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SS

【SS】魂の運び屋さんの飼い方

 ▼ 1 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/13 23:28:11 ID:OZpWY6HQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
目に映るのは真っ白に染まった世界だけ。

あぁ、なんと不便な感覚なのだろう。
この地上に初めて降臨してから約3時間。私の体は生命活動を中止する危機に陥っていた。

これが「寒さ」という感覚なのか。なんとも表現し辛い感覚である……

おっと、自己紹介が遅れたようだ。
私は属に言う……“死神”である。
人間界では…サマヨールなどという低俗な呼び方もあるらしいが言語道断。

私には“我が主様”から授かった麗しい真名があるのだがその発音はとてもこの世の生物は聞き取れないであろう。

話せば長くなるが…ふむ、聞きたいなら話してやってもいいぞ。
 ▼ 20 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/14 22:31:30 ID:XqXjxPQk [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ハナさんは…相手のことが好きなの?」

思わず口に出してしまう。
無意味な愚問。

「好きなわけないじゃない。あんなコダックみたいなデブ」

その言葉に安堵する自分は幼稚なのだろうか。

「そしてね……この地方は…もうすぐ戦争に負けるわ。父がそう言っているの」

体中に電流が走った。
カロスが…戦争に負ける…!?
 ▼ 21 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/14 22:46:47 ID:XqXjxPQk [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
これが彼女の父の言葉じゃなかったら鼻で笑っていただろう。
幼少期からカロスのために尽くすことを誓わせられ、カロスのために死ぬことを義務と教えられてきた彼にとって衝撃だった。

呆然と固まるオーキドにハナはささやきかけた。
「ねぇ…私と一緒に逃げない?何もかも捨てて」

え…いま何て……?

「貴方はカロスじゃなくて私を守って。前々から準備はしてきたわ」

彼女は更に言葉を畳み掛ける。

「どうせあなたに家族なんていないんだから……」

「でも…子どもは…赤ちゃんは…」

彼女は既に婚約者との間に娘を産んでいた。
 ▼ 22 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/14 22:51:47 ID:XqXjxPQk [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「もちろん連れていくわ。あの男の子どもといえど……私の宝だから」

一瞬オーキドは迷った。自分の子どもではない子を連れていくなど…
しかし、結論は一瞬で出た。
彼女の希望を叶える。それが今の優先事項だ。

「今夜の12時にここで待ってるわ。良い?」

小さく頷く。
カロスを捨てて逃げるなど怖かった。
ただそれ以上に彼女を守れない方が怖かった。

「じゃあ私は準備があるから…一旦家に帰るわ。また後で」

優雅に駆けていく彼女。
その背中を、今だ思考の纏まらない彼は半ば呆けて見つめていた……
 ▼ 23 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/14 23:00:54 ID:XqXjxPQk [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しばらくオーキドは川の水面を眺めていた。
そして決意を固め、立ち上がったその時……

後方で物音がした。

ハナかと後ろを振り返るが、そこには中年の脂ぎった男がいた。

「あんまりハナと話すなよ。あいつは俺の嫁だ」

こいつが…!理性より感情が先に口を飛び出した。

「貧乏貴族のくせに…!!」

へらへら笑っていた男の表情がだんだん消えていく。
男は傍らで待機していたSPを呼んだ。

「…やれ」
 ▼ 24 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/14 23:08:31 ID:XqXjxPQk [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
SPはガオガエンをボールから繰り出す。

「行け!!キノガッサ!」

キノガッサは安っぽいモンスターボールから飛び出し、ガオガエンと対峙した。

「ガオガエン、フレアドライブ」
「かわせキノガッサ!」

キノガッサは指示通り相手を見極め左によける。
しかし……

「やれぇエンブオー!!フレアドライブゥ!!」
あの男が先回りしてキノガッサを捕らえ、灼熱の炎で焼きつくす。

なんたる卑怯。
キノガッサが倒れ、労わりつつボールに戻したオーキドに男は言う。

「雑魚が。夜逃げなんて考えるんじゃないぞww」

まさか…気づかれたのか…?
 ▼ 25 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/14 23:14:44 ID:XqXjxPQk [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日はここまで。お休みです<m(__)m>
支援くださった方々ありがとうございました。
現在話がオーキド目線になってますが全部全部伏線です。
お楽しみに
 ▼ 26 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/15 17:31:30 ID:YElb2Kl6 [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オーキドは長く葛藤しながらも結局は午前零時、あの河川敷に立っていた。

しかし20分待っても彼女は来なかった。
やはり彼女は冗談を言っていただけだったのか……?

全部忘れて、家に帰ろうとしたその時。
後ろでふわりと空気が揺れた。

「ごめんね。ちょっと準備に手間がかかっちゃった」

「…ハナさん」

安堵の表情が顔の筋肉を緩める。
どうやら自分は彼女の前だと素直になるらしい。
 ▼ 27 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/15 17:35:08 ID:YElb2Kl6 [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「じゃじゃーん。これ見て」
彼女はいつも持ち歩いている巾着袋を揺らした。

「これは?」
一体自分に何を見せようというのか。

彼女は巾着袋に嬉しそうに手を入れ、そして……

出てきたのはただの飴玉だった。
灯りの少ない夜でもわかるほど彼女の顔が青ざめた。

「オーキド君。ちょっと待ってて。すぐに戻るから」

ハナはパッと巾着袋を片手に屋敷の方向へ一目散に駆けだした。
 ▼ 28 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/15 17:40:55 ID:YElb2Kl6 [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オーキドは目の前の状況が理解できず、只立ち尽くすことしか出来なかった。

5分ほどたっただろうか。
不意に上空から大量のポケモンが押し寄せてくる。

それはおびただしいほどのボーマンダ。
しかも全隊メガ進化を遂げている。

空襲だ。
 ▼ 29 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/15 17:48:12 ID:YElb2Kl6 [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして編隊は炎の雨を降らせながら屋敷の方向へ飛んで行く。
オーキドは我を忘れて自分も屋敷の方向へ駆けだした。

街の者が危ないから行くなとどれだけ声をかけても止まらなかった。

屋敷につくと、そこは既に炎が我が物顔で荒ぶっていた。
呆然とするオーキドにあの婚約者の男が勝ち誇った顔で吐き捨てる。

「お前、捨てられたな」

…え。

「お前みたいな素寒貧と逃げたってなんの将来もねぇことに気づいたんだよ。利口な女だな」

嘘だ。彼女がそんなことするはずがない。

言いたいことは山ほどあるのに言葉が喉につっかえてしまう。
出るのはかすれた吐息のみ。
 ▼ 30 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/15 17:55:44 ID:YElb2Kl6 [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
屋敷の出口を呆然と見つめていると、ハナは出てきた。

そして婚約者が駆け寄る。

次の瞬間……

炎の翼竜が二人を包み込んだ。

「ハナさん!!!!!」

彼女は無残な姿で横たわっていた。
 ▼ 31 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/15 18:00:15 ID:YElb2Kl6 [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
全部が全部、オーキドにはスローモーションで見えた。

彼女は左腕を炎に抉られていて、誰が見ても思わず悲鳴を上げるだろう。
オーキド以外は。

彼はハナを抱きかかえ、ただ叫び続けた。
彼女はうっすら目を開けると、こういった。

「ごめんね」

そんなこと。そんあことどうだっていい。
彼女が生きてさえいれば。

そして彼女は焼けた巾着袋から焦げて黒ずんだ塊をオーキドの空いている手に乗せた。

「もう、あげられるのはこれだけ……」

「そんなもの……飴玉なんか…!!」

「ごめんね。ごめん。……さよなら」

彼女は目を閉じ、動かなくなってしまった。
 ▼ 32 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/15 18:00:59 ID:YElb2Kl6 [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
たぶん今日はここまで。
この謎、皆さんは解けるでしょうか?
 ▼ 33 モンメン@にがいきのみ 17/02/16 00:10:07 ID:UVdnU2Cs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
わからねえ...支援
 ▼ 34 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/16 14:28:25 ID:65oX5D92 [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
辺りはもう赤く染まり、他の色すらも判別できなくなっていた。
なんどオーキドが声をかけても、なんど呼び掛けてもゆすっても彼女は目を覚まさない。

心の底では理解していて、でもその事実から目をそむけながらオーキドは一晩中彼女を抱いていた。

翌朝。消火活動が始まり、ハナの遺体も回収された。

やがて戦争は終わり、オーキドは大学に入った。
そしてポケモンの生体を中心とした学部に入り、結局は博士号も取得した。

まだ心に引きずった悲しみを振り払えず、研究所に就職した25歳の春。
彼女の子どもがこの研究所にやってきた。

名前はハナコというらしい。
 ▼ 35 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/16 14:33:40 ID:65oX5D92 [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ハナコは孤児となり、乳幼時期は施設に入れられていたらしいが、8歳になったため里親を見つけなければならなくなったのだ。

職員から全ての事情を聞いたオーキドは、この娘を大事に育てることを決めた。
彼女が遺した、唯一の形見だから。

ハナコはオーキドの下ですくすく育ち、元気いっぱいの少女になった。
やがてオーキドの心の傷も癒え、後悔は引きずったままだが笑顔を取り戻していった。

そしてハナコは結婚し、サトシという子どもを産んだ。

オーキドは幸せだった。
しかし。サトシが23歳になった初夏……

病に倒れた。
 ▼ 36 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/16 14:36:33 ID:65oX5D92 [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
診断結果は末期の肝臓がん。

不安や恐怖よりもまず、彼女の元に帰れるという安心感があった。

そして勧められたホスピスはあの彼女が死んだ洋館を改装したものだった。
オーキドは偶然に驚きながらも、やはり自分は彼女と共に死んでゆくのだと思った。

彼女の傍で死ねることが幸福だった……
 ▼ 37 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/16 14:38:47 ID:65oX5D92 [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




私はオーキドの記憶の波長から抜けると、そっと部屋を出た。

そして考える。

オーキドの“未練”を救う方法を。
不審な点ならいくつかあった。

そして考えに考え…
ある仮説が出来上がった。
オーキドを救うことができるかもしれない仮説を。
 ▼ 38 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/16 22:34:43 ID:65oX5D92 [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日はここまでです。皆さんわかりましたかね??
ちなみにヒントは…
逃げるうえで最も大切なものとは?
婚約者は夜逃げに気づいていた
です!さぁ、推理してみてください
それではみなさんおやすみなさい<m(__)m>
 ▼ 39 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/17 19:51:24 ID:n82Hz9kU [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
…そろそろか。
時刻は深夜11時。
私はオーキドの病室の前で軽く深呼吸を繰り返す。

幸いにもドアは半開きになっていた。
私は鼻でスゥっと静かにドアを開ける。

僅かな月明りに照らされただけのやせ細ったオーキドは、寝ているとまるで遺体のようだった。
私は静かに眠っているオーキドの傍に立った。

オーキドは時折、「うっ」と苦しそうに顔をゆがめる。
彼女との夢でも見ているのか。

丁度いい。それなら手間がかからないな。

私はオーキドのみている夢に意識を同調させた。
俗に言う、“夢枕に立つ”というものだ。
 ▼ 40 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/17 19:55:38 ID:n82Hz9kU [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
気づくと、私は深い深いオーキドの意識の奥底に辿り着いていた。

そこは昼に記憶の中で見た河川敷。
ただ記憶と違うのは、そこにいるのが若き青年ではなく、痩せ細った老人であるということだ。

私は河川敷に座って川をぼんやり眺めているオーキドのもとへすり寄った。

「……ガーディ?」

私の気配を察したオーキドは、力なくこっちを向いて言った。

「そうだ。私はガーディだ」

厳密に言えば「サマヨール」なのだがわかりやすくするために言っておく。
 ▼ 41 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/17 20:07:33 ID:n82Hz9kU [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「なんで…ガーディがしゃべってるんじゃ?ワシの長年の研究でも……」

「これは夢だ。いいか、夢なんだ。別にポケモンがしゃべっても不思議はない」

うだうだしている時間は無いぞ。
私は単刀直入に正面から斬った。

「お前の未練とやら、断ち切れる可能性があるかもしれないぞ」

「未練?私にはそんなもの……」

「戦争で死んだお前の想い人のことだ」

「……もう…ほっといてほしいんじゃよ」

「裏切られて駆け落ちを寸前で拒否、そのうえボーマンダに殺られたからか?」

「ほっとけって!!」

構うもんか。
私は更に挑発を続ける。
 ▼ 42 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/17 20:14:00 ID:n82Hz9kU [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「そりゃそうだろうな。お前みたいな素寒貧と逃げても裕福な暮らしは無い」
「たとえ反吐が出るほど嫌な旦那でも金があれば事足りるもんな」
「そういう点では彼女は賢明だったといえるな?」

「……彼女はそんな人じゃない」

ほら落ちた。
さぁ、今までグダグダしていた分急ぐぞ。

「そんな人じゃないなら何故家に戻った?考えてみろ」

「……わからない」

ハァ、これだから人間は嫌いなのだ。

 ▼ 43 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/17 20:19:37 ID:n82Hz9kU [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日はここまで。
さて、死神ことサマヨールの考えていることは何でしょうか?
ハナは本当にオーキドを愛していたのか?
皆さん、推理してみてくださいね
 ▼ 44 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/17 23:22:59 ID:n82Hz9kU [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
撤回。やっぱ再開しますね。

「答えはあの屋敷にある。行くぞ」

「…?」

私とオーキドは並んで丘を登っていく。
当然此処は夢の中だ。
その気になりさえすれば空だって飛べるし瞬間移動もできる。

しかし……
心の底に居座る恐怖の記憶がなかなかオーキドを進ませない。

「ふぅ…遠いな」

お前が遠くしてるんだよ。
 ▼ 45 ラフレシア@よごれたハンカチ 17/02/20 22:51:36 ID:L01JIEso NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 46 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/21 22:22:04 ID:jDHGmUX6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
このままではらちが明かないな。

「それより、私と雑談しないか?」

「雑談?」

「そうだ。着くまでの暇つぶしだ。お前の想い人はどんな人だった?」

オーキドは迷いながらも口を開く。

「金持ちなのに思いやりがあって…いつも笑っている人だった」

「そんな人間が駆け落ちを寸前で思いとどまったのか」

「そんなのわからないじゃないか!!」

誘導成功。
オーキドの考えがコロッと変わったところで、屋敷は見えてきた。
 ▼ 47 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/23 18:54:48 ID:Oeswma3A [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
屋敷につくと、やはり辺りは真っ赤に染まっていた。
オーキドはガタガタと震え出す。

「ここは夢の中だ。なにもそんなに怖がる必要はない」

「……」

「話を戻すぞ。お前の女は何故空襲の中家に戻ったのか考えてみろ」

「…忘れ物?」

近いが、外れだ。

「お前の女は巾着から飴玉が出てきて顔を青ざめた。何故だ?」

「何か…別のものと思っていた?」 
 ▼ 48 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/23 18:57:35 ID:Oeswma3A [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やっと正解だ、人間。

「夜逃げに一番必要なのは何だ?」

「勇気とか…?」

「馬鹿か。現実離れも良いところだ」

夢の中とは言え、ガーディに馬鹿にされオーキドはむっとしたようだった。

「じゃあ何だよ」

仕方ない。答えを教えてやるか。

「金だよ。金。正確に言えば貴金属だ」
 ▼ 49 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/23 19:00:33 ID:Oeswma3A [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「…!?」

私はお構いなしに説明を続ける。

「あの女はわかっていたのだろう?混乱した情勢で一番必要なのは金だと」

「富豪の娘だからこそ分かっていたのだろうな」

オーキドは思いもかけない答えに唖然とした。

そして……

「じゃあ、巾着袋に本当に入っていたはずのものは……」

「ああ。あの婚約者が事前にすり替えたんだろうな。金属と飴玉を」
 ▼ 50 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/23 19:04:22 ID:Oeswma3A [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オーキドは真実が解ってくるにつれて顔色が目まぐるしく変色していく。

「じゃあハナさんは本当に…?」

「お前が好きだったんだな。家の資産まで持ち出そうとするくらいだから」

オーキドの両眼からぽろぽろと涙が溢れる。
やがてそれは地面に落ち、軽く湿らせるほどになった。

「それで、あの時……」

『ごめんね』と。

裏切った謝罪でなく、自分が貴方から離れてしまうことに。
 ▼ 51 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/23 19:06:38 ID:Oeswma3A [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「補足しておく。金属の中でもダイヤモンドは極端に火に弱い」

「…」

「焼け焦げた巾着から彼女が取り出してオーキドに託した理由…わかるな」

私はもう、それ以上何も言わなかった。
 ▼ 52 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/23 19:11:07 ID:Oeswma3A [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
気づくと、あの河川敷に場面は移り変わっていた。

そこにはやつれた、でも清々しい表情のオーキドがいた。
そして、隣には若い女性。

「オーキド君。年取ったわね」

ハナはオーキドに笑いかける。
なんで、彼女はこんなにも笑顔を絶やさないのだろう。

「ハナさんは…変わらないね」

「当たり前じゃない。この年で死んだんだから」

「あの時…疑ってごめん」

「いいのよ。死んだとき…怖くて、痛くて、悲しかったけど、安心してた」

「貴方がいたから」
 ▼ 53 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/23 19:13:39 ID:Oeswma3A [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オーキドはハナの肩に頭を預けると、不意に泣きじゃくった。
そして二人は光に包まれた。

視界がはっきりしてくると、そこには若き日のオーキドがいた。

「オーキド君。あなたの話…聞かせて」

オーキドは軽く笑うと、ゆっくりと語りだした。

さて、そこらで私はお暇するか。
二人の貴重な時間だ。邪魔するのも悪い。

私はなかなか、粋なヨノワールなのだよ。
 ▼ 54 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/23 19:15:21 ID:Oeswma3A [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
これで第1章は終わりです。
そして今日もここまで。

現在S−1グランプリというのを企画中です!!
参加お待ちしております<m(__)m>
 ▼ 55 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/24 20:31:26 ID:hficrDho [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第1章のエピローグです


ーーー暗い暗い、漂流。
私は夢の中から現実に意識を戻した。

オーキドは眠っているが、その顔は笑っている。
きっと良い夢を見ているのだろう。
窓はまだ暗く、夜明けまでは時間がある。

不意に私は見つけた。
窓際にポツリと置かれた、黒い炭の塊を。

どうしても確かめたかった私は、取って軽くかじってみた。
苦みが口いっぱいに広がる。

そして小さな断面に目を凝らした。
そして私はニヤッと笑うと、部屋を後にした。

残された塊の断面は、ダイヤ特有の輝きを放っていた。
 ▼ 56 バオッキー@ながねぎ 17/02/24 20:41:16 ID:AB7n8nG6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
面白い!
支援
 ▼ 57 麒麟の星◆IfK6bvMzjI 17/02/24 20:43:16 ID:hficrDho [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>56
ありがとうございます。
不定期更新になりますが精進します
 ▼ 58 ズルズキン@きせきのみ 17/03/03 15:38:52 ID:LCgfO5fA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 59 ウリムー@ゆきだま 17/03/06 21:27:15 ID:1l4070pI NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
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