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【SS】カエデさんバース ─Over the NINE DIVERSE─

 ▼ 1 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/07/23 18:03:26 ID:CDOQfaVw NGネーム登録 NGID登録 報告
オーケイ、落ち着くのよアタシ。
こういう時は一旦心をリセットするの。トップチャンピオンだってそう言っていたでしょう?
そう、リセットよ、リセット。仕切り直し。そう──自己紹介とか、するのが良いよ。

アタシはケイティ・カエデ。17歳。
『マスカットアカデミー』最強のトレーナー!! ──になるかなーって言われたり、言われなかったり。
でもバトルが強いのは本当。アタシってば天才!!
同年代じゃ負けなしだし、ジムリーダーも皆倒した。Zワザだって誰よりも使いこなす。学校最強大会で優勝して、トップチャンピオンのハイダイさんに、315番目の弟子にしてもらった!!
あとはまあ、面接試験に落ちたり? 先生を泣かせたり? クラスメイトがアタシ抜きで揃って遊園地に行ってたり?
でも良いの。だってアタシは天才で特別。最強で無敵。アタシと同じ時代に生まれた、皆の方が可哀想!!

でも無敵のアタシでも。バトルにおいては無類の勘の良さを発揮するアタシでも。
こんなことになるなんて──流石にわからなかった。

だって信じられる?
廊下の天井にいきなり穴が開いて? それが光って? アタシを吸い上げて?

それで、アタシは?

知らない場所に来て?

何やかんやで?


……目の前で、ハイダイチャンピオンが死んでいる。


──やっぱりダメ。全然イミわかんない。
もっとちゃんと、最初から、説明した方がいい──


第1バース『17歳のカエデ、27歳のカエデ』

 ▼ 295 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/26 21:05:56 ID:xepsALBA [1/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
HIDE DIEが不意に、両腕を構える。アタシ達に見せ付る両腕の甲に、白く何本か稲光が走る。天に開いた並行世界から、細かく粒子が雪崩れ込む。
HIDE DIEに注ぎ込まれた光が止めば、その両腕にはもう既に。

左腕には、銀色の装甲。リング状のパーツが巻き付いていて、その中央には見覚えのある球形の宝石。

右腕には、白い装甲。帯のようなパーツが巻き付いて、その縁を赤と青が彩っている。

そしてがこん、と音がして。
胸部装甲が展開、真球形の宝石が、胸の中央にも現れる。


アーフォン・カエデ「ハイダイ大統領のメガリングと、ヘイラッシャナイト!?」

アチェリア・カエデ「ブタちゃんのダイマックスバンドだぁ!?」

HIDE DIE「本気を見せよう」


その刹那、体が重くなったような、空気が重くなったような、そんな感覚が一瞬あって。同時にHIDE DIEの全身が、球形の宝石に包まれる。更にその宝石を、どこからか赤い光が照らし出し。

ずぅん。

ずぅん。

宝石が、段々と拡大して、ひび割れる──
 ▼ 296 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/26 21:06:45 ID:xepsALBA [2/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
──真紅の閃光が宝石から溢れて、研究室の壁面に乱反射。プリズムのパネルが真っ赤に染まり、アタシ達を残酷に照らし。研究室が唸りを上げて、天井までも強く震えて。

その光が止めば。


HIDE DIE「 終 わ り だ 、 諸 君 」


更に刺々しいBURST戦士の鎧に覆われた、巨大なハイダイが、そこにいた。
ただでさえ圧倒的な存在感を放っていたのに。
今となっては最早天にも届きそう。いや実際、この広いはずのエリアゼロ研究室の天井にも、あの巨躯ならば手を伸ばすだけで届くだろう。
それほどまでに、巨大なハイダイ。アタシ達を見下ろす、絶望。

アタシの身が竦む。誰もが身構える。


新芹かえで「皆無事!?」

ケイティ・カエデ「かえで!! 降りてきてたの!?」


見仰ぐしかなかったアタシの横に、ハッキングユニットから降りたらしいかえでが駆け寄ってきていた。


新芹かえで「違う、落ちちゃった!!」


──ハッキングユニットから落ちたらしいカエデが駆け寄ってきていた。
 ▼ 297 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/26 21:07:31 ID:xepsALBA [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
新芹かえで「……大丈夫、並行世界接続装置のコントローラーは持ってきてる」

ケイティ・カエデ「なら良いけど」


……でも。
アタシは、見上げることしかできない。

天井までも聳え立つ、超巨大なHIDE DIE。
その身体には真っ赤な雷雲を纏っているようでもある。キョダイキングラーを連想させた。でもあれよりさらに大きいし、ずっと恐ろしい。
アタシは見上げることしかできない。
皆、きっとそうだった。


新芹かえで「にしても、凄いね」


コントローラーを握ったまま、かえでが目を細める。その首筋を冷や汗が伝っているのが、アタシには見えた。
彼女には、何が見えているだろう。


新芹かえで「えっと……ヘイラッシャのBURST戦士で、ベストリンク状態で、メガで、ダイマックスで──」

ケイティ・カエデ「つまり、アレは──?」


青ざめたままに、結論を出す。



新芹かえで「──メガBURST戦士キョダイハイダイ」


ケイティ・カエデ「メガBURST戦士キョダイハイダイ!?」
 ▼ 298 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/26 21:08:15 ID:xepsALBA [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

次回、カエデさんバース!!

HIDE DIEはヘイラッシャのハイダイさんをBURSTハートに押し込めて、メガBURST戦士キョダイハイダイへと進化を遂げてしまった。
メガBURST戦士キョダイハイダイとなったHIDE DIEには、もうアタシ達の攻撃は通じない。何をやっても、まるでダメ。その鎧には何も刺さらない。
でも、アタシは諦めない。
まだ、ケイティ・カエデは諦めてない。

全ての『カエデ』が、まだ諦めていないなら。
アタシ達はまた、乗り越えられるはずだ。

ラストバース『オーバー・ザ・ナインダイ・バース』

運命を、乗り越えろ。
 ▼ 299 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:30:53 ID:xv12dfNk [1/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アタシ達はHIDE DIEを、倒しきれなかった。
並行世界接続装置のコントロールは奪えたけれど。並行世界との接続を弱めてHIDE DIEを弱らせることにも成功したんだけど。だけどまだ、及ばない。

現在HIDE DIEが取り込んだ──HIDE DIEの犠牲となった『ハイダイ』は5人。
ダイマックスを使える大富豪のハイダイさん。BURST戦士になれるハイダイさん。ブショーにして軍師であるハイダイさん。メガシンカを使えるハイダイ大統領。そして……ついさっきBURSTハートに閉じ込められた、ヘイラッシャのハイダイさん。
HIDE DIE本人を含めて、6つの『ハイダイ』が、HIDE DIEには詰め込まれている。そしてHIDE DIEは、己に取り込んだハイダイの力を利用して。

まず、ヘイラッシャの──同時に、ハイダイのBURST戦士になり。
己の中のハイダイとベストリンク状態になり。
ヘイラッシャナイトを使用して、己自身をメガシンカ。
ダイマックスバンドを使用して、己自身をキョダイマックス。


HIDE DIE「 終 わ り だ 、 諸 君 」


つまり──メガBURST戦士キョダイハイダイ。


HIDE DIE「 そ の 抗 い に 」


それが、アタシ達に立ち塞がる、最強最悪のハイダイ!!


HIDE DIE「 意 味 は な い 」


ラストバース『オーバー・ザ・ナインダイ・バース』
 ▼ 300 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:31:26 ID:xv12dfNk [2/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
巨大化したHIDE DIEは、エリアゼロ研究室の中央に位置取った。アタシ達を冷たく見下ろして、直後、拳を打ち下ろす。


アーフォン・カエデ「来たよ!!」

ケイティ・カエデ「っ!!」

ズ ドンッ


慌てて飛び退いた。アタシ達がさっきまで立っていた所には既にHIDE DIEの拳があって、地面に並んでいたプリズムのパネルに揃ってヒビが入っている。
あれに潰されたら終わりだ。でも、逃げ回っているだけでも勝ちは見えない。


ケイティ・カエデ「つららおとし!! 打ち出して!!」

ツンベアー「ベアアアアアッ!!」

ダンプン・カエデ「縮糸噴砲(スリングスプリング)!!」

ヒメグマのカエデ「"さくれつのえだ"!!」


ツンベアーが氷柱を射出する。目標はHIDE DIEの胴体だ。狙いを絞って、打ち出して。
でもそれも、HIDE DIEが軽く右足を凪ぐだけで、何もかもが振り払われる。氷柱も、爆発も、そもそも当たっているって気がしない。


HIDE DIE「 温 い 」

ケイティ「っ、払われた!!」
 ▼ 301 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:31:59 ID:xv12dfNk [3/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アーフォン・カエデ「なら距離を詰めるしかないね!!」

キテルグマ「クゥー」

リングマ「グマアアアッ!!」

タチフサグマ「gumaaaa!!」


それならと。アタシの真横をタチフサグマが走り抜ける。キテルグマ、リングマ、タチフサグマが全員別のルートを走り抜けて、HIDE DIEの視線を散らしながら突撃する。


HIDE DIE「 鬱 陶 し い 」

ズカンッ

リングマ「グッアアッ!!」

カエデ「クマちゃん!!」


HIDE DIEが払った爪先が、リングマの顎を捉えてしまった。リングマは下から突き上げられて後方まで吹き飛び、グラリと頭を揺らしている。気絶するってほどでもないけど、手痛い1発だった。
でもリングマに意識が向いていたお陰で。


アーフォン・カエデ「アームハンマー!!」

アチェリア・カエデ「すてみタックル!!」


残りの2匹の攻撃が、HIDE DIEに通る!!
 ▼ 302 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:32:27 ID:xv12dfNk [4/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
キテルグマ「フンッ」

タチフサグマ「guma!!」


キテルグマは大きく飛び上がって、HIDE DIEの右脚の脛に、大振りに振るった腕を打ち付ける。
タチフサグマは地面を滑って、右足首の踝に渾身の体当たり。
2匹とも、確かに通った。HIDE DIEの身体を捉えていた。

アタシは咄嗟に、HIDE DIEの顔を見る。さあ、どう出る?


HIDE DIE「 っ ── 邪 魔 だ 」


その言葉だけで。右脚をぶるりと振るわせて、HIDE DIEは2匹を撥ね飛ばした。

それだけ?


アチェリア・カエデ「タチフサグマ!!」

アーフォン・カエデ「キテルグマ。まだ立てる? 立てる、なら良かった。一度下がろう」


撥ね飛ばされたポケモンを庇う2人を横目に見ながら、アタシの背中を、冷や汗が伝う。もうなんかずっと伝ってはいるんだけれど、更に追加で一筋伝う。
ヤバい、今の攻撃も、ろくに効いてなかった!! 攻撃が当たった瞬間には、流石にHIDE DIEも若干眉を潜めたけれど。でもそれだけだ。その直後にはもう切り替えて、2匹を冷静に振り払っている。あのキテルグマのアームハンマーをまともに受けて、あれだけ!?

もちろん、そもそもBURST戦士なんだから、人間よりはずっと、ずっと強いだろう。
でも流石に、堅すぎる!!


ケイティ・カエデ「なんでこんなに……!?」

新芹かえで「……もしかして」
 ▼ 303 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:32:57 ID:xv12dfNk [5/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ケイティ・カエデ「かえで、何か気付いた?」

新芹かえで「いや、思いつきだけど……村長ってさ──ぬしじゃん」

ケイティ・カエデ「……村の主って話?」

新芹かえで「ぬしポケモンって話」

ケイティ・カエデ「──えっ、そういうこと!?」


ぬしポケモン。それなら聞いたことがある。エリアゼロ内部から抜け出してきた、通常の倍くらいの大きさをした強力なポケモン。……少なくとも、アタシの世界ではそうだった。
ぬしポケモンはサイズも規格外だけど、能力も規格外。不思議なオーラを身に纏って、やたらと守りを固めてくるんだ。

あのヘイラッシャ、そうだったの!?


新芹かえで「あのヘイラッシャがぬしポケモンだったから。HIDE DIEもぬしポケモンのオーラに、守られてるんだ!!」

楓コウナン「なるほどな。それに奴は、儂の世界のハイダイどのも取り込んでおる。……"かたいまもり"の持ち主だ」

アチェリア・カエデ「ダイマックスしてるから、体力もヤバい増え方してるよー!!」


そんな報告が飛んでくる。情報は増えるけど、でも全部全部、アタシ達にとって不利な証言。HIDE DIEの強さの根拠。
HIDE DIE、堅すぎる!! そもそもヘイラッシャ自体が防御の高いポケモンなのに、こんなに守りまで固められたら、もうどんな物理攻撃も通らない!!


カエデ「ケイティさん、どうしましょうか〜?」

ケイティ・カエデ「今考えてる!!」
 ▼ 304 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:33:25 ID:xv12dfNk [6/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
HIDE DIEの強さの構造。強さの性質。それを1つ1つ書き出していく。ぬし、ブショーパワー、ダイマックス──ろくな紙も手元には無いから、もうスマホのメモに書き付けるしかない。


HIDE DIE「 我 か ら も 行 く ぞ 」


でも、HIDE DIEが待ってくれるはずもなく。
HIDE DIEが、その巨大な手を握り締めれば、地面の下が騒ぎ出す。アタシ達の足元にあるはずのパネルが、もごもごと揺れたり、あるいは跳ねたり。
何か来る。


アチェリア・カエデ「ダイスチルだ!! 逃げて!!」

ケイティ・カエデ「あー!! 集中できない!! ツンベアー戻って!!」


アタシが、棒立ちになっていたツンベアーをボールに戻した瞬間。

ツンベアーが立っていたそこに、巨大な銀色のトゲが生えてきていた。
ダイスチル。アチェリアはそう言っていた。大なスチールってことか!! 怖すぎる!!
 ▼ 305 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:33:48 ID:xv12dfNk [7/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
でも、そのダイスチルのトゲによじ登っている人がいた。ダンプンだ。ワナイダーのBURST戦士の力を使って、トゲの頂点を経由して、HIDE DIEの腕まで糸を伸ばして。


ダンプン・カエデ「これはどうだッ!!」


やっぱり、ワナイダーそのものなだけあって器用だ。ダンプンはHIDE DIEの腕まで上がって、足元にあるHIDE DIEの右手と左手の間に、ベタベタと糸を展開する。HIDE DIEの攻撃も躱しながら、手首と手首を巻き付ける。即席の手錠だ。
そうか。攻撃が通らなくても、拘束は出来る!!

でも。


HIDE DIE「 小 賢 し い 」

ブチブチブチ ブチ

ダンプン・カエデ「やはり、通じないかっ!!」


結い上げられた糸の手錠を、HIDE DIEは易々と引きちぎった。普段のアタシ達なら、あれだけ重ねたワナイダーの糸を引きちぎるなんて、考えることも無いけれど。でもHIDE DIEなら出来てしまう。
あれだけ図体が大きいんだから、その程度の膂力ならどこにでもあるんだ。

じゃあ、拘束することは出来ないの?
 ▼ 306 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:34:15 ID:xv12dfNk [8/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
HIDE DIEから振り落とされたダンプンが、アタシの真横に着地する。ワナイダーのBURST戦士では、HIDE DIEを拘束することは出来ない。
なら──ケケンカニのBURST戦士なら? さっきアタシを氷の床で拘束したあれなら、通用する?


ケイティ・カエデ「ねえダンプン!! さっき回収したケケンカニのBURSTハートなら何かできそう!? ワナイダーから入れ換えて使えたりする!?」

ダンプン・カエデ「技術的には可能、というものだ!! 不可能ではないが、ワタシも使うのは初めてになる!!」


──思い付きで言ってみたけど、それ以前の問題だった。それはそうだよね!! だって今までハイダイさんが使ってたんだから!! ダンプンが使ったことあるワケない!!
もしコウナン将軍をBURST戦士に出来たら、とも思ったけど、BURSTハートを装填するグローブに予備がないことは確認済みだ。ちゃんとHIDE DIEからグローブも奪えば良かった!!


ヒメグマのカエデ「ねえ!! カエデにも みせて!!」

ダンプン・カエデ「なんだ?」


……そんな後悔をしている間に。
カエデちゃんがアタシ達の間に割り込んできて、ケケンカニのBURSTハートを覗き込んでいた。


ヒメグマのカエデ「やっぱり にてる!! "ラピス"だよ これ!! すごい ほうせき!!」

ダンプン・カエデ「確かにBURSTハートは宝石だが」

ヒメグマのカエデ「おねがい ダンプンちゃん!! BURSTハート カエデに かして!!」
 ▼ 307 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:34:49 ID:xv12dfNk [9/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ケイティ・カエデ「使えるの、BURSTハート!?」

ヒメグマのカエデ「"ラピス"なら、つかいかた しってるよ!!」


カエデちゃんは自信たっぷりだ。……いつも大体そんな振る舞いをしてる気がするから、アタシはあんまりアテにならないような、そんな気もするけれど。
でも、やらないよりは、やる方がマシ。


ケイティ・カエデ「どうする?」

ダンプン・カエデ「……いいだろう。我が父の形見、存分に使ってくれ」

ヒメグマのカエデ「まかせて!!」


ダンプンの手から、カエデちゃんに。
ケケンカニのBURSTハートが、渡された。


アチェリア・カエデ「来るよ!! ダイストリーム!!」


アチェリアの叫びでHIDE DIEを見れば、今度はその巨大な胴体を周遊するように、水流の柱がとぐろを巻いていた。
ダイストリーム。また知らない技だけど、大方、大なストリームだろう。あの大量の水をぶつけて来るに違いない。

そして実際、そうだった。

HIDE DIEを取り囲む水流の柱から一筋が外れて、竜巻みたいに荒れ狂う水流が、アタシ達へと飛んでくる──


ヒメグマのカエデ「だいじょうぶ」
 ▼ 308 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:35:17 ID:xv12dfNk [10/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゆっくりと、カエデちゃんが頷いて。
その大きくはない掌に、ケケンカニのBURSTハートを握り込む。


ヒメグマのカエデ「ホントは "リングル"に はめるんだけど」


カエデちゃんが強く握り締める程に、その拳の隙間から、淡い光が溢れ始める。淡い光がその毛並みを包み、ひんやりとした風を起こして。


ヒメグマのカエデ「これなら つかえるよ」


ダイストリームが襲い来る。暴れ狂う奔流、アタシ達を飲み込まんとする水の柱。
カエデちゃんはアタシ達より3歩先に歩み出て。その奔流の先端に、光る拳を突き入れた。

瞬間。


バキバキバキバキバキバキバキィ!!

ケイティ・カエデ「ダイストリームが──」

ダンプン・カエデ「──凍った」


凍りつく。凍りつく。カエデちゃんの拳を起点として。ケケンカニのBURSTハートを起点として。ダイストリームが凍りつく。
そしてカエデちゃんは、ドーム状に氷の壁を作って。
残りの水流を、受け流した。


ヒメグマのカエデ「……やった!! すっごい パワー!! それに やっぱり こわれない!!」

ダンプン・カエデ「凄いぞ、カエデちゃん!!」

ヒメグマ「えへへー!!」
 ▼ 309 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:35:48 ID:xv12dfNk [11/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
それを見ながら、考える。

HIDE DIEへの対抗策。アタシに今何かがやれるとすれば、それはアレだ。アタシ達の力を組み合わせることだ。
HIDE DIEだって、複数の並行世界のハイダイを組み合わせて、今あんな姿になってるんだから。アタシ達だって、やれなくはないはずで。
なら、何と何を組み合わせれば、あのHIDE DIEに通用する?


HIDE DIE「 哀 れ な 」


でも、それを考え切るよりも先に。


アチェリア・カエデ「油断しないで!! まだダイストリーム、残ってる!!」

ケイティ・カエデ「っ──」

ダンプン・カエデ「──しまった!!」


HIDE DIEを取り囲んでいた残りの水流が、一気にアタシ達に向かってきていた。さっきとは比較にならない太さの水流、きっと圧力も半端ない。


ダンプン・カエデ「頭を守れ!!」


ダンプンがそう叫びながら氷の壁を構えるけれど、今度は圧倒的に勢いが違う。壁はあっと言う間に削り取られて、水流がアタシ達を飲み込んで。
流して。
流して。
そうしてアタシ達は、研究室の端の壁まで、勢いよく叩きつけられた。
 ▼ 310 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:36:16 ID:xv12dfNk [12/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ケイティ・カエデ「っああ──!!」


イッタい!! 思わず呻きが口から漏れる。
変な所打っちゃったかも。

1秒、自分の身体に意識を向ける。まだ、どこかに激痛が走るみたいなことは、起きてない。口の中で血の味がするだけ。骨が折れたりはしてなさそうだ。
でもそれはそれとして、やっぱりアタシの身体にはダメージが響いていて。

白く視界が瞬いて、痙攣するように咳が出る。息が苦しい。指先に力が入らない。

──これだ。


ケイティ・カエデ「っ──皆!! 作戦っ──出来た!!」


皆の視線が、アタシに集中した。ダイストリームで押し流されたから、皆同じ場所に集まってて都合が良い。
アタシは立ち上がる。視界はまだ滲んでいるけれど、まだアタシにはやれることがある。伝えるべきことがある。だから立ち上がれる。
──でも、敵の目の前で作戦会議なんてのも無茶だから。

だからアタシは、即座にスマホの画面を開いて。


ケイティ・カエデ「今──AirDropで送った!!」

カエデ一同『『『AirDrop?』』』

ケイティ・カエデ「スマホ確認して!!」
 ▼ 311 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:36:57 ID:xv12dfNk [13/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
カエデ「あー……この通知ケイティさんからですか〜?」

楓コウナン「おお、アルセウスフォンに通知が来ておる」

ヒメグマのカエデ「カエデの でんわにも きてるね!!」

新芹かえで「iPhone使ってて良かったー!!」


ここに呼び出されている皆がスマホっぽいものを持っていることは、既にアタシはリサーチしていた。AirDropでデータが送れるかは、流石に賭けだったけれど。でもアタシは賭けに勝った。
時間短縮。
皆がスマホを確認する。アタシが立てた作戦を、閲覧する。

ただまあ、HIDE DIEがただ見ているなんてワケはなくて。


HIDE DIE「 一 網 打 尽 か 」


アタシ達目掛けて、また拳が打ち下ろされて。


タチフサグマ「guuu──!!」

キテルグマ「フゥゥン──」


でもそれは、タチフサグマとキテルグマが受け止める。ブロッキングともふもふの肉体が、HIDE DIEの拳を押し留める。
もちろん、長持ちはしない。2匹の限界はすぐに来た。纏めてHIDE DIEに殴り飛ばされて、研究室の壁に半ばめり込む。稼げた時間は、秒数にすれば5秒にも満たない。
 ▼ 312 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:37:41 ID:xv12dfNk [14/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
カエデ「では」

ケイティ・カエデ「うん。皆よろしく!!」


でも。
それだけあれば、なんとかなった。アタシ達は整列して、HIDE DIEの前で身構える。アタシはバチュルを手の中に繰り出して、いつでも糸を吐ける体勢。皆も各々に、各々の準備を済ませている。
皆もう、アタシの作戦を読み終えている。何をすべきか知っている。

だって最初から解りやすいように、図説付きで作戦送ってたし!! 流石アタシ、まだ天才だ!!


ケイティ・カエデ「行こう!!」
バチュル「チュバァ!!」

カエデ「行きましょうか〜!!」
ワナイダー「ダイッ」

アーフォン・カエデ「いいよ」
オニシズクモ「キシャア!!」

アチェリア・カエデ「もちろん!!」
アリアドス「dosu」

楓コウナン「うむ」

ヒメグマのカエデ「おっけーだよ!!」

ダンプン・カエデ「いいだろう」

新芹かえで「頑張ろう!!」

トレーナーカードカエデ「──!!」


ここから、巻き返す!!
 ▼ 313 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:38:08 ID:xv12dfNk [15/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ケイティ・カエデ「アチェリア!! まずはお願い!!」

アチェリア・カエデ「あーしに任せて!! やるよー、アリアドス!!」

アリアドス「dosun」


まず、第1段階。
アチェリアがアリアドスをボールに戻すと──赤いエネルギーに包まれて、ボールが大きく膨れ上がる。
そのボールを、アチェリアが両手で放り投げれば。


アチェリア・カエデ「ダイマックス!!」


ボールから再度飛び出たアリアドスが。

膨れて。

膨れて。

膨れ上がって。


アリアドス「 do su do su do su !! 」


赤い雷雲を纏う威容。巨大なスケールにポケモンを引き上げる、アチェリアの世界の持つ神秘。
ダイマックスだ。
 ▼ 314 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:38:41 ID:xv12dfNk [16/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アリアドス「 do su su n !! 」


ダイマックスしたアリアドスが、HIDE DIEに掴みかかる。後ろの脚で立ち上がり。前の脚で組み付き。背中の脚で壁に突っ張る。


HIDE DIE「 無 駄 だ 」

アチェリア・カエデ「頑張って!! そのまま!! そのまましがみついて!!」


HIDE DIEはアリアドスを振り払おうとするけれど、アリアドスも負けてない。口から糸を吐き出して、HIDE DIEの肩越しの壁と己を繋ぐ。HIDE DIEを押し倒さんばかりに、体重をかけ続ける。


アリアドス「 do o o o o !! 」

HIDE DIE「 何 も か も 意 味 は な い 」


HIDE DIEは──まだピンピンしてる。これは当然のことだ。アリアドスはあくまで、上から抑え付けているだけなんだから。
でも、それでいい。アリアドスの仕事は、ダイマックスしてHIDE DIEを抑えることと、ダイマックス状態で居続けること。
そこからは、アタシ達の仕事。


ケイティ・カエデ「カエデちゃん!!」


横に目をやれば、もう既に。
カエデちゃんが枝を構えて、アリアドスに狙いを定めている。


ヒメグマのカエデ「"ほういのえだ"!!」
 ▼ 315 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:39:19 ID:xv12dfNk [17/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
瞬間。

えだから溢れたエネルギーがアタシを包み込み、ぶわりと上空へと巻き上げる。そのまま風の流れに乗って、着地。


ケイティ・カエデ「っと、と。皆いる?」

カエデ「はい〜!!」


ほういのえだで飛ばされたのは、アタシ、カエデ、アーフォン、ダンプン。着地地点はアリアドスの脚の上。HIDE DIEに最も近い場所。アリアドスに組み着かれたHIDE DIEが、アタシ達に気づいてギロリと睨む。
それとなく下を見てみれば、コウナン将軍がそそくさと支度を行っているのが見えた。

あっちには、あっちの役割がある。
そしてアタシ達には、アタシ達の役割が。


ケイティ・カエデ「バチュル、糸!!」

カエデ「ワナイダー、お願いね〜!!」

アーフォン・カエデ「頼むよオニシズクモ、いや本当に!!」

ダンプン・カエデ「行くぞ!!」


そしてアタシ達は。
各々に、各々のポケモンにしがみついて。アリアドスの脚から飛び出した。
 ▼ 316 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:39:59 ID:xv12dfNk [18/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ケイティ・カエデ「切って!! 張って!! もう1度!!」

バチュル「バチッ」


しゅぱっ。

しゅぱっ。

バチュルの糸で、空を翔る。研究室の壁に糸を張り。HIDE DIEの腕に糸を張り。アリアドスの脚に糸を掛け。ワナイダーの脚に糸を掛け。
縦横無尽、右往左往。あっちに飛んで、こっちに飛んで。HIDE DIEの周りを、アタシ達は飛び回る。
時々HIDE DIEの頭を蹴ったりもする。もちろん向こうも応戦してくるけれど、アリアドスが上手いこと抑えてくれるから回避が間に合う。


HIDE DIE「 だ が 」


でも、だからといって、有効打はない。
HIDE DIEの防御を破る手段は、今のアタシ達にはない。アタシ達はひたすらに飛び回っているけれど、攻撃を通す手段がない。


HIDE DIE「 我 は 倒 せ な い 」


それは解ってる。ツンベアーでも攻撃が通らないんだから、今のアタシ達ではもっと無理だ。
それでも飛ぶ。

しゅぱっ。

しゅぱっ。

わざとらしく、糸を張る音を立てて。HIDE DIEの周りを飛び回る。

それに、意味があるからだ。
 ▼ 317 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:40:46 ID:xv12dfNk [19/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
しゅぱっ。

しゅぱっ。

HIDE DIEの周りを跳ぶ。跳ぶ。跳び回る。
有効打はないけれど。それでもちまちまと蹴りつけながら。頭を蹴って、頭を蹴って。


HIDE DIE「 も う い い 」

ケイティ・カエデ「──やばっ」


そんなことをしていたら。
糸を、HIDE DIEに掴まれた。

まあ、いずれこうなるとは思っていた。アタシは自由を失って、HIDE DIEの眼前まで引き寄せられて。冷たい瞳の奥底には、強い殺意が見てとれるような。

でも。


HIDE DIE「 君 た ち に は ──


──時は満ちた。


HIDE DIE「──── っ 」


HIDE DIEの動きが、停止する。でも並行世界接続装置をジャックした時みたいな、リソース不足による静止ではない。
HIDE DIEの動きは、一時的には止まったけれど。でも今は、末端から震え出し、顔面が紅潮し、歯がガチガチと震え始めて。


ケイティ・カエデ「えいっ!!」パシュ


HIDE DIEに掴まれていた糸を切り離す。ついでだからHIDE DIEの顔面にバチュルの糸を吹きつけて、アリアドスの脚に着地する。
遥か下を覗いてみれば。

うん、作戦通り。

HIDE DIEの脚の小指の上に。

ロケットに使われていた車体が、乗り上げている!!


新芹かえで「これで私も無免許運転デビュー!! ……並行世界なら免許とかチャラか!! 最高ー!!」
 ▼ 318 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:41:43 ID:xv12dfNk [20/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
HIDE DIE「 ── あ 、 あ っ !? !? 」


どれだけ堅さを高めたポケモンであろうと、急所への一撃は通る。どれだけ強大になろうと、HIDE DIEが元々人間だったことは確か。
なら、有効な方法は導き出せる。

的確に、急所を潰すこと!!


楓コウナン「大詰めだ。"ぜんそくりょく"で行く!!」

ヒメグマのカエデ「もちろん!!」

新芹かえで「エンジンぜんかーい!!」


地上残していたコウナン将軍にカエデちゃん、かえでに、トレーナーカードのカエデ。今の時点では、こっちが本命。
やることはとっても単純明快。ひたすらに、人体の急所を痛め付ける!!

コウナン将軍が、向こう脛を何度も何度も切りつける。BURST戦士の装甲の隙間を突いて、カタナで直接肉を刺す。
カエデちゃんはHIDE DIEの脚を駆け登りながら、膝関節みたいに肉の薄い部分を凍らせる。鎧ごと急速冷凍して、骨を低温火傷にする。

そしてかえでは。車を運転して、HIDE DIEの小指に乗り上げる。ロケットに使われていた車体を動かして、HIDE DIEの足を踏み潰している。いくらHIDE DIEの装甲が厚くても、小指に直接大型車が乗り上げてくれば耐えきれない!!


HIDE DIE「 あ ■ っ !? が っ !? 」


全部、人間の急所だ。
急所を突いた一撃が、HIDE DIEに襲い掛かる。冷酷にアタシ達に向き合っていたHIDE DIEであっても、流石にこの痛みには呻きを上げる。口を開いて息を荒くする。両脚を同時に攻められているから、脚で払うことは不可能。


HIDE DIE「 あ ■ ■ あ ■ あ っ !? !?」


絞り出すような、ジグジグと掠れた悲鳴。

この瞬間を、待っていた!!
 ▼ 319 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:42:18 ID:xv12dfNk [21/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ケイティ・カエデ「一気に張っていくよ!!」

バチュル「チュバァ!!」


しゅぱっ。しゅぱっ。
アタシは再び空に跳び出す。バチュルの糸を手繰り。アリアドスを足場にし。プリズムの壁を走り。HIDE DIEの肩を踏みつけ。
でもさっきとは、明確に違う。

今度は、糸を繋いでいる。


カエデ「お裁縫してるみたいですね〜!!」

アーフォン・カエデ「ケイティの計算通りに縫い上げていこう、歪みなく!!」


カエデも、アーフォンも、ダンプンも。
エリアゼロ研究室の壁に糸を張り。また別の壁に糸を張り。更に跳んで移動して、別の壁に糸を張り。糸と糸とを絡ませて、糸を張り巡らせていく。


HIDE DIE「 あ 、 ■ ぁ 、 ■ ■ 」


そして、その糸を張るための、全てのジャンプで。

アタシ達は、HIDE DIEの口腔に糸を引っ掛けている。

壁に糸を張り、HIDE DIEの上顎に引っ掛け、また別の壁に糸を張る。壁に糸を張り、HIDE DIEの下顎に糸を巻き付けて、また別の壁に糸を張る。
それを何度も、繰り返す。
 ▼ 320 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:42:59 ID:xv12dfNk [22/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
新芹かえで「豆腐の角に小指ぶつけて悶絶しろっ!!」

楓コウナン「ベンケイの泣き所っ!! ベンケイの泣き所っ!!」


左足の小指は、今でもかえでが潰し続けて。
右足の脛は、コウナン将軍が切り裂き続けて。


ヒメグマのカエデ「れいとうパンチ!! れいとうパンーチ!! これたのしい!!」


ありとあらゆる間接を、カエデちゃんが凍傷にする。


HIDE DIE「■ ぁ 、 ■ ■ 、 ■ !? 」


HIDE DIEは、常に急所を突かれ続けている。ひたすらに激痛が走るから、開いた口を閉じられない。体に力を入れられない。本来なら、アタシ達の糸を一息に引きちぎれるレベルの力がHIDE DIEにはあるけれど。でも、アタシはそれを発揮させない。

腕を縛り。口を開き。腕を縛り。口を開き。首を引っ張り。別方向からまた首を引っ張り。緩みかけた糸は一旦トレーナーカードのカエデが切り裂いて、それをアタシが引き直す。
そうして。


ダンプン・カエデ「縛鎖増網(スラップストラップ)!!」

ケイティ・カエデ「バチュル!! くものす!!」


最後の仕上げに、HIDE DIEの前歯と背中の装甲を結び付ければ。もう、HIDE DIEは動けない。その口を閉じることが出来ない。

じゃあ、最後の仕上げ!!


ケイティ・カエデ「決めるよ、バチュル!!」

バチュル「バチュ!!」
 ▼ 321 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:43:51 ID:xv12dfNk [23/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アタシは動けなくなったHIDE DIEの額を踏み台にして、研究室の天井に跳び上がった。アタシだけじゃ届かないけど、天井にバチュルを差し伸べる。

しゅぱっ。

手応え。


ケイティ・カエデ「最高!!」


一気に糸を手繰って、アタシは天井まで辿り着く。空中で体を引っくり返して、脚から天井に着地する。周囲から見れば逆さまだ。

周囲には、並行世界に繋がる9つの穴。アタシの世界だってある。もし今ここで穴に飛び込めば、アタシだけ先に帰れるかも。
でも、そうするつもりはない。
アタシは既に、皆に計画を話したから。
話したからには、実行する。

すぐ下で立っている、カエデの眼を見た。視線が交差。うん、通じてる。段取りは完璧だ。
だから、あとは。


ケイティ・カエデ「やるよ、バチュル!!」


天井に脚をつけたまま。
両手を交差し前に出す。自分の心を定めるように。腕を大きく振り回す。世界の全てを巻き込むように。両腕を交えて折り曲げる。それが人生と笑えるように。

アタシと、バチュルと、その他全て。
それが同時に響き合う。

天井を、蹴った。

真っ逆さまに。真っ直ぐに。アタシは落下する。バチュルを握って落下する。もちろん事故なんかじゃない。
軌道はバッチリ。アタシが狙うのは、ただ1点。


ケイティ・カエデ「カエデっ!!」

カエデ「ケイティさん!!」
 ▼ 322 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:44:40 ID:xv12dfNk [24/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
落下。

落下。


落下。



落下。




……ここだ。


カエデ「──ギラギラ でんき デコレーション!! 痺れる一撃、よろしくね〜っ!!」


待ち構えていたカエデを中心に、光の嵐が巻き起こる。周囲のプリズムからも光を吸い上げて、クリスタルのボールに集約して。
青い光を放ちながら、それは、アタシの元へと飛んでくる。

刹那。

アタシの手ごと、イエローの宝石に包まれて。そして、それが砕ければ。


カエデ×2「「バチュル、テラスタル!!」」

バチュル「バチュバチュバァ!!」


電気タイプのテラスタル。バチュルの背中から、大きな豆電球型の宝石が伸びる。やっぱりちょっとビックリするけど、でも、想定の圏内だ。このくらいのサイズなら、ちゃんと入る。

落下。

落下。

落下。

アタシ達は落ち続ける。でもそれももう終わり。
だってもう、目の前には。

大きく開いて、糸で固定された、HIDE DIEの口がある。開け放たれたそれの奥には、食道すらも見えそうで。
そう、内蔵。どれだけ鎧で覆っても、決して守れない動物の急所!!

そこに、アタシは!!
 ▼ 323 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:45:23 ID:xv12dfNk [25/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
HIDE DIE「 が ────

ケイティ・カエデ「とどめだHIDE DIEっ!!」

バチュル「バチュ!!」

ネジッ


テラスタルしたバチュルを、捩じ込んだ!!


HIDE DIE「 ご ぷ 、 ■ ────


これが、ケイティ・カエデのゼンリョク!!



ケイティ・カエデ
「 ス パ ー キ ン グ ゥ ッ ッ ッ ッ ッ ! !
   ギ ガ ッ ッ ッ ! !
      ボ ル ト ォ ォ ォ ッ ッ ッ ! ! ! ! ! ! ! ! 」
 
 
 
 ▼ 324 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:46:18 ID:xv12dfNk [26/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
光よりも、更に早く。
落雷よりも、更に激しく。

アタシ達の電撃が、HIDE DIEを貫いた。

口腔部から、内蔵を引き裂いて、足先に至るまで、電撃で貫いた実感があった。

HIDE DIEは。


HIDE DIE「


もう、言葉もない。

直後。

爆発。


ケイティ・カエデ「──」


HIDE DIEの巨大な肉体が消滅して、アタシを支えるものも、もう何もない。バチュルだって、並行世界のパワーで無茶をしたから、既に気を失いかけている。

落下。

今度こそ、ただの落下だ。


ケイティ・カエデ「っふ──」


でも、アタシは。面白くって仕方がなかった。ああ、こんなに!! こんなに考えて、こんなにムチャクチャな作戦を立案して、皆で揃って実行できる日が来るなんて!!
良い。これは、とても良い!!

こんなに面白いことがあるなんて知らなかった。こんなに楽しいなんて知らなかった。そしてそれを、今日知った。
だからもう、アタシは。自分が落ちてることなんて、どうでも良かったんだ。


カエデ「お願いしますね〜?」

ワナイダー「ディダッ」


──それと同時に、カエデなら受け止めてくれるだろうって、知ってたからだ。
墜落するアタシの身体を、ワナイダーの張った網が受け止める。柔らかく。柔らかく。沈み込むように──
 ▼ 325 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:46:51 ID:xv12dfNk [27/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



全てが終わって。


機械音声『並行世界接続ゲート、クローズの準備が完了しました』

新芹かえで「これでよし。後は皆で帰れば勝手にゲートが閉じて、全部閉じれば自爆するように設定できた」

ケイティ・カエデ「ありがとかえで」

新芹かえで「…………あっ今の私の方?」


天井に張り付いていた並行世界間ゲートが、今アタシ達の目の前に降りてきている。白い穴の遥か彼方に、それぞれの世界の風景が見える。
──黄緑色のモンスターボールを掲げた、アカデミーの姿も見えた。あれが、アタシの帰る場所。


ヒメグマのカエデ「村長!! よかった!! ほんとうに よかったよぉ!!」

ヘイラッシャのハイダイ「おお、おお、カエデちゃん。可愛い顔がぐしゃぐしゃじゃないか」


そんな声が聞こえて、振り向く。
HIDE DIEの作ったBURSTハートから解放されたヘイラッシャのハイダイさんが、カエデちゃんに抱きつかれていた。
良かった。
助けられて、良かった。


楓コウナン「ともすれば、儂の世界のハイダイどのも帰ってくるかと思うたが……まあ、そう上手くはいかぬな」

アチェリア・カエデ「ブタちゃん……」

アーフォン・カエデ「でも、カエデちゃんの笑顔は守れたよ」

ダンプン・カエデ「そうだな。ワタシが誇れる思い出が、1つ増えたよ」
 ▼ 326 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:47:23 ID:xv12dfNk [28/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
そうやって、3分くらい、互いに互いを労い合って。
そうしているうちに、気づけばもうアタシ達は揃って、自分の帰り道の前に立っていた。
まあ、実際並行世界なんて、長居していいものじゃない。普通に考えて、帰れるうちに帰った方が、良いに決まってる。


楓コウナン「皆のもの。此度の勝利、誠に見事なものであった。儂は──うむ。此度も、良い戦友に恵まれたな」


コウナン将軍が、そんなことを切り出した。


ヒメグマのカエデ「みんな ありがとう!! えっと……げんきでね!! ええっと……もっと、はなしたいこと いろいろあるんだけど……ありがとう!!」

ヘイラッシャのハイダイ「皆様。今回はカエデちゃんがありがとうございました。もちろん、私もね」


続いて、カエデちゃんとヘイラッシャのハイダイさん。
そうだよね。こういう時は、こうするよね。アタシは普段、こういうのはスキップしてきたけれど。でも今は、聞いてもいい。


新芹かえで「えっ、えっと……ありがとうございました!! 本当に、私、皆に助けられて……今もなんか、夢みたいだなって、ちょっと思ってるんですけど。でも私、今日のことを絶対忘れません!!」

拝田壱太郎「ありがとうございました。俺、今回の話漫画にしたいんですけど、良いですか?」


それは知らない。イエスともノーとも言わないような顔をしておく。
 ▼ 327 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:47:53 ID:xv12dfNk [29/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
続いて、ポケモンカードのカエデ達。
何かを語ることはないけれど、ふよふよと浮かんで、アタシ達の周りを1人ずつ回っていって。


トレーナーカードカエデ「──!!」

トレーナーカードハイダイ「──!!」

新芹かえで「えっと……ありがとうございました、って」


そういう内容だとは、アタシにも感じられた。アタシも家に帰ったら、昔やってたカードゲームまた引っ張り出してみようかな。

そうして、順番は回っていく。


アーフォン・カエデ「ああ、僕の番か。そうだね……僕は、うん、お子さまを守る戦いばかりだったから、こういう皆で戦うのって、新鮮で。良い経験になったよ。ありがとう」


アーフォンが話して。


ダンプン・カエデ「今回の出会いに感謝する。それと……改めて、昨日は疑って済まなかった。ワタシ達は、良いチームになれたと思う。ありがとう」


ダンプンが話して。


アチェリア・カエデ「皆ありがとー!! あーしの世界に遊びに来てもいーからねー?」


アチェリアが話して。
 ▼ 328 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:48:31 ID:xv12dfNk [30/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
カエデ「みなさん、ありがとうございました〜!! とってもかっこよかったですよ〜!!」

ハイダイ「オイラ感動だい!! なんてっ、なんて素晴らしい絆なんだい!!」


そして、カエデが話して。


カエデ「ラスト、締めてください〜」


アタシの番が、回ってくる。


ケイティ・カエデ「……ハイダイチャンピオン、先やります?」

ハイダイチャンピオン「オレっちが行ってどうすんだ。オレっちは別に、ありがとう、だけで十分だ。……カエデ」


そう言われて、アタシは1歩分押し出されて。
ああ──さっきまでは、必死だったからやれてたけれど。やっぱこういうのって、緊張する。
でも。
アタシも、話したかったから。


ケイティ・カエデ「えっと、皆!! ありがとうございました!! アタシの話、聞いてくれて……嬉しかった。アタシは見ての通り、こういうの、本当は苦手なんだけど……皆に会えて、良かったと思ってる。……それから」


それから。最後に、大切なこと。


ケイティ・カエデ「ええと──楽しかった!!」
 ▼ 329 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:49:00 ID:xv12dfNk [31/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
『カエデ』達が帰還する。
『ハイダイ』達が帰還する。
ある者は手を振って。ある者はにこやかに。
穴を通って帰還する。
穴を通ればゲートは閉じて、もう、開くことはない。

ゲートが閉じる。
ゲートが閉じる。
ゲートが閉じる。

皆、あるべき世界へ帰っていく。


ケイティ・カエデ「……」


アタシ達も、穴の中に脚を踏み入れようとして。
……少しだけ、思うところがあった。


ハイダイチャンピオン「カエデ?」

ケイティ・カエデ「……先帰ってて」


ハイダイチャンピオンの背中を押し出して、先に穴へと放り込む。白の光に、その背中が埋もれていくのを見送る。
それから、5割の期待と、5割の諦めを胸に抱えて。
アタシは隣に目をやった。

カエデが、アタシを見つめていた。
 ▼ 330 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:49:49 ID:xv12dfNk [32/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ケイティ・カエデ「……ねえ!! カエデ!!」

カエデ「はい〜?」

ケイティ・カエデ「残ってるってことはさ、まだ時間あるよね?」


一応、確認してみる。カエデはにこやかに微笑んで、軽く頷いた。まあ割といつも微笑んでたような気もしなくもないけど。


ケイティ・カエデ「あの話、覚えてる?」

カエデ「約束、してましたもんね〜」


……既に、モンスターボールを構えていた。
流石。話が早い。


ケイティ・カエデ「……うん、約束!!」


一昨日の、カラフシティでの約束。
突っ張ってたアタシが吹っ掛けた、たわいもない勝負の約束。でも、丁度良かった。

アタシは、もう少しだけ。
カエデのことが知りたかった。


ケイティ・カエデ「ツンベアー、まだ戦える? ウイニングランの時間だよ!!」

ツンベアー「ベアアアアアッ!!」

カエデ「クマちゃ〜ん!! 折角ですから〜、スッキリ終わらせましょ〜う?」

リングマ「グマ、アアアッ!!」
 ▼ 331 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:50:56 ID:xv12dfNk [33/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

──
───

8月28日 マスカットアカデミー


ケイティ・カエデ「なーにチリちゃん先生、職員室なんかに呼び出しちゃって」

リカ・チリ「ケイティ。まあ座れや」

ケイティ・カエデ「はあ」

リカ・チリ「ジブンなんか言うことあるやろ」

ケイティ・カエデ「あー……補習あった?」

リカ・チリ「違う」

ケイティ・カエデ「忘れ物とか?」

リカ・チリ「違う」

ケイティ・カエデ「チリちゃん先生いつもありがとう?」

リカ・チリ「それも違う。また今度改めて言ってや……呼び出しあったやろオモダカ校長から。先週のクラス対抗ダブルバトル大会で、妙な戦法けしかけたの、ジブンやろ?」

ケイティ・カエデ「あー…………バレちゃった?」

リカ・チリ「当然や!! なーんでジブンはトレーナーを直接攻撃しようなんて提案したんや? クラスの全員に!!」

ケイティ・カエデ「そんなこと言ってないよ。あくまでトレーナーの近くの地面を狙おうねって言っただけ。相手がビビるのもそうだけど、砂地を削れば砂煙とか立って、ポケモンへの指示やりにくいでしょ? バトルフィールドだって特に防護柵とか無かったんだし、こういう事態にも備えてこそのトレーナーだよ」

リカ・チリ「うわ反省の色ゼロ!! ジブンのことこれからバーバリアンって呼んでやろうか?」

ケイティ・カエデ「げっ、ネタ被り」
 ▼ 332 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:51:38 ID:xv12dfNk [34/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
リカ・チリ「……で、そのお説教の呼び出しを、昨日オモダカ校長が、直々に、ケイティにかけてた筈なんやけど? 見事にすっぽかしたな?」

ケイティ・カエデ「あー、そんなのあったっけ」

リカ・チリ「はぁー……なんでまた忘れたりしたんや、普通忘れへんやろ校長に直々に言われたら」

ケイティ・カエデ「別件で呼び出されてたの。ガラルで出来たトレーナー友達がこっち来てるから、1試合やろうって」

リカ・チリ「それは…………ホンマかそれ? 友達? いや普通にめでたいな、今夜はパエリアか?」

ケイティ・カエデ「で、今からもう1試合やりに行くんですよ」

リカ・チリ「へぇ!! ──いやダメやでそれ、オモダカ校長がもうその辺で待機してるんやから。今日こそお説教やケイティ。長くなるで」

ケイティ・カエデ「…………また今度ねっ!!」ダッ

リカ・チリ「あっ逃げおったアホ、ケイティ、ケイティ!! 校長笑ってないで手伝って!! ケイティ!! 逃げるな!!」

ケイティ・カエデ「バチュル!! いきなりだけどいける!?」ポンッ

バチュル「バチュ!!」

ケイティ・カエデ「跳ぶよっ!!」シュパッ
 ▼ 333 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:52:36 ID:xv12dfNk [35/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
オーケイ、じゃあもう1度だけ説明するね!!

アタシはケイティ・カエデ。『マスカットアカデミー』最強のトレーナー!! まあ、諸説アリってヤツだけど!!

ここまでは、流石にもう知ってるか!!
でも想像できる?

内申点を上げて、ハイダイチャンピオンをバトルで倒した。朝の挨拶が出来る人も2、3人は増やせた。ガラルのリーグを制覇してきて、パルデアの面接は顔パスでクリア!! エリアゼロから出てきたウルトラネクロズマとかいうやつも、さっさと大穴に押し戻した!!

そして時々、あの並行世界で出逢ったカエデ達のことを思い出す。だけど別にそんなに恋しいワケじゃない。
だってアタシはアタシだし、アタシらしくやってるし。ならそれは、皆も皆らしく、好き勝手にやってる証明だと思うから。

アタシのことを全部解ってくれる人は、どの並行世界に行ってもきっと存在しない。
でもアタシは天才だから、居ないと知っていれば対策が出来る。何を語るか。どう語るか。何故語るか。誰が語るか。それを考え続ければ、ちょっとくらいは通じることだってある。だからそれでいいんだ。

だってアタシは、この世界に1人だけのケイティ・カエデ!!

1人だけだけど、それは絶望じゃない。

はじまりなんだ!!
 ▼ 334 チバチバチュル◆UYa1ONLU8s 23/08/28 00:53:39 ID:xv12dfNk [36/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
───
──


HIDE DIEが倒された、エリアゼロ研究室。
既に全ての『カエデ』は帰還し、並行世界接続装置はカエデ博士の残したプログラムによって恙無く自爆を達成した。
故に、もうこの空間には何もない。そんな研究室の一角で。

敷き詰められたパネルが、蹴破られる。


チリ・カイエン「動くなァ!! もうどいつもこいつも動くなァ!! 俺はもう混乱してるんや、一体全体俺の世界には結局何が起きてたんやァ!?」


男の名はチリ・カイエン。カラフシティ警察で機動隊を指揮していたはずだったのだが、HIDE DIE大統領によってテロリスト確保に駆り出され──つい先程、『そもそもHIDE DIE大統領なんて存在しない』という事実が明らかにされたところであった。
上層部も混乱しているが、現場の混乱も当然ひとしおで。実働部隊であるチリ・カイエンにも、とりあえず怪しい奴を何とかして、とフワッとした命令だけが下されている。

そんなチリ・カイエンが、丁度今、エリアゼロ研究室に入ってきた所だった。

当然、驚く。何に驚くといえば、その壁面のプリズムのような煌めきに驚き、巨人が暴れたかと見紛う程の尋常ではない荒れ具合に驚き。


チリ・カエデ「ほォん──?」


だが殊更に目を引いたのは、研究室の中央、中空。1つ、巨大な物体が宙刷りにされている。
よくよく見てみれば、それは人間であった。それもただの人間でもない。


ハイダイ博士「──ぐぅ──」

チリ・カイエン「──嘘やん!?」


そう。メチャクチャ怪しいから何とかして、と上層部に指定された、ハイダイ博士その人なのである。そのハイダイ博士が──まるでくものすのように張られた真っ黒なコードに縛り上げられて、空中に固定されているのだ。

まあ、一先ずちゃんと逮捕しておこう。チリ・カイエンが歩み寄ってみれば。
ハイダイ博士のその胸元には、1枚の紙。


チリ・カイエン「やるやァん」


書き込まれていたのは、たったの1文。


『カエデさん達より愛を込めて』



【SS】カエデさんバース ─Over the NINE DIVERSE─ 劇終
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