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SS

【SS】「私はロケット団で最も冷酷と呼ばれた男」

 ▼ 1 AYr1xkow/g 17/01/15 14:58:17 ID:THPX.20A [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……あー」

部屋に備え付けられたスピーカーから緊張している声が聞こえる。どうやらマイクテスト中のようだ。普段は笑うことのない男の口の端が、かすかにつり上がった。

「……我々は泣く子も黙るロケット団!」

声の主は高らかに続ける。

「組織の建て直しを進めた3年間の努力が実り今ここにロケット団の復活を宣言する!」

ああ、とうとうこの日が来たのだ。

「サカキさーん!……聞こえてますー?……ついにやりましたよー!ボスは今どこにいるんだろう……?ラジオを聞いてるかなあ………………」

ラジオから聞こえてくる声は、徐々に小さくなっていった。

確かあの構成員は、確かラムダの班の者だったか。男より年上だが、立場は下だ。一体なぜ彼がこの復活宣言をする役に抜擢されたのだろうか。アポロの考えることはよく分からない。

男はただ黙ってラジオ放送を聞いているだけ。

ボスは聞いてくれているのだろうか。この声は、ロケット団の声は届いているのだろうか。

ボス、私もあなたに伝えたい言葉があるのです。

だからサカキ様。どうか、戻ってきてください。
 ▼ 2 AYr1xkow/g 17/01/15 14:59:36 ID:THPX.20A [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
どこかでヤミカラスが鳴いている。

楽しげな声を上げる子供たちが自然公園を走り抜けていく。子供はもう帰る時間だ。

鮮やかな緑色の髪をした少年は、家に帰る子供たちとは反対方向に向かって黙々と進んでいた。

息が白い。季節は冬だが、少年の服装はしっかりと防寒できているとは到底言えないようなものだ。

この時期は日が落ちるのが早い。時刻はまだ夕方だと言うのに、空はすっかり暗くなってしまっている。ただ、少年にとってはその方が好都合だった。
 ▼ 3 AYr1xkow/g 17/01/15 15:00:34 ID:THPX.20A [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
反対方向から、一人の男が歩いてくるのが見える。

黒いコートに身を包み、帽子を目深にかぶった中年男性だ。

少年は男に気付かれないように口元を緩めると、少しだけ歩くスピードを速めた。

ドン。軽い衝撃が起こり、少年の肩と男の横腹の辺りがぶつかる。

「ごめん、おじさん」

少年は男の顔を見ずにそう言うと、足早に立ち去ろうとした。

「待て、小僧」
 ▼ 4 AYr1xkow/g 17/01/15 15:01:20 ID:THPX.20A [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
低い声が背後から聞こえる。あまりに低すぎて、初めは言葉に聞こえなかった。少年はその声の底冷えするような冷たさに思わず立ち止まった。

「手を見せなさい」

男はそう言いながら近づいてくる。少年は目を泳がせた。

「手を見せろと言っているんだ」

男が声を荒げた。少年は観念して振り返り、ポケットから手を出す。恐ろしすぎて誤魔化す気にもなれない。少年の手には、明らかに高価そうな革の財布が握られていた。

「あの一瞬で上手く抜き取ってみせたことに関しては、評価してやろう」

男はそう言いながら素早く少年の手から財布を取り上げた。
 ▼ 5 AYr1xkow/g 17/01/15 15:03:31 ID:THPX.20A [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「しかし明らかに怪しかった。私を見た瞬間に歩く速さが高くなっていたぞ。獲物を見つけて気分が高揚しているのを隠しきれていない。未熟な証拠だ」

「……」

少年は黙って地面をじっと睨みつけている。

「……どこに住んでいる?親御さんは?」

「……」

少年はなおも黙りこんだままだ。

「……まあいい。私も君のように弱い存在を甚振るほど落ちぶれてはいないさ」

男はそう言うと、帽子をかぶり直し、踵を返してそのまま立ち去っていった。少年は足音が聞こえなくなってから顔を上げた。そしてとっくに消えている男の通った道を睨みつける。その手に紙幣が数枚置かれていることに気づかないまま。
 ▼ 6 リープ@きのみプランター 17/01/24 08:57:11 ID:XDJa.lwc NGネーム登録 NGID登録 報告
感動した
 ▼ 7 AYr1xkow/g 17/01/25 22:40:38 ID:.REpGx.Q [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ほとんど散ってしまった桜の花びらが、ひらひらと目の前に落ちてきた。

昨日は雨だった。少年は濡れて岩にこびりついた一枚の花びらを爪先で剥がすのに躍起になっている。

ふと気配を感じて顔を上げると、一人の男がこちらへ歩いてくるのが見えた。その瞬間、ざわりと少年の体を怒りが駆け巡る。

やっと来た!ぼくはあいつをずっと待ち続けていた。
 ▼ 8 AYr1xkow/g 17/01/25 22:41:26 ID:.REpGx.Q [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「おいおっさん!」

少年の声は思ったよりも自然公園に響いた。幸いにも周りに少年と男の他に人はいなかったが、木に止まっていた二羽のポッポが驚いたようにバサバサと飛び去っていく。

男がゆっくりと顔を上げたのを見て、少年は息を呑んだ。やっぱりそうだ。半年ほど前に出会った、あの男に違いない。

少年は咄嗟に駆け出した。男は走り寄ってくる少年の姿を見て一瞬眉をぴくりと動かしたが、すぐに無表情に戻った。
 ▼ 9 AYr1xkow/g 17/01/25 22:42:10 ID:.REpGx.Q [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「おっさん!なんのつもりだよ!」

男の目の前に辿りついた少年が発した言葉はそれだった。

「……」

男は黙っている。少年は真っ赤な顔で叫び続けた。

「あんな風にぼくのこと怒ったくせに……怒ったくせに……なんでお金なんか置いていったんだよ!?ぼくのことをかわいそうとでも思ったのか!?そんなもの、いらない!!」

少年は鋭い目で男を睨みつけた。半年前、大金を握らされたあの時、嬉しくもなんともなかった。哀れに思われたのだ。何も知らない人間にそんな目で見られることほど屈辱なことはない。救いもしないくせに勝手に同情して、そんな自分がまるで聖人かのように振る舞う。そんな人間たちにはもう懲り懲りだ。彼らのせいでこんな惨めな思いをして生きているというのに。
 ▼ 10 速サメハダー◆uXlQ4JL2Hc 17/01/25 22:43:41 ID:bBNXUJKU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 11 ガジュペッタ@こううんのおこう 17/01/25 22:48:37 ID:dxQlsCd6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
紫煙
 ▼ 12 ルット@きあいのハチマキ 17/01/25 23:09:21 ID:c9vqfxp2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 13 AYr1xkow/g 17/01/27 00:20:07 ID:rMAL5p/Q [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「では、あの時渡した金を返してもらおうか」

男が発した言葉はそれだった。

「……」

少年は黙りこんだ。いくらプライドを守りたくとも、生活するためには金が必要だ。そしてあの時にはそれが少年の手の上にあった。答えはひとつしかない。

「……まあ、そうだろうな。予想していた通りだ」

少年の顔がまた赤くなった。色の変わった瞬間、ザッという音が聞こえたかと思うほどに素早く、苦しそうな赤。

「……ぼくは」

「それでいい」

少年が何を言いかけると、遮るように男は口を開いた。少年は驚いたように顔を上げる。男の顔は、帽子のつばの影に隠れてよく見えない。ただ、口元はうっすらと微笑んでいるように見えた。
 ▼ 14 AYr1xkow/g 17/01/27 00:22:38 ID:rMAL5p/Q [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「利用できるものはすべて利用する。それの何が悪いと言うのだ。私は君を評価しよう」

少年は訳が分からないと言いたげな表情をしている。

「それに、その感情も素晴らしい。期待通りだ。私への怒りだけで半年間生きてきたのだろう?略奪、そして殺戮の主な原動力は怒りだ。怒りとは強いエネルギーとなる」

少年は相変わらず男の言っていることはよく分からなかったが、とりあえず褒められているのだということは分かった。でも、一体なぜ褒められているのだろう。

「問題は君がそのエネルギーの使い方を知らないことだ。だが、それは些細な問題に過ぎない」

男がふと、手を差し出した。少年はその動きに一瞬びくりと体を震わせ、それから男の顔を見上げる。今度こそ、男の顔はよく見えた。やはり笑っている。
 ▼ 15 AYr1xkow/g 17/01/27 00:23:27 ID:rMAL5p/Q [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「私が教えてやろう。名はなんと言う?私はサカキ。今日から君のボスだ」
 ▼ 16 チャモ@ファイヤーメモリ 17/01/27 22:51:34 ID:glf7Z4mM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
これすき
 ▼ 17 17/01/28 01:58:37 ID:Objc02Gw NGネーム登録 NGID登録 報告
サカキもの流行っとるんか
 ▼ 18 AYr1xkow/g 17/01/29 12:51:12 ID:gK16B5sI [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……ランス」

少年、ランスは声を絞り出した。久しぶりに自分の名を口にしたような気がする。もう、誰からも呼ばれることはないと思っていた。

「ランス。そうか、ランスか。いい名だ」

「……」

そうだろうか?ランスはそう思った。名付けた本人たちは、ぼくを捨ててどこかへ行ってしまったというのに。

「……聞かないの?」

ランスが小さな声で言った。

「何をだ?」

サカキが聞き返す。ランスは不安げな表情でサカキを見上げた。

「その……なんでここにいるのかとか……」

ランスの声が徐々に小さくなっていく。たまに、嫌でも思い出してしまうのだ。何もかもを失った日のことを。
 ▼ 19 AYr1xkow/g 17/01/29 12:51:58 ID:gK16B5sI [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「なぜ自ら掘り起こす?私は過去を知ろうとは思わない。それに、我々はみんな君のような者たちの集まりだ。心配はいらない」

サカキの声は淡々としていた。あまり抑揚のない声で話す人だとは初めて会った時から思っていたが、今ではその声が不思議と温かくも感じるのだ。

「集まり?」

ランスが首を捻った。サカキはああ、と小さく呟いてから続ける。

「ランス、君には説明しなければならないことがたくさんあるな。まあ、それは後でいい。まずはこれだけ行っておこう。ロケット団へようこそ」

サカキはそう言って、にやりと不敵に笑ってみせた。

ロケット団?ロケット団って、なんだろう。ランスはサカキの顔をじっと見つめながら考えた。何も分からない。

それでも、ランスにはもう何もないのだ。帰る家もなければ優しく抱きしめてくれる親もいない。食糧を確保するだけの金もない。

足が寒かった。もう春になったとはいえ、夜は肌寒い日が続いている。この男についていけば、きっと暖かいところへと連れていってくれるに違いない。

ランスはサカキの目を見て、ゆっくりと頷いた。
 ▼ 20 びぐろす◆m4VTgVW/Po 17/01/29 16:44:29 ID:JMUyrSo. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援...!
 ▼ 21 ックラー@バンギラスナイト 17/01/29 16:46:11 ID:tI29mqBY NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 22 ーベム@ロックカプセル 17/01/29 17:22:18 ID:iUBSrE9Q NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
これは支援
 ▼ 23 AYr1xkow/g 17/01/30 01:02:01 ID:kf08ZhMM [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
二頭のゼブライカと一頭のシママが右往左往している。親子だろうか。三頭とも疲弊しきっているように見える。片方のゼブライカは体が大きい。群れを率いるボスだったのだということは想像に難くないが、その風格はすっかり失われていた。

やがて二頭のゼブライカは倒れた。どうやら瀕死状態のようだ。シママが困ったように二頭の周りを走り回っている。すると、それを見つけた三羽のバルジーナがどこからともなく飛んできて、まるでゼブライカたちの息が絶えるのを待ち構えるかのように上をぐるぐると旋回し始めた。シママは怯えて震えている。

よく見れば、すぐ近くに二頭のカエンジシが影に隠れてこちらをじっと見つめている。振り切ったと思っていたが、そうはいかなかったようだ。とはいえシママももう限界だった。逃げなきゃ、分かっていても思うように脚が動かない。両親も目を覚ましてくれない。

凄まじい咆哮が聞こえたと思えば、カエンジシが勢いよくシママたちの方へ駆け抜けてきた。その瞬間、二頭のゼブライカは弾かれたように起き上がり、最後の力を振り絞って逃げ出した。シママをその場に置いてきぼりにして。
 ▼ 24 AYr1xkow/g 17/01/30 01:07:54 ID:kf08ZhMM [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カエンジシはゼブライカたちに狙いを定めて確実に距離を縮めていく。そして、一頭のカエンジシが片方のゼブライカの首を噛み切った。続けてもう一頭のカエンジシも獲物を捕らえて喜びの雄叫びを上げる。シママはただ呆然とそこに立ち尽くしていた。

カエンジシたちがズルズルと両親を引きずってどこかへと連れていこうとしているのを、シママは息を殺して見つめていた。もはや何も考えられなくなっているようだ。

しかし、いきなり横から一頭のグラエナが飛び出してきてカエンジシたちに向かって激しく吠え始めた。カエンジシたちは食糧を奪わせまいと応戦したが、グラエナの数は徐々に増えていき、やがて七頭に増えたところで観念して逃げていってしまった。

七頭のグラエナが、ゼブライカの肉を貪り始める。やがて、一頭のグラエナが顔を上げた。シママの存在に気付いたようだった。

グラエナたちが唸り声を上げてシママの方へと近付いてくる。十四の赤い瞳が、ギラギラと鈍く光っている。

シママは逃げ出した。必死に逃げた。どんなに疲れても決して立ち止まってはいけないと本能で分かっていた。死に物狂いで体がボロボロになるまで逃げ続け、やがて力尽きて倒れこむと、草を抱いてそのまま眠り続けた。そこはとても暖かく、シママはやっと少しだけ安心することができた。あったかい。そういえば昔、父さんがぼくが眠るまでずっと隣で温めてくれたことがあったっけ……。

「――父さん」
 ▼ 25 AYr1xkow/g 17/01/31 00:29:16 ID:9mX2OPoY [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
目を覚ましたランスが自分が見知らぬ街にいることに気付くまで、少し時間がかかった。

サカキに連れられてコガネシティに向かい、初めてリニアに乗ったところまではなんとなく覚えている。恐らくそのリニアに乗っている間に眠ってしまっていたのだろう。あまり覚えていないが、懐かしい夢を見た気がする。

「起きたか」

「あ……ごめんなさい」

しゃがみこんだサカキの背から下りながら、ランスはか細い声で謝った。サカキは神妙な顔をしていたかと思えば、すぐにいつもの表情に戻った。

「……いや、構わない。ただし、最初で最後だ。たとえ子供だとしても他の者に示しがつかん」

「……?」

ランスが首を捻る。

「行くぞ」

サカキはそれだけ言うと、少し歩いた先に見える建物の中に入っていった。
 ▼ 26 AYr1xkow/g 17/01/31 00:33:35 ID:9mX2OPoY [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ここ……何?」

ランスが建物の中をキョロキョロと見渡しながら聞く。スロット台がいくつも並べられているが、閉店している今はどれも動いていない。

「ロケットゲームコーナー。我々の経営するゲームセンターだ。この地下に我々のアジトがある」

「ふーん……アジト?」

「秘密基地のようなものだ」

「へえ。かっこいいね」

ランスは少し楽しそうだ。

「さて……ランスよ。君は私の部下になる。難しいかもしれないが、立場が上の者を敬うことを覚えなければな」

「うん?」

「……まあ、その教育はアポロに任せるとしよう」

サカキはそう言うと、壁の前で立ち止まった。ランスが首を捻っていると、サカキは壁に貼られたポスターの裏にあるスイッチのようなものを押した。すると、すぐ近くの床が階段に姿を変える。ランスは口をあんぐりと開けてそれを見つめた。

サカキはランスについてくるように指示し、素早く階段を降りていく。ランスもそれを追いかけた。
 ▼ 27 バイト@こだいのきんか 17/01/31 02:15:06 ID:TYgM2rik NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ランスのSSか、支援
 ▼ 28 AYr1xkow/g 17/01/31 20:28:50 ID:7YZEQWbs [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
アジトの中は、思っていたより暖かくなかった。それがランスの抱いた感想だった。

リノリウムの床を歩く。サカキの履いている高級そうな革靴がコツコツと鳴る音以外、何も聞こえない。と思えば、突然声が聞こえてきた。

「おかえりなさい、ボス……、その子供は?」

目の前にいたのは水色の髪の若い男だ。丁寧な物腰からは穏やかな印象を受けるが、その瞳は酷く冷たい。

「アポロ、いいところに来てくれた。半年ほど前に話しただろう、面白いものを見つけたと。この子供がそれだ。名はランスという。ランス、これはアポロ。私の腹心だ」

「えっと……よろしくお願いします?」

ランスはとりあえず挨拶をしておいた。アポロの水色の瞳が注意深くランスを観察している。ランスは少し居心地が悪かった。

「アポロ、世話を頼む」

「かしこまりました」

アポロという男は眉ひとつ動かすことなく淀みなく答える。

「失礼します」

アポロはサカキに一礼すると、ランスに向かって「ついてきてください」とだけ言ってさっさと歩いていってしまった。
 ▼ 29 AYr1xkow/g 17/01/31 20:29:49 ID:7YZEQWbs [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ランスが慌ててアポロを追いかけると、アポロは淡々と話し始めた。

「ランスと言いましたか。改めまして、私はアポロ。このロケット団の幹部です。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「ふむ、とりあえず着替えましょうか。とはいえ子供用の制服はない……困りましたね」

アポロはとある部屋の前でたどりつくと、ランスの体を頭のてっぺんから爪先まで注意深くゆっくりと眺めた。それから部屋の中に入り、いくつかある段ボールのうちひとつに手を突っ込んで黒い制服を取り出し、ランスに手渡す。

「少し大きいですが、我慢してください。近いうちにどうにかします」

「はい」

「着替えを終えたら出てきてください。外で待っています」

アポロはランスの返事を待つことなく部屋を出ていった。
 ▼ 30 ードリオ@パワーベルト 17/01/31 20:31:13 ID:yLvlrx1w NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ランスでらんす〜
 ▼ 31 AYr1xkow/g 17/01/31 20:43:28 ID:7YZEQWbs [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ふむ、やはりサイズが大きいですね。発注します。それでは幹部たちに挨拶をしに行きましょう。幹部は私の他に二人います。まずはこちらへ」

アポロはそう言って再び歩き出す。ランスはそれをどこか不安げな足取りで追いかけた。

制服は黒を基調としたもので、アポロの着ている白いものとは少しデザインが異なっていた。胸部から腹部にかけて「R」という大きな文字が赤くプリントされている。ランスは白い手袋を引っ張った。制服はかなりダサいと思ったが何も言わないでおいた。

アポロがとある部屋の前で立ち止まる。

「アテナ、いますか」

アポロが声をかけると、「いるわよ」という言葉と共に部屋の扉が開いて一人の女性が現れた。燃えるような赤い髪と、恐ろしく気の強そうな顔が特徴的な妙齢の女性だ。

「新しい団員の紹介です」

「ランスです。よろしくお願いします」

ランスが挨拶をしてアテナを見上げる。アテナは真っ赤な口紅を塗った唇を横に伸ばして目を細めた。

「あら、こんな可愛らしい仲間ができるなんて思ってもみなかったわ。あたくしはアテナ。よろしくね」

それから、なぜかクスクス笑って楽しそうにランスを見つめる。

「ふふ……将来有望ね!」

ランスは意味が分からず首を捻った。
 ▼ 32 AYr1xkow/g 17/02/02 00:46:09 ID:c6dK2D8k [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アポロが次に立ち止まったのはすぐ隣にある部屋だった。

「プロトン、いますか」

「……いない」

「入ります」

アポロはお構いなしにそう言って扉を開けた。中にいたのは黄色い髪をしたガタイのいい男だ。

「入室を許可した覚えはないんだが?」

プロトンと呼ばれた男は腹立たしげにアポロを睨みつけた。アポロは涼しい顔をして答える。

「声はかけました」

プロトンは何も言わなかったが、舌打ちした音が聞こえたような気がする。

「……それで、何の用だ。その子供は?」

プロトンはランスの方を顎でしゃくった。

グラエナのような瞳の男だ。そう思った。プロトンの濁った黄色い瞳はランスを品定めするかのようにじっとこちらを見つめている。

「新しい団員です」

「ランスです。よろしくお願いします」

プロトンは返事をしなかった。
 ▼ 33 AYr1xkow/g 17/02/02 00:56:56 ID:c6dK2D8k [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「さて、ではあなたの生活する部屋ですが……」

プロトンの部屋を出てアポロがそう言ったところで、一人の団員が慌てた様子で声をかけてきた。団員はちらりとランスを一瞥してから続ける。

「アポロさんすみません、あの……ちょっといいですか?」

「なんでしょう」

「あの、回収したポケモンの数が書類と合わないんです……確認してもらってもいいですか?」

団員が恐る恐るといった様子で尋ねる。アポロは表情ひとつ変えることなく、

「分かりました。ランス、ここで待っていてください」

「はい」

ランスはそう答えたが、既に視線は落ち着きなくあちこち動き回っている。アポロは団員の後についてその場を去っていった。
 ▼ 34 AYr1xkow/g 17/02/02 01:06:32 ID:c6dK2D8k [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
当然、子供であるランスが初めて来た場所で大人しくしているはずもなく、アポロの姿が見えなくなるとすぐにその場を離れて辺りを探索し始めた。

アジトの中は地下だからか、冷たい印象を受ける。ランスがしばらく歩いていると、紫色の髪をしたひょろりと背の高い男が壁にもたれかかって立っているのが見えた。口には何かを咥えている。煙草だ。

「んあ?誰だぁ?……子供?」

男はランスに気付いたようで、目を細めてこちらを凝視している。ランスは男に興味を持ち、自分から近づいていった。

「ランスです。よろしくお願いします」

「ほー?新しい団員?こんな小さいガキが?まあいーや、俺はラムダ。よろしくなー」

そう言ってラムダは口から煙を吐いた。ランスが咳き込む。

「あ、ごめんね」

ラムダはそう言って煙草を持つ手をランスのいる方とは反対方向に遠ざけたが、煙草を吸うのをやめようとはしなかった。
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