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【ポケダン超SS】ここから始まる物語

 ▼ 1 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:18:31 ID:PdEk.6/k [1/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「お疲れ様。今日はもう上がりでいいよ、ニャオニクス」
「え?」

 私は顔をあげる。クチートさんはニコリと笑って言った。

「今日読み解きたかった資料はある程度見通しが立った。優秀な助手のおかげだよ。
 それに……今日は、友達が水の大陸に帰ってくるんだろう?」
「……はい! ありがとうございます!」

 私は立ち上がると、クチートさんにお辞儀をして、部屋を後にした。
 ▼ 2 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:18:56 ID:PdEk.6/k [2/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ナエトルとピカチュウの2匹が世界を救って10年。私は調査団で、クチートさんの手伝いをしていた。
 どうしてそうしようと思ったのかはわからない。ただ、2匹に繋がる何かをしたい。その思いに突き動かされて、5年前、私は調査団の扉を叩いた。
 既に顔なじみだった調査団の皆さんは、私のことも快く受け入れてくれた。特に、ピカチュウの喜びようったらなかった。あの村にいた頃の思い出が蘇るんじゃないかってぐらい、激しい勢いで抱き着いてきて。それをナエトルにたしなめられるところまで、あの頃のままで。
 ▼ 5 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:20:47 ID:PdEk.6/k [3/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「おーい、ニャオニクス!」
「あ、アギルダー」

 私は元気に手を振るアギルダーに手を振り返す。アギルダーは素早い身のこなしで、私の方に駆け寄って来た。

「は、速いね……」
「あ、ごめん、驚かせちゃった」
「いや、大丈夫。でも……大丈夫? その、変装とか」

 アギルダーは、今やワイワイタウンで話題のムービースター。進化してからの持ち前の身のこなしをニャースシアターにスカウトされ、ド派手なアクションで観客を沸かせている。

「今日はそれどころじゃないよ! だって、ゴロンダが帰ってくるんだぞ!」
「だとしても、ファンに見つかったらややこしいから……それに帰ってくるまでまだ時間あるし……」

 その後も気の急くアギルダーをなんとかなだめ、騒ぎになる前に変装をさせることに成功した。
 チョボマキの殻風帽子に身を包み、最低限バレないぐらいにはなった、と思う。

「それで、これからどうしよう」
「先に、おだやか村組を迎えに行こうよ」
「だな!」
 ▼ 6 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:21:14 ID:PdEk.6/k [4/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ふう、やっと着いた!」
「しばらくヌメルゴンが戦ってるとこ見なかったけど、すっごく強くなったねー!」
「えへへ……これでも救助隊ですから。あ、おーい、ニャオニクス、アギルダー!」

 メブキジカとヌメルゴンがこっちに向けてゆっくりと歩いてきた。

「久しぶり!」
「うん、久しぶり」

 私たちは挨拶を交わす。それから私は、

「とりあえず港に向かおう。歩きながらいろいろ話さない?」
「だね。ゴロンダがいつ戻ってくるかわからないし」

 みんなも頷いて、私たちは歩き出す。
 ▼ 7 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:21:34 ID:PdEk.6/k [5/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 メブキジカは、おだやか村の学校で先生をしている。昔から真面目で、友達思いだったシキジカ……メブキジカが先生というのは、聞いた時、物凄く納得した。きっと、優しくて、ちょっと厳しいいい先生になれる。確信に近い信頼があった。
 ビックリしたのはどちらかというと、ヌメルゴンの方。昔ナエトルに助けられたあの時から、今度は自分も誰かを助けたいと思うようになっていたらしく、そして今は救助隊として、ダンジョンの中で困っているポケモンを助けているらしい。
 はじめこそ戦いは苦手だったヌメラだが、ある日ヌメイルに進化した辺りから急激に戦えるようになり、今では立派なヌメルゴン、というわけだ。
 ▼ 8 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:22:40 ID:PdEk.6/k [6/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「でもアギルダーが映画俳優になるとは思わなかったなあ」

 メブキジカの言葉に、アギルダーはにやりと笑ってこう返す。

「俺ははじめから自分はこれだって思ってたぜ?」
「嘘だあ」

 ヌメルゴンがそう言って笑い、みんなもつられて笑う。

「で、そろそろじゃないかしら」
「あ、ラプラスさんが来たよ!」

 ヌメルゴンは真っ先に発見した。それは次第に近づいてきて。

「ただいま、水の大陸! んで、出迎えご苦労!」

 ゴロンダが、ラプラスの背中から降りてきた。
 ▼ 9 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:22:59 ID:PdEk.6/k [7/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ゴロンダは、あれからどんどん腕っぷしが強くなっていった。だけど、その力をただ暴れるだけじゃなくて、もっと立派なことのために使いたい! と考えて、ポケモンパラダイスの建築に関わったというドテッコツに弟子入りしに行った。
 ポケモンパラダイスは、別の大陸にある。修行も厳しいらしく、なかなか連絡も取れなかったが、今日は久しぶりに水の大陸に帰ってこられた、というわけだ。
 それに伴って、アギルダーが私たちを呼びつけて、みんなでお帰り会をやろう! というのが、今日集まった理由だ。

「ゴロンダも、メブキジカたちも、長旅お疲れ様。とりあえず、ゆっくり休んでからガルーラさんのカフェに行こう」
「どこで休むんだ?」

 アギルダーの問いかけに、私は答える。

「ダンチョーから、部屋は使っていいよって言われてる。とりあえずついてきて」
 ▼ 10 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:23:32 ID:PdEk.6/k [8/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 それから長旅をしてきた3匹と、撮影で体を動かして疲れたアギルダーがお昼寝するということで、私は1匹、歩きなれた町を散歩する。

「みんな、凄いな」

 自分のできること、やりたいこと。それを明確に掴んで、みんな立派に働いている。
 いや、私だって別に、働いてない訳じゃない。クチートさんと一緒に歴史を調べていく仕事は楽しいし、やりがいも感じている。
 だけど。どうしてだろう。

 終わってない、と感じてしまうのは。

 何がどう、終わってないのか。いまいち自分でもつかみ切れていない。ただ、終わっていない。終われていない。そんな風に感じてしまう。
 みんなと比べてどう、というものじゃないのもわかってる。ただ、自分の中にどうしても、もやがかかっている。

「ピカチュウなら、なんて言うかな」

 私はそう、小さく呟いた。
 ▼ 11 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:23:55 ID:PdEk.6/k [9/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 港のベンチでぼんやりしていたら、いつの間にかもう空が赤くなっていた。
 私は慌てて部屋に戻ると、まだぐうすか寝ているみんなを起こした。

「ん、おはよニャオニクス……」

 そう言って一番に起きてくれたメブキジカと共に、みんなを起こし、そしてガルーラのカフェに連れて行く。
 ▼ 12 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:25:00 ID:PdEk.6/k [10/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「と、いうことで! 俺の帰還を祝して、かんぱーい!」
「「「「かんぱーい!」」」」

 まだ未成年ではあるので、各々がジュースで乾杯する。ゴロンダが一気に飲み干して、ぷはぁと豪快な息を吐く。

「やだー、おっさんみたい」

 メブキジカがそう言って若干引き気味の目線を向ける。ゴロンダはいいだろ別に、と笑う。

「あっちじゃこのぐらいやらねえと舐められんだよ」
「大変なんだねー」

 ヌメルゴンがそう言って頷く。

「そういうお前は救助隊活動どうなんだよ? まさかビビって泣いたりしてないよな?」
「当たり前だよ! 僕がしっかりしなくちゃ、救助を待ってるポケモンはもっと怖いんだから」
「たくましくなったなあ」

 アギルダーがそう言ってヌメルゴンを見やる。

「でも一番ビックリなのはアギルダーだぜ、俳優だって?!」
「そうなんだ! まさか俺がむぐ」

 私は口を抑える。

「こう見えて大人気なの、あんまり素性を明かさないで」
「う……済まねえ」

 ゴロンダはそう言って謝る。アギルダーはひそひそ声で、

「今度ニャースシアターに見に来てよ」
「ああ、絶対行くぜ。メブキジカちゃんは先生だっけ」
「そ。あの頃のあなたたちみたいなやんちゃっこたちの相手するのは大変よ。ヒヤッキー校長みたいに、みんなをどっしり受け止めるにはまだ経験が足りないなあ。やればやる程、凄さがわかってくるよ」
「メブキジカなら絶対大丈夫だよ!」

 ヌメルゴンはそう言って笑った。私も頷く。

「みんな、すっごく頑張ってるね」
「当たり前だろ! そういうニャオニクスだって、調査団に入って頑張ってるし」

 ゴロンダの言葉に、私は頷いた。

「まあね。クチートさんと一緒に古文書を読んで、あの事件に関わる歴史をたくさん調べてる」
 ▼ 13 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:25:23 ID:PdEk.6/k [11/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ってことは考古学者かあ。かっこいい!」

 ヌメルゴンがそう言って目を輝かせる。私は小さく微笑んだ。

「でもよお、やっぱあいつらとも、また会いてえよな」

 アギルダーが、ポツリと呟いた。そうねえ、とメブキジカも頷く。

「今は確か、ウルトラビーストたちがやって来た世界を調査してるんだっけ」
「うん。この世界の地図を完成させて、違う世界に旅立った……なんて、型破りなピカチュウたちらしいよね」

 私の言葉に、ゴロンダもまったくだぜ、とぼやく。

「進化した俺の雄姿、見せてやりたかったのによお」
「そうだ、ゴロンダ。ポケモンパラダイスはどうだった?」
「そうそう! ホントに凄いんだぜ! リーダーのツタージャさんも優しいし、みんな笑顔でさ! ドテッコツの兄貴は厳しいけど……でもめっちゃくちゃ、しっかり俺に技術を叩き込んでくれたんだ!」
「いい経験ができたんだねえ」

 ヌメルゴンがそう笑って言う。ゴロンダはおうよ、と笑い、ジュースを飲みほした。
 ▼ 14 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:26:03 ID:PdEk.6/k [12/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 それからも私たちは、昔話に花を咲かせた。あんなことやこんなこと、たくさんの思い出が蘇ってきて。
 でもその中には、いつもピカチュウとナエトルがいた。

「……今度はあいつらが帰って来た時に、またパーティーだな」

 ゴロンダの声に、みんなも各々頷いた。

「んじゃ、そろそろ終わりにするか! 明日から、こっちで仕事探さねえとだし!」
「あ、それならニャースさんが映画館の増築したいって言ってたよ」
「ホントか?! それ、俺に任せろ!」
「一緒に話してみよ!」
「よかったね、さっそく仕事決まりそうじゃん!」

 メブキジカの声に、ゴロンダはああ、と笑った。
 ▼ 15 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:26:46 ID:PdEk.6/k [13/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──

 翌朝。ゴロンダは早速アギルダーと一緒にニャースと話し、増築を任されたらしい。この町からは離れた所に別の映画館を立てたいそうだ。メブキジカも、仕事があるからと帰っていって。ヌメルゴンだけはこの町の近くで一仕事しようかな、と残っていたが、とはいえずっと遊んでいられる訳では、もちろんない。
 非日常は嵐のように過ぎ去り、あっという間に元の日常に戻っていった。

「……大丈夫?」
「ジラーチさん」

 古文書を読むのに疲れて、部屋を出て休憩していたら、ジラーチさんに声をかけられた。

「なんだか、辛そうな顔してるから」
「……わかりますか」
「うん、だってボク天才だし」
「凄いですね。私は……自分でも、わからないんです。何が引っ掛かってるのか、まったく」
「ふぅん、意外だね。なんでもお見通しみたいな感じなのに。いや……だからこそ、かな」
「え?」
「まあ、もし話したかったらいつでも相談に乗るし。気が乗らないなら無理に話さなくてもいいよ。でも、思い詰めすぎないでね。ふああ、それじゃ、ボクはちょっと寝てくるよ……」
「は、はあ……」

 ちょっと寝るのちょっとが、果たして何日なのか。しばらくはしたいと思っても相談できそうにないのだけは確かだ。私は呆れて、小さく笑った。
 ▼ 16 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:27:21 ID:PdEk.6/k [14/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 仕事をしている間は、こういうもやもやを忘れられた。過去のポケモンたちが、未来の私たちに向けて遺してくれたもの。そこからは、本当に様々なことが読み取れる。
 心の闇が生み出した数々の災厄。それに立ち向かいうる、心の光ともっと具体的な対策(例えば、テンケイ山の泉のような)。
 災害の記録や、戦いの歴史。そんな中で、今を必死に生き抜いた、歴史には残らないようなポケモンの思い。

 私にとって、こうしたものに触れている時間は、とても楽しいものだった。自分だけでは決して知り得なかった蓄積が、自分の中に取り込まれていく。
 だけど、ふと我に返った時、もやもまた、帰ってくる。昨日みんなと会ってから、このもやはなんだか濃くなったようだった。楽しい時間だったはずなのに。

 はあとため息を吐くと、クチートさんが声をかけてきた。

「ニャオニクス、ちょっと気分を変えてみないか?」
「え?」
「考古学は、資料を読み取るだけが仕事じゃない。むしろ、自分の足で稼ぐことこそが本懐だ……とは伝えてきただろう?」
「はい」

 実際それはその通りで、過去に何度も、クチートさんに付き従って遺跡へと調査しに行った。

「そろそろ頃合いだろうと思ってな。遺跡の実地調査をお願いしたい」
「私だけで、ですか。いいんですか?」
「ああ。これを言って慢心するような性格ではないから言うが、ニャオニクスはもう、最低限のスキルは身に付けている。今までずっと見てきた私が言うんだから間違いないよ」
「ありがとうございます」
「ということで、頼みたいのは古代遺跡だ。行ったことがあると聞いている」

 古代遺跡。私が二重スパイをしていた時に、コノハナさんたちと対峙した場所だった。

「わかりました。だけど、前クチートさんも調べていませんでしたか?」
「ああ。だが、異なる立場からの見解も知りたいんだ。今のニャオニクスなら、有益な情報を持ち帰ってくれるかも、と思ってな」
「なるほど、責任重大ですね」
「ああいや、そんな風に重く考える必要はないよ。ただ、あの遺跡を調査して、気付いたこと感じたこと、それをまとめてくれればいい。その結果が今までわかっていることだったとしても、その確認をするという経験それ自体に価値がある」
「なるほど、わかりました」
「じゃあ、よろしく頼むよ」
「はい」
 ▼ 17 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:27:47 ID:PdEk.6/k [15/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「それで、僕に依頼を出してくれたんだ」
「うん。だけど、メブキジカは大丈夫なの? 1匹で帰って」
「キリタッタ山脈ぐらいなら大丈夫だよ! 実際、僕の目から見ても全然僕ら専門家に引けを取らない戦いぶりだったし!」
「ふふ、そうね」

 ナエトルたちとの繋がりが、私たちにずっと力をくれる。それは、比喩的な意味でもあり……そして、戦いの経験を学べる、という意味でもある。そのおかげで私たちは、普通のポケモンよりかは、一回り以上強い。

「キリタッタ山脈よりこっちの方が危険だし、それに僕、こうやって行ったことないダンジョンにも行ってみたかったんだ!」
「……なんだか、ピカチュウみたいなこと言うね」
「そう、かな。えへへ」
「それじゃ、行こうか。私も後ろから、‟サイケこうせん”で援護するね」
「うん、お願いね」
 ▼ 18 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:28:11 ID:PdEk.6/k [16/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ここ数年、救助隊として成果を挙げているというヌメルゴンは、確かに強かった。正直、私の手助けなんていらないぐらいに。

「大丈夫?」
「ええ。ありがとう、ヌメルゴン」

 キングドラのハイドロポンプをくらい、思わず怯む。ヌメルゴンがあっさりと処理して、それから私に手を差し伸べた。私はその手を差し出す。

「……村一番の泣き虫だったのにね」
「ちょ、そんな昔のこと言わないでよ!」
「ごめんね。みんな、成長してるんだなって思ってさ」
「そりゃそうだよ! ニャオニクスだってそうでしょ?」
「そうかな……いや、それはそうだよね」

 実際、今回自分だけで調査してこいって言われたのだって、成長の証に他ならない。頭では、わかっているんだ。
 ならなんで、素直に頷けないのだろう。

「ニャオニクス、なんか、疲れてる?」
「どうだろう、自分でもよくわからなくって」
「あ、海中洞窟を抜けた……のかな」
「うん、ここから古代遺跡よ」
「古代遺跡に入る前に、休んでから行こうよ」
「うん、そうだね」
 ▼ 19 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:29:18 ID:PdEk.6/k [17/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 海中洞窟は、結構過酷なダンジョンだ。もちろん、ナエトルたちや、それこそヌメルゴンが日頃挑んでいるようなダンジョン程ではない。でも、私みたいに普段戦いに全力を出しているわけじゃないポケモンが、1匹だけで戦えるほどやわなダンジョンでも、もちろんない。

「ふああ、なんだか、思ったより疲れが」
「だよね。結構厳しかったもん。ここで寝てから行こうよ」
「そうさせてもらうね」
「リンゴ食べる?」
「いや、自分のかばんに用意はあるから大丈夫。でもありがと」
「さすが、準備いいね。昔っからこういうのぬかりないタイプだよねえ」
「まあね」

 かばんからリンゴを取り出して、ゆっくりかじる。

「この古代遺跡って、ニャオニクスは行ったことあるんだよね」
「一応ね。だけど……ほとんど連れてきてもらっただけだから、自力でこのダンジョンを踏破したことはないの」
「なるほどー。見た範囲でいいんだけど、どんなダンジョンだった?」
「事前に情報を持っておくのは大事よね。でも、攻略に役立つような情報はほとんどないよ。最深部でダークマターに石にされると、虚無の世界の中でも一番深い所まで落とされるらしいけど」
「ええっ?! そんな危ないとこなの!?」
「まあ、今ダークマターはいないし、石にされるなんてこともないよ。……でも、怖いよね」

 ヌメルゴンは、小さく震えていた。そのまま口を開く。

「……そりゃね。あの時はみんなで一緒になんとか怖いのからは逃げ切ったけど……その一番深い所って、どれだけ怖いんだろうって、ぞっとする」

 あの時、私は石になるのを免れた。だけど、他のみんなはそうじゃない。虚無の世界の話は、あの事件の後、皆に聞いた。聞くだけでも恐ろしいあの世界を、ヌメルゴンは、体験している。

「もちろん、今は安全だってのはわかってるし、それに……あの時より僕強くなったもん。もし何かあっても、ニャオニクスのことは絶対護るよ!」
「……たくましいね」
「えへへ」
「ありがとね」
「うん!」

 私は、かばんを枕に軽く寝転がった。ヌメルゴンも体を丸める。

「それじゃ、おやすみ。起きたらまた頑張ろうね!」
「うん、おやすみ」
 ▼ 20 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:29:41 ID:PdEk.6/k [18/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 体を起こして、軽くストレッチ。寝ている間に少し凝った体をほぐす。

「ヌメルゴン、おはよ」
「うーんむにゃむにゃ……はっ! あ、おはようニャオニクス」
「それじゃ、寝ぼけが解消されたら行こう」
「うん……ふああ」

 寝起きのあくびをかましながらも、ヌメルゴンは起き上がった。
 ▼ 21 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:30:10 ID:PdEk.6/k [19/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 そこからのダンジョンも、さして苦戦することはなかった。少しずつ進んで。

「……あれ、なんか開けた所に出たよ」
「そう、この辺りに壁画があったはず」

 そしてそれはすなわち、クチートさんたちが石化された場所だったはず。ダークマターの手掛かりが遺されている場所だ。

「この壁画が、目的地?」
「半分は。この壁画を見てみたいってのもあったけど……私としては、最深部が虚無の世界とどう繋がっているのかも知れたらいいなって思ってる」
「なるほどねえ……どうしてそんなこと知りたいの?」
「え?」
「僕はあんな世界のこと、忘れちゃいたいよ、正直。もちろん、だから調べないでほしいってわけじゃなくて……なんて言うかな、本当に、ただ知りたいんだ。なんでそんなこと知りたいのかなって」
「なんで……か」

 理由なんて、考えたことなかった。ただ、知りたい。あの2匹が辿った足跡を。あの2匹が命がけで護ったものを。

「なんでだろうね。私は、あの事件のことを。あの2匹のことを、もっと知りたいんだ。だけど……」

 言いよどむ私に、ヌメルゴンは首を傾げる。

「だけど?」
「……わからない。どうしてかしらね、もやもやするのは」
「……ごめん、なんか聞いちゃいけないこと聞いちゃったかな」
「ううん、そんなことない。あなたの質問に答えると、だからわからないっていうのが正直なところね」
「そっかあ。まあでも、きっと、いっぱいこれから役に立っていくんだろうね」
「え?」
「そうやって積み上げていったたくさんの知識が、ダークマターを倒すのに役立ったんでしょ?」
「まあ、そうだね。古代のポケモンたちが遺してくれた知恵が、あの2匹をダークマターの所まで連れて行ってくれた」
「おかげで僕たちは今、こうして生きている!」
「……そっか、過去を知ることは、今を生きるのに役立つのつか。わかってはいたけど……なんだか納得だな。
 ありがとう、ヌメルゴン」
「どういたしまして! さ、僕が周りを見張ってるから、思う存分壁画を観察してよ!」
「うん、よろしくね」
 ▼ 22 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:30:44 ID:PdEk.6/k [20/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『この先は、処刑場。
 心の闇を力とする存在、ダークマターを生み出した地だ。』

「えっと……この文字は……」

『悪を為したポケモン。彼らの持っていた絶望、嘆き、憤り。それらがこの場に沈殿し、いつしか寄り集まって、力を持った。
 それは他のポケモンの苦しみも吸い上げ、次第に肥大化していき、その力は、世界に穴を開けた。』

「世界に穴……?」

『その穴は、無の世界に通じていた。無の世界であって、闇は無を自分の色に染め上げた。
 心の闇に共鳴して、無の世界はやがて、闇の力の手中に収まった。』

「ねえ、ニャオニクス。どんなことが書いてあるのか聞いてもいい?」
「うーんとね、ダークマターが、どうやって生まれて、どうやって虚無の世界を手中に収めたのか、かな」
「なるほどね……よくわかんないや」
「私も、まだちゃんとはわかってないから、確かなことは言えないの」
「だよね。だけど……凄く楽しそうだよ!」
「え、そうかな」
「うん!」
「ならいいな、ありがと」

 そう言うと、私はまた、読解に戻る。一塊を読むのにも、10分はかかる。とても時間がかかる作業で、待たせているヌメルゴンには申し訳ない。

「ここは安全みたいだね。さっきから見張ってるけど、ポケモンが入ってくる気配はないよ」
「そうみたいね。退屈してたらごめんね」
「うーん……そうだ! 僕にも教えてよ、古代文字の読み方!」
「え? いいけど……そんなすぐに教えられるようなものじゃないよ」
「まあ、もちろんわからないと思うけど……ニャオニクスが見てるもの、僕も知りたいなって」
「わかった。じゃあ、今読んでる所ね」

 こうして、古代文字の読み方を教えながら、私は読解を進めていく。

『闇の力は、闇に囚われたポケモンの魂を無の世界に送り込むようになっていった。
 魂が抜けたポケモンは、まるで石のようになっていた』

「なるほど、そう読むんだね。やっぱりよくわかんないや。でも……怖いことが書いてるね」
「そうね。だからこそ、ここにこうやって遺したの」
「そうだねえ」
「さて。ここに書いてあることはあらかた読み終わったかしら。あまり多くはなかったな」
「危ない所に近いから、逃げちゃったんじゃないかな」
「かもしれない。あり得る可能性として覚えておくね。それじゃあヌメルゴン、お待たせ。先に進もう」
「うん!」
 ▼ 23 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:31:19 ID:PdEk.6/k [21/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 最深部に辿り着く。

「何もないね」
「うん。何もなかった」

 ここは、来たことがある。コノハナさんの仲間になっちゃった、なんてあの2匹に嘘を吐いた、あの場所だ。

「だけど、きっと何かある」

 処刑場として使われていたというのなら、その名残りがあるかもしれない。
 穴を開けたのがここなら、その形跡が見つかるかもしれない。

「今もなお、虚無の世界の底に繋がる場所なの」

 それに繋がる何かが、見つかるかもしれない。

 私は見回す。それらしき何かがないか。
 古代から伝えられてきたものが、あるいは、年月の中で忘れ去られた遺物が、何か残っていないか。
 何か、あの戦いに繋がる何かが……。

 ふと見回すと、ヌメルゴンがいない。

「あれ? ヌメルゴン?」

 声をかけるけれど、帰ってくるのは壁に反響した私の声だけで。

「……どうしたのかな」

 他に何か、変わった気配は、何も……。いや、違う。ぼんやりとだけど、辺りにもやがかかっている。コノハナさんたちにまとわりついていた、黒いもや。

「これ……」

 私はごくりとつばを飲む。あるはずない。あっていいはずない。だって、ダークマターは、ピカチュウに抱きしめられながら、消滅したはずだ。心の闇は消えないけれど、ダークマターは、もう、ないはず。

「なんで。2匹が、解決したんじゃ」
 ▼ 24 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:31:48 ID:PdEk.6/k [22/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ――あなたは、何がしたいの?

 いきなり、声が聞こえた。

 ――あなたはずっと、過去に囚われてる。

「それは……」

 ――あの2匹の足跡を追って、どこへ向かってるの?

 この声の主は、すぐにわかった。誰よりも近くにいて、誰よりも知っている声。
 紛れもない、私の声だ。私の声が、私に迫る。

 ――あの2匹はもう、遠く先にいるのに。

「……わかってる」

 私がこうやって、過去のことを調べているのも。あの戦いに繋がる古代からのメッセージを調べているのも。

 ――全部、全部あの2匹の影を追いかけてただけ。

 シキジカも、ヌメラも。ヤンチャムも、チョボマキも。みんな、自分のやりたいことに出会って、前に進んでいった。ナエトルも、ピカチュウも。自分の意思を貫いて、世界を調査している。じゃあ、私は? 私は一体、どこに進んでいるの?

 ――あなたは空っぽ。2匹の後を追いかけるだけの、抜け殻。

 別に、友達が現れて酷いことを言ったりは、しない。だってそんなの、嘘過ぎるから。私の友達は、誰かに酷い言葉を投げかけるようなポケモンじゃない。
 今こうして声をかけてくるのは、他でもない、私。私の中のもやが、この場と干渉した結果か、形を取って、私に声をかけてくる。

 ――そんなことをしても、彼の隣には立てないのにね。
 ▼ 25 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:32:30 ID:PdEk.6/k [23/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「そうね。私のこと、よくわかってるじゃない」

 ――ええ、だって私は私だもの。

「なら……私はどうしたらいいと思う?」

 ――ふふ、面白いね。私がわかってないことを、私がわかるわけないじゃない。

「でも、私の心をあなたは言語化してくれた」

 ――そうね……私は、忘れてしまいたい。

「忘れられる、わけない」

 ――でも、こんな心、覚えてるだけ辛いでしょう。

「どうかしらね。私は忘れたいとは思わないけどな」

 ――私なのに、私と意見が合わないなんて面白い。でも……本当にそう思ってるなら、私はこうは思わない。

「ふふ、そうね。さすが私。理屈っぽいね」

 ――ええ、そうよ。私は私だもの。だから……あなたの望む通りに。目を閉じて、楽になろう。

「……なるほどね。これが、心の闇か」

 絶望、嘆き、憤り。そんな強い感情ではない。
 ずっともやがかかっていた。私の心の奥が、そのもやの中でもがいて、やがて、もやに溶けだしていった。
 緩やかな、虚無。それが、私の心の闇だった。

「ありがとう」

 私は、目を、閉じる。

 ――ええ。おやすみなさい。
























「いいえ、眠りはしないわ」
 ▼ 26 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:33:11 ID:PdEk.6/k [24/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ――え?

「むしろ……この頭で、心で。あなたと、一緒に生きていく」

 ――どうして?

「私は別に、目を閉じて、石になったっていい。あなたも私の一部なんだから、そう思ってる自分も、まぎれもなく私。だけどね」

 私は目を見開く。そして、笑ってみせる。

「そっちの方が、面白いじゃない」

 ――ふふ、そうね。私は私。私の思うことは全部、私よ。だから、わかる。私なら、そう言うよね。

「ええ。あの時から、ずっとそうでしょ? 私たち」

 あの時。別に私は石になったってよかった。だけど、コノハナさんたちの言うことを聞いた。怖がっているフリをした。だって。

 ――そっちの方が面白くなりそうだった、ものね。だけど、しんどいよ。

「ええ。きっと、大変な道のりになると思う。だけどね」

 私には、友達がいるの。困ったら支え合える友達がいる。前を進んでくれる、大切な存在がいる。だから。

「だから、眠らない。石になるなんてそんな簡単な道、選ばない」
 ▼ 27 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:33:30 ID:PdEk.6/k [25/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ニャオニクス!」

 と、呼び声が聞こえた。ヌメルゴン、ではない。何度も、何度も聞いた声。ずっと、焦がれていた、あの声。

「ドダイトス! どうして!?」
「こっちこそ、なんでニャオニクスがここにいるの?!」

 ピカチュウがドダイトスの背中から顔を覗かせ、そう叫ぶ。私は事情を説明した。

「……紛れ込んじゃったんだ。この、虚無の世界に」

 ピカチュウは茫然と言った。

「え、ってことは、石に」
「されかけてたかもね。でも、なってないよ、多分」
「よかったあ……」
「それよりも、なんであなたたちがここにいるの?」

 実は、とピカチュウが話し始める。
 ▼ 28 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:33:51 ID:PdEk.6/k [26/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ウルトラビーストたちがもといた世界と、私たちの世界。2つの世界の間には隙間があって、その隙間が無の世界。ダークマターの手により、虚無の世界に変えられてしまった場所。
 今2匹は、そこを調査していたらしい。

「で、ここが一番底ってことかな」

 ピカチュウの言葉に、ドダイトスも頷く。

「古代遺跡の最深部にいたニャオニクスがここに迷い込んだってことは、きっとそうなんだろうね」
「ふう、じゃあこれで調査も一区切りだね! さて、戻ろっか! あー、ニャオニクス、今から冒険することになるけど、大丈夫?」

 ――いや、そっちに行かなくてもいい。こっちよ。

「案内していいの?」

 ――だって、私に脅しも誘導も効かないもの。効果がないことやり続けても無駄でしかないじゃない。

「ふふ、そうね。ありがとう。ねえ、2匹とも。私の心の闇が案内してくれるって」
「へ?」
「入ってこられるなら、出て行ける。狭間と元の世界は、繋がってるんでしょう?」
「そうだね。行ってみよう、ピカチュウ」
「うん!」

 私は、私の頭の中の私が言う通りに進んでいき、そして。
 ▼ 29 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:34:29 ID:PdEk.6/k [27/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「わっ! ニャオニクス、と……ドダイトス、ピカチュウ?! なんで!?」

 ヌメルゴンが驚いた声をあげる。

「ちょっとね……虚無の世界に行ってたみたい」
「ええっ!?」
「でも大丈夫だったよ。ちょっと、私の心とお話して……むしろ、スッキリしてるんだ」
「本当に、ニャオニクスはずっと凄いなあ……」

 ヌメルゴンの声に、ピカチュウもホントだよねーと笑う。

「で、ピカチュウたちはなんで?」
「虚無の世界を調査してたら、たまたま会っちゃって」
「2匹も凄いや……ホントに、僕なんかじゃ想像も付かないスケールだよ」
「どうだ、凄いだろー!」
「そのどや顔やめて。でもさ、ヌメルゴン。あなたはきちんと前に進めてるよ。私よりも凄いと思う」
「え? ニャオニクスだって前に進んでるでしょ?」
「え?」
「だって、あんな古代文字、僕だったら絶対読めなかったもん! ニャオニクスがいっぱい頑張ったから、僕に教えられたんだよね! それに……2匹のこと、ダークマターのこと、いっぱい知ろうとしてるじゃん!」
「まあ、そうだけど……そうだ。ねえ、ピカチュウ。あなたはなんで世界を知りたいの?」
「なんで?」

 ピカチュウはうーんと首を傾げる。考えたことなかったけど……と前置きして。

「知りたいから知りたい! って感じ! もう、心の奥底から、いつまでもいつまでも、知らない世界を知りたいって思うの!」
「自分も。理由なんてないよ」

 理由なんてない。知りたいから知りたい。あまりに単純明快な答えに、私は思わず笑った。アハハハハ!

「にゃ、ニャオニクスのそんな笑い声、初めて聞いたよ……」

 ピカチュウの声に、私は、ごめんと謝る。

「私、難しいこと考えすぎてたかもしれない。いいんだよね別に。知りたいから。古代のこと、あなたたちのこと。そんなことで、いいんだよね」
「うん。そして私たちが知ったことが、いつか未来の誰かの役に立つかもしれない! ダークマターがまた現れた時にどうすればいいかとか! いろいろ知れたから、私たちは立ち向かえたの! だから……もっと、いっぱいいろんなことを調査する! いつか役立つかもだし、楽しいし!」
「そうだね」

 私は笑いながら言った。

「ありがとう。ねえ、ちょっとお願いしたいことがあるんだけど、いいかな」
 ▼ 30 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:34:49 ID:PdEk.6/k [28/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 つながりオーブで、みんなに連絡を取る。メブキジカ、ゴロンダ、アギルダー。みんな、すぐに出てくれた。私はひとつ、とっておきのアイデアをぶつける。

「おだやか歴史資料館?」

 ヌメルゴンの声に、私は頷いた。

「そう。ドダイトスたちの、そしてダークマターとの戦いの歴史を、未来に伝えるの。私がいっぱい調べた古代のこと、ドダイトスたちが見つけた今のこと。その全部を、伝える施設を作りたいの」
「いいじゃない、面白そう!」

 メブキジカがそういう。

「歴史を知る機会があれば、教師としても凄くありがたいし!」
「それなら! 俺が建設してやるよ! 映画館の次にな!」
「ゴロンダ! うん、お願いしたい」
「じゃ、じゃあ僕は、建設資材を集めてくる!」
「ヌメルゴン! よろしく頼むぜ!」
「俺は何すればいい?」

 アギルダーの言葉に、ピカチュウが言う。

「今まで通り映画で、みんなに笑顔を届けて欲しい! しかしまっさかとりまきが映画スターになるとは思わなかったよ」
「おい、とりまきって言うな! ……うん、わかった。俺は笑顔を届けるぜ!」
「じゃあ自分たちは」
「いっぱい伝えよう。私たちの経験、私たちが調査した全部!」
「うん、そうだね」
「みんな……」

 私は知らず、言っていた。

「ありがとう!」
 ▼ 31 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:35:29 ID:PdEk.6/k [29/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 帰って、クチートさんに報告した。クチートさんはふふふと笑って、言う。

「いい顔をするようになったじゃないか。ジラーチに聞いて、あそこに行かせて正解だったな」
「え?」
「ちょうどこのタイミングで、ドダイトスたちが底に辿り着く。ジラーチ経由でセレビィに聞いていたんだ。だからきっと、会えると思ってな」
「……そうだったんだ」
「ああ。そして、おだやか歴史資料館か。いい案だ。調べたことを伝えることも、大切な仕事だ。私も、惜しみない協力をさせてもらおう」
「ありがとうございます!」

 こうして、私は晴れて、おだやか歴史資料館建設への一歩を踏み出した。
 ▼ 32 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:35:44 ID:PdEk.6/k [30/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ――

 数年後。

「いよいよ開館だね」
「なんだか気恥ずかしいな……自分たちの冒険が展示されてるんだよね」

 ドギマギしているドダイトスたちに、私は声をかける。

「胸を張ってよ。主役はあなたたちなんだから」
「いや、ニャオニクスもでしょ。館長はあなたなんだから」
「ええ、わかってる。さ、リラックスしていこう」

 2匹の冒険が始まった、おだやか村を見下ろす丘。建設場所にはそこを選んだ。
 そして今日は、メブキジカ先生の引率で、子どもたちが見学に来てくれるらしい。ドダイトスたちも特別に駆け付けてくれた。

「しかし、いい建物だねえ」
「ええ。ヌメルゴンが集めてくれた最高の資材で、ゴロンダが精いっぱい作ってくれたもの。資金もアギルダーが提供してくれたし」
「さすが映画スターだね……」
「自分としては、展示の構成が巧みだなあと」
「ええ。クチートさんといっぱい話し合って決めたもの」
「さっすが! ニャオニクスとクチートが手を組めば怖いものなしだね!」

 ピカチュウの言葉に、私はふふ、と笑った。

「さて、じゃあ、開館しよっか。メブキジカたちを待とう」
「うん!」
 ▼ 33 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:35:59 ID:PdEk.6/k [31/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 私は空っぽ。確かにそうかもしれない。でも、それでも私は進んでいく。未来に向けて、伝えていく。
 これは終わりじゃない。むしろ、ここから始まるんだ。私の、自分の足で歩く、最初の第一歩。
 友達と共に歩む、小さくて大きな第一歩。

「……さあて、頑張ろう」

 私はそう、小さく呟いて、メブキジカが連れてきた子どもたちの前に立つ。

「こんにちは!」
 ▼ 34 1◆J44kAZeDOM 25/09/17 07:36:15 ID:PdEk.6/k [32/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







ここから始まる物語 了






 ▼ 35 しゃまん◆NKmNEeVImk 25/09/17 07:48:29 ID:PdEk.6/k [33/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
当SSはこれにて完結です
お読みくださりありがとうございました
 ▼ 36 しゃまん◆NKmNEeVImk 25/09/17 11:51:55 ID:PdEk.6/k [34/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
というわけで、本SSはこれにて完結です。
お読みくださりありがとうございます。


最後なので少しばかり自我を出します。
私の作風はこの掲示板とはあまりフィットしないと気付き、最近は活動場所を別所に移していました。今も元気にポケモンで二次創作を続けています。
ですが、この掲示板が終わると聞き、最後にここに投稿することにいたしました。
私の作品が、この掲示板の最後を彩る一助になれば幸いです。

BBSの皆様、特にかつて私の作品を読んでくださった皆様。作者陣の皆様。そして何より、1%に負けずこの掲示板を運営してくださったけろたんに、特大の感謝を送ります。

今までありがとうございました。
 ▼ 37 ラナクシ@メンバーズカード 25/09/17 12:01:47 ID:unlgdcS2 NGネーム登録 NGID登録 報告
面白かったで
サンキューイッチ
 ▼ 38 メハダー@はいぶくろ 25/09/17 12:41:42 ID:uaVw2MHs NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
(どうやらタイムラグが発生したようですね……何回か終わりました宣言のレスが出てしまうと思います、気にしないでいただけると……)
 ▼ 39 1◆J44kAZeDOM 25/10/05 22:38:44 ID:d1vsEHtM NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
今更ながらですが、本SSは以下の企画に参加しています(言い忘れ)
皆さんの力作が楽しめるので、後からこの作品に触れていただいた方はぜひこちらから読める作品たちもお楽しみください!

【SS企画】ポケモンBBS ファイナルラストSS企画 【投票期間 〜10/13】

https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=2381088
 ▼ 40 1◆J44kAZeDOM 25/10/16 07:29:36 ID:Fchk4026 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
上述の企画にて、素晴らしすぎるイラストを描いていただきました!
閑古鳥さん、本当にありがとうございました!

(一応出典:

【SS企画】ポケモンBBS ファイナルラストSS企画 【投票期間 〜10/13】

https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=2381088
>>173

ニャスパーに脳を焼かれて早10年、この絵が見られて本当によかったです
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