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近くに町もなければ街道も整備されていない南4番エリアでは、日没後の光源は寄り道トレーナーたちのテントのランプぐらいしかない。
トレーナーが寝袋に入るころにはそれも消え、見渡す限り完全な暗闇になる。
しかしこの日は、深夜10時を回ってもエリア一帯が眩く照らされていた。
ぴかぴかと規則的なリズムで瞬く、星ではない灯り。
地上というには高く空というには低い場所で赤い光が輝くたび、一度は闇夜に溶けて形を失った丘陵がくっきりと浮かび上がる。
「うわ、なんだ」
「見張り台の方?」
赤く照らされたあちこちのテントから、燻り出されたかのようにトレーナーが這い出ては空を指差す。
「なんか上で光ってる」
「ポケモン?」
「デンリュウじゃない?」
「本当だ」
「野生かな。珍しいね」
「野良デンリュウがあんなことする?」
光の正体を好き勝手に言い合うトレーナーたちのことなど気にも留めず、赤い光は淡々と明滅を繰り返す。ぴか、ぴか、ぴか、と。
「……なんか」
物珍しさにスマホのカメラを向けていた青年が、ぽつりと呟いた。
「あのデンリュウ、何か待ってるみたいだ」
液晶に写る光の主は、その尻尾の灯りで照らされた何を見るでもなく、どこか遠くを見つめていた。