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特集ジムリーダー戦力外 能書きはいらない男ウルップ 【短編】

 ▼ 1 バウッツェル@ウブのみ 25/10/04 22:47:46 ID:14RQ7I2Q [1/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
とあるポケモン勝負用の貸しスペースにて汗を流す男の姿があった。相棒のクレベースと共に繰り出す技は貫禄がある。

「あれだよ、珍しくポケモンリーグから呼び出しの着信があってな、出る前にふとカレンダーを見たんだよ。その時一瞬もしかしてとはよぎったがまさかな、と思いながら事務所に行ったんだよ」

彼の名はウルップ。エイセツシティのジムリーダーを長く務めてきた人物である。

「来年からの契約はありません、なにか質問ありますか、とだけだよ。我ながらあわれだよ」

ジムリーダー達の目的はただ勝つことではない。ポケモンリーグに挑むトレーナー達の関門として立ちふさがる言わば試験官である。

だがそれだけの責任のある役どころでもあり、毎年戦績や評判、また本来の実力でおこなうジム外戦などで厳しく彼らの技量を審査し、毎年幾人かのジムリーダーやジムトレーナーには非情なる戦力外通告をおこなうことでリーグのレベル維持・向上がはかられる。

「でもあれだよ、これもチャンスだよ。もしかしたら他所に四天王待遇で拾われるかもしれないんだよ笑」

少しだけぎこちなく、わざとらしく笑うウルップだが、その言葉は事実可能性としてはある。裏を返せば戦力外通告を受けたジムリーダーやジムトレーナー達は他の地方のポケモンリーグとの契約が可能になる。
不要と判断された者であったとして、本来は高い実力を持つ者達。オファーが来ることは比較的珍しくはない。

「おれも黙ってオファーを待つって手もあるんだけどよ、性分に合わないんだよ。それに何よりポケモン勝負は楽しいんだよな」

彼が指す場は合同トライアウト。戦力外通告を受けたトレーナー達のアピールの場として用意された最後の機会。各地方からポケモンリーグ所属トレーナーとして、または他の活躍の場を求めて競い合う生き残りを賭けた挑戦の会場だ。
 ▼ 2 ピジョット@つららのプレート 25/10/04 22:51:59 ID:14RQ7I2Q [2/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
ウルップ「悪いなクレマン、お前さんをつき合わせて」

ウルップの対戦相手をしていたのはエイセツシティジムトレーナーのクレマン。
ジムリーダーが戦力外通告を受けた場合、所属のジムトレーナーは他のジムに転属される。彼も近く他の地方に異動となる予定だ。

クレマン「まさかウルップさんが切られるとは思っていなかったですよ、カロス地方一番の実力派ですしね」

カメラに彼は語ってくれた。

クレマン「こおりタイプってのは難しいんですよ。弱点は多いし、今ひとつになる攻撃は同じこおりタイプくらい。そのタイプのエキスパートで長年ジムリーダーをしているだけでも素晴らしいですね」

ウルップ「お前さん、まさかおれの悪口言ってるんじゃないだろうな笑」

ウルップは豪快に笑いながら彼をからかっていた。

元同僚の支援を受け、ウルップは運命の日に向けて準備を進めていく。
 ▼ 3 メガルカリオ@カプサイジのたね 25/10/04 22:57:21 ID:14RQ7I2Q [3/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
ウルップ「ただいまなんだよ」

かみさん「おかえりなさい」

ウルップはエイセツシティに自宅を建てていた。もし、他の地方に決まればどうするか考えないといけないだろう。

かみさん「あの日、珍しく暗い顔をしてあの巨体に見合わないくらい小さな歩幅で帰ってきましてね。もう話す前から(戦力外通告を受けたと)言ってるようなものでしたよ」

長年連れ添った妻はウルップの顔色だけで何でもお見通しらしい。

かみさん「普段からあれだよ、あれだよしか言わないものだから慣れましたよね(笑)。で、現役をまだ続けたいってのも相談前からわかってました。だからいつも通り好きに行ってきなさいと」

ウルップはエイセツシティジムリーダー時代から偶にジムを妻に任せて出かけることもあったという。彼女もまた高い実力をもつトレーナーであるらしい。

かみさん「もし他所の地方に決まったら自宅をどうするか…とかは今考えても仕方ないですよね。だってまだ無職ですから(笑)」

明るく豪快に笑い飛ばすその姿はウルップにどこか似ている。
 ▼ 4 ライチュウ@やさいパック 25/10/04 23:04:28 ID:14RQ7I2Q [4/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
合同トライアウトの近づいたある日、ウルップは我々をある場所へ誘った。エイセツシティから少し行った森を抜けるとウルップは合図をした。

ウルップ「ここだよ。お〜い!」

ウルップが大きな声を出すと、どこからともなくポケモン達が集まってきた。

ウルップ「ここはポケモンの村だよ。心無い連中によって傷つけられたポケモンや逃げてきたポケモンの居場所なんだよ」

プリン「ぷり〜♪」

メタモン「めた〜!」

ウルップはジムリーダー以外の顔としてポケモンの保護活動をおこなっていたようだ。
カロス地方のジムリーダーは本業をもつ者が多いが、彼は詳細不明であった。妻も無職扱いをしていたのでこの活動のみなのだろう。

ウルップ「あれだよ、どこにも決まらなかったらおれの肩書は村長にしてやろうかな笑」

優しい顔でポケモン達と触れ合う彼の人徳者ぶりが伝わる一幕だった。
 ▼ 5 タギングル@スパイスセット 25/10/04 23:10:31 ID:14RQ7I2Q [5/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
運命の日の朝

ウルップ「いってきますなんだよ」

妻に見送られ、ウルップは合同トライアウト会場へ旅立った。
トライアウトのルールはこうだ。

ポケモン1体のみを使用するシングルバトルを3試合おこなう。また、時間制限付きである。

スムーズな進行を目的とする他、道具の制限が特にないジム公式戦において不向きな戦法を切り捨てる目的もあるらしい。

ウルップ「たとえばどくどくを打たせて粘るって戦術があるが、どくけしなんて100円だからな。ジム戦ってのはそういう適正もあるんだよ」

集まったトレーナーは40人弱。ほとんど全員が元ジムトレーナーだ。ジムリーダーであるウルップはいやでも目立つ。

ウルップ「3試合の使い方は決めているんだよ。丁度おれの相棒は3匹。全員に出番をやる」

彼はニヤリとした後、フィールドに向かった。
一戦目の相手は元タマムシジムのジムトレーナー、ナツキ。
 ▼ 6 メガサメハダー@ロトムじてんしゃ 25/10/04 23:16:23 ID:14RQ7I2Q [6/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
ナツキ「パラセクト!」

ウルップ「ユキノオー!行くんだよ!」

相性ではやや有利に見えるが、このトライアウトの特性上勝ち負けだけが評価ではない。
交換不可の一対一のため苦手タイプにどう立ち回るかなど内容も注目される。一般的には結果が全てのポケモン勝負では、かなり特殊な状況とも言えるだろう。

ウルップ「ユキノオー、れいとうビームだよ!」

れいとうビームはエイセツジムで彼に勝利しジムリーダーへわざマシンをプレゼントするというウルップお気に入りのワザ。
命中率100パーセント!であり確実に有利なポケモン相手に勝利を狙う。しかし、彼女のパラセクトはその一撃を耐えた。この舞台に向け、こちらも調整が万全なのだろう。

ナツキ「シザークロス!」

返しの一撃はユキノオーに大きなダメージを与えるが、そこはジムリーダーのポケモン。こちらも踏みとどまった。そのままウルップはこおりのつぶてを指示し、勝利を手にした。

ウルップ「あれだよ、一つ取れて安心だよ」

ウルップは笑顔を見せた。そのまま次の試合、元フスベジムのジムトレーナーのトモヒコにもフリージオで危なげなく勝利し、ジムリーダーの威厳を見せつけた。

ウルップ「あれだよ、よく強いジムリーダーって言われるヤツの所のトレーナーだからヒヤヒヤしたんだよ」
 ▼ 7 ソルガレオ@ポロックキット 25/10/04 23:27:45 ID:Nq1gBR2U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 8 ウガツホムラ@きのはこ 25/10/04 23:33:56 ID:14RQ7I2Q [7/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
客席では妻がその姿を見つめる。

かみさん「ジムリーダーなんだからこれくらいじゃ評価のうちに入らないでしょ。次も勝たないといけませんね」

3番目の相手は元ミオジムのジムトレーナータクミである。
ミオジムは、はがねタイプのジム。ウルップにはかなり厳しい戦いになるだろう。

ウルップ「クレベース!」

タクミ「ハッサム!」

両者が繰り出したポケモンが対峙する。

タクミ「メタルクロー!」

ウルップ「正面から受け止めるんだよ!」

こおりタイプが苦手なはがねの技。しかし、クレベースは本当に弱点を突かれたとは思えないほど平然としている。

ウルップ「あれだよ、クレベースに物理攻撃は通用しないよ」

まさに山のようにどっしりとそびえ立つクレベース。その後も複数回の攻撃を耐えてみせた。結果としてクレベース側の有効打のなさで惜敗はしたが、光るものが確かにあっただろう。
 ▼ 9 ダーテング@クオのみ 25/10/04 23:36:44 ID:14RQ7I2Q [8/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
合同トライアウト後、契約に興味をもった所がある場合、通常7日以内に本人へ連絡がある。7日をこえると契約は無いと考えていいだろう。

ウルップ「まあゆっくり待つんだよ、慌てたって……。!!」

トライアウトの翌日、早速ウルップの電話が鳴った。

ウルップ「はい、こちらウルップ。…ああ、なんだよ」

電話口『ウルップさん、オファーあった?』

ウルップ「まだ昨日トライアウト行ったばっかりなんだよ!」

電話口『あはは、そっか!でもきっとウルップさんならオファーあるよ!』

ウルップ「……ったく!」

━どこからの電話でした?━

ウルップ「ああ、あれだよ。カロスのジムリーダーのコルニだったよ。おれを心配してくれるのはいいけど紛らわしいんだよ」

その日は電話が鳴ることはなかった。
 ▼ 10 モスノウ@クリームチーズ 25/10/04 23:40:45 ID:14RQ7I2Q [9/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
翌日、ポケモンの村でポケモン達の世話をしていると、再びウルップの電話が鳴った。

ウルップ「はい、こちらウルップ。………。はい。……はい。……検討します」

━どこからの電話でしたか?━

ウルップ「ガラル地方のマイナージムだよ。半分はコーチで来てほしいと」

ガラル地方のジムは他の地方とはかなり異なる特殊なものだ。成績次第で入れ替えもある上、興行要素も強くリーグの運営も根幹から違う。
リーグに雇用されて配属されるのではなく、セミプロ達が競い合う構図に近い。中には畳まれていくマイナージムもあるらしい。

ウルップ「あれだよな、半分とはいっていたが実際は8割、いや10割コーチとしてだろうな。若い芽を育てる間ジムを持たせてくれってことだろう」

ウルップの表情は険しかった。あくまで現役としてこだわりたいのだろう。
 ▼ 11 アルクジラ@はがねのジュエル 25/10/04 23:47:03 ID:14RQ7I2Q [10/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
数日後

ウルップ「元ライモンジムにいたジムトレーナーの子がタマムシジムに決まったらしい。エキスパートタイプが違うのにたいしたもんだよ。おれと当たったトレーナーは元タマムシの人だったよな、捨てるも拾うもあるもんだよな」

新聞を見ながら我々と話していたその時、ウルップの電話が鳴る。

ウルップ「はい、こちらウルップ。はい、…はい。そうですか…少し時間をください」

ウルップは電話を切ると腕を組み考え始める。

━電話は?━

ウルップ「シルフカンパニーの実業団だよ」

合同トライアウトでは近年、社会人チームからの誘いも積極的に行われている。シルフカンパニーは説明不要の大企業だ。ウルップの悩みはそこにある。

ウルップ「あれだよな、実業団ってことはあの大企業の社員になれるわけだよな?かみさんにも楽させられるかも知れないんだよ」

その晩、ウルップは妻へシルフカンパニーのオファーについて話した。彼は喜んでもらえると想像していたのだろう。しかし…

かみさん「本当に、本当にあんたはそれがしたいの?私に楽させられるとかそういう考えじゃないの?」

ウルップ「……」

ウルップはそれ以上の言葉は出なかった。

かみさん「まだ7日経ってないしマイナーでほぼコーチとはいえ現場の誘いもあるんでしょ?後悔無いように選んでくれたら私はいいから。今更もう一個迷惑かけても変わらないでしょ」

ウルップ「……」

ウルップは黙って自室に戻った。

かみさん「シルフカンパニー実業団とマイナージムならあの人なら絶対マイナージムを選ぶと思いますよ。もし思いを我慢して実業団を選んだとしてもそれで心残りなら残りの人生目も当てられない」
 ▼ 12 クルマユ@つりざお 25/10/04 23:54:15 ID:14RQ7I2Q [11/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
トライアウトから7日目、実質の最終日だ。
ウルップは電話を握りしめ目を閉じて祈りを捧げるかのように静かに待つ。その時だった。

ウルップ「電話だよ!」

おそらく最後のオファーとなる電話に、ウルップは深く息を吸い込んでから出た。

ウルップ「はい、こちらウルップ。…はい、…はい、……前向きに検討します」

━どちらから?━

ウルップ「シンオウリーグだよ。キッサキシティジムのジムトレーナーで来てくれないかってオファーだよ」

ジムリーダーでは無かったが、待望のリーグからのオファー。彼は手で顔を覆いふうー、と大きく息を吐く。

ウルップ「少し真剣に考えるんだよ」

それだけ言うとウルップはそのまま自室に入っていった。

ウルップにやってきたオファーは3つ。ガラル地方マイナージムのジムリーダー兼任コーチ、シルフカンパニー実業団、シンオウ地方はキッサキシティのジムトレーナー。

ウルップが出した結論とは!?
 ▼ 13 エレキッド@なまいきミント 25/10/04 23:59:26 ID:14RQ7I2Q [12/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
某日、ウルップは空港にいた。妻がウルップに声をかける。

かみさん「あんたをサポートする私がいない上にジムリーダーは若い女の子なんでしょ?ただでさえこんなおじさんなんだから嫌われないようにね」

ウルップ「大丈夫だよ、おれはイケメンなんだよ笑。あれだよ、向こうで安定したら家を建てるから来てほしいんだよ」

妻に別れを告げ搭乗口に向かうウルップ。彼が選んだのはシンオウのジムトレーナーだった。やはり彼はポケモンリーグに関わりたい気持ちが強かった。

ウルップ「またイチから出直しなんだよ。実績が認められたらジムリーダーや四天王も夢じゃないんだよ」

ウルップは我々と初めて会ったあの日のように笑っているが、そこにぎこちなさは一切ない、さわやかな心からの笑みを浮かべていた。

ウルップ「もしまた上手く行かなくてクビになったらチャレンジャーとしてシンオウチャンピオンに挑戦してやるんだよ。人生楽しんだもん」

その後、ベテラントレーナーのウルップは無事にキッサキシティジムのトレーナーとして配属が決まった。

毎年、新たに華々しくデビューする者たちがいれば、業界を去る者もいる。始まりがあればいつか終わりの日を迎える。
人生はポケモントレーナーとしてだけではなく様々な選択肢がある。なるだけ長く続けるも、異なる次の道を模索するも本人次第だ。次のステージであらゆる道をゆく全てのトレーナー、全ての人に幸あれ。

終結
 ▼ 14 シルシュルー@ハーブソーセージ 25/10/05 00:05:09 ID:gtokU3AA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙だよ
 ▼ 15 パルシェン@メガバングル 25/10/05 02:31:32 ID:kW3kOFw. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あれだよ、よかったんだよ
 ▼ 16 コソクムシ@カゴのみ 25/10/06 07:30:43 ID:CPOcuI7A NGネーム登録 NGID登録 報告
ジムリーダーにも解雇ってあるんだな
ガラルならともかく
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