▼  |  全表示65   | <<    前    | 次100 >> |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |   ▼   
                  スレ一覧                  
SS

【小説っぽい】花と星の賭け【SS】

 ▼ 1 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 15:49:12 ID:96994mR2 [1/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈コルル〉


 今日は恐らく、私が生きていく中で最も重要な、将来を左右する日となるだろう。

 私の双子であるコロロがプロポーズを行う日だ。

 双子。私達は一卵性双生児のエネコロロだ。生まれた順にコロロとコルル。
 ▼ 2 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 15:50:09 ID:96994mR2 [2/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 私は、これから婿となるであろうアブソル君の住処へ足を運ぶ。

間違えないよう、しっかりと確認し、花の形を模した手製のアクセサリを着ける。

これを間違えると今日の計画の全てが台無しとなるかもしれない。
 ▼ 3 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 15:50:37 ID:96994mR2 [3/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 私と、プロポーズするコロロ。双子なだけありよく似ている。だから、識別が出来るように普段コロロは花の、私は星のアクセサリを着けている。

 アブソル君の住処に着いた。

 中では、こちらが浮き足立っているのとは対照的に、従容したアブソル君が私を待っていた。
 ▼ 4 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 15:51:15 ID:96994mR2 [4/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ソル君、と名前を呼んでみる。

 彼の名を口にした途端、背中に寒気が走るような快感が襲い、体が火照る。私は、興奮している。

「ソル君余裕だね〜。そんなに冷めてると、花嫁の気も変わっちゃうかもよ」

 自身のからかいの口調に満足する。

完璧だ。これ以上にない程。

 アブソル君は此方を一瞥し、一瞬真顔になり、そして溜息をつき言った。

「……冗談でしょ」
 ▼ 5 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 15:51:46 ID:96994mR2 [5/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈コロロ〉

 そろそろコルルがソル君を連れて来る頃だろう。心臓が早鐘を打つ。

 ポケモンの一生はヒトとは違いイベントが少ない。

精々、誕生。ペアリング。出産。そして、死。これ位だ。

その4大イベントの1つを私が迎えようとしているのだ。妹でなく、私が。
 ▼ 6 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 15:52:17 ID:96994mR2 [6/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 コルルがソル君を連れて来る迄の間、私の緊張はまさに今、最高潮だ。絶対に落ち度がないよう、気構える。

 遠くに2つの影が見えた。私は駆け寄り、コルルに抱きつく。


「『コロロ』」


 コルルも応え、『私の名』を呼び、互いに抱き合う。


「『コルル』」
 ▼ 7 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 15:52:49 ID:96994mR2 [7/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈コルル〉


 少し時間を遡り、数日前。姉であるコロロが尋ねた。

「ホントにいいの ? 初めてのプロポーズなんでしょ」

 だが、もう迷いは無い。私は決めたのだ。

「うん。お願い。……これは賭けなの。もしアブソル君が負けたら、私はアブソル君へのプロポーズは取り止める」
 ▼ 8 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 15:53:41 ID:96994mR2 [8/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 私が自分の番となるオスに求めるのは、ただ1つ。

 私達の事、私とコロロの見分けがつく事。

 どんなに素敵なオスでも、私とコロロを間違えたらそれだけで興醒めだ。

 だから、賭けをする。

内容は至ってシンプル。プロポーズをする日、私とコロロが入れ替わり、それをアブソル君が見抜けるかどうか。

 見抜けなかったら、私達の勝ち。アブソル君とは別れる。

見抜かれたら、私達の負け。番となって一緒に暮らす。
 ▼ 9 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 15:54:29 ID:96994mR2 [9/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 見分けがつくかどうか。側から見ると些細なそれは、私にとって1番大きい。

それ程、私はコロロにコンプレックスを抱えている。

「だから、宜しくね。コロロ」

「任せなさい。でも、ソル君も可哀想ね〜。こんなの勝ち目無いでしょう」

 我ながらそう思う。本当にアブソル君が気の毒だ。

でも私は、決してアブソル君が嫌いなわけでは無い。

私にとって、それが全てなのだ。
 ▼ 10 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 15:54:55 ID:96994mR2 [10/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 私とコロロを間違えるのを聞いてしまったら、多分もう駄目。ずっとその事が頭に残り、耐えきれなくなるだろう。

それ程、私の中でコロロという存在は大きい。
 ▼ 11 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 15:55:50 ID:96994mR2 [11/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈コロロ〉


 プロポーズの手順は、こうだ。

 まず始め、コルルがソル君を連れて来る。そして、昼食。最後に誓いのキス。

 コルルはヒトの結婚式に憧れており、今回の企画もコルルの希望だ。

求愛はプロポーズ、ペアリングも結婚と表現する。

勿論、私にとっても結婚式は憧れの対象だ。

私とコルル、趣味趣向が似通っている。違うのは、性格と、オスに対しての趣向位か。

だからこそ、申し訳ない。コルルがどれ程憧れているか知っているから。

こんな、負けの無い無碍な賭けで、コルルの代わりにプロポーズをするなんて。
 ▼ 12 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 15:58:09 ID:96994mR2 [12/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 式と言っても、ヒトのそれとは明らかに質が下回る。

観客も余興も、何も無い。そんな、申し訳程度のもの。それでも、私達の夢なのだ。

 そろそろ昼食の時間だ。

 絢爛豪華とはいかないものの豪勢に木の実が、石の台に乗せられる。
 ▼ 13 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 15:59:00 ID:96994mR2 [13/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 私とソル君が並んで座り、コルルは向かいに座った。

 私は少し俯いて、照れ、恥じらいながらも楽しくて仕方ない、そんな様子を作り出す。

 そしてそれをコルルが指摘する。「ホラ、駄目でしょ」

 あぁ、完璧だ。

思わず戦慄してしまいそうになる。誰も、私達を見抜けない。

もし仮に、ここに両親が居ても、それは無理だろう。

だって今、私はどこまでもコルルで、コルルはどこまでも私だ。
 ▼ 14 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 15:59:30 ID:96994mR2 [14/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 少し引っ込み思案なコルルが、明るく朗らかに。逆に私は、少し、この舞台に馴染めず、照れが残るように。

 それも演技では無い。素の状態だ。ある種、自己暗示の様な、コルルを背後から見て、操作している。そんな感じ。

 悪く思わないでソル君。あなたは勝てない。けれども、それはあなたが悪いんじゃ無いんだから。
 ▼ 15 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 16:00:07 ID:96994mR2 [15/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈コルル〉


 コロロになりたい。

 何度そう思った事だろう。

 幼い頃から、私達は瓜二つだった。でも、中身は違う。

 私は1匹で綺麗な花を探したり、夜、星を見る。そんな事が好きな、内気で暗い子供だった。

 一方コロロは、男の子に混じって外を走り回る、勝気で明るい、そんな子供。
 ▼ 16 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 16:00:47 ID:96994mR2 [16/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 生まれた順で上下が決まるなんて馬鹿げてる。

でも、私よりも1日早く卵から孵ったコロロは紛れもなく姉だ。

 もし、私の方が早ければ、また違った道を歩いていたのかも知れない。

 私が1匹、角で花を見ていると、コロロは決まって私を友達の輪に入れる。

私が泣かされたら、コロロは相手に仕返しをする。

そんな『しっかりしたお姉ちゃん』。
 ▼ 17 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 16:01:13 ID:96994mR2 [17/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 私はその頃から、コロロに主導権を握られていた。いや、渡していたのかも知れない。

 『上下』を敏感に、無意識に感じ取った私は、より一層『妹』となり、コロロは一層『姉』となった。

 同じ顔でも、暗い私と明るいコロロでは与える印象が違う。私は不細工。コロロは可愛い。

 何をやっても姉より『下』。でも仕方ない。『妹』なのだから。そんな明るく前向きな諦め。
 ▼ 18 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 16:01:47 ID:96994mR2 [18/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 一度、こんな事があった。

 コロロに憧れ、少し毛並みを整え外を出歩く。

それは、私に少しだけ華やかで明るい道を歩く、当時の唯一の手段で、秘密の趣味でもだった。

今となっては馬鹿らしい。そこまで根深く卑屈に、私はコロロにコンプレックスを抱えていた。
 ▼ 19 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 16:02:19 ID:96994mR2 [19/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 その趣味に興じていた、ある日。1匹の、冴えなく、さして格好良くも無いオスが私に言ったのだ。

「好きです」

 決死の覚悟でしたであろう、手短で簡潔な告白。

そのオス、スカンプーはエネコだった私に、そう告白した。
 幼い子というのは残酷な程に正直だ。

同じ顔なら、暗い私よりも明るいコロロに好意は向けられ、私には残らない。寵児であるのはコロロだけ。
 ▼ 20 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 16:02:57 ID:96994mR2 [20/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 そんな中、彼は私に初めて好意を向けたオスだった。
「わかった」
 初めて好意を寄せてくれたオス。それだけで告白を受けるには充分だ。
 スカンプーは目を認め、そして私に軽く抱きつき、囁いた。

「ずっと好きだったんだ。……コロロ」

 あぁ、何となく分かってはいた。でも、私はその甘美に酔いしれる。

 キスをした。当時の私では信じられない大胆な行動だ。彼が唖然とした隙に言った。

「住処、行こうよ。…………続き、しましょう」

 きっと、その甘さをもっと享受し、陶酔したい。そんな思いだったのだろう。
 ▼ 21 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 16:03:31 ID:96994mR2 [21/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 住処で、彼は言った。

「本当にいいの ?」

 私は頷き「当然でしょう」と彼を誘惑する。

 滅茶苦茶にして欲しかった。コロロは恐らく、もう経験している。

コロロに憧憬してた。私も、コロロと同じになりたかった。
 ▼ 22 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 16:04:27 ID:96994mR2 [22/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 スカンプーが私に顔を近付けた時、住処である洞窟に、規則的な音が響いた。

すぐにテンポが速くなり、甲高い声が木霊する。コロロの声だ。

「あんた何やってんの !」

 スカンプーは蹴飛ばされ、床で、何が起きたのか、と茫然自失の様子だ。

「信じられない。サイテー」

 吐き捨てるコロロの侮蔑の顔は、私の方を向いた時には、すでに同情と心配に変貌を遂げていた。

「大丈夫 ? なんか変な事、されてない ?」

 迂闊だった。彼の住処なら、邪魔される事も無かったのに。
 ▼ 23 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 16:04:55 ID:96994mR2 [23/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 コロロはスカンプーを「さっさと出てけ !」と追い払い、その後も散々と文句を流していた。

「コロロはスカンプー、嫌いなの ?」

 思わず、口にした。コロロは答える。

「当然でしょう。あんなキモい奴。コロロも汚れたでしょ、水浴びてらっしゃい」

 言われるがままに水を浴び、そしてその日からスカンプーの姿を見なくなった。
 ▼ 24 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 16:05:17 ID:96994mR2 [24/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 それでも、彼は私の初恋で、その影響は今も受けている。事実、私が好きになるオスは決まって悪タイプだ。

 それ以降、コロロは私に「なめられないように」と毛並みを整わせ、そして区別が付くように、とアクセサリを作ってくれたのだ。花と星の。
 ▼ 25 ルカ◆Ibi/.BQaas 16/08/24 16:05:52 ID:96994mR2 [25/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 不可抗力ではあるが、私の秘密の趣味は公認の日常となった。

けれどもそれは、コロロになる事を封じられたとも言える。区別がついてしまったから。

 花と星。何故コロロがこの選択をしたのかは知らない。

だが、私達2匹をよく表している。そう思う。

 コロロは花。自ら咲き誇り視線を一手に集め、輝く花。

 私は星。他の光の反射でしか輝けない、星。

 明るいコロロと暗い私を象徴する、正に私達にぴったりな物だ。そう、思う。
  ▲  |  全表示65   | <<    前    | 次100 >> |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |  ▲      
                  スレ一覧                  
荒らしや削除されたレスには反応しないでください。
書込エラーが毎回起きる方はこちらからID発行申請をお願いします。(リンク先は初回訪問云々ありますがこの部分は無視して下さい)

. 書き込み前に、利用規約を確認して下さい。
レス番のリンクをクリックで返信が出来ます。
その他にも色々な機能があるので詳しくは、掲示板の機能を確認して下さい。
荒らしや煽りはスルーして下さい。荒らしに反応している人も荒らし同様対処します。




面白いスレはネタ投稿お願いします!
(消えた画像の復旧依頼は、問い合わせフォームからお願いします。)
スレ名とURLをコピー(クリックした時点でコピーされます。)
新着レス▼