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ボタンの眼鏡を奪って指紋ベタベタ付けたらその場に座りこんで泣き始めたからレンズペロペロして綺麗にしてあげたらさらに泣いた

 ▼ 1 ニリッチ@かいがらのすず 23/02/16 21:31:07 ID:2bbkolbA NGネーム登録 NGID登録 報告
ㅤ調子に乗りすぎたな、と思って眼鏡を返そうとした刹那。
ㅤ空気が変わった。
ㅤ肌のひりつく緊張感、背筋に這い寄る悪寒、心臓を鷲掴みにされているかのような強い圧迫感。
ㅤ額からどっと汗が吹き出す。
ㅤ眉間から鼻筋を伝って流れた汗が、顎からぽたりと滴るまでの十数秒の間、俺は微動だにしなかった。
ㅤ否、動けなかったのだ。
ㅤ危険だと分かっているのに、足が硬直して歩けない。
ㅤ気づけば、強く握りしめていた眼鏡はパキャリと割れていた。
ㅤ破片が手のひらに突き刺さっている。
ㅤ痛みはない。
ㅤそんなものを感じる余裕は、今の俺にはない。
ㅤ何故なら、そこにあるのは痛み等よりずっと先の根源的な恐怖。

ㅤそう、俺の目の前には、死があった。

ㅤ人とも似つかぬその生物はやがて、重く瞼を開いた。
ㅤ泣き腫れて血走った目が、こちらを覗いている。
ㅤその瞳に見つめられた瞬間に、俺の世界は色を失った。
ㅤ焦点の中心に収縮するモノクロームの世界。
ㅤ住人はただ二人。
ㅤそして今から、独りになるだろう。
ㅤあの眼鏡はきっと、これを抑えるためのものだったのだ。
ㅤ理から外れた異物。
ㅤ在るはずのないモノを見る魔眼。
ㅤだが、それを抑えるすべは、俺の手のひらの中で粉々に砕け散った。
ㅤもう後戻りは出来ない。
ㅤ俺は、ふと気になった。
ㅤその目には、一体何が映っているのだろう。
ㅤその目に、俺はどう映っているのだろう、と。
ㅤ壊すために作られた玩具か。
ㅤ屠られるために産まれた家畜か。
ㅤはたまた、モノとして認識すらされないような、視界の端のゴミ屑か。

ㅤ化け物が手を伸ばす。
ㅤそのか細い指が、俺の肌に触れる。
ㅤずぶり、と。
ㅤさして鋭くもない爪が、音を立てて首筋にめり込んだ。
ㅤ痛みはない。
ㅤ麻酔手術を受けている時のように、触感はあれど痛みは感じなかった。
ㅤ指先が血管の合間を縫うように、するりと肉を割って侵入してくる。
ㅤやがて、首の骨に触れた。
ㅤ骨を触られる感覚は初めてで、少々のむず痒さが来る。
ㅤ何故だか暖かい。
ㅤ下を向くことが出来ないからよく見えないが、どうやら首から垂れた血が少しづつ服を濡らしているらしい。
ㅤ三十五度の温もりが、汗で冷えた俺の身体を覆う。
ㅤそれはまるで、陽の光を浴びているかのような。
ㅤなんて穏やかな心持ちの中、突如として世界が廻った。
ㅤ空と地面がグルグルと。
ㅤ朝と夜が交互に来るように。
ㅤ惑星が自転をするように。
ㅤあまりにあっけなく、首をはねられた。

ㅤ徐々に薄れゆく意識。
ㅤぼやけた白と黒だけ視界の中で、ただひとつ。

ㅤ鮮やかな緋色が、散りばめられていた。

ㅤポケットモンスタースカーレットㅤ-DEAD END-
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