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【スワップSS】1つの落とし物から始まったライブキャスターラブ

 ▼ 1 お尻◆TkTZvY2zwg 23/04/17 05:44:45 ID:rc/ENog2 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
気温がポカポカと暖かくなる頃、春の匂いが仄かに香る1番道路、胸が高鳴り熱を帯びた頬を冷たい汗がつたう

いつもの白い帽子、いつもの白い服、手にぶら下げた鞄には私であって私ではない私のための衣装が入っている

彼には知られたくなかった衣裳、けれど認めて受け入れて貰いたい衣裳、そして脱ぎ捨てたい衣裳、だけどずっと着ていたい衣裳

私、ルリはアイドルだ。 人々に希望を届け勇気を与え元気を沸かせ、色々な人を幸せにする素敵なお仕事、誇りを持って責任を持って自信を持って日々励んでいる

しかし現実は非情、この世界にはお金が必要、アイドルを続けるにはアイドルで居続けないといけないのだ

アイドルたるもの、常に客の求める理想像を演じなければいけない、それ故に心を抑え込みそのまま少しずつ殺していき、自分という存在を消しアイドルのルリを表に出し続けなければいけない

プライベートな時間なんてほとんど無い、あったとしても大抵は頼んでもいない護衛付き、心も身体も休める瞬間はほんの僅か、日夜削られる心身

私の体と心は存外、とっくの特に限界だったのかもしれない

だからだろうか? 偶然落とし物をして、それを拾ってくれた彼に心を惹かれていったのは

本当は落とし物を受け取ったらそこで終わりにするはずだった、けれど私は何故か彼と連絡先を交換してしまった、アイドルなのに無名の異性と関係を持つ、こんなのは本来許されない、私はやらない

だけど求めていたのは安らぎ、本音を話し合える友達、私をルッコではなくルリとして認識してくれる恋人、

最初は相談相手として好きになった、その次は友達として好きになった、いつのまにか異性として意識していて、愛を覚えた

最初は戸惑った、他人を好きになってはいけない、付き合いたいなんて思ってはいけない、アイドルのルッコが不安定な恋愛感情を全否定してきた

けれど私は、ルリは、彼のことが好きで好きで大好きでしょうがなかった

相手の気持ちを考えすぎながら、電話しようかしないかで悩んで、観覧車に誘おうか否かで悩んで、ポケモン交換を申し込もうか迷って、それら全てがとても楽しかった

こんなな恋じゃない、とアイドル活動しながら紛らわしていた、アイドルという事を隠しながら紛らわしていた、そのうち自分の心を紛らわす事は出来なくなった、いつの間にか答えは出ていた

今日、私は、彼に全てを告白する。 アイドルであること、彼のことを愛していること、それでもアイドルを続けたいこと

どんな結果になっても私は後悔しない、愛する彼の家のインターホンをゆっくりと、人差し指で押した
 ▼ 2 お尻◆TkTZvY2zwg 23/04/17 05:45:22 ID:rc/ENog2 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
このSSは以下の企画に参加しています❤️

【SS企画】スワップSS祭2023 企画本スレ【エントリー締切:4/22】

【SS企画】スワップSS祭2023 企画本スレ【エントリー締切:4/22】

https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1930216
 ▼ 3 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/04/22 22:59:08 ID:yrEstFS2 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……一応キョウルリを広めて他の人にもキョウルリを書いてもらおうっていう目的もあってキョウルリ書いてるんで今回も元の案を没にしてキョウルリで1レス目を書いたんですよ
そしたらなんとですね、自分がキョウルリを書くことになったんですよ わけがわかりませんね 己の使命を全うしろということでしょうか
まあとにかくこのSSの続きを書くことになったのでよろしくお願いします
 ▼ 4 イルミーゼ@きんのおうかん 23/04/22 23:00:03 ID:B/BYzHGc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>3
さすがキョウルリ最推しのまちっどさん、期待してますよ
 ▼ 5 エレキブル@ソニアのほん 23/04/22 23:01:33 ID:yrEstFS2 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>4
この前も言いましたが最推しはヨウリエです(小声)
 ▼ 6 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/04/24 00:36:52 ID:/C6YTgAA [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







……けれど、返事はなかった。

よく見てみると家に明かりがついていなかった。連絡もなしに突然来ているのだからそういうこともあるだろうと予想はしていたものの……

急に恥ずかしさが頭の中で弾ける。


それなりに考えて出した結論ではあったけれどやっぱり告白というのはもっと考えてからの方がよかったんじゃないのか。

交際することになってもアイドルを続けるだなんていう覚悟も付き合ってくれること前提のような思い上がりじゃないのか。

そもそもとある筋から手に入れた彼の家がイッシュの旅の始まりの街であるというのもまるでストーカーのようではないのか。


「……何やってるんだろうね私……あはは」
 ▼ 7 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/04/24 00:45:04 ID:/C6YTgAA [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ひとまず帰って心を落ち着かせよう。

確かにいつかは向き合うことだけれど今日ではなかったのかもしれない。

……やっぱり、行き過ぎた感情だったのかもしれないし……


「あ、どうしたの?トウヤに何か用?」

「あの、違って……キョウヘイくん……え?」


表札を二度見する。

確かにそこにはキョウヘイという文字はなく、トウヤという文字が書かれている。




「……すみません、お家を間違えてしまったみたいです。あの、キョウヘイさんのお宅はどこにありますか?」

「キョウヘイ?……あぁキョウヘイね!でもキョウヘイの家はヒオウギだよぉ?」

「……え?」




そういえばイッシュの旅の始まりの街と言えばカノコとヒオウギの2つ。私は何故かカノコだと確信していた。なぜかはわからないけれど。

……本当にどうしてだろう?
 ▼ 8 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/04/26 01:31:59 ID:TpZ6C1XE [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「キョウヘイに用事ならそうだねぇ……そらをとぶを使うのが速いかな!場所を知らなかったらあたしが案内するよ!」

「……いいんです、今日はもう時間がないので」



半分嘘だ。確かに今日はもう時間がない。

だけれど、今後時間がとれるなんてこともないのかもしれないのだから。

それでも本当に気持ちを伝えられたなら……何も後悔はないはず、だった。





せめて1番道路の景色を目に焼き付けて帰ろう。

1人で通ることなんてきっと二度とないから。
 ▼ 9 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/04/26 23:46:35 ID:TpZ6C1XE [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴールドスプレーを使い、来た道を引き返す。

話によれば季節によって景色の変わる素敵なところだとか。

家からは離れているから散歩コースにはできないけれどまた来てみたいな。

そんなことを考えながらカラクサタウンに到着すると見慣れた顔の女性がルリを出迎える。

彼女の名はスミレ。ポケドルになった頃からのルリの護衛役だ。

……もっとも、仕事柄それだけに留まらなくなってきたのだが。


「……ヒントが少なすぎだよ、もう……意地悪なんだから」

「申し訳ございません。これでも善意で支援をしたつもりだったんです。相手の方と話をしているのならおおよそ目安はつくかと思いましたので。」


確かに彼の口から出る街の頻度でいえばカノコよりもヒオウギの方が圧倒的に多かった。

それでもカノコへ向かってしまったのは……1番道路の景色の話を聞き、恋人とそこを通る姿を想像してしまったことに引っ張られたのだろう、と今更思い出す。


「……いかがなさいましたか?」

「いいの。それよりもう時間でしょ?帰ろうよ。」

「ではそういたしましょうか。」


「……お父さん、怒ってる?」

「今月4回目の脱走ですよ。ルリ様が1番わかっていらっしゃるんじゃないですか?」

「あはは、だよね……」
 ▼ 10 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/04/28 22:06:54 ID:JVqYUgTI [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
家に帰ると何も伝えず家を出たことをこっぴどく叱られた。

父親が自分のことを心配しているのはわかっている。護衛をつけるぐらいなのだから。

おまけにルリの仕事に関しても真剣に考えている。


……だからこそ、好きな男の子に会いに行くだなんて言うことはできず、無言で窓から外出するようになってしまった。

外に出るとなればスミレが着いてきてしまう以上は嘘をついても無駄で、その中で思いついた唯一の作戦だった。

それももう見つかるようになってしまったのだが。


(はぁ……もう仕事帰り以外じゃキョウヘイくんに会えなくなりそうだね……)
 ▼ 11 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/04/28 23:07:05 ID:JVqYUgTI [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……そろそろ切るね。」

『はーい。そういえば最近電話してくれること多いね。』

「そ、そうかな?ごめんね、最近はなんだかついお喋りしたくなっちゃって……あはは」

『ふふ、俺としては全然いいけどね。嬉しいよ。』

「えっ!?あ、ありがとう……///ま、またね!」



顔を合わせて喋れない分を埋めるようにライブキャスターでのやりとりが増えた。

そもそも話し相手としての関係も最初はライブキャスターを通してのみだったのだから、これで十分ではあったはずなのだ。

そう、これで十分。必要以上に踏み込み、触れ合い、求めてしまっただけ。

会話の後の寂しさを打ち消すようにルリは自分にそう言い聞かせる。
 ▼ 12 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/04/28 23:30:08 ID:JVqYUgTI [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そんな日々がしばらく続いた後……事件が起きた。



「……ど、どうして……?なんで、なんで……」

「どうしたのですかルリ様。」

「あっ、す、スミレ?ちょっとライブキャスターかけてみていい!?」

「構いませんが。」


ティロリロリンティロリロリン♪ティロリロリンティロリロリン♪


「……鳴る、よね。じゃあ……」

「何があったんです?ライブキャスターの故障ですか?」

「キョ、キョウヘイくんに繋がらなくなっちゃって……」


「それは……ルリ様、仕事場では電波が繋がりにくいこともあるんですから仕方ないのではないですか?」

「昨日からあちこちで試してるけどダメだったんだよ!」


「……とにかくもうすぐ休憩も終わりです。一旦お預かりしますから。」


スミレが袋を差し出すとルリはいつものように満足げでも、はたまた不満足げでもなく……不安そうな表情でライブキャスターをその中に入れた。


「……本当に、大丈夫なのかな」

「普段のやりとりを見るに嫌われるようなこともないと思われますが。」

「だといいんだけど……」
 ▼ 13 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/04/29 00:25:22 ID:4i16ryYo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかしそれから数日経っても相変わらず連絡はつかなかった。

初めのうちはスミレや家族と会話することでどうにか元気を保っていたルリも次第に元気がなくなっていく。


「……入ってよろしいですか」

「いいよ」

「失礼します。やっぱり繋がりませんか?」

「……うん。ダメみたい。」

「そうですか。こちら頼まれていたお菓子とお釣りです。」

「ありがとう。……あれ、ちょっと足りなくない?」

「最近食べ過ぎですから。」

「……むぅ」

「ポケドルなんですからその辺りはしっかりしてくださいよ。」

「わかってるよ。」


(……今のルリ様は例の彼とお喋りができないストレスすべてを料理研究で発散しているのでしょう。正直あまり良い状況ではないのですが……)
 ▼ 14 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/02 02:36:03 ID:vOaw56CI [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
完全な報酬目当てでこの仕事を引き受けてからどれくらい経っただろうか。

私はすっかり護衛対象である彼女のことが好きになってしまった。

普段は普通の女の子といった調子なのに彼女と彼女のポケモンがステージに立てばたちまち観客を魅了する。

その輝きが日に日に増していくというのがまたたまらない。


今回の恋は確かに彼女の輝きを強めるきっかけにはなっているだろう。しかしポケドルである以上、スキャンダルは避けねばならない。

失恋は痛いだろう。けれど強い心を持つ人間ならばそれもまた輝きに変えられるはずだ。



……そういう意味で、彼女の恋が叶わぬことを願っていた私にとっては少し理想に近づいた形になっていた。
 ▼ 15 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/02 17:53:43 ID:vOaw56CI [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリ様が例の彼……キョウヘイと連絡ができないのは電波の関係などではない。そもそも彼はライブキャスターを紛失した上故障させている。

連絡先のメモもしていなかったのかそれも無くしたのか、新しいライブキャスターにルリ様は登録されていないらしい。

こうなればあとは偶然直接会うしかないがいつもの密会場所には当然近づかせていないし、窓からの脱走も封じた。

対策は概ね完了したと言っていいだろう。あとは……



「ルリ様、明日は休みですからシッポウシティのカフェにでも行ってみるのはどうかと思うのですが。」

「……あなたからそんなこと言い出すなんてめずらしいような」

「そういうときもあるのですよ。で、どうですか?」

「もちろん、いいけど……」


どうせなら1人で……それかキョウヘイくんと一緒に行きたかった、と続きそうな顔で黙り込む。

見慣れてはいるが正直心苦しい。


けれど問題はない。明日会うルリ様の新しい友達ならば鬱陶しがられることなく護衛をこなしてくれるはずなのだから。今回だけの辛抱だ。
 ▼ 16 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/03 01:19:31 ID:yhKg7z3w [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ここ最近の陽気を裏切る寒さということもあってか、ここカフェ ソーコの客はいつにも増して多いようだった。


料理に舌鼓を打つポケモンやトレーナーの声。

誰かがドアを通るたびに鳴り響く特徴的なベルの音色。


この幸せな音の空間を少し堪能していたい女性と、そんなことはお構いなしにメニューとにらめっこをする少女もまたその一部だった。



「……ねぇスミレ、これ頼んでいい?」

「私の予算にも限りがございますので」

「ううん、自分で払うから。それならいい?」

「食べ過ぎです。一応私に聞いたということは自覚があったのでしょう?」

「うっ」



……それにしてもルリ様の料理研究というか美味しい物への興味は収まることを知らないようで。

だけどまあ、協力者も位置に着いたようだし。一分後に落とし物をして自然な形で接触を図るとのことらしいですね。

まあ、悪くない作戦なんじゃない?

ルリ様はといえば何やらメモに料理の研究結果らしきものをメモしているようだけど、注意力に優れた彼女なら見逃すこともないでしょう。
 ▼ 17 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/03 01:47:07 ID:yhKg7z3w [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




「……あ、すみません、ハンカチ落としましたよ!」


そうそう、その調子です。ルリ様ならちゃんと気づくと思っていました。

少々実行タイミングが早いような気もしますけれど。



「あぁ、ごめんなさい、ありがとう……」





待った。この声はどこかで聞いたことが……









「……キョウヘイくん?」


「……え、あれ、ルリちゃん……?」





……まずい。どうして。


「ルリちゃんだぁーっ!ようやく会えた!」

「えっ!?う、うん!私も会えて嬉しい……かな……///」



嬉しさの余り興奮気味にルリの手を握るキョウヘイと、驚きながらも顔を赤らめて幸せそうなルリ。

突然のことではあるがなんとなく祝福するべきムードに包まれる店内。


それについていけないスミレはただ唖然とするのだった。
 ▼ 18 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/03 12:26:44 ID:yhKg7z3w [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……あっ!ご、ごめんつい……手……」

「だ、大丈夫大丈夫!あの、別にいいっていうか嬉し……じゃなくて……あはは……」


「あー……うん、実はライブキャスター壊れちゃってて。連絡先のメモも無くしちゃったから登録できなくて困ってたんだよ。」

「そうだったんだ……じゃあもう1回登録し直して……これで大丈夫だね!」



なんということだ。作戦失敗どころか自体が更に悪化してしまった。

ここで協力者が出てきても気づかれないか不審がられるだけだ。



「……これからまた、よろしくね。」

「うん!ねぇ、私久しぶりにキョウヘイくんといっぱいお喋りしたいなって……その、まだカフェに居れたり……?」

「いいけど……そっちの人は大丈夫なの?」

「大丈夫だよ!ね、スミレ?そういうことだから!」


大丈夫でも何でもない。しかしこうなってしまっては断るのも不自然だろう。

仕方なく首を縦に振ることにした。



そういえば彼との出会いはルリ様の落とし物がきっかけでしたね。

……そもそも作戦の方向性自体がこれを引き起こしてしまったと?


まさか、そんな奇跡みたいなことが?

あり得ない。馬鹿馬鹿しい。
 ▼ 19 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/03 23:52:59 ID:yhKg7z3w [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
連絡を再びとれるようになったその日からルリ様はまた彼と頻繁に話すようになり、幸せそうな日常を過ごしている。



確かに幸せそうではあるのだけれど。

けれど、ルリ様がスキャンダルのリスクを背負ってまでこんなことをしているというのを知らずに笑う彼の声がどうしても許せない。


彼について私から何を言っても今のルリ様には届かないだろう。まさに恋は盲目、といった様子なのだから。





あぁ、許せない。

憎い。


希望ある未来に満ちたルリ様があなたのような一般人に道を妨げられてはいけないのに。
 ▼ 20 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/04 00:07:03 ID:mMTQjn1M [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリ様に言葉が届かないならば彼の方をどうにかするしかないだろう。

とはいえあまり強引な方法ではルリ様も納得しない。大掛かりな根回しも時間が必要な上勘付かれる可能性がある。



……まずは直接説得してみるべきなのか。それで解決するなら楽でいいのだけれど。



そもそも私は彼のことをあまり知らない。認めるつもりは毛頭ないが品定めぐらいはしてやろうじゃないか。



「ねぇスミレ!新しい私のヘアアクセかわいいってキョウヘイくんが言ってくれたの!……えへへ」

「……そうですか。私も可愛らしいと思いますよ。」

「ありがとう!」



私が何をしようとしたか、これから何をするかも知らずに何と無邪気なことやら。

私に対しては恋愛の話を隠すつもりもないようですが……随分と哀れな信頼をしてくれたものですね。
 ▼ 21 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/04 01:11:37 ID:mMTQjn1M [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そしてその時はやってきた。

おそらく脱走がバレるまでの間ルリ様と彼が会っていた時間、場所。

突然の呼び出しに困惑している様子だがそんなことは私の目的に関係ない。

それどころか正直顔を見るだけで既に少々怒りが込み上げてくる。

しかしそれでも握りこぶしを開き、できる限り平静を装って……口を開く。


「あなたがキョウヘイ様ですよね」

「ああ、はい……この前シッポウでルリちゃんといた人、ですよね?」

「はい。私はルリ様の護衛……とその他諸々任せれておりますスミレという者です。今日は相談というかお願いがあって来たのです。」

「護衛……すご……」



「単刀直入に言いますとあなたにはルリ様から手を引いてもらいたいのです。ルリ様のために。」

「……手を引く?」
 ▼ 22 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/04 01:20:45 ID:mMTQjn1M [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「あの、手を引くってその……友達やめろってことですか?」

「そこまでは言いません。しかしルリ様にも事情がありますから色恋沙汰があるのは少々問題なのです。」

「い、色恋沙汰?そ、そんなことないと思いますけど……」



「それにほら、俺がもしその……す、好きだったとして、ルリちゃんの方は特にそういうわけじゃ」

「はぁ……そうでないから問題なんですよ。」


「……あ」

「えっ今なんて」

「何でもありません」

「いやその」

「何でもないと言ったら何でもないんですよ!!!」




(えっ……ルリちゃんが俺のことを……?)


(嬉しそうな顔を抑えられていないのがどうにも苛つきますね……こいつ……)
 ▼ 23 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/04 01:41:12 ID:mMTQjn1M [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺が落ち着いたところでスミレさんは丁寧に……まあ、ところどころイライラしているようだったけど説明してくれた。


ルリちゃんがポケドルのルッコであること。

炎上を避けるためにも個人的に男性と関わりを持つのは危険だということ。

だから俺との関係は好ましくないということ。

そして当たり前だけどこの話は内密にしてほしいこと。



「……そういうわけなのです。納得していただけますか?」

「そっか……やっぱりルリちゃんってポケドルのルッコちゃんだったのか……」



俺は知っている。

ルリちゃんが仕事をすごく頑張っていること。素敵な自分になりたいから日々努力していること。

話で聞いているだけだけれど、そんなルリちゃんが大好きだ。


だから……その道の邪魔になってしまうというのなら……








「……わかりました。変な方向に行かないようにします。」


そう答えるとスミレさんは心底驚いたようだった。

ほんの少しの間だけだったけれど。



「そうですか。……続けてすみません。よければあなたとルリ様との話を聞かせてくれませんか。あぁもちろん本人には言いませんから。」

「え……いいですけど、急にどうしたんです?」

「少し興味が湧いただけです。……それだけですよ。」
 ▼ 24 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/04 02:05:46 ID:mMTQjn1M [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
普段ルリちゃんの話をじっくり聞いてくれる人間なんて中々いないというのもあってまあとにかく話した。


落とし物を拾ってから初めて会ったときのこととかそれからのルリちゃんの様子とか……

帽子を褒めたときの話をしたらなんだか複雑そうな顔をしていたけれどどうかしたのかな?


それでもとにかく話した。

話して、いつの間にか日が暮れていた。



「……なるほど。」

「……ごめんなさい、話しすぎました。」

「いえ、私も楽しかったですよ。それに……いえ、やっぱり……そうですね」


また難しい顔で何かを考えているらしい。……もしかするとさっきのことを取り消してくれたりとか。


「それでは先程の約束を守ってくださいね。よろしくお願いします。」

「ええ、はい……」



まあ、そう簡単にはいかないよね……
 ▼ 25 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/04 02:15:47 ID:mMTQjn1M [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


次の日の朝、玄関を開けるとルリちゃんが居た。

今日はスミレさんは一緒ではないらしい。




「……あのねキョウヘイくん、私……ポケドルのルッコなの」

「……うん」

「だけど……わ、私、キョウヘイくんのことが……好きだから、その、付き合ってください……」



「……ごめん、俺もルリちゃんのこと好きだけど……それはできないんだ。」



嬉しいのに悲しくて、心が壊れそうだった。

それ以上にルリちゃんを傷つけたであろうことが怖くて、顔を上げられなかった。



しばらくうつむいているとルリちゃんが封筒を差し出してきた。

「あの……これは?」

「ふふ……後で読んでみて。それじゃあ私は仕事だから。またね。」




「あぁ、それと」






「ありがとうキョウヘイくん。すごく嬉しかったよ。これからもよろしくね!」



そう言って去っていった彼女の横顔はやっぱり寂しそうで……だけど思った程ではなかった。
 ▼ 26 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/04 02:24:22 ID:mMTQjn1M [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ルリ様、そろそろ時間です。」

「わかってるよ。」

「まったく……護衛を1人追加する羽目になるとは。最近の動向が原因でしたがこの前の朝のがトドメになりましたね。しっかり挨拶するんですよ。」

「はーい。」

「まあ、技術を叩き込めばいつか1人で私以上にあなたのことを任せられたり……はしないでしょうけれど。」

「……入ってください。」



ノックの音がしてからドアがゆっくりと開く。

立っていたのはルリと同じぐらいの年齢らしき少年だった。



「……今日から護衛見習いのキョウヘイです。よ、よろしく……お願いします」

「よろしくねキョウヘイくん!これからずーっと私の側にいてね!……じゃないと守れないでしょ?ね、スミレ?」

「……まあ、そうですね。」
 ▼ 27 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/04 02:32:56 ID:mMTQjn1M [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリちゃんが告白してきたあの日、封筒の中身をみてすぐルリちゃんに連絡した。

だけど彼女は何も教えてくれないどころかそもそもライブキャスターが繋がらないのだった。


しばらくするとスミレさんから連絡が来たので聞いてみると、やはり事実らしい。

この『ルリ様専任護衛の推薦状』の内容は。



色々説明されたけれどとにかくルリちゃんと一緒にいられるということなので迷いなく承諾した。

あの答えにルリちゃんは傷ついたかもしれないけど、それでも……





……いや、これを渡してきたのルリちゃんだし……それに別れ際のあの表情ってまるで最初から……
 ▼ 28 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/04 19:24:49 ID:mMTQjn1M [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「今日はこれぐらいにしましょうか。お疲れ様でした。」

「は、はい……」


まだ護衛見習いというからには当然訓練をするわけだが、正直全然ついていけない。

一応ポケウッドで少しはアクション鍛えてたつもりだったんだけども。


それはともかく、聞かなくてはならないことがあるんだった。



「……そういえばどうして俺をこんな役目に?手を引けって話じゃなかったんですか?」

「それはもちろんですよ。ルリ様の近くにいるからといって変な気を起こされては困ります。」


「……私はこの仕事を辞めて昔の夢を追うつもりなんです。必要なものをたくさん学べた気がしたので。」

「なるほど。」

「後任としてもちろん他に候補はいましたが……そうですね、ルリ様が一緒に居て負担にならない方がよろしいかと思いまして。最低限必要な部分は大丈夫そうでしたし。」

「……なんか、ありがとうございます。」

「けれどまだまだ能力は足りていませんからね。私の後を継げるようにならなければ解任いたしますので。……それと」





「手を出すなとは言ったけどルリ様を泣かせたら私がぶっころ……」

「えっ」

「何でもありません。忘れてください。」
 ▼ 29 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/04 22:18:28 ID:mMTQjn1M [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それから数年……

俺は相変わらずルリちゃんの護衛を続けていた。

もちろん2人の関係はあの時から変わらず友達のまま。




「ねぇキョウヘイくん!あの新しい本読んだ?」

「そりゃ読んだよ。ルリちゃんの曲が元になってるんでしょ?でもあれって……」

「うふふ……だよね。私もそう思ったの。」

「それに男の方が酷い目に遭いすぎじゃない?そんなに嫌われてたの?」

「あー……そういえば私がキョウヘイくんと会ってからお喋りが少なくなったから嫌いってたって言ってたかも。」

「本当なのかぁ……」





スミレさんは護衛を辞めた後本を書き始めた。

おそらく実体験に基づいた数々のストーリーは人々を魅了し、あっという間に人気作家になったのだ。

そしてつい最近発売されたのがイッシュのポケドル、ルッコの名曲である『ライブキャスターラヴ』を元にした小説、『ライブキャスターラブ』。

1つの落とし物から始まった少年少女の両片想いのストーリーで、それはそれは甘いと評判だ。



だけど少なくともこの世で2人……いや3人にとってはすごく馴染みのある内容だということは間違いないと思う。







「……つまり、この本を出したってことは……そろそろいいってことなのかな。」

「そうなのかもね。……そう解釈するとちょっと恥ずかしい、かな……この本」

「まあそれは……うん。」


「……それじゃあお家で待ってて。私、行くから。」
 ▼ 30 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/04 22:31:21 ID:mMTQjn1M [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
気温がポカポカと暖かくなる頃、頬を伝う汗も拭わずに19番道路を駆け抜ける。


いつもの白い帽子、いつもの白い服、手ぶらにライブキャスター。


彼には知られたくなかったことはとっくに手遅れ。それと同じぐらい彼が知られたくなかったであろうことも手遅れなぐらい知っている。


私は私、自分の誇りも願いも全部大切。


あの日の迷いはずいぶん昔に振り払った。


今日、私は彼に告白する。答えはもう、知っているけれど。



きっとそうするべきだと思ったから。


私達の関係を鬱陶しがり、憎み、遠ざけたがり……そして今、祝福してくれている人のために。



感謝の気持ちを胸に、愛する彼の家のインターホンをゆっくりと、人差し指で押した。




【スワップSS】1つの落とし物から始まったライブキャスターラブ
完
 ▼ 31 メタグロス@かいふくポケット 23/05/04 22:32:56 ID:C7BgYdq6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙
 ▼ 32 オトスパス@うっかりやミント 23/05/04 22:34:29 ID:FuSwjQvQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙でした。あれからキョウヘイとルリはどれぐらい成長したのかな?
 ▼ 33 まちっど◆.jJQDDIcAM 23/05/08 18:11:01 ID:4JuIwFk. NGネーム登録 NGID登録 報告
台本形式で書いてると地の文だったらなーとか思うときあったんですがそう簡単な話でもないですねこれ!
せっかくキョウルリが来たので1レス目の設定を生かしつつ普段書かない設定のキョウルリを目指しました とはいえそれに重点を置きすぎて散らかってしまった感じはあるんですが……
また新しいキョウルリ概念を自分の中で作れた気がしたんで楽しかったです ありがとうございました!
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