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【SS】Ghost in the Pokewood

 ▼ 1 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:35:01 ID:yQTcc8KY [1/55] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジムリーダーを辞任し、俳優業に復帰しポケウッドの看板スターになったハチク。


ポケウッドからのスカウトを受けて、銀幕スターとして輝きを放つヤマブキジムのジムリーダーナツメ。


タチワキジムの戦いぶりをスカウトに見初められ、今飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍中のメイ。


そう。今ここポケウッドではポケモントレーナー出身の俳優・女優業が急速に増えてきているのだ。


ポケウッドの撮影には、細かい条件がつくとは言え殆どの場合でポケモンバトルが絡む。


撮影の幅が広がる点で言えば、トレーナーとして優れた人物が主演級として重宝されやすいのは自明の理と言えるだろう。


しかしプロの演技指導を受けているとは言え、役者としては素人からのスタート。


それを問題視する声が全くないわけではなかった。
 ▼ 2 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:35:39 ID:yQTcc8KY [2/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
そんな中、演技面を買われてポケウッドに所属することになった元々の役者の中に、嫉妬の炎を心の内に燃やすキヨミという女優がいた。

彼女は幼少期から子役として活躍し、次々とヒット作に出演。


順調にキャリアを積んでいたが、昨今の激しいバトルを映画に組み込む流行から、
ポケモンバトルが出来ない彼女は主演の座から助演に追いやられていた。


彼女からすれば、自分より演技の経験がない演者に主演を譲るのは全く面白いことではない。


ポケウッド作品ともなれば助演でも十分な実績だが、キヨミにとっては鬱屈とした日々が続いていた。
 ▼ 3 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:36:26 ID:yQTcc8KY [3/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
メイ「『ハチクマンの 逆襲』我ながら面白かったー!」


メイ「自分で見直してみた感じ、演技が少しずつ上達している気がします!」


メイ「気になる今回の興行成績記録はー?8008億円!やりましたー!」


ウッドウ「いやあー!ちょっと!!メイちゃんじゃないー!」


メイ「あっウッドウさん!お疲れ様です!」


ウッドウ「今回の『ハチクマンの 逆襲』だけど御覧のとおり大ヒットなのよ もうー!」


ウッドウ「こうやってイイ作品に出てればお客さんにもスタッフにも愛されていくと思うよー!」


メイ「ありがとうございます!」


ウッドウ「じゃあねー!メイちゃん!」


メイ「はい!これからもメイっぱい 頑張ります!」


メイは経営者のウッドウさんが見えなくなるまで大きく手を振った。


メイ「えへへ……頼りにされるのって嬉しいな!明日からもまた頑張りましょう!」


メイは足取り軽く爛々とした気分で劇場を後にした。
 ▼ 4 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:36:54 ID:yQTcc8KY [4/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
映画館のロビーの片隅。

その一部始終を突き刺さる程の目で凝視し、歯ぎしりしているのがキヨミだ。


キヨミ「何が『メイっぱい頑張ります!』よ……。可愛い子ぶってるんじゃないわよバカバカしい……!」

キヨミ「一番嫌いなタイプなのよ!大した努力もしないで、愛想だけでちやほやされる女が!」

キヨミ「ああ!あの女のことを考えるだけで憎しみで頭がおかしくなりそう!」

キヨミ「……顔を洗って頭を冷やさないと。」



劇場内にある化粧室で、キヨミは洗面台の前に立ち、鏡に映る自分の顔を睨みつけていた。

我ながら酷い形相をしていると彼女は自嘲した。

いくら顔を洗っても、洗っても、洗っても、憎悪と嫉妬が剥がれ取れない。

キヨミ「どんな方法でもいいからあの女に消えて貰えないかしら……!」
 ▼ 5 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:37:39 ID:yQTcc8KY [5/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
そう強く願った瞬間、洗面台の前の鏡が歪んで、目と口だけが赤く妖しく輝く青白い悪霊の顔が浮かび上がった。


悪霊「およよ?なんだか困ってるみたいだねー?相談に乗ろうか?」


キヨミ「……何!?」


鏡に映る背後を振り返っても何もいない。悪霊は鏡の中にだけ映っている。

背筋が凍えるような感覚が止まらない。

体が言うことを全く聞かず立ち去ることができない。


悪霊「聞いちゃったよー?誰か消えてほしい女がいるって?」


キヨミ「……メイ。お団子にツインテールの女。あいつに消えてほしいの。」


悪霊の囁きに煽られて、キヨミはつい憎んでいる女の名前を明かしてしまった。
 ▼ 6 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:38:05 ID:yQTcc8KY [6/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
悪霊「メイだって!?ビンゴ!その子はボクにとっても一番都合が悪い存在だったんだよねー!」


キヨミ「……貴方がやってくれるの?」


悪霊でも何でもいいから縋るような気持ちでキヨミは悪霊に問い詰めた。



悪霊「ん?実力行使じゃ無理だよー?だってキミに取り憑いてもよわっちいだろうし勝てないだろうねー!」

キヨミ「はあ……期待して損したわ……。」

悪霊「でもねー?社会的に消すことなら出来ちゃうかもねー!」

キヨミ「それはどうやって?」



悪霊「明日の夜21:00頃。ホテル前で張っていたら面白いものが撮れるかもよー?」

キヨミ「どういうこと?話が全然見えてこない!」

悪霊「まー見ればわかるって!ああそうそう。名乗り忘れていたねー!」
 ▼ 7 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:38:35 ID:yQTcc8KY [7/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アーカム「ボクの名前はアーカム!昔話の世界ではそれなりに有名かな?」


アーカム「もう一度言うよ!アーカムだよ!絶対忘れないでねー!」


アーカム「それじゃーまたね!!クククッ!……アッハハハーッ!!!」


けたたましい笑い声とともに鏡に映る悪霊は姿を消した……。


キヨミ「一体こいつはなんだったの……?」


キヨミ「明日の夜21:00頃に宿舎前で面白いものが撮れる……。」


キヨミ「何が何だかわからないけど、あの女が消えるならなんだっていい……。」
 ▼ 8 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:39:25 ID:yQTcc8KY [8/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
J.ポケンター監督「カット!カーット!バッチリ!バッチリ!バッチリだよ!」


メイ「皆さん!遅くまでお疲れ様でした!明日からもまた頑張りましょう!」


撮影が長引きすっかり夜も更けてきた頃だが、メイは疲れを表に出さずスタッフ一同に労いの言葉をかける。


そんな気配りが自然に出来る所も、今の絶大な人気を支える所以なのかもしれない。


メイが帰りの支度を済ませて外に出ようとしたその時、監督に呼び止められた。


J.ポケンター監督「メイちゃん!遅くなったからホテルまで送ってあげるよ!」


メイ「そんな!悪いですよ!監督もお疲れでしょうし、別の宿泊施設で泊まりでしょう?」


J.ポケンター監督「活躍しすぎてたまに忘れかけるけど、一応メイちゃんは未成年だからね。」


J.ポケンター監督「まあ強くて心配はないだろうけど、大人としての務めってものがあるわけよ。」


メイ「それではお言葉に甘えて……。ありがとうございます!」


メイは、監督の厚意に甘えることにした。
 ▼ 9 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:39:48 ID:yQTcc8KY [9/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アーカムと名乗る悪霊に言われた通り、21:00頃からずっと役者が泊まる用のホテルの入り口前の暗がりでキヨミは待機していた。


スマホロトムを構えて今か今かと息を殺して待ち構えている。


キヨミ「本当に来るんでしょうね……。」


そう疑った矢先に、監督とメイが談笑しながら一緒にホテルまでやってくる所を目撃した。


今どういった映画を撮る予定があって、それを演じるためには何を心がければいいかという相談話をしているようだ。


二人はホテルの入り口前に到着しても、話すのをしばらくやめなかった。


キヨミは一瞬のうちに悪霊の意図を理解した。


キヨミ「なるほどね……。確かにまたとないチャンスかもしれない。」
 ▼ 10 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:40:42 ID:yQTcc8KY [10/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
死角に隠れたキヨミは、その瞬間を録画し始めてた。


元々この監督は役者との距離が近く、フレンドリーに話すタイプで、モチベーターとしてかなり評価の高い男だった。


しかし今回はその性格が災いした。


キヨミの指は嫉妬とこれから起こることの期待で震えながらも、監督の手がメイの肩に触れる瞬間。

メイが監督に向かって心からの笑顔を向ける一瞬、監督とメイが寄り添っているように見える角度。背景にはホテル。


その全てをカメラに収めていた。


メイ「そうなんですよねー。私キリっとした顔がなかなか維持できなくて……?」


J.ポケンター監督「ん?どうかしたの?」


メイは何かに見られている感覚がして、話を途中で止めて周囲を確認し出した。


キヨミ「(まずい……!でも十分なものがもう撮れた後だわ!)」


キヨミは、2人に気づかれないようにその場からの離脱に成功した。
 ▼ 11 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:41:10 ID:yQTcc8KY [11/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
メイ「……いえ。誰かいたような気がして。」


J.ポケンター監督「怖いこと言うねー。あっ!ごめん!ただでさえ遅くなっているのに話しこんでしまって!」


J.ポケンター監督「じゃあまた明日から頑張って!」


メイ「はい!監督も遅くまでお疲れ様です!」


監督とメイはその場で別れた。無論二人の間に特別な関係はない。



キヨミは家に帰って自分が撮った動画を巧妙に編集した。


タイトルは『ポケウッド女優と監督禁断の関係!?』


捨てアカウントで動画アップロードのボタンを押す瞬間、キヨミは意地の悪い笑みを浮かべていた。
 ▼ 12 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:41:59 ID:yQTcc8KY [12/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
その翌朝には、既にネットの海は燃え上がっていた。


動画にはメイと監督が親密な関係に見えるように切り取られたシーンが並び、コメント欄はいらぬ憶測と中傷が殺到していた。


外から見ればメイは異例のスピードでポケウッドスターとして駆け上がったことも手伝い、成功した理由の裏付けとしての納得性を上げてしまっていた。


更に悪いことにメイは未成年で、監督は妻帯者だ。


そもそも夜の密会は事実でも何でもないが、この要素は悪評を広める大きな一因になってしまっている。


メイと監督は動画の内容を激しく否認するも、ついたイメージは簡単には拭えない。


現在公開されている映画はそのままだが、ポケウッド女優メイとJ.ポケンター監督が携わる未公開の映画は公開を一時見送り。


2人は騒動の収束を理由に、活動自粛を余儀なくされる事態に陥ってしまった。


それ以来メイは必要最低限の時しか、外に出ないといった状況に追い込まれた。
 ▼ 13 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:43:22 ID:yQTcc8KY [13/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ポケウッド内は騒然。普段の煌びやかな雰囲気は嘘のように重苦しい空気に包まれていた。


主要の役者やスタッフが集められて、誰もが表情は硬く……いや一人は内心ほくそ笑んでいるのだが。

経営者のウッドウの今後の方針に関わる声明を待っていた。



ナツメ「……やっぱり納得できないわ。メイがそんなことするとは思えない。」


ハチク「……同感だ。」


ナツメ「第一ただでさえ複数作品の収録を掛け持っているのに、そんな体力と時間の余裕なんてないはずよ。」


ハチク「……彼女は少しでも上達しようと演技に対してひたむきだった。」


ハチク「そんな時間があるなら、その時間で練習に費やしているはずだ。」
 ▼ 14 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:43:58 ID:yQTcc8KY [14/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
経営者のウッドウが撮影スタジオに入ってきて、輪の中心に立つ。


いつもの快活な表情は鳴りを潜め、ウッドウは深いため息をついてから話出した。


ウッドウ「みんなも知っているように、メイちゃんとポケンターちゃんのスキャンダルで2つの映画のプロジェクトが凍結してるわけよ。」


ウッドウ「勿論ボクも2人のこと信じてるからさ。今潔白を証明するため調査を進めてるの。」


ウッドウ「凍結した作品は『Full Metal Cop』と『ゴーストイレイザー』。どちらも多大な興行収入を望める作品ね。」


ウッドウ「だから絶対このままプロジェクトを潰すわけにはいかないのよねー。」


話し方はいつも通り緩いが、そう語るウッドウの語気からは強い意思を感じる。
 ▼ 15 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:44:45 ID:yQTcc8KY [15/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
スカウトマン「皆さんも知っての通りポケウッドは、映画の予告なしで収録してすぐ公開という特殊な撮影形態になっていますよね。」


スカウトマン「よって幸い、今凍結している作品は世に出る前の状態です。」


ハチク「……撮り直しさえすれば、まるで最初からそうだったかのようにキャストを変更することが出来ると。」


ウッドウ「イエス。極力取りたくない方法なんだけどねー……。」


キヨミ「(フフフ……全てがうまくいっている!これで私に主演の座が回ってくる映画もあるはずよ……!)」


キヨミは自分にとって都合のいい展開が来て、笑いを堪えるのに必死だった。


ウッドウ「だから『Full Metal Cop』・『ゴーストイレイザー』。これらの作品はどちらもメイちゃんが主演だったけど、代役を……。」
 ▼ 16 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:46:32 ID:yQTcc8KY [16/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ウッドウ「全てナツメちゃんに任せたいと思うねー!」


キヨミ「(…………は?)」


1作品だけではなく2作品の主演がどちらもナツメに代わったことで、集まった役者とスタッフがざわめきだす。


ナツメ「……私ですか?」


スカウトマン「これらのシリーズも例によって、全て収録にはポケモンバトルが絡みます。」


スカウトマン「そのポケモンバトルをこなせる力量。現在のポケウッド内での人気を鑑みると……」


スカウトマン「代役を任せられるのは性別も一致しているナツメさんしかいないという判断です。」


ウッドウ「この映画ならちょうどナツメちゃん主演で雰囲気も合うと思うし、任されていいかな?」


ナツメ「……ありがとうございます。尽力します。」


ハチクはナツメの目を見て少し頷き、ナツメはそれに微笑で返した。


最初は疑問を呈していた役者も、スカウトマンの説明と最近の実績を受けて納得する。


彼らは大役を任せられたナツメを「頑張ってね!」「日々の努力の賜物だな。」と口々に称えた。


……爪が掌に食い込むほどの憎悪に燃える約一名を除けば。
 ▼ 17 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:47:29 ID:yQTcc8KY [17/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ウッドウ「報告は以上!苦しい時期だからこそみんなで支えあって頑張っていこうね!」


経営者の決起の言葉に各々返事してから、役者たちは散っていく。


ナツメだけが残って、2作分の台本を渡されてどういった話になるのかの説明を受けることになった。


キヨミは肩を怒らせながら、悪霊のアーカムに出会った化粧室に駆け込んだ。


鏡に向かって怒号を飛ばす。


キヨミ「確かにメイは消えたわ!でもこれじゃ何も変わらないじゃない!」


……鏡には何も映らない。まるでそんな悪霊は最初からいなかったかのように。


キヨミ「ナツメも銀幕から消しなさい!同じ方法でも他の方法でもいいから!」


結局悪霊は要求に応じることはなく、姿すら現さなかった。


キヨミ「もう……どうしてポケモンバトルなんて出来なければならないのよ……。」
 ▼ 18 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:48:12 ID:yQTcc8KY [18/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ナツメのメイの代役としての最初の収録は、『Full Metal Cop』シリーズ。

夢のエネルギーダイナミックの強奪を画策する怪盗ニューラクノイチが、メイが演じるはずだった役だ。

それを逮捕しようとするのが、全身を機械武装させたメカポリス。ハチクが演じる役だ。


ここは とある 研究室 夢の 大発明 ダイナミックエンジンを 盗もうと 忍び込んだ クノイチが ひとり

そして 侵入者を 待ち受けるのは 全身に 機械を まとった 正義の 味方……


メカポリス『侵入者 発見 生体データ 照合中……』


ニューラ クノイチ『あれは…… 警備ロボット?』


メカポリス『照合 完了 連続強盗犯 ニューラクノイチ ゲットダウン! 投降せよ!


ニューラ クノイチ『……! 人間の 警官だ! 全身を メカで 強化 している!?』


メカポリス『コードネーム メカポリス スタートアップ! 起動する!』


メカポリス『抵抗 したな…… 敵対行動と みなす! 手錠 ランチャー! 発射! ブラストオフ!
 ▼ 19 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:48:50 ID:yQTcc8KY [19/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ニューラクノイチ『危ないっ! いきなり 何 すんのよ!?』

メカポリス『犯罪は 許さない 実力行使で 制圧する!

ニューラクノイチ『何なの!? アタシは ポケモン 使って 盗みを してるってのに アンタだけ そんな 武器 使って ズルい じゃないの!

メカポリス『フム…… なるほど 悪人に ケチを つけられては 私の 正義に 傷が 付く ここは ポケモンを 使い ヤツを 逮捕 すべきだな』

ニューラクノイチ『こ…… こんな 乱暴な 刑事に……』

ニューラクノイチ『やられはしない!』

メカポリス『ニューラクノイチに 交渉の 余地なし! オールアウト! 総攻撃!』



ポケミ タカシ監督「カーット!!最高!最高だぜ!お前!」


ナツメ「ありがとうございました。」


ハチク「……代役とは思えない程に上出来だな。」


ナツメ「ふふ。ありがとう。」
 ▼ 20 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:49:31 ID:yQTcc8KY [20/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ポケウッドでは、収録した映画がその日のうちに最新のVFX技術で完成する。

そして、完成した作品を劇場内で役者が初めて見ることになるというシステムが構築されている。

……一見かなり無理のあるシステムに思えるようだが、このスピード感こそ、現在ポケウッドが成功している秘訣の大きな一因となっている。

その反面、出来たものをそのまま出す関係上粗が目立つ作品になってしまうこともあるというデメリットも抱えている。



ナツメが代役を務めた今回の映画『Full Metal Cop』は、大盛況を迎えた。

黒い忍び装束に扮したナツメがニューラを駆使し、全身機械武装をしたハチクのヘラクロスと対峙するシーンは好評を博した。

元々ナツメのポケウッドの代表作は、『魔法の国の 不思議な扉』の魔女ジュジュベ役で、ヴィランを演じる経験があったことが助けになった。

ドスの効いた声と口調が様になっていて、元々ニューラクノイチ役はナツメだったと思わせるには十分な出来だった。
 ▼ 21 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 20:49:54 ID:yQTcc8KY [21/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ナツメ「……私、どうして悪役の演技が自分でもしっくり来るのかしら?」


映画上映が終わり、ナツメは思わずぽつりと呟く。


ハチク「何かやっていたのではないか?」


寡黙なハチクの方から珍しく冗談を飛ばしてきた。


ナツメ「生まれてこの方一度だって超能力を悪用したことなんてないわよ。」


ハチク「ではきっと並行世界のきみが悪者だったのだろう。」


ナツメ「……何よそれ。」


興行成績記録は6076億。上々の成績だった。
 ▼ 22 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:00:38 ID:yQTcc8KY [22/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
続いてナツメがメイの代役で出演した作品は『ゴーストイレイザー』。


主人公役は、警察では解決できない不思議な事件や、怪奇現象の処理を専門に請け負う秘密組織に所属していて、幽霊が出没する村の調査にやってきたという設定だ。


この映画作品の監督はかのスキャンダルがあったJ.ポケンターの予定だった。


しかし脚本家のS.テルユキの強い希望により、指揮をD.ポケンチに、主人公役をナツメにキャストを入れ替えてまでの公開が決まった。



ゴーストイレイザー 報告書 ファイル No.001 コードネーム ヤルキモノ

ある村からの 幽霊に 関わる 調査依頼

ここ 数日 幽霊を 目撃した人が 多数いると いう


村人の 中には 幽霊に取りつかれた者も いる という

これより 幽霊が 多数 目撃されている 墓地の 調査を 開始する
 ▼ 23 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:03:40 ID:yQTcc8KY [23/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
取り憑かれた男 カダスは ゴースをくりだした!


ゆけっ!ヤルキモノ!


コードネーム ヤルキモノ「この気配…… ただごとじゃない……」

カダス「ウググ……」

コードネーム ヤルキモノ「あの様子…… 完全に 取り憑かれている?」

カダス「オマエ 何者ダ……?」

コードネーム ヤルキモノ「……」

コードネーム ヤルキモノ(乗り移った者が 話しかけてきた……?)

コードネーム ヤルキモノ「貴方を 弔うの!」

カダス「ウググ……」

コードネーム ヤルキモノ「まずは あの男が けしかけて来るポケモンを 何とか するか……。」
 ▼ 24 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:04:22 ID:yQTcc8KY [24/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
相手の ゴースの のろい攻撃!

相手のゴースは 自分の体力を削って ヤルキモノに 呪いをかけた!

ヤルキモノの シャドークロー!

効果はバツグンだ!

相手の ゴースは たおれた!

ヤルキモノは のろわれている!

取り憑かれた男 カダスは ゲンガーをくりだした!



カダス「ウググ…… 我々がナゼ 騒イデイルカ?オ前 分カルカ……?」

コードネーム ヤルキモノ「……」

コードネーム ヤルキモノ(なぜ 騒いでいるか だって?それは おそらく……)

コードネーム ヤルキモノ「心配が ある?」

カダス「ウググ……」

コードネーム ヤルキモノ「空気が重たい…… 早く決着をつけないと…… 取り込まれる危険が……」


これは台本上のセリフだが、ナツメはこの時本当に正体不明の悪寒を感じていた。

室内の気温は保たれているはずなのに、寒さを感じて体が震える……。
 ▼ 25 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:05:08 ID:yQTcc8KY [25/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
相手のゲンガーの したでなめる 攻撃!

ヤルキモノには 効果が 無いようだ……。

ヤルキモノの シャドークロー!

効果はバツグンだ!

相手の ゲンガーは たおれた!

ヤルキモノは のろわれている!

取り憑かれた男 カダスは ゴーストをくりだした!


カダス「ウググ…… ウググ…… ウググ…… オレタチ 娘ガ 心配……」

カダス「オ前ニ…… 頼ミ…… ガググ… あががががががあががあ……」

カダス「た…… た…… 助け……」

コードネーム ヤルキモノ「何なの……」

ナツメはカダス役のベテラン俳優ニコルソンが演技ではなく、本気で苦しんでいるように目に映った。

ナツメ自身も寒気がまだ止まらない状態だ。

収録を止めるよう提案しようかとよぎったが、周りが熱のこもった名演技だと思って興奮しているのを感じる……。
 ▼ 26 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:05:33 ID:yQTcc8KY [26/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
カダス「た…… 助けてくれーっ!!」

コードネーム ヤルキモノ「……」

カダス「こ…… こいつを こいつらを…… 退治 してくれ!」

カダス「こいつらに ワシの 大事な娘が 取り憑かれて しもうたんや……」

今にして思えば、それは本当の懇願だったかもしれない。

コードネーム ヤルキモノ(さて…… 二つの矛盾する話……どちらを信じる……?どう行動するべきか……?)


コードネーム ヤルキモノ「幽霊に 聞く!」


カダス「なっ…… 何を言っとるのやアアアアア……!」

カダス「…… …… …… …… ウググ…… 話 聞イテクレルノカ」

コードネーム ヤルキモノ「うう…… かっ体が……!」

ナツメは寒気を感じるだけではなく、呼吸も詰まるようになってきた。

早く終わらせなければ、本当に危険な状態に瀕している……。
 ▼ 27 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:06:10 ID:yQTcc8KY [27/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
相手のゴーストの くろいまなざし!

ヤルキモノは もう逃げられない!

ヤルキモノの シャドークロー!

効果はバツグンだ!

相手の ゴーストは たおれた!

カダス「オ前 心 強イ……」

ゴーストを倒してから、ナツメの体調が少しだけよくなりだした。

コードネーム ヤルキモノ「教えて!何が 起きているの?」
 ▼ 28 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:06:30 ID:yQTcc8KY [28/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
カダス「コノ 男ノ 娘…… 不思議ナ パワー アル…… オレタチノ コト 分カル……」

カダス「ソシテ トテモ 優シイ……」

カダス「オレタチノ 墓ヲ イツモ キレイニ シテクレル」

カダス「イツモ オレタチニ 優シク 声ヲ カケテクレル……」

コードネーム ヤルキモノ「幽霊に 取り憑かれた 人が いる……?」

コードネーム ヤルキモノ「そいつを 助けたいの……?」

カダス「娘のパワー ダレカニ 目ヲ ツケラレタ……」

カダス「得体ノ 知レナイ 者ニ 取リツカレテ シマッタ……」

カダス「ソイツハ 恐ロシイ ヤツ……」

カダス「我々デハ カナワナイ ダカラ 騒ギヲ 起シタ…… 強イヤツヲ 呼ボウト シタ……」

カダスはプツンと糸が切れたようにその場に倒れこんだ。
 ▼ 29 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:07:39 ID:yQTcc8KY [29/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
『ゴーストイレイザー 報告書 ファイルNo.001への 追記』

村の墓地 異常なし 別件で 気になる 情報あり 調査を継続する

コードネーム ヤルキモノ



D.ポケンチ「カーット!!最高!最高だな!お前!」


D.ポケンチ「2人とも言うことなしだ!こんなものを見たら演技指導なんて蛇足でしかないッ!」


D.ポケンチ「早速この会心の出来を上映……おい!どうしたんだッ!」


収録が終わると同時に、ナツメはその場で息を切らしながら座り込んだ。


D.ポケンチ「大丈夫か!?ナツメ!?」


ナツメ「私は大丈夫……。それよりニコルソンさんを……。」
 ▼ 30 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:07:58 ID:yQTcc8KY [30/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
カダス役のベテラン俳優ニコルソンは、劇中のシーンで本当に気を失って倒れていた。


顔面蒼白で、目を閉じたままだ。


スタッフが慌てて水と毛布を持ち寄って、監督は「救急車を!」と叫ぶ。


しかし程なくしてニコルソンは目を覚まし、立てるようになるまで急に回復した。


ナツメもまた収録中の苦しみが嘘のように健康な状態に戻った。


場の空気にあてられた渾身の演技だったのか。それとも……。
 ▼ 31 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:08:29 ID:yQTcc8KY [31/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
映画自体はすぐに完成したが、流石のポケウッドでも公開するかどうかは躊躇した。


元々の主演予定のメイと監督がスキャンダルで自粛。


代役のナツメとニコルソンが一時的とはいえ体調不良。


安っぽい言葉で表すなら、『ゴーストイレイザー」は"呪いのフィルム"と化していた。
 ▼ 32 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:08:57 ID:yQTcc8KY [32/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
脚本家のS.テルユキは出来上がった映画に目を通して、満足気に笑っていた。


D.ポケンチ監督がバツの悪い表情でその様子を隣で見ている。


S.テルユキ「どうしてこの名作を世に出すことを躊躇している?」


S.テルユキ「私は未だかつてこんな恐怖を演じることが出来た役者を知らない。出演料をあげてやったらどうだ?」


D.ポケンチ「現場にいた身から言わせてもらうぞ。」


D.ポケンチ「あれは恐怖を演じていたというよりは、恐怖を実際に感じていた。」


D.ポケンチ「この映画はやばい。普段迷信なんて気にしちゃいない俺でもわかる。」


D.ポケンチ「この映画には"何か"がある……」


S.テルユキ「だからどうした?猶更いいことじゃないか。それがフィルムに収まったっていうなら幸運だ。」


S.テルユキ「この映画は公開する。お前からもそう進言しろ!いいな!」


脚本家の鬼気迫る表情に、監督は首を縦に振ることしか出来なかった。
 ▼ 33 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:09:40 ID:yQTcc8KY [33/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
結局『ゴーストイレイザー』は一般公開された。


反響は今まで公開された映画のどれよりも大きいものだった。


まず目の前の悪霊に冷静に対処する主人公のキャラクター性がナツメにマッチしている。


そして何より登場人物がまるで本当に悪霊にあっているかのような迫真の演技。


話題が話題を生み、ポケウッドで起こったスキャンダルをかき消す程にこの映画は売れに売れた。


興行成績記録は歴代1位を大きく更新する9999億円。何かの冗談のような圧倒的な数字を叩き出した。
 ▼ 34 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:10:13 ID:yQTcc8KY [34/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ナツメは休む間もなく「Full Metal Cop」シリーズの2作目の収録に移っていた。

体調もすっかり安定していて、ニューラクノイチ役もハマっているから特に演技に卒もない。

休憩時間中に共演しているハチクと話す機会があった。



ハチク「……例の映画、大変だったな。」


『見事な演技だった。』ではなく『大変だったな。』と声をかける辺り、ナツメはハチクに対して役者としてのキャリアの長さを感じた。


ナツメ「あれは……私の力じゃないわ。本当に苦しくて怖かっただけ。」


ハチク「……失礼な言い方になるが、承知している。」
 ▼ 35 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:10:54 ID:yQTcc8KY [35/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ナツメ「必要以上に期待のハードルが上がってよくないぐらいに思っているわよ。」


ナツメ「きっと他の作品に出た時、至らなさが目立つわ。」


ナツメ「ねえ。貴方が私の立場だったなら、こんな時どんな気持ちで映画に取り組む?」


ハチク「……そこに自分がいないものだと思って臨む。」


ナツメ「……?」


ハチク「例えばわたしの場合なら、映画の収録現場にいるのはハチクではなくハチクマン。或いはメカポリスだ。」


ハチク「外の声を気にせず、役と作品に没頭する。」


ハチク「その結果ポケウッドの映画を見ている人が、ポケモンと人の関係性に憧れてくれるならそれでいい。」


ナツメ「……プロフェッショナルの考えね。私も見習わないと。」
 ▼ 36 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:11:19 ID:yQTcc8KY [36/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ハチク「教えることは教わること……しかしそれはそれとしてわたしはきみが心配だ。」


ハチク「誰が見てもわかることだが、あの映画の収録を続けるのは危険だ。」


ハチク「下手をすれば死を招く。わたしが監督なら第一回も公開しなかった。」


ナツメ「気遣いありがとう。危険なのは百も承知しているわ。」


ナツメ「本当に命の危険を感じたら手を引くつもりではいるからきっと大丈夫。それに……」


ナツメ「今この映画の裏に何かとんでもないものが潜んでいる。そんな予感がするわ。」


ハチク「……未来予知か?」
 ▼ 37 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:11:44 ID:yQTcc8KY [37/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ナツメ「まだ微かなものだけどね。でも進んでいる先に直面しなければならない問題があることは視えているわ。」


ハチク「君が進むというなら止めはしない。」


ナツメ「ありがとう。まずは残りの収録頑張りましょうか。」



『Full Metal Cop2』はナツメの役者としての注目度が上がった分、前作より興行成績記録を伸ばした。


前作と変わらず好評を博していたが、多数の観客が求めているのは『ゴーストイレイザー』シリーズだと感じられた。


シアターの待ち時間の話題はほぼ『ゴーストイレイザー』一色。


まるで観客も何かに取り憑かれたかのように、その映画に魅了されていた。
 ▼ 38 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:12:17 ID:yQTcc8KY [38/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
多大な期待が集まる中、『ゴーストイレイザー』のFILE2の収録が秘密裏に決まった。


実は2作目を作る前に、スタッフ内で反発は少なからずあった。


それは単に身の危険を感じるからというだけではなく、2作目には今勢いのある天才子役として知られるアビゲイルが出演することが予め決まっていたからだ。


一度ならずニ度までも未成年絡みで問題を起こしたとなれば、流石にポケウッドといえど外圧に耐え切れない。


それでもまだ命に別条がないということと、莫大な収益が見込めることを天秤にかけた結果、2作目の収録が決まったのだ。


結局のところ、制作側も数字に取り憑かれていたのかもしれない。
 ▼ 39 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:12:47 ID:yQTcc8KY [39/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
収録前の異様な緊張感の中、アビゲイルは純粋な気持ちで口を開いた。


アビゲイル「この『ゴーストイレイザー』って映画、呪われているって本当ですか?」


子供らしい無邪気さを感じさせながらも、年不相応な落ち着きを見せる所作だった。


D.ポケンチ「いやぁ……?まあたまたま悪いことが続いたけど、呪われているってことはないんじゃないかな?」


凍えるような空気の中、素っ頓狂な声を出して監督はごまかした。


D.ポケンチ「そう!公開前のマーケティングってやつ?その方が注目度も上がるからね!ハハッ!お嬢ちゃんには難しい話だったかもな。」


アビゲイル「もしそうなら残念です。あたし呪われようと思って出ようとしたのに。」
 ▼ 40 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:13:12 ID:yQTcc8KY [40/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
D.ポケンチ「の、呪われようと思って……?」


マネージャー「待ってくださいね……。ちょっと!そんな不謹慎なこといっちゃダメでしょ!」


アビゲイル「だって色んなこと経験したいもん!実際に呪われるなんて今後経験できないかもしれないよ?」


幼ながらの向こう見ずさというか、根拠のない全能感というか……。


ナツメ「……危険に感じたら必ず途中でも声をかけて頂戴ね?」


アビゲイル「はーい!約束します!」


アビゲイルに限ったことではなく、不安の有無に関わらず誰もがそれぞれの理由でブレーキが利かない状態にあった。


うっすらとまた何かが起こるのではないかという気配の中「ゴーストイレイザー2」の収録は始まった。
 ▼ 41 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:13:45 ID:yQTcc8KY [41/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴーストイレイザー 報告書 ファイル No.002 コードネーム ヤルキモノ

ある村で 悪霊に取り憑かれた 少女がいるとの 情報あり

幽霊騒動が 発生して以来 だれも 少女を 見かけていないという

これより調査のため 接触を 試みる


とりつかれたこどもの セライノが 勝負を しかけてきた!

とりつかれたこどもの セライノは ノクタスを くりだした!

ゆけっ!ヤルキモノ!


少女「いらっしゃい ごようけんは なーに?」

コードネーム ヤルキモノ「……」

もう既に取り憑かれているのか……素の演技なのかわからない……。
 ▼ 42 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:14:11 ID:yQTcc8KY [42/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
コードネーム ヤルキモノ(ここは 様子を 見るか?)

コードネーム ヤルキモノ「パパは いる?」

少女「アハハ…… ゆうべからかえってこないの」

少女「だから さびしいの あそぼうよー」


始まって早々に淀んだ空気が場を支配している……。既に前回の収録よりも強い力を感じる……。


コードネーム ヤルキモノ「いっきに カタを つけないと……。飲み込まれて しまいそう……。確実に 仕留めよう。」

少女「アハハ…… たのしいーなー たのしいーなー」

確証はないけど、既に主導権はアビゲイルとは別の何かに移っているように見える。

どうする……?途中で止めるか?
 ▼ 43 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:14:29 ID:yQTcc8KY [43/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
相手の ノクタスの ソーラービーム!

相手の ノクタスは 光を 吸収した!

ヤルキモノは かわらわりを した!

効果は バツグンだ!

相手の ノクタスは たおれた!


とりつかれたこどもの セライノは ハリーセンを くりだした!

少女「ねえねえ おねえちゃん この はなしの こたえを しっている?」

少女「……むかし むかし はかいの まじんと よばれる あばれものが いました」

少女「まじんは せかいを こわしつづけました」

少女「でも あるとき まじんは こわすのを やめました」

少女「なぜかなー?わかるかなー?」

コードネーム ヤルキモノ「……」

一応は台本通りのセリフをなぞっている……。
 ▼ 44 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:14:50 ID:yQTcc8KY [44/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
コードネーム ヤルキモノ(ひとまず 怪しまれないように とにかく 返事するか……)

コードネーム ヤルキモノ「あきたから?」

少女「いえー!おねえちゃん さえてるー」

少女「アハハ…… はかいの まじん つよいぞー はかいの まじん おーきーろー」

相手の ハリーセンの ヘドロばくだん!

ヤルキモノの でんげきは!

効果は バツグンだ!

相手の ハリーセンは たおれた!


とりつかれたこどもの セライノは キルリアを くりだした!


少女「じゃあ つぎね!この おはなしは しっている?」
 ▼ 45 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:15:24 ID:yQTcc8KY [45/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
少女「むかし むかし とくべつな ちからを もった まじゅつしが いました」


少女「しかし まじゅつしは なかまに ゆうへい されてしまいました」


少女「なぜかなー?わかるかなー?」


コードネーム ヤルキモノ「……」


今度も台本上の質問……。ああ見えて正気を保っているのか……?


コードネーム ヤルキモノ(しかし とにかく 答えないと……)


コードネーム ヤルキモノ「悪いやつだった?」


少女「いえー!おねえちゃん さえてるー」


少女「アハハ…… てんさい まじゅつし えーらいぞー てんさい まじゅつし あーかむ」
 ▼ 46 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:15:55 ID:yQTcc8KY [46/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
相手の キルリアは めいそう した!

ヤルキモノの シャドークロー!

相手の キルリアは たおれた!


コードネーム ヤルキモノ「さあ!悪霊!その娘から 出ていきなさい!」

少女「アハハハハ おねえちゃん つよいね」

少女「わたしも ちから たくわえたし ここも あきてきたから そろそろ おでかけしようかな……」

コードネーム ヤルキモノ「いったい 何者……?」

コードネーム ヤルキモノ「子供の 様子が……?」


その瞬間少女は白目を剥き、生身で宙を浮き出した!

これは現代の編集技術ではない。スタジオ内でリアルに起こっていることだ。

スタッフ一同は超常現象を目の当たりにして、圧倒されて声も出せない様子だ。

監督は収録を中止しようとしたが、目を輝かせる脚本家に無言で制止された。
 ▼ 47 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:16:55 ID:yQTcc8KY [47/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
少女「クククッ…… アッハハハーッ!」


先程まで発せられていた可愛らしい声ではなく、憎たらしい人を食ったような男の声が少女の口から発せられていた。


アーカム「ボクの名前は アーカム!昔話の 世界では それなりに 有名かな?」


アーカム「もう一度言うよ!アーカムだよ!絶対忘れないでねー!」


アーカム「それじゃーまたね!!クククッ!……アッハハハーッ!!!」


けたたましい笑い声とともに少女は力を失い落下したが、ナツメは持ち前のテレキネシスを持って、床に体を打つ前に制止させた。
 ▼ 48 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:17:12 ID:yQTcc8KY [48/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
コードネーム ヤルキモノ「おい 待てっ!」


『ゴーストイレイザー 報告書 No.002 追記』

少女に 取り憑いた 悪霊を 取り払うことに 成功

少女は 順調に 回復している模様

ただし アーカムと名乗る 悪霊の捕獲に 失敗

なお 調べに よると 破壊の魔人と 呼ばれる 神の 復活を 企てた

魔術師の 名前が アーカムとの 記録あり

引き続き 調査を 継続する

コードネーム ヤルキモノ
 ▼ 49 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:17:39 ID:yQTcc8KY [49/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
D.ポケンチ「カット!大丈夫か!?アビゲイル!?」

収録を終えると同時に一斉に駆け寄るスタッフ一同。

気を失っていたアビゲイルは目を開け、心配そうに覗き込む皆の顔を見て一言呟いた。

アビゲイル「あれ……?もう収録終わったんですか?」

ナツメ「……どこまで覚えているの?」

アビゲイル「えーっとねー……?あれ?呪われる経験をしたいっていつの話だっけ?」


アビゲイルはラストシーンだけではなく、最初から主導権を奪われていることがわかった。



ナツメ「……監督。このシリーズの収録を即刻断念しましょう。」
 ▼ 50 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:18:06 ID:yQTcc8KY [50/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
D.ポケンチ「同感だッ!これ以上は続行できない!」


S.テルユキ「……何故だ?今回も最高のフィルムが生まれたではないか。」


ナツメ「この子は最初から何かに操られていたのに、全て台本の筋書き通りのセリフを読み上げました。」


ナツメ「この意味がどういうことを指すかわかりますか?」


ナツメ「……今私たちは『ゴーストイレイザー』のストーリーを追体験している可能性があります。」


ナツメが提唱した仮定に、周囲が一斉にざわついた。


途方もない作り話のようだが、実際にアビゲイルの様子が明らかにおかしくなったのを目の当たりにしたばかりだ。信憑性は十二分にある。
 ▼ 51 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:18:31 ID:yQTcc8KY [51/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
S.テルユキ「では今折り返しというわけか。喜べ!後2作も大作が撮れるぞ!」


ナツメ「貴方脚本家ならこの先の展開を知っているでしょう!?」


一向に撮影を止める気がない脚本家に対してナツメは語気を強めた。


ナツメ「破壊の魔神が復活して暴れまわることになるのよ?」


S.テルユキ「仮にそうなっても主人公が魔神に打ち勝つ。何も起こせないはずだ。」


ナツメ「勝てたとして被害が出ないとは限らない!」


口論の後、一瞬の静けさがスタジオを包んだ。
 ▼ 52 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:19:08 ID:yQTcc8KY [52/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ナツメ「……少なくとも私はこの映画にはもう出演しないわ。初回で引き返すべきだった。私たちは間違っていたのよ。」


ナツメ「ここで止めれば魔神の復活という最悪のシナリオにはたどり着かないかもしれないわ。」


D.ポケンチ「このプロジェクトは無期限に中断するッ!死人が一人出るだけじゃ足りないぞ!」


S.テルユキ「だが……!」


D.ポケンチ「俺が今の監督だ!解散するッ!」


監督の解散の令が出てから、誰も声を発することなくスタジオを後にした。


ポケウッド制作側でも取り憑かれたかのように夢中になっていた『ゴーストイレイザー』は一転。


スタッフの間では名前を出すのも憚られる存在に変わってしまった。
 ▼ 53 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:19:32 ID:yQTcc8KY [53/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
制作を中断したとは言え、危機は全く去っていない。


現にアーカムと名乗る悪霊は、力を蓄えたという不穏なことも言っていた。


いつ破壊の魔神が顕現するかわからない。


ナツメは自分専用の楽屋の中で、瞑想に耽り未来予知に専念した。


もしここで危機がすぐに視えてしまえば、かなり近い将来にそれが訪れることになる。


出来ればそうならないことを祈った……祈ったが……。


頭を貫くような刺激とともに、断片的な情報が脳内に雪崩れ込んでくる。
 ▼ 54 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:20:06 ID:yQTcc8KY [54/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
緑の煙、逃げ惑う民、シアターの屋上、自分自身の姿、巨躯、規格外の力……。


ナツメ「嘘……?」


完全には視えなかったが、間違いなく破壊の魔神は現実に、ここポケウッドで顕現する未来が視えてしまった。


ナツメはその先の未来を縋るように探った。


何も助かる道が見つからないと思ったその時、ほんのわずかに特徴的なシルエットが浮かんだ。


お団子付きのツインテール……見間違うこともなくメイのものだろう。
 ▼ 55 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/20 21:20:26 ID:yQTcc8KY [55/55] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ナツメ「メイ……?でもメイは今……。」


言うまでもなくメイは今謂れもないスキャンダルの的にされて自粛中だ。


しかし、そのシルエットはまるで最後に残された希望かのように輝いて見えた。


事実バトルの実力で言えば抜けて強い。問題はどのようにして外に出すか……。


ナツメ「何か……何か他にも未来を探らないと……。」


残された時間は限られている。見えない滅びへのカウントダウンは既に進んでいた。
 ▼ 56 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:03:34 ID:o5kIWmb. [1/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メイの主演映画の代役にナツメが選ばれてからというもの、キヨミは毎日のように自分が最初にアーカムと名乗る悪霊にあった化粧室を訪ねていた。

何度訪れても鏡には何も映らなかったが、それでも縋るように通うことをやめなかった。


ナツメが代役で出た映画の世間からの注目度は高く、結果的にメイを活動自粛に追い込んだ後の方が、より自分が目立つことが出来なくなってしまったからだ。


キヨミ「出てきなさい!いるんでしょ!早く!」

何も映らない鏡に向かって話し続けた甲斐あってか、とうとうアーカムと名乗る悪霊はその姿を現した。

姿は最初にあった時と変わらず、目と口だけが赤く妖しく輝く青白い姿だ。

ただし今度は鏡の中ではなく、キヨミの背後に出現した。
 ▼ 57 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:04:40 ID:o5kIWmb. [2/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アーカム「うるさいなー。何度も何度も呼んで。ボク今忙しいんだけど?」

現実に霊体として現れたことで、最初にあった時より更に身の毛もよだつ感覚がキヨミを伝う。

既に嫉妬の狂気に囚われていたキヨミは物怖じすることなく話をつづけた。


キヨミ「何度も頼んでいるでしょう?ナツメを消しなさい!」

アーカム「確かにあいつ目敏くて厄介そうではあるんだよねー。あと一歩の所で映画中断されちゃったし。」

キヨミ「それじゃあ……!」


アーカム「でもボクもうちょっとで復活できそうだからさー。そっちも自分で頑張ってよ。」

キヨミ「……は?ちょっと!待ちなさいよ!」

アーカム「さっきも言ったけどボク今忙しいんだよね。あっ!ナツメを足止めしてくれるなら大歓迎だよ。」

アーカム「まあ人間だから粗探ししたら何か見つかるんじゃない?知らないけどさー。」

アーカム「それじゃ!頑張ってねー!」

アーカム「クククッ…… アッハハハーッ!」


キヨミが呼び止める前に、アーカムは一瞬のうちに姿を消した。
 ▼ 58 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:05:07 ID:o5kIWmb. [3/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
キヨミは、仮に呼び止められていても大した意味はなかっただろうと悟った。


アーカムはキヨミの恨みに興味があったのではなく、自分の障害になり得る人物を除外出来るならそれでよかったのだろうから。


アーカムが何を企てているのかなんてことは、キヨミにとってはどうでもよかった。


もはや自分の手でナツメを今の座から引きずり下ろすしかないとキヨミは決断した。


キヨミ「やってやるわよ……。あんな悪霊の力なんて借りなくても!」
 ▼ 59 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:05:54 ID:o5kIWmb. [4/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
『ゴーストイレイザー』シリーズの製作プロジェクトが凍結してから、脚本家のS.テルユキは仕事の僅かな合間を縫って、ポケウッド内で何かを探している様子だ。


S.テルユキ「全く……製作が頓挫しなければこんな苦労をしなくてよかったものを……」


S.テルユキが不平不満を呟く中、悪霊は突然脚本家の隣に出現した。


アーカム「やあ!例の物は見つかった?順調そう?」


S.テルユキ「……人が来るかもしれない所に現れないでくれるか?」


アーカム「まあすぐ済むからいいでしょ!」


S.テルユキはまるで気を許した友人のようにアーカムと話している。
 ▼ 60 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:06:17 ID:o5kIWmb. [5/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
S.テルユキ「正直時間がなくてまだ確認出来ていない。」


S.テルユキ「恐らく小道具やセットを収めた倉庫の中だとは思うのだが……なかなか誰もいないタイミングで入れない。」


アーカム「頑張ってもらわないと困るよー?面白いもの見たいでしょ?」


S.テルユキ「借りもあるし善処はするよ。それより見つからないうちにどこかに行ってくれ。」


アーカム「はいはーい!」


アーカムは脚本家の言うことを素直に受け入れて、一瞬のうちに消え去った。


S.テルユキ「しかしあれを見つけたとて”破壊”が伴うからな……。慎重に動かなくては……。」
 ▼ 61 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:06:35 ID:o5kIWmb. [6/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ナツメはメイに何度か連絡を取った。呼び出し音が続くが、応答はない。


話したい旨のメッセージはいくつか残したが、どれも既読にはならなかった。


滅びの魔神が復活する前に、或いは復活させないように何か対策を講じなければ……。


思案を巡らせながらポケウッド内を歩いていると、ナツメは背後に冷たい視線を感じた。


振り返ると、ポケウッドの来客やスタッフがせわしなく往来している中、キヨミだけが立ち止まってじっとナツメの方を向いていることに気づいた。


そしてナツメが目線を返した所で、キヨミは群衆に紛れて立ち去っていった。


ナツメ「なんだったのかしら……。」


ナツメは訝しく思うも、今は滅びの魔神のことでつけられていたことまで気が回らなかった。
 ▼ 62 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:07:46 ID:o5kIWmb. [7/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ナツメはポケウッド内で昼食を取る際に、偶然ハチクを見かけた。


未来予知が出来ることを何度かハチクにしたことがあるとは言え、混乱を招くかと思い滅びの魔神の話をするか迷った。


しかし今のナツメはとにかく相談出来る相手を欲していた。


ナツメは軽食を購入してから、ハチクに話しかけた。


ナツメ「……向かいの席、いいかしら?」


ハチク「……勿論だ。」
 ▼ 63 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:08:29 ID:o5kIWmb. [8/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ナツメ「『ゴーストイレイザー』の収録が無期限に中止になったって話はもう知っている?」

ハチク「ああ。ポケウッド内部では殆ど全員知っている話だ。皆話したがらないだけで。」

ナツメ「収録中に超常現象が起きてという話ね。あの後私は予知してしまったの。この先ポケウッドに何が起こるのかを……。」



ナツメは近い将来『ゴーストイレイザー』の最終話に出てくる滅びの魔神が、現実のポケウッドに顕現すること。


それに立ち向かえる可能性のある人物がメイかもしれないことを話した。



ハチク「……なるほど。それは一大事だな。」

ナツメ「一番は魔神の復活を発生させないことだけど、そっちは何の手掛かりもないわ。」

ナツメ「だからメイに連絡を試みているけれど、あの状況だから連絡に応じてくれない……。」

ナツメ「今どうすればいいか考えている状態。きっとすぐ視えるぐらいの未来だったからあまり時間は残されていないわ。」
 ▼ 64 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:09:41 ID:o5kIWmb. [9/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ハチク「メイを呼び戻す……。」


ハチク「それを可能にするにはまずスキャンダル疑惑の払拭が必要になるな。」


ナツメ「そんなことがこの短期間で達成できるものなのかしら……?」


ナツメ「ポケウッド側で調査するといって全然進展がないようだし。」


ハチク「……まあこの期間ポケウッドで色んなことがあったから無理もないだろう。」


ハチク「せめてメイが標的にされた理由が分かればよいのだが……。」


ナツメ「メイが他人を悪く言っている所を見たことがないから、誰かの恨みを買っているとは思えないのよね。」


ハチク「だとすれば……狙ったのはメイのポジションか?」


ナツメ「一応一緒にいた監督を狙ったという線も……。ちょっと待って。」
 ▼ 65 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:10:11 ID:o5kIWmb. [10/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ナツメはまた自分に向けられた冷たい視線を感じ取った。


自分たちが座っている遠くの席に、何も食事を頼んでいる様子がないキヨミが座ってじっと2人を見ていることに気づいた。


ナツメ「またいる……。」

ハチク「……どうかしたか?」

ナツメ「場所を変えて話しましょう。会話している所が見られているわ。」



ナツメとハチクは楽屋代わりに使われているトレーラーハウスに移動した。

今は他に利用者がいなく、話を聞かれる心配がない環境だった。
 ▼ 66 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:11:06 ID:o5kIWmb. [11/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ハチク「……誰に見られていた?」


ナツメ「女優のキヨミよ。思えばすぐ逃げて行ったけど、食堂に来る前も私のことつけていたわ。」


ナツメ「私が破壊の魔神について嗅ぎまわっていることに勘付いたのかしら?」


ナツメ「只ならない雰囲気を出していたから……。」


ハチク「或いはきみの今の成功ぶりに嫉妬をしているかだな。」


ナツメ「嫉妬……?」


ハチク「きみがメイの代役を任された時、キヨミは全く喜んでいなかった。むしろ怒りを堪えてる様子にさえ見えた。」


ハチク「……あまり考えたくはない可能性だが、キヨミがメイを陥れたという話はないか?」


ナツメ「……全くないとは言い切れないわね。」
 ▼ 67 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:11:44 ID:o5kIWmb. [12/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ハチク「正直にいって内部からの犯行だとは思っていた。」


ハチク「撮ってからあげられるまでが早すぎるし、週刊誌等を通さず動画サイトを用いて流出させたのだから。」


ナツメ「もしそうだとするなら次の標的は……私?」


ハチク「断定はできないが、そうかもしれない。」


ナツメ「……少し時間を頂戴。」


ナツメは瞑想に耽り未来予知に専念した。


検索エンジンと同じようなもので、ある程度の情報が出て条件を絞った方が予知しやすい。


劇場前、真夜中、自分自身の姿、男性のシルエット、キヨミ、スマホロトムでの撮影……。


かなり早い段階で、ナツメの頭の中に断片的な映像が流れ込んできた。
 ▼ 68 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:12:07 ID:o5kIWmb. [13/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ハチク「……視えたか?」


ナツメ「ええ……きっとそうみたい。夜中にキヨミに隠し撮られる私の姿が視えたわ。」


ハチク「恐らくはメイもそのように……。」


ハチク「事前にわかってよかった。それなら夜に誰かと一緒にいなければ疑いの目はかけられない。」


ナツメ「……いえ。むしろ好都合よ。この状況を逆に利用するわ。」


ハチク「どういうことだ?」


ナツメは自分の計画をハチクに話した。
 ▼ 69 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:12:36 ID:o5kIWmb. [14/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ハチク「……なるほど。賭けてみる価値はあるな。」


ナツメ「本日の20:00過ぎぐらいに決行するわ。協力お願いね。」


ナツメ「私はそれまでにメイの泊まっているホテルに直接行ってみるわ。」


ナツメ「会ってくれないかもしれないけど、問題が解決するかもしれないことを伝えたい。」
 ▼ 70 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:13:02 ID:o5kIWmb. [15/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ポケウッドの出演者が宿泊する高級ホテルのロビーは、静かで落ち着いた空気に包まれていた。


ナツメはフロントの女性スタッフに声をかけて、穏やかな声で言った。

ナツメ「すみません、メイの部屋にお電話を取り次いでいただけますか?彼女と共演経験のある女優のナツメです。」

フロント「かしこまりました。少々お待ちください。」

スタッフは内線電話を手に取り、メイの部屋番号を押した。

フロント「メイ様、ナツメ様という方からお電話です。取り次ぎますか?」

フロント「……はい、かしこまりました。」

フロント「メイ様はロビーまでお越しいただけるとのことです。少々お待ちください。」

ナツメ「ありがとうございます。」

ナツメは一先ずメイが自分に会ってくれる意思が残っていたことに安堵した。
 ▼ 71 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:13:40 ID:o5kIWmb. [16/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ナツメはソファーに座って待機していた所、メイがエレベーターから降りてきてゆっくりとこちらに近づいてきた。

メイのかつての明朗さは鳴りを潜め、浮かない表情のままだ。


メイ「……携帯。全然見ていなくてごめんなさい……何回も連絡いただいていたのに……」

ナツメ「こんなことがあったのだから、外の情報を見たくなくなるのは当然よ。」


メイ「お仕事代わっていただいていたみたいで……ご迷惑おかけしました。」

ナツメ「貴方が気にすることじゃないわ。」

ナツメ「……メッセージにも送ったけど、私は貴方がそんなことする人間じゃないってわかっている。」


メイ「はい……あたしは監督との特別な関係はありません……。」

メイ「でも……一度世間にそう思われたら……もう取り返すことなんて……」

メイの声は震えて、一人で溜め込んでいた感情がとめどなく溢れる。
 ▼ 72 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:14:16 ID:o5kIWmb. [17/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ナツメはメイを落ち着かせようと優しく頭を撫でた。


ナツメ「だから私未来を予知したの。恐らく貴方を嵌めた犯人が視えたわ。」


ナツメ「その犯人は女優なのだけど、きっと私のことも蹴落とそうと今躍起になっている。」


メイ「そんな……」


ナツメ「でも安心して。私がその犯人を捕まえて問い詰める。」


ナツメ「絶対に貴方のことについても自白させる。約束するわ。」


メイ「ナツメさん……!」


ナツメ「首尾よく言ったら貴方に連絡していい?」


メイ「……はい。」
 ▼ 73 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:15:17 ID:o5kIWmb. [18/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ナツメ「後私が貴方を訪ねたのは、この話だけじゃないの。」


ナツメ「貴方は元々演じる予定だった『ゴーストイレイザー』シリーズについては、どれぐらい知っているかしら?」


メイ「台本を読み込んだので結末までわかります。」


ナツメ「流石ね。それなら話は早いわ。」


ナツメはもう一つの予知した未来、滅びの魔神とその場にメイがいたことについて話した。


メイ「それって……本当に現実の話なんですよね?」


ナツメ「ええ。更に言えばかなり近い将来のことだと思うわ。」


ナツメ「貴方の今の状態で頼むのは本当に心苦しいのだけど……。」


ナツメ「もし、滅びの魔神が顕現してしまったら貴方に協力をお願いしたいの。」


ナツメ「きっとここポケウッドにいる中で、一番の実力者が貴方だから映ったのだと思う……。」


メイ「……その魔神には勝てていましたか?」


ナツメ「そこまでは……視えなかったわ。ごめんなさい。」
 ▼ 74 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:15:53 ID:o5kIWmb. [19/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
メイは指を顎に当てて、何かを考えているようだ。


そして何かを思いついたように、ナツメにこう尋ねた。


メイ「ナツメさん!あたしの近い将来って視えますか?」


ナツメ「え……?ちょっと試してみるわね。」


思っても見なかったメイの質問に面を食らったが、確かに有効な手だった。


これでメイの元気な姿が視えれば、滅びの未来は訪れていないということだ。


逆に何も視えなければ……。恐ろしいことを考えてしまう。


祈るように瞑想を続けると薄ぼんやりとした形でメイの特徴的なシルエットが浮かび上がってきた。


対峙しているのは……ステッキを持った怪人?


ハチクマンだ!恐らくはルカリオガールとハチクマンが対峙している姿が、ナツメの脳内に浮かび上がった。
 ▼ 75 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/22 01:16:34 ID:o5kIWmb. [20/20] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ナツメ「……貴方、ハチクマンと戦っていたわ。」


それを聞いたメイは、初めてぱっと明るい表情をのぞかせた。


メイ「それならきっと未来はあるってことですね!あたしが映画の収録をしているってことでしょう?」


ナツメ「ええ。きっとね。」


メイ「あたしが現場に復帰出来ているってことでもありますよね?」


ナツメ「私が視た通りの未来が訪れるならね。」


メイ「ナツメさんの予知は当たるので安心しました!」


メイ「それに……あたしを疑わずに信じてくれて嬉しかったです!」


メイ「……あの!まだちょっと周りの目が怖いですけど、助けが必要になったら声をかけてください!」


メイの自信を取り戻しつつある声に心底安心して、ナツメはメイの手を握った。


ナツメ「ええ。その時にはよろしくお願いするわね。」



再び前を向く気になっているメイの心のつかえの原因を必ず取ろうと、ナツメはより一層固く決意し、ホテルを後にした。
 ▼ 76 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/23 19:27:51 ID:X0XMbeSo [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
D.ポケンチ「カーット!OK!今日もみんなお疲れ!」

『ゴーストイレイザー』シリーズの製作が中断されて間もなく、D.ポケンチは別の映画の『忘れえぬ 記憶』という作品の指揮をとっていた。

天才発明家が、人の心に限りなく近いプログラムを持ったロボット「F-00」を発明したことを巡って展開される、人とロボットの友情を描いた作品だ。

元々代理で任された映画監督だったとはいえ、大人気を博した「ゴーストイレイザー」の1作目の監督ということで、否が応にも注目度は高まった。

指導に熱も入り、撮影は朝から晩まで続いた。

監督がスタッフを労い、明日に備えて帰ろうとした所、今回の映画作品とは関係のないナツメが撮影スタジオの出口の前で待っていた。



D.ポケンチ「おう。久々だな。……あれ以来か。」

あれとはゴーストイレイザーの2作目の収録の時を指すが、話題にも出したくない内容だったので濁した言い方になってしまう。


ナツメ「監督。お疲れ様です。突然で失礼ですが……」

ナツメ「監督はお芝居出来ますか?」
 ▼ 77 3tees◆BQYS6iijv6 25/09/23 19:28:13 ID:X0XMbeSo [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
監督は思いもよらない質問にきょとんとする。要領を得ないまま返答した。


D.ポケンチ「役者の経験はないが、まあ人よりは芝居を見てきてはいるからな。出来なくはないんじゃないか?」


ナツメ「それは何よりです。これは勝手ながらのお願いですが……」


ナツメ「ほんの少しの間だけ、私と恋仲のフリをしてくれませんか?」


D.ポケンチ「……はっ!?」


監督は思わず大きな反応が出てしまうも、ナツメはそれを静止し小声で伝えた。


ナツメ「……メイを陥れた犯人がわかったかもしれません。」


D.ポケンチ「ああ……なるほど。だから一芝居打つわけか。」


ナツメ「そういうことです。付き合っていただけますか?」


D.ポケンチ「勿論協力しようッ!」
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