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──この女は何を言ってるんだ
そう言いたげにヒビキは辺りを見渡す
この場に居るのは自分と、目の前の『黒い箱を抱えた女』の2人だけ
周りにいくつか家具はあるが『人形』など1つもない
以前からこの女が『突然泣き出したかと思えばすぐに泣き止む』など、おかしな振る舞いをする事は多々あった
……が、それにしたって今回のこれは度を越している──
そんな事を考えていたヒビキの耳に飛び込む『女の言葉』
「何をキョロキョロしてんねん? 『お人形さん』は……アンタや」
刹那──
黒い箱が突然開き……ヒビキの体を吸い寄せ始める
足掻けどもがけどその勢いが弱まることは無く、すがりつこうとばたつかせた手は虚しく空を叩くのみ──
そんな様子を嘲笑うかの如く『小さな黒い箱』はヒビキを引き寄せ続け…………ついにその体を飲み込んだ──
この箱は、アカネが『心から愛した男』しか立ち入る事を許されぬ魅惑の桃源郷
そして、中に入れば二度と外に出る事など出来ない絶望の箱庭
2人はこれから先、誰にも邪魔されること無く生涯を『この中』で過ごすのだ
病むれども健やかなれども……
『死』が2人を分かつその日まで──
~完~