ「好きだからね」

女「でも、今日の列には並んでませんでした」

ジョーイ「……あなた、並んでたの?」

女「ポケモン達とおいしくいただきました」ニコ

女「買ったらその日の内に食べないとおいしくなくなっちゃうそうですし」

女「ね?」

ジョーイ「」

女「それで、まぁその……」

女「ピッピ屋の列で、トランスマンの中の人らしき男性を見まして」

ジョーイ「あー……"やった"のね」ゲンナリ


───ジョーイの顔を覆う様が、すべてを物語っていた。
 ▼ 903 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:37:52 ID:95yqQlRI [24/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
女「すみません、なんだか問い詰めてるみたいになっちゃって」

ジョーイ「……ちょこちょこ差し入れてくるのよね。「世話になってるから」って」

ジョーイ「そんなことでご機嫌とりができると思ってるんだから」

ジョーイ「いい加減、やめればいいと思うんだけど」

女「……でも、やっぱりやめなくて」

女「それで、またお菓子持ってくる」

ジョーイ「そう」

女「どうして、あの人はそんなことをしているんですか?」

女「あんな風に身を粉にして……」


───割り込みを指摘していたとき、くしゃみをしていたのを思い出す。

きっと昨日の雨の中、傘泥棒を探し続けていたのだろう。


ジョーイ「……グライガーマン、知ってる?」

女「昔のヒーローアニメですよね」

ジョーイ「よく知ってるわね」キョトン
 ▼ 904 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:38:46 ID:95yqQlRI [25/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
ジョーイ「子どものときにね、彼はそのアニメを見て……」

女「主人公に憧れた?」

ジョーイ「ちょっと違うのよ」

ジョーイ「主人公に、文句を言ったの」

ジョーイ「どうして、悪者を倒し尽くしてしまうんだ、って」

ジョーイ「悪いことをしたからって、そいつらを根絶やしにしていい道理なんかないって怒ってね」

ジョーイ「正義の味方なら、悪い奴だって救ってやるべきだ……って」

女「……それで」


───それならば、納得がいく。

ヒーローショーでの主張も、行列で割り込みを指摘したときのスタンスも。


女「あの人とは、どういう関係なんですか?」

ジョーイ「幼馴染み」

ジョーイ「ヒーローショーに協力してるのも、そう」

女(マスクド仮面役の人か)
 ▼ 905 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:39:24 ID:95yqQlRI [26/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
ジョーイ「それだけ、かな」

女「それだけ?」

ジョーイ「……」

ジョーイ「それだけ」ニッコリ






 ▼ 906 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:40:19 ID:95yqQlRI [27/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
───外に出た。


女(散策してたら、あのヒーロー擬きにまた遭遇するかもしれない)

女「……と思ったら」


───いた。

しかも、現在警察に事情聴取を受けている様子である。


女(パトカー内には、顔の腫れた女性)

女(少し離れた場所に停められているもう一台の方には、男性……こちらはけがなしだけど、左右をおまわりさんが挟んで話してる)

女(パトカーの傍に人1人くらいありそうな糸の塊が散らばってるから、餌食になったのが男性の方だとすると……)

「君君」

女「はい?」

眼鏡「少しお時間いただける?」

女「……あなたは?」

眼鏡「この近くの新聞社に勤めてる者なんだけど」スッ
 ▼ 907 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:41:48 ID:95yqQlRI [28/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
女「どうも」

女(なんか、名刺もらうことって意外と多いんだな)

女「新聞記者さん、ですか」

眼鏡「そう。トランスマンのことを調べてるの」


───彼女は、目の前の光景を指差して言う。


眼鏡「コレ、何が起きたかわかる?」

女「DV案件をトランスマンが暴いた……ってところでしょうか」

眼鏡「ビンゴ。その通りよ。ご明察ね」

眼鏡「トランスマンとDV野郎は揉み合いになったけど、お互いに怪我することなく、トランスマンは男性を取り押さえてしまった」

女「トランセルの糸で?」

眼鏡「そう!」

眼鏡「凄いよね。あの手際のよさったらないわ」

眼鏡「過去に、彼はポケモンの違法売買の取引現場を摘発した上で制圧したこともあったし、街で暴れたポケモンを取り押さえたこともある」

眼鏡「彼はヒーローとして、本物と言っていいでしょうね!」
 ▼ 908 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:42:35 ID:95yqQlRI [29/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
眼鏡「あなたはどう思う?」

女「……目についた困ってる人を、見境なく救う」

女「誰かを困らせるような何かを、未然に防ぐ」

女「高潔だと思います……でも」

女「節操がないのは、あんまり好きじゃないかも」

眼鏡「……そう思う?」

眼鏡「実際そうなのよね。彼が人助け、とか、悪を成敗、とかやってると、困る人がいるわけ」

眼鏡「で、そういう人達からすると、彼って邪魔なんだけど、厄介なことに、それで潰すと話題になりそうなくらいには有名なのよ」

眼鏡「だから、潰すよりか、利用できればって考える人も多いの」

眼鏡「トランスマンが、悪党だ!って目星をつけて、商売の邪魔をしてくることがなくなれば───」

眼鏡「友達になれれば、おいしいでしょ?」

眼鏡「そういう腹積もりの人達はさ。トランスマンのことをよく知りたいなぁって思うわけ」

眼鏡「わたしは、そういう人に、トランスマンのことを教えてあげられたらなぁって思っているのよね」

眼鏡「それで君」

女「私」
 ▼ 909 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:44:02 ID:95yqQlRI [30/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
眼鏡「さっき、ポケモンセンターでジョーイさんと話してたよね」

眼鏡「彼について、ジョーイさんからなにか聞いた?」

女「……」

女「けったいなオタクがいるなぁって不思議だったので、この街の名物なんだって教えてもらった程度です」

女「たぶん、あなたの方がよっぽど詳しいんじゃないかと思います」



───記者の女性は、※※※※※からまともな話を聞けそうにないと見るや、早足で去っていった。

一方でこちら、去られた方はというと。

何処に行くでもなく、ぶらぶらと歩いていた。


女「……バカみたいだな」

女(理想を追い求めて、地道に、ひたむきに頑張ってるのに、みんなのことを思って走り続けてるのに)

女(考えが相容れないどころか、足を引っ張ろうとする人がいて、見返りほしさにその手伝いまでする人がいる)


───ジョーイの態度からして、マスコミはトランスマンを好意的に見ていないのでは、と思ったが。

まさか、弱味を探しているとは。
 ▼ 910 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:44:56 ID:95yqQlRI [31/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
女(好きじゃないって嘘つかなかったら、もっと質問攻めにされてたかも)

女(……どうにもならない、のかな)

女(人間が、正しいことに殉じてる誰かを億劫に思ってしまう生き物なんだとしたら、粉骨砕身して助ける意味なんてあるんだろうか)

女(あの人の追いかける理想って、そんなに高尚なものじゃないんじゃ……)



「トランスパーンチ!」

「ぐうわぁああ!」



女「」クルッ


───ぶらぶらと歩いて、いつの間にかどこぞの公園にたどり着いていた。

そして、耳をついた子どもの声に、思わず振り向く。

───そこでは。


少年A「お前はもう改心した、俺たちの仲間だ!」

少年B「ありがとう、トランスマン!」
 ▼ 911 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:46:17 ID:95yqQlRI [32/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
少女「一緒に帰りましょ!マスクド仮面!」

少年C「はい、カットォ!」


───子ども達が、風変わりなヒーローごっこをしていた。


女「」ポカン

女(あ。あの女の子)


───昨日ポケモンセンターに来ていた、デデンネの親だ。

よく見ると、肩にデデンネをのせている。


女「ね、ねぇ!」

少年A「あ?何だよねーちゃん」

女「今の、何の遊び?」

少年A「なんだ外の奴かよ。知らねーの?トランスマン」

女(知ってる)

女「……ひょっとして、トランセルを肩にのせてる人?」
 ▼ 912 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:47:21 ID:95yqQlRI [33/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
少年A「そうそう」

少年B「かっけーんだぜいっし……トランスマン!」

女(迂闊)

少女「困ってる人がいたら絶対に助けるんだよ」

少年A「トランスマンは、マジなんだぜ!」

少年C「本物のヒーローだよなー」

少年A「俺の友達、親にいじめられてたんだけど、トランスマンが助けたんだ」

少年B「僕が転校したばかりのときに、『勇気をもって一歩踏み出すんだ』って言ってくれた」

少年A「あ、それでいきなり話しかけてきたのか!」

少年C「コイキングでバトルに勝てなかったときに、弱いポケモンでも、トレーナー次第で強いポケモンを倒せるんだって教えてくれた」

少年C「だからコイキングを大事に育てろよって」

少年C「育ててたらギャラドスんなってめっちゃ強なった」

女「」

少年B「暴れん坊のサイドンが出たときも、トランセルと一緒に押さえ込んじゃったんだ」

少女「糸でぐるぐる巻きにしちゃって、誰も怪我しなかったんだよ!サイドンも!」
 ▼ 913 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:48:28 ID:95yqQlRI [34/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
少年C「ビルの上を忍者みたいに走ってくの見た。ピョンピョン跳んでサーッて」

女(フリーランニング?)

少年A「ヒーローショーの時もすごいよな。刀とか棒でめっちゃバシバシ戦うし」

少年C「あれは殺陣じゃないね」キリッ

女(やっぱり、武術の心得もあるのかな)

少年A「学校の先生はちゃらんぽらんだけど、トランスマンはいつだって本気さ」

少年B「トラブルも絶対解決しちゃうんだ!」

少年C「バカだと思うけど、かっこいい」



女「……ふぅ」

女「なんか、子どものエネルギーってアテられる……」

女(あの子達、トランスマンのことべた褒めだったな)

女(大人は、トランスマンのことを都合の悪い人間として見てるのに)


───子ども達はヒーローとしての彼を認めている。
 ▼ 914 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:49:25 ID:95yqQlRI [35/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
架空の存在じゃない、等身大の格好いい大人として、彼を尊敬している。

トランスマンはきっと、これからもこの街でヒーロー活動を続けるだろう。

今の子ども達が大きくなれば、彼が社会に「良き隣人」として認められる日も来るのかもしれない。

そう思うと、気分がスッと晴れて、自分のことではないのに、救われたような気持ちになった。



「お嬢さん!」

女「」クルッ

女「あ」

トランスマン「落とし物をしていましたよ」


───差し出されたのは、さっきもらった名刺だ。

子ども達と話した後、持っているのがバカらしくなって放り投げたのだが。


女(見られたのか)カァーッ

女「ご、ごめんなさい、ポイ捨t」

トランスマン「落とし物」
 ▼ 915 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:50:11 ID:95yqQlRI [36/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
女「え」

トランスマン「気を付けてくださいね」

トランセル「オッホホ」

トランスマン「では」

女「……」

女(優しい人なんだな)

















女「頑張ってくださーい!」
 ▼ 916 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:51:10 ID:95yqQlRI [37/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
───後ろ手を振って、トランスマンは走り去っていった。





女「さて、そろそろ立ちますか」

女「次は、どこに行こうかな」

コータス(朗らかな顔してら)

コータス「くふふ」

女「……なんで笑ってるの?」
 ▼ 917 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/25 16:51:48 ID:95yqQlRI [38/38] NGネーム登録 NGID登録 報告
ヒーローのいる街

おわり

そして続く
 ▼ 918 ーケオス@こおりのジュエル 16/05/25 16:56:58 ID:D3erj23M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
正当化された迫害に〜の言い回し好き

そしてバスタオルに包まれるむっくんと
ショーに夢中になるドリュに癒された(*´ω`*)
 ▼ 919 ンプク@タウンマップ 16/05/29 11:58:31 ID:QaoRzC5M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
毎回楽しみに見てます
 ▼ 920 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/29 17:24:24 ID:H5YlGN0w [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───シンオウ地方はハクタイシティ。


女「サイクリングロードをゆく」

女(自転車もレンタルで確保したし、いっちょサーッと行ってみましょうかね!)

女「よっと」マタガリ

女「……ふむ」



女(どうやって乗るのかわからない)

女(またがったものの、そこから先が全く未知の領域……)

サイクリング「アイエェエエ〜」シャー

女「事も無げに走っとるし」

女(……この歳で乗れないってのもシャクだし、練習するか)


───ジャージに着替え、練習法を調べて、1時間経過。


女「」ボロッ

女(全然乗れない)
 ▼ 921 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/29 17:25:10 ID:H5YlGN0w [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───転んで転んで転び倒れて、ジャージの膝は擦り切れ、膝小僧が見えている。

かすり傷をしていないのは奇跡と言ってもいいかもしれない。


女「地面を蹴って、バランスを取りつつその勢いで進む」

女「バランスを取れるようになったら、ペダルを踏む」

女(ようやくバランスを取ることだけは出来るようになったけど、ペダルに足をのせた瞬間崩れて、倒れてしまう)

女(あとどんだけ転べば乗れるようになるんだろう……)


───現状はギリギリ怪我をしていないが、これ以上はもう、傷のひとつやふたつやみっつは覚悟しなければならないだろう。

悠々と自転車に乗る自分のイメージ───それが現実になるまでを思うと、気が遠くなる。


女(やめてしまおうか)

女(ムクホークがいるんだから、知ってる街への移動には困らないし、サイクリングロードじゃなくても、バスなり電車なりを使えばいい───)


───こつん、と。

ベルトに取り付けているボールのひとつに手が触れた。

住人のいない、空っぽのハイパーボール。
 ▼ 922 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/29 17:26:16 ID:H5YlGN0w [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「───」

女「よし」


───気を取り直して、練習を再開した。

地面を蹴って、バランスを取りつつ、ペダルに足を乗せようとして、ギリギリ保っていたバランスが崩れた。

転ぶ。


女「あ痛゙っ」

女「〜……ッ!!」


───ついに膝を擦りむいた。

痛みに悶えながら、しかし、また立ち上がる。


女「もう一回」


───また転んだ。


女「もう……一回ッ」
 ▼ 923 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/29 17:27:04 ID:H5YlGN0w [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───また転んで。


女「〜……ぐッ」


───立ち上がって、地面を蹴って。

そしてまた転んだ。

何回も何回も、転んで、立って、地面を蹴って、ペダルに足を乗せて、また転んだ。

膝がじくじくと痛む。

何度も転んでアドレナリンがドバドバ出ているのか、頭も妙にクラクラしている。

しかし、彼女は練習をやめなかった。

まるで、何か譲れないものでもあるかのように、練習を続けて、転び続けて。

そして2時間後。


女「おっ、とっ、ほっ……」


───足を乗せたペダルが、くるーん、と一周。

回った。
 ▼ 924 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/29 17:27:59 ID:H5YlGN0w [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「できた……!!」


───ぎこちないながらもペダルを回して、ふらふらしながら、自転車が進む。

前に進む。


女「乗れた!」フラッ

女「おわっとっととと」トテテ

女「」

女「転ばなかった……」


───そうして、めでたく自転車に乗ることが出来るようになった……のだが。

自転車ふらふら乗りな彼女は、いざサイクリングロードを走ろうとして、


『危ないので、自転車に慣れるまでサイクリングロードに入らないでくださーい』


───というアナウンスで、猶予つき出禁宣告を食らってしまったのであった。
 ▼ 925 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/05/29 17:28:49 ID:H5YlGN0w [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「うわ……ほどよくオチついた」


───サイクリングロードの走行を許され、クロガネシティに行けたのは、翌日になってからのことだった。


短編おしまい。
 ▼ 926 ネコロロ@むげんのふえ 16/05/31 01:26:56 ID:1NBG1cxQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ハイパーボール…

支援
 ▼ 927 ニータ@パワーベルト 16/05/31 07:11:55 ID:u./IhNTE NGネーム登録 NGID登録 報告
>>926
ハイパーボールに関する話ってなんかあったっけ?

支援
 ▼ 928 クーン@ピントレンズ 16/05/31 07:17:43 ID:63MONIB. NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
支援
 ▼ 929 リーラ@ほのおのいし 16/05/31 13:23:04 ID:rOU2pt7M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>927
ライモンで出会ったセ…、アメフト男のピカがハイパーだったはず

あと、むっくんがすでにムクホになってるし
彼女の手持ちはサニーゴ除いてもう6体いるはずだけど…
 ▼ 930 ニリュウ@かみなりのいし 16/05/31 21:31:16 ID:kkt9kl4U [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
自分が作中にいるかように錯覚するぐらいの読みやすさ
誰もがコータスを好きになるSS

支援
 ▼ 931 ドラ@もののけプレート 16/05/31 23:53:12 ID:kkt9kl4U [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あ、次に訪れる場所は「バトルリゾート」を希望します
 ▼ 932 ンガー@ゴッドストーン 16/06/01 01:41:28 ID:VvkTyPzo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「次に訪れる場所は〜」とかはあまりいくない
この人には自由に書いてほしい(´・ω・)
 ▼ 933 クーダ@こだいのおまもり 16/06/01 10:34:51 ID:fKiUwgiI [1/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>932
いや>>1
> この町(街、村)行けば?という提案にのっかるかも。
ってあったんで・・・
 ▼ 934 932 16/06/01 12:42:18 ID:Qxo4nWHQ NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
言葉足らずでこめんなさい。場所の希望じゃなくて
「次に訪れる」の部分が、次のお話を勝手に決めてるみたいでよくないんじゃないかなぁ…と
 ▼ 935 イバニラ@デボンのにもつ 16/06/01 14:18:53 ID:fKiUwgiI [2/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>934
こちらの書き方が悪かったですね、すみません
 ▼ 936 ガイアス@トライパス 16/06/01 14:44:52 ID:fKiUwgiI [3/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
さておきこの主人公にはシルフスコープ持たせてやりたい
あのシャンデラはどう見えたんだろうか・・・
 ▼ 937 ニョニョ@はっきんだま 16/06/01 14:56:10 ID:x3wL/AcY NGネーム登録 NGID登録 報告
はっはっは
ワロタ
 ▼ 938 アームド@ディフェンダー 16/06/03 09:30:50 ID:/Aie8C1U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!!
 ▼ 939 ガヘラクロス@きよめのおこう 16/06/03 14:04:44 ID:VIJbHVvY NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
支援
 ▼ 940 ルット@ヘビーボール 16/06/07 09:41:05 ID:qNGGeB7M NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
支援
 ▼ 941 カ使い◆jJ19pCqLQY 16/06/11 18:34:35 ID:Auu0AaFg NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 942 ャンデラ@シーヤのみ 16/06/14 09:53:49 ID:exbqb9XA NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
支援
 ▼ 943 チュール@くろいてっきゅう 16/06/14 22:47:36 ID:lqvOjpVw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 944 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/06/17 18:32:59 ID:SonhT6FU [1/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───とある山の麓町。

そこでの用事を済ませ、自転車を広げて次の町に出発しようとしていたときのことだった。


少女「あの……」

女「ん。どうしたの?」

少女「お忙しいところをお邪魔して、大変恐縮なんですが、バトルしてもらえませんか」

女(すっげーかしこまり方)

女「OKOK。じゃあ、そこの野っぱらでやろう」

少女「よろしくお願いします」



女「ムックル、君に決めた!」

ムックル「ぴぴいっぴ!」

女「さっそくだけど、よろしく」

ムックル「ピィー」

少女「わざは、かえんほうしゃと、あくびと、じわれ?」
 ▼ 945 レイシア@スピードボール 16/06/17 18:33:37 ID:qQTtArHM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 946 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/06/17 18:33:58 ID:SonhT6FU [2/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「こぉーあ」

女(ずいぶんみすぼらしい格好なのが気にかかる。あのコータスも、ずっとボールから出っぱなしだ)

少女「脈拍、正常値より10ほど高め。倒れたことと、ここまで歩いてきたことで疲労が溜まってはいますが、再び倒れることはないと思われます。コータスの説明が端的で最低限のため、全体および把握した情報の割合不明です。わざの命令だけしてればいい、との指導なので、ひとまずはそれに従います。目的は相手ポケモンの打倒と賞金の獲得。ポケモンバトル、第一回目に取り組みます」ブツブツ

コータス「?」

女「」ポカン

女(何言ってるのか聞こえないけど……すごく集中するタイプみたい)

女「そっちから攻撃していいよ!」

少女「は、はい」ビクッ

コータス「」ボソボソッ

少女「」コクン

少女「かえんほうしゃ」

コータス「こぉお!」ブォオオ

ムックル「ピィイ!?」

女「ムックル、慌てなくていい!お前なら避けられるよ!」

女「上昇!」
 ▼ 947 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/06/17 18:34:48 ID:SonhT6FU [3/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ムックル「ぴぴぴ!」パタパタ

少女「あ、避けられた……」

コータス「」ピクッ

女「そのまま、今はコータスの様子をよく窺って!攻撃はまだ!焦らなくていいからね!」

ムックル「」コクン

コータス「」ニィ

女「笑ってる?」

女(トレーナーの割に、コータスは妙に立派でレベルが高そうだ)

女(動きが遅いポケモンとはいえ、どんなもんか見極めないと)

少女「……じわれ」

コータス「」ムッ

コータス「……」ズドン

少女「!?」

女(指示しておいて驚いてる)
 ▼ 948 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/06/17 18:35:50 ID:SonhT6FU [4/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───コータスが踏みしめた大地が派手に割れて、亀裂がムックルまでのびていく。

が、滞空しているムックルの足元を、亀裂はそのまま通りすぎた。


ムックル「」キョトン

少女「……地面を割るだけ?」

女(ちょっとレクチャーしてあげよう)

女「ムックルはひこうタイプのポケモンだから、じめんタイプのじわれは当たらないんだよ」

少女「タイプ?」

女(そっからか)

女「ポケモンとわざにはそれぞれタイプがある。得意不得意とも言える」

女「君のコータスはほのおタイプ」

少女「そうなの?」

コータス「こぉ」

女(やっぱ知らないか)

女「ほのおタイプ……なんだよね(苦笑)」
 ▼ 949 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/06/17 18:36:27 ID:SonhT6FU [5/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「だから、ほのおの技を使うのも得意なんだ」

女「そして、みずタイプのわざやじめんタイプのわざを食らうのが苦手。ただコータス自身はじめんタイプのわざを使うことも出来る」

女「けど、わたしのムックルはノーマ……ひこうタイプだから、じめんわざは効かないんだ」

少女(ノーマ?)

女「ひこうタイプには効果抜群な技があるんだけど、君のコータスはそのタイプのわざを覚えてない」

少女「はい」

女「でも、得意なわざのかえんほうしゃは、ムックルにはいまひとつじゃないから、この場合はそれで戦えばいいんだよ」

少女「はい」

女(情報量はなるべく少なくなるよう気を付けたつもりだけど、こんないっぺんに言っても、すっと頭に入らないよね……)

女「わかった、かな?」

少女「はい、覚えました」

女「えっ」

少女「……それじゃあ、かえんほうしゃ」

少女「ムックルの少し上に撃ってください」

コータス「」ボォッ
 ▼ 950 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/06/17 18:37:08 ID:SonhT6FU [6/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ムックル「ぴぃ!?」

女「左にかわせ!」

ムックル「」アタフタ

少女「……また外れちゃった」

女(ムックルが避けやすい上側を潰してきた)

女「」ムズムズッ

女「そうそう!その調子!」

ムックル「ぴっ」ムッ

女「ごめん。でも、もうちょっと付き合って」

ムックル「」シャーナイノォ

女「攻撃が通りにくいときは、変化わざで相手の動きを邪魔するの。ダメージが増えたり、攻撃が当たるようになるかもしれないよ!」

少女「変化わざ」ピコーン

少女「あくび?」

コータス「」フワァ
 ▼ 951 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/06/17 18:37:56 ID:SonhT6FU [7/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ムックル「」ホワァ

女「あっヤバ」

女(ごめん、ムックル)

女「かぜおこし!」

ムックル「ぴぃぴぴるる」バサバサバサッ

コータス(痒い)

ムックル「」ピクッ

ムックル「」トサ

ムックル「……zzz」

少女「寝た」

女「……あくびはうつるもの。あくびをくらうと、時間差で眠ってしまう」

少女「そうなんだ……」

女「もちろん、寝てるポケモンへの攻撃はオッケーだけど、今回はそうだな……わたしの負けってこt」

少女「かえんほうしゃ」

女「」
 ▼ 952 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/06/17 18:38:31 ID:SonhT6FU [8/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───容赦なく殺られた。


ムックル「」死ーん

女「はい、5000円」

少女「ごせんえん」

女「……5000円って、どんくらいのお金かわかる?」

少女「円は単位、ということくらいしか」

女「どれくらいのものが買えるか、っていう話の予定だったんだけど……まぁいいや」

女(財布も持ってない……この子を放置するのは危ないな)

女「ちょっと町まで一緒に行かない?」



少女「町に入りました」

少女「人が大量にいます。白くない服を着ている人の方が多いです。建物も多いですが、塾のような建物はあまりないのだと思われます。っへくし」

女「ん。……まずはポケモンセンターに行こう」

少女「ポケモンセンター?」
 ▼ 953 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/06/17 18:39:11 ID:SonhT6FU [9/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「コータスとムックルを休ませてあげないと」

女「君もお風呂入ってすっきりしたいでしょ?」



少女(水槽に張ったお湯に浸かったのは初めてだった)ホクホク

女(きれいになったはいいけど、服がそれしかないのか)

女(……おしゃれな格好にしてあげなきゃだな)

女「コータスとムックルは、戻るまでもう少しかかりそうだし、近くの……」

少女「」グキュルル

女「……その前に、ごはんにしようか」

少女「……」カァア

女(恥じらってる)ホッ

女(あまりに無感動なもんだから、ちょっと安心した)



女「好きなの食べ……あ」

女(メニューわかるだろうか)
 ▼ 954 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/06/17 18:39:52 ID:SonhT6FU [10/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「この、ラーメンって、どんな食べ物ですか」

女(やっぱり)

女「スープに麺とか具が入ってる料理だよ。ポケモンセンターだと醤油味のしかないけど、専門の店に行けば、もっと作り方や味にバリエーションがあるの」

少女「スープとか、麺というのは何ですか」

女(これ、質問攻めになりそう)



女(知識欲の塊だ……)ゲッソリ


───話せば話すほど───常識的な知識がないことにぎょっとしつつ───、教えた情報量を上回る質問が返ってくる。

そして、時たまハッとさせられるような鋭さでフィードバックを返してきたり、論点を要約して、そこから一歩踏み込んだものの如何について触れてきたりもする。

とりあえず頼ませたカレーライスがやって来た頃には、すでに話の内容もラーメンからだいぶ離れたものになっていた。


女(まるで、世間から切り離して育てられたみたいだ)

女(ポケモンのことですら、チッチとかいうのと、キリキザンとコータスだけ……)

女(そして、わたしがこっちに来て捕まえたムックルのことをさっき知ったばかり……って)

女「どうしたの!?」
 ▼ 955 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/06/17 18:40:31 ID:SonhT6FU [11/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「?」

女「なんか変な味でもした?」

少女「してません」

女「それじゃ、なんで」

女「……気づいてないの?」

少女「???」


───きょとんと困惑の視線を向けてくる態度とまるで裏腹に、その双眸からは、ボロボロと大粒の涙がこぼれていた。

カレーライスをひとすくい口に入れて、その直後のことである。


女「カレー、そんなにまずい?」

少女「まずい?」

女「食べて、その……不快じゃない?食べすすめられないっていうか」

少女「いえ、そんなことはありません」

少女「快いです」

女(じゃあなんでそんなつらつらと涙を……)
 ▼ 956 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/06/17 18:41:09 ID:SonhT6FU [12/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「……こころよい?」

少女「今まで、こんな食べ物を食べたことはありません」

少女「こんなに味がするものを食べたのは、初めてです」


───その物言いに、まさか、と思いつつ言ってみる。


女「快いじゃなくて、おいしいって言うんだよ」

少女「……あ」

少女「これが、そうなんですね」


───おいしい、という感情に涙を流し、その概念を実感して呆然とする少女を前にして、彼女は胸をしめつけられるような感慨を覚えた。

そして確信する。


女(この子には間違いなく、何か得体の知れない、どす黒い、胸糞の悪くなるような、そんな事情がある)

女「ゆっくり味わって、おいしく食べな」

少女「はい」パクパク
 ▼ 957 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/06/17 18:41:48 ID:SonhT6FU [13/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女&女「「ごちそうさまでした」」

女「OK」

女「ご飯を食べる前には、「いただきます」って言うようにね」

少女「はい」

女「今日はもう遅いから寝た方がいいかな。明日になったら、町に出てみよっか」

少女「はい」


───チェックインした部屋に、少女は戻っていく。


女(町を出ようと思ったら、思わぬ拾い物をしてしまった)

女(一度関わってしまった以上、できるだけのことはしなくちゃね)

女「……そうと決まれば」



ジョーイ「お預かりしたポケモンは、みんな元気になりましたよ」

女「ありがとうございます」

コータス「こぉー」
 ▼ 958 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/06/17 18:42:28 ID:SonhT6FU [14/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───彼女は、コータスを連れてロビーの一角に移動した。

時間的に人はいない。


女「あの子のことについて聞かせて。お前の知ってること、全部」

コータス「こぉあ?」

女「すっとぼけなくてもいいよ」

女「あんなふうに、常識のかけ落ちている子どもが、ポケモンを連れて旅なんてできるわけない」

女「わたしとバトルするまでに、何者かの手引きがあったのは間違いないはずなんだ」

女「でも、その手引きをした者は、一向に現れる気配がない」

女「なら、ついさっきまで、ずっと行動を共にしていたヤツがそうだと考えるのが妥当だ」

女「お前、あの子のポケモンじゃないみたいだし」

女「あの子のことも、お前のことも含めて、話してもらう」

コータス「……こぉ?」キョトン

女「あくまですっとぼけんのね」

女「……わざの名前」
 ▼ 959 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/06/17 18:43:45 ID:SonhT6FU [15/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「」ピクッ

女「お前のタイプも知らないような女の子が、何でお前の使えるわざを知ってたんだろうか」

女「"火を吹け"とか"地を割れ"なんていうあやふやな指示じゃなく」

女「かえんほうしゃとじわれ。わざ名をちゃんと知っていて指示を出してた」

女「教えたんじゃないの?お前が」

コータス「……別に」

コータス「僕があの子をああいう風に育てたわけじゃないんだからさぁ……そう敵意むき出しだと、こっちも警戒しちゃうんだけどぉ」

女「」

コータス「びっくりしてる割に、冷静だねぇ」

女「まぁ、ポケモンとこういう風に言葉を交わしたのは……初めてじゃないから」

女(てか、前のは意思疏通だったから、喋ったのは初めてか)

女「じゃあお前は、あの子のことをどこまで知ってるの?」

コータス「会ったのは今日が初めてだよ」

コータス「倒れてたのを助けたんだ」

女「倒れてた?」
 ▼ 960 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/06/17 18:45:05 ID:SonhT6FU [16/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「詳しく聞かせてもらえる?」

コータス「いいよぉ」


───すっとぼけたコータスは、説明を始めた。
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