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【SS】ミカン「旅に出ます」

 ▼ 1 ベトベトン@けいけんおまもり 21/12/05 18:48:33 ID:bV0wPDWI [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「少し、旅に出ようと思っているんです」

雲一つない青空の下。鳥ポケモンの飛び交う姿を眺めながら、私は彼にこう伝えた。

青空と同じ色のさらさらの髪が揺れる。
振り返ったその顔には一瞬だけ驚きの表情が見えたけれど、そのあとはすぐにふっと笑みを見せた。

「ミカンさん、世界を見るつもりなんだ」

「ええ。もっともっと、色んな経験をつんで、ジムリーダーとして、一人のトレーナーとして強くなりたいんです」

オレの父さんと同じだな。彼の口がぽつりとそう動いたのが見えた。
彼のお父さんは風来坊だ。もう何年も帰って来ないと聞いている。

北風がびょうと吹き付け、彼はしかめ面をしながら髪を掻き分ける。長く伸ばした前髪は、鬱陶しそうだけど彼のトレードマークでもある。

「あたし、きっと帰ってきます。」

「分かってるよ。……ミカンさんとオレの父さんは違うから」

私に見せる笑顔が、どことなく淋しそうなのは今は気づかないふりをしよう。淋しいと思ってしまえば、2度と踏み出せなくなりそうだから。

「鳥ポケモンは、いつも高みに向かって羽ばたいているんだ。ミカンさんも、頑張って」

「ありがとうございます」

青く広い大空のどこか。私はきっと、強くなる。小さく誓いを立て、私は次の目的地に向かう。
 ▼ 2 シェルダー@おいしいシッポ 21/12/05 18:52:23 ID:bV0wPDWI [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

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「……そっかぁ。ミカンさんは遠くに……」

ジムに程近い森の中。研究熱心な彼がいたのは虫ポケモンの群がる木の上で、見つけた時は少し驚いた。

「はい。……もっと、強くなりたいんです」

木の上にいる彼を見上げるようにして話す。彼の回りにいる虫ポケモン達が、変わったものを見るようにこちらを向いたので、少し緊張した。

「……ここにいるままでは、ダメなの?強くなれないの?」

少年らしい純粋な疑問だ。でも、私はもう決心したんだ。引き留められても、飛び出したい。

「外の世界へ出て、色んなものを見たいんです。……そしたら、あたしももっと強くなれる気がして」

「そっか」

彼はしゅるしゅると木から降り、私の前に立った。こうしてみると、私よりずっと小さくてあどけない。同じジムリーダーとして業務をこなしているとは思えない。

「キャタピーって知ってる?……小さな芋虫から、進化して翼を持つ綺麗なバタフリーになるんだ」

「え?」

突然、彼の好きな虫ポケモンの話が始まり、少々面食らった。驚いている私の顔を覗き込んで、彼はいたずらっぽく笑う。

「ミカンさんも、バタフリーみたいに成長出来たらいいね。僕、遠くからでも応援するね!」

彼なりの激励のようだ。にっこりと笑って手を振る彼は、とても大人っぽく感じた。

「……はい!あたしもバタフリーになれるよう、頑張りますね」

にこっと笑って手を振り替えす。少年に背を向け、次はあの子のところだ。
 ▼ 3 トリトドン@フェアリーZ 21/12/05 18:53:57 ID:SaCADUfk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 4 ジメレオン@たいようのいし 21/12/05 18:57:26 ID:bV0wPDWI [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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「えぇーーっ!!?ミカンちゃん行ってまうん!?」

人一倍大きくて威勢のいい声が、彼女のジムに響き渡る。鼓膜が割れてしまいそうだ、と思ったけれど、普段から彼女はこんな感じだ。そして、驚いた後は大抵……

「うっ……うわあーん!!嫌や嫌や!ミカンちゃんが行ってまうの嫌やぁ!!」

ボロボロと涙が溢れだす。こうなるだろうと予想はしていたけれど、やっぱり泣かれてしまうと胸が痛む。

「あぁ……泣かないで、アカネちゃん」

どうしたらいいか分からなくなって、私は泣きじゃくる彼女を優しく抱き締める。そうすると、ひっく、ひっくとしゃっくりを繰り返し、だんだんと落ち着きを取り戻してきた。

「あのね。あたし、前から考えていたの。……アカネちゃんに言われたこと」

「……地味、って言うたこと?」

涙を目一杯貯めて、それ、ウチのせい?と私に尋ねる姿に、胸が締め付けられる。

「ううん。アカネちゃんのせいじゃないよ。……きっかけはアカネちゃんだけど、あたしが、もっと成長してみたいって思ったの。」

だからあなたのせいだなんて言わないで。
むしろ、あなたに多くのことを教えてもらったの。

「う……分かった。さみしいけど……ウチはミカンちゃんの成長、応援するわ」

これもきっと必要なことなんや、と涙でぐしゃぐしゃの顔をぎゅっと歪めて、自分に言い聞かせている彼女の姿を見届けて、私はそっと別れを告げる。

「ありがとう、アカネちゃん。……私、頑張るね」

バイバイ、と名残惜しそうに手を振る彼女に後ろ髪を引かれつつ、次の目的地へ行くことにした。
 ▼ 5 メガチルタリス@デルダマ 21/12/05 19:03:16 ID:bV0wPDWI [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

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「……そうか。ミカンさんも行くんだね」

和の趣溢れるエンジュの街並み。その端にあるスズネの小道に、彼は1人ぽつんと立っていた。

ミカンさん『も』とはどういう意味だろう。その理由を聞くより先に、彼は喋りだした。

「僕の友達に1人、風来坊なやつがいてさ。……変わってるけど、夢のためには真っ直ぐなやつなんだ……。ミカンさんも、夢を追いかけてみたいんだろう?」

……まさにその通り。噂に違わぬ千里眼。なんだってお見通しみたいだ。

「あたし……うまくやれますかね」

ここにきて、初めて弱音が漏れてしまった。エンジュの雰囲気に当てられて、さっきより少し、自分が弱くなってしまったみたいだ。

紫のマフラーがひらりと揺れ、優しい2つの目が私を見つめた。

「……うん。きっと大丈夫。君には、明るい未来が見えるよ」

それが本当に見えたのか、それとも私を元気づけるためのお世辞なのかは分からない。でも、彼のゆったりとした笑顔を見ると、少し救われるような気がした。

「頑張ってね。僕はいつだって待ってるよ」

待つのは得意だから、と空を見上げて呟く彼もまた、明るい未来を信じ続けているのだろう。

「ありがとうございます。……マツバさんも、うまく言えないけど……がんばってくださいね」

彼の言う明るい未来を掴むために、今から頑張らないと。
自分を奮い起たせ、次の町へと足を運ぶ。
 ▼ 6 ガラルバリヤード@ヒウンアイス 21/12/05 19:11:42 ID:bV0wPDWI [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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「ふーむ。シンオウへか」

タンバシティ。
私の目の前には、お茶を啜りながら、奥さんに出された和菓子を豪快に頬張るがっしりとした男性が座っている。
豪気で闘いを好み、色々な人から恐れられている彼も、こうして見るとただの気のいいおじさんだ。

「はい。他のところを見て、色々考えて見るのもありかなって」

ふーむ、とお饅頭を頬張りながら思案する彼を眺めつつ、私もお茶を一口飲む。

「まあ、ワシがとやかく言うことではないが……そんなに簡単なもんじゃあないぞ」

「はい。分かってます」

「他のジムリーダーには伝えたのか」

「……あとは、チョウジとフスベだけです」

「……本当に、行く気なんだな」

心配してくれているのだろう。たくさん色んなことを聞かれたが、私の決意は固い。どんな格闘家でも打ち砕くのは無理だ。多分それはもう彼も分かっている。

「なに、大丈夫さ。お前ならきっとやれる」

ニッと笑って私の頭を撫でた。大きな掌はごつごつとして温かく、彼の人柄を表しているようだ。

「ふふ、ありがとうございます」

温かな彼の掌を忘れないうちに、次の町へ行こう。
 ▼ 7 ヘイガニ@ヤゴのみ 21/12/05 20:19:48 ID:bV0wPDWI [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

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「……なるほどな。」

いかりの湖のほとり。しんと静かな中にいた老人は、私の言葉に黙り込んだ。

機嫌を損ねただろうか。おそるおそる様子を伺うと、くるりと私の方を振り返った。

「決意は固いのか」

「……はい。この旅が、私を成長させてくれると信じてます」

寡黙な老人は厳しい顔のまま、「そうか」と呟いた。

「よく考えて決めたことなら私も応援しよう……だが」

「……はい」

「若さゆえに無茶をすることもある……苦しい時はいつでも帰ってきなさい」

冷たく強く厳しい姿勢の奥に、私に対しての優しさが滲む。この人の優しさは寄り添うような暖かい優しさじゃない。心地よい距離感で、突き放すでもなく見守ってくれる。

「……ヤナギさん、優しいですよね」

「そんなことはないだろう」

皺だらけの顔をくしゃっと歪めて笑った。

ここまで色んな人の優しさに触れてきたけど、本当に私に必要な優しさは、この人のような優しさなのかもしれないな。

「ありがとうございます。……私、頑張りますね」

くるりと背を向けて、いかりの湖を後にする。ヒヤリと冷たい風に後押しされ、最後の町へ向かう。
 ▼ 8 タイレーツ@あかぼんぐり 21/12/05 20:28:20 ID:bV0wPDWI [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

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「私は認めないわ。旅に出るなんて」

りゅうのあな。ドラゴンポケモンの巣くう暗い洞窟で特訓をしていた彼女は、私と一切目を合わせずにこう言った。

「あなたがジョウトを離れるということは、ジムリーダーに1人欠員が出るということ……それがどれだけ他のジムリーダーに迷惑をかけることか、分かっているの?」

そんなことは分かっていた。だから長いこと迷っていた。

「分かってます。……でもあたしは」

「言い訳は不要よ。私は許さないわ」

彼女は目を合わせてくれない。気難しく、気高く、プライドの高い彼女にとって、私みたいな弱い者と話すのは嫌なのかもしれない。

……でも。

「色んな方が、私を後押ししてくれるんです」

今まで、色んなジムリーダーに挨拶回りに行った。どの人も優しく、私を後押ししてくれたんだ。だからこそ、ここで折れてはいけない。

私は、もっと成長したい。

「……あたしは、この気持ちを曲げたくありません。鍛えぬかれた鋼が錆びないように、私も強く堅く、誇り高く生きていきたい」

そのために必要なんだ。アサギや、ジョウトでいるままでは手に入らない経験を、遠く離れた土地で積み重ね……いつかは、私も鋼のような……。

彼女がやっと振り返って私と目を合わせてくれた。美しい青い瞳に、優しい色が宿る。

「……そういう頑固なところ、本当、鋼タイプに似てるわ」

何を言っても聞かないんだから、とため息をつく彼女。人一倍頑固な彼女が言うのがおかしくて、ふふっと笑みが零れた。
 ▼ 9 ギャロップ@メタグロスナイト 21/12/05 20:36:03 ID:bV0wPDWI [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「何笑ってるのよ」

「あいたっ」

コンッ、とおでこを軽く小突かれてよろっとふらつく。むっとした顔の彼女はため息をついた。

「……仕方がないわね。私からリーグには伝えておくから……旅に出ている間、誰か1人代理をたてておくわ」

「はい」

「デンリュウや街のことは大丈夫そうなの?」

「……アカリちゃんは許してくれました。それから、街のみんなも」

みんな、こんな身勝手な私を優しく応援してくれた。私はその応援を胸に、強くならないといけない。

「あまり気負わないことよ……がんばりなさい」

彼女はそう呟くと、くるりと回れ右をしてりゅうのあなの奥へと消えていった。
プライドが高いあまり、中々素直な気持ちを伝えられない性格の彼女のことだ。これが精一杯の激励なのだろう。

……頑張ろう。気のすむまで、鋼のように鋭く、強くなれるように。
 ▼ 10 ミズゴロウ@ゆれないおまもり 21/12/05 20:43:26 ID:bV0wPDWI [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

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「ふうん、そうやってミカンさんはシンオウに来たんですね」

「ええ。……色んな人に応援してもらえたから、今のあたしがいるんです。」

シンオウ地方のナギサシティ。白い砂浜と青い空、そして深い海。冷たい潮風に当たりながらミカンさんは笑った。

「辛いことも、悲しいことも色々あったけど、応援してくれた人たちのことを考えたら……なんというか、もっと頑張ろうって」

白いフリルのついたスカートが揺れる。まるで天使のようで、少し触れたら儚く散ってしまいそうだけど、そこには鋼のように堅い芯を持っている。

「寂しくならないんですか」

愚問かな、と思いつつ僕は彼女に聞いてみた。
ええ少し、と答えた彼女は海の向こうを見やる。彼女の目には見えるのだろう。故郷の優しい人々が。

「寂しいけど、あたしにはネールもいる。この子の為にも、強いトレーナーになりたいんです」

……もう、あなたは十分強いですよ。
鋼のように折れない心をもった、優しく強い存在に、あなたはもうなっている。
照れ臭いから口には出さないけど、心の中で僕はそう呟いた。
 ▼ 11 アマカジ@ドラゴンZ 21/12/05 20:50:28 ID:bV0wPDWI [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「……さ、コウキさん、あと少し。あと少しだけ頑張って、チャンピオンに挑戦してきてください」

「はい」

今までの旅を振り返る。本当に色んなことがあったし、辛くて苦しいこともあったけど、僕は彼女のように、強くありたいと思う。

「……あの」

先へ行こうとした時、声をかけられた。
振り向くと、優しい笑みを浮かべたミカンさんが立っていた。

「あの……う、うまくいえないけど……がんばって、くださいね」

「……はい」

背を向ける。色んな期待とか、応援とか、そういうのを背負っているんだから、僕は負けない。彼女のような鋼の強さを持った存在になってみせる。



おしまい
 ▼ 12 オムナイト@ピーピーエイド 21/12/05 20:51:29 ID:frzETRmk NGネーム登録 NGID登録 報告
短いけどよかったよ
 ▼ 13 マッシブーン@プレミアボール 21/12/05 20:55:48 ID:bV0wPDWI [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
読んでくださりありがとうございました
ミカンちゃん総受けSS書きたいなぁ……でも長いのは読むのも書くのもめんどくせぇな……と思った結果のSSです
総受け感薄くなりましたがミカンちゃんがみんなに愛されてることが伝えられたらいいなぁ……と思います

一応、シンオウ地方に行く前のミカンがジョウトのジムリーダーたちにお別れを言う感じで、HGSSのちょっと後くらいの時系列になってます
 ▼ 14 サルノリ@いしょうトランク 21/12/05 22:35:01 ID:1hM.2rsI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いいね
好き
 ▼ 15 チルタリス@ウタンのみ 21/12/05 22:39:35 ID:eeKUW0yg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援しようとしたら終わってたでござる
いいっすね
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