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SS

【10周年SS】ヤーコン、恋と青春の宝石

 ▼ 1 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/05 18:54:40 ID:rM660lyA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『ヤーコンさん…ヤーコンさん…♡』

ヤーコン『んん?………ぬおお!!』

フウロ『えへへ、来ちゃいました』

ヤーコン『あ、あの超人気グラドルのフウロ…!?フン!そんな、色々ハミ出ちまってる水着で…』

フウロ『ヤーコンさんに喜んで欲しかったんだもん♡ずっと会いたかった…』

ヤーコン『フ、フウロォ…♡』

フウロ『挨拶のキ・ス♡ん………』

ヤーコン『ん〜〜〜〜〜っ♡』


ゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロッ!
ゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロッ!

ヤーコン「………」

目が覚めるとワシは、ガマガル型の目覚まし時計と熱い口付けを交わしていた。
目線を下げて時刻を見る………


ヤーコン「こんな時間じゃねぇか!遅れちまう!!」
 ▼ 57 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/13 22:58:24 ID:8aL28pLw [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤーコン「それで、こっちだな。これはそれぞれの絵が描かれた場所」

ヤーコン「つまりディアンシーが出現するポイントとその行き方を示してる地図だ」

タルは持参してきた山の航空写真を取り出した。ワシと会う前に下調べをしてくれたらしい。

タル「だけど、この山道を歩いてもこっちには進めそうにないですよね?」

ヤーコン「確かにな。だがこの一帯の地下にはイワークが住んでいてな」

タル「イワークの通った跡はディグダ達も通る坑道に…なるほど。それが通路なんですね」

ヤーコン「そういうことよ。そしてディアンシーの下に集まるだろうメレシーが群れで見られるのはこの辺りだから…ここだ。この地点が一番可能性が高いはずだぜ」

地図の一箇所をワシが指差すと、タルは感心したかの如くこちらに視線を向けてくる。

タル「メロン先生の仰る通りですね。ヤーコンさん、本当に地理とか鉱物とか詳しいんだ」

ヤーコン「フン!もちろんだ!ワシはいずれ世界一の鉱山会社を打ち立ててやるんだからな」

タル「すごく立派だと思うな。将来の目標をしっかり持ってることも、それに向かって努力を続けてることも」

ヤーコン「ま、まぁな?」

タル「きっと、ううん、絶対叶うよ。なんか私まで楽しみだな」


そう言ってくれたタルの笑顔は、いつまでも忘れられないだろうと思った。
 ▼ 58 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/13 23:04:06 ID:8aL28pLw [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜〜〜〜〜〜〜〜

17時。タルが帰宅する時間になった。

キクイ「せっかくだから孫よ、タルさんをお家まで送ってあげるんだね」

…というわけで、ワシは夕方の道をタルと共に歩いている。

タル「山に行くための準備までしてもらうなんて、何だかお世話になりっぱなしですね」

ヤーコン「気にするこたねぇよ。あれぐらいウチにはいくらでもあるからな」

タル「本当に………ん?クララちゃん?」

タルが見咎めた方向には、カブとクララが二人きりで立って、何事か話していた。

ヤーコン「なにしてんだ?」


カブ「クララくん、わかるね?」

クララ「分かん、ないけどォ…」

カブ「今僕は君に対して伝えなければならないことがある。わかるね?」


カブ「クララくん、君が好きだ」
 ▼ 59 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/13 23:10:26 ID:8aL28pLw [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
クララ「えっ…カブさん?何言ってんですかァ…?」

カブ「僕は君が好きだ。だから付き合いたい。わかるね?」

クララ「分がんないってェ…!!!」

カブ「僕はぁ!!!!!!一生懸命で!!!!!!へこたれなくて!!!!!!!!心の底に優しさを持ってる!!!!!!!!胸のデカいブスな君が大好きなんだ!!!!!!!!わかるね!!!!!!!!」

クララ「分゛か゛ん゛な゛い゛っ゛て゛言゛っ゛て゛ん゛ち゛ゃ゛ァ゛ん゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

カブ「クララくん!!!僕にはクララくんしかいない!!!!!!!!クララくんしかいないんだよ!!!!!!!!」

クララ「」プシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ///

顔を真っ赤にしたクララは俯いて、全てを受け入れるように片手を差し出した。

カブ「………ありがとう、クララくん///」


タル「………」
ヤーコン「………」

突然の衝撃場面に遭遇したワシらは、暫し立ち尽くしていた。


「おお!これはまた大胆な物ですねぇ〜〜〜!!」
 ▼ 60 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/13 23:20:28 ID:8aL28pLw [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤーコン「ん…?げっ!お前は」

アクロマ「ご無沙汰ですねヤーコンさん!最近は被験者になってくれなくて寂しかったんですから」

この色んな意味で変な頭をした奴はアクロマ。一応は科学部の部長をやってる。
超名門学校からの引き抜きを断って学園に居続ける変わり者だ。
ワシはこいつの発明品の実験台にされては度々酷い目に…

ヤーコン「おっ!?見つかる…」

思わず大きな声を出し、カブとクララに見つかるかもしれないと身構えたが、二人は自分達の世界に入っているのか、まるで反応を見せていない。

アクロマ「見つかる心配はありませんよ。わたくしはカブさんに"外界遮断フィールド"を貸し出してますから」

タル「え、それは何ですか?」

アクロマはモンスターボール大の装置を取り出した。

アクロマ「これを展開することによってですね、半径10mほどの人やポケモンの姿、声までも見聞きできなくなるというものなんです」

ヤーコン「ん?周りからじゃなくて、周りが見えなくなるマシンてことか?」

アクロマ「元々は勉強や仕事に集中する用途で開発していましたが、まぁ使い方は各人の自由ですし」

アクロマ「そうだ!ここで会ったのも何かの縁。もう一つあるので差し上げますよ」

アクロマはワシに外界遮断フィールド発生装置を手渡すと、どこまでもマイペースに去っていった。
 ▼ 61 プ・レヒレ@だいこんごうだま 24/03/15 10:45:28 ID:YcMkt0.c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アクロマもいるのかw
支援
 ▼ 62 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/16 11:54:43 ID:BMN27.SY [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤーコン「………」

タル「………」

文字通り二人きりの世界に没入したカブとクララから逃げるようにして、ワシとタルは再び歩き始めた。

ヤーコン「…エヘン!」

変な熱に浮かされたような気まずさが漂う。
やはり、身近に接している学友の赤裸々な姿を見れば、こんな空気になるってもんだ。

タル「ねぇ、ヤーコンさんは」

ま、いくら男女の組み合わせといっても、いちクラスメートと二人きりなだけで意識する理由なんざ………


ヤーコン「な、なんだよ?」

タル「どうしてヤーコンさんは、私の研究を手伝ってくれるの?」

ワシにとっては唐突な問いだが、タルにとってはそりゃあ気になることだろう。

ヤーコン「それほど驚くことでもねぇ、お前には生物のテストで世話になったからな。借りを返したいだけだ」
 ▼ 63 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/16 12:44:18 ID:j7rkoBHI NGネーム登録 NGID登録 報告
タル「そんな貸し借りのお話ではないですよ。きっかけもビッケ先生に頼まれたからだし、私も楽しかったですもん」

ヤーコン「フン!そう言ってくれたとしても、受けた恩はキッチリ返さねぇとな。人生はギブアンドテイク!ワシの座右の銘だ」

タル「ふ〜〜〜ん…?」

何故だかこちらを探るような、なぶってくるような視線を浴びせてくる。
真面目一辺倒な女だと思っていたタルにも、こんな目ができるのか。

ヤーコン「そ…それから、あれだ。いやウルップの野郎じゃなくて」

ヤーコン「つまりだ、ディアンシーがダイヤを生み出すメカニズムをこの目で確かめようってわけだ」

ヤーコン「将来もっと効率的に宝石を精錬できれば、じゃんじゃん利益も上がるしな!フン!」

タルは口許を軽く抑え、ふふと息を吐いた。

タル「呆れた。お金儲けばっかり考えて」

その声色といい表情といい、弁明がましいワシの発言を揶揄っているのは間違いなさそうだ。


ワシはヘソを曲げて…ヘソを曲げた風な表情を作って…鼻の頭を掻くと再び歩き出した。

黄昏の空に早くも星が顔を出し始めている。
 ▼ 64 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/16 18:37:16 ID:BMN27.SY [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゲロゲロゲロゲロゲロゲロ………   ピッ

けたたましく鳴き始めたガマガル型目覚まし時計を止めてやる。
今日はコイツに頼るまでもなく、時間通りに目覚めることができた。

タルと共に山へと赴く当日の朝。眼はスッキリと冴えている。

ヤーコン「フン!行ってくるぜ」

キクイ「ぷんぷん!仲良く気を付けて行ってくるんだね」

装備を整えた姿でワシはタルとの待ち合わせ場所に向かう。
山といっても、そこまでデカい山でもなく、ワシが何度も足を運んだ裏庭のような場所だ。

気負うような場所でもないんだが…張り切っていないと言えば、嘘になる。


タル「おはようございます、ヤーコンさん」

タルは時間通りに来なかった。約束より30分早く来たからだ。
先に来て迎えてやろうと思ったのだが、図らずも同時に到着した形である。

ヤーコン「お前、えらく早く来たもんだな。そんなに楽しみかよ?」

タル「当然です。貴重な時間は1分でも1秒でも長く使わなきゃ!」

タルの格好は、ワシと同じく実用一辺倒な登山スタイル。
それでも、踊るように跳ね回るような軽やかさを纏っていた。

ヤーコン「おーし!じゃあ行くとするか」
 ▼ 65 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/16 22:31:15 ID:BMN27.SY [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ワシとタルの共同研究が始まった。

件の山は鉱質の山肌が露出していて、草木が少ない。そのような地勢だから、いわ、はがね、じめん、それからかくとうタイプのポケモンが多く生息している。
標高はそこまででもないし、急峻な崖があるわけもない。ただし細かい隆起や窪みが多く、足がはまって挫いたりしたら一大事だ。

ヤーコン「ワシのバックパックに掴める所があんだろ。それで付いて来るんだ」

タル「はい。真っすぐな山道がほとんど無くて歩きづらいなぁ」

バックパックを掴むタルの重量を感じながら山道を歩く。
そうなると、ワシの歩き方も自然と後ろのツレを意識したものに変わっていく。
歩幅はどのくらいか、止まったりはしていないか、「大丈夫か」と声をかけながら…

タル「わざわざありがとうございます。私のペースに合わさせてしまって」

ヤーコン「気にすなよ。無理して怪我でもされちゃあ困る。お、次は右だぞ」

タル「ヤーコンさん、慣れているとはいえ景色もあまり変わらないのによく道が分かりますね」

ヤーコン「いやなに、コイツのおかげだよ」

ワシらを先導するように前を行くのは、ガキの頃から一緒に汗水垂らしてきた相棒のドリュウズだ。

ヤーコン「コイツはここで生まれたんだ。モグリューやドリュウズは地下に迷路のような巣穴を掘るんだが、ワシの手持ちになってからもそこが荒らされないか毎度確認しに来ててな。付き合わされたワシも道に詳しくなったってわけよ」

タル「へぇ〜、この山ドリュウズくんのご実家だったんですね」
 ▼ 66 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/16 23:01:19 ID:BMN27.SY [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
と、そんな時。笛を吹くような甲高い音が辺りに響く。
和やかな雰囲気に水を差すような寒気が流れ込み、ワシとタルの肌を刺す。

タル「うう…山の上はやっぱり肌寒いです。十分に厚着はしてきたのですが…」

ヤーコン「大丈夫だ。ちょうど洞窟に入るとところだから、寒さも凌げるだろ」

タル「洞窟の中?日が差さないから余計寒いような」

半信半疑のタルを連れ、山肌に穿たれた洞窟の中へと進む。


仄暗くも青い光を湛えた洞窟の中を進んでいく。
一歩進むたびにパリパリと空気が乾いた音を立てるのは、岩壁から見え隠れする電気石が理由だ。

タル「電気石といえばバチュルを思い出すなぁ。ワンパチとかメリープとか、でんきポケモンがくすぐったそうにしてたら、大抵お尻にくっついてるんです」クスクス

ヤーコン「はは、お前ケツとか口走んのな」

タル「ちゃんとお尻って言いました!大体それ自体変な言葉ではないし…」

ヤーコン「…よし、この辺りだな。ドリュウズ、”きんぞくおん”!」

ドリュウズが地中を掘り進む鋼の両腕を打ち鳴らす。
するとそれに呼応して、丸っこいシルエットの群れ…十何体はいる…がワシらのもとに集まってきた。

マントルポケモン・ダンゴロだった。
 ▼ 67 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/16 23:19:49 ID:BMN27.SY [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
タル「ダンゴロがこんなに集まって…空洞のような耳で音を敏感にキャッチするからですね」

足元のダンゴロに目線を合わせようと屈んだタルは、何かに気づいた様子である。

ヤーコン「体内にエネルギーコアがあるダンゴロは体温が高いからな。これだけ集まりゃ天然の暖房みたいなもんだ」

ダンゴロもこちらから仕掛けない限り攻撃してくるような性質ではない。遭難したときは、ダンゴロを集めて体温の低下を防ぐことが推奨されているくらいだ。

そして、ダンゴロを呼び集めたのにはもう一つの理由がある。

ヤーコン「残念だが、この辺りにはディアンシーはいないようだぜ」

タル「えっ!?なぜ分かるんです?」

順を追って説明してやる。ダンゴロにはメレシーやイシツブテと身体をぶつけ合い硬度を競う習性がある。
ディアンシーが近辺にいるなら、メレシーの群れとも接触しているはずで、ダンゴロ達にもメレシーを覆う鉱石の破片が付着しているはずだ。
しかし、目の前のダンゴロ達にはそれが見られない…


タル「そっかぁ。そう簡単に会えると思うのも虫がいい話ですよね」

ヤーコン「ん、そんなに堪えてないんだな」

タル「チャンスはまだまだありますから。それに、この状況だってとても面白いじゃないですか!」

話し声に反応してぴょこぴょこ動くダンゴロに囲まれて、タルはご満悦のようだ。

ちょうどいい時間ということで、この洞窟で昼飯ということになった。
 ▼ 68 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/17 11:22:09 ID:PHbUg0SU NGネーム登録 NGID登録 報告
ヤーコン&タル「「いただきま〜〜〜す」」

タルの白い弁当箱にはおにぎりが二つと幾つかのおかずが収まっている。
おにぎりにはピンクと緑のふりかけ、おかずの配置も色鮮やかで華やかな弁当だった。舞い踊るチェリムの姿を想起する。

タル「ヤーコンさんのは、カレー?」

ヤーコン「おう。昨日ワシが作ったやつの残りだ」

タル「ヤーコンさんて料理できたんだ」

といってもカレーやらシチューやらパスタやら、できあいの物をレシピ通りに混ぜて加熱するぐらいしかできないがな。

ヤーコン「誰か凝った料理作ってくれねぇかな〜」

タル「料理部長のハイダイさんにでも教わってはどうです。…ドリュウズくんはこのポフィンがいいの?はい、あーーーん♪」

ワシの相棒のはずのドリュウズはタルから渡されたポフィンを美味そうに平らげ、いかにもご満悦の様子でタルに寄り添っていた。

ヤーコン「あっ、コイツ!ワシを放っといて鼻の下伸ばしやがって」

タル「ふふっ、いいじゃないですか。ねぇ?」

ドリュウズといいダンゴロといい、無骨なポケモンに囲まれていながら、タルは童話に出てくる乙女のようにも見えた。


…ディアンシーを見つけたら、こういうやり取りも終わってしまうんだろうか。
ふと、そう思った。
 ▼ 69 ダイトウ@じめじめこやし 24/03/17 11:39:49 ID:kc.AH8/2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シエンネ
 ▼ 70 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/17 16:04:32 ID:5d0cNXZw [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜〜〜〜〜〜〜〜

翌日。ワシとタルは再び山を登り始めたが、そのコースは昨日と異なっている。
古い地図に記されたポイントは幾つもあり、行き方はワシが完璧に把握している。

タル「今日も行きましょう!手掛かりだけでも見つかるといいですね」

ヤーコン「おう」

タルは早くも岩だらけの山道を歩くことに慣れ始めている様子だった。
ワシのバックパックに掴まる必要もなさそうではある。

ヤーコン「…オイ、慣れ始めが一番怖いぞ。掴まっとけ」

タル「あ、そうですね。失礼します」

それでもあの重みが失われることが、妙に寂しく感じられた。

目の前をワンリキーが横切って走り去っていく。ジョギングでもしているのか。

ヤーコン「しかし、今更ながらこんな殺風景な場所はしんどいだろ」

タル「あら、そんなことないですよ!こういう険しい場所でもポケモン達が生き生きしてるのが感じられて、とても楽しいです。ヤーコンさんがいてくれたおかげですよ」

ヤーコン「ふ、フン!うまいこと言いやがって」

タル「お礼ぐらい素直に受け取ってください。あ、あのニャースは原種と違うモフモフな姿をしていますね」

目の前にははがねタイプを持つ種類のニャースが数匹、慌てたようにどこかへ………


タル「?ヤーコンさん…?」

ヤーコン「…面倒なことになったかもしれねぇ」
 ▼ 71 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/17 16:24:40 ID:5d0cNXZw [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ワシが言い終わるかどうかという瞬間だった。

山が断ち割られるのではないかと錯覚するような地鳴りと共に足元が揺さぶられる。
ワシボンやヤヤコマが慌てふためいて飛び去って行く様が見えた。

タル「!!!!」

ヤーコン「大丈夫か!?」

倒れ込まないよう、タルを抱きかかえるようにして支える。
儚げな柔らかさを身体に感じて一瞬動揺するが、すぐに変事に備えるよう周りを見渡す。

タル「これって…地震でしょうか?」

ヤーコン「いや、そんなんじゃねぇな。さっき走り去ってったポケモン達は”ヤツ”から逃げてたに違いない」

山を揺るがしていた地鳴りは、規則的な足音へと変じていた。
その直後に轟く雷鳴のような咆哮。ワシの推測通り。”ヤツ”が姿を現した。


巌のような魁夷な体躯に、荒涼とした岩山に映える緑の堅牢な体表。
よろいポケモン・バンギラスのお出ましだ。


タル「バンギラス…!山を崩すほどの力を持っているポケモン…」

ヤーコン「相当ご機嫌ナナメだな。たぶん他の個体かボスゴドラに別の山を追い出されたのか…」
 ▼ 72 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/17 16:42:57 ID:5d0cNXZw [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
タル「残念ですけど今日の探索は諦めましょう。早く逃げて山を下りないと、このままだとこちらに来ます」

ヤーコン「逃げるっつっても、このまま下山しようにもヤツに見つかるぜ!」

バンギラスは通常、全力で叩きのめす相手を探し求め、弱い相手には見向きもしないとされる。
しかし目の前のバンギラスは怒り心頭で、近くの岩を殴りつけたり、憤懣に突き動かされて激しく頭を振っていた。

視界に入ろうもんなら、まず間違いなく餌食になる。


ヤーコン「………ワシが出る」

タル「………えっ!?」

ヤーコン「ワシが奴を引き付けておくから、その間に山下りて助けを呼んで来い」

そのような決断を迷わずできる自分がいたことに驚いた。しかし、止まれない。

タル「そんな…そんなこと、できるわけないでしょ!」

ヤーコン「ディアンシーを見たいんだろ!こんなところで諦めちまっていいワケあるか」

我ながらクサイ台詞を吐けるもんだ…。
だが、やってやる。ワシはやってやるぞ!!



タル「………ヤーコンさんの…」

タル「…分からず屋!!」

決意を固めたはずのワシを尻込みさせるような視線が、ワシを真正面から射貫く。
 ▼ 73 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/17 21:32:16 ID:5d0cNXZw [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
溢れ出す思いをそのまま言葉にするような勢いでタルは捲し立てる。

タル「ヤーコンさんがお手伝いしてくれると言ってくれた時から、私の研究は単にディアンシーに会うためだけのものではなくなったんです」

タル「ヤーコンさんと一緒に目標を成し遂げることが、何よりのお礼になるに違いないと思って…」

タル「ヤーコンさんが大怪我でもするようなことになれば、そもそも意味がなくなってしまうじゃないですか!」


ヤーコン「お前…そこまで」

ワシの中にある熱っぽさが冷えていくのが分かる。
先走って、自分に酔ってしまっていたのを自覚し、赤面する思いだった。

タルの言葉が、思いの丈が目を覚まさせてくれたのだ。

ヤーコン「…フン!ワシだって死にたがりじゃねぇ。どうにか逃げる手を………おっ」

叱咤されたことで冷静になった結果、ワシは手元のとある道具の存在を思い出した。問題はそれをどう使うかだが…

ヤーコン「…タル、お前ポケモン連れて来てるか?」

タル「え、ええ」

ヤーコン「おし、じゃあ頼む。アイツの力が必要なんだ」
 ▼ 74 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/18 15:18:30 ID:C56MunIo NGネーム登録 NGID登録 報告
〜〜〜〜〜〜〜〜

荒い鼻息を吹き出しながら、大仰なまでに足音を立ててバンギラスは闊歩する。
逃げ惑うポケモン達の叫喚がまた癇に障った。

心中にわだかまる怒りを発散したいところだったが、力を出すに相応しい相手もおらず、小さいポケモン達は我先に逃げ出してしまっていた。
力をぶち撒けることもできず、苛立ちが募るバンギラスは前へと進む…


とその時、地面を抉る音と土煙がバンギラスを振り向かせた。
銀色に光る鉤爪のようなものが岩肌を掘り抉り、何かが現れようとしているのだ。
それを獲物と定め、進む方向を転じるバンギラス。


…頭上に綿毛のような何かが浮遊し、掌ほどの玉を落としたことにすら気づかなかった。


先ほどまで心身を灼いていた憤懣が、一息に霧消してしまうほどの異変。
バンギラスの周辺が一瞬で静寂の世界と化してしまったのだ。

土の中から現れるはずだった何かが、最初からいなかったように姿を消している。煩わしいポケモン達の鳴き声もぱったりと止み、真昼でありながら真夜中のような静けさである。

呆然として目を白黒させるバンギラス。
どこか興が覚めたかのように、とぼとぼと歩き去っていった………



見えていない、聞こえていないことを頭では知りつつも、慎重に忍び足でバンギラスの側を離れつつ、ポケモン達をボールに戻す。

そして、ワシとタルは一気に来た道を戻った。
 ▼ 75 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/18 15:50:28 ID:keaw8Vr2 NGネーム登録 NGID登録 報告
ヤーコン「ぜぇ、ぜぇ…ぜぇ、ぜぇ。オイ、大丈夫か」

タル「は、はい。何とか…」

窮地を脱した安堵感もそこそこに、荒い息を少しずつ整えていく。

タル「アクロマさんの作った外界遮断フィールド、本当に効果覿面でしたね」

ヤーコン「アイツはイカレてるが発明の腕だけは超一流だからな…それに」

ヤーコン「ヤツの頭の上に装置を持って行けたのはお前のエルフーンのおかげだぜ」

タル「いつもはイタズラ大好きなやんちゃさんだけど、ここぞという時は頼りになる子ですから」

エルフーンは功績に胸を張る風でもなく、眠そうに欠伸をしていた。

ヤーコン「しかしとんだアクシデントだったな。バンギラスに出くわしてもいかんし、今日のところは帰ろうや」

タル「皆で無事に戻れただけで、私は本当に満足ですから」

ヤーコン「そりゃあ、な。随分ワシを喜ばせること言って…」

タルが目を丸くしてこちらを凝視していた。
見ていたのはワシではなく、ワシの背後…つられて振り返る。


そこには丸みのある岩石質の身体、鮮やかな青い結晶体を身に纏った、可愛げのあるポケモンが数匹漂っていた。
 ▼ 76 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/18 22:04:54 ID:wFOgI6NE [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
疲労と緊張からの解放でへたり込んだまま、ワシとタルは顔を見合わせた。

ヤーコン「あれって…」

タル「メレシー、ですよね」

こちらの訝しむ視線に気づきながら、数匹のメレシーは行く手の洞窟へと去っていく。
それは自らの群れへと戻っていくような動きに他ならなかった。

タル「あ、すみません。地図を…」

ヤーコン「あ、おう」

地図に記されているポイントとも、元々メレシーが確認されていた位置からも、ここは大きく離れている。
メレシーはそこまで行動範囲の広いポケモンではないはず………


ヤーコン「…おっ!まさか」

地図を指でなぞりながら、ワシはバンギラスがどこからやって来たのかを思い出す。
それを幾度か繰り返すうち、一つの推論に辿り着いたのだった。

ヤーコン「そうか…あのバンギラスが暴れて、ワシらの前にいる洞窟と、このポイントが繋がったに違いねぇ!」

そのポイントというのは、環境からして一番ディアンシーがいる可能性が高くも、複雑にして険しい経路、ドリュウズの巣から離れていることもあり、辿り着くのが困難だと思っていた場所だった。
 ▼ 77 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/18 22:25:45 ID:wFOgI6NE [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかし本当に洞窟がそのポイントに直通しているとなれば、厄介な山道をひいこら歩くことなく、直線距離を最短で進めるわけだ。

タル「一番可能性が高いとなれば、明日こそはディアンシーに会うことができるかも?」

ヤーコン「………これは推測だが」

それを口にするとき、何故か心の中に微かな苦みを感じた。

ヤーコン「今みたいに外の様子を窺うように出てきて、その後帰っていったってのは、まさしく見張り番がする行動だ。もし群れを、群れの中にある何かを危険から守るためにしたのだとすれば…」

タル「!!それがディアンシーだと…!?」

ヤーコン「そうでもおかしくはねぇ」

タル「本当にそうなら、いよいよゴールは近いじゃないですか!すごい!ね、ヤーコンさん!」

ヤーコン「そう………だな」

僥倖にはしゃぐタルを微笑ましく思いながら、ワシはそれに同調することができないでいる。


目標達成ということは、二人で研究に勤しむ時間が、早くも終わってしまうんだ………。



懊悩したその翌朝。

ワシはタルの家の前にいた。
 ▼ 78 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/18 22:33:28 ID:wFOgI6NE [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤーコン「………」

新聞配達のデリバードや朝のランニングマンだけが道を行くような早朝。
待ち合わせ場所から逆算すれば、タルはこの辺りの時間に家を発つはずだった。

なんでワシはここにいるのか。できれば説明してやりたい。
しかし、できない。何故ならワシ自身にも分からないから。

キクイ『そうかい、そうかい。もしディアンシーを見つけたら、あの娘との研究も終わっちまうね」

昨晩ジジイに状況を説明した時言われた言葉だ。
今更言われるまでもない一言でここに来ることを決めたワケじゃない………はずだ。


タル「いってきまーす!」

ヤーコン「!!」

タル「………え?」

確実に出てくることが分かっているはずのワシの方が強張っていた。

タル「どうしたんですか、ヤーコンさん?」

ヤーコン「あーーー…その」

迂闊だった。自分自身で納得がいかずとも、上っ面な答えだけでも用意しておくべきだった。
 ▼ 79 シボン@フェアリーメモリ 24/03/18 22:38:12 ID:xNrwvVBg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
タイトルだけでもう名作
 ▼ 80 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/20 08:38:14 ID:P2r.fuZ2 [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
タル「ははぁ、なるほど」

タルは親指と人差し指の間に顎を乗せ、探るような視線を向けてくる。

タル「さてはヤーコンさん…」

ヤーコン「な、なんだよジロジロと」

タル「そんなに早くディアンシーに会いたいんですね!」

ヤーコン「へっ?」

タル「私に付き合っているような風して、ヤーコンさんだって楽しみだったんじゃないですか」

ヤーコン「あーーー…うん」

どこか大仰に決めつけるような言い方なのが、少し気になった。


ワシとタルは洞窟の前に辿り着いた。

タル「ディアンシーやメレシー達を怖がらせないようにゆっくり進みましょうね。こっちはあくまでひと目見たいというだけですから」

タル「それが伝わるように穏やかに、ね」

ヤーコン「そうか、ということは…お前、ゲットしなくてもいいんだな?」
 ▼ 81 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/20 13:27:47 ID:P2r.fuZ2 [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
タル「そう、ですね。今回は」

ヤーコン「本当にいいのか?」

タル「いいんですっ。行きましょ」


促されるまま洞窟に足を踏み入れると、そこに待っていたのは暗い闇ではなかった。

まだ朝だというのに、青く柔らかな星に満たされた夜空が広がっていたのである。

ヤーコン「おお………!」

メレシー達の体表にある結晶体が仄かに煌めき、真っ暗な空に遠い星の輝きが散りばめられたようだった。
星空を閉じ込めた回廊、そう表現するに相応しい景色だった。

タル「幻想的………」

うっとりと周囲を見渡すタルの瞳に、青い輝きが映り込む。
メレシーの群れはワシ達にさしたる反応をしめすことなく、ただ悠々と前へ後ろへと漂っている。

天の川で流されるような感覚のまま、ワシとタルは歩を進めた。

タル「星空の下を歩いてるみたい。ね?」

ヤーコン「おう、そうだな」

タル「ヤーコンさんと星空を見るなんて、今まで思いもしなかったなぁ」

ヤーコン「見たいなら…いつでも呼べばいいじゃねぇか」

気取った物言いをするワシに、タルは両手でバツを作った。

タル「そういうのはダメです。まだ学生なんだから夜中に出歩くだなんて」

タル「まだ先のことだと思ってたから…不思議な気分」
 ▼ 82 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/20 15:01:36 ID:P2r.fuZ2 [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤーコン「まだ先のこと、か。けどな、タイム・イズ・マネーって言葉もあんだろ」

ヤーコン「若いうちにやれることはドンドンやっていきてぇとワシは思うな。ジジイになってから後悔はしたくないんでね」

タル「あら、お爺さんやお婆さんになったって楽しみは見つけられるはずですよ。それに…」


その刹那、真紅の流れ星がワシらの目の前を駆け抜けていった。


ヤーコン「流れ星だ。オイ、見たか?」

タル「はい。でも、洞窟で流れ星が見られるはずありませんよ」

言われるまでもないことである。
青い光の群れを泳ぐように飛び去った光の正体を、二人とも間違えることはなかった。

ヤーコン「行くか」

去来する思いに蓋をしつつ、ワシはタルに促した。が………


タル「焦って走ったりしたら、足元が危ないですよ。このまま行きましょう」

ヤーコン「え、お前…」

タル「それに、ディアンシーに却って警戒されるかもしれませんよ」

他人事かとすら思えるほど、タルはのんびりとして見えた。

ヤーコン「早くディアンシーに会いたくないのか?」

タル「さっき言いかけた続きですよ」


タル「今しか作れない大切な思い出なんです。もっとゆっくり楽しみたいですから」
 ▼ 83 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/20 15:14:44 ID:P2r.fuZ2 [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤーコン「!!………」

タル「協力してくれたヤーコンさんにとっては心外かもしれないんですけど」

タル「ディアンシーを求めて調査や探索をするのが、単なる手段ではなくて、それ自体がすごくワクワクする時間として楽しむことができたんです」

タル「だから達成できそうになると、嬉しい反面、寂しくもあって…ふふ、少しワガママ言っちゃった」

照れたようにはにかむタルを見ていると、胸の奥底がじんわりと温かくなっていく気がした。

ヤーコン「ワシも………」


ヤーコン「ワシも、同じだ」

タル「本当、に?」

ヤーコン「ああ。だから…このまま歩いていこうぜ」

タル「………はい!」


こうして、ワシとタルは歩き出した。それは楽しい時間の終わりへと向かう道。

しかし、ワシの心は弾んでいる。タルもそうだと、何故か信じることができていた。
 ▼ 84 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/20 17:50:34 ID:P2r.fuZ2 [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そうして暫く歩き続けた後、小さな泉のある広い空洞に出た。

そこには。

タル「…ヤーコンさん。ヤーコンさん!」

ヤーコン「あぁ…ちゃんと見てるぜ」


暗い洞窟を照らしてしまうほどの鮮やかな輝き。
鉱物質でありながら、可憐さを帯びた華奢な体躯。
さながら宝冠のように頭上に輝く巨大な宝石。

ディアンシーの姿は、絵図や写真で見るより遥かに鮮烈な美しさを放っていた。


タル「わ、ぁ…あ…」

感激の余り、タルは発すべき言葉すら失っていた。
しっかりしろと声をかけてやる。

ヤーコン「オイ、記録に残さなくていいのか?」

タル「…はっ!そ、そうでした。ディアンシーさん、カメラを向けてもいいですか?」

そう問いかけた瞬間、ディアンシーがふわりと宙を舞い、こちらに向かってきたではないか。
 ▼ 85 ノココ@ポテトサラダ 24/03/20 17:52:13 ID:./lo8xQc NGネーム登録 NGID登録 報告
これが10年目の姿か…?
 ▼ 86 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/20 18:40:28 ID:P2r.fuZ2 [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤーコン「おわ!な、なんだぁ!?」

ワシに突進してきたかと思えば、急に方向を上に転じ、背中に回り込む。
ディアンシーは人間のそれに近い表情を見せる。
くすくすと笑みを浮かべているのが分かった。

タル「いいですよ!とってもいいです、ヤーコンさん!笑って笑って」

楽しむディアンシーと、オモチャにされるワシ。タルはそんな様をビデオカメラに収め続ける。
フン…もっと決まった姿で映りたかったってのに…。

やがてディアンシーはワシの下から飛び去り、遊び相手をタルに変える。

タル「きゃっ!ディアンシーがこんな近くに…すごい、あらっ!」

いつもの穏やかな様子からは想像できないくらいはしゃぎ倒すタルに、
思わずこちらも頬が綻ぶ。

タル「ほら、ヤーコンさんお願いします!」

タルとディアンシーが戯れる様に、渡されたビデオカメラを向けた。

タル「はぁぁ〜〜〜…綺麗!可愛い、可愛い!最高!!」

とめどなく溢れる感情を、タルはどうにか言葉にしている。

ディアンシーの描く軌跡はキラキラとした輝きがまぶされ、タルの眩い笑顔を彩っていた。


カメラを向けながら、肉眼でもその様を見る。

自分の目に焼き付けないと、勿体ない気がした。
 ▼ 87 レユータン@タマンチュラのいと 24/03/20 18:44:12 ID:0l1cpy.g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
紙面
 ▼ 88 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/20 18:53:13 ID:P2r.fuZ2 [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜〜〜〜〜〜〜〜

ディアンシーに会うどころか、一緒に遊ぶことになったワシらは、充実した疲労感に満ちていた。

ヤーコン「ぜぇ、ぜぇ…ふぅ。なんか聞いてたよりずっと、随分アグレッシブな奴だったな」

タル「ふーーーっ、本当に楽しかった…!」

満足しきったディアンシーはお供のように数匹のメレシーを連れ、洞窟の奥へと去っていった。

タル「ディアンシーさん、ありがとう!また会いましょうね!」

手を振り返すディアンシーの姿が見えなくなるまで、ワシとタルは前を見続ける。

タル「こんな体験ができるなんて、思いもしませんでした」

ヤーコン「特別研究、大成功だな」

タル「本当に、ヤーコンさんのおかげです。改めてお礼を言わせてください」

タル「ありがとうございました!」

ヤーコン「な〜に、ワシだって楽しかった。一緒にやるのを許してくれて、ありがとな………」


二人の足下に、光り輝く二つの何かがあった。
 ▼ 89 チエナ@しろいビードロ 24/03/20 19:04:27 ID:kp8..1cU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 90 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/20 20:03:23 ID:P2r.fuZ2 [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ワシの手で拾い上げたそれを二人で凝視する。

透き通る輝きを放つ多面体の結晶………

ヤーコン「ダイヤモンドだ。それも普通のモンじゃねぇ」

タル「ということは…」

ヤーコン「ディアンシーが生み出した、てことで間違いねぇな」

二つのダイヤの光は掌に収まるにも関わらず、周りを照らし出しているかのようにすら思われた。

ヤーコン「きっとワシらと遊んだ礼に、ってことじゃねぇのかな」

タル「きっとそうですよ!………ねぇ、ヤーコンさん」

ヤーコン「どうした?」

タル「これは、私達のダイヤにしませんか?」

ヤーコン「ワシと、お前の、か…」

それは、二人でここまで辿り着いた証。

今日という日を体験できた象徴。

眩しい思い出のぬくもりを思い出せるカケラ………

ヤーコン「おし、決まりだ」

タル「はい………!」


ワシとタルは手にしたダイヤを交わした。
 ▼ 91 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/20 20:03:51 ID:P2r.fuZ2 [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





………そして歳月は流れ………




「パパ、ママ、行ってきます!!



 ▼ 92 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/20 20:12:51 ID:P2r.fuZ2 [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
艶やかな髪、眩しい瞳、柔和な太い眉毛をした少女が、元気に駆けていく。

ヤーコン「フン!気をつけてな」

一端の鉱山会社社長となったワシは、窓からそれを見送った。

愛娘・タロは今日から新入生だ。


タル「今日からタロも名門校の一員ですか。子供の成長は早いですねぇ」

ヤーコン「まったくだ、まだまだオシメを替えてやるようなチビ助だと思ってたのにな」

デカい仕事も終わり、今日は休暇だ。
妻であるタルと、朝からゆっくり過ごしている。

タルとタロを見れば、二人が親子であることに気づかない奴はいないだろう。
端正な顔立ちも、真面目な性格も、何より心の底にある優しさと芯の強さも、タロは母親からしっかり受け継いでいた。

タル「そういえば昨日、久々に特別研究の夢を見ましたよ」

ヤーコン「フン、懐かしいな。あの頃のお前は年甲斐もなくディアンシーとはしゃいで…」

タル「その頃はまだ学生でした。あなたもそうでしょう?偏屈なのは変わってませんけど」

ヤーコン「はは、言ってろ」
 ▼ 93 のペーさん◆mPAN43FI6A 24/03/20 20:17:15 ID:P2r.fuZ2 [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あの日、ディアンシーに贈られた宝石は、ワシとタルの指に填まっている。

ワシが手ずから加工して、指輪にした。
そしてタルに………フン!こっ恥ずかしくてとても言えたもんじゃねぇな。

タル「今日は久々に山へ登りに行きませんか?最近は歩きやすい登山道もできたみたいですし」

ヤーコン「よし…そうだな。たまには二人で歩くとするか!」

あの日と変わらず、ワシとタルは隣り合って歩を進める。


思い出の詰まった宝石は、二人の手でいつまでも輝いていた。




【10周年SS】ヤーコン、恋と青春の宝石 〜完〜
 ▼ 94 ンペルト@ビーだま 24/03/20 20:22:36 ID:Awf6CK9c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙ンネ
 ▼ 95 ギアナ@こうてつプレート 24/03/20 20:29:00 ID:Ct6QYB92 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おもしろかった
 ▼ 96 クノシタ@つきのふえ 24/03/20 20:58:02 ID:bqMcJPYM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙ー!
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