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ポケモン

お前らの好きなキャラのおもらしシーン妄想を書いていけ その5

 ▼ 1 ローラロコン@ヒウンアイス 24/08/08 16:08:17 ID:AkIoZ35. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
立てた
前スレ↓

お前らの好きなキャラのおもらしシーン妄想を書いていけ その4

お前らの好きなキャラのおもらしシーン妄想を書いていけ その4

https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=2014866

元祖↓

お前らの好きなキャラのおもらしシーン妄想を書いていけ

https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1673429
 ▼ 661 ェークル@ヘラクロスのツメ 25/04/20 08:29:41 ID:bKR.Vjc. NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
朝起きたら素晴らしいssが投下されてた
感謝の極み
 ▼ 662 ガオニゴーリ@いでんしのくさび 25/04/20 22:41:59 ID:HcrUchFI [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
誰かは書いていそうなのに実は書かれてないキャラまだまだいそうな気がするな

ゲーム本編に絞ってもナギ、フヨウ、シキミ、サナ、ビオラ、パンジー、アマモ、ヨネ、ヒナツ、オーリム、カエデ、リップ、ブライア…

The美形に始まり刺さる人にはとことん刺さるようなキャラまで何人も取り残されているように思える
みんな漏らしてる中で自分たちだけ漏らせないとか気の毒でならない
 ▼ 663 バチャ@つきのいし 25/04/20 23:52:32 ID:iDe6dW2s NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
全くもって気の毒だ
ちなみにビオラは前スレにある
 ▼ 664 レキブル@イアのみ 25/04/20 23:59:54 ID:HcrUchFI [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
なんと
見逃していたすぐに向かわねば
 ▼ 665 ムナイト@イダイトウだんご 25/04/21 00:18:45 ID:xiicSdvw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レジェアルはキャラにもシチュにも困らなさそうなものだけど少ないよね
買ってプレイした人があんまいないのかな
 ▼ 666 ルビル@マメバッタのツメ 25/04/21 17:18:45 ID:HAwIrjYA NGネーム登録 NGID登録 報告
レジェアルは恐怖失禁、拘束失禁あたりとは相性よさそうだこらな
 ▼ 667 ワルン@モーモーミルク 25/04/22 14:03:34 ID:NprctKUw NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
頻繁に水を飲んでそうなキャラ
 ▼ 668 ラエッテ@カントーのせきばん 25/04/23 12:19:00 ID:rPVIK6NY NGネーム登録 NGID登録 報告
ナンジャ漏が加速するな
 ▼ 669 テボース@でんせつのメモ3 25/04/23 13:16:41 ID:AXSgUH8U NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
マジコスナンジャ漏ください(自己発注)
 ▼ 670 ューラ@ロックカプセル 25/04/23 20:46:56 ID:ZSuEJo7k NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
え、誰か…カミツレは…
 ▼ 671 エンジシ@ひかえめミント 25/04/23 23:30:02 ID:64wAcoHo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そういや最初の妄想はカミツレだっけ
 ▼ 672 ーランス@かんしゃメール 25/04/23 23:32:00 ID:wVVYKasw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
すまない、私はジャ漏で手一杯なんだ。
 ▼ 673 ットデス@コイン 25/04/24 09:20:06 ID:E6.oyrgY NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
どんなシチュがあるだろう
 ▼ 675 ジオ@エルレイドナイト 25/04/24 21:37:07 ID:4FXU0Ofk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>674
❤️
 ▼ 677 ギア@オレンジメール 25/04/24 23:12:46 ID:FFWg7x9g NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ナンジャ漏自身の良さはもちろんだが、個人的には他キャラで漏な話を書くときに彼女の配信属性に非常にお世話になっている。
配信中ネタは世間的にはありがちだけど、ポケモンコンテンツで堂々とこのシチュを使わせてくれるジャモは神
 ▼ 678 ロエッタ@シガロコのつち 25/04/25 19:59:35 ID:HNC2bOJc NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ストーリーが虚無というのはつまり、二次創作の自由が利きやすいということで…
 ▼ 681 ガゲンガー@バイオレットブック 25/04/26 05:24:48 ID:nwc67hTg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
むほっ
 ▼ 682 ンタロス@サトピカZ 25/04/27 17:19:40 ID:hQA22nrw NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
まーたそういうこと言う
 ▼ 683 ウオウ@ヤレユータンのけ 25/04/27 20:59:13 ID:lkl.JHFg NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
モデルのおしっこ、モー出るとかどうですかカミツレさん
 ▼ 684 リムガン@おおきなしんじゅ 25/04/30 11:24:10 ID:gW3kOdLc NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
同地方出身で昔から親しいAとBが別々にパシオに赴いて出会うものの、互いにパラレルワールドに住む存在だったとする。
そしてAがパシオからもといた地方に帰ったとき、

A「Bってこの前漏らしてたよな」
B「そんなわけないでしょ何いってんの」
A「ほら」(証拠画像)
B「何それ、でも写真だと確かに私が…でも私じゃないから!」
A「ほーん、写ってるのはパラレル時空のBだったのか」
B「別世界の私め、なんてはた迷惑な!」

この後この世界線のBも漏らす。

A「やっぱあの画像に写ってたのお前なんじゃね」
B「違うから!」

本当に違ったとしても、やはり同一人物だったとしても良い。


こういうの誰かお願いできませんか。
 ▼ 685 タマロ@あまいミツ 25/04/30 13:44:12 ID:0eFwTQT. NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
紅茶の利尿作用は凄まじい
シロナさんは一日何回くらいトイレ行ってるんだろう
 ▼ 686 ェーニバル@ノロイノヨロイ 25/04/30 20:59:05 ID:LonwNuZg NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
渋覗いてるとこのスレでも書いてる人多いのに気付く
そら上手い人多いよね
 ▼ 688 クロー@アクアカセット 25/05/01 01:42:18 ID:oy2cvfPk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>687
ほう…
 ▼ 689 コルピ@カセキのクビナガ 25/05/01 01:49:56 ID:yzJob1qA [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカデミー体育倉庫寝た消費したかっただけの単発ネタなのでフリじゃなく本当に続きません。
ジャ漏じゃないから描く気がおきぬ……。
 ▼ 690 ティオス@いじっぱりミント 25/05/01 07:43:01 ID:ezM.ah1g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そう言わずにさ
 ▼ 691 ゲンダイナ@ディグダのつち 25/05/01 08:07:10 ID:UpPUD5dU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポケモンがあると閉じ込めネタって難しいよね
ポケモンの技で最悪壁ぶっ壊したり、上の高い内窓まで運んでもらったりできそうで
 ▼ 692 ラパルト@タマンチュラのいと 25/05/01 09:20:00 ID:6xpQHMq6 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
結構前から気になってるのは、アローラベトベトンとかその辺のポケモンって人間のソレは食べられるのかなあと
言っちゃなんだけど毒ポケモン使いって常に簡易トイレを持ってるようなものなのかなあと

>>691見ててなんとなく思ったんだけど、アニポケアイリス×ドリュウズみたいな、手持ちがなかなか言うことを聞いてくれないやつならどうだろうか。
他には交換してもらったポケモンが言うことを聞いてくれないとか。
あるいはフェローチェなんかであれば性質上いくらトレーナーの指示でも助けてくれなさそう。
 ▼ 693 ンテイ@まんまるいし 25/05/01 09:29:54 ID:mDMMQA2c NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
プラゴミを食べれて有機物が消化できない道理はない
 ▼ 694 ィグダ@カンムリパス 25/05/01 18:46:19 ID:CfE.S./. NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
マジツ零アナザーみたくて検索掛けてたら2018年頃のスレが引っかかったんだけど、なおのことなぜ皆書かないのか疑問が深まった
 ▼ 695 コガシラ@つららのプレート 25/05/01 21:59:35 ID:/6gAFWAA NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
みんなカミツレのキャラをあんまり知らない説
 ▼ 696 ラヒナ@キラーメのけっしょう 25/05/04 01:26:29 ID:GM.2.4J6 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
着衣放尿とお漏らしは似て非なるものだが、フェチ男のためにおしがましてくれるその心意気はとても尊い
 ▼ 698 ーガポン@マックスこうせき 25/05/05 22:52:39 ID:EbTEtSTQ NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
限界だったんだろなあ
 ▼ 699 ッカニン@おしゃれカード 25/05/05 23:55:09 ID:fFHUxcWg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
靴のなかにもたまってそう
ひっくり返してあげたい😊
 ▼ 700 モリ@PPかいふくポン 25/05/06 14:29:41 ID:SNXUCigM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポケモンレジェンズアルセウスのカイちゃん、ローアングルで見ると、腰巻きの縫い目がおもらししているように見える。
 ▼ 701 テボース@シビシラスのねんえき 25/05/06 15:22:28 ID:1xT6l5A6 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>700
澄まし顔なのがリアルでいい
 ▼ 702 キワラシ@なぞのすいしょう 25/05/06 17:39:38 ID:5dsAcXjw NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>700
想像力が
 ▼ 704 ルデアウパー@ぎんのナナのみ 25/05/10 23:22:11 ID:eCEECng6 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「〇〇 お漏らし」で何がモヤるって、ポケマスの情報漏洩の話題しか出ないやつがいること
 ▼ 705 オー@ポロックキット 25/05/12 18:24:25 ID:qlOUBsgA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カミツレちゃん…
 ▼ 706 ュカイン@ライス 25/05/17 22:12:15 ID:hQqIRc9I NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
突如訪れる過疎期間
 ▼ 707 ローラサンドパン@コインケース 25/05/21 01:33:04 ID:0VnUSK12 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
他所からの転載(完結)or今日書く(未完)のどちらかなら投げられないこともない
 ▼ 708 スカーン@そらいろたまいし 25/05/22 00:50:57 ID:rzskweh2 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
SS
>>12スカイトレーナー
>>44>>51>>318>>374リーフ
>>84アオイ
>>128マトリ
>>151シロナ
>>168ギンチヨ(未完?)
>>330マトリ
>>411>>426ハイダイ
>>456アニポケセレナ(未完?)
>>536リラ
>>574メイ
>>636カガリ
>>653オリーヴ


>>239ナンジャモ
>>248ナンジャモ
>>262>>272マトリ
>>377ナンジャモ(グルジャモ)
>>440HGSSカスミ,XYオカルトマニア,BWエリートトレーナー♀,フウロ
>>448ナンジャモ,マコモ
>>471マコモ
>>510ナンジャモ
>>513ナンジャモ
>>557〇○○。〇
>>570ドット
>>624タウニー
>>679ナンジャモ
>>687おしがまアオイ
 ▼ 709 ブリー@ゴーストメモリ 25/05/22 01:59:54 ID:rzskweh2 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
自分で書くほどの気力はないので他の書き手様を応援する読書感想文擬き

スレ4-723ナンジャモ

 一言で言えばコスパ最強格。大衆に圧倒的な人気を誇るナンジャ漏のSS。ゴールテープ直前から始まるのがまず助かりますね。もちろんおしがま過程について描写のあるSSは言わずもがな良いのだけれど、我々は性に強欲なことに、時として手軽に摂取できるお漏らしサプリメントを求めるきらいがあります。だが、それで中身がお粗末ならば読んでもすぐに頭から抜けてしまうし、身も蓋も無いことを言えばシコリティに欠けます。
しかし、このSSはそんなことを感じさせません。3分もあれば読めてしまうほどの手軽さに反して中身は大変に濃い(彼女の膀胱に蓄えられたおしっこのようにね!)
 状況説明というのはおしがまを描く上で非常に大切なのだけれど、あんまりに長いと早く我慢描写を見せろ、早く漏らせととかくイライラしがちです(いろいろな部位がね!)それにも関わらずこのSSは凄い。極論SVを一切遊んだことがないプレイヤーでもレス1つ分の長さでンジャモというのキャラのごく基本的な情報を得ることができるし、1分に満たない準備時間で大変コスパよく(?)ナンジャ漏を堪能することができる。おしがまもピークとなるところだけを描写してそれ以外を割愛することにより、集中力が途切れることなくナンジャモの雄姿を見届けることができます。「ちょっぴり ピンチかも!? 」の台詞が情けなく弱弱しい言い方になっているのも良い。原作台詞を無理のない形で応用していて湾曲した口元が元に戻りません。
 ▼ 710 ークライ@ルームキー 25/05/22 02:00:28 ID:rzskweh2 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 また一部移動時間や経過時間の割愛が他なる意味合いでも凄い効果を発揮していて、想像の余地が存分に残されているんですね。ニャローテ使いとの戦闘が佳境に入るまでどれだけの波を乗り越えてきたのだろう。テラスタルより前、異変に気付いた皆の者とそのときのコメント欄の反応も見てみたかった。腕を抜いたことに気付いた皆の者は、それの意味することに気付いて一人口角を上げていたのでしょうか。水音のする先では一体何が。立ちつくしているのか、へたり込んでいるのか、健気に手遅れな我慢を試みているのか。表情はどうか、曇っている?意外と冷静?涙していたり?水音の詳細はどうか。強まったり、弱まったり、最後一瞬強くなったり、マイクはどれだけ音を拾ったのだろうか。量はどうだろうか。意外と少なくてザコザコボウコウだったのか、それともやはり度重なる水分補給の摂取量はそれほどの大きかったのか。他にも時間はどうだろうか、一体どれだけ、まさか全部出し終えてからようやく配信を止めたのか。そもそも放送は本当に中断できたのか。こんなときに限ってロトムの音声認識機能にエラーが出ていたりとかしてたりして。このことはリーグ関係者も知っているんだろうか。口を噤んだのは現場を見た物だけならば、たとえばオモダカさんはどうだろう。冷ややかな目で見られるようになっちゃったとか、あるいは過剰なまでにトイレの心配をされるようになったとか。ところでお漏らしはメジャー寄りではあれどもアブノーマルな性癖であるから結局苦手とか嫌いとかいって人もいるはずで、そういう人がナンジャモに嫌悪感を抱いて離れていくところを見ると可哀想ながらもシコリティが増大しますね。心ではいけないと思っていても体は嘘を吐けない。短いからこそ手軽に味わえて、それでいて自分の中で目一杯情景を膨らます余地が残されているのは素晴らしーしー。
 特有の語彙や品詞の活用もそこらでは見られない書き口をしていて新鮮で、この話単体ではなく作者様の他のSSも読みたくなりますね。
 ▼ 711 ビィ@ふるさとマフィン 25/05/23 00:54:59 ID:Wu66BZnk NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
普段は絵しか描かないので文章は不得手なんですが、長文感想もらえるとモチベ上がりますね……。有難い。
 ▼ 712 オルブ@かんしゃメール 25/05/23 09:14:16 ID:EXAINNmw NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
かわいそうなのは抜ける
 ▼ 713 ーシャン@レックウザのおやつ 25/05/24 02:11:00 ID:f89cuntw NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
今日日ssの供給不足は深刻である
 ▼ 714 ャラランガ@シンクロマシン 25/05/24 13:34:45 ID:KLPYYnG2 [1/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「まさかまた来られるとは思わなかったわね」

「まだ回れていないお店もあるし、今日はたくさんのお店を回りたいな」

 キタカミの地で催されるオモテ祭り。ゼイユとハルトは学業の疲れを労うためという建前のもと、このキタカミセンターへとやってきた。

 ゼイユは今回も紺青の甚兵衛を、片やハルトは鶯を羽織る。ただ歩く姿だけで凛とした気を漂わせるゼイユだが、その実おてんばで自信家であることはハルト含めたこの地の人々なら皆が知るところである。それでもその整った顔立ちやスラリとした容貌は自他共に認められる美しさであり、この特別な日に纏った深い青がゼイユの魅力を最大に引き出しているのも間違いない。

 だからこそ、そんな絶世の美女を見てもハルトが顔色一つ変えないことにゼイユは少々おかんむりだった。駆け引きなんてまどろこしくて、ゼイユはハルトに直接感想を求める。

「これを着るのもあの日以来ね。そろそろ見惚れた?」

「時間が経てば見惚れるってものじゃないって」

 ハルトは苦笑いするが、ゼイユにとって見た目だけでも自分に見惚れてくれるかどうかは切実な問題だ。しかしお淑やかに演じるなど柄ではないし、演じたところで滑稽だろう。

「誰もが振り返る美女と二人きりだってのに」

「ゼイユみたいな人を黙ってれば美人って言うんだよ」

 確かに聞こえたキーワードは嬉しいものだが、その言葉の中には余計な形容詞がセットになっている。喜ぶより先に口が動いた。

「黙ってればって何よ!? 喋ってても美人の間違いでしょ?!」

「そこでそう返せるの本当に尊敬する」
 ▼ 715 ンブオー@アクセサリーいれ 25/05/24 13:35:18 ID:KLPYYnG2 [2/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 この少年はだんだんと自分の扱い方を身につけ始めたらしい。だが今日はハルトと決着を付けるためにここへやってきたのだ。男である以上揺るがないところを見せて主導権を握りたいのかもしれないが、余裕ぶっていられるのもここまでである。

「美人ってことは認めるのね?」

「それは......認めてもいいんじゃないかな」

「なんで他人事なのよ!」

(今ハルト、言ったわよね......美人だって、それを認めるって!)

 ハルトが折れただけかもしれないが、その口から「ゼイユは美人」と言わせたのは大きな進歩だ。

 それにゼイユは見逃さなかった。認めたと同時にハルトの頬がほんのりと紅くなったのを。
 つまり、ただの友人のように振る舞っているハルト側にも友情以上の感情があるのだ。

 しかしポケモンも人もアタックには反動が付き物。鼓動が早くなって頬は熱を帯びてきた。かき氷屋はどこにあっただろう。

(こっちまでドキドキするじゃない......こんなとこ、スグに見られなくて良かった......)
 ▼ 716 ックル@はっきんだま 25/05/24 13:36:25 ID:KLPYYnG2 [3/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 そもそもこんな夜を迎えたのはつい1時間ほど前の出来事が発端である。

 日も沈み始めバラエティ番組でも見ようかとリモコンに手を掛けたとき、玄関から「ごめんください」と訊き馴染みのある声が響いてきた。ゼイユ自身に呼んだ覚えはないが今は学園の長期休暇中、きっとスグリが呼び寄せたのだろうと思い弟の部屋へと向かう。


「スグ、ハルト来たみたい。出てあげなさいよ」

「ねーちゃんが出なよ。今おれ忙しい」

 口ではそう言いつつも体はオオタチとじゃれ合っていた。スグリはオオタチのもふもふを抱き寄せ、オオタチもその長い体でスグリの華奢な体に絡みつくようにくっついている。いいかげんな返事をされたことは不満だが、スグリが最近経験してきた激動の日々を思うとゼイユの心はむしろ安堵で満ちていった。

 といっても普段と違う声色で話せば気味悪がるだろうし、実際に気味悪がられたらをこの手がどう出るかわからない。とりあえず再度スグリに来訪者の件を尋ねてみるが、スグリの返答は何やら要領を得ない。

「呼んだというか、呼ばされたというか、呼んであげたというか......」

 奥歯に物が挟まったような物言いに一言言ってやろうと歩み寄るが、スグリによって肩を掴まれて回れ右が実行された。

「何してんのよ、あんたの客なら自分で出りゃいいじゃない」

「いーから出なってほら」

 ちょっとだけ筋力の付いてきた腕で背中を押され、やや強引な態度に押しやられる形でゼイユは表に出る。最近はずっと制服を着ていたはずだが今日のハルトは甚兵衛だ。

「いらっしゃい。気取っちゃって今日はどうしたの? スグに会いに? あたしに会いに来たって言ってもいい―」

「お、お祭り......」

「え?」

「ゼイユ、お祭り行かない? もし時間あればだけど......」
 ▼ 717 イーガ@あくのかけじく 25/05/24 13:37:22 ID:KLPYYnG2 [4/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 柄にもなくおどおどしているハルトに疑念を抱きつつも、友だちからの誘いを断る理由はない。それに学園外で会うことにも悪い気はしない。

「しょうがないわね、行ってあげる。またじんべえ姿お披露目しちゃうから、今度こそ見惚れなさいよね」

「じゃあ」

「ちょっとここで待ってなさい。スグも呼んでくるから」

 ハルトを土間に入れ、奥にいるスグリの元へ戻る。誰に呼ばれたのかは聞きそびれたが、そういう要件なら弟も呼びみんなで行く方が良いに決まっている。と思ったのだが、

「ねーちゃんとハルトの二人で行ってきなよ」

 引っ込み思案はとうに解消されているはずなのにスグリは何を遠慮しているのか。もう軋轢はないし、嫌だとか気まずいだとかそんな理由ではないだろうが、それならなおさらなぜ友だちからの誘いを断るのだろう。

「何言ってんの、折角ハルトが来てるのよ! 座ってないで立った立った!」

「でも遅れてる勉強も取り戻さないといけないし、それに......」

「何よ?」

 切れた言葉の先が気になってしまい、引きずってでも連れて行こうとスグリを掴んだ手が止まる。スグリの言葉は想像もしていないものだった。

「ハルトと二人きりになれるチャンスじゃないの?」

「は、はぁっ?! そんなのまるで、デ、デ......」

 スグリが達観した表情で見てきたくるのが本当にムカつく。しかしムカついておきながら悪い提案ではないと心が躍ってしまっている自分が少しだけ恥ずかしい。

「おれが迷惑掛けたり、その後もなんだかんだで周りに人がいたり、本当に二人っきりになれることあんまりなかったでしょ?」

「一緒に来なかったこと後悔しても知らないからね! それじゃハルト待たせてるから」

 生意気なことをしてくれた弟には手が出そうだったが、流石に理不尽なのでスグリの手元にあったジュースを飲むことで勘弁してやった。新発売でまだ飲んでいないとか言われたが知ったこっちゃない。それでもまだにやけていたので帰宅したら冷蔵庫の分まで飲んでやろうと心に決める。

 だが、今日の成果次第では買い直してあげないこともない。
 ▼ 718 リゴンZ@むげんのチケット 25/05/24 13:39:01 ID:KLPYYnG2 [5/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 そんな経緯でじんべえに着替え、ハルトとオモテ祭りに出向いたわけである。

「そうだ、折角だしオーガポンもボールから出してあげよう」

「ぽにおー!」

 ボールから飛び出すや否や、オーガポンはハルトにすり寄って破顔する。ひとしきり甘えたかと思うと今度は周囲を見渡し、その場にゼイユを見つけると今度はそちらに駆け寄った。

 かつてはお面取り戻し隊として3人でともっこ退治へ赴き、それ以来も何度かバトルを重ねてきた。ともに生きた男やハルトほどとは言わずとも、相当親しい間柄であることは間違いない。だからこそ、ゼイユは今オーガポンに対して少し黒い感情を抱いてしまっていることに自分でも驚いている。

(オーガポンはメス、女の子…それがハルトに......いや、いいんだけど、いいんだけどね!?)

 負の感情がどこから来たのかと問われれば、今ハルトが顔を綻ばせてオーガポンと話していることだ。ゼイユと話すときは恥ずかしいのか何なのかいなしておいて、手持ちのポケモンにはそんなに真っ直ぐに感情を向けるのである。

 数カ月前までオーガポンが辛く苦しい思いをしていたのは紛れもない事実である。そんなオーガポンにとってハルトの存在はさぞ大きいだろうし、この態度は不自然であろうはずもない。

 けれどスグリから余計な言葉を受けたせいだろうか、ほんの少し羨望と嫉妬が疼く。自分だってハルトにあんなふうに…

「どうしたのゼイユ? 早く行こうよ」

「ぽにおーん!」

 いつの間にか先に行ったオーガポンが手を振ってくる。そうだ。種族も経験も関係性も何から何まで違うのに、一体何を考えているのだ。まだ日は落ちていないし時間はある。チャンスは平等にあって然るべきだ。ゼイユは自分を鼓舞して、ハルトたちの後を追いかける。

「今行くから待ちなさいよ」

 最初の行先はオーガポン任せると言うと、一番に目を止めたのはお面屋だった。

 お面屋の主人はオーガポンを見て慌ててともっこの面を隠そうとするが、当のオーガポンはもう気にしていないようだった。モモワロウの面があったら屋台骨が小枝のように折れていたかもしれないが。

 見たことはあっても付けたことのないお面を前にオーガポンは考えあぐねる様子を見せる。鬼の面をつけるくらいなら碧の面の方が良いだろうし、気にしていないといってもともっこの面をつけさせるのは憚られる。
 ▼ 719 レシー@だっしゅつパック 25/05/24 13:39:53 ID:KLPYYnG2 [6/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「どうするオーガポン? ぼくはピカチュウにするけど」

「ぽ?」

「それじゃ、あたしもピカチュウにしようかな」

「ゼイユも? じゃあぼくとお揃いだね」

「えっ、その......美人の恰好はみんな真似したくなるでしょ。だからオーガポンも迷ってるならあたしの真似したらいいんじゃない?」

 ちょっと強引な誤魔化し方かもしれないが、自分のキャラに合った意見なので怪しまれてはいないはずだ。オーガポンは碧の面を外してしまい込むが、プラスチックのお面をどうやって身につければ良いものかと戸惑ってしまう。先にお面を付けたハルトはオーガポンからお面を借りると、頭にある二本の角にゴム紐を掛けてやる。

「あら、あんたたちよく似合ってるわ。かわいいじゃない」

 二人ともあどけなさの残る顔立ちなのでかわいらしいお面が良く似合う。一方自分は何を身につけても美人だと言いたいところだが、絶世の美女にピカチュウのお面は少々可愛らしすぎる気もする。

「ゼイユも良く似合ってる。かわいいよ」

 意味もなくオウムがえししただけかもしれないが、先ほどまでのクールぶった発言からは思いもよらない言葉が飛び出す。似合うのは当たり前として、まさかハルトからそんなことをそう伝えられるとは思わなかった。

「かわっ......!? 綺麗か美人って言いなさいよ!」

「いやいや、綺麗か可愛いかで言ったら圧倒的に可愛いよ! あれ、あ......」

 ハルトは自分の口にした言葉の意味をようやく理解したようで顔がオクタン色に染まっている。クールを気取るなんて性分に合わないことをするからそうなるのだ。

 いつものゼイユならそうからかってやるところだが、自分も同じくらい紅潮している自覚はあるので敢えてそうはしない。
しかし店の主人にこれ以上イチャコラする様を見せびらかすわけにもいくまい。

「あんたタロじゃないんだから…もういいわよそれで......」

「とりあえず行くわよ二人とも! まだ行くとこたくさんあるんだから!」

「う、うん......ほら、オーガポン行こう」
 ▼ 720 ラルバ@すいせんじょう 25/05/24 13:40:49 ID:KLPYYnG2 [7/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 二人が声を掛けてもオーガポンはその場から動こうとしない。オーガポンは色々とお面を手に取って戻しを繰り返していた。そんなに気になるのなら全部買ってあげようかとハルトが財布を取り出すが、ゼイユは甘やかしすぎるなと止めた。

「オーガポン、欲しいものは決まったの?」

「ぽ......」

 オーガポンのここまで真剣な顔を見るのも珍しい。オーガポンが持つ4つの面に比べれば価値や重みが全く異なるはずだが、それでもお面には妥協ができない質なのだと見える。

 そしてこれは図らずもゼイユに訪れたチャンスでもあった。

「じゃあ決まったらハルトと迎えに来るから、オーガポンはここでステイね」

「ぽ?」

「いい子にしててねってことだよ」

「ぽにおーん!」

 相も変わらず自分の言葉は通じないことに少しだけ悔しさを覚えつつも、ハルトだけでなく自分にも笑顔を振りまいてくれるので憎めない。チャンスをものにするため、ハルトと別の出店を探しに出る。

(あ、すぐ家を出たからトイレ行ってない......大丈夫とは思うけど......)

 ひんやりと吹き付けた風にゼイユは仄かな不安を覚えた。
 ▼ 721 ッチムシ@あつぞこブーツ 25/05/24 14:52:03 ID:uNwU/4a. NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
久々にssきた
 ▼ 722 ューラ@このはのおてがみ 25/05/24 16:43:24 ID:KLPYYnG2 [8/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 何か食べるとしたらオーガポンも一緒の方が良いということで、二人が目をつけたのはゲームだった。
 石畳の階段を上り、目的は鬼退治フェスだ。

「ところでハルト、あたしのスコア超えられたの?」

「それは……」

 過去の最高得点は6390。少なくともあの日ハルトが挑戦した直後の時点では依然としてゼイユが村一番だった。今でもその記録が更新されたとは思えない。ハルトが言い淀んでいるのも、きっとまだそれを超えられていないからだ。
 そんな会話が受付の女性にも聞こえていたらしく、彼女が会話に割って入る。

「それなら少し前にそっちのハルトさんが塗り替えたけど」

「あ、それは言っちゃ」

「なんですって?! あんた、バトルも強けりゃゲームまで……ムカつく」

 ムカつきを解消する方法は一つしかない。
 ゼイユは今月の生活費に別れを告げた。

「ここで塗り替えてやるわ!!」

「でもゼイユ、最近金欠って」

「一回か二回分はあるわよ!」

 懐はぜったいれいどだが構うものか。単純に悔しさもあるが、ハルトにいいところを見せたい。とはいえ最近遊んでいないこともあり、二回の挑戦でハルトに勝てるかは怪しい。
 決断しても財布の紐が固いゼイユに受付の女性が一つ提案する。

「折角なら二人で乗ってみたら?」

「どういうこと?」

「そうしたら料金は折半。そのうちパルデアの子はサービスするからゼイユが払うだけで実質半額。一緒に乗るだけさ。どう?」

 料金半額なら単純計算でチャンスは四回、十分すぎる。あとはハルトの合意を取るだけだ。
 ▼ 723 ゲキ@ストレンジボール 25/05/24 16:44:17 ID:KLPYYnG2 [9/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ハルト、せいぜい振り落とされないように捕まってなさい」

「え、本当に二人で乗るの?」

 ハルトは目を泳がせながらゼイユにしつこいくらい念押しする。いつも派手にライドポケモンと暴れ回っているのに何か気にすることがあるのだろうか。

「何、危険? なんとかドンはオドシシよりずっと大きいでしょ?」

「四人くらいまで乗れるし危険じゃあないけど、そういう話じ」

「決まりね」

 合意というより強引だが、ともかくこれで四度の挑戦権を得た。とりあえず一回分の代金を払ってステージに案内される。




「アップルヒルズ……」

「よりによってここか、ゼイユ運が悪かったね」

 果樹に囲まれ視界が悪く、柵で足を取られやすいアップルヒルズはかなりの厄介所とされている。しかしそれゆえに、軽やかにクリアして高得点を叩き出せばアピールには十分だ。
 ハルトが乗った前に空けられたスペースにゼイユが跨る。ミライドンも珍しい乗客に気合ばっちりだ。

「後ろで鬼バルーン割り王の勇姿を見てなさい。なんとかドン!」

「その子はミライドんぅぅわぁあああ!!??」

 ポケモンが変わっただけでやり方は同じだ。柵に引っかからないよう卒なくミライドンを乗りこなし、くいしんぼうたちが来る前にきのみ台へと戻るだけ。それだけの工程だが、ポケモン以外にもう一つ普段と違うことがある。

「つ……捕まってっとは言ったけど、何も私に抱き付かなくたって」

「だって他人のライドは怖いもん、自分ならいくらでも飛ばせるけどさ」
 ▼ 724 タフリー@すいせいのかけら 25/05/24 16:47:12 ID:KLPYYnG2 [10/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 今の今までは目の前の競技に熱くなって気付いていなかったが、いつの間にやらゼイユの腰にハルトの手が回されている。二人乗りは少なくとも一人乗りより危なかしいし放せとは言わないが、もうちょっといい方法はなかったものだろうか。最近お菓子を食べ過ぎていた自分に脳内で説教する。

(思ってたより緊張するじゃない……)

 風船割りに集中していればこの状況は気にならなくなるはず。最短ルートできのみを置きに戻ろうと急旋回したときだった。ハルトの腕がベルトのように強くお腹を締める。

「ひゃんっ?!」

「ご、ごめん! 結構揺れたからつい力が……」

「いや、それはいいんだけど……」

(マッズ……チビッてはないけど変な声も出ちゃった……)

(ゼイユに大変なことしちゃった……)

 大した尿意は感じていなかったが、締め付けられた膀胱には想像以上に液体が溜めこまれていた。知らなければよかったのに、一度意識したせいで二度と消えてくれない。
 風船を割るときの音がより強く響き渡る。そしてきのみ台に戻るごとに、トイレはまだ行かなくてもいい、念のため行っておこうか、行っておいた方が良さそう、早く行きたい……
 用心が要求へと姿を変えていく。気持ちは身体にも影響して風船割りも精彩を欠き始めた。

(ほんとにトイレ行きたくなってきた……)

 この挑戦が終わったらトイレ休憩を申し出ようか。何か言って問題のある話ではないが、間違いなく流れは切れるし雰囲気も少し盛り下がる。何よりハルトの前でトイレなど言い出しづらい。ほんの数カ月前なら言えたはずなのに、今はどうにも恥ずかしく感じる。

(スグのせいよ……あんなとこにジュース置いてるから……)

 今すぐトイレに行くかどうかは置いておくとして、膀胱を休ませるくらいのことはした方がいいかもしれない。
 ▼ 725 ビエ@ヘラクロスナイト 25/05/24 18:06:55 ID:Ys4oY5Xk NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
しーしーしー
She sees sea
 ▼ 726 スイガーディ@おうえんポン 25/05/24 22:56:57 ID:KLPYYnG2 [11/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「惜しかったね、もう一回やるかい?」

 中盤から終盤に掛けて調子が落ちていったせいかスコアは伸びなかった。悪い数字ではないが目的は達成できずという結果になった。感覚が残っているうちに2回戦に行きたいが、どうせ今挑んでも同じように良い点は取れないだろう。

「疲れたわ。今日のところはこの辺で勘弁してあげる」

「え、まだ一回だけどいいの?」

「いいのよ。なんだか今日は……」

(結構尿意来てるし……)

「ぼくはいいけど、大丈夫?」

 余計なタイミングでハルトが食い下がるが、結局遅くならないうちに切り上げねばならない理由はある。

「大丈夫よ。それにあんまりオーガポン待たせちゃ可哀そうじゃない」

「え、もうそんなに時間経ったの?!」

 時計を見るとそれなりに二人の時間を過ごしたことがわかり、二人はお面屋に戻ることにした。その道中にはまた別の屋台も見え、その中でも飲食を扱う出店に目が行く。

「駆け回って身体も火照ってるしさ、みんなでかき氷でも食べない?」

「え? かき氷?」

「嫌だった?」

 暑いしハルトと一緒に何か食べるのも良いしで気持ちはGOを出すが、今食べると後悔するぞと体はSTOPを求めている。

「嫌じゃないけど……」

「じゃ、オーガポンと合流したら行こう。さっきも何か食べようって話してたもんね」

「そ、そうね……」
 ▼ 727 トム@ココガラのはね 25/05/24 22:58:48 ID:KLPYYnG2 [12/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 クールダウンには最適だ。しかし尿意と格闘するゼイユにとっては最悪の選択でもある。

(今あんな冷たいの食べたらもっとトイレが近くなるけど……)

 これがスグリのリクエストなら強引に却下もできたかもしれないが、ハルトの提案を、それもおしっこを我慢しているからなどという理由で断れるはずもない。素直にトイレと言えたらどれだけ楽になれるだろうか。階段を下りる足取りは行きに比べて重くなっていた。

 お面屋まで戻ると、オーガポンはお面を付け替えながら店主と話しているのが見えてくる。

「お待たせオーガポン。何か他に気に入ったお面はあった?」

「ぽにお!」

 オーガポンはどれを選んだのか手元を見てみるが何も持っていない。確認のためどれが良いのかと聞いてみるとオーガポンは首を横に振った。代わりに先ほど買ったピカチュウの面をつけると、にっこりと笑ってハルトとゼイユにとてとてとすり寄る。

「もしかしてオーガポン、ぼくたちと一緒のお面を?」

 ぴょんと跳ねたのはオーガポンからの正解の合図だろう。嬉しそうにお面を見せる姿が何とも愛らしい。

「今日は3人で御揃いだね!」

「ぽにおーん!」

「それじゃあゼイユ、かき氷食べに……ゼイユ?」

「ぽ?」

 ハルトは先ほどから声を発しないゼイユに声を掛けるが、ゼイユは両手で甚兵衛の裾を摘まんで俯いており、身体を小さく前後に揺すってソワソワしている。黙っていても声が聞こえてきそうなのゼイユだというのに、何が原因でこんなにしおらしくなってしまったのだろう。気が抜けてしまっているようだが、先ほどまでの会話はちゃんと聞こえていたのだろうか。
 ▼ 728 ママイコ@ゼニガメじょうろ 25/05/24 23:02:23 ID:KLPYYnG2 [13/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ゼイユ、どうかしたの?」

「え? あ、ご、ごめんハルト。どうかした?」

「それはこっちの台詞だよ。体調が優れないのかなと思って」

 わたわた返事をするゼイユをハルトは訝しむ。加えて先ほどまで屈託のない笑顔を振りまいていたオーガポンの顔が心配に染まっていく。ゼイユもまさかおしっこがしたくて上の空でしたなどという弁明ができるはずもないので、言い訳を考えるのに必死に頭を絞るがなかなか良い案は出ない。

「えっと……そう、かき氷のシロップについて考えてたのよ! その……後で焼きそば食べようと思ってたから? その食い合わせっていうか? そうよ、そう!」

 我ながら名案だ。せめて自分だけは思い付いたことを褒めてやりたい。しかし追い込まれて絞り出した考えには必ず綻びがある。すぐに納得したオーガポンとは異なりハルトは首を縦には振らなかった。

「スイーツの後でご飯食べるの?」

「え……そうよ? それがキタカミ流だから? ハルトも? そうしたらどう?」

 代替案が何も思いつかないとき、今の提案のごり押し以外に取れる方法はない。ここまで来たら怪しい云々はおいておきとにかく話を先に進めることだ。そうすればじきに忘れる。

「じゃあ、折角だしキタカミ流で食べてみよう、かな?」

「それがいいと思うわ。ほら行きましょ」

 ハルトも一応は納得したらしい。残された問題は、本当に今の自分はかき氷を食べても良いのかということだ。食べてはいけないという結論にはもう何度目かもわからない思考の果て辿り着いているが、この先こんなチャンスを得られる機会がどれだけあるだろう。食べなければ不審に思われることはもちろんだが、好機を逃すのはもっと嫌だ。

 着実に重さを増していく下半身に怯えをなしながら、ゼイユはかき氷を注文する。早歩きをしているわけでもないのに、ベンチまで移動するハルトの歩調はいやに早く感じられる。気が気でないままかき氷を受け取って、ハルトについていく形でベンチに腰を下ろす。

「ひゃっ?!」

 夜風に晒された椅子は体が触れた瞬間にお尻から冷たさを伝える。間の抜けた甲高い声を聞かせてしまった上に、ハルトと目が合ってしまった。

「いや、えと、今のは」

「大丈夫だよ、聞いてないから」
 ▼ 729 ンパチ@スターのみ 25/05/24 23:03:07 ID:KLPYYnG2 [14/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 気まずい空気を壊したのはオーガポンだった。何のために買ったのかとプンプン怒って二人を見つめている。

「そうだね、溶けないうちに食べよっか」

 ハルトの声を受けてオーガポンが氷を口いっぱいに頬張る。キンと走る頭痛に驚いたようだが新鮮な食べ物にオーガポンはご満悦だ。

「ゼイユは何にしたの? あ、あたしは何にしたっけ……」

「それどう見てもいちごだよ。自分で持ってるし、頼んだのもゼイユでしょ?」

「そ、うね……」

 まさか目に付いたから反射的に選んだなどとも言えない。たっぷりと積まれたふわふわの氷は成長期の学生たちにとっては幸せの塊だが、ゼイユにしてみれば今すぐ地べたに放りたいくらいには悪魔的だ。
 だが食べ物を粗末にするなどできるはずもないので、脂汗を滲ませながらスプーンを握る。氷を口へ運ぼうとするが、体がそれを無意識に拒絶して寸前で手が止まってしまう。

「大丈夫? 酷い汗かいてるけど」

「だ、大丈夫に決まってるじゃない……ふ、ふふ……」

 これ以上ハルトに心配をかけるのも避けたいし、ええい儘よと氷を口内に押し込む。想像通りではあったが、やはりこれを食すことは間違いであったと気付いた。

(思ってたよりも体に響くんだけど……)

 二口目以降はもう無理だ。これ以上食べたら悲惨な出来事が起こるのは火を見るよりも明らかである。

「食べないの? やっぱり無理してるんじゃ」

「そ、そういうわけじゃないの。ただ……」

 慌てて否定するが、実際食べていないのだから疑いは拭いきれない。口も動かさず氷とにらめっこしている姿を見ていられなくなったようで、ハルトがスプーンを手に取った。流れるようにかき氷を一掬いするとゼイユに差し出す。
 ▼ 730 ンパチ@シールぶくろ 25/05/24 23:04:01 ID:KLPYYnG2 [15/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「はい、口開けて」

「なっ?! ちゃんと一人で食べられ」

「でも手も口も動いてないし、このままじゃ溶けちゃうよ」

 見るだけでもわかる。この一口は想像を絶する美味しさなのだろう。味覚ではない、心で味わう至福の一口。思い描いたままに過ごせていたとしたら、この瞬間は幸せのピークだったのだ。それにたかが一口である。溶けてしまえばこんな容積無いに等しい。

「じゃあ……」

 おずおずと咥えた一杯は、尿意と頭痛にかき消されて味がよくわからなかった。それどころか膀胱のSOSを無視した代償なのか。心拍数が増して恐怖を煽り、肥大化する負の感情がさらに鼓動を早めて悪循環を引き起こす。弟にジュースで意趣返しをした過去の自分が恨めしくて仕方がない。
 残る氷も気力の残滓で放り込んでいくが、水分以上に体が冷えていくのが辛く恐ろしい。膨らみ続ける尿意に比べれば頭痛など何てことも無い。尿意が吹き出そうになるたびに太ももを抓り、意地でも耐え抜いてみせんと気を込め直す。それでも完全には抑えきれずに何度かちびってしまうが、甚兵衛の表面に跡が浮かびあがったわけでもないので無問題であると自分に言い聞かせた。

 ハルトとオーガポンが完食してから5分程経った頃、少し遅れてゼイユもご馳走さまを告げた。


「美味しかったねかき氷」

「ぽにおーん!」

「そうね、二人も満足したみたいで良かった……」

(トイレ……おしっこ……おしっこ、早く……もう出ちゃう……」

 ゼイユの脳内はもうトイレとおしっこに占拠され、他のことを気にする余裕が皆無である。いくらなんでも漏らすというのは最悪中の最悪なので、プライドを折ってでも申し出ようかと心の天秤が傾き始める。
 ▼ 731 ワンテ@ネッコアラのツメ 25/05/25 02:02:29 ID:Y60Yd0tY [1/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 だが恥を忍んでの告白はハルトによって制された。

「出ちゃうって?」

「え?」

「今言ったよね?『もう出ちゃう』って」

「やっ、あ、そ、それは……」

 最悪の事態だ。トイレやおしっこといった直接的なワードは聞かれていないようでそこは安心だが、どうやら知らないうちに心の声が漏れてしまっていたらしい。ここからでも上手く煙に巻く方法はないか考えるが、もうこの機に乗じて楽になりたいという本心が顔を覗かせる。

「ハ、ハルト? ここらでちょっと、あの」

「うん、どうしたの?」

「おしっ、じゃなくて……ト、トイ……」

「?」

「ト、トイ……問いかけたいことがあってね?!」

「え、な、何を?」

 恥ずかしさが勝ってしまい、トイレとは程遠い言葉が出てしまう。言い間違いだと訂正しようか。けれど「トイレに行きたい」の言い間違いだと伝えるなんて、それはつまり訂正してでも今すぐに駆けこまねばならないと表明するようなものである。
 一層に恥ずかしさが募り、言い改める勇気が出てこない。

「あの、あれよ。なんで私を誘ってくれたのかなーって、そうよ、それを聞きたかったの」

「えっ?! その、ぼくは……」

 ハルトが回答に詰まる。間を作りたくなくて妙なことを聞いてしまった自分にも非はあるが、いざ口にしてみると本心でも気になる話ではある。だが心と違ってゼイユの膀胱は二人に待つ時間をくれない。
 ▼ 732 ガボーマンダ@ほしのすな 25/05/25 02:03:45 ID:Y60Yd0tY [2/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ひぃああっ?!」

(な、なんでよりにもよって今……)

 明らかにちびったの一言では済まない量が出てしまい、ゼイユは反射的に股間を抑える。

「え、どうしたの?」

「いや、なんでも……ないわ……」

 何でもないはずはないのだ。今の失敗から見てすぐに手を打たねば失禁は秒読みだ。もう本心は覆い隠せなくなっていた。

「やっぱ無理、ちょっと……そこで待ってて!!」

 もうなりふり構っていられない。かといってこの流れの中でおしっこがしたいだなんて言うのも嫌だ。無言で立ち去るでもなく、待っててという言葉を付け足したのは不要な誤解を招かないファインプレー……だと思う。

「ぽ?」

「ゼイユ、どうしたんだろう……」


 会話は広げずゼイユは会場外に向かって移動する。走るほどの体力は残っていないが、だからといって力を惜しめばこの場で無様に漏らすだけだ。

「もう無理もう無理出る出る出ちゃう……!」

 尿意の波は公衆トイレに間に合うかどうかギリギリのラインまで押し寄せていて、今のゼイユにとってはたとえみっともなかろうが一つしか取れる手がなかった。幸い今日は人通りも少ないようで階段の先には誰もいない。

「ふーっ、ふーっ……」

(もう、そこらへんで……)
 ▼ 733 ロバレル@ボスゴドラナイト 25/05/25 02:04:46 ID:Y60Yd0tY [3/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 階段を走って駆け下りれば踏み外す可能性もあるし、こんな状態だからこそ丁寧に一歩ずつ歩を進めるべきだ。そう思ってそこでペースが落ちたのが不味かった。

「急がないと」

「ぽにおー!」

「ひゃあっ?!」

 オーガポンがゼイユの元へ駆け寄った。ゼイユが突飛な行動を取ったためにどこかへ消えてしまわないかと心配になったのだ。ポケモンがそこを離れたとなればトレーナーが追うのは自明の理で、オーガポンの後ろにはハルトが付いてきている。

「オーガポン!? あの、えっと……」

 ゼイユはどうにかオーガポンに先いた場所まで戻ってもらう方法がないか模索するが、それよりもオーガポンが駆けてくるスピードの方が早い。このままではぶつかってしまう。
 大きく膨れた膀胱を守るためゼイユは回避するが、勢い余ったオーガポンは上手く立ち止まることができなかった。オーガポンが階段から落ちることこそなかったが、転んだ拍子に懐から碧の面が落ちてしまったのだ。

「ぽに?!」

 盗まれ奪われることは無いとしても、オーガポンにお面に纏わる哀しい思いはもうしてほしくない。尿意のことも気に留めずゼイユは階段から駆け下りんとする。

(オーガポンの大切なお面!)

「きゃっ!」

 だが足元も見ずにただ駆けだしたものだから、足を踏み外し前方に倒れそうになってしまう。

「ゼイユ危ない!」

 ハルトはゼイユを支えようとするが距離からして届くはずがない。だが同時に主人の焦る声を聞いたミライドンがボールから飛び出た。そのまま階段を横切る体勢でゼイユの背を受け止めるクッションとなる。

「あぁ、良かった……! ミライドン、ナイスだよ!」

 ハルトは親指を立ててグッドを送るが、ミライドンの股肱にへたり込むゼイユは茫然としてしまい反応がない。
 ▼ 734 プサイジ@ラグラージナイト 25/05/25 02:06:00 ID:Y60Yd0tY [4/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ゼイユ、ケガしてない?」

「あたしは……あ、オーガポンの……お面……」

 自分がケガをする可能性も省みずにゼイユがお面を抱え込んだことでお面には瑕疵はできなかった。

「これ、オーガポ……」

 お面を差し出すとオーガポンがゼイユのもとに駆け寄ってきた。だが自分のお面と同じかそれ以上にゼイユがケガを負っていないかが心配なようで、大きな瞳いっぱいに雫を溜めてウルウルしている。声掛けに対するゼイユの反応が薄いことが拍車をかけた。

「ゼイユ! 大丈夫?!」

「ぽにおん!」

 二度の声掛けにゼイユの意識がハルトに戻るが、何やら他に重大なことがあるようで上の空だ。

「あ、あ……ああ……」

 わなわなと震え声を絞り出す。トイレでもないのに括約筋から力が抜け、着衣したままで布地を避けることもできず尿が容赦なく甚兵衛を染め上げていく。お尻が温かくなっていくのと反対に背筋はどっと冷えていていき、ハルトが近づいてくるにつれ心拍数はどんどん高まっていき、その鼓動は痛いくらいに激しい。

「見せて。どこを打ったの?」

「離……離れて……」

 とにかく見られたくなくて、聞かれたくなくて、知られたくなくて、この場から逃げ出したくてハルトを遠ざける。

「だって……止められ……うぅぅう……!」

 だが客観的に見れば泣きそうな表情をして呻いている女性を放っておけるはずがなく、ハルトはゼイユの前までやって来て屈み手を差し出す。
 するとハルトの耳に笛太鼓に混じってシィィイイと謎の水音が聞こえてきた。夜も深まりその音の正体は目ではよく見えないが、どうも音はゼイユから響いていることに気付く。

「あぁぁっ、あ、あたし……ぃゃ……見ないでよぉ……」
「え、まさか……」
 ▼ 735 ンターン@バグメモリ 25/05/25 02:08:18 ID:Y60Yd0tY [5/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ハルトが目線を下ろすと、ゼイユの股付近にじっとりしたと染みを作られており、その染みからは絶え間なく液体が流れ出しているのが見える。さらに目線変えると余程我慢していたのだろう、階段の段差一つではとても吸いきれない黄ばんだ水が湯気を伴って下段に長く尾を引いていた。
 手遅れだとしても失禁を止めたいのかゼイユは括約筋に懸命に力を込めるが、ただ醜態を晒す時間の伸びるだけで止まる気配は一向に見えない。

 力尽きたのか、それとも諦めたのか、それはわからないが、とうとうゼイユは脱力して我慢していたおしっこを出し切ってしまうことにしたらしい。水流は勢いを増し、解放感から本来本人以外は絶対に耳にしてはいけない艶やかな声がハルトの耳まで届く。ある種蠱惑的にも見える友人の醜態を前に何と声を掛けるべきかもわからず、体も動かず、見てはいけないとはわかっているが、インパクトの強すぎる目の前の女子から目が離せない。



 1分近く経ったころ尿の勢いも徐々に弱まり、我に返ったハルトが何とかしなければと声を掛けようとしたそのとき、出入口近くに人影が見えてしまった。
 今無理にゼイユの手を引けば築き上げたはずの信頼がどうなるかわからないが、それでもそんな彼女にこれ以上の恥をかかせるわけには行かないという気持ちが競り勝つ。

 とにかくこの場を離れるしかない。それ以外のことは後でいい。ハルトは当惑しているオーガポンをボールに戻すと、ゼイユがじんべえに宛がっていた手をやや強引に引き離して掴み取った。放心状態になっている間、濡れた階段に手を付いていたと見受けられる。握ったゼイユの手には手汗ではあり得ない量の水跡が残っており、取った手を握り返す力は全く感じられない。
 ゼイユは半ば引きずられるも同然にハルトによって歩かされることになった。数秒なされるがままになっていたゼイユはハッとしてハルトから手を離そうとする。

「ダメよ……あたしの手、今……おしっこで」

「そんなこと言ってる場合じゃ」

「ばっちいもの……」

 引き抜こうとする力は弱弱しく、自分より小柄な男子にすら力負けして手が離れない。生意気さと溌溂さをすっかり失ってしまったゼイユの声は酷く弱弱しかった。
 灯篭を横切って陰に移動してみれば、先ほど見えていた二人組が階段を上ってきている。あと少し遅れていれば鉢合わせたに違いない。一安心してハルトが手を離すと、ゼイユは糸が切れたように力無くへたり込んだ。
 手に残る温もりと水気、独特な臭気、そして視界に入ったゼイユの姿は思春期のハルトにとってある意味で劇薬に等しい。が、内頬を噛んで正気を保ち、落ち込んでいるゼイユになるべく紳士的に語りかける。

「ごめん急に引っ張っちゃって。ゼイユの気持ちも考えず……でも、ああしないと人に見られちゃってたわけで」

「違う、そんなこと気にしてないし、感謝してる……けど……」

「けど……?」

「ハ、ハルトの前でこんな……それもこの歳で、お、お漏……するなんて……」
 ▼ 736 ャラコ@キズナのタヅナ 25/05/25 02:09:53 ID:Y60Yd0tY [6/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 涙は流すまい泣き声は上げるまいと必死に堪えている様子だが、目には光るものが溜まっておりそちらも限界だろう。とにかく感情の波を押さえなければ声で人が集まってしまうかもしれない。
 非常事態なので物理的に口を塞いでも良いが、本人のものとはいえ排泄物のついた手で口を塞ぐのは憚られる。ハルトは咄嗟にゼイユを抱きしめた。

「な、何してるの?! あたし今おしっこ塗れで」

 声が響かないようにハルトは抱きしめる力を強め、ゼイユとの距離を詰める。

「大丈夫、大丈夫だから。なんとしてもぼくが隠し通すから」

 暫くするとゼイユは落ち着いたようで、コクリと頷いて大人しくなった。階段の下を人が通り過ぎ、周囲から人の気配が消えたのを確認してハルトは大きく息を吐いた。

「あ、危なかったあぁぁ……」

「ねえハルト……」

「ゼイユ、もう大丈夫だから」

「いやそうじゃなくて、その」




「当たってんだけど」

 固より邪な思いで抱きしめたのではないことは神に誓える。しかし結果だけ見ると、煩悩が働いていないかと問われればいいえと答えるのが難しい。

「あ、あんたも結局オトコってことねー! あたしに見惚れるどころか、そ、そんなことになっちゃうなんてねー!」
 ▼ 737 ラオラ@じしゃく 25/05/25 02:11:18 ID:Y60Yd0tY [7/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ゼ、ゼイユ、声! 聞こえちゃうから!」

 ゼイユは自分のしたことを思い出し顔を赤らめて口を閉じる。ハルトにとってはかなり恥ずかしいものを見られてしまったが、ゼイユに比べれば100倍マシである。それにゼイユが調子を取り戻すきっかけになったのなら、むしろ恥をかいて良かったくらいだ。

「とりあえず戻ろうか」

「そうね」

「あ、この甚兵衛、どうしようかしら……」

 どんな道を辿ろうと家に帰る以外に終着点はないのだが、それはそれとして濡れたままではスグリや祖父母に原因を問われかねない。ゼイユとしてはもう割り切るつもりでいたが、それでも何も言われないのならその方が良いに決まっている。

「帰る前に川に飛び込めばバレないよ。ぼくも一緒にみずびたしになるから」

「あんた、変なところで大胆ね」

「そうかな?」

「嘘だと思うならみんなに聞いて回りなさい。皆大胆不敵って答えるに決まってるんだから」

 得意げに笑うゼイユを見てハルトは先刻のことを思い出した。家に戻ってからでなく、今伝えておきたい話。

「さっきさ、ゼイユ訊いたよね。なんでぼくがゼイユを誘ったのかって」

「えっ?! あ、あれは……」

「ゼイユと行けたら楽しくて幸せだろうなって思ったんだ。スグリとか、他にアカデミーの友達と来ても良い時間は過ごせると思うんだけど、ゼイユと二人で来たかったというか……」

「ハルト……」

「初めはちょっとカッコつけたりもしたけど、ちょっとくらいいいところを見せられないかと思っちゃって、だから……」
 ▼ 738 ツドン@しんぴのチケット 25/05/25 02:14:28 ID:Y60Yd0tY [8/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 あれで恰好を付けていたというのならズレている。あれはもはや漫才の掛け合いだ。「ゼイユは美人」という事実がネタに該当するがどうかはわからないが、少なくとも恰好の付いたものではないのは確かである。けれどそんなところも愛おしくて、だからこそ自分はハルトが……

 もじもじとその先を言い出せないハルトを見てクスリと笑う。やはり自分こそが主導権を握りハルトをリードするのが相応しい。

「ねえハルト?」

「何ゼイユ?」

 先に話しかけられたことでハルトはキョトンとしている。だが冷静になってみると美人は追う側ではなく追わせる側だし、ここでゼイユからハルトに向けて気持ちの答え合わせをするのはらしくない。

 だからまたハルトに、そして未来の自分にチャンスを与えることにしよう。

「またお祭り一緒に行ってくれる?」

「もちろん!」

「当然よね! 今度こそあんたのスコアを追い抜いて、あたしがオニバルーン割り王に返り咲くんだから!」

「えぇ?! それが目的?!」

「今度こそ負けないから!」
 ▼ 739 ムカメ@びっくりこやし 25/05/25 02:31:33 ID:Y60Yd0tY [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
客観的に見たらどうかはさておき、今にして見て思い返すとスレ4-30の絵(悲しいかな現在読み込み不可)の影響を受けた節は結構あるなと
事後報告ながら光明を齎してくださったかの人にこの場で感謝を伝えさせていただきたく、ありがとうございます
 ▼ 740 フォクシー@ウッディメール 25/05/25 03:05:50 ID:UXM.AHvo NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
漏らしたあとのあれこれがしっかり描写されてるのがありがたい
 ▼ 741 オスバメ@ユキカブリのみ 25/05/26 02:24:48 ID:w7UwOg2I NGネーム登録 NGID登録 報告
需要が無いから供給も少ないのか供給が少ないから需要も無いのかどっちなんだろう
受け手はともかく作り手の減少が顕著
 ▼ 742 ママイコ@ウデッポウのツメ 25/05/26 08:44:55 ID:eaSUNgpY NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
需要はあるけど供給が少ないんだと思うぞ
好きな人は多いが、公にしづらい性癖だから制作する勇気がある人が少ない
 ▼ 743 ナギラス@はつでんしょキー 25/05/26 23:19:21 ID:NpFoEby6 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
上げ忘れてた
昨日25日で初原稿(前スレ857)から一年経ちました。
見てくださったみなさまありがとうございました。
 ▼ 744 ンダース@こうかくレンズ 25/05/26 23:23:13 ID:wzAQ6CkM NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
イイ
 ▼ 745 ガオニゴーリ@ロメのみ 25/05/28 12:40:40 ID:QMN6dmXI NGネーム登録 NGID登録 報告
靴の中にたまったやつひっくり返してびちゃびちゃ…って出てくるのすき
 ▼ 746 ンジュモク@ポロックケース 25/06/04 22:42:46 ID:KnoYUNy6 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
誰もss書かないならキクコ書くぞ
 ▼ 747 ガヤンマ@ギネマのみ 25/06/05 00:25:51 ID:wWgUwu16 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ポケットモンスター和式
ポケットモンスター洋式
 ▼ 748 ルタン@エレズンのでんき 25/06/05 00:29:06 ID:gst2CF.g NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>746
書いて
 ▼ 749 トデマン@アクロママシーン 25/06/07 21:23:43 ID:kkt.OgHY NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ずっと気になってるのは現実と空想の乖離がどこまで許されるのか

そんなに長い時間も出るのかとか、そこまで黄色付くかとか、いうて飲食物の匂い反映されるかとか、それほど周囲の人優しいかとか、あるいはその反対とか、いくら追い詰められたからといって堅物が「おしっこ」だの「漏れ"ちゃう"」だの口にするかだとか

考えるだけ野暮ってのもわかるんだけど、投稿する度に後悔するんだ
 ▼ 750 チゴラス@ヒコウZ 25/06/08 01:03:18 ID:XiGIzvew [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キクコは昔から一人思いを馳せて過ごすのが好きだった。
挑戦者がやってこないときも、キクコにとっては苦痛ではなかった。
ボールから飛び出ようとするゲンガーを諫めて椅子に深く腰掛ける。
かつては自分を圧倒するような歯ごたえのありすぎるトレーナーもいたものだが、こと最近はそんな者どころか善戦するようなトレーナーもいない。

独り過ごすのは心地よいものだが誰も来ないとそれはそれで調子が狂う。
考え事の種も尽きて、ただ茶を啜っては深くため息を吐いて日が暮れるのを待つ。
いつトレーナーが来るかもしれず、ポケモンの疲弊しないように自主特訓はできない。

「いったいどうしたもんかね」

しかし年を取ると時間が過ぎるのもあっという間で、気が付いたころにはリーグを閉じる10分前になっていた。
あと少しで仕事も終わり。どうせもう人は来ないだろうと立ち上がると、キクコの体がぶるりと震える。

「おっと、そういや昼から便所に行っていなかったね」

昔はこんなもので動じることもなかったがキクコも年。
いくら今なお前線で戦うトレーナーとはいえ、衰えた筋肉では全身を支える力も弱い。
それは下半身も同じで、キクコは年甲斐もなく体を揺する。

「ちと急ごうかね」

そしてキクコが部屋の扉を開けようとしたときだった。

「うわぁ!」
「な、なんだい!」
 ▼ 751 バルオン@ピートブロック 25/06/08 01:08:09 ID:XiGIzvew [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
駆け込んできたトレーナーと衝突してキクコの重心が揺らぐ。
体の中で水がじゃぷんと音を立てた気がしてキクコは顔を引き攣らせた。
その顔を見て四天王が不機嫌になっていると誤解したのかトレーナーは平謝りする。

「すみません! 道に迷ってしまって。たぶんギリギリ間に合ってると思うんですけど、ひょっとして閉めるとこでした?」
「そうさ、なんたってあと5分もすりゃ閉業だ。ポケモンリーグはコンビニじゃあない」

今から勝負を始めたとしよう。そしてこのトレーナーが自分に勝ったとして、チャンピオンに辿り着くまでにどれほどの時間を要するか。
それを考えれば今このトレーナーを中に入れるのはいけない。
バトル狂の四天王やチャンピオンはともかく他の職員は帰れなくなる。
だから明日の朝一番で相手をしてやるとだけいって返すのが正しい。

だがそのときボールの中のゲンガーが暴れ出した。
ボールは丁度キクコの腹部を押し、その刺激が膀胱にまで届く。

「なんだいゲンガー、戦いたいのかい!」

キクコの許しを得てゲンガーが飛び出る。
それに合わせて挑戦者の懐からフシギバナが飛び出した。
どしんと地面を踏み鳴らし、それがまたキクコの体に響く。
うずうずするポケモンたちを前にしてキクコもまた膀胱がうずき、己とポケモンを制するように声を絞る。

「落ち着きな!それで、あんたはどうしたいんだい?」

互いのポケモンは戦う気を見せている。
ならば4人の多数決で残り2人の意見を問うことになる。
 ▼ 752 イボルト@ぼうじんゴーグル 25/06/08 01:12:38 ID:XiGIzvew [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ぼくは、戦いたいです」

おどおどしているものの目の奥は熱く燃えている。これは少しやりがいのある相手が来たかもしれない。

(問題があるとすれば)

老化で我慢の効きづらくなった下半身をさすりながらキクコは考える。
目を閉じ、結着がつくまでの時間を計ろうとするが、相手の実力が未知数なことにはわかりようがなかった。

「そうか、戦いたいか」

考える間にも尿意は高まり、空いた扉から冷たい風が吹きつける。ゲンガーが下げた気温がさらに体感5度は下がった。

「いいだろう!来な!あいてをしてやろう!」

キクコはそれだけ言ってからそそくさと部屋の奥へ向かう。
トレーナーとバトルができるだけの距離を取り、早速一番手のポケモンを繰り出す。

「え、もうですか?」
「もうとは何だい」
「挨拶とかです」

さっき話したからもういいだろうというのを堪えてキクコは前に出る。
いくら顔が知れていても、バトルをする前に名前を名乗るくらいはしておかないと失礼だからだ。
年を喰ったはずの自分が若者に諭されたことに不甲斐なさを感じながらキクコは改めて自己紹介した。

「それじゃお願いします!」
 ▼ 753 ガクチート@ラブタのみ 25/06/08 01:25:16 ID:XiGIzvew [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
景気よい挑戦者の一番手は既にボールから出ているフシギバナだった。
対するキクコは同じようにゲンガー。
生きの良いポケモンを戻してしまう方が酷だし、今はあまりポケモンを選ぶのに時間を掛けたくなかったのだ。

「シャドーボールで攻撃だ」

やはり早かったのはゲンガーで、黒い塊はフシギバナに直撃する。
けれどここまで来た挑戦者のポケモンはそれで倒れるほどやわではない。

攻撃を耐えたからには反撃が来る。

「フシギバナ!ねむりごなだ!」
「なんだと!」

最初くらいお互いに攻撃を交わすだろうと思っていたキクコは少し驚いた。
それに加えて判断力が鈍っていたキクコはゲンガーへ指示を出し遅れてしまう。

「しまった、ゲンガー!」

ゲンガーはきらめく粉を一身に浴びるとその場に倒れ込むように眠ってしまった。

「こうなりゃしばらく起きないねえ」

キクコは小さく舌打ちをしてフシギバナを見る。
起きてもう一度攻撃ができればフシギバナは倒せそうだ。
このまま倒されるならそれはそれでいい。
問題はこのまま戦況が変わらず、時間だけが経過することだ。
だがフシギバナの攻撃は思いもよらないものだった。
 ▼ 754 ルガレオ@ゲンキノツボミ 25/06/08 01:32:12 ID:XiGIzvew [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「フシギバナ!はっぱカッターだ!」
「はっぱカッターだと?」

ここまで来たトレーナーたちにとってタイプ相性は常識だ。
なのに相性の悪い技を使ったということは、きっとこの技以上にダメージの出る技がないのだ。
そして残念なことに、そんな攻撃を受けて痛めつけられてさえもゲンガーは目を覚まさない。
せめて痛みで起きてくれたのならフシギバナを倒せたのだが、眠ったままならどうしようもない。
しかも受けたダメージからして、フシギバナがゲンガーを倒すまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。

「なんでも真正面からやりゃいいもんじゃないんだがね」

追い詰められている方が何を言ったところで負け惜しみだ。
だがゲンガーの体力が減るにつれキクコのお腹もハリを増していて、何か言いたくて押さえられなかった。

「まさか一匹目からこのザマとはね」
「フシギバナ、もう一回はっぱカッターだ!」

キクコはパス、挑戦者のターンだけが続く、そんな状態。
それでも鍛え上げられたゲンガーの体は堅くて、まだまだ倒れる気配はない。
そんなパートナーが頼もしくて、とても恨めしかった。

(この歳で漏らすなんて、そんなことあるもんか!)
 ▼ 755 ママ@うっかりやミント 25/06/08 01:43:07 ID:XiGIzvew [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「起きなゲンガー!やられっぱなしでいいのかい!」

しかし何を言ってもゲンガーはすやすやと寝息を立てているだけ。
大きな鼻提灯までつくってなんとも気持ちの良さそうなこと。

こうなれば一旦交換するべきかもしれないが、なら誰に替えればいいだろう。
フシギバナにとって有利な相手は、戦い方は何だろう。
老いた頭はもう便所のことしか考えられず、キクコの顔に汗が滲む。

「フシギバナ!ゲンガーが倒れるまではっぱカッターだ!」
「ゲンガー!起きてかわすんだ!」

ゲンガーの鼻から膨らむ大きな風船が大きな破裂音を立てて割れる。
だが攻撃されても目覚めないゲンガーがそれで目を覚ますわけもなかった。
だが虚をつく破裂音は確かに響いていた。
それはキクコの体。
同時にキクコが身震いした。

「小便が……!」

キクコは震えたまま動けない。
声は籠って挑戦者まで届かないが、勝負の最中にトレーナーがうめき声を上げるのは異常事態だ。

「え?大丈夫ですか?」
「戦いには集中しな!」

叫んだ勢いで膀胱を突き抜けそうな尿意が増す。
それを必死に堪えながらキクコはゲンガーを見た。

「起きろゲンガー!」
 ▼ 756 ルメタル@ようせいジュエル 25/06/08 01:53:27 ID:XiGIzvew [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
もう一度叫んでもゲンガーは起きない。
早く起きて便所に行かせろ。
そんな思いを込めてみてもゲンガーはやはり起きない。

気絶しているのかと疑うほどだ。

「シャドーボールだよ!」

試しに声の掛け方を変えてみるがそれにも反応を示さない。
一方で挑戦者ははっぱカッター以外の攻撃を試す余裕まで見せる。

「フシギバナ!ヘドロばくだん!」

フシギバナの大きな花弁から飛び出した液体がゲンガーに直撃する。

「ゲンガー!」

キクコが叫ぶも反応を示さない。
特殊技の分ダメージはより小さくなっただろうが、今やそんなことはどうでもいい。
体への刺激が変わればショックで身が冷めるかもしれないから。

そのとき、ゲンガーの体がぴくりと動いた。

「ゲンガー、起きたのかい!」
「フシギバナ!」

挑戦者が指示を繰り返す。
だがゲンガーはついにその攻撃を回避した。

「よくやったゲンガー!そのままシャドーボールで反撃だ!」
「しまった、もう一回ねむりごな!」
 ▼ 757 タッコ@メガラペルピン 25/06/08 02:01:33 ID:XiGIzvew [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だがたっぷりと眠ったゲンガーは頭も体も冴えていて、今度はたやすくそれをかわす。
反対に突然の反撃を喰らったフシギバナは避けきれずに攻撃を受け、ぐったりと倒れ込んだ。

「よくやったゲンガー!」

キクコは満足気に笑う。
しかし尿意が収まったわけではない。
そして挑戦者が次のポケモンを選定するのを待つが、この時間もキクコの中でおしっこは溜まり続けている。
急かすこともできなくて、相手の行動を待つ時間が鬱陶しい。

「行くぞオニドリル!はがねのつばさ!」

やっとポケモンを選んだ挑戦者に少し呆れを示しながらキクコは臨戦態勢をとる。
尿意の我慢が苦しくて杖の使い方が少しおかしくなっているが気にする暇はない。

「ゲンガー、お返しにさいみんじゅつだ!」
「オニドリル!上昇してかわすんだ!」

オニドリルは素早い動きで宙に舞い上がり、眠りの波動をかわす。
そしてゲンガーを見下ろしながら鋭利な嘴を光らせる。

「くっ、ゲンガー!ヘドロばくだんで応戦だ!」

ゲンガーの放つ黒い球体は上空へと放り上げられたが、オニドリルはひらりひらりと舞ってそれを躱す。
そしてゲンガーの周囲をくるくると飛び回って狙いを定める。

「今度こそはがねのつばさ!」

オニドリルは急降下すると翼でゲンガーを殴りつけた。

「ゲンガー!」

キクコはさっきから後手に回されてばかりだ。
それもそのはず、ここまで来るような強敵相手に尿意のことを考えながら戦うなんて並大抵のことじゃない。
 ▼ 758 イリキー@そらのシズメダマ 25/06/08 02:15:42 ID:XiGIzvew [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかも尿意は止まったりせず強くなる一方だ。
もうちょっとで終わると何度も自分を慰めるが嘘っぱちだ。
まだ戦いは始まったばかりで、終わるまではここまで経過した時間の5倍か6倍は掛かる。

「ゲンガー!もう一度ヘドロばくだんだ!」

指示を受けてゲンガーは立ち上がりヘドロばくだんを発射する。
しかしオニドリルは慣れたものでもう一度空中へと回避してしまった。

「このままじゃ不味いかね」
「オニドリル!続けてつばめがえしだ!」

キクコの焦りとは裏腹に挑戦者は攻撃を止めることなくオニドリルに命じる。
その瞬間、ゲンガーの体に激痛が走り、オニドリルの攻撃によって吹き飛ばされた。

「ゲンガー!」

キクコは声を荒げるがゲンガーはふらふらと立ち上がるだけで反撃する余裕などない。
挑戦者は詰めまで完璧だった。

「こうなったら次のポケモンを出すしかないね」

しかしくねくねと身を捩りながら次のボールを取り出そうと懐をまさぐっていたとき、真上からきらきらと粉が落ちてくる。

「なんだいこれは?」

見ていた粉の一部が急落して、キクコはそれを吸い込んでしまう。

「コホッコホッ、掃除が行き届いていなかったのかね」
 ▼ 759 ャモメ@テラピースいわ 25/06/08 02:29:01 ID:XiGIzvew [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかしキクコが無視して前を見た瞬間、強烈な違和感が襲い来る。
それは尿意ではないし、咳やくしゃみの類でもない。
瞼を押し下げるほどの睡魔だった。

「ぐ、これは・・・」

舞い上げられて時間差で地面に落ちてきたフシギバナのねむりごな。
それでもキクコは眠るわけには行かなかった。
怖いのは眠ることはもとより、それにより脱力してしまうことである。
睡魔で判断力の鈍ったキクコはバトル中であることも忘れ、杖を捨てて股間をまさぐるようにして我慢し始めた。
対ポケモン用の技なので人間が抗うのは困難だが、少量吸い込んだだけならば耐えられないこともないはずだ。

「・・・コさん?大丈・・・」

波が引いたタイミングでキクコは頬を叩いて気合を入れ直し、落とした杖を拾おうとする。
だが屈んだ姿勢ではお腹が圧迫され、キクコは急いで姿勢を戻す。

(これじゃあ拾えな、むっ?)

急に体を動かしたためか、キクコの膀胱は耐えきれずに我慢しているおしっこの一部を放出する。
だがそれはキクコを諦めさせる一撃ではなく、むしろ更に我慢に意欲を燃やす。
下穿きはぐっしょりだが服はまだ濡れていない。

「ふぅ、ふぅ」

今度こそ杖を拾ったキクコはふらふらと立つと次に持ち替えるべきポケモンを考える。
ポケモンが全員倒れれば負け。
尿意に屈しても負け。
そして眠気に耐えられなくなっても負けである。

「行け、アーボック!」
 ▼ 760 ガミュウツーY@アーリーレッド 25/06/08 02:38:30 ID:XiGIzvew [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キクコは繰り出したアーボックにかみつくを命じる。オニドリルも受けていて、激しい攻撃を互いに浴びせる。

「オニドリル!つばめがえし!」

アーボックは攻撃の合間にオニドリルから鋭い一撃を受けてしまう。だがアーボックは倒れない。

「かみつくで怯ませな!」

互いに防御を捨てた殴り合い。
技を指示する意味も薄くなり、眠気と尿意が再びキクコを襲う。
だがキクコはそれに抗って耐える。

「む、むむむ」

一度激しくちびった以上、ここから1滴や2滴分のおちびりはキクコにとってノーカウントであった。

眼前でアーボックとオニドリルが激しく争っているのにキクコの目はそれどころではない。
その目はどこか虚ろで、考えているのはポケモンではなく自分の膀胱に向け為すべき戦略。

(まだ倒れていないか・・・ならば)

「アーボック!かみつくで決めるんだ!」
「オニドリル!はがねのつばさで迎え撃て!」

双方同時に指示が飛び、両者の技は互いの急所に命中する。蓄積したダメージの末のこの一打にはどんなポケモンでも耐えられない。

「戻れアーボック。よくやった」

キクコはアーボックをボールに戻す。
皺だらけの顔に溶かし誤魔化してはいるが、バトル半ばに差し掛かったばかりというのにキクコは限界を迎えようとしていた。
僅かでも集中が途切れたなら、そのときは覚悟を決めなければならない。
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