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【サトコハ】ごめんね、セレナ…【SS】

 ▼ 1 ビィ@ライブキャスター 22/04/13 19:54:32 ID:UvjAb7Mg [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
 セレナから彼の話を聞いた時、私は自分の知っている彼の話だとは思わなかった。
 だってセレナのお話の中の彼は、勇敢で優しくて、とってもカッコいい存在としてキラキラ輝いていたからだ。
 それだけセレナの中では彼、サトシは特別に見えるのだ。

 恋の力ってすごいな。

 私はセレナの赤く染まった頬を見ながらついニヤニヤとしてしまった。

「もう!コハルったら聞いてるの?」

 スマホの画面の向こうのセレナは、頬を膨らませたがそれでも彼女の均整のとれた顔は綺麗で…羨ましいなと思いながら私はゴメンゴメンと軽い調子で謝った。

 ミナモシティでセレナと出会った私は、彼女と別れてからもスマホを通じて連絡を取り合っていた。
 おしゃべりの中身は、イーブイのことやコンテスト、私の通っているスクールの話など枚挙にいとまがない。

 でも、おしゃべりの最中にセレナはしょっちゅうサトシのことを聞いてくる。

「サトシは今日何をしていたの?」
「今日サトシってバトルしたんでしょ?どんなポケモン使ったの?」
「サトシ今日は調査でいないんだ…?」
「今日はホウエン地方に来てるのっ!?…あぁ…そう…トウカシティに行ったんだ…。」

 サトシの近況を聞くたびに一喜一憂するセレナはとても女の子らしくて、私はそんな彼女をとても微笑ましく、楽しい気持ちで見つめるようになった。
 ▼ 2 グノム@おおきなねっこ 22/04/13 19:54:48 ID:UvjAb7Mg [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

 少しでもセレナの喜んだ顔を見たい。
 私はセレナの恋のお手伝いをしたい。

「あのさ…、これからはゴウ達にもっとついていこうかな〜って思うんだ。」

 セレナとのおしゃべりの最中、ふと私は思い立ったように言った。

「ん?なんで?」

「だってそうしたらサトシのこと、もっとセレナに教えられるし…。」

「ちょっ…ちょっと待って!?私サトシのこと聞きたいなんて一言も…。」

「大丈夫!それにまだやりたいことの見つからない私のためでもあるんだ!」

「コハルのため…?」

「うん!ゴウやサトシみたいに自分のやりたいこと、なりたいものがまだ見つかってないから、二人について行けばきっと何かがわかる気がするの!」

「…うん…、いいと思うな!私もサトシ達と旅をして自分のなりたいもの、見つけたんだから!」

 私の決心をセレナは笑顔で励ましてくれた。

 私は、優しいセレナの想いが叶うように、二人のことを応援しよう、そう決心した。

 それから私はお父さんに頼んで、ゴウとサトシのリサーチフェローの活動に出来るだけ同行するようになったのだった。
 
 それが全ての間違いの始まりだと気づかずに…。
 ▼ 3 ッタ@スピードボール 22/04/13 19:56:25 ID:XSVYkZ3g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援だほ
 ▼ 4 メルゴン@パワーリスト 22/04/13 19:58:13 ID:To8QAopU [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コハルはサトシに関する恋愛には絶対気づかんぞ
そういうセンサーになってる

ヒカリとのやりとり見て何も疑わなかった
 ▼ 5 リンク@オッカのみ 22/04/13 19:59:50 ID:KWDEAx0. NGネーム登録 NGID登録 報告
サトコハ!?
 ▼ 6 ロトック@ドリームボール 22/04/13 20:02:24 ID:L5BMwLPE NGネーム登録 NGID登録 報告
ゴウ「」
 ▼ 7 ブキジカ@やぶれたせきばん 22/04/13 20:03:17 ID:vsfwcndY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だほだほしてきた

支援
 ▼ 8 ゲンダイナ@スチールメモリ 22/04/13 20:04:46 ID:f4gYsOuw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
久しぶりのヤンデレセレナに期待
 ▼ 9 ールー@つららのプレート 22/04/13 20:07:38 ID:buGwLr2s NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
これは絶対面白い
 ▼ 10 クロム@ガンバリのいわ 22/04/13 20:11:43 ID:IzWkZOz. NGネーム登録 NGID登録 報告
なんて俺得なssなんだ
支援
 ▼ 11 ルビル@ジガルデキューブ 22/04/13 20:13:25 ID:7DDA6Lus NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サトセレはありえないだほww
 ▼ 12 ェローチェ@ものしりメガネ 22/04/13 20:15:27 ID:MQccPvxA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
超絶支援
 ▼ 13 トウモリ@こおりなおし 22/04/13 20:16:07 ID:GEiYsRIQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援だほ
 ▼ 14 キタンザン@ふるびたかいず 22/04/13 20:16:11 ID:o1HwHbGI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブフェフェか
支援
 ▼ 15 イガニ@チーゴのみ 22/04/13 20:17:48 ID:CCMUE/uI NGネーム登録 NGID登録 報告
こういう外野いると読むのに邪魔なんだよな
サトコハ本当に望んでんの?
 ▼ 16 ャラランガ@ぎんのおうかん 22/04/13 20:20:27 ID:To8QAopU [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>15
望んでるし確実にあり得る
 ▼ 17 ラルバ@ねがいぼし 22/04/13 20:37:31 ID:pm1Qgfyw [1/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 私にとってのサトシの第一印象はズバリ、おかしな人だった。

 だって初めて見たサトシは、お父さんの研究次の前で黒焦げで倒れている不審人物そのものだったからだ。
 ゴウと一緒に研究室に来たときも、四つん這いになってわんぱちワンパチに飛びかかる変態…もとい変人で…、もし私一人きりで彼と遭遇していたらジュンサーさんに通報しただろう。

 そんな感じで私のサトシに対するファーストインプレッションは決して友好的なものではなかった。

 でも…

「あっ、手伝うよ!」

「コハルは危ないから下がっててくれ!」

「大丈夫かコハル?」

 今までの言葉と行動の端々に見せる彼の優しさ…

「オレたちの絆…メガシンカ!」

「でっかくいこうぜ!キョダイマックス!」

「ピカチュウ、いっせんまんボルトだぁ!!」

 そしてゴウ達と行動するようになってから見るようになったサトシのバトル。

 勇ましく、そして心から楽しそうにバトルをするサトシを見て、私は少しだけ、そう、ほんの少しだけ彼への認識をいい印象へと改めはじめていた。
 ▼ 18 プ・テテフ@レトルトめん 22/04/13 20:38:27 ID:pm1Qgfyw [2/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 私はゴウ達に同行するようになってからというもの、つぶさにサトシを観察してセレナに報告するようになった。

 サトシをよく観察するようになってわかったこと、それは彼は意外と大人びている面があるということだ。
 食べ物や遊びを前にすると年相応にはしゃぎ回り、少し大人ぶりたいゴウすら巻き込んで無邪気に騒ぐ。
 私は彼の本性はそこなのだとはじめは勘違いしていた。

 しかし、ことポケモンバトルとなると普段の無邪気さから一転して、冷静かつ大胆な面が垣間見えるようになる。

 自分にもそして相手にも全力を求めるサトシのバトルはいつも見ていてハラハラするものばかりだった。
 決して弱くないトレーナーを相手にサトシはいつも全力バトルだ。

 相手の技を見極め、ギリギリで交わして反撃の一手を加える。
 一見単純なようだが実に難しいことをサトシは自分のポケモンで見事にやってのけている。

 ゴウはサトシのバトルを見ながらそう解説してくれた。
 バトルのことはよくわからないけど、サトシも、サトシのポケモンもほんとうに楽しそうにバトルをしていることが感じ取れた。

 私はそんなサトシの表情を見てると、時々鼓動が早くなってくることに気づいた。
 その時はサトシのバトルのワクワク感が私にまで伝わってきたのだと、そう理解していた。
 ▼ 19 ルヴァディ@メガアンクレット 22/04/13 20:39:07 ID:pm1Qgfyw [3/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 そして、サトシには別の一面がある。
 ポケモンにとても優しいところだ。

 ゴウと遊んでいるときのサトシは、どこからどう見ても同年代の、下手すると自分より精神年齢が低いぐらいの子供っぽさを見せている。
 しかし、傷ついたり困っているポケモンを見つけると、それが野生だろうが人のポケモンだろうが一切の遠慮なく首を突っ込んで、彼らの助けになろうとする。
 技を出せなくて困っているポケモンがいれば一緒に練習!?して手伝いをしたり、時にはその体でポケモンの技を受けたりする。
 はじめてサトシのそんなトッピもない行動を見たとき、私は目を白黒させ、そのたびにゴウとピカチュウは慣れた様子でやれやれとため息をついたものだった。
 そしてサトシは、ポケモンがなかなか技を出せなくても辛抱強く寄り添い、とてつもない威力の技を受けても、イヤな顔ひとつせず彼らを受け止めていた。

 サトシの手当てをしながら聞いたことがある。

「どうしてそこまで出来るの?」

 するとサトシはニコッと笑って答えるのだ。

「オレ、ポケモンが大好きだからさ!」

 その時のサトシの顔が眩し過ぎて、思わず視線を逸らしてしまったことを今でも覚えている。
 ▼ 20 ノマダム@タウリン 22/04/13 21:15:49 ID:tTiIxdxA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>15
お前が邪魔だわ
支援
 ▼ 21 ォーグル@オニゴーリナイト 22/04/13 21:36:09 ID:rglEr1aQ [1/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 なるべくゴウたちと行動するようになってから、セレナにはサトシがらみで何かが起こるたびに、状況報告を兼ねておしゃべりする日々が続いていた。
 私がサトシの話をするたび、セレナは表情をコロコロ変えて、本当に楽しそうだった。

 もっとセレナを喜ばせたくて、ときどき一計を案じて、ワザとサトシのいるところで電話してサトシを無理矢理会話に参加させるときもあった。
 セレナは顔を赤くしながらなんとか平静を装って、私から聞いた情報をもとにサトシの気を引けるような話題で彼に話しかける。するとサトシもすぐに楽しそうにセレナとの話に乗る。
 そしてすぐに二人は打ち解けて私の知らない思い出話に花を咲かせるのがいつものパターンだった。
 私は二人が話に夢中になるとそっとその場を離れて遠目からその様子を眺めることを楽しんでいた。

 セレナの幸せそうな顔を見るたび心がふわふわと温かくなる。

 だけどその一方で、サトシに対してなぜかイライラが募るようになっていた。
 その時の私は、この苛立ちは彼女の好意に全く気づかないサトシの、彼の鈍感さに対して向けられているのだと思っていた。

 でも私のこの苛立ちも、サトシのバトルを見ているときの胸の高鳴りも、別の感情に由来していたのだ…。
 ▼ 22 モリ@おおきなマラサダ 22/04/13 21:37:51 ID:rglEr1aQ [2/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「イーブイ、どこなの?」

 その時の私はイーブイを探して、ジョウト地方のとある森の中を歩いていた。

 キャンプしていた私たちのそばから急にイーブイが離れて森の中に走り出したのだ。

「待って、イーブイ!」
「どうした、コハル?」
「イーブイが急に…。」
「ゴウ、オレたちも追っかけようぜ!」
「ああ!」

 私たちは懸命にイーブイを追いかけたけど、小柄なイーブイはすぐに森の影にまぎれて見失ってしまった。

「別れてみんなで探そう!この辺りはリングマの縄張りらしい…。」

 ゴウは緊張した面持ちでみんなにそう伝えると、私たちはイーブイを早く見つけるため分かれて行動した。

 私は早くイーブイを見つけようと懸命に森の中を探した。
 ▼ 23 ジッチュ@サメハダナイト 22/04/13 21:38:25 ID:e.lIgl36 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こういうssを待っていた。
支援する以外あり得ない。
 ▼ 24 ガピジョット@ガンバリのじゃり 22/04/13 21:38:50 ID:rglEr1aQ [3/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 そして思いが功を奏したのか意外とあっさりイーブイを見つけることができた。

「良かった、イーブイ。こんなところにいたのね!…あれ…あなたは…?」

 私はイーブイの横に立つヒメグマの存在に気づいた。
 ヒメグマは木の枝にでもひっかけたのだろうが切り傷が出来ていた。

「そっか…。イーブイはこの子の怪我に気づいたのね!」

 私はきっとヒメグマの泣き声の駆けつけたであろうイーブイの優しさに感激する。

「ちょっと待っててね、いいものがあるから…。」

 私はリュックを下ろすと、中から傷薬と包帯を取り出して、ヒメグマの正面に座った。
 イーブイがヒメグマに説明してくれたのか、ヒメグマは素直に怪我した方の腕を私に差し出してくれた。
 私は今まで怪我したポケモンの治療法を思い出しながら慎重に手当てを行った。
 そして数分後…

「ヒメッ♪ヒメッ♪」
「イッブイ♪ブイ♫」

 不格好な包帯を腕に巻いたヒメグマは、痛みも引いたのか、嬉しそうにイーブイと飛び跳ねていた。

「ああ良かった…。なんとか治ったみたい…。」

 私は額に浮かんだ汗を拭いながら無事にヒメグマの治療を終えたことに、安堵のため息をついた。

「さっ、帰ろうイーブイ、ゴウたちが心配してるよ……ああっ!ゴウに連絡するの忘れてた!」

 私はヒメグマの治療に集中するあまり、イーブイ発見の報告をすることをすっかり忘れていたのだ。

「すぐに電話しないと…。」

 私は慌てて立ち上がり、焦りながらスマホロトムを取り出すと画面をタップし出した時だった。

「イッ…!イッ…ブイ……。」

 突然イーブイが怯えたような声で鳴き始めた。

「どうしたのイーブイ?」

 私がスマホロトムから視線を外して前を向く。

「…あっ…あぁ……!」

 その瞬間私の全身が危険信号を発し、その衝撃スマホを地面に落としてしまった。

「ゴフゥ…ゴフゥ…!」

 私の身長の倍以上もあるリングマが血走った目でこちらを睨んでいた。
 ▼ 25 ードラ@シャラサブレ 22/04/13 23:20:18 ID:4m8MfUpw NGネーム登録 NGID登録 報告
真面目に面白そうだ
支援であります!
 ▼ 26 リーマン@たいようのいし 22/04/14 00:18:01 ID:fnxosbco NGネーム登録 NGID登録 報告
期待大
超絶感謝
 ▼ 27 ッシード@スイートトリュフ 22/04/14 00:36:43 ID:XMVwnEmY NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
セレナはどうあがいても絶望なのか、それとも・・・
 ▼ 28 ラーチ@ねばりのかぎづめ 22/04/14 01:55:33 ID:4skA3bbw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
文章力が高すぎる
 ▼ 29 ンニュート@ダイブボール 22/04/14 07:44:08 ID:Ql12gtOA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヒカリやセレナとの関わりで間接的にサトシとコハルの接点が増えてSSも書きやすくなったな
期待
 ▼ 30 チャモ@イリマのノーマルZ 22/04/14 19:40:08 ID:MWAEBDFg NGネーム登録 NGID登録 報告
>>27
この作者にサトセレは期待しない方がいいよ。
というかサトセレはpixivとかに書いてる人結構いるしぽけりんにも現行スレあるからそっちに行った方が良いと思う。
 ▼ 31 ルケニオン@ごりごりミネラル 22/04/15 01:44:44 ID:fYBgfgmo NGネーム登録 NGID登録 報告
エロあり?エロなし?何にせよ超絶支援
 ▼ 32 ラルダルマッカ@きいろいバンダナ 22/04/15 03:14:06 ID:eKSMQIjQ [1/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「イッ…イーブイ…こっちに来て…。」
「ブイィ…。」

 私は立ちすくんだまま動けなくなったイーブイを抱き抱えると、恐怖を必死に抑えながらリングマを見つめる。

 リングマは怒りのせいか目を赤く光らせ、興奮で鼻息を荒くしながらゆっくりとこちらに近づいてくる。
 もしかしたらこのリングマはさっき治療したヒメグマの母親で、このヒメグマを傷付けたのが私たちだと誤解しているのかもしれない…。

 私の予想は的中したのか、リングマは足元で必死に彼女?をなだめるヒメグマを無視してズンズンと近づいてくる。
 子が傷ついた怒りで我を忘れているようだった。
 私は愚かにも、生まれて初めて野生のポケモンの怖さを身をもって知った。
 トレーナーに手懐けられていない、生きて子孫を残すのに命懸けの野生ポケモンの迫力を前に私の膝はガクガク震え、腰が抜けそうになった。腕の中のイーブイもビクビクと震えている。
 しかしリングマは私たちの恐怖など知らんとばかりにさらに近づき、その右腕を光らせ始めた。
 なんの技かわからないが、その巨体から放たれる技はきっと私達の命を、木枝をおるかのように容易く奪える力があることを本能で感じ取った。

「いぃぃ…イーブイ…逃げて…。」
「…ィィィブイ………。」

 私は奥歯をガタガタ震わせながら、イーブイに懇願する。
 しかしイーブイに私の恐怖が伝染してしまったのか、固まったように動かない。

「イーブイ…お願い…。」

 私は知らず知らずのうちに流れて来た涙をそのままにイーブイに言葉を伝える。
 しかしそれでもイーブイは動かなかった。

 そうしてる間にリングマは私たちの目の前で動きを止めると、右腕を大きく振りかぶった。

 ああ…もうだめだ…私は助からないんだ…でも…
 
 せめて私はイーブイだけでも守ろうと、イーブイを守るようにリングマに背を向けたその直後…

 肉をハンマーで叩いたような鈍い音が響き渡った。
 ▼ 33 ンキー@ウブのみ 22/04/15 03:24:45 ID:eKSMQIjQ [2/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「え…!?」

 死を覚悟した私たちに、しかし、なんの痛みも衝撃もなかった。

 恐る恐る顔を上げると、目の前には…

「なにやってんだコハル!早く逃げろ!」

 サトシがリングマに背を向けて私の目の前に立っていた。

「あ…サトシ…?」

「…っ!いいからいくぞ!」

 サトシは一瞬顔を歪めたけど、そのまま私の手を掴むと一気に走り出した。

「はぁっ…はぁっ…!」
「サッ…サトシ…!」

 サトシは森を突っ切りながら真っ直ぐ進み続ける。
 振り向くとリングマは私たちを追い払うことで満足したのかそれ以上追いかけてくるそぶりを見せなかった。

 それでも私たちは止まらず森が切れるまで走り続けた。

 そして数分後、ようやく森を抜けて開けたところに出ることできた。

「ハァッ…ハァッ…大丈夫かコハル…。」
「はぁ…はぁ…うん…私もイーブイも…大丈夫だよ…。」

 サトシも私も呼吸を整えながらようやく安堵のため息をついた。

「そっか…っく…どこも怪我してないか…?」

 サトシはほんの一瞬一瞬顔を歪ませたけどすぐに元の表情で私たちのことを心配してくれた。

「うんっ!リングマの攻撃もあたってなかったみたい!」

 私はサトシに心配をかけまいと笑顔で無事を伝える。
 けど…

「…あれっ……?」

 意図せずして両目からポロポロと涙が溢れて来た。

「…おかしいな…、もう大丈夫なはずなのに…。」
「イブィ?」

 危険は去ったはずなのに何故か涙が止まらなくなった。

「…コハル…これ使えよ…。ごめんな、遅くなって…ピカチュウたちとも別れてイーブイ探してたんだけど、リングマの声が聞こえてきたからさ…。」

 サトシは戸惑う私には白いハンカチを差し出せてくれた。

「…んっ…ありがと…。」

 私はそのハンカチを受け取ると、目から溢れる涙を拭った。
 きっと安堵の涙だったんだと思う。

 サトシはハンカチを渡した後はなにも言わず、優しい表情で私たちを見守ってくれていた。
 ▼ 34 ッポウオ@ルールブック 22/04/15 03:26:19 ID:eKSMQIjQ [3/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ふぅ…ありがとう、サトシ。ハンカチは洗って返すね。」

 ようやく涙が止まった私は、グッショリと濡れてしまったハンカチをポケットにしまった。

「いいよ、気にしなくて。それより戻ろう!きっとゴウが心配してるぜ!」

 サトシはいつもの天真爛漫な笑顔になると、キャンプを予定した方向に一歩踏み出した。
 だけど、

「…っつぅっ!!」

 サトシは突然背中を押さえながらひざまづいてしまった。

「どうしたのサトシ!」

 私はサトシに駆け寄って彼の顔を覗き込む。
 その表情は明らかに苦痛で歪んでいた。

「へっ…平気へいきっ…!早く帰ろう…ぜ!」

 明らかに平気じゃない顔でサトシはそういうけど…。
 
 まさか!

「サトシ!服脱いで!」
「へ?ちょっと…まっ…!」

 私はサトシのベストとシャツを強引に脱がせると、彼の背中を見てギョッとした。

 彼の背中が真っ赤に腫れあがっていたのだ。出血はないけど肩甲骨から背骨にかけて大きなミミズ腫れのような腫れが広がっている。

 私はすぐにその原因を察した。
 
 リングマの攻撃だ。
 サトシは私たちを庇うために、リングマとの間に割って入ってその攻撃を背中で受け止めたんだ。

 サトシは私のせいで大怪我してしまったんだ。
 動くのも辛いくらい酷い怪我で…きっとすぐに病院に行きたかったに違いない。
 だけどサトシは私が落ち着くまで待っててくれて…。
 だったらせめて…

 私はショックを受けながらも、落ち込むのは後だと判断して、彼に応急手当をすることにした。と言っても治療に必要な荷物はリングマのところに置いて来てしまったから、今はほんの気休め程度のことしかできない。
 私はサトシから借りたハンカチを取り出すと、イーブイの前に掲げた。

「イーブイ、お願い!」
「イッブイ!」

 するとイーブイは私の思いを察してくれたのか、ハイドロポンプを思いっきり弱めて口から出してくれた。
 私はハンカチをその水で浸すと、軽く絞る。

「ちょっと動かないでね…。」
「なっ…なにを…。」

 私は濡れたハンカチを広げると慎重に腫れた患部に充てた。

「あっ…!…ふぅ……。サンキューコハル……。」

 サトシは一瞬ビクリとしたものの、すぐに気持ちよさそうなため息をついた。
 サトシの心地良さそうな表情にホッとした私だったが、怪我したところは相当熱を持っているのか、ハンカチはすぐに温くなった。
 ▼ 35 ニータ@フォトアルバム 22/04/15 03:26:41 ID:eKSMQIjQ [4/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

「あっ、またハンカチ冷やすね。」

 私はハンカチを剥がすと再びイーブイに水で冷やしてもらってすぐに患部に充てる。
 ハンカチを取り替えるたびにサトシは気持ちよさそうなため息をつくのが、不謹慎だとは思うが楽しくなって来た頃だった。
 つい、私は熱が引いて来たサトシの背中をまじまじと見つめてしまった。
 サトシの背中は思ったよりゴツゴツとしていてゴウやクラスメイトの背中よりも少し大人っぽい気がした。
 そのことに気づいた瞬間、私の鼓動はリングマの時とは違う高鳴りを響かせた。
 そして顔を近づけて初めてわかったんだけど、サトシの背中は傷だらけだった。目立つような大きな傷はないけれど、小さな傷がポツポツと背中のあちこちで見つかった。
 私はドキドキしながら彼の背中の傷を見て、サトシはも今日みたいなことをいっぱい経験してきたんじゃないかと想像を巡らせた。
 ポケモンを庇った傷、仲間を助けるために負った傷、中にはポケモンの技の練習台なった時にできた傷もあるかもしれない。
 だけどこの傷の一つ一つがサトシの優しさの証ではないかと思い始めていた。

「……コハル?くすぐったいんだけど…。」

 サトシはなんだか困ったような声を出す。
 その声で私はハッと、現実に意識を戻した。

「あっ…?ええっ…!!ごっ…ごめん!」

 私はあろうことか無意識のうちにサトシの背中の古傷に指を這わせてしまっていたのだ。
 私は非礼を詫びて慌ててサトシのそばから飛び跳ねるように離れた。
 ▼ 36 スラオ@まっさらプレート 22/04/15 03:27:47 ID:eKSMQIjQ [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ごごごご…ごめんなさいっ!あのっ…わたしっ……」

 私は必死に言い訳を探すが、全く言葉が出てこない。

「……?」

 サトシは怪訝な顔を見せたけど、すぐにいつもの明るい顔に戻って言った。

「そろそろ戻るか。コハルのおかげですっかり良くなったぜ!」

 サトシは少しだけぎこちない動きで服を着ながらそう言った。

「う…うん!早く戻ってサトシも病院に行かないとね!」

 私は焦りながらサトシより先に進み始める。
 なぜか早鐘を打つように早くなり始めた鼓動が聴かれないように、真っ赤になった顔をサトシに見られないように…。
 ▼ 37 fDgXbkVssI 22/04/15 03:33:50 ID:eKSMQIjQ [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日はここまでで…

唐突にアンケートですが
エロ要りますか要りませんか?
 ▼ 38 ョロネコ@パワフルハーブ 22/04/15 04:02:51 ID:0qawvgYE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
要らないよー
でも別に入れたかったら入れていいよー
 ▼ 39 ェローチェ@ライトストーン 22/04/15 04:29:55 ID:MW2w1CCw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いらない
上手い

関係ないけど、るろ剣の恵思い出した
ヒカリ「サトシはね、私でもなくセレナでもなくコハルを選んだのよ。あなたの笑顔がサトシにとって一番の薬なんだから。」
 ▼ 40 タモン@ビーだま 22/04/15 05:26:00 ID:cywc1RZ. NGネーム登録 NGID登録 報告
エロ無くてもこれ程の文才ならきっちり真面目なサトコハにしてくれるだろうし無くて良いんじゃないかと
 ▼ 41 リーラ@カゲブンシメジ 22/04/15 05:58:06 ID:p5bI6IGY NGネーム登録 NGID登録 報告
要ります
エロ目当てと言うより話に緊迫感出るので
 ▼ 42 バニア@ガンバリのいし 22/04/15 06:00:28 ID:yPaMj7qQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
入れてほしい派だけどいらない派が多いな…。
まあお任せします
 ▼ 43 ビット@エフェクトガード 22/04/15 06:01:16 ID:5TS2ZgMI NGネーム登録 NGID登録 報告
今のままでも良いけど少しエロ有も見てみたい気がする。
 ▼ 44 ドラン@メガトンボール 22/04/15 06:05:50 ID:9zhQSab6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あってほしい 
 ▼ 45 ガガルーラ@おいしいみず 22/04/15 06:23:21 ID:iVHstnws NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ありで問題ないと思うが
要らない派が多いならエロ有りの部分だけ
別スレに分ければいいんじゃない?
 ▼ 46 オガラス@プレシャスボール 22/04/15 10:02:36 ID:dVMcxfXM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
無しがいいかなあ
 ▼ 47 ルビル@グラスメモリ 22/04/15 10:04:15 ID:75bUwi0U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いらない
 ▼ 48 ンヤンマ@てんくうのせきばん 22/04/15 10:05:32 ID:W.AEazH6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援だほ
 ▼ 49 イロス@ぎんのナナのみ 22/04/15 10:06:08 ID:v1XkdEB. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
どっちでもいいだほ
作者に委ねるっ処理できません
 ▼ 50 ライゴン@ひのたまプレート 22/04/15 19:20:50 ID:mqpQCN7. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
このssにはエロがあった方が嬉しい
 ▼ 51 ノズ@ヤシのミルク 22/04/15 19:35:32 ID:9Ub2VBDI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
作者のモチベがたかい方で
支援
 ▼ 52 トシゲッコウガ@ビアーのみ 22/04/15 19:46:03 ID:u5I6b8Hc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そこまで求めてないけど、もしエロシーンがあるならコンドームつけた方がよりいいかも、支援
 ▼ 53 ーフィア@むしくいぼんぐり 22/04/15 21:13:53 ID:qYScOQUI NGネーム登録 NGID登録 報告
あっても嬉しいし無くても満足
エロ加えるなら別枠のが良いかな
 ▼ 54 ンプジン@リバティチケット 22/04/15 22:01:45 ID:/DKw/jgI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
欲しい、絶対欲しい
 ▼ 55 ゲデマル@ギンガだんのカギ 22/04/16 01:26:42 ID:irJsI4y. NGネーム登録 NGID登録 報告
>>37
お任せ致します
作者様の自由に書きたいように書いて頂きたい
 ▼ 56 ガハガネール@ヨロイこうせき 22/04/16 02:38:29 ID:KFG2C9r. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
分岐で両方……、って手もありますぜ。
 ▼ 57 ヌギダマ@ちかのかぎ 22/04/16 05:51:29 ID:ogLQ60Bk [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
エロ有りでお願いします。むへひ
 ▼ 58 ガバンギラス@はつでんしょキー 22/04/16 05:52:53 ID:ogLQ60Bk [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>57
むへひというのはミスです。
 ▼ 59 ャオハ@マトマのみ 22/04/16 08:16:35 ID:jP2M/Z/Q NGネーム登録 NGID登録 報告
なくて良い
 ▼ 60 ニノコ@せきばんのかけら 22/04/16 08:35:24 ID:bSS2.uxQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あって良い
 ▼ 61 ングドラ@かいでんのタネ 22/04/16 08:52:20 ID:0IF2T5UM [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あった方が満足感はあると思う
 ▼ 62 プ・テテフ@プテラナイト 22/04/16 09:04:19 ID:GGJwGuPc [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お任せで
 ▼ 63 レビィ@フライもりあわせ 22/04/16 09:09:01 ID:q2ME0DRw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エロばっかだし無いのもみたいんで無しで
 ▼ 64 ガデンリュウ@かおるキノコ 22/04/16 09:25:36 ID:EFJgQuX. [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
あった方がスレタイにより説得力が出ると思うが・・・
まぁ任せる
 ▼ 65 オルブ@しっぽのくんせい 22/04/16 10:25:37 ID:Hg7wKx8s NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あった方が臨場感あるけど、そこは作者次第
分岐は神
 ▼ 66 ランテス@フォーカスレンズ 22/04/16 10:26:13 ID:0IF2T5UM [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
分岐がいいです
 ▼ 67 クーン@オレンのみ 22/04/16 14:25:44 ID:J9EoHFe. NGネーム登録 NGID登録 報告
おらワクワクすっぞ!
 ▼ 68 ラエッテ@ぼうけんノート 22/04/16 14:49:25 ID:GzcoBgr2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サトコハSSとしては空前の注目率だな
序盤のアンケートで30レスもつくか
 ▼ 69 ニョニョ@サファイア 22/04/16 15:26:04 ID:RZqE.nNk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 70 ニノコ@くさのジュエル 22/04/16 15:58:12 ID:EP5IkkDc NGネーム登録 NGID登録 報告
エロシーンは完結後回想でって手も
面倒かもしれないですけど
 ▼ 71 スイクレベース@ちからのハチマキ 22/04/16 19:31:41 ID:rC8obWu6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
罪悪感を抱えながらも…という展開ならエロ有の方が好き。
>>68
サトコハは別作者が前に書かれていたssも人気があったから供給はほぼないけど需要はあったよ。
 ▼ 72 ングース@ひかるおまもり 22/04/16 20:35:14 ID:NKTA8F06 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
たぶん1〜2年後には「唯一の公式」になってると思うんだがなあ
サトコハ勢は最後勝ち組になるはず
 ▼ 73 fDgXbkVssI 22/04/16 21:58:19 ID:uc626KXc [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アンケート回答ありがとうございます。
なくてもいいけどあれば嬉しいと言った感じですね。
ですので両方で行くためにルート分岐型でいきます。
まずはエロなしルートで完結を目指しますので気長にお待ちください。
 ▼ 74 fDgXbkVssI 22/04/16 21:59:17 ID:uc626KXc [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 それから程なくして、心配して探しに来てくれたゴウやピカチュウたちと合流できた。
 サトシは真っ先に病院に連れて行かれたけど、医師の先生も驚くほど傷が浅くて、逆に驚かれちゃった。
 本人曰くもっと強い技を受けたことがあるから大丈夫だ、なんて言っていたけど本当だろうか?

 なにはともあれ、その日はキャンプはやめてポケモンセンターに泊まることになった。

 私はサトシたちから離れるとこっそりとセレナに連絡をした。
 セレナの好きな人を傷つけてしまったことに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
 だけど、セレナに責められると思った私はメッセージを送るだけで済まそうとした。
 だけどメッセージを送ってから程なく、セレナはすぐにビデオ通話をかけてきた。

 私は不安な予感に苛まされつつも出ないわけにはいかず、重い気持ちで通話開始ボタンを押した。

「コハル、大丈夫だった?」

 しかし私の耳に届いたのは、罵倒ではなく心から私を心配してくれる優しい声だった。

「あっ…あのっ…私っ…サトシにっ…ケガをっ…。」

 私は彼女の優しさに安堵すると同時にセレナに対して、自分を責めるのではないかと、酷いことを思ってしまった罪悪感に動揺してしまい声を震わせながら事情を説明しようとした。
 すると、

「大丈夫だよコハル!またサトシが無茶をしたんでしょ?サトシのことは気にしないで…。いつものことなんだから!」

 私の後ろ向きな不安を打ち消すような優しい笑顔でセレナは私を励ましてくれた。

「えぅっ…でもっ…!」

 私はまた泣き出していた。セレナの優しさと彼女への申し訳なさに胸がいっぱいになったから。

「ホントに大丈夫だから!もう!これくらいで泣いてちゃサトシについていけないよ!」

 鳴き続ける私にセレナは優しく叱咤する。

「サトシはいざとなったら溶岩にだって飛び込むくらい無茶するんだから、今のうちに慣れとかないと身がもたないよ!」

「へ…?溶岩に…?」

「そうそう!前にね、ファイヤーが…」

 セレナの嘘のようなサトシのエピソードに夢中になるうちに私は自然と泣き止んだ。
 ▼ 75 fDgXbkVssI 22/04/16 22:00:10 ID:uc626KXc [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 そして…

「…って言うわけでなんとかなったわけ!」

「ええっ!?そんなことが!」

「うん……って、ああ!もうこんな時間だわ!それじゃあもう切るね!」

 セレナは時計をチラリと見る素振りを見せて会話を終了しようとした。

「うん!ありがとうセレナ!」

 すっかり気分を持ち直した私はセレナに笑顔を向ける。

「ええ!サトシをこれからもよろしく…。」

 セレナはそこまで言って一瞬言葉を止めて、こちらに視線を集中した。

「…えっ?どうしたのセレナ?」

 そのとき彼女の目の光が、ほんの一瞬消えたような気がした。
 私は彼女の変化に戸惑う。
 するとセレナはすぐに瞳に輝きを取り戻した。

「ううん!なんでもないっ!頑張ってね!」

「セレナもコンテスト、頑張って!」

 そして私たちはお互いにエールを送り合って通話を終えたのだった。

 暗くなった画面をしばらく見つめながら、私はあらためて、この優しいセレナを応援しないといけないと決心を固めた。

 …固めたはずだったのに。

 その日の晩、私はポケモンセンターの個室のベッドに入ったまま今日の出来事を思い返した。

 怪我をしたポケモンのもとに駆けつけたイーブイの優しさ…
 怪我が治ってはしゃいでいたヒメグマの可愛らしさ…
 野生のリングマの身の毛がよだつ恐ろしさ…
 腕の中のイーブイと死を覚悟した瞬間とサトシが助けに来てくれた時の驚き…
 森を抜けた後の安心感…
 サトシが怪我をしていたとわかった時の衝撃…
 
 本当に色んなことがあって疲れたなと思いながらも、一番印象的だったのがサトシの背中をまじまじと見てしまったときの胸の高鳴りだった。
 サトシの背中から同年代の男の子にはない大人っぽさを感じたことを思い出したら何故か顔が熱くなってきた。

「…サトシ……」

 布団を頭にかぶりながら、小さな、本当に小さな声で彼の名前を呼んだ。
 するとますます顔が熱くなってきた。

 ……もう寝なきゃ!

 私はエスカレーションしそうな思考を強制停止させるため、強く目をつむって眠気の到来を強く願った。
 ▼ 76 fDgXbkVssI 22/04/16 22:03:30 ID:uc626KXc [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 リングマの一件以来、私は妙にサトシを意識するようになってしまった。

 サトシに話しかけられても、ギクシャクした回答しか出来ない。
 うっかりサトシと二人きりになってしまったら、妙に緊張してしまって、ただの世間話も上の空で返事してしまう。
 そしてその空気が嫌になった私は、なるべくサトシと接触しないように注意するようになった。
 もちろんセレナのためにサトシの行動をチェックすることは欠かさないけど。
 私のそんな態度を感じ取ってか、サトシの方も私といるときはなんとなく居心地が悪そうに見えた。

 悪いのは私なのに…

 そんな日々を過ごしていたある日、私が研究所のキッチンで本を読んでるとき、ゴウが神妙な面持ちで私に話しかけてきた。

「なぁ、コハル…。あの…さ…。」

 珍しく緊張した表情の幼馴染は、非常に言いにくそうな物言いで口火を切った。

「サトシと…なんかあったのか…?」
「…えっ?…なんで…?」

 サトシとの仲は、今は確かにギクシャクしてるけど、表だって険悪というほどでもない。それなのにゴウが気になるのは何か理由があるはず…。

「いや…、サトシがさ…最近落ち込んでるんだ。コハルがなんか素っ気ないって…。」

 ゴウは心配そうな顔でそう言うと、

「ははっ…、意外だよなぁ。サトシがそんなことで落ち込むなんて…さ…。」

 乾いた笑い声でつぶやいた。

「…………」

 だけど私はゴウの質問に答えることは出来なかった。
 だって私自身、なぜサトシといると緊張してしまうのかわからないから…。

 沈黙を続ける私に、ゴウは不安そうな視線を向けながら言葉を選ぶようにゆっくりと口を開く。

「なぁコハル…。なんていうか…サトシのこと…嫌いか…?」

「ううん!そんなわけない!」

「えっ?」

 私はゴウが戸惑うくらい、勢いよく答えてしまっていた。
 ▼ 77 fDgXbkVssI 22/04/16 22:07:20 ID:uc626KXc [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「…そうなのか?」

「うっ…うん。だってサトシっていつも明るくて面白いし、時々子供っぽいところあるけど…。」

「見てて飽きない!」

「うん!」

「だろ?」

「それにすごく優しいし、誰かのために無茶をするけど、そこがほっとけないというか…。この間もね、キャタピーが…」

 私は自分が思った以上にサトシのいいところをスラスラと話すことができることに驚きながらも口が止まらない。
 私は次から次へとサトシのいいところをあげ続ける。

「わわ…ストーップ!コハルッ!」

 慌てた様子のゴウは手のひらを私に向けて私の言葉を遮った。
 まだちゃんと説明出来てないのに…。

「わかったわかった!コハルがサトシ嫌いなじゃないことはよーくわかった!」

 ゴウはホッとした顔で続ける。

「安心したよ。別にサトシのこと嫌ってないってわかって…。」

「う…うん…。」

 喋りすぎたと自覚した私は少し恥ずかしくなってきた。
 ▼ 78 fDgXbkVssI 22/04/16 22:07:53 ID:uc626KXc [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「じゃあさ、今度の休みみんなで遊びに行こうぜ!サトシが見たがってた映画があるんだけどさ。それ見に行くのも兼ねてさ、じっくり話し合ってみてくれよ!」

「ええっ!?急にそんなこと言われても…。」

 ゴウの急な提案に少し戸惑う私。
 だけど…

「頼むっ!オレ、嫌なんだよ、サトシとコハルがギクシャクしてるの…。」

 両手を拝み合わせて頼み事をするように言う幼馴染を前に、

「うん…わかった…。」

 了承するしかなかった。

 私だってサトシと不自然な感じでいるのは…辛かったから。

 これをきっかけに仲直りできたらいいな。

 私はゴウの安心した顔を見ながら次のお休みへの期待に胸を膨らませた。
 ▼ 79 fDgXbkVssI 22/04/16 22:08:36 ID:uc626KXc [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日はここまでで…
次回を気長にお待ちください…
 ▼ 80 ジョッチ@ほのおのいし 22/04/16 22:14:47 ID:uJbottEc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
楽しみに待ってます。
 ▼ 81 リープ@デボンボンベ 22/04/16 22:18:09 ID:EFJgQuX. [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
セレナもう勘づいたか?
支援
 ▼ 82 ダリン@マルチアップ 22/04/16 22:29:08 ID:0IF2T5UM [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
分岐してくれるの嬉しい🤗支援
 ▼ 83 ルガレオ@きのはこ 22/04/16 22:29:25 ID:0IF2T5UM [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
分岐してくれるの嬉しい🤗支援
 ▼ 84 ロバー@こうてつプレート 22/04/16 22:36:38 ID:GGJwGuPc [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
楽しみだな
 ▼ 85 ミロップ@さらさらいわ 22/04/18 00:04:32 ID:JR7E76bs NGネーム登録 NGID登録 報告
気長に待つぜ
ゼンリョク支援
 ▼ 86 ルディオ@しんぴのしずく 22/04/18 05:00:13 ID:Tdc61Yhk NGネーム登録 NGID登録 報告
支援、こんな良い小説の為ならいくらでも待てます。
 ▼ 87 クリン@のびたバネ 22/04/18 16:40:43 ID:0J22iCJ2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 88 ーディン@うすもものミツ 22/04/18 18:21:20 ID:10rojI7w NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 89 fDgXbkVssI 22/04/18 21:55:13 ID:CC.gp4o2 [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告


「いってきまーす!」

 そして迎えた学校も研究所もお休みの日、私は映画館のあるショッピングモールに行くため、家を出発しようとした。
 現地集合ということで、遅刻しないように早めに出ようとしたときだった。

「コハル、ちょっといい?」
「なに?お母さん?」

 お母さんが呼び止めてきた。どうしたんだろう?

「うん…。保護者会のメールが回ってきたんだけど、不審者が多発しているから注意しなさいって書かれてて…。」

 お母さんは心配そうにスマホの画面を見せてくれた。

『クチバシティ郊外に不審者の目撃上場多数。お子さんに注意喚起をお願いします……』

 そんな文面だった。

「大丈夫だよ、郊外ってことはここから離れてるところでしょ?」
「そうだけど…。」

「平気平気!いざとなったらイーブイが守ってくれるし、ね!イーブイ!」
「イッブイ!」

 私はイーブイを抱きしめるとお母さんを安心させるように笑顔を向けた。

「…まあ、とにかく気をつけてね!」
「うん!…あっ、もう行かないと!いってきまーす!」

 私は時計を見ると、まだ心配そうなお母さんを置いて玄関から駆け出した。
 ▼ 90 fDgXbkVssI 22/04/18 21:55:41 ID:CC.gp4o2 [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
 そしてしばらく後、私は大型ショッピングモールの入口のそばの待ち合わせ場所でサトシとゴウを待っていた。

「まだかな…。」

 私はイーブイを抱きながら二人の到着を待つ。
 
 そしてそろそろ約束の時間という頃、

「おーい、コハル!」

 赤い帽子に青いベスト、白いシャツ、肩にはピカチュウといういつもの出立ちのサトシが手を振りながらこちらに近づいてきた。

「あ…!こっち!」

 私は平静を装ってサトシに手を振りかえす。
 今日の目的は、いつもの私たちに戻ることで…、はじめのうちからつまづくわけにはいかない。
 私はリングマの件以前のような二人の距離感になるように意識した。

「あれっ?ゴウは?」

 サトシが私の正面に立つと、いまだに姿を見せない幼馴染のことを尋ねる。
 私とサトシの間にゴウがいてくれたら気まずいこの状況もきっとよくなる。
 そう信じた私だったけど…。

「ああ!なんかピジョットを見つけたから先に行っててくれって言われてさ。」

 サトシが困ったように頬をかきながら答えた。

「…そうなの?」

 サトシの答えを聞いた途端、私はドキリとした。
 その瞬間、元の距離感に戻ろうと思った私の決心が揺らぐ。

「オレも手伝うって言ったんだけど…。コハルを待たせるなって怒られてさ…。」

「そっ…そうなんだ…。それじゃあ、待ってようか?」

 私は結局ぎこちなさを消せないまま、ゴウの到着を待つことを提案した。
 サトシと二人きりになるのは正直…まだ慣れそうもなかった。
 ▼ 91 fDgXbkVssI 22/04/18 21:56:42 ID:CC.gp4o2 [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
 私はサトシを近くベンチに誘って、隣同士に座る。
 どっかりと隣に座ったサトシは私に話しかけることなく帽子を被り直したりピカチュウを撫でたりして…、なんとなく緊張しているように見えた。
 私から話しかけるのもなんとなくはばかられて…気まずい沈黙が私たちを包み込んだ。

 そして数分後、サトシはようやくポツリとつぶやいた。

「遅いな…ゴウ…。」

「うん…そうだね…。」

 私たちはこの気まずい空気を打破してくれる幼馴染の到着を待ち侘びた。

 再び訪れる沈黙…だけどいくら待てどゴウは姿を現さない。
 この気まずさをどうしようかと途方に暮れそうな頃、私とサトシのスマホロトムが同時にメッセージの着信音を鳴らした。

「ゴウからだ!」
「うん!」

 私たちはこの空気をゴウが壊してくれることを願って、スマホを操作する。

「えーと…『悪いけどピジョットを捕まえるのに1日かかりそうだから…』」

「『今日は二人で楽しんでくれ!』ですって!?」

 同じメッセージを読み上げた私たちは思わず顔を見合わせた。

 どうしよう…。ゴウが間に入ってくれるから仲直りできると思ったのに…。このままじゃ…。

 私はきっと今も呑気にピジョットを追いかけている幼馴染に心の中で歯軋りする。

「ん〜…。」

 対するサトシも頭をガシガシかいて困った様子だった。

 サトシもやっぱり私と二人きりじゃ困るよね…。

 せっかくの休みなのにサトシを困らせちゃいけないよ…。

 今日はもう帰ろう。

 そう決心した途端、ズキンと胸の奥が痛んだ気がしたが、それを振り切ってサトシに声をかけようとした時だった。

「あのねっ…サト」

「……っだあああぁぁっ!やめだやめだ!」

「えっ!?」

 サトシはベンチから跳ね起きると唐突に叫んだ。

「悩むのはやめだ!」

 サトシは私の正面に立つと宣言するように言った。

「コハル、ごめん!
 オレ、よく人から言われるくらい鈍感だからわかんないけど…、きっとコハルを怒らせるようなことしたんだろ?」

 サトシはどこまでも真っ直ぐな視線を私に向けてくる。その表情には相手に謝りたいという心からの誠意が浮かんでいる。
 ▼ 92 fDgXbkVssI 22/04/18 21:57:10 ID:CC.gp4o2 [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
 そんなサトシに私は申し訳なさがいっぱいになる…。サトシは何も悪くないのに…。

「だけど…許してくれないか?オレ、嫌なんだ…。このままコハルと仲悪いなんて…。」

 サトシはそう言うと頭を下げた。

 どうしよう…。
 私の方が悪いのに、サトシに先に謝らせたらどうしたらいいのかわからない…。
 だけど、私だってサトシと仲が悪いままなのは嫌だ。

「うん、わかった。仲直りしよう!」

 私は内心、自分を卑怯だと思いつつもサトシの謝罪を受ける形をとった。
 だってその方がスムーズにサトシと仲直り出来るから。

「良かったぁ…。ホッとしたぜ!」

 サトシは私の答えを聞くと、ニッコリと笑顔になる。
 私はサトシの輝くような笑顔に胸が痛みつつも安堵のため息をついた。

「よぉし!今日はとことん遊ぼうぜ!」

 サトシはガッツポーズをすると、すいと私に手を差し伸べた。

「あっ…うん!」

 私はほんの少しためらったが、彼の手を掴むとベンチから立ち上がった。
 サトシの手は、私の手と比べると男の子らしく少しだけゴツゴツしていて、そう感じた瞬間、また胸がドキリと高鳴った。

「映画の時間まであちこち行ってみようぜ!」

 サトシは意識してか無意識なのか、休日で人がごった返すショッピングモールの中、逸れないように手を繋いでグイグイ進んでいく。

 私の方は繋がれた手の感触に頭が沸騰してしまって、サトシの引っ張られるがままになっていた。
 ▼ 93 fDgXbkVssI 22/04/18 21:57:44 ID:CC.gp4o2 [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「おっ!あのお店、コンテストで使える道具があるぜ!」

「あのクレーンゲーム、ピカチュウのぬいぐるみがある!やろうぜ!」

「腹減ってきたな…。おっ!?あそこでコロッケ売ってるぜ!」

「悪りぃ、ちょっとバトルしてくるからコハルは見といてくれ!」

 サトシと私はショッピングモールの中を練り歩く。

 普段は買い物とかに興味がなさそうなサトシだけど、もしかして気を遣ってくれてるのかな…?

 そんな疑問を浮かべながら歩いていると道ゆく人たちから好奇の視線を向けられていることに気づく。

 その人たちから私たちはどう映っているのか、私がサトシに引っ張られている様を可愛らしいものを見る視線で私たちは見られていた。
 ときどき、若い女の人たちとのすれ違い様に、

「あの子達かわいいね。」
「しっ!デートを冷やかしやダメよ!」

 とか聞こえちゃって…。
 やっぱり周りからはデートみたいに思われているようで…。
 でも、それが少しも嫌じゃないことに気づくのは、サトシと映画を見終わった後だった。
 ▼ 94 fDgXbkVssI 22/04/18 21:58:09 ID:CC.gp4o2 [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ん〜面白かった!」
「うん!すごい迫力だったね!」

 サトシはエンドロールが終わり、明るくなった劇場内で大きく伸びをしながら息を吐き、私は力強く頷いた。

 私とサトシはすっかりもと通りになっていた。
 
 映画を見終わり、それを認識して嬉しくなったのと同時に、サトシのお腹がググ〜ッと大きな音で鳴った。

「ふふふっ…帰る前に何か食べてく?」

 思わず吹き出した私はそう提案すると、

「ああ!」

 サトシは輝くような笑顔頷いた。
 ▼ 95 fDgXbkVssI 22/04/18 21:58:53 ID:CC.gp4o2 [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
今日はここまでで…。
 ▼ 96 ガカメックス@むらさきはなびら 22/04/18 22:01:32 ID:WM0wnLEw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
不審者って誰だろう・・・次も楽しみ
 ▼ 97 ーナンス@おだやかミント 22/04/18 22:17:04 ID:UlUocnUA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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