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【SS】イルカマン vs アナザーイルカマン 〜Zero to Hero〜

 ▼ 1 3tees◆BQYS6iijv6 25/08/27 20:29:40 ID:SoO6yLxU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
皆はヒーローと聞いてどういった英雄像を想像するだろうか?


イルカマンは典型的な”昔ながらのヒーロー”を地で行く存在だ。


民衆が危機を迎えてもうダメかと思ったその時…… 「AAAAHHHHH!」


普段弱弱しいイルカマンが変身〈マイティチェンジ〉! “Shinyyyyy!”


高所から華麗にヒーロー着地して参上! “Tuf!“


悪を瞬く間に蹴散らし! “BOOOOOM!!”


感謝の言葉を背に高笑いしながら去っていく…… 「HAHAHAHA!!」


呆れるほどお決まりの展開。危機からの起死回生。予定調和の勧善懲悪。


ただ……そういった昔ながらのヒーローの存在意義は現代では危ぶまれているのかもしれない……。
 ▼ 50 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/04 22:15:07 ID:JRJUGvck [1/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アナザーイルカマン「やれやれ。危ないところでしたねぇ。」


アナザーイルカマンはギモーの顔から拳を引き抜き、イルカマンの方に向き直って憎たらしい笑顔を作った。


アナザーイルカマン「少しばかり建物が傷ついてしまいましたが、まあ目立った人的被害は出ていないのでよしとしましょう。」


イルカマン「……何がよしとしようだ。貴様の私利私欲で危機に追い込んで……。」


アナザーイルカマン「さあ何のことでしょうか?」



学生 ソウタ「すげえ……あんなに沢山の敵を一瞬で……。」


学生 ソウタ「ありがとな!アナザーイルカマン!」


少年は屈託のない表情でアナザーイルカマンに礼を言った。


アナザーイルカマン「(礼は要りませんよ。力あるヒーローが弱者を守るのは当然のことですから。)」


アナザーイルカマンはイルカマンにだけ見えるように邪悪な笑顔を見せた。


イルカマン「…………!!」
 ▼ 51 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/04 22:15:39 ID:JRJUGvck [2/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
イルカマンは自分の無力さと理不尽さで腸が煮えくり返る思いだった。


確かに少年から見れば無数の敵を一掃したのがアナザーイルカマンで、ギモー一匹倒せなかったのがイルカマンだ。


だが……そもそもこの状況に追い込んだのは……!


イルカマンは人の言葉が理解できても、自分の意思を言葉として人に伝えることは出来ない。



学生 ソウタ「……あとイルカマンもありがとうな。」


イルカマン「…………!?」
 ▼ 52 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/04 22:17:28 ID:JRJUGvck [3/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
学生 ソウタ「前のケンタロスの時のことごめんなさい……。酷いこと言っちゃって。」


学生 ソウタ「全然本調子じゃなさそうだし……そんな中でも死ぬかもしれないのにあいつらに立ち向かうのはかっこよかった。」


学生 ソウタ「今だってそうだよ!そんな傷ついてるのに僕なんかを助けようとしてくれて……本当にありがとう。」


イルカマンはただ茫然としていた。


マイティフォルムとして危機を救い感謝されたことは数あれど、こんな無力な状態の自分を肯定されたのは、ヒーローとしてのキャリアで初めてのことだったからだ。


イルカマンは少年から貰った感謝の言葉を噛み締めるように咀嚼し、一礼を返した。
 ▼ 53 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/04 22:18:15 ID:JRJUGvck [4/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
それに対して面白くないとふっと笑顔が消えたのはアナザーイルカマンだ。


アナザーイルカマン「(何故感謝する……?こんな役に立たなかったゴミに?全ての敵を退けた私と同等の扱いを?許容できない……!)」


アナザーイルカマン「全く気分が悪いですね。もっと目立つ所にいきましょう。私には称賛される価値があるのだから。」


アナザーイルカマンは拳を震わせながら地面を強くけり、水流のジェット噴射でビルの屋上へと駆け上がっていった。
 ▼ 54 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/05 23:05:28 ID:EQ/Uvv1s [1/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イルカマン「待て!……くっ!」


腹部に鋭い痛みがはしり、イルカマンは苦痛に顔を歪める。


学生 ソウタ「大丈夫!?」


イルカマンは平気だといったポーズを取るも、内心は立っているのもやっとの状態だ。


しかし、イルカマンがハッコウシティに来た理由は、騒乱の解決だけではない。


あの虚飾に満ちた似非ヒーローを止めるためにここまで来たのだ。


変身したからといって受けたダメージの蓄積は解消されない、アナザーイルカマンと比べた時のイルカマンの実力が互角とするなら苦戦は免れない。


それでも、そんなことはイルカマンの歩みを止める理由にはならなかった。


イルカマンは変身するために、ハッコウシティの人気のない所を目指してよろめきながら歩きだした。


学生 ソウタ「待って!誰か!誰かイルカマンを手当てしてよ!」


少年はイルカマンに追随して助けを求めるも、応じる者は周りに誰もいなかった。


何故なら民衆の目は既に、新たなヒーローの活躍にしか向いていなかったのだから。
 ▼ 55 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/05 23:06:30 ID:EQ/Uvv1s [2/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ネモ「ルガルガン!アクセルロック!」


ベロバー「ひひぃひー!」


ルガルガンが放った岩片が小悪魔を突き刺す。


ボタンを除いたホームウェイ一行もまた、騒乱が起きたハッコウシティに到着していた。


ネモ「うーん……殆ど倒さないまま片付いちゃったねー。」


ペパー「まあ大方あいつが片付けたんだろうな。」


アオイ「私たちもそろそろ準備しないとね。」


ペパー「さて、超人ちゃん相手にやれっかなあ。相当早いぞあれ。」


アオイ「ペパー。やれるかじゃなくてやるんだよ。それに私たち今までもっと危険な目にあったでしょ。」


ネモ「わたしは楽しみだけどね!ずっと戦ってみたかったんだ!」


アオイ「ちょっと待って。ねえ……あれって。」
 ▼ 56 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/05 23:06:52 ID:EQ/Uvv1s [3/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
以前ホームウェイ一行が見た学生による助けを求める声が聞こえてきた。


少年の近くには傷ついたイルカマンが懸命に歩いている。


ネモ「大変!急いで手当しないと!」


学生 ソウタ「この前の僕の恩人!えーっとその節はどうも!……じゃなくてイルカマンが!」


ペパー「ああ!オレたちに任せろ!」


アナザーイルカマンを称える声が聞こえる中、3人は回復の薬を使い、慣れた手つきでイルカマンの腹部に包帯を巻き始めた。


イルカマン「(ああ……彼らにまた一つ借りが出来てしまったな……。)」


応急処置を受けている間、イルカマンは自嘲気味にそう呟いた。
 ▼ 57 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/05 23:07:14 ID:EQ/Uvv1s [4/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アオイ「一先ずこれで動けるようにはなったかな。」


学生 ソウタ「ありがと!……って僕がいうのも変だけど。ところでどうしてみんなはここに?」


ネモ「アナザーイルカマンと戦いに来た!」


学生 ソウタ「え……?それってどういうこと?だって……。」


ペパー「ネモ!説明の順序飛ばしすぎだぜ。」


アオイ「直にわかると思うよ。」


アオイが指さした先には、アナザーイルカマンがビルの屋上でこれでもかというぐらいに目立つように民衆にアピールをしている様だった。
 ▼ 58 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/05 23:08:04 ID:EQ/Uvv1s [5/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
街中の民衆が、下から見上げ危機を救ったヒーローに向かって歓声をあげる。


「アナザーイルカマンありがとう!」

「あんたはこの街の、いやパルデアのヒーローだ!」


感謝の言葉が鳴り響き、アナザーイルカマンは腰に手を当てふんぞり返って見せた。


アナザーイルカマン「(そうです!人々の称賛!歓声は私のためだけにある!)」


アナザーイルカマン「(あんなちっぽけで時代遅れのヒーローにためではなく!この私に!)」





ボタン「……何がパルデアのヒーローだ。全部嘘っぱちのくせに!」


自室でせわしなくPCを操作するボタンは、力強くキーボードのエンターキーを叩いた。
 ▼ 59 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/05 23:08:43 ID:EQ/Uvv1s [6/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
街の中心に立ち並ぶ電光掲示板が一斉に暗転。民衆の歓声がざわめきに変わっていく。


次の瞬間、ベイク海岸でキリキザンとコマタナに襲われそうになっている所を冷笑しながら去っていく映像。


続いて今回のハッコウシティの騒乱に携わったギモー・ベロバーの元締めオーロンゲと、アナザーイルカマンが談笑している映像が流れた。


「なんだこれ……?」

「あれってさっき襲ってきた奴らの進化系でしょ?」

「どうしてアナザーイルカマンと話しているんだ?」


アナザーイルカマンにとっては天国から地獄。顔からさっと血の気が引き、表情が強張る。


アナザーイルカマン「(馬鹿な……?一体誰が……?どこで勘付かれた?)」



ボタン「久々にこの感じで声出すな……んんっ。」


ボタンは咳払いをしてから、かつてのスター団マジボス。


カシオペアとしてアオイと接触していた頃の加工した声で、電光掲示板を通して糾弾を始めた。
 ▼ 60 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/05 23:09:57 ID:EQ/Uvv1s [7/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「諸君。ご機嫌よう。これが連日活躍を続けていたスーパーヒーロー。アナザーイルカマンの実態だ。」


「随分と敵勢力に顔が利くのだな?それとも敵味方を超えた友情でもそこにはあるのか?」


「そんなはずはないな。お前は襲われる街を予め知っているから、事前に襲撃に備えることが出来た。違うか?」



アナザーイルカマンは拳をわなわなと震わせて、無数の電光掲示板をただじっと見つめている。



「いい機会だ。諸君らにも伝えておこう。問題を事前に完璧に対処してくれる都合のいいヒーローなんてこの世に存在しない。」


「起こってしまった中でどう対処するか。その勇気と実行力が肝要なのだ。」


「アナザーイルカマン。お前はヒーローなんかじゃない。むしろ裁かれるべき悪だ。」



電光掲示板から聞こえる声が止むと同時に、民衆のどよめきは怒号に変わり、アナザーイルカマンに突き刺さった。


「信じていたのに!」

「全部自作自演かよ!」


アナザーイルカマン「(ぐぅ……こんなどこの馬の骨だか知らぬような奴に……。)」
 ▼ 61 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/05 23:10:38 ID:EQ/Uvv1s [8/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
イルカマンと少年は茫然と電光掲示板を見つめていた。


学生 ソウタ「そう……だったんだ。」


イルカマン「(まさかここまで掴んでいるとは……。)」


アオイ「……本当はあれを流した後に私たちがアナザーイルカマンと戦う予定だったけどね?」


ペパー「ああ。ボタンに頼まれていたよな。もしイルカマンをここで見つけたら譲れって。」


アオイ「イルカマン?やっぱり自分の手で決着つけたいよね?」


イルカマン「…………!!」
 ▼ 62 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/05 23:11:19 ID:EQ/Uvv1s [9/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ネモ「わたしもすっっっごく戦いたかったけど!もしわたしがイルカマンの立場だったら絶対に我慢できないと思う!」


アオイ「手負いだけどいける?無理だったら私たちが何とかするよ。」


イルカマンは表情を引き締めて、宙返りをしながら起き上がって応えて見せた。


ペパー「……よし!じゃあオレがうーんとうまいサンドウィッチを食わせてやる!勝利の前祝だ!」


ペパーはカバンからスパイスがよく利いたサンドウィッチをイルカマンに差し出した。


イルカマンはサンドウィッチを一気に頬張って飲み込んだ。


自分にならやれる!そう自信を後押しするような刺激的な味だった。


その勢いで唐突にビルに向かって駆け出していき、サムズアップの要領で腕を立てて背後の少年少女たちに感謝を伝えた。


ネモ「頑張って!イルカマン!」


アオイ「きっと勝てるよ!」
 ▼ 63 ビワラー@しあわせタマゴ 25/09/06 08:40:50 ID:dhUcOMqc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん
 ▼ 64 ィオネ@プラズマカード 25/09/06 09:15:57 ID:LNXIU6/g NGネーム登録 NGID登録 報告
ヒーローヲタクのハッカーが活躍するやつ
 ▼ 65 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:19:28 ID:wsMo1lBc [1/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アナザーイルカマン「(皆さん!これは何者かの工作活動です!私の失脚を望む勢力が作ったフェイクです!)」


アナザーイルカマンは身振り手振りで弁明するも、民衆の怒りは収まりそうにない。


二進も三進もいかない状況で、反対側のビルの屋上から目にもとまらぬスピードで青い影がアナザーイルカマンに急接近してきた。


イルカマン「ジェットパンチ!」


しかし、アナザーイルカマンは当たる直前ですっと身をかわし攻撃は空を切った。


「あれは……イルカマンだ!」

「イルカマンとアナザーイルカマンが同時に現れるなんて!」

「もしかして……戦う感じ?」



新旧ヒーローの対峙に民衆の期待が寄せられ、周囲がざわつく。
 ▼ 66 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:20:09 ID:wsMo1lBc [2/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アナザーイルカマン「……これは貴方の差し金ですか?」


アナザーイルカマンは、自分の黒い繋がりをすっぱ抜かれた映像がループ再生されている電光掲示板を指さした。


イルカマン「いや?自分でやれるものならしてやりたかったが、俺によるものじゃない。」


イルカマン「ただ一つ言えるのは、虚飾の上に成り立つ正義なんて脆いということだ。」


アナザーイルカマン「……そうですか。それでは犯人捜しは個人的にするとして……。」


アナザーイルカマンは背中の噴気孔から水を吹き出し、その推進力でイルカマンに突進してきた。


イルカマンもまた、ほぼ同時に全く同じ技を繰り出していた。


イルカマン・アナザーイルカマン「「ウェーブタックル!!」」
 ▼ 67 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:20:38 ID:wsMo1lBc [3/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
2匹のヒーローは体をぶつけ合い、衝撃波が辺りを震わせる。


そしてまたほぼ同時に、お互いにバックフリップでポジションを整えた。実力は完全に互角。


アナザーイルカマン「この大観衆の眼前で、新たなヒーローは旧世代の遺物より上だったと証明して見せましょう!」


イルカマン「この期に及んでまだ己をヒーローと名乗るか!貴様はここで俺が止める!」


それから2匹のヒーローはジェット噴射で高層ビルを往来。


屋上を足場に、自在に空を飛び、拳と拳をぶつけ合いその度衝撃波が走る。


どちらも決定機はあったが、その都度最小限の動きでかわして、即座に攻撃を返す。


その超高速のやり取りは、一般人にしてみれば、青い残像と黒い残像が水を散らしながら上空を埋め尽くしているようにしか見えない程だった。
 ▼ 68 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:21:26 ID:wsMo1lBc [4/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
イルカマンを送り出したホームウェイ一行は、その激戦を民衆に交じって間近まで来て見守っていた。


ペパー「……オレやっぱ戦わなくてよかったぜ。」


ネモ「そう?わたしは戦えばよかったって後悔してる!」


アオイ「今互角なのはまずいかもね……。だっていくら私たちが応急処置したからって……。」




激戦が続く中、青い影の速度だけが少しずつ遅くなってきて、拳を何とか腕でガードするといった瞬間が増えてきた。


イルカマン「(くっ……まだ本調子とはいかないか……。)」


イルカマンが包帯の上から受けた傷を手で抑えるその一瞬を、アナザーイルカマンは見逃さなかった。


アナザーイルカマン「遅い!ジェットパンチ!」


アナザーイルカマンが繰り出した水泡グローブを飛ばす技は、イルカマンの胸の赤い部分に深々とめり込んだ。
 ▼ 69 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:21:48 ID:wsMo1lBc [5/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
イルカマン「がっ……。」


キリキザンに腹を切り裂かれた以上の痛みがはしり、イルカマンはその場で倒れこんだ。


アオイ「イルカマン!!」


ペパー「おい……マジかよ……。」


ネモ「嘘でしょ……。」


その決定的場面を目撃した民衆からは心配する声、或いは悲鳴が飛び交う。



ボタン「イルカマン!そんな……いやだ……。」


ボタン「死なんでよ……イルカマン……。」


PCモニターの前でボタンが泣きそうな表情で、部屋に置いてあるイルカマンのフィギュアを固く握り祈っている。
 ▼ 70 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:22:47 ID:wsMo1lBc [6/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アナザーイルカマン「遅い!遅い遅い遅い遅い遅い!動きも!対応も!駆けつけるのも!」


アナザーイルカマン「貴方もそうしていたのでしょうが、ずっとそこだけを狙っていました。」


アナザーイルカマン「私と同じ体の構造なら、一番の急所はここ。胸の赤い部分です。」


アナザーイルカマンは自分の胸を指さしながらそう語りだした。


倒れているイルカマンの胸がアラート音とともに点滅する。



アナザーイルカマン「私はまだそうなったことがないのですが、本当にそんな音が鳴るのですねぇ。」


アナザーイルカマン「誰かに助けを求めた方がいいのでは?自分を救ってくれるヒーローにでも。」


アナザーイルカマン「おっと。貴方自身がヒーローでしたっけ?失礼。その認識がなかったです。」


アナザーイルカマン「何せ実際に戦ってみてあまり強くなかったので!ハハハ!」
 ▼ 71 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:23:10 ID:wsMo1lBc [7/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
イルカマン「(俺は……負けるのか?これほどのお膳立てがあって……期待されて……。)」


立ち上がろうにもまるで力が入らない。胸が焼けるように痛い。


自分が情けない。万全ではなかったとはいえ変身してなおまだ力が足りない。


……それでもまだ意識はある。立ち向かう意思も失っていない。


……声が聞こえる。俺を突き動かす民衆の応援の声が……。
 ▼ 72 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:23:32 ID:wsMo1lBc [8/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
学生 ソウタ「もっとかっこいい所見せてよ!イルカマン!イルカマンはもっと強い!」

アオイ「まだ勝てるよ!イルカマン!」


ペパー「飯食った分もっと頑張れ!」


ネモ「勝負はこれから!がんばれー!」


「立て!負けるな!」「根性見せろ!」「イルカマン頑張れ!」


ビルの下に男女老若男女問わず集まった民衆が、拳を振り上げながら口々に叫んでいる。



ボタン「みんなが……応援しとる……。」


ボタンは再び電光掲示板を利用して、一際大きい声援を送った。


「そんな偽物なんかに負けるなー!パルデアのヒーローはイルカマンだ!」
 ▼ 73 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:24:01 ID:wsMo1lBc [9/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アナザーイルカマン「やめろ!声援を送るな!こんな時代遅れのヒーローを称えるな!」


アナザーイルカマンは青筋を立てながら、腕を振り払う動作をする。


よほど自分以外が応援されることが受け入れられないようだ。




イルカマンの腕が、立ち上がるためにビルの屋上のコンクリートを押す。


民衆の声援が再びイルカマンを立ち上がらせる。折れない精神に体がついてきた。


立ち上がった瞬間、割れんばかりの歓声がハッコウシティを包んだ。
 ▼ 74 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:24:28 ID:wsMo1lBc [10/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
イルカマン「……1つ、貴様のおかげで忘れかけていた大事なことを思い出した。」


イルカマン「皮肉にも貴様がハッコウシティに来るまで、少年を守る”繋ぎ”の役回りをした時にだ。」


イルカマン「ヒーローは悪を実際にその手で倒した者だけが名乗れるものではない。」


イルカマン「助けが来るまで耐える者、立ち向かう役に声援を送る者。真実を暴く者。」


イルカマン「困難に直面し抗った者全てがヒーローなのだと!」
 ▼ 75 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:25:26 ID:wsMo1lBc [11/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
そう言った瞬間イルカマンの体が宝石のように光輝いた!


それはマイティフォルムに変身する時の輝きとはまた質が異なる。


気づけばイルカマンの頭には、大きな噴水を模した冠が乗っていた!



イルカマン「(何だ……?やけに体が落ち着く。それでいて力が奥底から湧いてくるような感覚だ……。)」


アオイ「テラスタルを……自力で発現した!?」


学生 ソウタ「いけるぞ!イルカマン!」
 ▼ 76 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:25:58 ID:wsMo1lBc [12/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アナザーイルカマン「私は!自分以外のヒーローを許容しない!」


アナザーイルカマンは再び、背中の噴気孔から水を吹き出し突進を仕掛けてきた。


イルカマンもそれと全く同じ技で返す。


イルカマン・アナザーイルカマン「「ウェーブタックル!!」」


しかし最初に技がかち合った時とは大きく結果が異なった。


アナザーイルカマンはイルカマンの突進の衝撃を抑えきれず、隣のビルまで吹っ飛ばされた!


アナザーイルカマン「(さっきまでと威力がまるで違う……!)」
 ▼ 77 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:27:00 ID:wsMo1lBc [13/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
イルカマンはすかさずジェットパンチで追撃し、アナザーイルカマンもジェットパンチで相殺を試みる。


しかしアナザーイルカマンの放った技側が、全て一方負けする。


アナザーイルカマン「(クソッ!どの技も押し負ける!もはや正面からの戦いでは厳しいのか……!)」


アナザーイルカマンは対峙するイルカマンを睨みつけて、受けた傷が殆ど回復していることに気づいた。


アナザーイルカマン「ぐっ……間に合わなかったか……。」


イルカマン「貴様が躍起になって民衆からの称賛を得たかったのは、単なる承認欲求のためだけではない。」


イルカマン「……まあこんな性格だから多分にそれもあったのだろうが。」


イルカマン「俺の体質と同じなら、民衆の応援を受けた時に自己治癒能力があるはずだ。」
 ▼ 78 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:27:22 ID:wsMo1lBc [14/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
イルカマン「だから賢いやり方のつもりで、貴様は短期間で民衆の支持を確かに得た。それがそのまま力になるからな。」


イルカマン「だがやり方を間違えたな。今の貴様を応援するやつなんてどこにいる?」


アナザーイルカマン「…………!!」


アナザーイルカマンは、明確に悔しさで顔を歪ませた。


アナザーイルカマン「(同じ技を打っても質で負けている……仮に一方的に殴れたとしても応援を受けてまた回復される……どうやって勝てばいい?)」


アナザーイルカマン「(……そうだ!テラスタルだ!あの時代遅れのヒーローに出来て、私に出来ないことは何一つないはずだ!)」


アナザーイルカマン「(何でもいい!あいつを打倒する力を!)」
 ▼ 79 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:27:44 ID:wsMo1lBc [15/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
そう願ったアナザーイルカマンの体が宝石のように光輝いた!


しかし、頭の上に授かったのは噴水を模した冠ではなく、怪しい表情を浮かべた顔を模した冠だった。


ペパー「うおっ……!あいつも自力でテラスタルしちゃうのかよ!」


ネモ「あれー?でもこれ悪テラスタルでしょ?」


アオイ「ということは……。」


アナザーイルカマン「ハハハハハ!力が漲る!今ならこんなやつ容易に片づけられる!」


アナザーイルカマン「私より目立つヒーローは邪魔なんだよ!死ねえええええ!!」
 ▼ 80 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:28:25 ID:wsMo1lBc [16/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
イルカマン「ジェットパンチ!」


アナザーイルカマンは躍起になってイルカマンに飛び掛かるも、イルカマンはジェットパンチ一つで迎撃した。


ガードした腕の上からだが、アナザーイルカマンにとっては痛手になったようだ。


アナザーイルカマンはがっくりと膝をついて、立ち上がれなくなった。


アナザーイルカマン「(さ、さっきより痛いッ!!どういうことだ!?事態が悪化している!?何故だ!?あれと私で何の差がある!?)」



アオイ「受けていた水技が等倍になったからそりゃ押し負けるよね。」
 ▼ 81 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:28:55 ID:wsMo1lBc [17/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
立ち上がれなくなったアナザーイルカマンの元に、イルカマンがゆっくりと近づいてくる。


もはや勝負は決したようなものだ。イルカマンが拳を振り上げジェットパンチのモーションに移行しようとしたその時……。


アナザーイルカマン「ま、待て!私は確かに悪の一派を先導して街に誘導していた!」


アナザーイルカマン「しかし悪を倒していること自体は事実だろう?いつかは親玉も倒す気でいた!これは本当だ!」


アナザーイルカマン「そうだ!これからは一緒に手を組もう!同じ力を持つ者同士で手を組めば、それこそ事態のより早い対処が出来るはずだ!」


イルカマン「(この期に及んで命乞いか……。だが心を入れ替えるというなら、確かにまだ被害は出していないし、やり直すことは出来るのかもしれない。)」


アナザーイルカマン「(なんて言うと思ったのか……!誰が認めるか!私以外のヒーローなど……。)」


アナザーイルカマン「(間合いに入った時、一撃で急所の胸を貫いてやる……!)」
 ▼ 82 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:29:22 ID:wsMo1lBc [18/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
イルカマンはかざした拳を下げて、またゆっくりとアナザーイルカマンに近づいた。


イルカマン「その真意を問おう。これからはやり方を改めて……。」


突如アナザーイルカマンは体を起こし、真っ直ぐにイルカマンの胸を狙って拳を突き出した!


悲鳴を上げる民衆。しかし、その最後の攻撃はイルカマンが水のジェット噴射で上空に飛ぶことで空振りに終わった。


アナザーイルカマン「クソがあああああああ!!!!」
 ▼ 83 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/06 20:29:40 ID:wsMo1lBc [19/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
イルカマン「……もう一度だけ教えてやる。ヒーローとして大前提のことだ。」


イルカマン「正義は悪に与しない!」


イルカマン「ジャスティスキック!」


天高く飛んだ後の急降下からの尾びれを活かした脳天キックが、怪しい表情を浮かべた顔の冠を打ち砕いた!


アナザーイルカマンは白く輝いた後、結晶の破片を散らしながら地に伏せた。


ヒーローが、道を違えたダークヒーローを倒し決着がついた瞬間だった。
 ▼ 84 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/07 00:24:24 ID:J7/2GMKU [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イルカマン「終わったか……。」


イルカマンは、瀕死になったアナザーイルカマンを一瞥してから後ろを振り返り、ビルの下を見下ろすと、集まった民衆の顔が見えた。


学生 ソウタ「最高にかっこよかったぜ!イルカマン!」


アオイ「うん!バッチリ決まってた!」


ネモ「すっごく強かった!いつかわたしとも戦ってねー!」


ペパー「それやめろって。サンドウィッチ!また食いたくなったらいつでもお見舞いするぜ!」
 ▼ 85 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/07 00:24:55 ID:J7/2GMKU [2/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「うっ……ぐす……ひっく……。」


電光掲示板からすすり泣く声が聞こえる……。


「よかった……イルカマン……勝ってよかった……!」


アオイ「ボタン……まだ入ってるよ……。」


「あっ……やばっ。音声入ったままだし……。恥ずいって……。」
 ▼ 86 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/07 00:25:30 ID:J7/2GMKU [3/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
民衆のイルカマンの名前を呼ぶ歓声が次第に大きくなる。


自然と胸に熱いものがこみ上げ、イルカマンは思わず涙腺が緩みかけた。


イルカマン「(こんなに人に感謝されたのはいつぶりだろうか……。)」


しかし、イルカマンは民衆に涙を見せない。


イルカマンは腕を上げて歓声に応えてから、感謝の言葉を背に高笑いしながら去っていった。


それが、昔ながらのヒーローの在り方だからだ。


〜fin〜
 ▼ 87 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/07 12:10:06 ID:J7/2GMKU [4/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
遅ればせながらこちらの企画へのSS投稿です。

【SS企画】ポケモンBBS ファイナルラストSS企画 【9/27〆切】

https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=2381088
 ▼ 88 ジーロン@コマタナのやいば 25/09/08 07:40:28 ID:Z6.M/pao NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙!
面白かった!
 ▼ 89 ママ@こわもてプレート 25/09/08 16:22:54 ID:TnKwhmas NGネーム登録 NGID登録 報告
イルカマンの特性って改めてお約束の塊みたいだなと
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