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【SS】アシマリ「ポケモンサーカス団エクリプス!」

 ▼ 1 1◆J44kAZeDOM 16/09/24 21:29:45 ID:iVyHi1wg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







――太陽と月が交わる時、世界に滅びが訪れると言う。






 ▼ 255 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:38:14 ID:t1tIRUws [1/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤレユータン「みなさん、用意は出来ましたか?」

「「はいっ!」」

ヤレユータン「それでは、ソルガレオ様とルナアーラ様の祠を開きます」


そう言うと、ヤレユータンは、何もない中空へ向かって、呪文を唱え始めた。


太陽と月の使者を祀る精霊よ。

その封印を解き、汝の内へ、扉を開け。


呪文がつらつらと続き、それに伴い、その空間には、不自然なひずみが現れる。

それはどんどん大きくなり、サーカスの設備ごと、オイラたちを呑み込んだ。

気持ちが高ぶって行く。
 ▼ 256 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:38:59 ID:t1tIRUws [2/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「うわ、なんだこれ……」


その中は、今までいた世界とは、似ても似つかない、いわゆる異次元だった。

辺り360度、上下左右に星を散りばめ、不自然な程眩く煌めく月と太陽は、オイラたちを照らす。


エーフィ「ソルガレオ様、生贄のエーフィです」

ブラッキー「ルナアーラ様、生贄のブラッキーです」


2匹が、声をあげる。

そして、目を閉ざし、何やらぶつぶつ呟いた。

恐らく、この呪文により、2匹が現れるのであろう。

はたして、太陽と月は、一層輝きを増し、不気味に蠢いた。

地鳴りがする。オイラたちが今立っている場所を、地面と呼べるのかは定かではないけれど、その音は、確かに鳴っていた。
 ▼ 257 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:39:29 ID:t1tIRUws [3/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
咆哮。

激しい着地音。

緩やかに舞う羽音。


ソルガレオとルナアーラが、光臨した。
 ▼ 258 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:41:37 ID:t1tIRUws [4/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ソルガレオ「おー、なんだ? 生贄かと思ったら、なんか大勢いるぞ?」

ルナアーラ「懐かしい事よの! わらわは、久方ぶりに楽しみじゃぞ! またサーカスが見られるのじゃな?」

フーディン「……ソルガレオ様、ルナアーラ様。本来は、我が一族に伝わる、サーカス団エクリプスによるパフォーマンスこそが、あなた方のお力になったのですね。

       生贄などでは、決してない」


モクローは、正しい。

ルナアーラは、「また」と言った。

このサーカス団は、サーカス団エクリプスは、そもそもがこのために――ソルガレオとルナアーラに力を分け与えるために、創られた組織だったんだ。


ソルガレオ「その通りだ! もう忘れ去られたかと思ったよ! 前回のサーカスは、何百年前だったかな?」

ルナアーラ「さあ、もう忘れてしまったのう。わらわ、前回は、退屈じゃった」

ソルガレオ「ああ。今度は、楽しませてくれよな!」

フーディン「もちろんです!」
 ▼ 259 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:42:36 ID:t1tIRUws [5/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
大昔、エクリプスは、ソルガレオとルナアーラの力を引き出す事に失敗し、生贄を捧げざるを得なかった。

その責任を取って、エクリプスは、村から追放されたのではないか。

それから、生贄と言う事になっているけれど、本来は、オイラの提案した、サーカスで力を取り戻す、と言うのが正解なのではないか。

だからこそ、サーカス団エクリプスは、エクリプスなのではないか。

モクローは、全て正解だった。

けれど、それでも、モクローは満足しなかった。


モクロー『でも、それじゃ、僕は……完全な、道化だ。エーフィたちに生贄を強いた挙句、違うのが正解だなんて、これじゃ、ただのピエロだよ』


モクローのそんな嘆きは、ミリスの街にいる間中続いていた。

オイラは、モクローを、助けたい。エーフィとブラッキー、もちろん世界も、救いたいけど、何よりも、モクローを救いたかった。

ふう、とため息を吐く。

サーカスが、始まる。
 ▼ 260 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:43:20 ID:t1tIRUws [6/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モクロー「レディースアーンドジェントルメーン! ようこそ、サーカス団エクリプスへ!」


モクローの司会は、いつも通り、どこへ出しても恥ずかしくないレベルで始まり、進行して行く。


モクロー「では、初めにアシマリの登場です!」


その声に合わせ、オイラは飛び出した。

さあ、開演だ。世界を舞台にしたステージ。

思いっきり楽しもう!


アシマリ「どうもー!!」
 ▼ 261 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:44:34 ID:t1tIRUws [7/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「まずは、これを見てください! 玉乗りお手玉をご覧にいれましょう!」


まず、オイラは、乗れるぐらいの大きさのバルーンを地面に創り出す。

そして、投げられる程度のバルーンをいくつも創り、玉乗りをしながら軽やかにお手玉してみせる。

もちろん、水風船なのだ。割れないはずがない。

お手玉は、失敗に終わる。


アシマリ「おっと! そりゃあ、水で出来たバルーンが、割れないはずがないですよね……」

モクロー「アシマリっ?!」
 ▼ 262 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:45:04 ID:t1tIRUws [8/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
が、それすらも計算通り。


アシマリ「だけど、見てください! 割れた水は辺りに飛び散って……」


虹を掛ける。

エーフィの、太陽の光と合わさって、虹を描いた。

オイラは失敗した。けれど、失敗すら、プラスに変えられる。

モクロー以外、全員が知っていた、このプラン。

モクロー、失敗は、恥じゃない。

ピエロは、恥じゃない。

オイラは、ニッコリ笑って、続けた。


アシマリ「さて、次は、高く飛んでみましょう!」
 ▼ 263 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:45:45 ID:t1tIRUws [9/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
玉乗り用のバルーンを応用し、トランポリンの原理で高く飛び上がる。

空中で、もう1段バルーンを創り、それでもってさらに飛び上がった。

オイラは、高揚している。

世界中が、オイラにかかっている。

オイラに、世界の注目が集まっている。

気のせいでも、それは、オイラの中で、確かな事実となっていた。

オイラは楽しい。みんな、楽しい?

この高さから、「みずてっぽう」を繰り出し、雨を振らす。

太陽の光は、入れない。

虹の演出は、マンネリになる。

けれど、その雨が、散らした星と相まって、幻想的な光景を描き出した。

月の、控えめな光が、その煌びやかな光景を演出する。

ソルガレオとルナアーラの表情をチラリと見る。

反応はわからないけれど、まあ上々なのではないだろうか。


モクロー「以上、アシマリのパフォーマンスでした!」
 ▼ 264 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:46:07 ID:t1tIRUws [10/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オイラは舞台袖に引っ込み、開口一番言った。


アシマリ「楽しかった。仕事とかじゃなくて、1匹のポケモンとして、楽しめた」

ニャビー「うん。わかるよ。見ててわかった。……あんた、失敗は、笑いに変える物であって、成功にしたらそれはピエロじゃない」

アシマリ「うん。だけど……それでもいいじゃん。モクローに届くなら」


オイラたちは、ステージに目を移す。

舞台の上では、みんなが、精一杯にパフォーマンスを見せていた。

間違いなく、オイラが初めて見た時よりも、成長している。

なんだ、と思う。

練習すれば、普通に上手いじゃん。

オイラが言うのも筋違いかもしれないけど、だけど、思ってしまったのだから仕方ない。
 ▼ 265 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:46:32 ID:t1tIRUws [11/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャビー「そろそろあたしの番。行って来る」

アシマリ「頑張ってね」

ニャビー「ううん、頑張りはしない。

      あたしは、生きるだけ。

      あたしの生が、世界を救うのなら、それはおまけだよ。

      あたしは、生きるだけだから。特別な事は、何もない」

アシマリ「わかったわかった。ニャビー、もうお手上げだよ」


苦笑しながら、オイラはニャビーを送り出す。

ニャビーは、前だけを見据え、歩き始めた。
 ▼ 266 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:47:16 ID:t1tIRUws [12/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
照明が消える。

星が煌めき、ニャビーを控えめに照らした。

そんな中、不意に炎が現れる。

煌々とした明かりが、小さく、けれど力強く、その存在を主張する。

ブラッキーの「つきのひかり」が辺りを弱く照らした。

そこには赤と黒の体躯。

炎が消え、後には白くたゆたう煙が残った。
 ▼ 267 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:47:41 ID:t1tIRUws [13/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャビーは、階段を登った。

ふとソルガレオとルナアーラの方を見やると、彼らの顔は、期待に満ちている。

ニャビー、君なら行ける。

2匹のゼンリョクを、絶対に引き出せる。

そんなオイラの声なんてまるで聞こえないであろうニャビーは、そのまま空を舞った。

誰よりも高く、飛んだ。

くるりと周り、再びぶら下がり、炎の煌めきを見せ、かと思うとその火を消して自らの体で魅せる。

ああ、と思う。

これでこそ、ニャビーだ。

オイラとは違う道を行く、サーカスの天才。
 ▼ 268 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:48:15 ID:t1tIRUws [14/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「頑張れ、ニャビー」


気付けば、オイラはそう呟いていた。

叫びはしない。喧噪は、ニャビーのパフォーマンスに、ふさわしくないから。

けれど、口は止まらなかった。


アシマリ「頑張れ。頑張って」


ニャビーは、軽やかに空を舞う。

誰も知らない高みへ、ニャビーは軽々と辿り着く。

凄い事だけれど、ニャビーは、きっと、孤独なのだ。


アシマリ「……オイラ、少しでも、ニャビーと一緒にいたい。ニャビーも、楽にしてあげたい」


煌めく星の下、星よりも輝くパフォーマンスに、そんな事を呟く。


アシマリ「だから、ニャビーも、頑張って」
 ▼ 269 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:49:21 ID:t1tIRUws [15/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャビー「ふぅ、疲れた」


舞台から戻って来たニャビーは、そう呟く。

オイラも、それに応えて言った。


アシマリ「お疲れ様」

ニャビー「さすがに、プレッシャーヤバいわ。世界を賭けた空中ブランコなんて、初めて」

アシマリ「だね。だけど、相変わらず、凄かった。ううん、今までより、もっと凄かった」


少なくとも、オイラはそう感じた。

ニャビーは、笑顔を浮かべ、言った。


ニャビー「アシマリ」

アシマリ「うん?」

ニャビー「ありがとう」

アシマリ「どういたしまして」


オイラも、最高の笑顔で、言った。
 ▼ 270 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:49:55 ID:t1tIRUws [16/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モクロー「それでは御二方、お楽しみ頂けたでしょうか? これにて、サーカス団エクリプス、本日の公演を終了いたします! ご覧下さり、ありがとうございました!」


モクローがそう言うと、オイラたちはみな、揃って舞台上へ出て行った。

普段はこんな事をしたりしない。

けれど、世界がかかっている、と言う重みが、オイラたちの足を動かした。

今さらながらに、恐れが胸を襲う。

オイラから見ても今日のサーカスは、ハイレベルだったと思う。

ニャビーを始めとして、オイラ、みんな、そしてエーフィとブラッキーのライトワーク。モクローの司会。全てが噛み合い、高いクオリティを見せられただろう。

けれど、それが、ソルガレオとルナアーラに届くのか。

オイラたちのゼンリョクは、2匹の心を揺さぶれたのか。

オイラたちは、みな直立して、宣告を待つ。

ルナアーラが、その口を開いた。
 ▼ 271 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:50:35 ID:t1tIRUws [17/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルナアーラ「わらわ、久方ぶりに、感動したのじゃ! そなたらのサーカス、最高じゃ! のう、ソルガレオ」

ソルガレオ「ああ。こんな明るい気分になったの、いつ以来だろう!」

フーディン「それじゃあ……」

ソルガレオ「ああ。生贄など、いらない。笑顔は、楽しいと言う感情は、それだけで力を持つからな!」


生贄など、いらない。

その声を脳が把握して、それを言葉に変換し、理解するまでに数秒かかった。

快哉の声は、遅れてやって来る。


アシマリ「いぃぃいいいいやったぁぁぁ!

      やったよエーフィ、ブラッキー! オイラ、みんなを護れたんだ! オイラたちが、世界を救ったんだ!

      エーフィとブラッキーは、死ななくてもいいんだ!」
 ▼ 272 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:51:42 ID:t1tIRUws [18/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エーフィ「やったよアシマリ、ありがとう、本当に、ありがとう……」

ブラッキー「姉ちゃん、泣かないで」


エーフィの目から涙が滴り落ちる。

ブラッキーが宥めるも、それは止まらなかった。

そんな2匹をそのままに、ルナアーラがソルガレオに問い掛ける。


ルナアーラ「エクリプスは、いつかの?」

ソルガレオ「明後日だろう。さてルナアーラ、一仕事しようじゃないか!」

ルナアーラ「そうじゃの!」


そう言うと、2匹は、互いに見合わせ、1つ、吠えた。

それに呼応するかのように、ソルガレオの鬣(たてがみ)が太陽のように逆立って、ルナアーラの翼が、あたかも月のように真円を描く。
 ▼ 273 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:52:16 ID:t1tIRUws [19/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その姿のまま、ソルガレオは、口を開いた。


ソルガレオ「……みんな、ありがとう。生贄を取るのは、神だって辛いんだ。その悪しき風習を断ち切ってくれて、ありがとう」

フーディン「その御言葉、ありがたく頂戴します」

ルナアーラ「さて、皆、そろそろ帰らねばならぬ。ソルガレオ、やろうぞ!」

ソルガレオ「おうよ!」


2匹の神が、咆哮をあげる。

空気が震え、あまりの威圧感に思わず目を閉ざす。

目を開いた時、そこは、祠と呼ばれた森の中だった。
 ▼ 274 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:53:11 ID:t1tIRUws [20/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤレユータン「お帰りなさいませ! 首尾はどうでしたか?」

フーディン「大成功だ。ソルガレオたちは、本気を出してくださるそうだ」

ヤレユータン「そうですか、よかった……。これで、世界は救われるのですね、お師匠」

ヤレユータン師「ああ、そうじゃ」


その声に振り返ると、いつぞやのウルトラビーストと共に消えたヤレユータンがいた。


ヤレユータン「お師匠!」と、弟子のヤレユータンが叫ぶ。

ヤレユータン師「ああ。皆、よくやった。世界のバランスは保たれ、今こちらにいるウルトラビーストは向こうに送り返された。エクリプスの時も、もう来たりはせんよ。

         ワシは、ウルトラビーストが消えたので、戻って来られたのじゃ。あやつの力は強すぎて、ワシが消えたらあの空間を破壊しかねない程じゃったのでな。

         幸い、「さいはい」が効いたから、行動を縛る事は容易じゃったがの。

         して、お主、よくやった。祠を開き、生贄を中へ入れる。その事をこなせるのじゃから、ワシはもう引退してもよかろう」

ヤレユータン「お師匠……」
 ▼ 275 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:53:41 ID:t1tIRUws [21/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤレユータン師「ほっほっほっ! それでは、主ら、ミリスを代表して、ワシから礼を言わせてもらおう。

         世界を、生贄なしで護ってくださり、本当にありがとうございました」

フーディン「いえ、お礼を言われる必要はありません。これこそが、本来の姿なのですから」

ヤレユータン師「……そうじゃったのか」

フーディン「はい。ソルガレオたちのセリフからも、それは確実です」

ヤレユータン師「いや、じゃがそれでも、感謝の言葉は言うべきじゃろう。本当に、助かった。

         では、ヤレユータン、帰ろうかの」

ヤレユータン「はい! みなさん、恐らく今日は、宴会です。良ければ参加下さい!」


そう言って、2匹のヤレユータンは帰って行った。
 ▼ 276 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:54:28 ID:t1tIRUws [22/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
後に残されたオイラたちは、どっと疲れが噴き出して、みんな、へたり込んでしまう。

緊張から弛緩へ。

その時に失われるエネルギーと言うのは、本当に大きい。

さっきまで泣いていたエーフィも、今は達成感に満ちた顔をしながら、座り込んでいた。

ブラッキーも、エーフィの横で、シンクロするかのように、そっくり同じ表情をしていた。

ニャビーですら、ほっとため息を吐く。


アシマリ「つ、疲れたぁ。ホントに、終わったんだ……」

モクロー「だね。世界は、救われた。エーフィとブラッキーも無事。これも、全部、アシマリのお陰だよ」

アシマリ「違うよ! オイラたち、みんなのお手柄だって!」

モクロー「だけど……僕は、間違えた。エーフィたちを犠牲にして、世界を救おうとした。止めようと思えば止められたはずなのにっ! 僕は、止めなかった……」


オイラは、モクローを見詰める。

モクローは、本当に悔しそうに、毒を吐き出す。
 ▼ 277 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:55:03 ID:t1tIRUws [23/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モクロー「僕は、ただのピエロだ。間違えた挙句、誰も得しない結論で満足してしまった。苦しい事実だけが、必ずしも真実じゃないってのに! 可能性は、他にもあったのに!」

アシマリ「……ピエロで、何が悪いの? オイラは今日、ミスったよ?」


わざとなのだけれど、モクローには気付かれていないはず。

オイラの腕前は、そのぐらい成長していた。


アシマリ「でも、その失敗を、エーフィと成功に変えた。ねぇ、ピエロで、間違えて、何が悪いの? ピエロは、サーカスには必要不可欠な存在なんだよ」

モクロー「現実とサーカスは違うよ! 失敗して、もしかしたら、取返しの付かないとこまで行ったかもしれないんだっ!」

アシマリ「うん。だけどさ、モクローがエーフィたちをこっちに連れて来てくれなかったら、オイラは、何も出来なかった。

      そのまま世界の終わりを迎えてただけだよ。だから、モクローの失敗を、オイラが成功に変えないと、成功は出来なかった。

      失敗は、必要不可欠。みんなで、それを最大限使って、盛り上げる。それが、サーカスなんだよ。

      モクロー、君は、確かに世界を救った。これは事実。だって、オイラたちは……」


オイラは、ニコリと微笑んだ。
 ▼ 278 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:55:33 ID:t1tIRUws [24/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







アシマリ「ポケモンサーカス団エクリプス!」






 ▼ 279 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:55:53 ID:t1tIRUws [25/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「……なんだからさ。サーカスは、みんなで創り上げる物。誰かの失敗はみんなの失敗、誰かの成功はみんなの成功。みんなの成功は、誰かの成功なんだよ」

モクロー「アシマリ……」

アシマリ「わかったよね? モクローは、頭めっちゃいいし、だから、オイラが言ってる事ぐらい、わかってくれるよね?」

モクロー「アシマリ、ずっと、僕が苦しんでる事、気付いて……」

アシマリ「うん」


モクローの目に、涙が浮かぶ。

オイラは、それに気付かないフリをした。
 ▼ 280 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:56:39 ID:t1tIRUws [26/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モクロー「アシマリ」

アシマリ「ん?」


モクローは、その首を前に倒して、言った。


モクロー「……ありがとう」


オイラも、笑顔で応える。


アシマリ「どういたしまして!」
 ▼ 281 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:57:02 ID:t1tIRUws [27/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







6章 サーカス団のアシマリ 完






 ▼ 282 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:57:55 ID:t1tIRUws [28/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エピローグ


世界を救ったサーカス団、エクリプス。

その評判は、ミリスから瞬く間に広がり、イスカーでの黒い噂を払拭する程大きな力で、エクリプスへの人気を掻き立てた。

次から次へ、発売されたチケットは、それこそ飛ぶように売れ、なんと転売ヤーまで現れる始末。

1匹何枚まで、と制限を付けはしたが、それでも相当のプレミアチケットになるだろう。

そんな調子なのだ、会場の入りも推して知るべしである。


フーディン「うわぁ、エクリプス史上、最大級の入りだぜ。立ち見客もいるんだって?」

ニャビー「あたしが前いたとこですら、ここまではいなかった。凄いよ、これ。実体が伴ってないんじゃない?」

フーディン「失礼な」

ニャビー「まあ、真の評価ってのは、流行が過ぎ去った後で、それでも残ってくれたお客さんの数で決まるから。油断せず、みんな、精一杯のパフォーマンスを見せないと駄目」

フーディン「わかってるよそのぐらい」


頭を掻きながら、フーディンが答える。

あたしは、それを見ながら、苦笑した。
 ▼ 283 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:58:33 ID:t1tIRUws [29/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フーディン「お前、なんか変わったな」

ニャビー「え、そうですか?」

フーディン「ああ。上手く説明出来ないけど……なんか、変わった」

ニャビー「それは、誉め言葉として受け取っておきます。あたしが変わったら、パフォーマンスも変わる。いつも同じじゃ、飽きられるのもすぐですからね」

フーディン「サーカス、か。お前、凄いよ。もう、尊敬に値する」


そう言われても、あたしは、生まれた時からそうなのだ。

高く飛ぶ事、美しく飛ぶ事。これだけを求められた幼少期。

あたしには、初めから、空中ブランコしかなかった。


ニャビー「もし、あたしが変わったとするなら」


あたしは、暗転したステージに目を移す。
 ▼ 284 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:59:10 ID:t1tIRUws [30/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フーディン「どうかしたか?」


エーフィとブラッキーが、ステージを照らし出し、そこからモクローが現れる。


モクロー「レディースアーンドジェントルメーン! エクリプスのショーへようこそ!」


もし、あたしが変わったとするなら、ライバルの存在だろう。

あたしの絶対王者を脅かす存在。彼が、あたしを、サーカス団を、そして世界を救った。
 ▼ 285 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:59:36 ID:t1tIRUws [31/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ。

心の中で、そう呼び掛ける。

アシマリ、あたし、あなたに負けてる。心からの楽しみだけで勝てる物でもないけど、技術が同じ同士なら、心の差が最後の勝敗を決めるのも、また事実。

同じ技術、とまではさすがに行かない。けれど、アシマリは、それでも凄い。

感情を、そのまま伝えるパフォーマンス。これだけは、あたしも、どうやっても出来なかった。

それを持つ、あなたが羨ましかった。

アシマリ。

あなたは、勝敗には拘らないし、あたしももう、拘らない。

だから、これだけは言いたい。

アシマリ、頑張ろうね。


モクロー「それでは、アシマリの登場です!」
 ▼ 286 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:59:56 ID:t1tIRUws [32/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告






【SS】アシマリ「ポケモンサーカス団エクリプス!」 完






 ▼ 287 ヘッド@てんかいのふえ 16/09/30 23:00:23 ID:dHbDGDRE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙でしたー
 ▼ 288 ロリーム@かわらずのいし 16/09/30 23:00:42 ID:t1tIRUws [33/33] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
当SSはこれにて完結です
お読み下さりありがとうございました
質問等ありましたら、お気軽にどうぞ
 ▼ 289 ランセル@トライパス 16/09/30 23:02:03 ID:uAtHzQGo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

すごい面白かったよ
 ▼ 290 ギアナ@ロメのみ 16/09/30 23:04:26 ID:msCDfVuo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

伝説のポケモンがフレンドリーなのは恒例ね
 ▼ 291 ュゴン@こぶしのプレート 16/09/30 23:58:44 ID:89x2Kk.Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です〜
他にも作品があったら読みたいです!
 ▼ 292 マガル@ズリのみ 16/10/01 00:35:12 ID:TRUZ.VEc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 293 CSn9vcIqE6 16/10/06 18:10:09 ID:4jIK143E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙でしたー
めっちゃ面白かった!
 ▼ 294 コルピ@ぼうけんノート 16/10/06 18:56:29 ID:dcq.TOYs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アローラ御三家好きなのでありがたい…
とても面白かったです!お疲れ様でした!!
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