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SS

【SS】退部届は自分の手で

 ▼ 1 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/23 02:47:55 ID:Z8JE0PqU [1/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『代わりに書いてやるよ……退部届』

 出された課題を期限までに終えられなかったにしても、そこまで言うかと思った。
 立ち去る部長を追いかけた先で売り言葉に買い言葉、バトルになった。

『本気になれないから弱い。一生そのまんまでいたら?』

 カミツオロチに蹂躙されて倒れた手持ち。その前で項垂れる僕に、学園チャンプは冷たく言い放った。

少年「それでメンタル病んで、アローラに傷心旅行しに来たってわけ」

ロトム「ジャングルで遭難してるのも負けたせいロト?」ジト

カジッチュ「かじゅう……」ジト

少年「なんとかなると思ったんだよ! ロトム、カジッチュ、許して! お願い!」

ロトム「のたれ死んでも知らないロトよ……本当」
 ▼ 2 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/23 02:48:16 ID:Z8JE0PqU [2/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ロトム「で、どうするロト?」

少年「誰か通りがかる人を待つさ。なんとかなるよ。カジッチュも居るし」

カジッチュ「かじゅかじゅ!」ガンガン

少年「痛い痛い! 叩かないで! 行き当たりばったりでごめんて!」

ロトム「そんな都合よく通りがかるわけ……」

???「アローラ。なにしてるの?」

少年「アローラ。誰かが通りがかるのを待っていたんだ。助けてくださいお願いします」ドドゲザ

ロトム「相手すら見ずに土下座したロト……」

???「落ち着かないから顔をあげてもらって良いかしら?」
 ▼ 3 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/23 02:49:07 ID:Z8JE0PqU [3/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 顔を上げると、ムーランドに乗った少女が、少年(と肩に乗ったカジッチュ)を見下ろしていた。

少女「初手土下座さん。一体全体どうしたら初手土下座になるの? 性癖?」

少年「遭難しちゃって。助けて欲しいんだ。あと、そこまで捻れた性癖はしてない」

少女「そーなの? なら良いけど。後ろのロトムさんもアローラ!」

ロトム「ぁ、ロト……」

少女「あ……引っ込んじゃった」

少年「控えめ、というより人見知りなんだ。"おや"に似たのかもね」

少女「多分、違うと思うけど……」
 ▼ 4 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/23 02:51:54 ID:Z8JE0PqU [4/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「いけない。私、『試練』中なの」

 島巡りの試練。アローラの風習、11歳になったら挑む通過儀礼。国語の授業で読んだ。

 この風習のおかげでアローラのトレーナーは強いと言われている一方、脱落者が道を踏み外す例も多いらしい。

 要は学生にとっての受験戦争のようなものなのだろう。

少年「そりゃ邪魔してごめん。手伝うから、外への道を教えてもらえないかな」

少女「手伝いは良いよ。この子がいるし」

ムーランド「ばふっ」

少年「確かに、こんな立派な"てもち"がいるなら手伝いは必要なさそうだ」アハハ

少女「だよね!!!」ガバッ

少年(ムーランドから落ちんばかりの同意……すごい勢いだ……)ボーゼン
 ▼ 5 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/23 02:53:19 ID:Z8JE0PqU [5/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「……ごほん、あの渓谷を超えてまっすぐ行けば外に続く獣道だよ」

渓谷「」バックリ

少年「ちょっと待って、人間が超えれるレベルの渓谷じゃないんだけど。人を呑み込みそうな存在感を放ってるんだけど」

少女「ポケモンに乗っていけば?」キョトン

少年「君のムーランドみたいなポケモン持ってないからさ」

少女「創意工夫でどうにかならない?」

少年「そこまで言うならご覧ください!」
 ▼ 6 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/23 02:55:08 ID:Z8JE0PqU [6/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少年「イカれたメンバーを紹介するZE!」

少女「わー」パチパチ

少年「相棒のカジッチュ! このサイズに乗ったら虐待! むしろ僕がライドされてる側!」デデン

カジッチュ「かーじゅ!」ムネハリ

少年「ガイド役のスマホロトム! 控えめすぎてスマホ以上の仕事をしない!」デデン

ロトム「ボクにスマホ以上の仕事を求めないでロト」

少年「そして"きまぐれ"すぎて今日はボールから出てこないダブラン!」デデン

ボール「」カタカタ

少年「以上がマイパーティです!」

少女「ダブランなら"テレキネシス"できたり……」

少年「こいつの集中力の無さをナメるなよ。絶対に途中で何か他のことに気を取られて落とす」

ロトム「トレーナーに似たんだロト」

少年「うるさいよ!」
 ▼ 7 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/23 03:03:23 ID:Z8JE0PqU [7/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「じゃあカジッチュに進化してもらうのは? タルップルなら崖くらい降りられるし、アップリューなら飛べるよ」

少年「ああ、考えた。だけど、それは無理なんだ」

少女「なんで?」

少年「進化先を決められないんだよぉぉおおお!」アタマカカエ

少女「優柔不断の極みじゃない。きちんと決めてあげなよ」

少年「アップリューにしようと最初は思ってたんだよ。でも、カミツオロチの"さいせいりょく"は捨てがたいし、実際めっちゃ強いのは知ってるし!」

 カミツオロチの強さは身に染みていた。それこそトラウマになるくらい。

少女「私はタルップルが好きだけど。パワフルでかっこいいし」

少年「パートナー歴8年で決めれてないからその方針はなしで行こう」

少女「カッコ悪い」ボソ

少年「おっと…心は硝子だぞ」
 ▼ 8 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/23 03:20:10 ID:Z8JE0PqU [8/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少年「その筋骨隆々のムーランドに乗せてもらえれば良いんだけどね……」

少女「そんなに言うならしょうがないな〜。ちょっとだけだよ?」デレデレ

少年(ムーランドのことになると甘々だな……)

少女「乗ってきな!」クイッ

ムーランド「ばふっ!」キリッ

少年「ありがと……うおっ、どっしり安定感。ケンタロスより乗りやすいね」

少女「ケンタロスに乗ったことあるんだ! 良いなぁ!」

少年「学園に生息してたからね。アローラでも乗るんじゃないの?」

少女「乗るどころか、ケンタロスはアローラのライドポケモンの筆頭だよ!」
 ▼ 9 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/23 03:22:09 ID:Z8JE0PqU [9/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「だけど、お父さんが『お前にはまだ早い』って」

少年「乗せてもらえないのか。厳しいんだね」

少女「まだ育てさせてもらえないの」

少年「ん? 話が変わってきたな???」

少女「きっと、娘可愛さに育て屋を継がせたくないのよ」プリプリ

少年(つっよ……)

 思っていたのと話の次元が違った。
 ▼ 10 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/23 04:24:24 ID:Z8JE0PqU [10/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「うちがライドポケモン専用の育て屋なの。ムーランドは育て屋見習いとして育てた新入りさん」

 アローラ地方では秘伝技の使用が禁じられている。

 代わりに用いられる移動手段がライドポケモン。専用のポケモンを呼び出して乗るのがアローラ地方のメインストリームだ。

 少年は(金欠で)ライドギアを契約できなかったが。

少年「もうプロと遜色ないんじゃないかと思うけどね。こうやって他人が乗っても平然としてるし」

少女「え〜もう、そこまで褒めてもスピードしか出ないよ?」テレテレ

少年「安全運転でお願いします」
 ▼ 11 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/23 04:24:52 ID:Z8JE0PqU [11/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「付いてくるのは良いけど、『試練』結構危険だよ? もう採るもの採ったから戻るだけだけどさ」

ウソッキー「ウッソ!」トビダシ

少女「ほら。言った側から」

少年「大丈夫。降りかかる"ひのこ"くらい自分で払えるよ。ね、カジッチュ」

カジッチュ「かじゅ!」リュウセイグン

木「」プシュー

地面「」ボコボコ

ウソッキー「うっそぉぉおおお!」ニゲサリ

少女「野生ポケモンの脅し方が手慣れすぎてて怖い」

少年「これでもブルベ学園生だし」ハーブトリダシ

カジッチュ「かっじゅ」ハーブウマウマ

少女「イッシュ地方は修羅の国だったんだね……」
 ▼ 12 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/23 04:32:23 ID:Z8JE0PqU [12/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少年「僕はそこまで強いわけじゃないよ、負けたし。鍛えても負けるなら価値はないんだって」

少女「価値?」クビカシゲ

少年「うん。本気で勝ちたいわけじゃない。でも、価値がなければ居場所はなくなっちゃうから」

少女「イッシュの学校だとそうなの?」

少年「だからアローラに来たんだ。僕には少し、居心地が悪かったからね」

少女「……じゃあ、走ろう! ムーランド、レッツゴー!」

ムーランド「ばふっ!!!」ダッシュ

少年「えっ、そっち渓谷と逆……」
 ▼ 13 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/23 04:47:02 ID:Z8JE0PqU [13/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 少し走ると地面がゴツゴツとした岩場に変わってきた。ムーランドの疾走を遠目に見守る野生ポケモンの顔ぶれも、ほのおタイプの割合が増えている。
 
少年「君のムーランドの走りが凄いのは分かったけど、どこへ――」

少女「あ、見て!」

 ジャングルを抜けた先には、天を衝く火山が聳えていた。

 荘厳な佇まいに、少年は言葉を失う。

 それを知ってか知らずか、少女は楽しげに口を開いた。

少女「私はポケモンと風を一緒に感じるのが好き。ムーランドも、ラプラスも、バンバドロも、みんな違って最高だから、私はポケモンと一緒に生きていられる道を選ぶ。好きなものがある道を走ってたら、綺麗な景色に出会ったりするの」

少年「――――」

少女「アローラの風は何かを変えるんだって。だから、今は君にも転機が訪れますようにって走ったの」

 ヴェラ火山の山頂に隠れていた太陽が昇ってゆく。

少女「だって、走れば風は吹くから!」ニコッ

 風が木々を揺らした。

 少年少女とその手持ちを、アローラの日差しが照らしはじめていた。
 ▼ 14 ゴビット@むじゃきミント 25/09/23 10:21:08 ID:zVDkfWJo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 15 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 00:53:33 ID:FGyso2J6 [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 その後、すぐに"とんぼがえり"の勢いでジャングルの入り口まで戻った。

少女「『試練』中だったの忘れてた」テヘペロ

少年「ダメでしょそれは」

少女「ムーランドの乗り心地を知ってもらう方が大事だし、仕方ないね!」

少年「多分『試練』の方が大事」

カジッチュ「かじゅ」コクコク

少女「そんなことないもん。で、どうどう? ムーランドの感想教えてよ」

少年「そうかなぁ……感想としては、後ろで乗ってる分には揺れないし速いしで文句ないよ。カジッチュ的には僕より乗り心地良いんじゃない?」

カジッチュ「かじゅ!」コクコク

少女「ほうほう……じゃあ前で手綱持って! しばらく方向は同じだから!」

少年「えっ」
 ▼ 16 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 00:53:53 ID:FGyso2J6 [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 少年がムーランドの手綱を握ってからしばらく経ったが、ムーランドは指示通りに走っていた。少年が止まるように合図すると、一拍置いて減速していき止まる。

 少年はひらりとムーランドから降りて口を開いた。

少年「……こりゃダメだね」

少女「なんで? ちゃんと指示した方に走ってたけど」

少年「君が同乗者だからさ。僕の行きたい方じゃなくて君の顔色を窺ってる。これじゃあライドポケモンは無理だ。『試練』は突破できるだろうけどね」

少女「……厳しいね」

少年「ご、ごめん。言い方キツかったかも」

少女「覚えとくこと……」ボソボソ

 少女はスマホを取り出し、眉間に皺を寄せて何かを入力していく。

少年(もしかして、結構不興を買ったかな……?)

ロトム(何してるロト!?)ヒソヒソ

少年(真剣っぽいから、きちんとアドバイスしようと思って……)ヒソヒソ

ロトム(それをされて傷心旅行中の人間が言うことじゃないロト!)ヒソヒソ

少年(言えてる)ヒソヒソ

ロトム(アホロト!?)ヒソヒソ
 ▼ 17 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 00:54:19 ID:FGyso2J6 [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 再び少女がムーランドを御し始めてから数分間。会話もなく進むと、褐色緑髪の少女が立っている地点に辿り着いた。

???「おっ、おかえり! 材料は揃ったわね。……後ろの方は?」

少女「観光希望の遭難者です」

少年「見学希望の観光客です」

マオ「どーも、あたしは マオ! キャプテンしてまっす!! これからぬしポケモンを呼び出すから後ろで見ててね!」

少年「おとなしくしてます」タイイクズワリ

少女「材料はこれです」

マオ「準備はいい?」

少女「はい!」ウナズキ

少年(何が始まるんだ?)
 ▼ 18 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 00:54:40 ID:FGyso2J6 [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マオ「くだいて!」バキッ

少女「すりつぶして!」ゴリゴリ

マオ「ドロドロにして!」ミキサァ

少年(普通に料理が始まった……というか、凄い匂い)

少女「……! 来る!」

ラランテス「しゃらんしゃらんら!」ガサッ

少年「でっか……」

少女「いくよ、ムーランド!」ボム

ムーランド「ばふっ!」
 ▼ 19 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 01:02:26 ID:FGyso2J6 [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 『試練』は、ムーランドが"でんじは"して"とっておき"連打で終わった。

少女「いえーい」ピスピース

少年(攻撃全部避けてた……やっぱりあのムーランド、対戦での強さも持ってるな)

マオ「ムーランドの素材のよさ引き出してたね! マオの試練をみごとにこなした、すごいあなたにこれを!」ソシナ

少女「ありがとうございます!」ウケトリ

少年(Zクリスタルと果物詰め合わせが同じバスケットに入ってる……)

マオ「次はライチさんの大試練! じゃ、またね! バイバイ!!」

少女「『試練』ありがとうございました!」

少年「……この料理、このあとどうするの?」ユビサシ

少女「あとは野となれ山となれ?」

少年「元から野山なんだよここ」
 ▼ 20 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 01:02:47 ID:FGyso2J6 [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「さて、遭難者くん」

少年(さっき酷評したことかな?)

少女「アローラ観光はこの後どういう予定?」

少年「アーカラ島はあらかた回ったから、ウラウラ島、ポニ島に行こうと思ってる。移動費とおこづかいを相談しつつだけどね」

少女「それなら、島巡りを一緒に巡ってみない?」

少年「え?」

少女「色々な道でのライドポケモンの乗り心地を教えて欲しいの。外の人にあれだけきちんとアドバイスをもらえる機会なんてないから」

少年「『覚えとくこと』って呟いて……あれって根に持ってたんじゃ」

少女「大事なアドバイスだったからメモしてたの。ほら、『覚えとくこと』の項目に書いてあるでしょ?」スマホミセー

少年(ほんとだ。五色で装飾までされてる……)

少年「勝手に誤解してたみたいだ。ごめん」ペコリ

ロトム「僕もごめんロト」ペコリ

少女「良いよ良いよ。考え事してると怖い顔になるっぽくてね」アハハ
 ▼ 21 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 01:03:08 ID:FGyso2J6 [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「ポケモンや人に出会うことで人生はおもしろくなる、こういうのも巡り合わせだから、ね?」

少年「って言われても、急な話だし……」

少女「ポケモンライド相乗りなら交通費も浮くよ」

少年「よろしく頼むよ」キリッ

ロトム「それが決め手になるの最悪にカッコ悪いロト」

少年「しょうがないだろ、貧乏学生なんだから」

 笑い合う旅人達の上空は夕日で橙に染まっていた。空の裾には月と夜の藍色が滲み始めている

 ブルベ学園生と島巡り挑戦者、不思議なコンビの旅路が始まった。
 ▼ 22 アママイコ@ヌードル 25/09/24 06:44:16 ID:J7fA3XkE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 23 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 19:41:57 ID:r93ArN4w [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
 昼空に、カブトが飛んでいた。

カブト「きゅぅ〜……」グルグルメ

ケララッパ「けらららっっぱ!!!」ブンブン

少年「カブトがケララッパに引っかかって飛んでる……」

少女「カブトは飛ぶかって言うけど、飛ぶんだね……」

ロトム「ケララッパも鬱陶しそうにしてるロト……」
 ▼ 24 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 19:42:18 ID:r93ArN4w [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
少年「ダブラン!」ボム

ダブラン「ららん……だぶ!?」ニドミ

ロトム「こんなバラエティ番組みたいな光景見たら二度見もするロトね」

少年「"サイコキネシス"で良い感じに外してあげて」

ダブラン「だぶっ!」サイキネ

カブト「きゅっ!?」フワリ

少年「はい、キャッチ」
 ▼ 25 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 19:42:40 ID:r93ArN4w [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
少女「この子、どこから来たんだろう?」

おじさん「おお、カブト! 無事だったか!」

少年「このカブトのトレーナーですか?」

おじさん「そうだ。お〜愛しのカブトよ。ごめんなぁ〜」ダキッ

カブト「きゅう!」ギュッ

少女「良かったね〜、カブト!」

おじさん「少し先に私の土地がある。カブトの恩人方にお茶でも淹れよう!」
 ▼ 26 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 19:43:00 ID:r93ArN4w [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
 おじさんに連れられた先の開けた土地には、トレーラーと建材が置いてあった。

 その周囲ではカセキポケモンが3体放し飼いにされている。

おじさん「ここはドリーーーム! 牧場! カセキの研究やっとるぞ」

少年「オムナイトにチゴラス、アーケンまで居る!」

おじさん「いつの日か、大昔のポケモンでここをいっぱいにしてやる!」

少年「カセキ再生マシンだ……これ、お高いんじゃ?」

おじさん「夢のためなら大金程度なんのその!」ガハハ
 ▼ 27 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 19:43:21 ID:r93ArN4w [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
少女「……ねえ。カセキ再生マシンってことはこの子たち、元は大昔のポケモンを蘇らせているんでしょう? ちょっと可哀想……」

おじさん「よく言われるよ。だが、ポケモンたちは可愛がっている。それに、これは男のロマンだ。カブト、オムナイト、チゴラス、アーケン、そしてアマルス。今はまだ五体だけだが、必ず実現してみせる!」

少年「アマルスも居るんですか?」

おじさん「おや? 放していたはずだが。あんな大きい子が目に入らないはず……」

 おじさんの目が周囲を見渡す。

 木の上のアーケン、じゃれあっているチゴラスとオムナイト、そして腕の中のカブト。

おじさん「一匹足りなぁぁあああい!!!」

ロトム「このおじさん逃し過ぎロトぉ!!!」
 ▼ 28 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 19:43:47 ID:r93ArN4w [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
少女「ムーランド! おじさんの臭いを嗅いで、アマルスを探して!」ボム

ムーランド「ぼふっ!」

少年「アマルスが戻ってくるかも、おじさんはここで待ってて!」

ロトム「僕のアドレスを教えるロト! アマルスが戻ってきたら連絡するロト!」

おじさん「わかった!」
 ▼ 29 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 19:44:17 ID:r93ArN4w [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
ムーランド「ぼふ……」フルフル

少女「……ダメね。ここの小川を通ったみたい。臭いが途切れているわ」

少年「困ったな。ダブラン、何か見つからないか?」

ダブラン「らんらん……」フルフル

少女「えっと、さっきからダブラン混乱してない? さっき見た場所を何度も見たと思えば、今はいきなり地面に這いつくばったりしてるけど」

少年「ダブランには二つ分の脳みそがある。別々のことを考えている分矛盾した行動もとるけど、発想が求められる場面だと優秀だ」

少女「心がふたつある……ってコト!?」

少年「合ってる」

ダブラン「だぶ! だぶ!」ブヨブヨ

少年「どうした? 地面を見ろって……ここ、霜が降りてる」

少女「アマルスの冷気! 行ってみましょう」
 ▼ 30 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 20:13:45 ID:9hXM2/Zo [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ムーランドに乗って、今度は臭いではなくアマルスの冷気の跡を辿っていく。

 横道に見えるカリキリの群れは、鈍い動きで冷気の道から避けていく。湧き水を見れば、ヌメラが縮こまって水に浸かっている。

少女「……ねえ」

少年「どうしたの?」

少女「ポケモンを元々いない場所に連れてくのってどうなんだろう。当のポケモンも、周りも辛くなるなら……」

少年「……」

 表情から、カセキのおじさんを責めているわけじゃないことはわかった。

 ポケモンライドは、人間の力では行けない場所に行くためにポケモンの力を借りるサービスだ。

 つまり、本来住んでいたのとは違う過酷な環境に、育てたポケモンを送り込むことでもある。

 育てたポケモンが、こんなふうに苦しむかもしれない、そう考えたんだろう。

少年「難しいよね……」

 そう、言うしかできなかった。
 ▼ 31 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 20:14:03 ID:9hXM2/Zo [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
???「さらなる輝きを得るには、ゼンリョクの冒険をしてこそだと思うよ。ライチさんはね」

少年「アマルス!」

少女「しまクイーン!」

ライチ「アローラ。盗み聞きみたいになってごめんね。このアマルスの知り合い? ライチさんが保護してたよ。暑さで弱ってたからね」

少年「トレーナーから逸れたので探していたんです。ロトム、おじさんに電話して知らせて!」

ロトム「こっちからアドレスは渡したけど、あっちのアドレスはもらってないロト」ムリムリ

少年「確かに」
 ▼ 32 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 20:14:20 ID:9hXM2/Zo [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
おじさん「おお、アマルス! 無事で良かった!」ダキッ

アマルス「ひゅぉおおん!」

ライチ「あんたのカセキ研究は応援しているよ。けどね。自分のポケモンの面倒は見なさい」

アマルス「ひゅおん……」

ライチ「少なくともライチさんのポケモンはみんな、あたしにとっては子どもみたいなものだよ」

おじさん「はい……」

ライチ「さてと。しまクイーンの仕事をしましょうか」

少女「はい! 大試練お願いしたいです!」

おじさん「かわいいポケモン達の恩人だ! 場所が必要ならここで戦うと良い!」

ライチ「ありがとう。アーカラ島3人のキャプテンの試練をこなし、挑むは しまクイーンライチの大試練! 準備は良い?」

少女「よろしくお願いします!」

ライチ「アーカラで一番ハードなポケモン勝負、ガツンといくよ! アノプス!」

少女「行きます! ラプラス!」
 ▼ 33 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 20:34:22 ID:9hXM2/Zo [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ラランテスを完封した少女も、この大試練には苦戦しているようだった。回避の指示が、少し甘い。

少女「ああっ、ムーランド!」

 アノプスとリリーラ、ルガルガンの猛攻で、既にラプラスもムーランドも倒れた。

 戦況は、互いに残り一体。

少女「お願いっ、バンバドロ!」

バンバドロ「ぶるるるっ!」

 バンバドロはやる気十分とばかりに地面を踏み鳴らしている。だけど、速度はどうしてもルガルガンが勝る。

ライチ「あたしらのゼンリョク、ぶつけるよ! ルガルガン、"ワールドエンドフォール"!」Zポーズ

ルガルガン「るっ……がぁぁあああ!」ガッツデセメロ!

少女(こんな大きな岩、避けられない……! どうする、どうすればいい!)

バンバドロ「ぶるっ!」

少女「……! わかった、耐えて! バンバドロ!」

バンバドロ「ぶるるるるっ!」

 Zパワーを帯びた巨石が、守りを固めたバンバドロに降りかかる。
 ▼ 34 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 20:34:51 ID:9hXM2/Zo [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ドリーム牧場に砕けた瓦礫が散乱する。少年とおじさんも、ダブランの"リフレクター"がなければ危なかったほど。

 直撃を喰らったバンバドロは――

少女「行けーーっ!」

 瓦礫を吹き飛ばして、渾身の"10まんばりき"がルガルガンを打ち据える。

 ルガルガンに、効果は抜群だ!

ルガルガン「」バタンキュー

少女「勝った……?」

ライチ「すてき、ね。戻って、ルガルガン」

少女「勝った! 勝ったよ! バンバドロ!」

バンバドロ「ぶるるっ……!」
 ▼ 35 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 20:35:08 ID:9hXM2/Zo [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
ライチ「迷いは吹っ切れた?」

少女「……いえ! 吹っ切れてないです!」

ライチ「そうかい。だけど、耐えるように指示できた。あれを忘れちゃだめだよ。競う相手は自分自身、共に歩むのはポケモンだからね」

少女「はい!」

ライチ「島巡りは逆のタイプとも関わる良い機会だ。あんたの冒険が、驚きや発見にあふれてることを願ってるよ」

少女「ありがとうございます!」

おじさん「4人とポケモンの分、ロズレイティーを淹れたよ。感謝と、勝利を祝ってな。ライチさん、音頭を」

ライチ「ありがとう。カップは持ったね? 大試練突破者に、乾杯!」

3人「「「乾杯!」」」

バンバドロ「ぶるるっ!」
 ▼ 36 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 20:35:52 ID:9hXM2/Zo [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
 4人でロズレイティーを飲みながら、色々なことを話した。

 アローラのこと、カセキのこと。ブルベ学園の話もした。

 ムーランドとラプラスも回復マシンで回復してから合流して、ポケモン同士で楽しんでいるようだった。

 月が出るまで話して、モーテルに泊まった。

少年「楽しかったな……」

 帰り際におじさんにもらった輝く石。月にかざすと、きらりと瞬いて見えた。
 ▼ 37 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/24 20:36:24 ID:9hXM2/Zo [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ライチの大試練を突破し、ラプラスに乗ってウラウラ島を目指す少年少女たち。

 その目の前には岩礁が広がっていた。

少女「これまでは、水上の岩はサメハダーの突進で壊すしかないとされていた……」

少年「すでに嫌な予感がするんだけど」

少女「だが、今は違う! 大試練を突破した私たちなら! ラプラス、"つのドリル"!」ギュッ!

ラプラス「らぁ!」ガガガガガ

少年「やめろぉ! ああぁあぁ、振動がっ、絶対無理だって!」

少女「いや、いける!」キッパリ

少年「その自信はどこから来るんだよぉぉおおお!」
 ▼ 38 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 01:45:45 ID:cOpYNaNY [1/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ――ウラウラビーチ

少年「はぁ、はぁ。酷い目にあった」

少女「船代も浮かせたいって言うからラプラスに乗せてあげたのに」

少年「あそこまで命の危機を感じるとは思わなかったんだよ。結局サメハダーに襲われまくったし」

少女「なら、ポニ島に行く時は船に乗れば良いんじゃないの?」ツーン

少年「ラプラスの乗り心地自体は良かったよ。だからその、そんな怒らないで……」

少女「怒ってないもん」プリプリ

少年「……御者代に、マラサダ奢るよ」

少女「本当!? 約束だからね!」
 ▼ 39 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 01:46:00 ID:cOpYNaNY [2/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「次の試練はホクラニ天文台! 星空が綺麗だから、いっちばん楽しみにしてたの!」

少年「……この看板見なよ」チョイチョイ

看板『島巡り挑戦者へ。"ぬしポケモンを呼び出すマシン"の故障により、試練は一時中止しています。先にアセロラの試練へ向かってください。マーマネより』

少女「………………」プルプル

少年「……ドンマイ」

少女「ま、まあ? カプの村の方が近いし? 何もダメージじゃないし?」イジッパリ

少年「……マラサダ、特大のにしよう」

少女「うん……ありがと……」ガックリ
 ▼ 40 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 01:46:26 ID:cOpYNaNY [3/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 アセロラの試練が行われるカプの村は、ウラウラビーチから13番道路を通ってすぐらしい。

少女「この13番道路はハイナ砂漠へ挑む前の休憩ポイント! カプの村はこの先だけど、準備はここでしていかないといけないの!」

少年「トレーラーやモーテルが並んでるね。マラサダ買ってく?」

少女「試練の後のご褒美で。じゃないとやってらんないよ」ガックシ

少年「オッケー。しかし、独特な雰囲気だね」

 周囲を見渡せば、トレーラーハウスや屋台が並んでいる。大道芸をやっている一座すらあった。

火吹き男「燃える刀の二刀流をご覧あれ!」ジャキン!

ブーバー「ぶぅ! ばぁ!」バーニング

少年・少女「「お〜」」パチパチ
 ▼ 41 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 01:48:15 ID:cOpYNaNY [4/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「最終的に口からも火を吹いて三刀流って言ってたのは見応えあったね」

少年「ブーバーの"ダブルチョップ"と殺陣やってたのはジャンルが変わってたと思う」

少女「おひねり投げちゃったもの」

少年「……そういえばさっき『試練』の後に泊まるモーテルを取ってたけど、カプの村って泊まれる場所ないの?」

少女「カプの村を見れば分かるわ」

少年「?」
 ▼ 42 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 03:20:46 ID:cOpYNaNY [5/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「ほら。ここがカプの村」

少年「こ……れは、」

 カプの村の看板が立っているが、そこは村と言うには荒れ果て過ぎていた。あるのはポケモンセンターと、崩れた建物の跡地だけ。

少女「元は太陽と月に近いラナキナマウンテンを守る村だったんだって。でも今はカプの罰を受けた跡。ここには住めないから代わりに13番道路が交通の要になってるみたい」

少年「な、なにがあったらこんなになるんだ……」

少女「ポケモンに配慮しない運営のスーパーマーケットがあったんだって。それがカプ・ブルルの怒りに触れた」

アセロラ「そのスーパーの跡地が試練の場所になってるんだよ!」

少女「キャプテン!」

アセロラ「『試練』挑戦者だよね。案内してあげる!」
 ▼ 43 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 03:21:02 ID:cOpYNaNY [6/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 試練はビーチ沿いに行った先で行われるらしい。

 海の方を見ると、かつては街だったであろう建造物が沈んでいるのが見える。

少年(カプの罰、自然の怒りってこんな力があるのか……)

アセロラ「はーい! 階段を 登れば アセロラの試練です! アセロラの試練はね、ここのぬしポケモンをポケファインダーで撮影することです!」

少女「ゴーストの試練だから……ムーランド、お願い!」ボム

ムーランド「ぼふっ!」

アセロラ「跡地に入ればアセロラの試練はじめ! だからね!」
 ▼ 44 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 03:21:53 ID:cOpYNaNY [7/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 その後、スーパー・メガやす跡地での試練は、ムーランドが"かぎわける"でアセロラと同じ匂いのミミッキュを見つけて終わった。

少年「ムーランド無双だったな……」

少女「物陰から撮れたから、驚かせずに済んだね」

アセロラ「あのコ、うまく撮影するの難しいのにすごい!」

少年「バトルなしで『試練』突破することあるんだ……」

アセロラ「こんなの初めてだよ! アセロラちゃん、おくちあんぐりだよ!」アングリ

ロトム「なんなら一枚しか撮ってないロトね」

少女「なら、試練突破の記念写真でも撮る?」

少年「良いね」

アセロラ「はーい! アセロラちゃんが撮ってあげる!」
 ▼ 45 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 03:24:30 ID:cOpYNaNY [8/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「みんな出てきて!」ボムボムボム

少年「ダブラン、写真撮影だよ」ボム

少女「ラプラスとバンバドロは階段の後ろに並んで〜!」

少年「ロトムとダブラン、ムーランドは僕らと一緒に前列に並んでもらう感じかな」

アセロラ「カジッチュがバンバドロの顔に被ってる、頭の上じゃなくて肩に乗って〜!」

カジッチュ「かじゅ!」

アセロラ「ロトムはちょっと真ん中寄って……うん! 撮るよ〜! 1足す1は〜?」

少年少女「「に〜!」」カシャ

アセロラ「撮れたよ! みんな楽しそうで良い写真!」

少女「ありがとう!」

少年「メッセで送って〜」

ロトム「受信したロト」ピコン

アセロラ(さっきの写真、後ろに影が写ってたような……って、そんなわけないか)
 ▼ 46 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 03:27:03 ID:cOpYNaNY [9/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 13番道路。『試練』を終えたあと、二手に分かれてホクラニ天文台に向かうための買い出しをしていた。

 待ち合わせのオアシスの前には、アローラダグトリオが2体、あるいは6体と言うべきなのか、ともかく居た。

Aダグトリオ1「ひーげげ」

Aダグトリオ2「ゲーヒヒ」

少年「……髪型、一匹ずつ違うんだ」ボソ

女性「ダグトリオのそれは髭ね」

少年「あ、失礼。見事だったのでつい。髭は毎日スタイリングしてるんですか?」

女性「自然にそのスタイルになるの。三つ子同士でも僅かに体の金属成分が違う影響なんだって。髭は高度なセンサーだから、感じ取れる情報も変わるのかもね」

少年「なるほど……」

女性「ハイナ砂漠があるからこそ、オアシスも大事にされる。タイプの相性があるから、いろんなポケモンが大事になる。ダグトリオも同じなのかも」

少年「……勉強になります」
 ▼ 47 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 03:27:33 ID:cOpYNaNY [10/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「お待たせ〜……何を話してたの?」

ダブラン「ダブ?」

少年「環境についてダグトリオから学んでた」

少女「なにそれ」ハテナ

少年「というか、ダブランがべったりですまないね。ほら、離れなさい」

ダブラン「ダブ、ダブ」イヤイヤ

少女「別に良いよ。かわいいもの。15番水道に出るまではぷにぷにさせてよ」ホオズリ

少年「君が良いなら良いけどさ……液体は口に入らないようにね。人体に有害だから」

少女「はーい」プニプニ

ダブラン「ダーブ♪」
 ▼ 48 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 05:10:29 ID:cOpYNaNY [11/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 13番道路で買ったマラサダを食べながらカプの村を通過し、15番水道に辿り着いた。

少年「剣戟の音が聞こえる」モグモグ

少女「ポケモン勝負でもしてるのかしら」パクパク

 キリキザンに指示する着流しの男と、カブトプス使いのエリートトレーナーらしき緑髪の女性が戦っていた。

エリトレ「カブトプス、"かわらわり"キープで切り合え」

着流し「キリキザン。"つじぎり"で機を見ろ」

 勝負は佳境と言ったところ。互いに消耗してきているようだが、決め手に欠けている様子に見える。

エリトレ「さあ、どうする! 勝負師・ギーマ!」

少年「えっ、ギーマ!?」ゴクン

少女「知ってる人?」ウマウマ

少年「一時期イッシュの四天王だった人だ……四天王を辞めてからアローラに来てたのか!」

ギーマ「まだ、こんな状況でも勝てるやりかた……あるはずだぜ。キリキザン」

キリキザン「じゃきぃ!」
 ▼ 49 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 05:11:02 ID:cOpYNaNY [12/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 それから展開された何合にも及ぶ斬り合い、その最中、唐突にエリートトレーナーの女性が沈黙を破った。

エリトレ「そこだ」

ギーマ「後の先を」

 極まったトレーナーとポケモンの間に、技名は必要ない。

 そう証明するかのようにカブトプスが一気呵成、速度を上げてキリキザンの懐に潜り込む。

 アッパーのように放たれた"かわらわり"を、しかしキリキザンは予期していたかのように紙一重で避け、両手の刃をハサミのようにしてカブトプスを挟んだ。

キリキザン「……ザン!」ハサミギロチン!

 いちげき ひっさつ!

エリトレ「……見事だ」

カブトプス「」バタリ
 ▼ 50 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 05:11:18 ID:cOpYNaNY [13/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少年「すごい……!」

少女「素晴らしい勝負だったわ!」パチパチ

ダブラン「ダブ! ララン!」フヨフヨ

ギーマ「おや、小さなギャラリーがいたようだ」

少年「あ、すみません。盗み見るつもりではなかったんですが、通りがかったもので」

エリトレ「構わない。お前達はこの水道を行くのか?」

少年「ええ。花園を通ってホクラニ岳を目指そうと思ってます」

ギーマ「ほう。ならば道を塞いだお詫びだ。私のサメハダーで向こう岸までお連れしよう」

少年「そんな、悪いです」

ギーマ「おせっかいさ。ライドを伝えるという今の私の役割でもある」
 ▼ 51 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 05:11:46 ID:cOpYNaNY [14/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エリトレ「こちらもカブトプスに同乗させよう。ライド資格はあるし、サメハダーに3人は荷重オーバーだろう。なによりこちらの方が"すいすい"で速い」

ギーマ「なるほど……では、勝負をしようか。それぞれお客を乗せて、先に対岸の砂浜へ着いた方が勝ちだ」

エリトレ「お嬢さん達が良ければ、カブトプスを回復してすぐにでも」

少女「カブトプス! 古代から生きる海のハンター! 一度乗ってみたかったです!」キラキラ

少年「ギーマさんとご一緒できるなら嬉しいですけど……良いんですか?」

ギーマ「決まりだな」

エリトレ「バトルでは負けたが、こちらは勝たせてもらおう」
 ▼ 52 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 05:12:06 ID:cOpYNaNY [15/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 カブトプスにエリートトレーナーの女性と少女が、サメハダーにはギーマと少年が乗って準備完了。

少年「では、ダブランが浮かせている岩が落ちたらスタートということで」

ギーマ「頼むよ」

エリトレ「よろしく」

ダブラン「ラン!」

少年「レディ、ゴー!」

 ダブランをボールに回収した瞬間、岩が落下し始める。

 少年が慌ててサメハダーに捕まってすぐ、岩が地面とぶつかって甲高い音を奏でた。

 その音と同時に、二匹のみずポケモンが飛沫を立てて泳ぎ出す。

少年(はっっっや……!)

 『水を得たさかなポケモン』という言葉があるが、みずポケモンは陸上と水上では出せる能力が大きく異なる。それこそ、みずポケモンだけが出場するうずまきカップやウォーターパラダイスといった大会が開かれるほど。

少女(手足を折りたたんで抵抗を減らしつつ、甲羅をくねらせて泳いでる。上に乗ってる私たちを振り落とさないように配慮してなお、この速度!)

 最初の直線のカーブ手前にある岩、それを両者共に"アクアブレイク"で最小限の減速で突破。

 レース序盤では、まだ差がつかない。
 ▼ 53 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 05:12:24 ID:cOpYNaNY [16/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 15番水道にはサーフ協会の本部が置かれる島がある。

 島と岩礁の配置が丁度うねるようなコースになっており、水上レースをするにはもってこいのコースでもあるためだ。

 その協会本部島の横のカーブ、そこに先んじて差し掛かったのはカブトプスだった。 

ギーマ「……あちらの方が速い、か」

少年「このサメハダー、"かそく"でしょう? 追い込みで捲れるのでは?」

ギーマ「たしかに、サメハダーは海水を噴射することで最高時速120キロまで出せる。しかし、それは直線の場合だ」

少年「このうねったコースじゃ"かそく"してもぶつかってしまう……! 負けちゃうじゃないですか!」

ギーマ「あらゆる勝負で自分から降りたことはないぜ。一つ、賭けてみよう」
 ▼ 54 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 05:13:03 ID:cOpYNaNY [17/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 カーブを抜けた先は島と岩礁の入り乱れる地帯。

 サメハダーは少し前を行くカブトプスとは違う進路を取った。

 その先にあるのは島に挟まれた大岩。ウラウラ島への移動でラプラスが砕いたものとは比較にならない大きさだ。

少年「こんな大きな岩どうするんです!?」

ギーマ「ポケモンとの新しい可能性に賭ける」

 ギーマが取り出した虹色の石と、サメハダーのライドギアに嵌め込まれた石が共鳴する。

 サメハダーは赤紫色の光殻に包まれた。それは更なる『シンカ』の光。

Mサメハダー「Sharrrrrrrk!!!」ガブッ

少年「メガ、シンカ……」

 "かみくだく"で大岩が砕かれた。メガシンカによって得た頑丈な顎のおかげだろう。

 メガサメハダーは少しスピードを落として、細やかなコントロールで小さな島や岩礁を掻い潜っていく。
 ▼ 55 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 05:14:55 ID:cOpYNaNY [18/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少年「博打が過ぎませんか!?」

ギーマ「少々運が絡むのも、また味なものだぜ」

少年「ここまでして勝ちを狙いにいくって……余興みたいな勝負でしょうに」

ギーマ「負けてすべてを失い……次に望むものも勝利。それが勝負師というものさ」

Mサメハダー「Shark!」

少年「……っ!」

 少年は知っていた。ギーマが四天王を追い落とされる決め手となった試合を。

 彼は僅差の敗北ですべてを失った。それでも勝利を望んでいる。

 あのとき負けた自分は、勝負を放り投げて逃げてきたのに。
 ▼ 56 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/26 05:15:18 ID:cOpYNaNY [19/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ギーマ「顔を上げてみろ、少年。どうやら僅差だ」

Mサメハダー「Shark! Shark! Shark!」

エリトレ「並んできたな。あとは直線勝負、頼むぞカブトプス!」

カブトプス「……!」

 最後の直線、並びかけてきた二匹は絞り出すように速度を上げていく。

 次第に近づいてくるビーチ。先にゴールしたのは――
 ▼ 57 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 02:25:54 ID:LAuAe4lk [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告






ギーマ「……負けた、か」

エリトレ「私たちの勝ちだ」

 カブトプス側、エリートトレーナーの勝利だった。

エリトレ「メガシンカで馬力を取ったか。だが代わりに"かそく"を失って最後の直線で捲れなかった」

ギーマ「その通りだ。今のわたしは無様な敗北者……それ以上でも以下でもない」

エリトレ「ポケモン勝負と水上レースで一勝一敗だな。決着はいずれ舞台の上で」

ギーマ「ああ。さらばだ」

 後腐れもなく去っていく二人の勝負師たち。

 その後ろ姿を、少年はじっと見つめていた。 

少女「あのカブトプス、立派な甲羅の子だと思ったら古代からの生き残りだって……どうしたの?」キョトン

少年「いや……勝負師ってああなんだなって」

少年(復学したら、あれ目指すことになるのかぁ)

 なにかしっくりこない少年であった。
 ▼ 58 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 02:26:38 ID:LAuAe4lk [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少年「…………」ウーン

カジッチュ「かじゅ!」ボム!

少年「いでっ」ゴツン

少女「綺麗な"ふいうち"だったわね」アハハ

少年「いま攻撃技打ってなかったんだけど!?」

ロトム「ポケセン前で立ち止まってないで早く入るロト。夕食にはミクルのポケモンフーズを所望するロト」

少年「ロトム、あれ高級品だからな。ガラルからの輸入品だからな。そんなホイホイ食べるもんじゃないからな」

ダブラン「ダブ! ラン!」ボム!

少年「自分も食べたい? 前食べて渋さに音を上げてただろ」

少女「そんなに渋い味なの? ちょっと気になるかも」

少年「……わかった。今日はミクルパーティだあ!」ヤケクソ

少女・ロトム「「わーい!」ロト!」

 騒ぎながらポケセンに入っていく一行。彼らを照らす太陽はまだまだ高い。



 ▼ 59 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 02:27:34 ID:LAuAe4lk [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ウラウラの花園に足を踏み入れた瞬間、その絶叫は聞こえた。

???「ああ、一体どうしたと言うんだい、オドリドリ!」

少年「……無視するわけにもいかないよね」

少女「進路ど真ん中だものね」

少年「……アローラ。どうしたんですか?」

???「アローラ。おいらはマリエシティで花屋を営んでいる者でね。ここには花を採りに来たんだ」

オドリドリ(ふらふら)「りぃど!」

少女「この島で"ふらふらスタイル"なんて珍しい。ウラウラのミツなら"めらめらスタイル"になるはずだけど」

花屋「それが問題でさ。実は、町内ダンス大会に出るにあたって、これまでとは違ったスタイルを開拓しようと思って来たんだ」

少年「オドリドリはミツ次第でフォルムチェンジ、"めざめるダンス"が大きく変化しますからね」

花屋「ポケモンの姿を変える花は揃えた。メレメレ、ポニの固有種、ソノオ産のグラシデアや、レンティルのクリスタフラワーなんて変わり種もツテを頼って取り寄せたんだ」

少年「クリスタフラワーは知らないけど、たぶん後半オドリドリ関係ないですよね」

花屋「だのに! こいつは"ふらふらスタイル"から姿を変えようともしないんだ! 理由を教えてくれよぉオドリドリぃ!」

オドリドリ「りぃ!」プイ
 ▼ 60 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 02:40:00 ID:LAuAe4lk [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 そうして一通り事情を聞いたところで、少女が一つの可能性を口にした。

少女「"ふらふらスタイル"以外に興味が湧かないんじゃない?」

花屋「だけど、踊ってみないことにはわからないじゃないか」

少女「オドリドリだって、慣れ親しんだ姿を捨ててチャレンジするのは怖いわ。それでも一緒にチャレンジしたいなら説得しないといけない。気持ちは行動にしないと伝わらないもの」

花屋「つまり、行動で別のスタイルの魅力をアピールすれば……!」

少女「オドリドリも興味を持つかも!」

少年「で、具体的にどうしようって?」

少女「それはね……」
 ▼ 61 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 02:40:19 ID:LAuAe4lk [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




少女(めらめら)「私たちが"めざめるダンス"を踊る!」

 ポケセンの運動場で、三人はめらめらスタイルをモチーフにした衣装でダンスを踊っていた。

花屋(めらめら)「うちのダンスチームの予備衣装、持ってきてて良かった!」

少女(めらめら)「火の粉が舞うくらい情熱的に踊るよ!」

少年(めらめら)「よく、そんなに、踊れるな……!」シドロモドロ

花屋(めらめら)「めらめらスタイルはリズム感が命! おいらの手拍子(パルマ)に合わせて踊って!」クラップクラップ

少年(めらめら)「こ、こうかな?」ステップステップ

花屋(めらめら)「そうそう! めらめらスタイルの魅力引き出せてるよ!」

少女(めらめら)「肝心のオドリドリは?」ワン!ツースリー

オドリドリ「りーりりー」ツーン

花屋「……ダメみたいだ」ヌギッ
 ▼ 62 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 02:41:12 ID:LAuAe4lk [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

少女(ぱちぱち)「元気なぱちぱちスタイル、黄色のチア衣装!」

花屋(ぱちぱち)「よし、溌剌と踊るぞ――ぶへっ、なんで邪魔するんだオドリドリ……」チーン

少年(ぱちぱち)「いや、そりゃおっさんの生足チア衣装なんてオドリドリも見たくな――ぐはっ」バタンキュー

 結局、ぱちぱちスタイルの実演は少女のソロパートになった。残念だが当然である。

 正直、一番似合っていた踊りだと思う少年だった。

少年(ぱちぱち)「というか、本番でもこれを着るつもりなら優勝はキツいと思うんですが」

花屋(ぱちぱち)「仲間にそう却下されたから、男性陣の分はお蔵入りの衣装だったんだ」

少年(ぱちぱち)「ああ良かった。この人にチームメイトがいて」

 ▼ 63 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 02:41:32 ID:LAuAe4lk [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

少女(まいまい)「最後は幽幻な雰囲気のまいまいスタイル、紫の舞妓衣装!」

少年(まいまい)「ゆったりとしてる分、細かい部分が難しい……!」

花屋(まいまい)「異界と繋がり、死者を呼び出す踊りなんだって。カントーに縁があるとも聞くよ」

少女(まいまい)「それで、3スタイルとも踊ってみたけど……」

オドリドリ「……」プイ

花屋(まいまい)「ダメかあ……」

 結局、どの踊りもオドリドリの琴線に触れなかったようだ。

 通りすがりの変人の琴線には触れたらしいが。

山男「踊り手を見たやまおとこは! 嬉しくて戦いたくなるのです!」

 ブーバーをカジッチュの"りゅうせいぐん"で倒すと、一踊りして去っていった。

 挙動は変だったけど、踊りは凄かった。

 それでもオドリドリはフォルムチェンジを拒絶したままだった。

少年(いや、山男スタイルになられても困るけどさ)

 ▼ 64 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 17:02:40 ID:mcbMJ.o6 [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

 ダンス大会用のプログラムに沿って"めらめら"、"ぱちぱち"、"まいまい"の3スタイルを踊ってみたが、

少年「ここまでやってダメなら、一回原因を考え直した方が早いんじゃないかな?」

少女(まいまい)「一理あるね」

花屋(まいまい)「うーん、とはいえ自分のことだと分からないな。第三者の観点から質問してもらえないか?」

少年「その前に衣装脱げよ」

 一旦着替えタイムが入った。少女とおっさんはそれぞれポケセンの更衣室へ向かう。

 すでに着替えていた少年は、運動場でオドリドリに向かい合う。

少年「なあ、オドリドリ」

オドリドリ「どり?」

少年「そんなに他のスタイルが嫌…いてぇ! 蹴るな!」

オドリドリ「りぃ!」ゲシゲシ
 ▼ 65 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 17:03:01 ID:mcbMJ.o6 [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

花屋「待たせたね」

少年「遅いですよ……」ボロッ

少女「うわぁ、傷だらけになってる……」

少年「蹴られた感じ、別のスタイルが嫌ってわけじゃないと思うんですよ

少女「初手土下座といい、やっぱりそういう……」

少年「違う。それで、オドリドリはふらふらスタイルに思い入れがあったりするのかって方を考えるべきかと」

花屋「思いつかないなぁ」

少年「じゃあ、うすもものミツが採れるアーカラ島に思い入れがあるとか」

花屋「確かに、出会ったのはアーカラ島だった。そう、アーカラの花園だ」

 ▼ 66 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 17:04:30 ID:mcbMJ.o6 [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

少女「アーカラに花園があったの?」

花屋「昔はあったのさ。開発の影響で、今は植え込みレベルしか残っちゃいないが」

少年「アーカラは観光客向けの開発が進んでますよね。ハノハノリゾートとかロイヤルアベニューとか」

花屋「あの頃のうすもも色の花畑! おいらは、あの景色に心を掴まれて花屋を始めたんだ!」

少女「オドリドリともそこで?」

花屋「そうだよ。うすももの花畑を舞台に踊っていたオドリドリ、その優雅さに魅せられて、気づいたらオドリドリに感想を2時間語っていたんだ」

少年「厄介オタクじゃないですか」

花屋「そこがオドリドリとの出会いだった。でも、もう愛想も尽きて来たのかもな。おいらもこんなおっさんになっちゃって……」

少年「……さっき言ってた花って、今は持ってますか?」

花屋「商売道具だから、ある程度の数はパソコン通信に圧縮してあるけど……」

少年「さっきまでのプログラムは、それこそ僕らみたいな素人でもできるような、誰がやっても変わらない踊りでした」

花屋「素人のダンス大会だからなぁ……」

少年「だから、あなたじゃないとできないプログラムにするんです」

花屋「……?」

 ▼ 67 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 17:05:35 ID:mcbMJ.o6 [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

 オドリドリの前で行われる、最終公演。

 運動場はロトムが上空から幕を下ろして、簡易的な舞台の形式になっている。

少年(めらめら)「さあ、幕開けだ」

 幕が上がると、少年はお辞儀をしてから、舞台裏から鳴る手拍子(パルマ)に合わせてステップを踏み始める。

 踊り自体は先ほどと変わらない。練習した甲斐はあって先ほどより動きは良いが、一番大きな差は踊りではない。

 違うのは舞台。

オドリドリ「りぃ……」

 舞台には、ウラウラの花園を思わせる真紅の花が、花畑のように配置されていた。

 ▼ 68 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 17:14:39 ID:mcbMJ.o6 [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

少年(めらめら)「はぁ、はぁ、ダブラン、頼む」グデー

 "めらめら"の音楽が終わると少年は舞台袖に退場する。

 そこから"ぱちぱち"の曲に切り替わる、数拍の空白に、

ダブラン「ララン!」

 ダブランが"サイコキネシス"で一気に花を入れ替える。

 今度はメレメレの花園を思わせる黄金の花畑が舞台。そこに少女が躍り出る。

少女(ぱちぱち)「いっくよー!」

 少女の舞は"めらめら"よりも速度を増したもの、曲調と相まってどんどん盛り上げるプログラムだ。

 ▼ 69 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 17:18:18 ID:mcbMJ.o6 [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

少女(ぱちぱち)「次だよ!」

 ハイテンポな"ぱちぱち"の後は、一転してゆったりとした"まいまい"の曲。

 ポニの花をロトムが幕の上から吊るすことでポニの花園を再現している。

花屋(まいまい)「ここまでが予定していたプログラム……!」

 "まいまい"の曲が終わった。オドリドリは「こんなものか」と言わんばかりの表情。

少年(めらめら)「だけど、ここで終わっちゃ片手落ちだ」

 予定にないはずのリズムがオドリドリの耳に入る。

オドリドリ「どり!?」

 流れたのはダンス大会用のプログラムにはない曲。だが、オドリドリはこの曲を知っていた。

 舞台は――

 ▼ 70 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 18:53:55 ID:k5E63MUs [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告

花屋「ああ。こんな美しさだったよ。アーカラの花園は」

 花屋の記憶から再現した、うすももの舞台。

 舞台には"ふらふら"スタイルの音楽が流れるだけで、誰も踊らない。まるで、誰かのために空けているかのように。

オドリドリ(ふらふら)「り、り、りぃぃぃど!」

 空白の舞台に耐えきれずに、オドリドリが踊り始める。

 オドリドリが踊り始めると、早着替えをした花屋も"ふらふらスタイル"で参入した。

花屋(ふらふら)「ここがおいら達の原点だ。おいらが踊り始めたのも、あの日のダンスに目が覚めるような美しさを感じたからだった。踊ろう! オドリドリ!」

オドリドリ(ふらふら)「りぃ!」

 一人と一羽のペアダンスは、この日一番美しかった。

 ▼ 71 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 18:55:01 ID:k5E63MUs [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告





花屋「おいらは、日々を過ごす中で原点を忘れてたんだろうね。あの頃の自分が大事にしたかった花を忘れて、枝葉にばかり気にしてた」

オドリドリ(めらめら)「りぃ!」

少年「オドリドリも、トリに最高の"ふらふらスタイル"を踊るって約束したら納得しましたね」

 オドリドリが大事にしたかったのはふらふらスタイルか、それとも花屋との思い出か。それは他人が推し量ることではないだろう。

花屋「これも全部きみ達のおかげだ、ありがとう!」

少女「どういたしまして!」

少年「いえ、そんな大したことは……」

花屋「いいや。困っているおいらに声をかけてくれて、不得手な踊りをゼンリョクで踊って、オドリドリとのすれ違いを解消してくれたのはきみだ。きみにこそ、感謝したい」

少年「――――」

花屋「風貌からして、きみは観光客だろ? 地元への土産だ、アローラ人が先祖代々伝えてきたゼンリョクポーズを伝授しよう!」

少年「え、まだ踊るんですか」
 ▼ 72 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 18:55:31 ID:k5E63MUs [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告

花屋「まずはドラゴン! こうやって、肩で組んだ手を前に出し! 顎門を開くようにしてゼンリョクの決めポーズ!」

少年「こ、こうですか?」ガオー!

花屋「もっと、ドラゴンの獰猛さをイメージするんだ!」

少年「一番身近なドラゴンが可愛い寄りなんですけど」

カジッチュ「かじゅ!?」ガビーン

ロトム「諦めるロト……進化すればともかく、カジッチュにかっこいい路線は無理ロト……」ドンマイ

少女「知り合いの手持ちに他のドラゴンはいなかったの?」

少年「あー。部長が使ってたトラウマ級のドラゴンが居たなあ。二匹も」ドンヨリ

花屋「それをイメージするんだ!」

少年「わかりました……こうやって、こうの、ゼンリョク!」ドラゴン!

花屋「そう! 一気に迫力が出た! ZリングとZクリスタルさえあれば、アルティメットなバーンが打てるぐらい!」

 それからしばらく、熱のこもったゼンリョクポーズの指南は続いた。









 ▼ 73 砂廣ジュン◆puLAg.baMA 25/09/27 19:02:17 ID:k5E63MUs [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告





 少し前までの夢の常連は、リーグ部の部長だった。

 拭えない敗北と言い捨てるように投げかけられた言葉。トラウマだった。

 最近は、少し別の景色が増えた。

 麓から見上げた火山、エメラルドブルーの海、砂漠前のトレーラーハウスと人々、荘厳な雪山、海に沈んだ街、真紅の花園。

 どこも違う風が吹いていた。テラリウムドームの人工的に作った風よりも、ずっと爽やかに感じた。

 そして隣を見れば、そこには――――

少女「…………きて……起きて!」

少年「はっ」パッチリ

少女「もう着くよ」

少年「寝ちゃってたのか」

少女「あれだけ踊ったらねぇ」

少年「あの花屋、熱血だったなぁ」

少女「良い人だったじゃない。ホクラニ岳ふもとのバス停まで送ってくれて」

少年「確かに。僕らだけじゃ花園で迷いかねなかったよね……」

少女「天然の迷路って怖いわね……何度逸れかけたことか……」ゲンナリ

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